一汁一菜の読書歳時記6  2006年1月〜12月

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目次  
 読書歳時記1  2000年4月〜2001年3月へ(45冊)
 読書歳時記2  2001年4月〜2002年3月へ(41冊)
 読書歳時記3  2002年4月〜2003年12月へ(13冊)
 読書歳時記4  2004年1月〜2004年12月へ(27冊)
 
読書歳時記5  2005年1月〜2005年12月へ(71冊)


2006年1月役者60年  □古畑任三郎1  □シイタケのつくり方  □旅の続きは田舎暮らし □『笑の大学』の創り方  
       □三位一体改革の核心
  □スウィングガールズ  □押し付け市町村合併からの脱却  □映画の歓び
       □市民が つくる大阪市政改革ビジョン  □生協の白石さん

    2月
 □ニュ^-アグリビジネス・伊賀の里  □アジアで女性として生きるということ  □しなやかにファルマータ
       □
黒板五郎の流儀  国会議員を精神分析する  □村が消えた  農半Xという生き方
       
「行政」を変える!  畑の花を訪ねて  季語の食<秋> 
    3月 旅の途中で  □往ったり来たり  □さいえんす?  □博士の愛した数式  □秘密  □女性映画が面白い
       □骸の爪
    
4月 沢村貞子という人 □
イスラム世界を行く  へこたれへん。  キネマ旬報2月下旬決算号  老いの語らい
       
女流棋士の本 危ない! この先は崖っぷち!
    
5月 □くもりのち晴れ □星になった少年  □産直農家のデジタル写真入門  □いま、普通に生きる
    6月 銀幕の湖国  □
島崎藤村の人間観
    7月 少年事件に取り組む-家裁調査官の現場から-   □腹の底から憲法いこう  □誰が日本経済を腐らせたか  
        □ほれぼれ田舎暮らしはおいしい楽しい

    8月 
都市自治体から問う地方交付税  □愛しい旅がたみ  □住民が主人公を貫く町
    
9月  □女優・ジョディフォスター  □スローライフ   野垂れ死に  □家族で楽しむ自給自足  □ひとみごちて
   
10月 □不運のすすめ  □シャドウ  □元気な子どもの声が聞こえる街をつくる  □格差社会
       11月 
君の星は輝いているか(世界を駈ける特派員の映画ルポ)  □戦争で得たものは憲法だけだ
       □棋士 瀬川晶司  □2011年、テレビが消える  □箱詰めの文字
   
12月 さよなら、さよなら、さようなら  □ニッポン不公正社会


 



64 ニッポン不公正社会 読了 2006.12.12

斉藤隆男・林信吾著 平凡社新書 2006.3.10発行 221頁 740円+税


○はじめに ○機会不平等からネオ階級社会へ ○仕事はいま、どうなっているか ○若者が不気味だ ○英吉利見聞録 ○プロたちに明日はない ○「空気」のファシズム ○おわりに

(著者の略歴)
斉藤隆男 1958年東京生まれ ジャーナリスト 早稲田大学卒 日本工業新聞記者 週刊文春記者などを経てフリーに。「カルト資本主義」「機会不平等」「希望の仕事論」「安心のファシズム」など。

林信吾 1958年東京生まれ 作家 10年間在英 「しのびよるネオ階級社会」「これでもイギリスが好きですか」「イギリスありのまま」など

 ジャーナリストと作家との対談集です。
 同年代の二人が、考えは違っても議論がかみ合うという不思議な展開で、興味深く最後まで読ませてくれます。
 目次に示したとおり、現代日本はスタート時点からして機会が全く不平等になっており、イギリスとまではいかなくても、「ネオ階級社会」として固定、不平等が再生産されているという認識です。
 
 若者の動向について収入の不安定性とナショナリズムとは相関があって、昨年の総選挙結果が何をもたらしているか、よく考える必要があると斉藤さん。もう少し楽観的に見る林さん。

 イギリスについては、サッチャーが進めた教育改革についてよく知る必要があります(安倍内閣が絶賛して真似しようとしているから)。その際、イギリスは「階級社会」であることをよく踏まえる必要があるということ。イギリス礼賛記事の危険は林氏が10年間の滞在経験から語っています。話題にさえ上らない下層社会の若者たちがいること。彼らは親からの継続であり「身分」なのです。
 自分の階級である上層社会のためにその学校制度を変えたサッチャーイズムが今イギリスで見直され否定されつつあるのです。安倍内閣の「親が学校を選択する制度」なんかの発言は、イギリスの焼き直しだそうです。この教育改革について本書は余り触れていませんが、小泉内閣時代だからだと思います。 

 斉藤さんのジャーリストとしての今後の活躍に期待したいと思います。


63 さよなら、さよなら、さようなら 読了 2006.12.6 

田中美智子著 あけび書房 2005.1.20発行 220頁 1600円+税


○はじめに ○死の宣告を受けて ○議員のとき ○均等法成立の生き証人として ○旅いろいろ ○つれづれに ○あとがき

著者の略歴 
1922年生まれ 元日本福祉大学助教授 衆議院議員5期15年 議員引退後、埼玉県秩父郡荒川村に居を構える

 2003年11月に大腸ガンの大手術を行い、後半年から一年の命だからエッセーを書く時間はない、と担当医に宣言されて、死の準備としてはじめた原稿書きが、一年をとうに過ぎているのに死の兆候がない、とまえがきにあります。

 本書は、議員時代の15年間、68歳で引退してからの14年間、全国に講演にでかけ、その合間に40数回国外に出かけ、数十カ国を旅してきた著者の証言集です。豪快な生きかたともいえる
一生の後半部分に対する思いが文字の一つ一つに込められています。一気に読みました。

 議員時代では、男女機会均等法成立前後において、国際的な動きとは反する独自日本の法律提案に、その修正めざして身を持って挑んでいった迫力が印象的でした。旅行では、キューバがソ連崩壊とアメリカ経済封鎖の続行で経済ピンチに陥ったキューバの200万人都市ハバナが、ミミズによって野菜の自給自足に成功した見聞録が楽しい。秩父の山奥で近所の子どもを集めて英語学習を見てやって、英検の成績を上げた話も載っています。

 中選挙区制の中で、革新勢力が興隆していた時期を象徴するような議員だったと思います。それにしても、大腸ガンで死の宣告を受けながらこれだけ冷静・沈着・ファイト満々で居られるのは、充実した人生であったことの証明なのかな、と思いました。

推薦度★★★☆☆


箱詰めの文字|道尾秀介(野生時代2006.12月号) 読了 2006.11.29

 「野生時代」が新創刊3周年を記念して『新境地短編。』と題した特集を組んでいて、25人の作家が短編を発表しています。道尾秀介さんもその中の一人。箱詰めの文字という作品が載っています。

 僕のアパートの呼び鈴が鳴って出てみると見知らぬ青年が「貯金箱」を盗んだと謝っているが心当たりがない。中に入っていたのはお金ではなく、一枚のメッセージの紙切れだった‥‥。

 展開につられて最後まで一気に読ませてくれる作品です。ストーリーの持って行きかたが上手ということだと思います。
 彼は、デビュー2年余で4作の長編を発表して、ホラーミステリー小説の世界で、注目と期待を最も集める新鋭の一人と紹介されています。
 12月になって、年間○○大賞とかが発表される季節です。道尾秀介さんは骸の爪シャドウ(あるいは向日葵の咲かない夏も入っているのか?)が対象となっていて、評価が分散されるのでは、といわれていますが、頑張って欲しいと思います。


62 2011年、テレビが消える 読了 2006.11.28

黒田充著 自治体研究社 2006.10.25発行 192頁 1800円+税

目次
はじめに 1地域情報化をめぐる2つの「今日的課題」 2今、自治体で何が起きているのか−2つの事例から 3ブロードバンド化は必要なのか 4アナログ放送は本当に2011年に停波するのか 5光ファイバーで生まれる自治体と住民の負担 6小泉構造改革と「放送と通信」の融合 7権利としてのブロードバンドとテレビ視聴 あとがき

 随分と内容の濃い本です。
 市町村が主体者となって光ファイバー網の設置整備事業を進めている、徳島県・上勝町と岡山県・新見市の現地調査を行って問題点洗い出し、光ファイバーは市町村と住民に多大な負担を強いることを明らかにしています。
 また、2011年7月にアナログ放送を停波すると電波法で決めたが、この間50年かけてユニバーサルサービスとしてテレビ視聴を確立してきたことが、今後五年で同じ内容を完全にデシタル化することは不可能であり、テレビを見ることが出来ない国民が必ず生まれることを、各々の課題について丹念に検討して明らかにしています。
 国のeジャパン戦略が、国民・放送事業者が必要となる膨大な費用を国内需要として捉える産業政策として展開されていることを明らかにしています。
 テレビ放送のデジタル化は宣伝されているようなばら色のシロモノではなく、新たな課題が山積しており、このまま2011年を迎えれば大混乱になると警告しています。
 国の審査会の答申なども引用されて最新の情報を基にして分析が行われていることがよくわかります。
 関心のあるテーマも多くて、なるほどそういうことか、と納得しながら読了しました。推薦本です。

推薦度★★★★☆


61 棋士 瀬川晶司−61年ぶりのプロ棋士編入試験に合格した男− 読了 2006.11.9 (59冊目/70冊/年)

日本将棋連盟書籍編 日本将棋連盟発行 2006.1.25発行 191頁 1600円+税


 昨年、サラリーマン瀬川晶司氏が嘆願書によってプロ棋士編入試験を受けることを許され、条件である3勝を見事に挙げてプロ棋士になることができたことが随分と話題となりました(名人戦の主催問題もありましたが)。本書は、その全記録とも言えるものです。
内容としては、
○巻頭カラー
○理事会・メッセージ
○瀬川晶司ロングインタビュー
○瀬川さんと私(西條耕一・池崎和記・角建逸・木村明弘・遠藤正樹・渡辺健弥)
○祝福メッセージ
○将棋世界誌連載観戦記
○プロ編入試験6番勝負対局者の談話
○実戦29局のポイント解説
○奨励会三段リーグ表    という内容です。
 奨励会で三段リーグで闘いながら年齢制限のため一度は将棋界から去った男が、アマとして将棋を楽しみ、登り詰めて、再度プロの門をたたいた、という物語は絵になります。
 奨励会当時一緒だった今のプロ棋士が一様に歓迎しています。同期としての話です。
 本書には出てきませんが、今回の事態を、現役の奨励会の人たちはどう思っているのかという所にも興味があります。


推薦度★★★☆☆



60 戦争で得たものは憲法だけだ−憲法行脚の思想−読了 
2006.11.2 

落合恵子・佐高信編 七つ森書館 2006.8.1発行 165頁 1200円+税

 本書は2004年に結成された「憲法行脚の会」の12人の呼びかけ人が全国で行った講演やシンポジウム、対談などを収録しています。
 呼びかけ人12人とは、落合恵子・香山リカ・妾尚中・斉藤貴男・佐高信・城山三郎・辛淑玉・高橋哲哉・高良鉄美・土井たか子・三木睦子・森永卓郎の12氏です。そうそうたるメンバー。
 これらの方が、憲法改悪反対の一点でまとまって、そのことを実現するために、全国を行脚して、講演や対談やを実践しているということです。
 どの方の話もよかったのですが、「戦争を食い止めることが大切」という辛淑玉さん(人材育成コンサルタント)の話は大変印象に残りました。
 憲法9条は武力を放棄しろといっているのではない、「口だけで国を守れ」といっているのだ。日本が一度として憲法9条を胸につけて国際紛争の中に飛び込んでいったことがあるか。アメリカのケツにのっかかっているだけだ。
 今の日本の暴走は、司法が機能していない、ジャーナリズムが機能していない、労働組合が機能していないという3つの悲劇が生んでいる事態だ。
 国家の暴走=戦争に、保守も野党も革新もない。その良質の保守がどこかへいってしまった。どこかで何かタガが外れている。
 日本人に日本国憲法はもったいない。使いこなしていないからだ。
 こんな趣旨です。手厳しい意見です。しかし的を得ています。悲劇の3つの機能の話は本当だな、と思いました。
 この他にも、城山三郎さんの体験を踏まえた個人保護法反対の話、佐高信さんの保守をハト派・タカ派・ダーティ・クリーンの4つで分類して考えるなども印象に残りました。
 表題は城山三郎さんの言葉です。


推薦度★★★☆☆
 

59 君の星は輝いているか(世界を駈ける特派員の映画ルポ) 読了 2006.10.27

伊藤千尋著 シネフロント社 2005.11.23発行 342頁 1600円+税


著者の略歴 1949年山口県生。 1971年キューバで砂糖キビ刈国際ボランティア 73年東大法学部卒 東大ジプシー調査探検隊長 74年朝日新聞社入社 84年サンパウロ支局長 88 年アエラ編集員 91年バルセロナ支局長 2001年ロサンゼルス支局長など。CS放送朝日ニューススターのキャスター。

 本書は342頁の大著です。映画月刊誌「シネフロント」に連載されたものに加筆したものとあります。紹介されているのは27本の映画。日本で殆どが公開されているとありますが、私が観たのは6本のみでした。
 映画紹介をしながら、映画が描く世界各地の現地の実情を、記者=ジャーナリストというしっかりした目で、ルポ風に紹介しています。記者が現地に飛び、自らの眼で確かめたことだけに説得力があり、しっかり読ませる本です。
「2001年9月11日」「ゲバラ・フリーダ・ディードリッヒ」「放浪の旅・民・そして音楽」「世界の多彩な表情」「繰り返される戦争」「原爆・戦後民主主義・平和憲法」のタイトルのもと、27本の映画を以上6つのグループに分けて紹介しています。

「華氏911」2004年 米映画 122分
 ロサンゼルス支局長に就任してすぐに9.11テロと出会う。不自由な社会アメリカを紹介する。自由人・マイケルムーア。
「チョムスキー9.11」2002年 邦画 74分
 ノーム・チョムスキー教授(マサチューセッツ工科大学)の講演やインタビューなどで綴った映画。教授は言う「次に行動するのはあなたの番だ」。
「110901セプテンバー11」2001年 独・英 130分
 米国に対して主張する11人の映画人の映画による発言です。黙っていては変わらない。

「モーターサイクルダイアリーズ」2004年 英・米 127分
 ゲバラの若年時代を描いた映画。著者はキューバの砂糖キビ刈ボランティアでキューバへ行っています。目で見たキューバ。
「チェ・ゲバラ」1999年 アルゼンチン 89分
 キューバ革命に参加するゲバラ。

「フリーダ」2003年 米 123分などなどの映画が取り上げられています。
 詳しくは是非本書で現地ルポを体験ください。
 今年見つけた大変お勧めの一冊です!


