一汁一菜の読書歳時記5  2005年1月〜

 読書歳時記の目次へ  メニューへ戻る

目次  
 読書歳時記1  2000年4月〜2001年3月へ(45冊)
 読書歳時記2  2001年4月〜2002年3月へ(41冊)
 読書歳時記3  2002年4月〜2003年12月へ(13冊)
 読書歳時記4  2004年1月〜2004年12月へ(27冊)


2005年1月山田洋次×藤沢周平  □コミュニケーション力   □文章教室   □最後の映画日記
       □背の眼  □農を以って自律をめざす町津南
    
2月 世界のテロリズム・マップ  □映画と私  □アイ・ラヴ・ピースへの道
       
映画の中の本屋と図書館  □憲法第九条、いまこそ旬
  
 3月 □世界の中心で、愛をさけぶ  千と千尋の謎  集中力
      
ゴルフライフ、極上の愉しみ
  
 4月 真実のゴルフ  定年になったら農業をやろう  新藤兼人・原爆を撮る
   5月 アフガン零年・虹と少女  ゴマメの歯ぎしり  木立のなかに引っ越しました
       デボラ・ウインガーを探して  里山
   6月 生かされている私  女が映画を作るとき  □編集者T君の謎  □キネマ旬砲
   7月 フフフの歩  週末だけのキッチンガーデン  菜園王
       コンピュータは名人を超えられるか  えせ田舎暮らし  背の眼  □女流棋士
       日活 多摩川編  
   8月 畑のある暮らし方入門  チョコレートな夜  □羽生善治・挑戦する勇気
      
日本映画に学ぶ教育・社会・いのち  私の田舎暮らし
      
坂田信弘のザ・ゴルフレッスン  ターニングポイント  いつか読書する日
      
映画道楽
   9月 「勝負脳」を鍛える  定年後の10万時間の里山暮らし  棋士  □念ずれば花ひらく
 
 10月  中坊公平・私の事件簿  豊郷小学校は今  冬のソナタから考える
      
憲法をかえて戦争へ行こうという世の中にしないための18人の発言
      
都会の百姓ですよろしく  「自分の木」の下で  野球型vsサッカー型
      
日本語を反省してみませんか
   11月 
将棋の風景  映画行脚  捨てる!技術  日本を創った12人(前編)
     
 □松のひとりごと
  
12月 向日葵の咲かない夏  無防備地域宣言を  働きすぎの時代
      
子どもたちの8月15日  三瓶明雄の知恵  大停電の夜に、東京で
      
日本サッカーがワールドカップで勝つ日  日本映画で地球を愛したい  勝負師
      
ドキュメンタリーの力
 



 


 

71 ドキュメンタリーの力  読了  

鎌仲ひとみ・金・聖雄・海南友子著 寺子屋新書 子どもの未来社 2005年3月30日発行 221頁 840円+税

鎌仲ひとみの略歴
 富山県生 早大卒 フリー映像作家 東京工科大学助教授 『ヒバクシャー世界の終わりに』(2003年 16ミリ カラー 116分)は地球環境映像祭アース・ビジョン大賞等受賞。

金聖雄(キム・ソンウン)の略歴
 1963年大阪生 93年よりフリーの演出家に 『ムーダンー受け継がれる在日の民族文化』『シリーズ 人権てなあに』『花はんめ』(2004年 16ミリ カラー 100分)は阿倍野ヒューマンドキュメンタリー映画祭招待作品。

海南友子(かな・ともこ)の略歴 
1971年生 NHK報道ディレクター 2000年独立 『マルディエム、彼女の人生におきたこと』『にがい涙の大地から』(2004年 ビデオ カラー 87分)は平和・協働ジャーナリスト基金奨励賞受賞。

 紹介したように、いずれもジャーナリスト・映像作家で、鋭い問題意識を映像で表現するために、カメラ片手に或いは少人数のスタッフとともに、世界を駆け巡っています。本書は、各々の作品が生まれるまでの経過を文章で追っています。迫力があって臨場感があって、映像に劣らず文章の力も相当なものです。
 鎌仲さんは、原子力被害をヒロシマ(投下)・アメリカ(開発)、イラク(劣化ウラン)という現代的問いとして映像化しています。金さんは、川崎市の在日1世の今を暖かい眼差しで追っています。海南さんは、旧日本軍の廃棄爆弾の被害を追っています。

 そして、束縛されないで自主制作する映像作家は、日本のマスメディアに対する批判精神が鋭く光っています。湾岸戦争やイラク戦争をどう報じたか。イラク国民の真実に迫っているのか。アメリカのプロパガンダを繰り返しているのか。

 3本のドキュメンタリー映画はいずれも未見です。見てみたくなりました。


推薦度★★★★☆


70 勝負師 読了  2005年12月21日(水) (71冊目/50冊/年)

内藤國雄・米長邦雄対談集 朝日新聞社 2004年8月25日発行 225頁 1200円+税


目次
 ○ふたりのクニオ ○師匠として、弟子として ○愛すべき棋士たち ○棋界あれこれ ○同じ空気を持つ者たち ○勝負師の引退 

 ふたりのクニオ(内藤・米長)の対談集です。両者は関西・関東出身で、両極端な性格・生き方をしているようで、またよくウマがあって、共同して日本将棋連盟会を引っ張ってきた仲でもあります。3回の対談を本にまとめた、とありますが、冗談も沢山入っていて、大変楽しく読めます。
 「兄たちは頭が悪いので東大へ行った」という米長語録は有名です。50歳で名人位を取得したこともすごい。米長さわやか流だが、将棋は泥沼流、と内藤さんが評しても意に介さない。
 一方の内藤さんは「おゆき」という歌を出して一見派手な性格に見えますが、至って真面目で控えめ。詰将棋の世界で「ベンハー」というあの映画をイメージした作品を40年かかって作り上げたというエピソードも紹介されています。
 ふたりの話の中で、升田・大山・木村・関根・坂田といった先輩棋士のエピソートが沢山紹介されています。先崎など今の若い棋士からは聞けない内容で、大変興味深く読みました。


推薦度★★★☆☆ 


69 日本映画で地球を愛したい 読了  

千葉茂樹著 パピルスあい 2004年3月20日発行 273頁 1,800円+税


著者の略歴
 1933年福島県生 1956年近代映画協会へ入る 新藤兼人・吉村公三郎監督に師事 「一粒の麦」「孤島の太陽」「こころの山脈」「モスクワわが愛」「ゼノ 限りなき愛」の脚本を手がける その後ドキュメンタリーの監督に 「愛の養子たち」「マザー・テレサとその世界」「平和の巡礼者」「アウシュビッツ・愛の奇跡」「豪日に架ける 愛の鉄道」などの作品を監督する 

 千葉監督が歩んできた道と作品をトータルに紹介している千葉全集といえます。
 目次を紹介すると、
1映画監督への手紙 2こころの軌跡 3映画で地球を描きたい 4愛のシアター 5新藤兼人に学ぶ映画人生 6映像教育学の提案 です。
 そのうち、4の愛のシアターには「マザー・テレサとその世界」「豪日に架ける 愛の鉄道」のシナリオとこの2本ドキュメンタリーについての講演記録が各々収録されています。従って、2本のドキュメンタリー映像が示しているだろう内容が非常によく伝わってきます。見てみたくなりました。
 千葉さんはドキュメンタリー監督であるという紹介がぴったりしているようです。
 それに、経歴にあるように、近代映画協会というアメリカでいえばインディーズと呼ばれる、メジャーではない映画会社で、新藤兼人監督とともに、常に資金に苦しみながら、作りたい映画を作ってきたという苦労と誇りがあふれています。
 新藤兼人監督が90歳になっても映画を撮っているように、千葉監督にも何時までも頑張ってほしい、と思いました。 


推薦度★★★☆☆


68 日本サッカーがワールドカップで勝つ日 読了

山本昌邦他 国士舘大学スポーツシステム講座5 2004年3月20日発行 950円+税


 何とも刺激的なタイトルの本です。国士舘大学が企画した講演とシンポジウムをまとめた記録集です。
 先ず、山本昌邦(国士舘大学OBでオリンピック代表監督)さんの講演から。
 日本サッカーの実力
○ベスト16では満足できない ○ワールドカップに出場する32カ国は予選2800もの試合を経て選ばれている ○日本代表は急に強くなったわけではなく若年層からの強化の賜物 ○栄光をつかむまでの過程が大事 ○文化的な財産としても大きな意義があったワールドカップ
 世界との差を詰めるために
○世界基準のプレーとは ○ワールドカップを経験して逞しくなったU−21世代の選手たち ○プロサッカー選手にとって食事も休養をとることも仕事の一部 ○オフ・ザ・ボールの動きの質がいい中山雅史 ○判断スピードを上げていく ○攻守の切り替えの10秒の質 ○ゴールは2タッチ以内で ○ダイレクトプレーの意識を高めること ○普段から世界基準のゲームの中で生きるプレーを学ぶ
 指導者の指導能力とは
 夢は世界の頂点に
 関心のある方は本を手にとって読んでほしい本です。私はサッカー観戦の参考にするために読みました。
 昨夜行われた、クラブ世界選手権の準決勝 サンパウロ(ブラジル)対アルイテハド(サウジアラビア)は、本当に質の高いゲームでした。日本のクラブチームがアジア代表としてあのピッチに立つには、まだちょっと距離がある感じがしました。
 それも、山本氏は克服できると。楽しい話です。


推薦度★★★☆☆


67 大停電の夜に、東京で  読了 

李冬冬=安部力著 角川書店 平成17年11月4日発行 1600円+税


 映画「大停電の夜に」に出演している俳優安部力さんの写真集。映画の中の李冬冬は彼の中国での本名です。中国・黒龍江省生まれ(中国と日本人のクオーター)、9歳で日本へ移住。高校まで日本で過ごす。18歳で北京へ行き映画の研修をする。その後台湾へ行く。台湾映画に出演。日本では、この10月からのテレビドラマ「花より男子」に出演中、とあります。
 本人が撮ったデジカメ写真もあって、日常生活なんかも垣間見られます。
 映画は未見ですが、見たい映画の中の一本です。 


推薦度★★☆☆☆


66 三瓶明雄の知恵(DASH村からワシが伝えたかったこと) 読了 

三瓶(さんぺい)明雄・大田空真著 日本テレビ 2004年9月1日発行 211頁 952円+税


 日本テレビで放送していた「ザ!鉄腕!DASH!!」で、DASH村を作るために指導した地元の農民である三瓶明雄さんに2年間密着取材して書かれたのが本書です。
 私の読後感想としては、久しぶりに、この人こそすごい!と思える人物の紹介で、こういう人の暮らしこそ素晴らしいものと、感激しながら読了しました。

 三瓶さんの両親は、開拓民で、とてつもない苦労を重ねた人達です。東北の山深い原生林を切り開いて、20年かけて、家と畑と田んぼの四町歩を開拓したのですから。

 跡を継いだ明雄さんが語る言葉は、農民なら誰でも知っていることだと、謙遜していますが、田舎に暮らすノウハウをさも簡単なことのように、率直に語ってくれています。特に、何々の作り方といった話が興味深深です。

 例えば、畑をつくる・野菜をつくる・家畜と暮らす・味噌つくり・イナゴ料理・漬物を漬ける・炭焼き窯をつくる・かまどをつくる・わらじを編む・五右衛門風呂などなど、どれも興味深いことばかり。メモをとりながら読みました。

 田舎暮らしを夢見ている人が、この本をしっかり読んで自然の厳しさと楽しさを学び取ってほしい、と言っているようです。農業方面での私の推薦図書の一冊になりました。


推薦度★★★★☆


65 子どもたちの8月15日 読了 

岩波新書編集部編 岩波新書 2005年7月20日発行 221頁 700円+税


 1945年8月15日現在で4歳〜12歳だった各界の33名の方が執筆しています。内容から、食こそすべて・疎開生活から・奪われたいのち・玉音放送の日・異国の国で・アメリカがやってきた、の六部に分けて編集されています。
 33人は各界で活躍しておられる方ばかりです。敗戦の時点でどう感じたかをしっかり語っています。
 印象に残った文章は、四万温泉疎開と男の先生(小玉清さん)。兄の残してくれたもの(湯川れい子さん)。落ちた偶像−お父さんの話(下重暁子さん)、などでした。皆さん、自分のタッチで語っておられます。

推薦度 ★★☆☆☆ 


64 働きすぎの時代 読了 

森岡孝ニ著 岩波新書 2005年8月19日発行

 この本についてコラムを書きました。

 ここ二〇年世界は時短から働きすぎにベクトルが向いているという問題意識から、人間的発達の原点にかえり労働時間のあり方を考えようという本が出版されています。『働きすぎの時代』(森岡孝二著 岩波新書)。要点を紹介します▼働きずぎは現代資本主義特有の問題だとして四つのキーワードを提起します。その一、グローバル資本主義。経済のグローバル化と中国・アジアの工業化などによって世界的に資本間競争が激化して労働時間を圧迫していること。その二、情報資本主義。情報通信技術の飛躍的発展が時間ベースの競争を強め仕事のスピードを高め仕事量を増やしていること。その三、消費資本主義。二四時間稼動の大衆消費社会という消費様式が雇用の不安定化と過重労働を誘発していること。その四、フリーター資本主義。労働法制の規制緩和と労働市場の流動化によって、雇用形態の多様化不安定化が進み、非正規労働者が基幹労働力になるまで増大した結果、止めどもなく働く労働者と働きたくても細切れにしか働けないを作り出していること▼総じて労働時間の標準化によって時短が進行した時代から、今は非標準化によって働きすぎの時代になっているのです▼我が子の現状を見るにつけ実感しています。

推薦度 ★★★★☆


63 戦争をなくす!無防備地域宣言を 読了

無防備地域宣言運動全国ネット編 耕文社 2005年1月20日発行 700円+税


目次 1地域から戦争をなくす無防備地域宣言運動 2市民の手で「無防備宣言条例」を作ろう! 3枚方市が残した成果 あなたの町へ おわりに

 高槻市の12月議会で「無防備地域宣言」条例制定の直接請求が審議されるとこうことで、この条例はどんな内容でどんな背景があって何を実現しようとしているか知りたくて読みました。
 
☆過去に直接請求が取り組まれた都市‥‥大阪市(2004年5月)、枚方市(2004年11月)、東京都荒川区(2005年1月)、藤沢市(2005年1月)。
 
☆条例制定の根拠‥‥ジュネーブ条約(1949年)第一追加議定書(1977年)第59条にある「無防備地域」という規定。(第1項 紛争当事国が無防備地域を攻撃することは、手段のいかんを問わず、禁止する。 第2項 紛争当事国の適当な当局が、所管する地域を無防備地域と宣言するための4条件‥)。
 
☆大阪市長の意見書‥‥@大阪市は平成7年に平和年宣言を採択して既に平和に向けた姿勢を明らかにし、平和記念物の保存展示や軍縮会議の招致等実施しているので、改めて条例化する必要はない。A無防備地域宣言は国の見解により防衛に関して地方公共団体がおこなうことができないとされており、地方自治法にも抵触する。2点で反対の立場。
 
☆枚方市長の意見書‥‥@国は、無防備地域の宣言主体を国のみという見解を出しているA自治体の事務とは考えられないかもしれない。B国際法の条約に基づく条例は問題があるかもしれない。条例化は無理といわざるをえない。
 
 
私見‥‥「条例」としての難しさがある。@地方自治体が平和政策をいかに追求していくかという場合に、有事の際の自治体のあり方を想定していくのは非常に難しい課題。「無防備地域宣言」だけては到底終わらないし、そもそもそうした有事に自治体が機能するものなのかも不明。A国際条約が国家で批准されているもとで、自治体が条例に基づいて条約の内容を地域に適用できるのか。国家で宣言するように求める運動だと良く分かる。B高槻市という市域を紛争当事国が正しく認識するのは実務的には非常に困難と思う。実効性という点ではどちらかというと市民の考え方の変更を迫る運動としての側面が中心では。

 難しい話です。市議会の議論を注視したいと思います。
 


62 向日葵の咲かない夏 読了 

道尾秀介著 新潮社 2005年11月20日発売 280頁 1600円+税

 さっそく、読了しました。ジャンルがサスペンスの場合、中身のネタをばらしてはいけないという制約があるため、触れることは難しいのですが、とにかく、読ませる物語であることは確かです。 主人公が小学校4年生で、クラスメートと学校の先生と近所のおじいさんと妹が登場人物。身近な関係の中に、普通では思いつかないテーマが発掘され、独特の展開の仕方で、事件を追って物語が展開していきます。
 どうなることかと思いながら、内容に引かれて、ツイツイ、時間を忘れて読んでしました。

 私事ですが、甥(配偶者の兄の次男)の作品です。このブログを読んでいただいた方で、興味のある方は、是非とも一読してやってください。

推薦度 ★★★★☆ 


61 松のひとりごと 読了

松たか子著 朝日新聞社 2003年11月30日発行 199頁 1400円+税


 舞台俳優・女優の松たか子さんが書いた本です。『パーソン』という雑誌に「松のひとりごと」と題して連載された文章に加筆・訂正したものとあります。
 本書の特徴は松たか子さんの「趣味」である「写真」がふんだんに挿入されていること。子どもたち・風景・有名人・舞台練習などの場面が彼女のカメラによって切り取られ、散りばめられています。写真を鑑賞するだけでも十分に楽しい本です。
 文章は松たか子さんの「心のつぶやき」のような、思うこと・感じることがひとり言のように綴られています。
 特に、舞台女優として、舞台の稽古や本番に立った時の気持ちなどが率直に語られていて、より近くに彼女を感じることができて、好印象です。


推薦度 ★★★☆☆ 



60 日本を創った12人(前編) 読了


堺屋太一著 PHP新書 1996年11月5日発行 204頁 600円+税


 前編で取り上げられているのは武家政治の成立まで。聖徳太子・光源氏・源頼朝・織田信長・石田三成・徳川家康の6人。
 日本の独自性はいかに創り上げられたかという「堺屋」流の選択の基準で選ばれた6人ですが、戦国武将が3人なのが特徴です。
 先ず、聖徳太子は神と仏と儒教とを習合させる思想を発案した人、即ち、宗教の習合によって日本において宗教戦争といわれる争いがなくなった功績は聖徳太子の考えに由来するとしています。
 光源氏は、上品な政治家、即ち「人格満点、能力零点」の政治家の典型として、無責任集団主義を生み出したとしています。もちろん、実在の人物ではありませんが、平安時代には間違いなく彼のような貴族がいたという象徴として。
 次に源頼朝。彼は二重権限構造を発明したと。即ち、貴族を中心とする律令制度と並んでそれを否定するすることなく並列で武家政治を開いたところに功績があるとしています。
 織田信長・石田三成・徳川家康の3名はどこでもよく取り上げられています。信長については、兵農分離によって「お金」で雇う職業兵士を雇用したところに功績を、三成には関が原の合戦という日本型プロジェクトを創造した功績を、家康にはお上意識・辛抱と律儀の哲学など安定志向をつくった功績を、それぞれ指摘しています。
 堺屋流の評価があって、現代日本の官僚機構との対比に重点があることが特徴となっています。面白く読めます。

推薦度 ★★☆☆☆


59 「捨てる!」技術 読了

辰巳渚著 宝島社新書 2000年4月24日発行 222頁 680円+税


著者の略歴 1965年福井生まれ マーケティング雑誌記者を経てプランナーとして独立。家庭・主婦・子ども・団塊世代・団塊ジュニアに関心あり。
主な内容 捨てるための考え方 @とりあえずは禁句 A仮には駄目 Bいつかはない C私のじゃま D聖域なし Eどんどん使う F整理法は解決しない Gこれは捨てられると考える Hしまったを恐れない I完璧なし
捨てるテクニック @見ないで捨てる Aその場で捨てる B一定量を超えたら捨てる C一定期間を過ぎたら捨てる D定期的に捨てる E使い切らなくても捨てる F捨てる基準を決める G捨て場所は沢山つくる H小さなところから始める


 モノは整理するのではなく捨ててこそ、空間が出来て、広々として、すっきりして、欲しいものが分かって、快適になる、という発想に立とうという本です。
 この考え方には賛成です。ともすれば整理法が頭にあって何か将来のために保存しておくのが「美徳」になっていた気がしますが、残っているものの殆どは「私にとっての宝は他人のゴミ」と言われる類のモノではないか、と思う。特に、雑誌や本や資料は保存してあっても、ある期間見ないものは、多分永遠に見ないで終わるのに、保存しているということです。
 ここで、整理するのではなく、捨てることによって空間を確保しようという考え方を採用しようということです。
 とりあえず、自分の書斎から、本と雑誌と資料から、実践してみます。


推薦度 ★★★☆☆


58 映画行脚 読了 

池波正太郎・淀川長治著 河出書房新社 2004年5月10日発行 272頁 1600円+税

 話題がフェリーニの『アマルコルド』であったりちょっと昔の感じがありますが、チャップリンの『キッド』の話はとても新鮮で古さは感じません。とにかく、連載小説を何本も手がけながら月に15本〜20本は映画館で映画を鑑賞するという映画通の池波正太郎氏。淀川氏から出る固有名詞の多さと正確さにはびっくりします。年齢のこともありますから、調査しているとはいえ、破格ものです。話ながら、そうして映画を楽しんでいる雰囲気がよく出ています。

推薦度 ★★★☆☆


57 随筆選集ー将棋の風景 読了 

越智信義編 毎日コミュニケーションズ 2002年3月20日発行 239頁 2000円+税

 集められているのは明治・大正・昭和・平成にわたる将棋についての随筆28作品です。棋士・記者・作家・愛好家たちによって書かれた文章が集められています。幅が広い。
 将棋には、@指すことだけでなく、A観戦−観る B詰将棋創作や駒作りー創る C歴史や逸話の探求ー調べる D新聞将棋や棋書−読む E友と将棋を語る F棋譜文献・盤駒色紙ー集める という7つの楽しみがあると編者はいいます。
 28人の名前のうち知っているのは、西村一義・淡路仁茂・真部一男・青野照市・森信雄・日色ともえ・斉藤栄くらいです。棋士だけでなく、観戦記者や作家やカメラマンなどが書いた文章を読むと、観点が違うところが新鮮で、時代の流れの中で、将棋世界の趨勢が伝わってきます。木村・舛田両名人の奥さんの文もありました。


推薦度 ★★★☆☆

 


56 日本語を反省してみませんか 読了 

金田一春彦著 角川ONEテーマ21 2002年1月10日発行 241頁 571円+税


 金田一春彦氏は大正2年生まれ。91歳。日本語研究の第一人者と言ってよい。辞典の編集で有名な人です。いままでに書いてきて文を加筆訂正して本書が出来上がったとありますが、引用されている例文の話題の多さには驚きます。日本の古典から西洋・東洋の著作や言葉まで、本の中のある場面で登場人物が言った言葉に注目したり、言い回しに注目したり、観察が実に細かい。メモで残しているのだろうか、カード式だろうか、などと考えてしまいます。
 どの文章も味わいがありますから、なるほど、これが日本語の特質というものか、と感心しながら読み進めることができます。
 日本語を見直そうという動きがある中、この本は大いに応えてくれます。


推薦度 ★★★☆☆


55 野球型vsサッカー型 読了

林信吾・葛岡智恭著 平凡社新書 2004年2月18日発行 184頁 680円+税

目次 企業スポーツと地域スポーツ スポーツ世界地図 野球とサッカーここが違う スラッガーとストライカー 球団型からクラブ型へ スポーツ文化はこうして根づく あとがき

 なかなか面白いテーマです。野球に象徴される企業型のスポーツとサッカーに象徴される地域型スポーツのどちらに未来があるか、というものです。
 著者の答えは、地域密着型こそ未来のスポーツ文化のあり方だ、と説いています。
 昨年から今年に繰り広げられたプロ野球の近鉄解体・楽天誕生のいきさつなんかを見ていると、確かに見るスポーツとしてのプロ野球に未来は無いなと思ってしまう部分もあると思う。
一方のJリーグはJ2とその下ができて益々活気が出てきています。
 どのスポーツを愛するかのレベルでは個人の問題ですが、総体としてのひいきのスポーツの未来の問題となると、個人の好き嫌いを超えて、しっかり見すえないといけない問題だと思う。
 私も著者の考えに賛成です。プレイする立場で考えると個人的には野球が好きですが、裾野を見ても、野球に子供たちが魅力を感じなくなってきているのは確かです。
 友人たちと議論するのにいいテーマを提供してくれています。