推薦度★★★★★


58 格差社会−何が問題か− 読了 2006.10.20

橘木俊詔著 岩波新書1033 2006.9.20発行 212頁 700円+税

著者の略歴 1943生 京都大学大学院経済学研究所教授 「日本の経済格差」「家計から見る日本経済」など。

○はじめに ○格差の現状を検証する ○「平等神話」崩壊の要因を探る ○格差が進行する中で ○格差社会のゆくえを考える ○格差社会への処方箋 ○あとがき

 国民の多くが日本社会の格差拡大を実感する時代となっています。内閣府は高齢化しているからで「見せかけ上」の問題とやっきですが、小泉元首相は「格差の何が悪い」と居直る始末です。
 著者は、本書で、格差の現状、格差を広げている要因特に雇用システムの激変、日本社会全体の両極への変化、今後どのような国になっていくか、そうならないための処方箋 という内容で論じています。

 先ず第1章では、格差の現状検証です。
・所得格差では、再配分前の所得に係るジニ係数が1981年の0.349から1002年の0.498に上がっていることを指摘、所得配分の不平等化が進んでいるとしています。
・家計調査においても、ジニ係数は上昇傾向にあり同様の傾向にあるとしています。
・ジニ係数の国際比較では、再分配後の所得で計測した日本のジニ係数は0.314で、イギリスアメリカなどとともに不平等性の高い国にランクしています。(続く)


推薦度 ★★★☆☆


57 元気な子どもの声が聞こえる町をつくる(矢祭町) 読了 2006.10.16 

保母武彦・根本良一著 自治体研究社 2006.1.20発行 83頁 953円+税


はしがき ○対談(「合併しない宣言」から「総合計画」へ、そして矢祭町のこれから) ○総合計画は合併しない町の将来見通し ○矢祭町の実践から何を学ぶか 資料

 どことも合併しないことを宣言して注目を浴びた「矢祭町」の町長と学者・保母氏との対談及び論文集です。
 
 宣言したのは2001年、それから自立のまちづくりを始めました。その5年間の歩みの著でもあります。その中心は総合計画の策定・実践と基本条例といいます。

 役場が変わった象徴となったのが出張役場(職員の自宅で料金の納入・届出・証明書などの受付を行う)と自衛消防隊(職員で組織)を設置したこと。

 職員は108名+嘱託34名から、現在は77名+運転手+代替職員2名までになって3億円の人件費減少となっていること。やがては50名までもっていきたいとのこと。

 ポイントは民間企業の「リストラ」とどこが違うのか、ということです。展開されている行政の再構成・構築の詳細を丁寧に検討する必要があります。


推薦度★★★☆☆


56 シャドウ(道尾秀介)読了 2006.10.7 

道尾秀介著 東京創元社 2006.9.29発行 283頁 1500円+税

 我茂洋一郎・咲江夫婦と子どもの鳳介、水城徹・恵夫婦と子どもの亜紀。この二家族は夫が大学時代の医学部の同級生で、妻もまた同じ大学で後輩となる同級生同士。両方とも大学の近所に住み、子どもの鳳介と亜紀は小学校の同級生、この二家族・六人が織りなす物語です。
 それは、咲江が癌で死亡することから始まり、その数日後には、恵も自殺を遂げてしまいます。それも夫の大学の研究棟の屋上から身を投げるという衝撃的なやり方で。今度は小学生の亜紀が交通事故に遇い、洋一郎までもが様子が変になる‥‥。小学生鳳介の周りでは、何故これほど事件が続いて起こるのか。

 登場人物の視線が入れ替わることで心理をうまく追いながら、謎解きを進めていく手法がとられています。人は死んでどこへいくのか。鳳介が見る幻影は一体何を現わしているのか。亜紀の身に何が起こったのか。いろいろなメッセージが物語を引っ張っていってくれます。

 最後の謎解きへ行くまでに真相を把握しようと懸命に考えましたが、結局、著者にしてやられた感じです。結末に説得力があるから、その真実から出発して、頭の中で、前へ前へと物語が再構成されていきます。「そういうことだったのか。」と。その辺のところの構成力はすごいと思います。布石もヒントもしっかり打ってあります。

 待望していた著者・道尾秀介氏の長編第4弾は、おおいに成功している思います。

 ブログ訪問者の皆さん、是非購入して読んでください!


推薦度★★★★☆


55 不運のすすめ(米長邦雄) 読了 2006.10.2 

米長邦雄著 角川新書 2006.7.10発行 203頁 686円+税

 今は棋士を引退して日本将棋連盟会長の要職にある著者の最新書です。
 生まれてから、50歳で名人位に就き、60歳で引退して会長職で実行したことまで、自らのプロ棋士としての生い立ちを追いながら、「運」「不運」の観点でそれをまとめています。
 米長会長になってからので出来事としては、瀬川晶司さんのプロ入り問題と名人戦の主催移管問題がありました。前者は明るい話題として将棋が注目されました。一方、名人戦問題は、毎日新聞が一大キャンペーンを張るなど世間を騒がせた話題です。当の会長個人に対するバッシングもありました。が「毎日が怒るのも当然です」と会長は一言の言い訳もしませんでした。その辺の心境・経過を今回本書ではじめて明らかにしています。

 「叩かれるだけ叩かれた私としては人生最大の不運というより他ないが、不運とは実は幸運の根源であって、名人戦の価値を高めたという福を将棋界にもたらした」と考える会長です。よい手を指してもよくやったという人は数少なく、悪手はなじられる。不運な時に心を強く持てる者が真に強い者だと言います。

 60歳を過ぎてからの人生は人のために生きるべきである、人の幸福のために働くことこそが自分の幸せ、という境地の著者。
「人生、笑える時に笑っておけ。すぐに泣く時がくる」という升田幸三棋士の言葉が印象的です。

 興味があって一気に読みました。


推薦度★★☆☆☆


54 めざせ!日本一美しい村 読了 2006.9.28 

谷口尚/鈴木誠著 自治体研究社 2006.7.1発行 76頁 1100円+税

著者の紹介 谷口尚氏(岐阜県白川村村長)鈴木誠氏(岐阜経済大学経済学部教授)

 合掌造り集落が世界遺産に登録されたことで有名な白川村の村長さんと白川村のコミュニティー組織を研究されている研究者が著した本です。

 白川村は、人口1900人。年間150万人が訪れる観光名所になっています。高山市に合併する構想がでましたが村内でよく検討した結果いずれとも合併せず自立してことを決定しました。その辺の経過と、自律に必要な手立ての内容、「世界遺産の村を世界一美しい村にするため」の課題と展望などを村長が語っています。

 茅葺の屋根を葺き直すために「結い」と呼ばれる無償労働の提供互助会があること、売らない・貸さない・壊さないという景観保存の強い決意があって生活の場も含めて丸ごとの世界遺産を保存していること、高速道路が2年後に全面開通すると「日帰り」観光客が今より多くなることが予想され、駐車場・トイレなどの問題とともに、白川村にお金を落として村民の生活が成り立つようにする課題があること、同じ行政改革であっても村民の顔が見える改革であれば、職員も村民も理解してもらえる、という村長の自信などが印象に残りました。

 人口分布を見て驚きましたが、10歳刻みで0歳から80歳まで8段階に分けた場合、ほぼ200人で一定していることです。こんな村は他にありません。市町でも同様です。ピラミッドでも逆ピラミッドでもない非常に均整のとれた構成です。これは20年〜30年間くらいにわたる取り組みの賜物と思います。将来性を感じる構成となっています。

 白川村の取り組みが成功することを見守りたい気持ちになりました。

推薦度★★★☆☆


53 ひとみごちて(黒木瞳)読了 2006.9.23 

黒木瞳著 角川書店 平成15年11月10日発行 159頁 1700円+税

 女優黒木瞳さんの写真・エッセイ集です。「マイカマ」(私用の鎌の意)の話から始まっています。福岡県東部の田舎に生まれて、田んぼ仕事が日常の生活の中にあって、ヒル・ミミズも普通にいた。宝塚歌劇団を退団して、女優になったとき、五木寛之氏に、普通は田舎者であることを隠すものだが、あなたは、宝塚でお姫さまを演じ、詩を書きピアノを弾く人だからどこかの令嬢かと思うが、自分は田舎者だという、そこが面白いし、いいところだ、といわれたというエピソードが紹介されています。

 抑えた言葉とタッチで飾らない自分を綴っているエッセーです。一気に読むことができます。女優の内面を知るのも、映画を鑑賞する幅を持たせてくれる一助になります。

推薦度★★☆☆☆


52 家族で楽しむ自給自足 読了 2006.9.22 

新田穂高・竹嶋浩二著 文化出版局 2006.3.3発行 133頁 1600円+税

目次 ○少しだけの自給自足 ○野菜をつくってみよう ○米つくりにトライ ○種から作るうどんとそば ○大豆は日本食のパワー源 ○油の自給  ○庭をうるおす果樹 ○香りいっぱい自家製茶 ○自然の甘み(さとうきび/水あめ/ミツバチ) ○家畜は友達 ○雑木林のある暮らし ○四季の野山を味わう ○作って遊ぶ衣と住 ○自然のエネルギーを利用する

 目次のとおり、自給自足に挑戦する「ネタ」を提供してくれている本です。毎ページイラストが入っていて、自給自足の取り組みを分かりやすくしてくれています。
 今、我が家で実行できているのは、野菜(沢山)・果樹(金柑)・お茶(ヤーコン茶)・きのこ(しいたけ)くらいでしょうか。未だ、初歩的な段階です。
 この本に刺激されて今後、可能ならば挑戦したいなと思っているのは、稲つくり・小麦からパン・大豆からミソ・椿から油・柚子の栽培・ミツバチから蜂蜜 などです。
 このうち、いくつが実現するでしょうか。いろいろ夢が広がる本です。

推薦度★★★☆☆


51 野垂れ死に(藤沢秀行) 読了 2006.9.16 

藤沢秀行著 新潮社新書 2005.4.20発行 188頁 680円+税

目次 ○死ーくたばり損ない ○金ー博打三昧 ○酒ー繊細落 ○芸ー無悟の悟 ○人 ○血ー父親失格 ○絆ー内でも外でも女性は平等

 藤沢秀行の略歴‥‥1925年横浜市生まれ 日本棋院・元棋士 囲碁9段 名誉棋聖 昭和52年から「棋聖」6連覇 

 破天荒な生き方を貫いてきた「無頼漢」囲碁棋士の半生(反省?)記。競輪・競馬に明け暮れて億単位の借金をつくり、女性問題続出で3年間家に帰らないこともあり2人ずつ4人を認知、「火宅の人」と評せられた。一方で、棋聖戦6連覇、66歳で王座戦勝利、と輝かしい戦歴を持つ。胃がん・リンパ腺がん・前立腺がんと3度もがんを煩いながら、見事克服した戦歴も。

 何ともすごいの一言です。囲碁で一流なら、飲む・打つ・買うの三拍子でも一流。借金も一流なら病気も一流、付き合う人も一流です。その中で、感心したのは、「書」が一流であること。1990年に百貨店で書の個展を開き、瞬く間に売り切れたとのこと。書家の柳田泰雲先生に「君の書は高僧の名筆に匹敵する味がある」と勧められて個展を決意したとあります。厳島神社にも奉納されているといいます。

 豪傑の半生です。

★年間(1月〜12月)の読書目標である50冊に到達しました。あと20冊増やして70冊を年間目標にします。


推薦度★★☆☆☆


50 スローライフ 読了 2006.9.8

筑紫哲也著 岩波新書1011 2006.4.20発行 207頁 700年+税

(目次)○まえがき ○それで人は幸せになるか ○スローフード、9・11、一神教 ○ファストフードの時代 ○寿司と蕎麦そして地産地消 ○食の荒涼たる光景 ○小さな旅、スローな旅 ○失われた子どもの楽園 ○急ぐことで失うもの ○学ぶということ ○スローウエア・ファスト・ウエア ○ロハスのすすめ、森林の危機 ○木を見直す ○長寿と人間の豊かさ ○スローライフ、北で南で ○真の勝ち組みになるために

 新聞記者からテレビのキャスターになった著者が月刊誌「図書」に連載した文章(2005年1月から15回)が基になっているとのこと。著者が提唱する「スローライフ」のすすめの書です。話がいきなり飛ぶのが著者の癖だそうですが、展開されている内容は納得できるし、説得力もある気がします。

 食のグローバル化=ファーストフード化、その典型としてのマクドナルド、ドキュメンタリー作家モーガンが制作した「スーパー・サイズ・ミー」の衝撃、対する「スローフード」の提案。食をめぐる情景。箸の話。給食の廃止論とコンビニ弁当、旅もスローに、走る非日常の旅=グランドキャニオンの夕暮れが見えない。比叡山で何年も修行を積んだ僧が京都に下りてきて子どもが路地で遊んでいないことに驚いた話。社会教育講座を故郷で開講した話。マータイさんが提唱した「もったいない」の運動。みちくさ宣言の町。など興味のある話が沢山語られています。いずれも著者が体験したり思ったりした肩の凝らないエピソードとして紹介されています。