推薦度 ★★☆☆☆


54 「自分の木」の下で 読了 

大江健三郎著 大江ゆかり画 朝日新聞社 2001年7月1日発行 193頁 1200円+税

もくじ なぜ子供は学校に行かねばならないのか どうしていきてきたのですか? 森でアザラシと暮らす子供 どんな人になりたかったか? 「言葉」を書き写す 子供の戦い方 シンガポールのゴムマリ ある中学校での授業 私の勉強のやり方 人の流れる日 タンクローの頭の爆弾 本を読む木の家 「うわさ」への提供力 百年の子供 取り返しのつかないことは(子供には)ない 「ある時間、待ってみてください」

 以上16編が収録されています。「週間朝日」に2000年10月〜2001年2月まで連載されたものとあります。
 読んで分かったのですが、大江健三郎さんは「言葉」を大変大事に使う人です。作家で小説を書くのが仕事だから、その表現方法として「言葉」を大切にするのは当たり前の話、と言われればそうかもしれませんが、それでもどこか違います。
 「言葉」というものを、言い回しも含めて、自分の思いの表現が正確であるように、またそれが相手に正確に伝わるように、細心の注意を払って、言葉を選びながら、丁寧に綴ってあります。
 大江さんの文章は難しいとよく言われますが、この本は、対象を小学校高学年くらいにして、彼らに語りかけるように、平易な言葉を選んで、書いてあります。
 大江さんは、子供の頃から、本を読んで、自分の気に入った一節があると、紙に正確に書き写す習慣を身に着けたとあります。そして、それを正確に覚えたと。大江流勉強法です。
 本の中に散りばめられている大江ゆかりさんの絵が非常に素敵です。話の中に息子の光さんも出てきます。家族みんなの本です。
 久しぶりに、落ち着いた含蓄のある本に出会いました。


推薦度★★★★☆


53 都会の百姓です。よろしく 読了

白石好高著 コモンズ 2001年7月10日発行 217頁 1700円+税

もくじ ボクが都会で百姓を選んだわけ 年だから農業 農の宣伝パーソン走る 農家が経営し市民が学ぶ農園 農が育てる子どもたち 癒しの農園 21世紀は都市農業の時代 家族 あとがき

著者の略歴 1954年東京練馬区生 1977年東京農業大学卒業 1992年全国農協青年組織協議会委員長 1997年体験農園「大泉風のがっこう」始める

 白石さんは都会で生まれたからこそ農業で生きる、という身上のもと、地元に産地直売の「ファーマーズショップ・こぐれ村」を開いたこと、農協青年の全国組織の責任者をやったこと、都会の子どもたちや市民との交流のために市民農園を開いたこと、の3つの大きなテーマで話が進んでいます。
 市民農園で、市民に作り方を教えながら共に交流する姿が印象に残りました。土との触れ合いが人の心を癒すというフレーズは説得力があります。学校の子どもたちに体験農業を経験させる取組みでは、子どもたちが大変生き生きしているのが伝わってきます。


推薦度★★★☆☆


52 憲法を変えて戦争へ行こうという世の中にしないための18人の発言 読了

井筒和幸他 岩波ブックレット657 2005年8月2日発行 62頁 476円+税

中村哲 美輪明宏 香山リカ 吉永小百合 妾尚中 松本佑子 井筒和幸 辛酸なめ子 ピーコ 猿谷要 井上ひさし 半藤一利 森永卓郎 渡辺えり子 黒柳徹子 品川正治 の各氏の発言集


 16名の有名人が、いずれも自らの言葉で、憲法九条の改悪に反対するメッセージを発言しています。納得しながら読みました。「軍隊をもつとはっきり書くこと」に私も反対です。


推薦度 ★★★★☆


51 冬のソナタから考える−私たちと韓国のあいだ 読了 

高野悦子・山登義明著 岩波ブックレット634 2004年9月7日発行 69頁 480円+税

目次 「冬のソナタ」特番の現場から見えたもの(山登義明)「冬のソナタ」そして私と韓国(高野悦子)

 NHKのプロデューサーと岩波ホール総支配人による「冬のソナタ」論です。
 私は未見ですので、評論の資格はありませんが、2003年4月のNHK衛星第二で放送されて以来一大ブームとなり、そのあと2004年4月にはNHK総合で再放送されて、日本中に炎が燃え上がった様子が、NHKの特番番組を制作した立場から報告されています。
 日本人が忘れていたもの、純粋な気持ち、一途な気持ち、初恋、を物語を見ながら再現することで、もう一度人生を追体験していく視聴者のありようがブームの根底にあると指摘してあります。我が家では、配偶者が「GAO」で見ているようです。
 全20話あって、ジェットコースター的に物語が展開していくということです。いつか機会があったら、見てみたいものです。
 高野さんは「フィリップ様・雷様・ヨン様」といい、韓国舞踊を踊る韓国の理解者です。岩波ホールで韓国の映画の普及にも力を尽くしたとのこと。「おばあちゃんの家」「達磨はなぜ東へ行ったのか」「酔画仙」などです。
 私は、韓国映画では「シュリ」しか見た記憶がありません。食わず嫌いだと思います。これからいろいろ挑戦していきます。

推薦度 ★★☆☆☆


50 豊郷小学校は今−校舎保存にかける住民の願い− 読了

本田清春・古川博康著 サンライズ出版 2003年2月20日発行 216頁 1200円+税


もくじ 「壊す文化」の再考を 白亜の殿堂「豊郷小学校」 豊郷小学校の文化財としての評価 地域の誇り豊郷小学校 新築を進める町長の計画 校舎建設の理念を忘れた豊郷町 立ち上がった住民 町当局の姿勢を問う 「文化的価値はわからない」という町長 高まる校舎保存・再生の声 守られた講堂 あくまでも新築への執念続行 建設に賭ける町長側の焦り 始まった町側の暴挙・違法行為 非難の中でも進行する解体・新築計画 改ざんされていた「耐震診断データ」 校舎解体差し止めの仮処分決定 それでもするか。町長、司法への挑戦 校舎保存に歓声、新築に反発 責任は誰だ−混乱する教育現場− 町長の解職要求が成立 保存運動への追い風を吹いてきた 児童たちの今後はどうなるのか

 ちょっと長い引用でしたが、もくじを読むと大まかな流れが見て取れます。町長が校舎を改築すると言い出して、住民が保存を望んで、司法は解体差し止めの仮処分が出たにも関わらず、解体を強行する町長。その町長へのリコールが成立するまで(2003年1月まで)の住民の戦いの軌跡が納められています。
 本田さんは「豊郷小学校の歴史と未来を考える会」の代表で、学校の教師。古川博康さんは芦屋在住で、豊郷小学校に寄付金を出した古川鉄治郎氏の孫です。豊郷町当局が孫の古川氏を「だまして」解体の了解を取り付けたことが後でわかって非常に立腹し、保存運動の大きな柱となって活動されたとこのこと。そんな両者が町長と対峙して、校舎保存のために、東奔西走するドキュメントでもあります。
 古川鉄治郎氏は、伊藤忠エ衛商店の番頭を長く勤めた商人で私財の3分の2を古里の小学校の建設に寄付することによって、豊郷小学校の今の校舎や体育館があるとのこと。昭和12年の話です。そんな先人の気持ちが流れている校舎は、そう簡単に破壊するとかをするものではありません。
 校舎を保存してほしい、という気持ちは郷土愛だと思いませんか。町長は、政争の具に引き込むことによって、ことを決めようとしていると思えてなりません。
 この後、町長選挙や、いろいろあったようですが、住民運動を一冊の本にまとめられた両者の心意気に深く敬服します。


推薦度★★★★☆ 


49 中坊公平・私の事件簿 読了 

中坊公平著 集英社新書 2000年11月22日発行 206頁 600円+税

 1957年に弁護士登録して以来、およそ半世紀、闘う弁護士・中坊公平は500件を越す事件を担当しています。資料は全て京都の事務所の倉庫に保管してあって「死んだ後も責任をとる」と本人の弁。本書では14のケースが紹介されています。
 中坊さんを大きく変えたのは「森永ヒ素ミルク中毒事件」といいます。1955年森永ミルクMF缶からヒ素が検出、販売禁止しますが被害者は厚生省発表で12,000人(実際にはその2倍と推計)にも達した事件です。森永乳業は死者25万円、患者1万円の補償金としました。そして14年後、患者 68名の追跡調査が新聞報道されたことが契機となって、73年に民事訴訟を提起、要請されて弁護団長になったものです。
 中坊氏は被害者訪問を徹底して、父の言葉「人様の役に立て」を実践しました。被害者の恒久的救済のために「ひかり協会方式」を生み出しています。
 そのほか、豊田商事事件では、顧問弁護士からも返還金を迫り、豊島事件では、瀬戸内海の小さな島豊島に7年間で300回、足を運んでいます。住専処理事件では、自ら機構の代表取締社長になり無報酬で債権回収にあたっています。
 解決不可能と思われた巨大事件に挑む中坊弁護士の心意気がにじんでいます。ひたむきに・懸命に・遮二無二といった副詞が合う弁護士です。
 日本弁護士会会長(1990年〜1992年)であったことはよく知られています。


推薦度★★★★☆
 


48 念ずれば花ひらく 読了

樋口廣太郎著 金融財政事情研究会刊 平成5年7月発行 192頁

 アサヒビール会長の樋口氏が住友銀行からアサヒビール社長に就任して、アサヒビールの業績を押し上げたノウハウをいろいろ語っている本です。
 挨拶をすること、社員の心を明るくすること、など身近なところから、思い切り現場主義を引いたことなど、が語られています。経営者の成功談ですが、なるほど、と思いながら読むことができます。
 彦根高商卒業であるところから、滋賀大学の代表的卒業者の一人としてよく紹介されています。大先輩というところ。


推薦度★★☆☆☆


47 棋士 読了

二上達也著 晶文社 2004年5月30日発行 209頁 1600円+税

 日本経済新聞にある『私の履歴書』に連載されたものが本になりました。この欄は有名で今まで各分野の著名人が登場してきました。今回は棋士の二上達也氏です。
 1932年函館生まれとありますから、73才。1950年に四段となって、1990年に引退。将棋歴が50年になります。その間、タイトル戦は26回登場して、王将1期、棋聖4期。A級在位は27期。1989年から2003年まで14年間将棋連盟の会長を務める。
 大山15代名人と中原16代名人の間にあって、升田・大山名人に挑戦し続けた内藤・加藤らと同世代の棋士のひとり。
 50年の将棋界の歩みが、1番から34番まで、タイトルをつけて、自叙伝的なエピソードを交えて、押えた筆致で、淡々と綴られています。戦後プロになった棋士ではトップ街道をずっと走ってきた棋士です。羽生名人の師匠でもあります。
 結びの言葉は、「私も盤寿まで生きて、コンピューター対名人の対局を見届けたいと思っている」となっています。
 抑えた言い回しに人柄がしのばれます。人徳の二上。


推薦度 ★★★☆☆


46 定年後の10万時間の里山暮らし 読了 

小橋暢之著 家の光協会発行 2003年12月1日発行 230頁 1,400円+税
著者の略歴 1944年生。東京農大大学院卒・JA中央会入会。2000年より潟pストラル代表。


 雑誌「虹」に連載されたものとあります。著者が買い求めたのは千葉県長生郡長南町のおよそ1,800坪。定年を迎える前にソフトランディングしょうというものらしい。里山暮らしを始めようとする著者の具体的行動と平行させて、著名人の言葉や行動を著書と一緒に紹介しています。
 今森光彦『里山物語』(新潮社刊) 鶴田静『田園に暮らす』(柴田書店刊) 同『野の花とともに』(家の光協会刊) 遠藤ケイ『裏の山にいます』(山と渓谷社刊)  柳生博『森と暮らす、森に学ぶ』(講談社刊) 内山節『里の在処』(新潮社刊) 南木佳士『阿弥陀堂だより』(文春文庫)などです。
 読んだことがあったのは高木美保さんの『木立の中に引っ越しました』だけでしたが、いろいろな人が里山に移り住んでエッセイを残していることが分かります。『阿弥陀堂だより』は映画化されて見ましたが、非常にゆったりした洗われるような映画でした。
 紹介された本のいくらかは次の読書対象本にでもしようかな。


推薦度 ★★★☆☆


45 「勝負脳」を鍛える 読了 

谷川浩司・古田厚敦也 PHP文庫 2004年7月20日発行 225頁 514円+税


 野球選手古田氏と将棋棋士谷川氏の対談集。
 強者を倒すために・常識にも型にもはまらない無勝手流で勝つ・生きた情報でなければ役に立たない・相手の心を読みかけひきを制す・ベストの状態を維持するための自己管理術・成功と失敗から何を学ぶか・次世代の実力を伸ばすために何をすべきか・これからの世界で戦うたまの脱日本型組織論 以上が目次です。
 対談方式で、野球の世界と将棋の世界での、勝負、かけひき、相手を読む、自己管理、等が自在に語られています。
 両者とも若くして(20代で)成功したこと、挫折を味わっていること(立命館大でドラフト外れる・羽生の7冠を許す)でより人間的に広くなったと語っています。


推薦度 ★★★☆☆


44 映画道楽 読了 

鈴木敏夫著 ぴあ 2005.4.11発行 248n 1500円+税

著者の略歴 1948年名古屋市生 慶大文学部卒 徳間書店入社、週刊アサヒ芸能・月刊アニメージュ等担当 スタジオジブリ取締役に、現在代表取締代表。

 非常に参考になる本です。スタジオジブリ制作のアニメーション映画の全てに関わった人だと初めて知りました。著者と同じ世代として、話の内容から沢山の刺激を受けました。
 ジブリの作品のうち、以下は観た作品です。風の谷のナウシカ・天空の城ラピュタ・となりのトトロ・魔女の宅急便・おもいでぽろぽろ・紅の豚・海がきこえる・平成狸合戦ぽんぽこ・耳をすませば・もののけ姫・となりの山田くん・千と千尋の神隠し・猫の恩返し・ハウルの動く城、以上で14本。いずれも名作ばかりです。
 次の宣伝コピーはどの映画のものか分かりますか。
「火の7日間が世界を変えた」「空から少女が降ってきた‥‥」「落ち込んだかもしたけど私はげんきです」「私はワタシと旅に出る」「生きろ」「生きる力を呼び醒ませ」「猫の国。それは、自分の時間を生きられないやつの行くところ」「生きる楽しさ 愛する歓び」
 宮崎駿がいかにアニメ制作しているか。プロデューサーの目から見た宮崎が伝わってきます。映画の見方は一つではない、という意見は賛成です。しかし、著者が見た映画の量からしてすごい。見方も新鮮です。映画の現状について、経験という記憶がない、汗をかかない現状の映画たち、などは興味深く読みました。
 なかなかよい本ですよ。

推薦度★★★★☆


43 いつか読書する日 読了 

愛育社 2005年6月11日発行 1,238円+税

映画『いつか読書する日』を紹介している本。 グラビア シナリオ インタビュー コラム エッセイ 評論で構成。

 監督は緒方明氏(「独立少年合唱団」の監督)、脚本は青木研次氏。出演は田中裕子、岸部一徳他。
 舞台は西東市(ロケーションは全て長崎市)。朝は牛乳配達、昼間はスーパーのレジで生計を立てている50歳の独身女性が主人公。夜は読書をして暮らしている。彼女には高校時代に付き合っていた人がいた。両親が絡んだ事件以来、疎遠となってしまっている。彼女は未だ思いがある。相手は結婚している。が、奥さんはガンになって余命幾ばくもない。二人の想いに気づく奥さん。奥さんは田中裕子を呼んで「私が死んだら夫と一緒に暮らしてほしい」と頼む。さて、どうなっていくか。そうした大人の恋の物語だとあります。
 脚本は、行間を読むように、簡潔です。インタビューでは出演の二人と監督の思いが綴られています。長崎の朝に響く牛乳配達の音と坂道と、人々の生活が淡々と流れる中で進む映画。ロケーションで、両親の家・診療所・義弟のスーパーなどの場所を提供した医師が、我が家にとって記念になる映画、と書いています。実感だと思います。
 『いつか読書する日』という映画のことがよく分かります。すでに封切りされているかどうか調べたら、この7月2日に封切りされたとのこと。見る機会がなければ、DVDになった時に鑑賞しようか。

推薦度★★★☆☆
 


42 ターニングポイントー折り梅」100万人をつむいだ出会いー 読了

松井久子著 講談社 2004年12月18日発行 235頁 1524円+税


著者の略歴 
1946年飛騨生まれ。早稲田大学卒 雑誌の編集者・ライターとして活動。その後俳優マネージャーに。そして、テレビドラマ・ドキュメンタリーのプロデューサーとして活躍。1998年映画『ユキエ』を初監督。2002年公開『折り梅』の製作・脚本・監督の三役を務める。

目次
 プロローグ・健さんのポルシェ、渡さんの焚き火・たちまちの蜜月・女同士・望郷の女たち・お前はどう生きてきたのか?・冬の時代に・思いがけない後押し・『ユキエ』生みの苦しみ・ダイアンキートンになったみたいだ・ひたむきな女・できたんだね、私たち・ひっそりと地域のために・皆で咲かせた満開の花『折り梅』・スロー・グッドバイ・アナタがいてくれたから・エピローグ・あとがき

 目次を長く引用しましたが、丁度、著者が大学を卒業して先ず雑誌の編集者・ライターとなったところから、最後、映画第三作目をめざして、脚本と格闘している現在まで、ほぼ、時系列どおりに、話が進んでいっているから、タイトルで内容を知ることが出来るのでは、と思ったからです。
 著者の仕事遍歴のターニングポイントは丁度10年づつで区切られていて、20代は雑誌の記事の担当者、30代は俳優のマネージャー、40代はドラマやドキュメンタリーのプロヂューサー、50代は映画の監督となるそうです。現在、59歳。映画3本目に挑戦が始まったところ。
 高倉健さんや渡哲也さんとの親交、俳優関根恵子さんのマネージャーとしての経験、ドラマ初製作となった「女同士」の秘話、等いずれも非常に上手な文章で書かれていて、中身にドンドン引き込まれていきます。
 それでも、全体の3分の2を占める映画製作の話は、監督の立場から書かれた文章として、『ユキエ』『折り梅』を如何に企画・立案して、資金集めの努力をして、製作現場で汗を流して、完成品を上映する所に出かけていって、挨拶をして、普及運動に関わってと、トコトン自作映画のために行動している監督の全体像が本当によく伝わってきます。後半の普及運動で出会った人たちとの交流のエピソードは熱いものが混みあがるほど感動的です。これはすごいと思いました。『折り梅』は1150回の上映会で100万人の観客を突破したというすごい記録を立てました。
 2002年に大津のつくし保育園でこの映画を取り上げて、上映会があった時にも、監督自ら挨拶をしていただきました。
 映画鑑賞運動として映画を身近に感じる人にとって、監督のこの本に著された姿勢は本当に応えられないほど胸に迫ると思います。
 大変いい本に出会いました。


推薦度 ★★★★★


41 坂田信弘のザ・ゴルフレッスン 読了

坂田信弘著 NHK出版 2000年4月発行 1,000円+税


 NHKの趣味悠々で2000年に放送された番組のテキスト。写真がふんだんに使用されているのがいい。文字よりも直感的に理解できます。
 坂田氏のゴルフ進化論がしっかり展開されています。
GAOテレビで放送されている番組で述べられている進化論と一緒です。
 アドレスの仕方、バックスイング、トップ、ダウンスイング、インパクト、フォロースルー、フィニッシュと、彼独特の理論があって、道理に合っている気がします。
 何回も読んで眺めて、体で覚える必要があります。

推薦度 ★★★☆☆


40 わたしの田舎暮らし 読了 

俵萌子(タワラモエコ)著 大和書房 2000年6月発行 1600円+税


著者の略歴
 1930年大阪市生まれ サンケイ新聞社入社 女性・家族・教育問題等の評論家 日本初の準公選で東京・中野区の教育委員を務める 

 書き下ろしの随筆。東京の家から子ども二人(娘と息子)が巣立っていって、子育てが終わったと思うとき、赤城山(お父さんの故郷)の山中に山小屋を購入して、田舎暮らしを始めた著者の体験談集です。「孤独の数だけ猫がふえる」とあるように、「老いて独り」の生活に「家族」として、猫と犬を飼い始めるその顛末が詳しく綴られています。
 東京では猫二匹、赤城山では犬・猫一匹づつ。アメリカに住む娘さんが「猫」を連れてきたヤンキー猫の話もあります。
 ペットというより、同居人としての犬・猫と筆者との係りが、全編を通して楽しく詳しく綴られています。サブタイトルにある「老いの支度」という言葉が響く内容です。

推薦度 ★★★☆☆


39 日本映画に学ぶ教育・社会・いのち 読了

梅野正信著 エイデル研究所 2005年6月10日発行 1534円+税


著者の略歴
 1955年長崎県生まれ。立命館大卒 鹿児島大学教育学部教授(社会認識教育論)

 著者が大学で映画史の講義をしている内容をベースにして雑誌に連載をしたものがもとになっています。
 取上げられているのは、「若い人」(昭和12年)から「夏解」(平成16年)まで、26本の日本映画です。ほとんどが一度は見た映画ですので、解説もよく分かります。テーマ設定して合う映画三本を上げなさい、という設問があったら、この著者と同じような選択になるのか、ということを考えながら読みました。
 石坂洋次郎の小説を上げて、戦前は自由主義と批判され戦後はブルジョワ民主主義と批判されたと紹介。軸が戦前と戦後でぶれていない作家というのは本当にすごいと思う。
 「戦争と人間」の映画の紹介中で、原作の五味川純平氏の原作に触れ、細菌部隊731について「悪魔の飽食」の16年前から731部隊の内容を描き、告発してきたことを紹介しています。
 文章の中では、「忘れ去られた人々」とまとまられた「どですかでん」「家族」「サンダカン8番娼館」が印象に残りました。
 映画を鑑賞する上で、参考にしたい指摘が沢山盛られている本です。


推薦度 ★★★★☆
 


38 羽生善治 挑戦する勇気 読了  

羽生善治著 朝日新聞社 2002年12月発行 1,000円+税


目次 1、棋士になるまで 2、日本で将棋は面白くなった 3、知識から知恵へ 4、子どもたちから一問一答
著者の略歴 
1970年埼玉県生まれ、12歳で奨励会に入会、15歳で四段となる。89年10代で初の竜王となる、96年史上初の7冠王となる。

 2002年8月に行われた「朝日ジュニア・サマースクール」の講演を元にして加筆したもので、小学生用ということで、平易な文章で分かり易い話となっています。
 12歳(小6)から15歳(中3)までの奨励会のことがもっと知りたいと子どもたちは思ったと思うが、羽生さんは天才すぎて、簡単に語ってしまうため、苦労が分からないのではないか、と思いました。
 小学校5年生から自らの棋譜をノートに付けていたという所にビックリしました。これはずごい、と。
 また、奨励会同期に森内さん・佐藤さんがいるというのはすごいメンバーです。デパートの将棋まつりで優勝者先崎、準優勝羽生とか、アマチュア時代とはいえ知った名前が出てきます。
 気軽に一気に読みとおせる本です。

推薦度★★☆☆☆


37 チョコレートな夜 読了

佐々木美穂著 PHP研究所 2005年6月発行 1400円+税


著者の略歴 1966年福井県生まれ 1992年フリーランスのイラストレーター 著書「そら色の窓」

 
著者が選んだ24本の映画のエッセー集。現在39歳の彼女が選ぶ映画は、友人に言わせると「小難しい」映画。24本のうち、私が見たことがあるな、と思うのは、「彼岸花」(小津安二郎)「秋刀魚の味」(小津安二郎)「ベルリン天使の詩」「ユー・ガット・メール」「ひまわり」の5本くらい。選ばれているのはヨーロッパ映画が多い。彼女がパリやイタリアやユーゴなどで生活した経験があるからかも知れない。親と子がテーマになっているものが多いのは、本人の弁によると、それなりの「年」になって親をその分理解できるようになったことと無関係ではない、とのこと。映画にドンパチ映画(アクション)と推理映画(サスペンス)がなく、ドラマに分類される映画が選択されているのは、彼女の傾向だと思う。
 出演者の服装や紙袋のデザイン、画面の色彩などに目が届いているのは、イラストレーター的な視点が生かされていると思う。
 24本のうち、どれか1本でも見てみようと思う映画があればエッセーの甲斐があると本人の弁。ヨーロッパを想いながら、映画をエッセイを楽しむ本です。