 最後に活動する際のルールの提唱があります。@自発性が命 A緩やかな結びつきが組織原則 B小さいことはよいことだ C水平型結びつき D正当性に固執しない E寛容とゆとり F快・楽を最優先しよう 
 納得。今、「9条の会」などで実践が試されている気がします。

推薦度★★★☆☆


49  女優 ジョディ・フォスター 読了 2006.9.6

テレーゼ・デ・アンジェリス著 鳥居千代香訳 未来社 2002.2.28発行 167頁 1600円+税

(目次)・私の生活はシンプルそのもの ・一家の稼ぎ手 ・子どものスター ・ただ仕事をしているだけだわ ・普通の生活 ・なぜ私が? ・完璧な演技マシーン ・いつでもヒーロー ・たくさんの子供たちの母

 女優・ジョディ・フォスターの評伝です。私が素顔が知りたい女優として、ジョディ・フォスター、アンジェリーナ・ジョリー、シャーリーズ・セロンの3人がいるのですが、今回、この本によって、ジョディ・フォスターの半生記を初めて知ることができました。
 印象に残ったこととしては、3歳の子どもの時から映画(テレビ)に出演して子役出身であること、俳優を続けながら有名なイェール大学を優秀な成績で卒業していること、タクシー・ドライバーの娼婦役がきっかけとなってレーガン大統領狙撃事件が起きたこと(犯人の主張)、「告発の行方」と「羊たちの沈黙」で二度アカデミー賞主演女優賞を受賞していること、今はエッグ・ピクチャーズという映画製作会社を経営していること、今は一児のシングルマザーとして母親ブランディと同じ立場にいること、等。
 大女優ながら普通の生活を好み、制作・監督にも情熱を燃やす類まれな人物であることが、本書から伝わってきます。

 彼女の出演作で見た映画は、「タクシードライバー」「羊たちの沈黙」「ジャック・サマースビー」「マーヴェリック」「コンタクト」「アンナと王様」「パニック・ルーム」「フライトプラン」などです。

 今後観たい映画としては、「インサイド・マン」「イノセント・ボーイズ」「ホーム・フォー・ザ・ホリディ」「ネル」などです。

 評伝を読んで、彼女の映画を観る角度が広がった気がしました。


推薦度★★★☆☆


48 「住民が主人公」を貫く町(続・南光町奮戦記) 読了 2006.8.31

山田兼三著 あけび書房 2005.3.20発行 187頁 1600円+税

○はじめに ○7期目の当選 ○合併問題の経過 ○初当選は1980年 ○行政懇談会 ○歯科保健センター ○きめこまかな福祉施設 ○ひまわりの郷づくり ○子ども歌舞伎と町史づくり ○千種川の清流 ○開放的な町長室 ○非核・平和行政 ○議会あれこれ ○人事はなかなか大変 ○入札をめぐって ○頭の痛い予算編成 ○財源確保さまざま ○小泉内閣の「三位一体の改革」 ○国民本位の民主的な政権 ○全国共産党員首長 ○選挙について ○民主主義革命と社会主義 ○大好きな宇宙、希望のもてる新町に ○「住民が主人公」の町づくりを新町に ○おわりに

 目次を引用しました。内容の概略がつかめます。兵庫県の南光町という町(2005.10合併して佐用町となる)で、1980年から2005年まで、7期25年間、町長を務めた著者の町政奮戦記です。

 人口4,500人、面積50平方kmの町南光町。1971年に会社に就職し、1980年に引越して、町長に立候補・当選、以後25年間町長という経歴は団塊世代の行政経験とほぼ重なってきます。

 南光町の行政でやって来た足跡を、町長自ら、飾らない平易なことばでわかりやすく解説しています。「2080」や「ひまわりの郷」など、誰もが知っている全国区の施策もあります。その支柱となっている考え方は次の言葉に集約されている気がしました。

 「政治の基本は、一人ひとりが人間として大切にされることである。財産がある人、自力でやっていける人に対しては、行政的支援は必要でない。そうでない人の誰もが人間的に暮らせるようにとつめることが、政治の責任である。」

 町長の人がらがしのばれる本でもあります。いっきに読みました。

推薦度★★★★☆
 


47 愛しい旅がたみ 読了 2006.8.10 

澤地久枝著 日本放送出版協会 2002.8.30発行 169頁 1400円+税

 本書は「NHKおしゃれ工房」に連載されたものに加筆したものとあります。澤地さんが、日本・世界に旅をして、現地で購入したものに関する旅のエッセー集です。

○夜ごとの夢(韓国−枕カバーの刺繍)○銀の匙(ペルー・ブラジル)○小さな貴婦人(ロシア−人形)○プラハのガラス器 ○松ぼっくり2つ(ポーランド)○父とのつながり(アメリカー懐中時計)○ゴーギャンのかたわらで(タヒチ−石人形・ココナツボール)○蒔絵の小道具(高知)○フクロウと珊瑚(チュニジア)○元の青磁壺(イ#都市自治体から問う地方交付税ンドネシア)○望郷の歌(シベリア−黒い石)○東北の雛たち(秋田−内裏雛と官女)○スペインのワインテイスター○ベトナムの李朝風(器)○ギリシャの火ともし○阿片の分銅(豊橋)○チリの鳥たち(石彫りのペリカン)○一人暮らしのいろどり(高山−お重・グラス)○小皿・豆皿たち○風立つ津和野(安野さんの屏風)○禁断のインドで(ピルケース)○北は砂漠に(中国−犬)○友の置き形見(向田邦子さん−ネックレスとペンダント)○いざないの靴(ユーゴ)○忠良さんのブローチ○旅の贈り物−まとめの文章

 引用が長くなりましたが、以上の品物が全てカラー写真で文中に収められています。澤地さんがアンティックな品物のコレクターということがよく分かります。文章は短くて、歯切れがよく、上手です。

 楽しみながら読んだ本です。

推薦度★★★☆☆
 


46 都市自治体から問う地方交付税 読了 2006.8.2

森裕之・平岡和久編 自治体研究社 2006.7.28発行 102頁 1714円+税

もくじ
○はじめに ○都市自治体から問う地方交付税 ○乖離分析による財政分析(堺市・高石市・守口市・松原市) ○地方都市における乖離分析(地方都市の基準財政需要額と決算一般財源)○あとがき

 「三位一体の改革」の当初2004年に「地方財政計画と決算額の乖離」を根拠に地方交付税が2.9兆円も削減されました。本書は、根拠となった「乖離」の内実を個別自治体の財政分析を通じて明らかにしようとする試みです。
 その際、利用できるデータは基準財政需要額しかないので、基準財政需要額と一般財源の決算額の比較から、個々の自治体で「地方財政計画と決算額の乖離」を近似値的にみようという方法です。

 衛都連の中に研究会が設置されて、市職員が参加する方式で分析の仕事が行われたようです。その成果は堺市・高石市・守口市・松原市の分析として結実しています。

 森先生が概論として全体の分析結果の解説をしておられます。その内容を2回に分けて、コラムの中で紹介しました。

@「三位一体の改革」の評価
A「新型交付税」の影響分析

 最新の動きも反映されていて、地方交付税に関する最先端の論文となっています。

推薦度★★★☆☆


45 ぽれぽれ田舎くらしはおいしい楽しい 読了 2006.7.25

松井美香著 文化出版局 2005.9.25発行 159頁 1400円+税

 八ヶ岳のふもと・山梨県・長坂町で暮らすヤングママ(?)の田舎暮らしのノウハウものです。写真が豊富で、ノウハウが具体的で分かりやすく、非常に参考になる本です。お勧めの一冊!

 私が興味をそそられた取り組みの一覧。
ハチミツ‥‥是非ともミツバチを飼うことをしてみたい。夢。
朴葉寿司‥‥自家製のものを食べてみたい。
ラッキョウ漬け‥‥先ずラッキョウを栽培するところから。
椿油‥‥昔家(恵那)でやっていた。大津で挑戦できれば○。
干し柿‥‥これは簡単に実現しそう。
味噌‥‥大豆を栽培して、味噌を作る、いつか実現したいこれも夢。
醤油‥‥これはもっと難しいかもしれない。
草履‥‥藁から草履を編んでみたいと昔から思っています。いつ必ず挑戦します。

 以上に限らず、梅・桑・トマト・桃・ぶどう・リンゴなどの果物から作るもの、ビール・ほうとう・そばのつくり方、石鹸・門松・餅などのつくり方が載っています。いずれも彼女が実践している話ばかりです。すごいと思います。


推薦度★★★★☆


44 誰が日本経済を腐らせたか(補強版) 読了 2006.7.24 

佐高信・金子勝著 角川文庫 H17.4.25発行 238頁 552円+税

○はじめに ○イラク戦争後の日本のシステム ○テロ事件後の日本のポジション ○小泉純一郎は経済がわからない ○竹中平蔵の経済政策を批判する ○石原慎太郎的ナショナリズムと市場原理主義 ○自民党支配の深層を斬る ○ITバブルとは何だったのか ○企業社会の無責任性を問う ○新しい公共性を育てる ○批判的思考のために ○おわりに


 感想については、いろいろあります。追って記載します。

推薦度★★★☆☆


43 腹の底から憲法でいこう 読了 2006.7.18 

憲法9条メッセージプロジェクト編 2005.1.1発行 128頁 500円


目次 ○蜷川虎三が語る憲法の話 ○随筆‥瀬戸内寂聴 ○メッセージ‥大江健三郎・梅原猛・三木睦子・鶴見俊輔・澤地久枝・小田実・加藤周一・井上ひさし・奥平康弘 ○強引に改憲へ‥川村俊夫 ○憲法調査会中央公聴会での公述‥暉峻淑子・猪口邦子・中曽根康弘・宮沢喜一・武村正義

 目次で分かるように、著名な人たちの発言が沢山詰まった本です。蜷川虎三さんの30年以上前の演説が今でも光り輝いています。的を得ている。たいしたものです。
 9条の会の呼びかけ人9人のメッセージが載っています。熱い心意気が伝わってきます。
 公聴会で発言した学者や元首相・蔵相の発言が載っています。中曽根元首相は「自主憲法」を唱えるタカ派。改憲政治家が多い今の情勢を歓迎して、言葉が踊っています。宮沢氏は憲法制定の経過を知る立場で、アメリカの押付け実体とを語っています。武村元蔵相は、環境主義を是非憲法にと強調しています。
 暉峻さんの発言は、憲法と生活の観点で人権を鋭く問うとともに、NPOによる国際貢献の立場から武器を売る不合理性を問うています。

 多彩な構成で、憲法9条のことを考えてみようという編集者の熱意が伝わってくる本です。

推薦度★★★☆☆


42 少年事件に取り組む-家裁調査官の現場から- 読了 2006.7.10 

藤原正範著 岩波新書995 2006年2月21日発行 212頁 700円+税

目次
○はじめに ○家庭裁判所の現場から ○保護なのか処罰なのか(虞犯事件をめぐって) ○少年司法の現在(家庭裁判所の仕事) ○年齢という問題(20歳と14歳) ○真実を発見する(少年事件のむずかしさ) ○被害者にどう向き合うか ○非行をどう考えるか ○あとがき

 著者は、家庭裁判所の調査官です(今は大学の助教授)。そういう職業があることを知りませんでした。少年司法を扱い、「健全な育成」(第1条)を掲げて非行少年と格闘してきた体験的少年「育成」論です。4,000件のケースを扱ったとあります。

 非行が起きる原因として、性格(人の心の傾向)、環境(人を取り巻く家庭、学校、職場等の社会)とともに、「偶発的要因」を付け加える意見には、なるほど、と納得しました。映画「クラッシュ」を思い出しました。ひどい人種差別主義者の警官が自動車事故の黒人女性を助け、人種差別を批判する警官が黒人少年を射殺してしまう、いずれも性格と環境とともに「偶発的要因」が絡まってクラッシュ(衝突)が起こったのです。

 自転車泥棒、万引き、リンチ・恐喝などの事例分析は非常に具体的です。

 14歳〜19歳の少年が事件を起こすと全件が家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所では、「審判不開始」(審判を開かない決定)「不処分」(処分しない旨の言い渡し)を決める場合があるほか、審判ののち決定される「保護処分」を下します。それには3つあって、@保護観察処分(保護観察所による、通常は保護司が担う)A児童自立支援施設等送致、B少年院への送致 です。具体的な統計数値も載っています。

 少年の非行事件を考える際の基礎資料を提供してくれています。

推薦度★★★☆☆


41 島崎藤村の人間観 読了 2006.5.26

川端俊英著 新日本出版社 2006.3.25発行 190頁 1900円+税


目次
○はじめに ○時代の夜明け・人生の旅立ち ○新しき詩歌の時ー若菜集とその前後(女性解放の目覚め・関西漂白の旅・人間解放の新たな歌声・恋愛労働と戦争との相克) ○人生の従軍記者ー破戒とその前後(破戒の誕生まで・描かれた先駆的人間像・春と家ー破戒以後) ○窓を開け自由な空気をー処女地とその前後(新生から処女地へ・女性の力で新しい道を・処女地以後) ○激動の中で迎えた終焉ー夜明け前とその前後

著者の略歴
 1933年生 広島大学卒 同朋大学名誉教授。

 作品を追いながら、島崎藤村の内なる苦悩をたどった島崎藤村の評伝です。生まれ故郷の長野県山口村は岐阜県中津川市に越県合併して話題となりました。この5月に馬篭の宿を訪れたところです。

 私の故郷・恵那市は隣りの市です。私の高校時代の国語の先生(太田先生)が、坂本町にある坂本女子高校の文芸部が地元の作家ということで島崎藤村を調査研究していい成果を上げている、という話を授業中にされたことを思い出します。島崎藤村はいわば地元の作家という親しみがあります。