推薦度 ★★☆☆☆


36 畑のある暮らし方入門 読了

小川光著 講談社α新書 2004年8月発行 838円+税

著者の略歴 1948年生まれ 東大農学部卒 福島県農業試験場就職、50歳で退職、専業農家となる


 福島県山都町の話です。飯出山麗の標高400m、インゲン・トマト・カボチャ・春菊などの野菜の栽培が盛んな所。著者がそこに移り住んで19 年。28年勤務した農業試験場を退職して専業農家をやっています。農業研修生などが希望して町を訪れると、住むところの斡旋から始まるといいます。それで 175人、100世帯の応援をしたとあります。町の人口が4300人であることを考えると半端な数ではありません。
 また、トルクメニスタンからメロンの種子を持ち込んで栽培に成功しています。農業は農作業よりも自然との闘いが厳しいという土地柄です。無農薬野菜のため、堆肥は落ち葉で自ら集めて作るところはすごいと思いました。是非、我が家の畑にも参考にさせていただきます。
 人の世話をすることに生活の沢山の部分を割いているように見える著者の生活。自らも専業農家ですから、生活がかかっているはずです。
 著者の作物に対する熱意と明確な問題意識がよく現れている本です。


推薦度 ★★★☆☆


35 日本映画スチール集 日活 多摩川編 読了

橘公子・石割平所蔵版 ワイズ出版 2001年11月30日発行 2800円+税

 日活の多摩川撮影所は、昭和8年から昭和17年の9年間、日活の現代映画を撮影したところです。年表によると、昭和3年に京都太秦に撮影所(13,500坪)を建設して時代劇と現代劇を撮影していたものを、昭和8年に多摩川に撮影所を作って現代劇を移転した、とあります。そして、昭和17年には大映に併合されて幕を閉じたとあります。
 戦前・戦中の日本現代劇といって、ちょっと古すぎて具体的に名前が浮かんできる映画はありません。紹介されている俳優のうち、伊沢一郎・島耕二・杉狂児など、女優としては、星玲子・沢村貞子・花柳小菊・原節子・橘公子・轟夕起子・宮城千賀子などがちょっと名前を聞いている人たちです。
 女優の橘公子さんと石割氏が所蔵しているスチール写真から当時の映画を再現しています。巻末には年表もついていて、撮影した全作品が載っています。
 こういう古い時代をスチール写真集として、保存しておくという意味で、価値ある一冊かも知れません。(写真集を読了というのも変かも知れませんが、しっかり見ましたので読了ということにしておきます。)

推薦度 ★★☆☆☆


34 『女流棋士』 読了

高橋和(やまと)著 講談社 2002年4月11日発行 1500円+税


目次
 まえがき 第1章 交通事故 第2章 おてんば娘 第3章 将棋との出会い 第4章 学校、病院、将棋道場 第5章 女流プロ2級高橋和誕生 第6章 鎌倉高校の日々 第7章 18歳の決心 母の日記 あとがき

 女流棋士高橋和さんの自伝的な本です。彼女は現在は日本将棋連盟を引退しています。2003年に結婚もしています。相手は作家の大崎善生さんとは驚きでしたが。
 高橋さんが4歳の時にあった交通事故から話が始まります。左足にひどい怪我をして、それから、足が順調に右足と同じように伸びてくれるようにする闘いの日々でもありました。将棋に出会って、女流育成会に入って、女性と指すようになったとき、新聞の「週間将棋」に顔写真入りの紹介が出て以降は、かわい子ちゃん狂想曲が始まったとあります。本人は随分といやだったようです。将棋は実力の世界なのですから。
 14歳でプロ棋士となり、高校は鎌倉高校。そして、18歳を迎えた時、家を出て一人暮らしをする決心をします。4歳の交通事故からお母さんが日記をつけていて、それが巻末に載っています。母の思いが伝わってきます。
 私がこの本を読んでみたいと思ったのは表紙の写真が美人だったこともあるかも知れませんが、先崎学さんが書いた本に出てきて、興味があったからです。
 高橋さんの率直な気持ちの動きがよく出ている自伝です。

推薦度 ★★☆☆☆


33 『背の眼』

道尾秀介著 幻冬舎 2005年1月20日発行 397頁 ¥1800+税 (サスペンス)  131


著者の略歴 1975年東京都生まれ 本書がデビュー作

(会報「暮らしの中に図書館を」に感想文を投稿しました)

「背の眼」という一本の樹

わたしは「樹」を見ることが好きだ。青空に向かって凛と立つ針葉樹でありながら秋には葉をおとし、いかにも淋しげな様子をみせるメタセコイヤや落葉松が特に好きだ。
 
最近、好きな樹のリストに仲間入りし、しかも一等の座を占めた樹がある。「楷の木」である。広葉樹で自分の好き放題に枝を伸ばしているように見えるが、すこし遠くから眺めるとなんとも不思議な統一感が感じられるのだ。枝は下方に伸ばしながら葉はしっかりと空に向かっている。
 
この第5回ホラーサスペンス大賞特別賞に選ばれた「背の眼」を読んで、「ああ、楷の木みたい」と思った。さまざまな事件・現象・伝承がちりばめられており、そのひとつひとつは「子ども殺し」「復習」といった残酷なものでありながら、その全体をまとめているのは「人を愛すること」であったように思う。長い小説だし、人物描写もくどいなあと感じる面もあったが、読了して樹をわたるさわやかな風を感じることができた。
 
わたしたちの周りにはまだまだ科学的に証明することができない現象が多く残っている。私自身、旅行に出て、宿の部屋にはいったとたんなんとも言えないうそざむい空気を感じて思わず身震いしてしまうことが一再ならずある。そんなとき、そっと床の間の掛け軸をめくってみると護符が貼ってあったりするのだ。
 
この「背の眼」にも妻や子を愛するが故に人の命を奪ってしまう悲しい人の姿が描かれているし、主人公の「霊現象探求家」なる真備氏とその二人の友人に様々の「身震いするような現象」がおそいかかりもする。真備氏らはその事件や現象をていねいに解き明かしていく。その結果に読者である私は、「ああ、そんなに愛していたのか」と納得してしまったのである。ただひとつ残る謎、それはタイトルである。謎として残るものをタイトルにするなんて、大胆だなあとも思ったが、よく考えてみれば、人間けっこう大事なことがわかっていないものだし、この真備氏ら3人組の今後の活躍にも結び付けていくことができるのだ。作者の道尾秀介氏、30歳の新鋭だが、あなどるなかれ、である。道尾氏は「小説新潮」の3月号にさっそくこの3人がであう次のエピソードを短編にして掲載している。
 
そういう彼は、実は私の甥(兄の次男)なのです。是非、読んでやってください。(「背の眼」幻冬社判 2005年1月発行 1800円+税)

 


32 えせ田舎暮らし 読了 

島田紳助著 KTC中央出版 1997年9月発行 

 タレントの島田紳助さんが大阪・能勢町に8000坪の土地(山)を購入して、家を作り、引越しして、四季それぞれに楽しんでいる体験記です。

 なかなか率直な意見が述べてあって好感が持てます。
 彼は、野菜作りには特に力を入れているようで、自分の力でつくった大根を大阪の知り合いの家持ち込んで、食べてと言う。この時「美味しい」とその価値を分かってくれるとメチャうれしいと率直です。私にもその経験があって、気持ちぴったりです。
 山にマツタケ狩りに行くのは贅沢な趣味です。なかなか見つからないでしょうが。スズメバチには本当に恐怖を感じたとか。一匹でなく、集団でいたら、誰でもビビリます。
 冬には、道路が凍結して、身動きが取れなくて困っているようです。対向車もあることですし、雪道の走行は「命がけ」はオーバーではないと思う。
 楽しく、一気に読みました


推薦度 ★★★☆☆

31 『コンピュータは名人を超えられるか』 読了

飯田弘之著 岩波書店 2002年9月20日発行 1100円+税


著者の略歴 1962年生 静岡大学情報学部助教授 工学博士 将棋プロ棋士6段

なかなか魅力的なタイトルです。著者は現役の大学助教授でありかつ将棋のプロ棋士でありコンピュータ将棋の開発者でもあります。その著者の主張は2012年にその日が来るということ。チェスは1997年に世界選手権保持者が1勝2敗3引き分けで負けてしまったということもあり、今、開発者の目は将棋に向いています。
金沢将棋やIS将棋などの将棋ソフトの2001年の到達点はアマチュア4段の実力(レーティング評価は2200)と著者は評価、そして、これからの発展指数を、73×(西暦−1972)から導き出して、名人のレーティング2900は2012年に追いつく、としています。
そして、序盤、中盤、終盤において、将棋はどういう動きをするのが特徴でそれをどうソフトに反映しているか、を研究しています。棋士が頭の中で考えていることをいかにソフト化するか、という難しい課題への挑戦です。
将棋が強い人にとって、将棋を客観的に眺められる絶好の本です。


推薦度★★★☆☆


30 『菜園王 2005夏号』 読了

斎藤はるき編集 図書刊行会 800円+税


 斎藤さんが自費出版(推定)しておられる年3回(3月・6月・9月)出ている本です。現在VOL11です。その斎藤さんから依頼があって我が家の農業体験を投稿という形で、記事にしてもらいました。
 私の記事は「読者投稿」10本の1本として、「根張りが違う直播き白菜栽培」として白菜の栽培体験が載っています。写真も沢山使ってもらって、4ページにまとめてあります。
 今度の号は、ガン予防に効く野菜特集で、ニンニク・ニンジン・キャベツ・ダイズ・ヤーコン・ショーガ・ウコン・カボチャが特集されています。
 今度の記事では、ヤーコンの作り方が参考になりました。今、2株の栽培に挑戦中で、うまくいけば、来年は沢山栽培してみようと思っている野菜です。

推薦度 ★★★☆☆


29 『週末だけのキッチンガーデン』 読了 

吉田エリ著 1998年6月発行 1600円+税

目次 春・夏・秋・冬
著者の略歴 
多磨美大卒 絵本作家 書籍のデザイン イラストレータとして活躍

 イラストがふんだんにあって楽しい本です。北軽井沢の嬬恋に土地を借りて畑を耕している著者の一年間の風景が綴られています。
 イラストレータである著者が描いた野菜・山菜・ハーブ・レシピのイラストがふんだんに挿入されています。家と畑との距離が150kmというのは半端な距離ではありません(我が家はおよそ500mの距離。近距離であることに感謝しなければならないかも)。そこへ週末に通いながら、野菜を育てているのですから、たいしたものです。
 やはり、畑に立つと、世界を司る主となり、畑作業に無心・夢中になり、終わった後の爽快感が忘れならない、という著者の言葉は頷けます。
 自家製野菜を使ったレシピも載っています。気軽に楽しく読み進んでください。


推薦度★★★☆☆


28 フフフの歩 読了

先崎学著 講談社文庫 2001年4月15日発行 352頁 733円+税


目次 将棋指しの優雅な日々編 切れ負け勝負激闘編

 本書は、雑誌「将棋世界」に掲載された連載と、将棋連盟から刊行された本を加えたものです。とにかく、「将棋指し」の優雅な生活が活写されています。著者が切っての遊び人であることが内容を面白くしています。文章も非常に上手です。本当に将棋指しでしょうか。ひょっとして大崎善生氏の代筆だったりして(そんなことはあり得ませんが)。
 彼の周りの棋士たち、羽生・佐藤・森内・郷田・神吉などが特によく登場して、活躍してくれます。テレビで見る世界とは全く異なる「素顔」があることが面白い。150人の限られた「天才の世界」だから許されるお酒にまつわる「乱行」の数々。よく身体を壊しませんね、そんなに暴れて。
 笑いながら読める本です。


推薦度★★★☆☆


27 キネマ旬砲 読了 

鷺沢萌(さぎさわめぐむ)著 角川書店 H14.3.30発行 163頁 1200円+税


目次 ジョン・トラポルタからロビン・ウイリアムズまで30名の映画俳優を取上げて紹介している あとがき

 キネマ旬報に2000年5月〜2001年10月まで「スターはアタシの手で」の題名で連載されたものです。30名のスターが遡上にのっています。キネ旬編集部の小山田嬢とスターの評価をめぐって「エラ美人」「指人形」などとやり取りしている内容が非常に面白い。私自身でいえばスターに対するイメージの持ち方は小山田嬢よりも鷺沢さんにより近い。そのこともあって非常に楽しく読みました。鷺沢さんは「泣く」という言葉で感動を表現しています。同じ「泣く」といっても何種類もあることがわかります。
 今後とも鷺沢さんの映画鑑賞記を読んで感動を共有したかったのですが、一年ほど前に突然亡くなってしまって非常に残念です。

推薦度★★★★☆


26 編集者T君の謎 読了

大崎善生著 講談社 2003年1月23日発行 268頁 1500円+税


大崎善生の略暦
 1957年札幌市生まれ 1991年から10年間「将棋世界」の編集長 著書「聖の青春」「将棋の子」など。
目次
1天才たちのスーパーバトル 2将棋中毒者の生活と意見 3大棋士ここだけの話 4今宵も女流は花ざかり 5純情個性派に乾杯! 6将棋は世界を駆けめぐる あとがき
46本のエッセーを収録。いずれも「週刊現代」に連載掲載されたものを再編集。


連載が2002年の1月〜12月とあるとおり、最近の将棋界の動向が折に触れて記述してあり、よくわかります。羽生・先崎・佐藤・森内などの最新鋭や谷川・大山などの話題も多くあります。
 150人の選ばれた世界であるプロ将棋界。対局が生活の糧なのはよくわかるが、チェスと比較するとべらぼうに高いらしい。それに、「フリークラス」という訳の分からない段(今は中原永世十段など)やに苦言を呈しているのに拍手です。


推薦度★★★☆☆


25 女が映画を作るとき 読了

浜野佐知著 平凡社新書 2005年1月11日発行 205頁 740円+税


1 ピンク映画まっしぐら 2『第七管界 尾崎翠を探して』 3 『百合祭』の長い旅 4 女性映画祭と共に 5「早く生まれすぎた世代」から 6 映画監督は男の世界か? あとがき

著者 浜野佐知氏の略歴 1948年徳島県生まれ 1968年ピンク映画界に入る 1970年に監督デビュ 以後30余年に300本を超える作品を監督する 1984年樺U旦舎設立 自主制作映画『第七管界 尾崎翠を探して』『百合祭』発表 世界の女性映画祭・レズゲイ映画祭と積極的に交流 2000年女性文化賞受賞

 略歴にあるとおり、彼女はピンク映画出身の女性映画監督です。この本によって初めて女性監督に浜野佐知さんがいることを知りました。今まで知っていたのは、羽田澄子氏くらいでした。女性が活躍しにくいポジションであることがこの本を読んでよくわかりました。監督業は完全に男性社会なのだと。イタリア・ドイツ・フランスと世界に女性国際映画祭が沢山あって、そこでは女性だから作れる映画がある、という訴えが柱になっているようです。 

 なかなか骨のある著者です。「なにくそ」という頑張りが彼女をここまで引っ張ってきたことが本の行間から読み取れます。その意味で、最終章に高野悦子氏との対談があったのを興味深く読みました。映画分野で同じパイオニア的存在として、日本をリードしてきた、同じような立場の女性という共通点を感じるからです。

推薦度 ★★★☆☆


24 生かされている私 読了

高木美保著 講談社 2004年4月21日発行 206頁 1000円+税


目次
(春一番の野良仕事・土手焼デビュー・幸せを呼ぶ黄色・ウグイスにも個性・花便り・牛の恵み・自然派ダイエット・三年ものの味噌・自分だけの地図・まぶしい苗代・畑仕事は人を表す・恋の季節・田植え日和・縁側づきあい)
(若葉のドライブ・地球と抱っこ・美しい神様・気持ちのいいところ・いまいましい奴・センスオブワンダー・蛍の舞う川・二つの時間・庭先の八百屋・未知との遭遇・山の慈雨・生き物と共にある暮らし)
(秋の訪れ・生かされている私・彼岸花の思い出・稲刈り経済考・おかせぎの日・新米の幸せ・釜炊きご飯・人生は山を登るように・ニッポンの暮らし・子ども心の蕎麦打ち)
(野菜の苦労・動物さんいらっしゃい・冬の優しさ・つらら五段活用・病みつき手作り納豆・大人の遊び・自然の誇り・生命の熱さ・春はそこまで)


 女優高木美保さんのエッセイ集です。前回、「木立の中に引っ越しました」を読んで興味がありましたので、第二弾を読んだ次第です。
 栃木・那須高原に住んで、自然と共に活きるナチュラリスト高木美保の、四季を通じて、感じる生活と農業の感想集。非常にみずみずしい文章です。
 四季を通じて、農業(米つくり・野菜つくり・蕎麦つくり・味噌つくり)に励む著者の、幸せそうな姿が行間から浮かんで来る本です。文体にユーモアもあります。
 田舎に生まれ育った、子ども時代を通じて私自身が体験していることが、彼女の体験として語られることに懐かしみと親しさを感じました。 頷きながら読む本です。


推薦度 ★★★☆☆


23 里山 読了   

水城沙羅さん著 新風社 2005年1月25日発行 ¥550


 水城さんが三重県・青山町へ引越ししたのは2002年6月でした。それから一年間、都会人が田舎に住んで体験するオドロキの数々を綴ったエッセー集です。
 都会のストレスから胃がんを神経症を病み会社を依頼退職。退職金で買える物件を物色した結果、青山町に決まったがそこはバスが日に3本しかない里山だった、というところから話は始まります。
 ヨモギやカラスのエンドウやツクシやフキノトウなどの植物群、雨カエルやシマヘビやムカデやネズミやの動物群、湿気・カビ・風などの気象群との体験的出会いが、オドロキを持って語られています。読んでいて楽しい。ユーモアがあります(本人は至って真剣ですが)。


推薦度 ★★★☆☆


22 デブラ・ウインガーを探して  読了  

ロザンナ・アークエット著 河出書房新社 2003.6.20発行 1200円+税


 ドキュメンタリー映画「デブラ・ウインガーを探して」は、ロザンナ・アークエット他監督で、2003年に制作された作品。カンヌ映画祭で特別招待作品として上映され、2003年のアカデミー賞にもノミネートされました。この本はその映画を本に編集したものです。
 登場する34人のハリウッド女優へのインタビューを通じて女優の恋愛観、仕事と家庭の両立、若さと美、ハリウッドの現実、40代からのキャリア、引退理由などを解き明かしていきます。
 殆どの女優が含まれています。特に40代といわれるベテラン女優中心に編集されています。言葉になかなかの含蓄があります。俳優の別の一面をしっかり見る気がします。


推薦度 ★★☆☆☆


21 木立のなかに引っ越しました  読了 

高木美保著  2000年10月10日発行 幻冬舎 229頁 1400円+税


目次
一年の風景(引越し/雑木林を散歩する/田舎暮らしにはわけがある/再び一つ屋根の下/温泉めぐり/名人/那須おろし/山菜をとりに行く/トマトの発芽/花だより/野生の花/田舎風ガーデニング/蛍のディナーショー/動物たち/収穫/都会のベランダでも農業はできるか/お祭り/豊かな人々)
田舎暮らしをしたい方のために(土地探しのテクニック/家造りのこだわり/田舎で覚えたかんたんレシピ/田舎暮らしの矛盾)
あとがき


 女優高木美保さんが書いた本です。栃木県の那須に引越しして別荘で生活しながら、女優生活も続けているとのこと(テレビで時々拝見します)。彼女は文章がなかなか上手です。読んでいて面白いし描写力があるから、その場が見えるようです。家族とのやり取り、自然との対話、木立の中での生活など、場面場面で、個性を発揮しています。庭木を拝借する出で立ちは噴飯ものです。別荘の庭にダンプカーで黒土を入れて、野菜つくりの挑戦もしています(出来具合を我が家の畑と対比しながら読みました)。
 読み進むことによって生活の信条が文字からにじみ出てくる本は、作者からのメッセージがしっかりと伝わってきます。


推薦度 ★★★☆☆


20 ゴマメの歯ぎしり  読了 

早乙女勝元著 河出書房新社 2004年7月20日発行 254頁 1,800円+税


○国策から落ちこぼれた少年期 ○暗くて長いトンネルを抜けたが ○朝鮮戦争に悩んで書き出す
○転んでもただでは起きぬと ○我が青春の柴又と寅さんと ○東京大空襲を語りつぐ ○ブタペストでベトナム少女に会う
○戦時下のハノイに招かれる ○「ぼくたちは油断できない」 ○「焼け残り電柱から映画に」 ○その年、秋の出会いと別れと
○スーチーさんとアリアス氏に会う ○一難去らずにまた一難 ○犬も歩けば棒にあたる ○攻撃される人に思いをよせて
 あとがき


 目次をずっと拾いました。内容がよく分かります。早乙女氏の戦後60年の自分史でもあります。東京大空襲から、小説の発表、柴又と寅さんとの関わり、ベトナムのダーちゃん、映画「戦争と青春」、映画「軍隊を持たない国コスタリカ」、東京大空襲資料センターまで、戦争と平和に関わって作家業以外にも実に沢山の仕事をしてこられた作家であることがよく分かります。

 私が早乙女勝元氏の小説をはじめて読んだのは高校生の時でした。『小麦色の仲間たち』(理論社)という本で、姉の本棚から借用して読んだ記憶があります。登場人物が若者中心であったりして大変面白かった印象が残っています。次に読み始めたのが『わが街角』でしたがこれは途中で挫折しました。伝記風で、その時は興味がなかったのでしょう。

 次に読んだのがだいぶあとになって「東京空襲」(岩波新書)。それから草の根出版会から出ていた「母と子シリーズ」は何冊か読んだように思います。 

 今回の本では映画に関わる話を興味を持って読みました。山田監督に柴又を紹介したのが早乙女さんであることは初耳でした。「戦争と青春」の映画は見ましたが市民参加で制作されたことを知りました。
 作家の大奮闘にいろいろ考えさせられる本でした。


推薦度 ★★★★☆


19 アフガン零年・虹と少女  読了

中村直文著 NHK出版 2004年5月15日発行 198頁 1200円+税

プロローグ 虹 第1章 バルマク 第2章 マリナ 第3章 虹とマリナ 第4章 兵士の歌 第5章 虹のない国 エピローグ オサマ あとがき 寄稿

「アフガン零年 虹と少女(邦題)」は、いきなりカンヌ映画祭で新人賞・特別賞を受賞し、さらにはゴールデングローブ賞の外国語映画最優秀賞まで受賞した映画です。その映画の製作過程を丁寧に追ったのが、「NHKスペシャル」で、「マリナ〜アフガニスタン・少女の悲しみを撮る〜」(2003年6月 21日放送)、また、「クローズアップ現代」では、「アフガニスタン〜祖国の悲しみを撮る」(2003年1月21日放送)、同じく「アフガニスタン・混迷と希望のはざまで〜映画監督パルマクが語る」(2004年1月6日放送)という3本の番組に集約されて放送されました。この本は、それらの番組を制作したプロデューサーが体験と取材をもとにして、活字で現したアフガニスタンの本です。

 アフガニスタンは23年間も戦争のただ中にあったということです。1978年、アフガニスタンでクーデターが起こり、社会主義政権が誕生した。その翌年にソ連軍がアフガニスタンに侵攻、抵抗戦争が始まった。そして、1989年ソ連軍撤退。1992年イスラム国家樹立。しかし軍閥による内戦に。 1996年タリバンが9割を制圧する。2001年12月タリバン政権崩壊。
 この23年間の戦争によって、アフガニスタンは多くのものを失いました。文化としての「映画」制作もその中のひとつ。その復興を通じて、アフガニスタンが当面している悲しさ(それはマリナの悲しさに通じるもの)を追った映画監督バルマクの物語です。