 この評伝では、第3章の破戒執筆とその前後のところが最も力が入っている気がしました。今から丁度100年前、1906年に小説「破戒」を自費出版しています。主人公の青年教師・瀬川丑松が素性告白に至る内的な葛藤を主軸にした物語は発表当時も大反響を呼んだとあります。

 島崎藤村の代表作を上げる時、いろいろな顔があることに気づきます。「若菜集」のロマンティックな香り、「破戒」の人間解放の模索、「春」・「家」などの私小説的世界、「夜明け前」の歴史小説。どの世界が好きかは読む人の好みかもしれません。私なら「夜明け前」かな。

 本書は、作家・島崎藤村が人間として特に女性との関係でいかに自然にあろうとして苦悩したかを跡づけた評伝ということもできます。作家・島崎藤村を知るのに役立つ本です。

推薦度★★★☆☆


40 銀幕の湖国 読了 2006.6.1 

吉田馨著 サンライズ出版 別冊淡海文庫11 2003年10月15日発行 194頁 1600円+税


○序 鈴木晰也 ○大津 ○湖南・甲賀 ○東近江 ○湖東 ○湖北 ○湖西 ○沢島忠監督に聞く ○あとがき

 本書は毎日新聞滋賀版に平成12年2月かか毎週日曜日に18ヶ月にわたって連載された「吉田馨の銀幕の故国」に加筆したものとあります。滋賀県をロケ地にして撮影された映画を訪ね歩く映画紀行記です。記事は70本あり、一回に2本〜3本紹介されています。

 私の住んでいる地域では、「旅は気まぐれ風まかせ」(1958年大映京都 田坂勝彦監督 市川雷蔵主演)と「ひばり・チエミのおしどり千両傘」(1963年)が撮影されたとのこと。前者はこの6月4日に時代劇専門チャンネルで放映がありますから、是非とも鑑賞したいと思っています。

 本書に出て来る映画は昭和30年代の時代劇が多い。時代劇全盛時代です。現代劇では「お引越し」「鬼龍院花子の生涯」「男はつらいよ」などの紹介があります。

 覚えがあるロケ地を映画の中でしっかり鑑賞しながら映画を観るというのは、新しい鑑賞方法としてとても楽しいです。「青い山脈」(吉永小百合主演)で発見した鑑賞法。私のブログを読んだ「おがじゅん」さん(
http://radio-junko.ameblo.jp/)に、滋賀県のロケ地をまとめた本がありますよ、と本書を紹介していただきました。感謝。
 
 私が過去鑑賞した覚えのある映画でここに載っていたのは以下のとおりです。
赤穂城断絶・雨あがる・雨月物語・湖の琴・男はつらいよ拝啓寅次郎様・お引越し・蒲田行進曲・祇園祭・鬼龍院花子の生涯・忍びの者・砂の器・大魔人怒る・たそがれ清兵衛・どら平太・長崎ぶらぶら節・宮本武蔵一乗寺の決闘・宮本武蔵巌流島の決闘・柳生一族の陰謀・赤影、以上20本でした。どの場面にロケ地があったのか、今思い出すことはできません。次回の鑑賞時の楽しみということにしたいと思います。


推薦度 ★★★☆☆



39 いま、普通に生きる 読了 
2005/5/25 

米倉斉加年著 新日本出版社 2006.4.15発行 187頁 1600円+税

目次 ○青春の始まりは人生の始まり ○フロアと舞台の間 ○わかりいい言葉 ○わらべうた ○あまりにも心情的な夢二論 ○山田洋次さんとチェーホフ ○沖縄よ ○宇野重吉一座の民話劇 ○燕よお前はなぜ来ないのだ‥ ○小説を書いて多喜二は殺された ○日本の歴史を外から見る視点を(住井すえ対談) ○不正とたたかう政治と愛情は表裏(市川忠義対談) あとがき

著者(俳優・演出家・絵本作家・絵師)の略歴 
1934年福岡市生 1957年劇団民藝入所 2000年退団、フリー。絵本『多毛留』『人魚物語』『おとなになれなかった弟たちに‥』『憂気世絵草紙』『道化口上』『演ずるとは』など。

 米倉さんという俳優・演出家・絵本作家を知ることのできるすばらしい本だと思いました。米倉さんは文章が非常に上手です。文字に力があります。日頃の信条や思いが自らの行動にしっかり裏付けられているからだと思う。子供の頃の貧乏の話、2人の子供を保育園で育てた話、宇野重吉一座の旅回りの話などが印象に残りました。


推薦度 ★★★★☆
 

38 産直農家のデジタル写真入門 読了 2006/5/18 

冨田きよむ著 農産漁村文化協会 2003.12.30発行 118頁 2,000円


○はじめに ○撮影のポイントと準備 ○撮影の実際 ○画像加工とホームページ作成 ○おわりに

 デジタル写真の撮り方に関するハウツーの本です。写真の基本とデジタルカメラの選び方、実際の撮影時に機械が選択した適性露出からプラスとマイナスを手動させて、いかに新鮮な野菜の姿を写真に収めるか、そして画像の大きさを絞ってホームページに掲載する方法などです。我がブログの写真とHPの写真を改善するためのアドバイスを求めて読みました。いろいろ参考になりました。

 先ずカメラの選択。@単三の電池が使用可能でA露出計があって手動調整が可能なことB望遠が8倍 C画素は200万〜300万で十分 Dしっかりした三脚を購入すること。という条件でした。家の中に簡易スタジオを作って逆光の中白い布と反射板を使用して撮影することという、畑でパチリとはちょっとレベルが違うわけですが、参考になる話です。次回カメラ購入時の参考にしようと思います。

 次は、絞りとシャッタースピードでの適正露出を知った上で被写体の明度に沿って、より低い明度のものは適正露出よりもマイナスに、より明るいものはプラスに、という助言。露出計を活用した経験がありませんので、手持ちのカメラで試してみたいと思います。

 それから、逆光の思想。太陽を背にした写真は深みがなくノッペラとなるとのこと。逆光を基本にして、深みを出す技法をマスターすることが必要です。

 パソコンに取り込んでHPのために画像処理を行うための注意点ですが、大きさは今は300ピクセルと225ピクセルを基本にしていますので、それでOKですが、解像度変更の折に「アンシャープマスク」を実行することを勧めています。今まで行ってはいませんでしたが、より明確な写真にするためにお勧めとのこと。早速、取り入れてみます。

 野菜・果物・畑等を撮影した実際が掲載されています。適正露出からのプラスマイナスも表示されています。この通りいくか、これは経験をつむ必要がありそうです。

 今は、200万画素の携帯電話で簡易写真を撮影していますが、400万画素のカメラも使用して、ちょっと本格的な野菜の写真を撮影してみるつもりです。

推薦度 ★★★☆☆


37 星になった少年 読了 2006/5/16

「星になった少年」制作委員会編 文芸春秋社 2005.6.10発行 120頁 1143円+税


 映画「星になった少年」のフォトストーリーブックです。ふんだんに映画のスチール写真を使用して映画のストーリーを解説しています。文字は少ないのですが、写真で十分に分かります。ゾウが大好きで「ゾウが話す声が聞こえる」少年の物語です。家の許しを得て単身タイのゾウ調教師学校に入学する。言葉さえ分からない現地で必死にゾウとの対話を学ぶ。逞しくなって日本に帰ってきた少年は、ゾウと対話しながら活躍するが、突然の悲劇が訪れる‥‥という内容です。「誰も知らない」の少年役・柳楽優弥が主演しています。DVDも発売されているようです。さっそく、鑑賞してみたくなりました。

推薦度★★★☆☆


36 くもりのち晴れ 読了 2006/5/11

辻義則著 萌文社 2006.4.20発行 228頁 1600円+税

目次 ○エッセー集の発刊によせて ○曇りのち晴れ ○京町三丁目 ○あとがき

著者の略歴 1947滋賀県長浜生まれ 1965滋賀県庁に入職 1994滋賀県職員組合の委員長 2003県労連議長

 著者の略歴が示すとおり滋賀県の労働組合運動に身を置いた人です。県庁の組合の機関紙に月1回のペースでおよそ12年間にわたって掲載したコラム72本と、県自治労連の機関紙に掲載したコラム61本の、合計133本のコラムが収録されています。
 組合機関紙にコラムを書いている「同業者」として、興味深く読みました。

 700字〜800字くらいのコラムです。時事問題が多く取り上げられていて、組合委員長としての立場もさることながら、県職員・人情家としての側面も感じられる内容です。

 著者は、労働組合運動一筋ですが、著者の名前は、びわこ空港反対の取り組み、新幹線新駅設置反対の取り組みなど、県民運動に発展した課題の中心に県職労がいたということ示す象徴的な存在であるようです。

 コラムを本にまとめるのもいいなと触発されました。


推薦度★★★☆☆
 



35 危ない!この先は崖っぷち! 読了 
2008/4/29 

高遠菜穂子・品川正治・西谷文和著 憲法9条メッセージプロジェクト発行 2006.3.1発行 160頁 700円

○戦争をやめさせ子供たちを救おう 講演 高遠菜穂子さん「命に国境はない」 現地報告 西谷文和さん「いまイラクで何が」 ○日本国憲法9条は世界のひとすじの希望 講演 憲法9条と経済界と私 品川正治さん(経済同友会)○時代を読み解くヒント「キーワード」

 高遠菜穂子さんの講演会で販売していた本です。発行者は、「憲法9条メッセージプロジェクト(略称 K9MP)」という団体です。
 高遠菜穂子さんは2年前の4月に起こったイラク人質事件の当事者の一人です。「イラク支援」に情熱を傾けて、今は国内での講演活動をしています。
 西谷文和さんは、元々吹田市の職員で、組合ニュースにコラムを書いていましたので、そのことでよく知っていました。その後、退職してイラクの現地に入って、イラクで今何が起こっているかをマスコミが知らせない真実を伝えようとしています。
 品川さんは経済同友会の方で、自らの戦争体験を交えて、憲法9条が持つ意味を、世界の国々と比較しながら、日本だから、そのときだったから、できた憲法9条第2項を、21世紀に残すことの責任を、語っておられます。

 今年は「国民投票法案」とかが国会の日程に上ることも予想される中、きな臭い動きはゴメンだという声を大きくすることが必要でしょう。この本を読んで感じました。

推薦度★★★☆☆
 

34 女流棋士の本 読了 2006/4/25 

日本将棋連盟女流棋士会編 2003.3.29発行 173頁 1400円+税

○巻頭カラー ○中井広恵ロングインタビュー ○清水市代ロングインタビュー ○女流棋士30年の歴史 ○なんでもレポートします ○女流棋士ホンネ座談会 ○インタビュールーム ○エッセイ ○私の一週間 ○私の交遊録 ○稽古先訪問 ○女流棋士47人に聞きました ○Q&A ○女流棋士ホームページあれこれ ○女流棋士ブック&グッズ

 将棋連盟の女流棋士会が結成30周年を記念して編集した「女流棋士47名」に関するアラカルトを綴っている本です。巻末には全ての棋士が紹介されています。

 女流棋士で名前を知っているのは、中井・清水以外では、蛸島章子さん、山下カズ子さん、関根紀代子さん、石橋幸緒さん、高橋和さん、と多くありません。最近の人より古い人が多い。高橋和さんは『女流棋士』の本を読んで知っています。

 ちょっと逆説的な言い方になりますが、いつか、奨励会から四段になる道を選んで達成する女性が生まれてくることによって、この女流棋士会の存在意義が達成されるのではないか、と思います。

 今は、中井・清水時代のように感じていますが、彼女たちに追いつき追い越す女流棋士が複数現われて、日本将棋連盟のように、トップに4人〜5人が群雄割拠して誰がタイトルをとるのか予測がつかない状態が、早くこないかな、と思いながら読みました。

推薦度★★★☆☆
 


33 老いの語らい 読了 2006/4/24 

沢村貞子著 岩波書店 1997.1.28発行 224頁 1339円

○切り捨てるもの残すもの‥幸田文 ○暗い谷間の青春‥原田勝正 ○東京を生きて愛して‥戸板康二 ○豊かな老いへ‥郡司正勝 ○お互いに助け合う‥堀田力 ○あるがままを生きる‥山田太一 ○父さん母さん‥黒柳徹子 ○お葬式を考える‥永六輔 ○母を語る‥沢村貞子 ○あとがき ★対談の間にエッセー集を挿入。

 80歳までは女優、その後、87歳までエッセイストとして生きた沢村貞子さんの対談・エッセイ集です。背筋をきちっと伸ばしてシャンとして生きてきた一生が、飾ることなく、語られています。特に、夫・大橋恭彦さんとの関係の話は非常に魅力的です。

 黒柳徹子さんとの対談では、黒柳徹子さんがが著者を「お母さん」と呼んでいること、徹子の部屋への出演が女性では最多であること、女優をやめてから10冊の本を出しているがいずれもベストセラーになったこと、などが新鮮に語られていて、老後を美しく生きた、という意味では特筆に価する人だな、ということを感じました。

 また、浅草に生まれ浅草育ちで、父は歌舞伎役者、そんな沢村さんが、女は自分で道を決めよと言われて、日本女子大へ入学し、山本安英さんにあこがれて、築地小劇場の新劇運動に関わり、治安維持法違反で逮捕・抑留され、そんな経歴ではどこも雇ってくれないと、俳優になった、という語りが、淡々と語られています。当時では希少価値だっただろう女子大卒(正確には中退)のインテリ女優ということです。

 読みやすく、語られている内容も豊かです。対談の間に入っている短いエッセイが著者をよく現わしていて、なるほど、と思わせます。いい本です。


推薦度★★★★☆
 


32 キネマ旬報 2月下旬決算特別号(2005年映画総括号) 読了 2006/4/14 

 2005年度の映画と映画界を総括する決算特集号です。


キネ旬ベストテン
○日本映画主演女優賞 田中裕子(いつか読書する日、火火)
○日本映画主演男優賞
 オダギリ・ジョー(メゾン・ド・ヒミコ、オペレッタ狸御殿、SHINOBI、スクラップ・ヘブン)
○日本映画意助演女優賞 
 薬師丸ひろ子(ALWAYS三丁目の夕日、オペレッタ狸御殿、レイクサイソ・マーダーケース、鉄人28号)
○日本映画助演男優賞
 堤真一(AKWAYS三丁目の夕日、フライ・ダディ・フライ)
○日本映画新人女優賞
 沢尻エリカ(パッチギ!、阿修羅城の瞳、SHINOBI)
○日本映画新人男優賞
 石田卓也(蝉しぐれ)
○日本映画監督賞
 井筒和幸(パッチギ!)
○読者選出日本映画監督賞
 山崎貴(ALWAYD三丁目の夕日)
○日本映画脚本賞
 内田けんじ(運命じゃない人)
○外国映画監督賞
 クイント・イースト・ウッド(ミリオンダラーベイビー)
○読者賞
 香川照之(日本魅録)

日本映画ベストテン
@パッチギ! AALWAYS三丁目の夕日 Bいつか読書する日 Cメゾン・ド・ヒミコ D運命じゃない人 Eリンダ・リンダ・リンダ Fカナリア G男たちの大和/YAMATO H空中庭園 Iガルマニウムの夜

外国映画ベストテン
@ミリオンダラー・ベイビー Aエレニの旅 B亀も空を飛ぶ Cある子ども D海をとぶ夢 E大統領の理髪師 Fウイスキー Gスターウオーズエピソード3/シスの復讐 Hキング・コング Iヒトラー/最期の12日間

文化映画ベストテン
@映画日本国憲法 A粥川風土記 B死者の書 C白神の夢 D時代を撃て/多喜二 Eもっこす元気な愛 Fみみをすます G未来を創る科学者たち HSTOP・HIV I阿賀の記録

読者選出ベストテン(日本映画)
@ALWAYS三丁目の夕日 Aパッチギ! Bリンダ・リンダ・リンダ Cいつか読書する日 Dメゾン・ド・ヒミコ
E蝉しぐれ F運命じゃない人 Gカーテンコール H亡国のイージス I男たちの大和/YAMATO

読者選出ベストテン(外国映画)
@ミリオンダラー・ベイビー Aシンデレラマン Bエレニの旅 Cスターウオーズエピソード3/シスの復讐 Dチャーリーとチョコレート工場 E海を飛ぶ夢 Fオペラ座の怪人 Gヒトラー/最期の12日間 HRay/レイ Iサイド・ウエイ

2005年日本映画興行ランキング
@ハウルの動く城 Aポケットモンスター B交渉人/真下正義 CNANA D容疑者/室井慎次 E電車男 FALWAYS三丁目の夕日 G北の零年 Hローレライ I星になった少年

2005年外国映画興行ランキング
@スターウオーズエピソード3/シスの復讐 A宇宙戦争 Bチャーリーとチョコレート工場 CMR.インクレディブル Dオペラ座の怪人 Eターミナル Fオーシャンズ12 G頭の中の消しゴム H4月の雪 Iコンスタンティン

 ざっと紹介してきました。今年の映画の総括として非常に参考になる記事です。
 こうしてみると年間の映画鑑賞本数の割には見ていない映画が多いな、ということを感じます。まだまだ、鑑賞に割く時間が必要です。
 



31 へこたれへん。 読了 
2006/4/13 

辻元清美著 角川書店 2005.8.20発行 336頁 1,400円+税

○序章 ○逮捕 ○責任 ○疾走 ○転落 ○原点 ○挑戦 ○捜査 ○留置場日記 ○判決 ○希望 ○読者の皆さんへ

著者の略歴
1960年奈良生まれ。現在高槻市在住。早稲田大学教育学部卒、1983年「ピースボート」設立。1996年〜2002年衆議院議員。現在はNPOのコーディネイト、講演・執筆活動を展開中。

 日本の有名人の半生記です。生まれ、学校、転校、ピースボートでの活動、土井委員長の要請、比例で当選、連立与党入り、小選挙区の大阪10区で 2回目の当選、権力闘争と秘書給与問題、辞職、検察の捜査、逮捕・留置場生活、公判・判決、参院大阪地方区立候補まで、波乱の人生が極めて率直に綴られています。

 行動力があって、切り込みが鋭くて、率直で、ネーミングがうまいという新しいタイプの政治家です。それだけに国民も、好き嫌いがはっきりしているような気がします。

 この本を読むと、国会で権力側に多くの敵を作った(当たり前の話なのですが)のが、秘書給与問題ではどう見ても不公平で、一方的に重い「逮捕・有罪判決」まで走らせた原因ではないか、と思えてきます。

「小泉劇場」で反動法案が目白押しの今の国会の中で、こういう人が国会にいて論戦を挑むことが必要だと、国民は感じているのではないかと思います。

 必ず大阪で復活する気がします。政治が好きなタイプを自認する著者は、本のタイトル通り「へこたれへん。」のが真実でしょうから。


推薦度★★★☆☆ 
 

30 イスラム世界を行く 中東・湾岸6カ国の旅 読了 2006/4/7

緒方靖夫著 新日本出版社 2003年2月28日発行 210頁 1500円+税


○目次 ○中東3カ国から6カ国訪問へ ○ヨルダン ○イラク ○エジプト ○サウジアラビア ○カタール ○アラブ首長国連邦 ○帰国、それから

 本書は緒方靖夫参議院議員が、2002年10月に中東6カ国を訪問して「イラク危機」の平和的打開に向けて、各国首脳と会議を行った、ルポルタージュです。
 米・英がイラクに対して「先制攻撃」戦争を仕掛けたのが2003年3月20日です。その半年前、中東の首脳が危機回避のため、どんな発言をしていたかを知る、貴重な会議録として読みました。

ヨルダン
○スマーディ外務省アラブ中東局長代行
○ラワーブデ上院副議長
○ヨルダン共産党
イラク
○ファイサル外務省第一政務局長
○ハマディ国会議長
○バース党政治局員
エジプト
○アラブ連盟本部ムーサ事務総長
○アブゼイド人民議会アラブ問題委員長
○エジプト外務省
○アジアアフリカ人民連帯機構ヌーリ書記長
サウジアラビア
○アッカース諮問評議会外交委員長
○OICイスラム諸国会議機構
カタール
○カワーリー諮問評議会議員
○ホレイフ外務省アジアアフリカ局長
アラブ首長国連邦
○マズルーイー国民評議会事務局長
○ヌアイミ外務次官補

推薦度★★★☆☆
 


29 沢村貞子という人 読了 2006/4/2 

山崎洋子著 新潮社刊 2004.11.25発行 173頁 1500円+税

○はじめに ○マネージャーって何 ○仕事を決める話 ○大橋さんのこと ○せっかち ○衝立 ○創る ○食事 ○すきやき弁当 ○おしゃれ ○ 店じまい ○家さがし ○上原の家の茶の間 ○弟加藤大介さん ○兄沢村国太郎さんと甥たち ○姉矢島せい子さん ○引越し ○わしの鯛茶 ○鶯ととんび ○雀 ○金庫 ○富士山と夕日 ○大橋さん逝く ○沢村さんの一日 ○写真 ○沢村さん発病 ○沢村さんの死 ○散骨の日 ○あとがきにかえて

 沢村貞子さんのマネージャーであった山崎さんが、本人の死後、思い出しながらしたためた、女優沢村貞子と大橋の妻沢村貞子についてのエッセイ集です。簡潔な文章で、飾らず、ありのままを表現しようとする姿勢がよく分かります。

 弟が俳優加藤大介さんであることは有名です。兄は沢村国太郎という人でかっての大スターと知りました。その長男が俳優・長門裕之さんで次男が俳優・津川雅彦さんです。姉は矢島せい子さんという人でその夫は矢島祐利氏(理論物理学)、長男文夫氏(言語学)、次男敬ニ氏(数学)、三男敏彦氏(地質学)という学者一家だとあります。せい子さん本人もヘレンケラー賞を受賞したほどの活動家とのこと。

 「徹子の部屋」の黒柳徹子さんが著書に書いています。
「私はこの40年間、外国に行った時、必ず、2枚の絵葉書は、出した。どんなに苦労しても、出した。それが、母さんと兄ちゃんだった。」
 その母さんが沢村貞子さんのことで、兄ちゃんが渥美清さんのことだ、とあります。

 沢村貞子さんの随筆集として『老いの道づれ』があるとのこと。読んでみたくなりました。

推薦度★★★☆☆
 

28 骸の爪(むくろのつめ) 読了 2006/3/31

道尾秀介著 幻冬舎判 2006.3.25発行 390頁 1700円+税

 ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞して後、「向日葵の咲かない夏」に続く、受賞第二弾の書き下ろしサスペンス小説です。


 主人公は受賞作「背の眼」と同じホラー作家の道尾。彼の友人で霊現象探求所の真備、助手の凛と3人が共同して、難問の解決に当ります。

 今回の物語は、滋賀県の三重県に近い山中にある仏所・瑞祥房が舞台。取材に訪れた道尾は泊まった宿坊で異常な現象に遭遇する。千手観音が笑い、頭から血を流す仏像を見たのだった。そして、数日後には仏師の一人が忽然と姿を消す。道尾は真備と凛に相談を持ちかける。調査すると、この仏所では20年前、仏師2人が失踪する事件が起こっていることが判った。誰もが口を閉ざす20年前の事件とは、その真相とは、今回の事件との関係は。3人の謎解きの推理が始まるのだった。

 閉ざされた仏所で、仏像が語る殺人事件というテーマに挑んだ本著は、390頁の大部ながら、推理を幾重にも張り巡らして、可能性を多方面から検討する手法で、理詰めの論理で、真相に迫っています。論理性が全編を貫いて、超常現象に論理性を持ち込んでテーマに挑戦しています。

 なかなか重量感のある一編でした。


推薦度★★★★☆


27 女性映画がおもしろい(CinemaLibrary.Vol4) 読了 2003/3/24 

別冊女性情報 バド・ウィメンズ・オフィス 2006.1.31発行 127頁 1200円+税

○はじめに ○女性映画2005年ベスト5 ○05年公開の女性監督作品・外国映画 ○05年公開の女性監督作品・日本映画 ○05年公開の話題の男性監督作品

 目次のとおり、2005年度に日本公開された映画を女性監督作品という観点で総括した本です。

 この本によると、05年に日本で公開された
外国映画は366本うち女性監督作品は26本、同じく05年度に日本で公開された日本映画は292本で、うち14本が女性監督作品、とのこと。昨年、658本の映画が日本公開されたことになります。大変な数値です。このうち、何本鑑賞できたのでしょう。66本見ても10分の1に過ぎません。

 本の編集者5人が選んだ女性映画ベスト5を上げると、

●北の零年 ○二人日和 ○ラベンダーの咲く庭で ○理想の女 ○インハ・ジューズ ●ミリオン・ダラ・ベイビー ○自由恋愛 ●母のいる場所  ○Dearフランキー ○天空の草原のナンサ ○終わらない物語/アビヴァの場合 ○サラ、いつわりの祈り ○親切なクムジャさん ○MRMR.Sスミス ○ベアテの贈り物 ○山中常盤 ○サーティーン ○アメノナカノ青空

となっています。既に鑑賞したのは3本(●印)しかありません。

 今後この本に触発されて見てみたいと思った映画は
○二人日和 ○ラベンダーの咲く庭で ○インハ・ジューズ ○Dearフランキー ○MRMR.Sスミス ○ベアテの贈り物 ○アメノナカノ青空 の7本です。

 映画のあらすじと見所が解説されています。案内書として利用価値大です。

推薦度★★★☆☆
 


26 秘密 読了 2006/3/22 

東野圭吾著 文春文庫 2001.5.10発行 452頁 629円+税

 東野圭吾さんのミステリーを初めて読みました。手にしたのは「秘密」。本屋さんでの何気ない選択でした。読んでいて分かったのですが、解説に広末涼子さんが登場したりして、どうも映画化されたようです。

 妻の直子と小学5年生の長女藻奈美の3人暮らしの平介の身に突然襲いかかるスキーバス転落事故のニュース。妻と長女が乗車していたのだ。長女が助かり妻は死亡。のはずが、長女の様子がどうもおかしい。身体は長女のものだが魂は妻なのだ。そんなことがあっていいのか。平介は何を失い、何を失うことなく済んだことになるのか。混乱する平介。平介と藻奈美と直子の奇妙な生活が始まった‥‥。

 家庭生活を題材にして、身近ながら、斬新な発想によるミステリーです。平介の目から見た3人の家庭生活を描いていますが、読み手によって誰に共感するのか、ということが異なってくる気がします。特に、最後の直子の選択をめぐって、意見が分かれていいと思います。そういう構成になるように計算されています。

 長編でしたが、しっかり最後まで引っ張ってもらって読了しました。広末涼子主演の映画を一度観てみたくなりました。


推薦度★★★☆☆ 
 


25 博士の愛した数式 読了 2006/3/16 

小川洋子著 新潮文庫 H17.12.1発行 291頁 438円+税

 芥川賞作家小川洋子さんの小説。寺尾聰・深津絵里出演で映画化されて話題となりました(未見、いつか見たいと思っています)。原作を先に読んだことになります。


 私は家政婦。19歳で子どもが産まれシングルマザーで子育て中。今度派遣されたのは、離れに一人で住む数学の「博士」の家。立派な数学研究者だったが、交通事故に遇って脳の一部を損傷した結果、記憶が80分しか持たないという。80分のビデオテープが上書きされながら何回も回っていることになる。「あなたの靴のサイズは?」から始まる会話。数字にはめっぽう強くて、素数を尊敬している。子どもを連れて行くと大変に喜び、さっそくルートと命名された。10歳のルートは大の阪神ファンである。博士もそうだが江夏豊が特に好きだという。そうして3人の楽しいやりとりが始まった。