推薦度 ★★★★☆ 


18 新藤兼人 原爆を撮る 読了

新藤兼人著 新日本出版社 2005年3月25日発行 283頁 1800円+税   144

1 原爆の子 2 第五福竜丸 3 8・6 4 さくら隊散る 5 原爆小頭児 6 ヒロシマ−未発表のシナリオのこと 

 新藤兼人と言う人は本当にタフな人だと思う。1912年生まれだから93歳になる。その年で未発表のシナリオを持ち映画化を狙っている。驚嘆する。ヒロシマ生まれで姉が看護士として原爆後のヒロシマに入っている。ヒロシマへの思い入れはどの監督よりも大きいのでは。原爆を扱った映画をドキュメンタリーも含めて今まで5本も撮っている。そのうち『原爆の子』と第五福竜丸は鑑賞した経験がある。各々の映画の成り立ちやエピソードを飾らずに語ってくれている。近代映画社と音羽信子さんなくして新藤兼人は語れない。映画とこの本の全てに両者が絡んでいるのも納得である。 もともと脚本出身だから文章もうまい。原爆をテーマに4本も映画を作っていてさらに5本目に挑戦したいと情熱を燃やしている若さ。年齢からみればまだまだヒヨッ子のわれ等にはやるべきことが沢山あると悟る本。

推薦度 ★★★★☆


17 定年になったら農業をやろう 読了

吉津耕一著 オーエス出版 2000年6月30日発行 254頁 1400円+税    143

1農業の愉しみ 2農業の難しさ 3今なぜ農業がブームなのか 4定年前に準備すること 5さあ、「お百姓さん」になろう 6百姓さんは楽しい

 40代で脱サラして田舎で農地と住居を求めて移り住んで農業をし始めた著者の体験的農業の薦めの本です。
 農業せ生計をたてることは至難の業であることを前提にして、別に収入があって農業は楽しむもの、楽しむ小さな農業を提案しています。


推薦度 ★★☆☆☆


16 真実のゴルフ 読了

坂田信弘著 幻冬舎文庫 H12.6.25発行 267頁 533円+税   142


第1章ゴルファーには3つの壁がある 第2章ゴルフは2メートルに始まり2メートルで終わる 第3章6番アイアンであなたの総てがわかる 第4章下手になるレッスン書は捨てなさい 第5章超一流プロのこの技を盗め

本書は1995年に書かれています。今は坂田理論として最も注目される「ゴルフ進化論」を展開している著者の初期の著書で、本人の経歴を語りながら自らのゴルフ理論を披露している指導書です。
なるほどと納得できる話が連なっています。私の考えでは指摘されている沢山の点のうち、自分でこれは、と思うものを実行することが大切で、あれもこれもは失敗すると思っています。
今後実行したいこと。ゴルフ練習場には沢山のクラブを持ち込まない。素振りを心がけること。パットは2メートル練習中心。など。


推薦度 ★★★☆☆


15 ゴルフライフ 極上の愉しみ 読了

川田太三著 青春出版社 2001年11月15日発行 189頁 667円+税   141

著者の略歴 かわた・たいぞう 1944年生まれ 日本ゴルフ協会の国際委員として、海外のゴルフ事情に精通。トーナメントの解説や執筆などを行う。

はじめに 1章スコアよりもっと大切なものがある 2章ゴルフライフの真の愉しみとは 3章世界の名門コースにゴルフの原点を見る 4章すばらしきゴルフ文化を守るために 5章日本ゴルフへの提言

 気軽に読める本です。ゴルフコースの伝統やメンバーの話は次元の違う世界の話でそんなもんかな、という程度。ゴルフをスポーツとして、底辺を広く、誰もが楽しめる気軽でしかも自己に厳しい、高齢者もふくめて楽しめるスポーツとして振興するにはどうしたらよいか、その辺のところが今求められている気がします。
 挿入されている格言がなかなかいい。
「飛距離自慢の幼稚園 スコアにこだわる小学生 景色が見えて中学生 マナーに厳しい高校生 歴史がわかって大学生 友、群れ集う卒業生」「18年間同じ職場にいるよりも、18ホールですべてがわかる」 

推薦度 ★★☆☆☆  


14 集中力 読了

谷川浩司著 角川ONEブック 2000年10月1日発行 186頁 571円+税   140

第一部 将棋から学んだ「勝利への気迫」 トップ棋士の条件 トップ棋士への道 第二部 集中力 思考力 記憶力 気力 あとがき

 棋士谷川を理解する上で第一部が面白かった。タイトルを読むと中身が見えてきます。
 「トップ棋士だけが真のライバルを持てる」「将棋界は追うも追われるも実力次第」「実力の伸びには30歳の壁がある」「プレッシャーは技術だけでは乗り越えられない」「羽生さんとの100戦の中で自分の将棋を発見した」「トップの強さー谷川流と羽生流」「強さの基本は集中力」「才能とは続けられるということ」「最初のライバルー悔しさが私を強くした」「環境を整えてくれた父への感謝」「私を育ててくれた先輩の一言」「プロへの道を歩き出す」「奨励会に入会」「谷川をつぶす会」「自分を信じて前に進む」「史上最年少の名人」「スランプ」「スランプ脱出」「20代の苦労は新しい創造へとつながる」「30代には社会が求める人間づくりが必要」「40代を前に手に入れた前進する攻め」「勝負に挑み続ける気迫」
 ちょっと引用が長くなりましたが、彼の歩んできた道程の輪郭が浮かび上がってきます。
 ライバルは羽生・森内・佐藤など留まるところがない強いものだけが勝つ正味実力の世界です。


推薦度 ★★★☆☆
 


13 千と千尋の謎 読了

宮崎駿アニメ研究会編 アミューズブック 2002年6月10日発行 221頁 1200円+税   139

第1章宮崎駿アニメーションの秘密 第2章アルプスの少女ハイジ 第3章ルパン三世・カリオストロの城 第4章風の谷のナウシカ 第5章天空の城ラピュタ 第6章となりのトトロ 第7章魔女の宅急便 第8章紅の豚 第9章もののけ姫 第10章千と千尋の神隠し

これまでの宮崎アニメと言われる監督作品9編について各々Qを設定してQA方式で案外と自由に回答しています。その自由度が楽しい本です。例えば、千と千尋の項では、「坊は本当に赤ん坊か」「千尋は超能力少女か」「湯女は売春までしているのか」「油屋はソープランドか」「カオナシはストーカーか」などのQについて答えています。一秒24コマのフルアニメーションで制作されているとか、アニメ独自の動きがディズニーと違う点だとか、教えてくれます。一気に読みました。

推薦度 ★★★☆☆


12 世界の中心で、愛をさけぶ(金曜ドラマMEMORIES) 読了

2004年10月1日発行 角川書店 1333円+税    138

金曜ドラマの写真集と解説。山田孝之と綾瀬はるか主演。緒方直人、桜井幸子、松下由樹、仲代達矢他が出演。

私はドラマの方は見ていませんが、映画のシーンと写真のワンカットとが重なって見えてきます。俳優の感想が書かれています。写真集ですので、正式には読んだとはいえませんが、一応読了のカウントに入れておきます。

推薦度 ★★☆☆☆
 


11 憲法第九条、いまこそ旬 を読了

井上ひさし他 岩波ブックレット639 2004年11月5日発行 61頁 480円+税    137

憲法は優越する(井上ひさし) 平和憲法の精神を崩してはいけない(梅原猛) 希求するという言葉(大江健三郎) なぜ九条の会か(奥平康弘) 根本原理としての憲法第九条(小田実) 改憲論をどう考えるか(加藤周一) 絶望するには早すぎる(澤地久枝) 私は殺した、だが、殺すことはよくない(鶴見俊輔) 一人でも多く(三木睦子)

 2004年7月24日に開催された「9条の会発足記念講演会」の講演記録です。一人一人が主権者として現憲法を選び直していこう、という運動です。立場の違いを越えて「改憲の企てを阻む」ことを目的としているのが特徴です。
 何回も読んで訴えに耳を傾ける価値があります


推薦度 ★★★★☆


10 映画の中の本屋と図書館 読了

飯島朋子著 日本図書刊行会 2004年10月1日発行 162頁 1200円+税   136

著者の略歴 1943年生 一橋大学附属図書館勤務 日本図書館協会会員

第1章『四月物語』から第50章『恋ごころ』まで50本の映画を取り上げています。[図書館の学校]という冊子に連載したコラムを追加・修正したものとあります。いずれの章も、導入・あらすじ・図書館場面・他の映画の紹介、感想、文献というパターンで構成されています。ほとんどが1990年以降の映画で、親しみが深い。
 それにしても、映画と図書館との関係をデータベース化しているようで、次から次へと図書館と関わりのある場面やせりふが飛び出してきます。読んでいて楽しい本です。
 文献部分がやけに詳しいのはなぜか。自分で追ってみたら、というメッセージか。ちょっとそんな暇はありません、が回答。

推薦度 ★★☆☆☆


9 『アイ・ラヴ・ピース』への道 読了

千葉望著 海拓舎 2004年2月20日発行 175頁 1300円+税   135

プロローグーアフガニスタンー平和を求める人々
第1章 大森−春爛漫のクランク・イン
第2章 松江−ハートフル・ウイングの夢
第3章 島根−自治体の協力と市民の熱気
第4章 こぶしの花−映画つくりに情熱を燃やした人々
エピローグ 世界へ−ケーススタディとしての『アイ・ラブ・ピース』


大澤豊監督とこぶしプロダクションの作品
ガキ大将行進曲(1978)青葉学園物語(1980)せんせい(1982)ボクちゃんの戦場(1985)街は虹いろ子ども色(1988)遥かなる甲子園(1990)戦争と青春(1991)ベトナムのダーちゃん(1993)GAMAー月桃の花(1996) 黄金のクジラ(1996)アイ・ラブ・ユー(1999)アイ・ラブ・フレンズ2001)

 本書は、大澤監督が忍足亜希子主演の映画『アイ・ラヴ・〜』シリーズの三作目『アイ・ラヴ・ピース』を企画・制作していく中で、島根・太田・大森の人たちとの関わりを追ったノンフィクションです。映画企画のきっかけになったのが本書の著者である千葉望さんが書いた『よみがえるおっぱい』(海拓舎)であったことが、語られています。
 義肢装具士という仕事を島根の大森で始めた中村俊郎氏とアフガニスタンで地雷で手足を亡くす子どもたちとの結びつきを通じて平和を訴えるという映画の主題が、資金集め、ボランティアからNPOへ、そのための自治体への働きかけ、市民の協力、監督・撮影監督・脚本家の思い、などが重なりながら、実っていく過程が熱く伝わってきます。
 未見の映画です。是非観てみたいと思いました。


推薦度 ★★★★☆
 


8 『映画と私』 読了 

羽田澄子著 晶文社 2002年3月30日発行 269頁 1800円+税    134

T 映画と私 Uあかね色の風景 Vあの頃の私 あとがき
著者の略歴 1926年旧満州大連生まれ 1950年岩波映画制作所入社 記録映画の演出と脚本にたずさわる。1982年以降はフリーの演出家として活躍。
著者の主なフィルモグラフィー 教室の子どもたち1954年 村の婦人学級1957 年 古代の美1958年 もんしろちょう1968年 狂言1969年 法隆寺献納宝物1971年 薄墨の桜1977年 早池峰の賦1982年 痴呆老人の介護1983年 AKIKOあるダンサーの肖像1985年 痴呆性老人の世界1986年 安心して老いるために1990年 歌舞伎役者片岡仁左衛門 1993年 女たちの証言1996年 住民が選択した町の福祉1997年 原始、女性は太陽であったー平塚らいてうの生涯2002年

 記録映画監督羽田澄子さんの半生記。1950年に岩波映画制作所に入所してから現在までの半世紀を越える映画との関わりを、当時発表した文を織り交ぜながら、その時そのときの心情を綴っています。フィルモグラフィーに取り上げた作品については、本文で取り上げられています。監督の気持ちがこもった作品たちということ。
それにしても、記録映画・ノンフィクションの作品を制作するとは、何と大変なことか。先ず、監督自身が被写体に対して深く理解していることが前提となる。作品の数だけ全く異なる様々な分野への限りない興味が必要。そして、劇映画と違って資金回収の目処が立たない分野。スポンサーを探すことが必要。夫のプロダクション自由工房のおかげと著者は言っている。
映画ファンには是非読んでほしい一冊である。