 数学に関する知識が沢山出てきます。220と284は友愛数。28は完全数。とか。作者がよほど数学が好きよく知っていないとここまでは論を張れないというような会話が出てきたりします。

 博士とルートと家政婦と、この奇妙な組み合わせが、数学と阪神タイガーズという二つの糸で絡み合って、博士のハンディに中断されながらも、楽しい会話が生まれています。暖かムードが残る楽しい小説でした。


推薦度★★★☆☆
 


24 さいえんす? 読了 2006/3/10

東野圭吾著 角川文庫 H17.12.25発行 186頁 400円+税

 作家・東野圭吾さんが「ダイヤモンドLOOP」と「本の旅人」に連載した文章が編集されたものです。全部で28のテーマについて思うところを語っています。最近連載されたこともあって、アットナウな話題が並んでいます。野球やオリンピックの話もあります。

 著者はいわゆる理系出身の作家という特質があると書いています。同じトリックでも科学的知見が余りにも劣っていると気になるといいます。その分大胆な発想が出来ない、と謙遜していますが。

 著者の意見の中で、本の出版を支えているのは誰か、という話はなるほどと思いました。図書館やブックオフを利用するのが「賢い生活術だ」と思っている人に警告しています。出版文化がやっていけるのは本屋で本を購入する人がいるからである。一人一人の購入が支える文化。図書館やブックオフばかりでは出版文化は死滅する。利用を否定しないが、購入も大事だということ。よく噛みしめてみたい指摘です。


推薦度★★★☆☆
 


23 往ったり来たり 読了 2006/3/7 

夏樹静子著 文芸春秋社 2003.4.25発行 222頁 1286円+税

○往ったり来たり ○人と書物と遊びと出会う ○あとがき

 ミステリー作家・夏樹静子氏のエッセイ集です。この本が3冊目のエッセイ集とあります。以前『椅子がこわい』というエッセイ集を読んだことがあります。日本の女性ミステリー作家の草分け的存在である夏樹さんですが、暫らく作品に出会うことがなかった彼女の沈黙=断筆の理由を知った次第です。ドライアイ・腰痛というどん底生活を3年以上も送ったとのこと。

 この本には、西日本新聞に3ヶ月間連載されたものや、ほんの旅人・読売新聞・文芸春秋などに寄稿した文が収録されています。

 作家のエッセイを読むことによって、作家がプライバシーをある程度さらけ出して内輪話を書いていることが多いため、より作家が人間臭く、身近に感じられるところに、魅力があると思う。夏樹静子さんが、囲碁に凝りゴルフに凝っていることが分かりました。ミステリーだけでなく、小説にも挑戦していることも分かりました。アメリカでの出版の事情や、それがヨーロッパにどう広がっていくかなど、興味深い話です。

 1970年代後半から80年代にかけて彼女の作品をよく読みました。そのころでは、松本清張・森村誠一・和久峻三・夏樹静子・山村美沙などの作品を特によく読んだ記憶があります。文庫本で新潮・角川で作家ごとに背表紙の色が決まっているので、本棚に同じ色が沢山並んだものです。

 今の読書傾向としてはノンフィクションが多くなっています。昔を思い出して、小説にも少しは挑戦してみようか。


推薦度★★★☆☆


22 高倉健 旅の途中で 読了 2006/3/2

高倉健著 新潮社 2002.5.30発行 233頁 1800円+税

○プロローグ北から届いた贈り物 ○1996 下田 ○1997 箱根 ○1998 高輪 ○1999 石垣島 ○2000 洛北 ○エピローグ 小さな港町

 公開中の話題作『単騎千里を走る』で注目されている高倉健さんのエッセイ集です。一冊目の『あなたに褒められたくて』(集英社)は日本文芸大賞エッセー賞を受賞しているとのこと。この本はニッポン放送で放送された同名のラジオ番組が元になっているとあります。

 高倉さんの文章は、くどくありません。エッセンスをさらりと語る重みがあります。40年以上俳優を続け、200本以上の映画に出演した日本を代表する俳優・高倉健の謙虚で一本気で純粋な心模様が染み出してくる本です。

 比叡山の大阿闍梨(だいあじゃり)酒井雄哉さんが高倉健さんを評している言葉が印象的です。
 「どんな仕事でも命を賭けてやってる。軽く流すことは絶対しない。すべて命懸けで、いつも刀の上をあるいているような、そんなお人やと思う。周りの現象に流されず、折り目正しく生きている。」「一日一生」。

 映画の思い出では、「君よ憤怒の河を渡れ」「八甲田山「南極物語」「鉄道員」「海峡」「網走番外地」などのことが出てきます。映画鑑賞としては、「運動靴と赤い金魚」「初恋の来た道」「L.Aコンフィデンシャル」などに触れています。

 1931年生まれで今年75歳になった俳優・高倉健さんの魅力は、やっぱり、せりふがなくてもモノが言える数少ない俳優であることです。文章の中にも、マーロン・ブランドやキム・ベイシンガーの演技を賞賛するところがありますが、その場面はセリフがありません。目の表情などで全てを語るということを求めていることがよく分かります。

 一日で一気に読むことができました。俳優高倉健をより理解する一助として、皆さんにもお勧めします。


推薦度★★★☆☆
 


21 季語の食 <秋> 読了 2006/2/28

佐川広治著 TBSブリタリカ 2002.7.29発行 127頁 2000円+税


 俳句の季語で秋に分類されている食に関することば−野菜・果物・穀物・魚・料理法などを集めている写真付きの句集です。
 写真が非常にいい。野菜や果物・穀物の表情をよく捉えています。野菜でいえば、小豆・サツマイモ・トウモロコシ・大豆・長いも・かぼちゃなど。果物では、栗・ぶどう・桃・アケビ・なし・リンゴ・柿・柚子・無花果など。いずれも、これらの言葉を季語とした有名な俳句が複数、紹介されています。

 ブログが横書きなので、俳句の情緒を伝える紹介が非常に難しい。

 例えば、
     今生のいまが倖せ衣被 (鈴木真砂女)
     芋の露連山影を正しうす (飯田蛇笏)

 どうも読みにくいですね。
 写真と俳句を楽しみました。

推薦度★★☆☆☆
 



20 畑の花を訪ねて 読了  
2006/2/24

岩村文雄写真・文 恒文社 2002.5.10発行 127頁 1900円+税

 畑に咲いている野菜・果物の花を50種類集めて、写真集にした本です。畑の花。身近な花ですが、食料というイメージが強いものであっても、その花は非常にきれいです。そのコレクション。

 50種類の花が、日本で最も群生している名産地を訪れて写真に収めてあります。

 非常に楽しい発想なので、我が家の菜園でも、2006年度、是非実行してみようと思います。我が家の菜園で実現しそうな花を並べると、

 ○ジャガイモ ○イチゴ ○チューリップ ○ナス ○トマト ○トウガラシ ○ネギ ○インゲン ○大根 ○アスパラガス ○トウモロコシ ○エンドウ ○ニンジン ○オクラ 

 これで14種類。残りは畑で見つけます。


推薦度 ★★☆☆☆

 

19 「行政」を変える! 読了 2006/2/23

 村尾信尚著 講談社現代新書1734 2004.8.20発行 230頁 700円+税
 著者の略歴 1955年岐阜県・高山生 一橋大卒 大蔵省入省 三重県総務部長(1995-1998)2003年  三重県知事選挙出馬・落選 その後関西学院大学教授

○はじめに ○別れ路 ○「「デーモン・ムラオ」と呼ばれて ○HWY NOT ○純粋無党派が挑んだ県知事選挙 ○「もうひとつの日本」をデザインする ○おわりに


 本書の中心は北川知事の下で三重県で行った「行政改革」とその後の三重県知事選挙出馬の顛末にあります。ニュージーランドを視察して「情報公開」と「説明責任」を学び、その後のイギリスとカナダも含めて「ニューパブリックマネジメント」と呼ばれる行政手法を学んで、三重県の行革に適用しようとしました。住民の満足度の向上を基本理念にして分権・自立、公開・参画、簡素・効率のキーワードに沿って行政システムを改革していく手法です。そして、三重県での具体事例が詳しく語られています。

 知事選挙出馬では、純粋無党派候補として政党・団体に一切依存しない闘いを展開したとあります。闘いの様子はHP上で綴っていたとする日記の一部が引用されながら、紹介されています。

 落選後、「行革仕事人」を自認して改革断行を売りにして自治体に売り込んで渡り歩こうと考えていたとあります。各地で「行革」の嵐が吹き荒れて、医療や教育や福祉が攻撃の的となっていますが、そうした「行革手法」の徹底が本当に住民に幸福をもたらすでしょうか。「独立行政法人」「市場化テスト」「事業民営化」などの手法を駆使して「公的関与」の縮小を行い、自治体を変貌させようとしています。私はそうした方向には賛成しません。

推薦度★★☆☆☆

 


18 半農半Xという生き方 実践編 読了 2006/2/17

塩見直紀著 ソニーマガジンス社 2006.1.20発行 189頁 1,400円+税


○半農半Xは何をめざしているか ○楽しく豊かに!半農力の育て方 ○私のエックス 使命多様性社会の追求 ○実例・人の数だけXがある ○夢の点検を、忘れていないか

 本のタイトルに引かれて読んだ本です。著者は京都府綾部市に在住で、「半農半X」の生活スタイルを推奨しています。Xは各人様々であってそれは自分で見つけよう。半農の農も、ベランダ菜園から畑・田圃までいろいろな段階があっていい。自分たちの食料とするためにモノをつくり育て収穫し料理するということの実践こそが大切なのだ、という主張です。

 私のサイトネーム「晴耕雨読」の由来も、野菜を自給自足して美味しい野菜を食べようという主張から命名したということもあり、めざすところが一緒ではないかな、と何だか身近な話として読みました。

 残りの半Xこそが本当は課題かも知れません。私の場合は今はいろいろあるので選択的です。勤めがあるため先ずは仕事、地域体育協会のお手伝い、映画鑑賞と読書、ソフトボールクラブとゴルフとジョギング、等。選択しながら、時々を過ごしている感じです。

 事実上、半農半Xをめざしている人は大変参考になる本です。


推薦度★★☆☆☆


17 村が消えた−平成大合併とは何だったのか− 読了 2006/2/15 

菅沼栄一郎著 祥伝社新書 2005.11.5発行 220頁 740円+税

著者の略歴 1955年東京生 朝日新聞政治部記者 現北海道報道部

○はじめに ○新しい市町村が生まれた ○合併狂騒列島 ○住民自治の芽生え ○村が消えた ○村はどこへ ○分権の潮流


 2005年3月をピークとする市町村合併の態様をいろいろな角度からルポルタージュしています。平成大合併は581件の合併話となりました。
 136人のマンモス市議会・上九一色村の分村合併・世田谷区の飛び地合併構想・山口村の越境合併・いなべ市の分庁舎方式・合併市長選挙の様相・上越市は過疎地?
 住民投票は4年間で418件。報酬なしの議員の実験・中学生も加わる住民投票・自治区の区長はミニ市長・地域審議会・町村総会・合併しない町矢祭町・日が揃わない統一地方選挙
 村が消えている。568から198へ。

 考えられるいろいろなパターンを追って多面的に町村合併を考えようという本です。新聞記者だけに典型事例を沢山紹介しています。時の人へのインタビューも興味深い内容です。野中広務自民党幹事長・梶原拓全国知事会長・松島泰早村村長・後藤田元副総理の4人。

 村への地方交付税を「都会の税金でメシ食って乞食同然」とは恐れ入った議論です。出産祝い金やUターン助成金、住宅新築補助金などに対して長野県の泰早村にはそうした非難の声が寄せられたそうです。村長は、村への税金の還流は都会の人が故郷へ仕送りしているのだ、と反論しています。こっちが説得力があると私は思います。村は交付税削減で締め上げられれば、兵糧攻めになるのは明らかです。憲法第94条の地方自治の本旨とは何か。国の強権はその精神に相反します。

 野中広務氏が都道府県を嫌うのは、京都時代に蜷川府政に対抗していた名残りかな。話に東条英機が出てくるのは信望しているから? 梶原氏が石原都知事を押す話は何だと思う。紳士ですよとか。これは水島弘子氏が分析する不安な時代のリーダー待望論に違いない。後藤田氏は明快。小泉改革は官と民の境界線をはっきりしないのが弱点と。国と地方との境界線も一緒の話。三位一体改革は先延ばしで結局平成18年度が正念場となる等。

 平成大合併の素描を知るのに適した本です。


推薦度★★☆☆☆


16 国会議員を精神分析する 読了 2006/2/14  

水島広子著 朝日新聞社 2003.5.25発行 174頁 1000円+税
著者の略歴 1968年東京都生まれ。慶応大学医学部客員講師(精神科医)。民主党・衆議院議員。

○プロローグ ○政治家は自己愛パーソナリティー ○政治家を出身から考える ○自己愛がなければ選挙に勝てない ○なぜ政治家は官僚の手玉に取られるか ○不安の時代に好まれる政治家像 ○どうすれば政治家をかえられるか ○あとがき

 著者は精神科医です。政治の世界に入って政治家を「自己愛パーソナリティー」という側面で分析しています。読んでいて楽しい本です。ただし、そんな傾向の政治家を選んでしまっていることについて、国民の反省が必要な気がします。
 特に最初の「自己愛性人格障害」の診断基準の9項目は参考になります(メモしなければ−下欄を参照)。
 精神医学は困っている人を助けるための学問で、間違っても人にレッテルを貼って好きなように解釈する道具ではない、と著者がいうように、本書では、傾向としての指摘であって、断定は避けています。それでも十分に説得力があります。

 二世議員の自己愛は純粋培養・タカ派は政局好き・市民派タイプ・不安な時代とリーダーシップ・変人小泉純一郎・辻本清美氏と鈴木宗夫氏・田中真紀子さんの人気の秘密などの内容が詰まっています。

自己愛性人格障害診断基準
@自分は重要な人間だという誇大な感覚を持っている。
A限りない成功や権力などの空想に浸っている。
B自分が「特別」であり、独特であり、特別な人たちにしか理解されないとか、特別な人たちと関係があるべきだと信じている。
C過剰な賞賛を求める。
D特権意識を持っている。自分は特別に有利な計らいを受けて当たり前だと思ったり、周りの人は自分の期待に従うのが当然だと思ったりしている。
E自分自身の目的を達成するために、他人を不当に利用する。
F他人への共感が欠けている。他人の気持ちや欲求に気づこうとしなかったり、認めようとしなかったりする。
G嫉妬ぶかい。また、他人が自分に嫉妬していると思い込む。
H横柄で放傲慢な振る舞いをしたり、気取った、尊大な、恩着せがましい態度をとったりする。

 以上の9項目のうち5項目を満たせば「自己愛性人格障害」(自己中心的に他人を振り回して自分または他人を苦しめるケース)だと診断されます。

推薦度★★★☆☆


15 黒板五郎の流儀 読了 2006/2/12 

倉本聰監修 潟Gフジー武蔵 2002.9.2発行 117頁 1143円+税

○プロローグ原点回帰 ○こんな場所に暮らしています ○拾ってきた家 ○石の家 ○丸太小屋 ○五郎さんちの暮らし ○男なら家の一軒もつくるんです ○「北の国から」スケッチ集 ○エピローグ倉本聰 黒板家へのまなざし

 北海道・富良野の麓郷に住んでいる黒板五郎さんの生活を紹介する本です。
 富良野へ帰って来た黒板五郎さんの長男純くんと蛍ちゃん。「蛇口をひねれば水が出てくるということ、コックを回せばガスの炎がつくということ、スイッチを押せば電気が明るく光るということ、そんな常識はことごとく打ち壊される。ここでは生活するために時間を使わなければなりません。」

 黒板五郎さんが作ったもの 丘ムロ 燻製器 木炭 木酢液 沢から引いた水道 風力発電 バター 丸太小屋 大豆 井戸 野天風呂 暖炉 石積みの家 揚水風車 ソバ 建築廃材の家 などなど。

 五郎さんが作った家の紹介 その一 拾ってきた家
 トラックのホイールを家の基礎に 電話ボックスで出窓を 車の窓で窓をつくる スキー場のゴンドラで天窓と玄関ドアを 屋根は草屋根に 古材を利用した柱・梁・家具・煙突 卵パックは断熱材に 空き瓶は明り取りに コルクでつくった床 

 その二 石の家 その三 丸太小屋 

 「どうしても欲しいモンがあったら自分で工夫して作っていくンです。」という五郎さんの作品の製作過程も含めてフンダンに写真を使って説明してくれています。もちろん田中邦衛さんも登場します。

 私の夢は自分の手で畑に「農小屋」を建てたいということです。そのときは五郎さんは師匠です。


推薦度★★★☆☆


14 しなやかにフェルマータ 読了 2006/2/9 

松野迅著 かもがわ出版社 2005年11月25日発行 251頁 1905円+税


著者の略歴 1960年大阪生。 8歳よりヴァイオリンを始める。京都市立芸術大学音楽学部卒業。ソリストとしてリサイタル等の演奏活動、講演、作曲家として作品発表。

○プロローグ ○アジアの瞳 ○贈られた一輪のバラ ○カザルスの選択 ○音楽家は過信する ○終章

 フェルマータとは、楽譜上に付けられる小休止マーク。月のようなマークで、俗称は蛙の目玉(妻の言)。著者の演奏活動そしてその合間に行動したり考えたりしたことを綴ったエッセイ集です。

 モーツアルトが35歳のうち10年を旅で過ごしたように、著者も演奏活動は常に旅の中にあります。ソウルのコンサートホール「芸術の夢殿」では 17歳のピアニスト、イ・ヒアと共演。両手合わせて4本の指と少しだけ伸びた足で演奏する彼女のお父さんは、ベトナム戦争に参加して枯葉剤をあびたという。

 タイ王国の「ハッピーホーム」でのチャリティコンサートではエイズ孤児52名が懸命に応えてくれる。台湾での骨髄バンク支援コンサート・地震被災者支援コンサートの質問コーナーは、やがて徴兵を迎える年齢の青年たちだった。

 香港の大劇院でのリサイタル。中国山東省ではピアノ100台の合奏。上海の国慶節記念行事。北京交通大学でのサーズ克服記念リサイタル。

 ヨーロッパのアジアといわれるハンガリーでの「ブダペストの春フェスティバル」。ポーランドの首都ワルシャワの街角にあるコルチャック先生の像(ワイダ監督の同名映画でおなじみの教師)。孤児院ナチュ・ドムでのコンサート(コルチャック先生らの創設)。旧ゲットーを訪ねる。映画「戦場のピアニスト」のピアニスト・シュピルマン。映画の原題は「死んだ街」。ナチスによって破壊し尽くされた街・ワルシャワの意味だ。「難病の子どもたちを支援するコンサート」はチェルノブイリが子どもたちを襲っている。等々。

 著者は、芸術家は暇があれば練習しなさい、という立場を取りません。社会人として発言することを大事にしています。例えば、各種コンクールについて、自らの商品価値を高めるために賞取りレースや名誉欲や地位の獲得に邁進している、と批判的です。また、楽器製作の街クレモナやバイオリンの名器ストラディヴァリウス秘話など話題も豊富な内容となっています。

 発言し行動する芸術家としての松野迅の音楽を聴くために、一度コンサートに足を運んでみたくなりました。


推薦度★★★★☆


13 アジアで女性として生きるということ 読了 2006/2/6

ビョン・ヨンジュ著 家族社 2003.10.20発行 234頁 1500円+税 副題−韓国女性映画監督 ビョン・ヨンジュの世界−


○ビョン・ヨンジュより日本のみなさんへ ○アジアで女性として生きるということ(@ビデオキッズと父 A心臓は弾丸にあこがれる B何!映画をつくるんだって C女性映画が何かって D新しい突破口 E日本で F監督という職業 Gアジアで女性としていくるということ1 H同 2 ○おわりに

 非常に刺激的な本です。著者は1985年に韓国の大学に入学しています。その頃光州事件(1980年)の資料を読むことは逮捕覚悟だったという。学生のデモで複数の死者が出ています。87年の大統領選挙に収斂していった闘い。ちょうど、1968年〜70年の日本の学生運動の高揚期を彷彿とさせる記述です。
 大学院に進むとき映画をやることに決めたと家族に報告する。しばらく韓国の独立映画集団に属して活動。日本に来て小山紳介監督(三里塚闘争3部作の監督)の影響を受けてドキュメンタリーをめざす。
 そして、日本軍「慰安婦」ハルモニを撮影した「アジアで女性として生きるということ」の3本の映画(「ナヌムの家」3部作)を作製する10年間が綴られています。ちょうど彼女の青春を打ち込んだ作品だと言うことがよく伝わって来ます。入れ込みが生半可ではないから、抜け出すのも大変だと思う。その意味で新しい『密愛』という劇場映画をつくった意義は大きいと思う。広島での講演録が収録されていて、「ナヌムの家」の映画を分かりやすく説明しています。

 ドキュメンタリー作家というのは、トコトン問題を煮詰めて、グッと自らの身体を寄せて考えるということがよく分かりました。半かの考えではとても駄目、表面をなぞるだけになってしまう、と言っています。

 韓国の新しい息吹としての女性映画監督(ドキュメンタリーは第一号)の半生記の本です。


推薦度 ★★★☆☆


12 ニューアグリビジネス 伊賀の里 ただいま大奮闘 読了 2006/2/1

金丸弘美著 NAP 2002.8.1発行 201頁 1500円+税


○まえがき ○「モクモク手づくりファーム」の原点 ○信頼のブランド確立まで ○活況呼び込む手づくりアイデア群 ○目に見えない工夫の数々 ○新しい農業ビジネスの夢 ○あとがき

 「伊賀の里モクモク手づくりファーム」は三重県の阿山町にあります(最近、伊賀市に合併)。1988年開業。現在、年間50万人の人が訪れ、売上げは25億円あります。2001年に温泉も湧きました。社員80名、パート100名。平均年齢27.5歳と若い。そのファームが出来るまでと、各パートを支える人の紹介、そしてファームの何が新鮮で何が新しいか、を丹念に取材して追い求めた本です。

 ファームにあるものはー。地場野菜花市場・農村料理の店・ホットドッグの店・焼肉専門館・コロッケの店・モクモクショップ・ぶたのテーマ館・バーベキュービアハウス・ミニブタハウス・小さなのんびり学習牧場・ウインナー専門館・生ハム専門館・フランクフルトの店・地ビール工房ブルワリー・麦芽工房・ヘルシージュースの店・手づくり体験教室・小麦館・ビアレストラン・野点モクモクの湯など。入場料400円。

 一度だけ、同じ阿山町にあるジャパンクラシックでゴルフをしたあと、訪れたことがあります。その時は無料ゾーンのみ見て回って、野菜の苗とクン炭を購入した覚えがあります。この本に紹介されているような、本格的な体験ゾーンやお店が奥に沢山あるとは分かりませんでした。

 産直にこだわって、豚や小麦や米や野菜や果物やと、地元の農業生産物からモノを生み出していくビジネス。ヒトが集まるということがすごい。なぜなら、どのヒトも体験し、モノを食べ、購入して、帰るから。

 我が家から車で一時間弱の距離です。今度、お風呂にゆっくり入って中を一周してきます。


推薦度 ★★☆☆☆


11 生協の白石さん 読了 2006/1/28 

白石昌則著 講談社 2005.11.2発行 149頁 952円+税


 東京農工大学の小金井キャンバスにある生協の〔ひとことカード〕(○○を置いて、○○はどうしたのなど、など、何でも結構です。アナタの声で生協は変ります)に寄せられたひとことと、その回答を掲示板に張ってお知らせする、生協の取り組みが、本になりました。ちょっと遅いのかも知れませんが、話題の本『生協の白石さん』を購入して一気に読みました。
 寄せられた「ひとこと」のうち、収録されているのはちょうど108(煩悩の数と一緒です)。丁寧に回答する白石さんの姿勢に仕事への情熱、誠実さ、ウィットを感じて、「癒される」「笑える」という感動を呼んでいるのだと思います。

 私は途中から、問題集として読んでみました。「ひとこと」だけを読んで、さて、何て答えようか。そして、白石さんの回答を読む。なるほど。「ひとこと」の中に東京農工大・学生の品性を感じるのは、白石さんと一緒です。しかし、答えもなかなかの品性と教養を感じます。
 
 短いことばに凝縮されるウィット精神は一番学びたいものです。

 私が選んだベストヒット賞


「ロックの三大要素をおしえて下さい。(200字以内で)」
          ↓
「焼酎・梅酒・ウイスキー 200字も使わず失礼致しました」

推薦度 ★★★★☆


10 市民がつくる大阪市政改革ビジョン 読了 2006/1/27 

市民がつくる大阪市政改革ビジョンチーム著 自治体研究社 2005.11.10発行 50頁 476円+税

○はじめに ○市民生活の未来がない市政改革マニフェスト ○将来を語らない経費削減計画 ○ムダ巨大開発事業破綻の責任は不問 ○職員を大幅に削減し自治体機能を空洞化 ○市民には自己責任とサービス削減を強制する ○永続可能な都市を描く市民版市政改革ビジョン


 11月に行われた大阪市長選挙。関前市長が掲げた「市政改革マニフェスト」の中身を分析・批判して、永続可能な都市を対置・展望しているブックレットです。

 巨大開発に使った公費には唖然とします。アジア太平洋トレードセンター・ワールドトレードセンター・湊町開発センター三社は借金返済不能になり、今後30年〜40年かけて再建するために、大阪市は、貸付金329億円債権放棄し、104億円の追加出資、補助金350億円支出。合計783億円。ケタ違いです。また、大阪市関連部局が入居しているためその家賃は総額1835億円というとてつもない金額です。また、クリスタ長堀が特別調定。新規に15 億円出資し、100億円以上の損失補償を行います。そうした巨大な損失を生み出した事業失敗の原因と責任の所在を全く明らかにしないのは無責任だと言う批判です。

 元々、1989年に発覚した公金詐取事件等の一大スキャンダルにまみれた大阪市政が、改革されるはずでしたが、未完のまま、現在に引き継がれたと指摘しています。

 分かりやすい言葉で書かれていて、特別の予備知識は要りません。

推薦度★★★☆☆


9 映画の歓び 読了 2006/1/26 

笠井嗣夫著 響文社 2005.10.15発行 219頁 1200円+税


 函館に住む詩人の本。途中から拾い読みになりました。
 「72年春、官憲とマスコミによってあくどく宣伝された凄惨なある事件によってしたたかに打ちのめされ、暗い自室の片隅に身を縮めてうずくまる以外に時をやり過ごすすべを知らなかった」という記述が気になりました。
 72年の春の事件とは、浅間山荘事件に象徴される連合赤軍の一連の破滅行動を指しています。作者は「私のような及び腰な判断をはるかに超えていた」と言っていますが、共鳴している部分があることを吐露しているように聞こえて、ちょっと違和感を感じました。
 取上げている監督は、鈴木清順 若松孝二 相米慎二 村川透 増村保造 田中登 塩田明彦 三隅研次 成瀬巳喜男 山中貞夫です。外国監督もあり。成瀬さんでは「乱れ雲」を取上げています。

推薦度★☆☆☆☆


8 押し付け市町村合併からの脱却 読了 2006/1/25 

奥谷和夫著 遊糸社ブックレット1 2004.8.5発行 77頁 800円+税
著者の略歴 1954年奈良県生 近大法学部卒 元大阪府職員 山添村村議3期

○はじめに ○推し進められる市町村合併 ○奈良県と山添3村の合併問題を検討する ○地方自治のあり方が問われている ○合併に伴う財政問題を考える ○合併の現実と農山村の果たす役割を考える ○合併問題で広がる住民のたたかい ○自律をめざす市町村の広がり ○終わりに 巻末まんが「市町村合併でどうなる村の未来」