推薦度 ★★★★★


7 『世界テロリズム・マップ』 読了 

時事通信社外信部編 平凡社新書 2004年1月19日発行 235頁 760円+税   133

序章 テロが身近に迫る時代 ウサマ・ビンラティン〔アルカイダ〕・アイマン・ザワヒリ〔ジハード団・アルカイダ〕・ムハンマド〔アルカイダ〕・オマル〔タリバン〕・アズハル〔カシミール過激派〕・ヤシン〔ハマス〕・オジャラン〔クルド労働者党〕・マダニ〔イスラム救国戦線〕・バサエフ野戦司令官〔チェチェン武装勢力〕・バジル〔ジェマ・イスラミア〕・岡本公三〔日本赤軍〕・東トルキスタン運動・辛光琳・オニール〔アイルランド共和軍〕・バスク祖国と自由・マクベイ・サンチェス〔カルロス〕・グズマン〔ルミソノ〕 終章 憎しみの連鎖を断ち切るには

 目次を列挙しただけでも、世界ではこんなにも多くの〔テロリスト〕集団とその首領が暗躍しているという報告の本です。国を列挙しても、サウジアラビア・スーダン・アフガニスタン・エジプト・クエート・パキスタン・インド・パレスチナ・トルコ・アルジェリア・ロシア・インドネシア・日本・レバノン・中国・北朝鮮・イギリス・スペイン・アメリカ・ベネズエラ・ペルー となります。
多くは民族主義あるいは宗教の原理主義が根底にあります。
暴力の連鎖を断ち切るにはどうしたらよいのか、流された血の多さに唖然とします。


推薦度 ★★★☆☆


6 『農を以って自律をめざす町・津南』 

小林三喜男・竹下登志成著 自治体研究社 2004年8月15日発行 93頁 1,100円+税   132

はじめに 1.津南町を語る 2.自律を決断する 3.自律できる保障を探る 4.町を元気にする おわりに はじめに 1.津南町の「自律プラン」2.自律の可能性 3.津南町「自律プラン」が示す可能性 おわりに

 前半は町長自身が語る津南町の現状と課題。後半は研究社職員の印象記。
 合併を選択した方が楽だが、それでは誇りのある町づくりができない。合併しないためには、自らの血も流さないといけない。町長のことばです。町長は、特に自律に必要な財政シュミレーションを徹底します。収入の45%を地方交付税が占める町財政が三位一体の改革によって地方交付税が現状の20%削減された場合はどうなるか、の最悪パターンも想定して、職員自らが1147事業を評価するのが圧巻です。そうして「自律プラン」を作成しています。
 削減は「リストラ」側面を伴いますが、それを職員・住民ともに「血を流してでも」乗り切りたいとする熱い決意が伝わってきます。
 滋賀県は今駆け込み的な「合併」話が盛んですが、津南町のようにじっくり腰を落ち着けて「わが町」のことを考えてはどうでしょう。


推薦度 ★★★☆☆


5 『背の眼』

道尾秀介著 幻冬舎 2005年1月20日発行 397頁 ¥1800+税 (サスペンス)  131

著者の略歴 1975年東京都生まれ 本書がデビュー作

 27日(木)に購入して30日(日)に一気に読み通しました。およそ400頁に及ぶ大部でした。場面の展開は激しくありませんし、登場人物も多くありませんが、次はどうなる、という興味に引っ張られて、止められなくなり、最後まで行き着いてしまう本です。登場する全てのことがらには意味があって、著者によって周到に配置されており、最後の収斂に向かって、全てが流れ込んでいくのです。ホラーと名の付く本は余り好きではありませんが、この本は心霊現象をテーマにした推理小説(サスペンス)であって、読後感がドロドロしていません。その読後感がいい。

推薦度 ★★★★☆


4 『最後の映画日記』

池波正太郎著 河出書房新社 2004年10月20日発行 212頁 1500円+税   130 

(目次)
Scene1 美がもはやない ロイドの用心無用を観て 戦後の映画雑誌 街で見る俳優たち 未知の老残の光景 大人になってから見直しても感銘深い伊藤大輔監督丹下左膳ほか 演出家と役者 私の一冊 小説の劇化 スクリーンの四季 自分のたどってきた道に映画のワンシーンが重なるときがある 
Scene2 人間を見すえる若き日の巨匠たち ウオークマンで三味線を聴く夜 寝付けない夜に思う人々 ライザミネリの汗と呼吸 父祖の地の雨音 ルノワールの言葉の輝き 幸村とすごした八年の歳月 ブランデー飲みすぎの理由 三号の酒と迷い猫の舌 沢田正二郎の舞台の大きさ 初夏の銀座小雨の夕暮 帰国後も快調なり
Scene3 ヒッチコックと黒澤明 女優について 街と映画館が人生の学校だった


 タイトルを読むと内容がよく分かると思いちょっと長いものばかりでしたが引用しました。故池波正太郎氏(1990年永眠)が映画について語ったり書いたりしたものを集めた本です。
Scene1が新聞雑誌での原稿、Scene2が日記の形を取った映画評論 Scene3が対談集です。

 池波正太郎氏は映画通で食通で知られていました。1920年生まれということもあって映画・俳優の話は年代がさかのぼって古い話題が多く、話題となっている映画の内容に未見の映画が多くて、体験とクロスする所が余りないのが残念。
 Scene2で日記風に映画鑑賞記が綴られている内容がなかなかよかった。Scene3の対談集は、現代の女優は駄目で、昔はよかった、品があった、輝きがあったという話ばかり。余りついていけない。また、黒澤明監督の「影武者」を酷評しているのは、なぜか。天皇と呼ばれていたのがシャクなのか。不明。リアクションを問題としているようです。


推薦度★★★☆☆


3 『働きながら書く人の文章教室』

小関智弘著 岩波新書916 2004年10月20日発行 222頁 ¥740+税 (文章案内)   129 


目次 1働きながら書く 2私の読書術 3走り書きのメモから教えられる 4編集者との出会い 5小説の取材、ノンフィクションの取材 6町工場巡礼の旅をする 7旋盤工・作家のナカグロ あとがき
著者小関智弘氏の略歴 1933年東京生 高校卒業後大田区の町工場で働きつつ作家活動を続ける。2002年工場閉鎖とともに51年の旋盤工に終止符を打つ。著書「仕事がひとをつくる」「大森界隈職人往来」「羽田浦地図」「春は鉄まで匂った」「鉄の花」など。

 50年近い作家活動を続ける著者が歩んできた道とその中で作品として生み出した小説やノンフィクション。タイトルは「文章教室」ですが、ハウツーものではない実践の重みを感じます。
 いい言葉が散りばめられているもの本書の特徴。
「読書は、読む側のこちらが何を求めるかに応じて、向こうから立ち現れてくるものとの出会いである。」
「どんな仕事であれ人は労働を通してさまざまな人生を学ぶことができる。そこで学んで深めた感性が、豊かな表現を生むのである」
「映画が地域的なものにとどまればとどまるほど、映画は普遍性を獲得する」
「原稿用紙のマス目を篩にして、書いては篩にかけ、書いては篩にかけて、それで残るものだけがほんものなのだ」
「エピソードは、事実ではあっても、散乱して存在している。それをどう掬い上げ表現するかが、書き手の役割である」
「数字や資料は、文章の骨格をつくる。エピソードがそれを肉付けをし、血を通わせる。そういう意味でわたしは、とりわけノンフィクションを書く場合にエピソードを大切にしている。」
「人を語ることは自分を語ることである。自分というフィルターを通してしか、他人を語ることはできないのだから、それは当然のことである。」
「日本の文学は労働現場をきちんと描いてこなかったのではないか、と思うことがある。」(斎藤美奈子さん)
「私はずっと旋盤工作家ではなく、旋盤工ナカグロ作家という肩書きで講演してきた。旋盤工として働き、旋盤工として一家の暮らしを支えてきたのだし、旋盤工ゆえに書けるものしか書いてこなかったからである」
 最後の一文に小関氏の姿勢が凝縮されています。旋盤工の目の高さで回りを見ることにこだわり、その視線で文章を書くことにこだわり続けた人です。
 読み返すと、そのつど新しい発見があって、なるほどと感心したりして、飽きない本です。久しぶりのヒット作に出会いました。


推薦度 ★★★★★ 

 


2 『コミュニケーション力』 

斎藤孝著 岩波新書 ¥700+税 ( ハウツー)   128 

1章コミュニケーション力とは−文脈力という基本ー  第2章コミュニケーションの基盤ー響く身体、温かい身体ー 第3章コミュニケーションの技法ー沿いつつずらすー  あとがき
著者斎藤孝氏の略歴 1960年静岡県生まれ 東大法学部卒 明治大学文学部教授 「読書力」「声に出して読みたい日本語」等

 「読書力」に続くシリーズになりそうな一冊。会話において話の流れをつかむ(文脈を読む力)ために、会話中であってもキーワードのメモを取ることや、身体の反応(目をみる、微笑む、頷く、相槌を打つ)、身体のアクション(揺さぶり、ウオーキング、拍手)、そして「沿いつつずらす」奥義を説いています。相手の好きな話題を入れて、要約しながら言い換えて、具体的・本質的な質問を交えて、やり取りしていく。コミュニケーションの基礎は教養ということも。
 コミュニケーションのいわば技法を中心として、こうすればもっとよくなるもっとうまくいくという考え方をいろいろ提案しています。どれも納得できることです。特に、身体の反応とアクションを重要視していることがいい。斎藤氏の特長のひとつ。

推薦度 ★★★☆☆
 


1 『山田洋次×藤沢周平』

吉村英夫著 大月書店判 ¥1300 (評論)  127 

目次  第1章 「たそがれ清兵衛」試論  第2章 黒沢明から山田洋次へ  第3章 隠し剣鬼の爪 小論  第4章 隠し剣鬼の爪を撮りおえて 山田洋次監督インタビュー あとがきにかえて )
著者吉村英夫氏の略歴 1940年 早大卒 高校教師を経て三重大学非常勤講師 「完全版男はつらいよの世界」
 「学校が語りかけるもの」「幸福の黄色いハンカチと高校生」「高校生諸君!映画を見なさい」「老いてこそわかる映画がある」

 読んだ中では第4章が面白かった。映画「隠し剣鬼の爪」の話を直接監督から聞けるから。
 その中で、原作にはない射撃訓練のシーンは、時代が幕末であることを色濃くするためと、侍の戦いとは全く異質な西洋式軍隊が近代化を推し進めることになったことを暗示していること。
 時代小説作家は沢山いる中で(吉川英治・司馬遼太郎・山本周五郎・池波正太郎など)なぜ藤沢周平か、については、彼の小説は常に平侍・庶民が主人公であることと、そうではあるが一度剣を抜くとかなりの使い手であることだ。
 今までの時代劇では殺陣の場面が嘘ばかりだったとして、特に斬られる側の人間に興味を全く示していないこと、その人間性を正確に把握した上でないと嘘になる。剣術はひとつの技術だから、その再現が必要とも。
 今度の「隠し剣鬼の爪」の場合、いくつかの要素から成り立っていることがひとつのテーマと比べて難しくしている。友情・裏切り・復讐・恋愛・兄妹愛など。
 映画評論家の佐藤忠男さんが「たそがれ清兵衛」公開後、人と風土と社会と生活を描いて「七人の侍」を超えた映画だと評したこと。
 本の中には、撮影風景や映画のカットシーンが沢山挿入されていて、映画を頭の中でよみがえらせるのに役立ちます。
 吉村氏の評論では、一点集中型の評価というのか、他の映画との比較を一言で語りすぎていたり、あるシーンを他の映画から連想して監督の思いを推定することが多かったり、本当ですか、と問いたくなる所がちょっと目につきました。
 余り勇ましい評論よりも、監督の思いに沿ったおとなしい評論が私は好きです。
 
推薦度 ★★★☆☆
 

読書歳時記の目次へ    トップへ戻る

トップ家族新聞トピックスデータ高槻市読書映画家庭菜園ソフトボールジョギングコラム日記写真集リンク集