 本書は、奈良県山添村の村議が、奈良市との吸収合併をめぐる奈良県の積極的な働きかけに、住民投票によって応え、「合併反対」が住民の多数意見となって、自律の村つくりを選択したという村一番の出来事の一切を報告しながら、住民の顔が見える村つくりを熱っぽく語っている本です。
 山添村は奈良県の東北部三重県との県境に位置し、人口約4900人、面積66平方kmの農山村。お茶と米が産物。鉄道や駅はなく、信号は村に一つ。
 合併問題で揺れたこの村の視点から、国を挙げての大きな制度改革の裏の部分、見えにくく深刻な問題点を明らかにしたいと筆者の弁です。
 奈良県発行のパンフレットが語る合併の必要性。@日常生活圏の広がり A行政ニーズの高度化・多様化 B地方分権の推進と自主的・主体的な地域づくり
 筆者の反論。@車やインターネットを使える人ばかりではない。コンピュータで老人介護ができるか。光ファイバーで職員を現場におくれますか。A 合併で少子化が解決できるか。若者の最大の職場の役所をなくす B地方分権いうなら合併の押し付けやめよ。小規模の方が地域づくりは可能。
 一人当たりの予算を比較することが大事。山添村70万円、奈良市309,000円。住民負担は、国保料 山添村63,108円/人 奈良市93,197円。介護保険料 山添村24,000円 奈良市37,400円。
 合併の現実を調査しています。農協の合併で山添村には69人の職員がいたが24人に減った。篠山市では、周辺部の旧町の職員はまるごと減っている。岐阜県山県市では、旧美山町は76人が6人の職員になった。「6人で何ができます?」。
 2003年8月に奈良県では初の住民投票の舞台となった山添村。投票率86.26%、合併協議する1,545票、合併協議しない1,963票。ここに至る村での取り組みの詳細が語られています。
 ざっと紹介してきましたが、村議が、全国的な視点で総務省の動きや財政問題の分析もしっかり行ったうえで、合併の必要性について生活のレベルで反論し、村での取り組みとして、学習会や講演会、住民組織の結成など、分かりやすく具体的に説明されています。筆者の足がしっかりと村の中に根付いていることを感じさせる筆致です。読んでいると、面識はありませんが、筆者の誠実な人柄がしのばれます。


推薦度★★★☆☆


7 スウイング・ガールズ(SWING GIRLS) 読了 2006/1/24 

学習研究社 2004.9.17発行 112頁 1143円+税


○贈る言葉 ○山河高校スウイングガールズ ○思い出アルバム ○プロローグ ○ストーリー ○キャストインタビュー ○ライブドキュメント ○ 谷啓のスウイングジャズ初級講座 ○スウイングガールズインタビュウー ○真島秀和のレッツ山形弁 ○ああ素晴らしき矢口ワールド ○撮影秘話 ○撮影日誌 ○寄せ書き


 映画『スウイングガールズ』を紹介した本です。トップ記事である監督矢口司靖(「ウオーターボーイズ」の監督)が出演者一人一人に贈った言葉が非常にいい。
 紹介されているエピソードの殆どは、楽器の名前も知らなかったオーディション合格者が、猛特訓の練習を経て、撮影中、生で演奏したということ。出演者の感想もそのことに必ず触れています。トランペットやトロンボーン、ベース、クラリネットをマスターして演奏会を開くところまで、映画の中でも、実際も、吹き替えなしでいくのですから、矢口監督の姿勢は断固としています。
 出演した本仮屋ユリカは「吹き替えじゃない!」と聞いて、真っ青になったと語っています。それがトランペットのソロまで行くのですから、出演者にとっては、忘れられない「青春の思い出」になったはずです。その辺がインタビューなどににじみ出ています。
 写真もふんだんにあって、若さがはじけています。映画もよかったが、出演者の成長が何よりよく分かる本です。


推薦度 ★★★☆☆


6 三位一体改革の核心  読了 2006/1/20 

高木健二著 公人社 2004年10月10日発行 99頁 1500円+税


目次 まえがき ○三位一体改革の道筋 ○「基本方針2002」 ○2003年度三位一体改革の検証 ○「基本方針2003」 ○2004年度三位一体改革の検証 ○今後の三位一体改革の展望 ○三位一体改革の核心とは? あとがき

 三位一体改革とは、2006年度までに、4兆円の国庫補助負担金を廃止し、地方へ税源委譲するとともに、地方交付税の改革も同時に進める、という政府の方針を表す言葉です。今後の地方財政と地方自治を大きく変えるものだけに、その内容は大いに関心があるところです。
 本著は、1年前までのデータをもとにして「三位一体改革」を論じているため、2003年度と2004年度の政府方針を論じて、2005年以降は展望となっています。(国の2006年度予算原案は固まっていますから、2004〜2006の改革のはずですから、よくは知りませんが、2006年度までの総括が今ならほぼ出来るはずと思いますが、そういった著書に未だめぐり合えません)。
 筆者は三位一体改革が地方財政に与える影響として次の5点を指摘しています。
@交付税の税源である所得税や消費税が税源委譲されるとその分の法定交付税総額が減少する。
A補助金が廃止された事業は、地方財政計画の単独事業費として計上され、税源委譲額は歳入に計上される。その収支バランスでマクロの財源保障が行われる。
B具体的には、地方単独事業費の必要な一般財源は交付税の基準財政需要額に参入され、地方税はその75%が基準財政収入額に算入される。その差でミクロの財源保障が行われる。
C税源が豊かな都市部の自治体と税源が貧困な地方の自治体の格差が生まれる。
D補助金の廃止は「政・官・業」の利権構造を打破するが、そのまま地方に移転する危険がある。
 このうち、2004年度の改革の中心の一つであった「保育所運営費の一般財源化」のところを取り上げて、以下のコラムにして、職場のニュースに載せました。

『保育所運営費の「超過負担」』
  保育所運営費が04年度に一般財源化されたことは皆さんご存じ?ですね。今は所得譲与税と地方交付税でカバーされています。この一般財源化に絡んで『保育の超過負担』問題に前進があったという話を聞きました。今日は難しいこの話題です▼地方財政計画で自治体に保障した公共事業費を実際には使っていないからその分を削減すると財務省が主張しました。対して総務省は一般行政経費はその逆で福祉や衛生はきちんと財源措置されていないと主張。その一つとして保育所運営費を上げました。その結果05年の地方財政計画では公立保育所運営費として今まで厚生省が認めなかった超過負担解消を理由に1750億円の増額が図られました▼分かりやすい単位費用(人口10万人の標準団体)でみると、586円上がっています。35万人に換算すると1億7580万円になります。他の条件が同じなら地方交付税がそれだけ増加したことになります。このことは超過負担を理由に民営化を提案する根拠が揺らいでいることを意味すると思います。もちろん超過負担の全てが解消できていないし、一般財源化は指定されないフリー財源ですから保育に回る保障はありません▼新しい事態に対応した運動が求められています(M)

推薦度 ★★★☆☆


5 『笑の大学』の創り方 読了  2006/1/18 (5冊目/50冊/年)

びあ梶@2004年10月30日発行 127頁 1300円+税


目次 ○キャスト ○映画の基本講座 ○監督・星護 ○原作/脚本・三谷幸喜


 この本によって映画『笑の大学』に関する多くのことを知りました。
 先ず、『笑の大学』の脚本は三谷幸喜の代表作とも言える脚本で、古典にすらなりつつあるということ。1994年にラジオ番組として初めて放送される(向坂‥三宅裕司 椿‥坂東八十助)。1994年より舞台で演じられた(向坂‥西村雅彦 椿‥近藤芳正)その数全国14箇所。1998年より再演される(向坂‥西村雅彦 椿‥近藤芳正)。1999年よりロシアの舞台でリメイク上演される。1999年落語(柳家さん生)そして、映画化(向坂‥役所広司 椿‥稲垣吾郎)。2006年にはイギリスで上演される予定あり。(将来的にはブロードウエイでの上演も夢ではない)
 監督星護と稲垣吾郎はこれまでもテレビドラマで組んできたこと。ソムリエ・犬神家の一族・八つ墓村など。椿役の稲垣吾郎には必然性があるということ。
 一般的に、舞台台本の映画化は至難の業ですが、舞台では表現できない浅草界隈・取調室の廊下を挿入することによって2人舞台以上の広がりが出て、映画化に成功したといえること。
 椿のモデルは菊谷栄という劇作家で、昭和の浅草喜劇の黄金期を築いたこと(エノケンを支えた)。
 三谷ワールドの魅力を縦横に紹介している、楽しい本です。


推薦度★★★★☆
 


4 旅のつづきは田舎暮らし 読了 2006/1/17

岡村健著 風土社 2005年6月15日発行 250頁 1470円+税


目次 ○60の手習い、農に挑戦 ○自然との楽しみ ○ブナをめぐって ○山村に吹く新風 ○環境を守る骨折り ○「地域」のある暮らし ○農の楽しみ、6年 ○カミさんの山里レシピ

 著者は元朝日新聞の記者で定年退職後、福島県の会津・田島町に移住。その後の6年間を本著にまとめたものです。時々の新聞に書いたものを編集したとありますから、足取りは各々の現在がかかれているようです。
 中でも「地域のある暮らし」の部分が好きです。学校の運動会や小正月の行事、町議会、スキー場など、地域があって自分がそこに深くかかわっていることが実感できる生き方・暮らし方が非常に好感が持てます。
 著者は農から出発してブナ林の保存や環境を守ることにもウイングを広げてより深く地域にかかわっていこうとしています。


推薦度 ★★★☆☆ 


3 シイタケのつくり方  読了 2006/1/12

森喜美男監修 日本きのこ研究所編 農文協 1992.1.25発行 144n 1600円+税


目次 @上手に発生させるための基礎知識 Aホダ木つくり B生シイタケ栽培 C乾シイタケ栽培と乾燥方法 D栽培の機械化 E菌床栽培 Fシイタケの上手な売り方 Gシイタケ栽培の経営 Hシイタケの栄養的価値と薬効

 シイタケ栽培に関するハウツーものです。シイタケを栽培して経営するために書かれた本ですが、趣味でシイタケを栽培して楽しむのにも十分に役に立ちます。
・ホダ木を伐採してから、1mのホダ木に切る間に1ヶ月の乾燥期間を置いた方が良いこと
・切った段階ですぐに菌を打ち込むこと
・直径(cm)×4個の菌を打ち込むのが標準であること(例、直径10cmだと40個)
・仮置きして、保湿して全体に菌を回すようにすること
などの新しい発見がありました。

 昨年12月にホダ木を切ってすぐに菌を打ち付けて今は仮置きしてあるのですが、しっかりと菌が回って、シイタケが生えてくれるでしょうか。やり方がルールどおりではなかったようですので、ちょっと、心配になりました。


2 古畑任三郎1 読了  2006/1/11  

三谷幸喜著 扶桑社文庫 1996年3月30日発行 228頁 485円+税

 正月にあった「古畑任三郎」3作、見られましたか。高い視聴率を獲得したようです。石坂浩二・イチロー・松島菜々子がゲストでした。確かに面白い番組でした。
 さて、人気シリーズ古畑任三郎の放映が始まったのが1994年。その時は「警部補古畑任三郎」のタイトルで12本、「古畑任三郎」で11本、スペシャル1本の計24本があるとのこと(1996年現在)。その中から10本を選んで、小説に書き直したのが本書です(そのうち5本収録)。あとがきによると、もう小説形式は出さないとのこと。理由はそんな暇があるなら、もっと脚本を書きたいと。ごもっとも。

 1 おめでとう、アリ先生(主演 小手川佑子) 精神科医笹川アリが元官舎田代をバットで殺害する
 2 6代目の犯罪(主演 堺正彦) 歌舞伎役者中村右近が警備員野崎を殺す
 3 幡随院大、走る(笑福亭鶴ベ瓶) 作家幡隋院が妻を殺害する
 4 黒田青年の憂鬱(石黒賢) 霊能力者黒田聖が行きがかりの青年を殺害する
 5 井口薫のレクイエム(木の実ナナ) ピアニスト井口薫が理事長河合を殺害する

 の5編です。
 いずれも、初期に放映されたものとのこと(未見ですが)。脚本形式ではなく、小説になっています。西村雅彦演じる今泉警部が全く出てこないのは、小説に書き直したから?
 文字として読んでも、古畑任三郎の動作や話しかけが見えるようで、非常に楽しいです。 


推薦度★★★☆☆


1 役者六十年 読了 2006/1/5 

小林桂樹著 中日新聞社 平成17年8月27日発行 205頁 1600円+税


目次 第一章 初めは兵隊役ばかり 第二章 映画全盛、数々の名作に 第三章「赤ひげ」で本格的にテレビ界へ 


 正月休みに読んだ本の一冊。俳優・小林桂樹さんが芸歴60年を振り返りながら時々の作品について語っている本です。私が先ず思い出すのが、最近では『母のいる場所』で馬渕晴子さんと共演して認知症を介護する父親役の姿。テレビドラマ『事件』の弁護士役も印象に残っています。
 正木ひろし弁護士に扮したことや、裸の大将の山下清役、赤ひげの医者役、東宝のサラリーマンシリーズのことなどが楽しく語られています。
 82歳の現役俳優の自叙伝として映画史・テレビドラマ史を読む思いで楽しく読みました。
 中日新聞に2003年6月から2004年7月まで連載された記事を編集したものという注がありました。

主な映画出演作(私選)
「めし」「ここに泉あり」「裸の大将」「名もなく貧しく美しく」「椿三十郎」「我一粒の麦なれど」「侍」「首」「軍閥」「赤ひげ」「日本沈没」「マルサの女」「あの、夏の日」など

推薦度★★★☆☆

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