Corona Oliva

Viaggi

ToscanaMaggio 2008

チュンチュンチュン~

「ミヅーラさま、最後にもう一度カンポ広場へまいりませんか」
早朝、宿を静かに出た際カーニボンが粋なことを言った。スケさんをカラカラ引きお宿からすぐの広場を見渡す。「シエナはカンポ広場に始まりカンポ広場で終わりましたねぇ」などと語り合ったかどうかは忘れたが、小雨の中、目抜き通りをバス停留所に向かって歩く。「カーニボン、まったくもって腹が減りましたぁ」「ミヅーラさまは寝てる時と食べてる時以外、いつもそうおっしゃる」

プルマン乗車前に付近のバールで朝食をいただこうともくろむも、週末の朝だからか開いていない。空腹のまま乗車したプルマンは人々の日常的な移動に使われているのか、停留所ごとでわっさわっさと人が乗り込みかなり窮屈。都会に近づくにつれ徐々に強くなる雨を見ながら「今までお天気に恵まれていたのがラッキーだったのですかねぇ」と話し合う。

美しく磨かれたお宿も女性の繊細さを持つ親子ならでは?
美しく磨かれたお宿も女性の繊細さを持つ親子ならでは?

フィレンツェのバス停に到着し、まずはお宿さがし。ふと目に入ったインターホンを押すと、応答もなく「ガチャ」と解錠。安宿は1階にエントランスがなく一般の住居のごとく存在する。中へ入るとどこからか声が。

「こっちよ~・・・上よ~・・・」
ソフトな声の主は2階の階段吹き抜け部分から手招きする上下スウェット姿の男性。朝の掃除中のようで、空き部屋があれば見せてほしいとの要求に「いいわよ~」としなやかに応じてくれる。おお、部屋は恐ろしくキレイ!

先程から微動だにせず椅子に座っている置物が生きた翁とわかり挨拶すると「オハヨゥ」と高い声で返される。あれ?シニョーラ?と顔を見ると口ヒゲが生えており、女性ホルモンの強いナゾな親子に挟まれながら不思議な気分でチェックイン、そのまま外出したのであった。

今から日帰りで訪れるサン・ジミニャーノは、以前某NHK特集『イタリア縦断1200キロ』で紹介された街である。『中世の摩天楼』と評されたこの街は、13世紀には72もの塔が乱立したが現在は激減し14のみ・・・と言うがやはりこの狭い街に14もの塔が生えていたら特異性は充分である。

まずバスを降りて城壁の門をくぐると中世の街が広がる。先程からの中級の雨が東南アジア級の土砂降りに変化する中、腹も減ったしまずは本日のお昼どころを探すこととする。

ご覧くださいませミヅーラさま!路地の隙間から塔が顔を出しています!
ご覧くださいませミヅーラさま!路地の隙間から塔が顔を出しています!

雨が上がりかけたところでステキな1件を発見。名物とされる猪肉のソーセージがないのは非常に残念だったが、名物ピチはあるよう。

まずは赤ヴィーノを半分とプロシュット盛りでかんぱーい。ごっきゅんごっきゅん。ピヒャァ~~。「まるで生肉のような肉々しさですねぇ、カーニボン」と語り合ったかどうかは忘れたが、多少臭めのソレとヴィーノのコラボを楽しんでいると、猪肉のラグーソースがけピチが運ばれる。これもまた濃厚でンマい!昼間からこんなにディープに食し酔えるだなんて、普段土嚢を積んで頑張っている甲斐がありますねぇ、カーニボン。

「ミヅーラさま、昼間から凄くゼイタクをしておりますねぇ」「お城に戻ったらしばらくは味噌と塩ですよ、カーニボン」
「ミヅーラさま、昼間から凄くゼイタクをしておりますねぇ」
「お城に戻ったらしばらくは味噌と塩ですよ、カーニボン」
「やや、また塔が見えてきましたよミヅーラさまぁ
やや、また塔が見えてきましたよミヅーラさまぁ

さて、あれだけの雨でずぶ濡れになったのがウソのように、今はピーカン晴れである。「これだけ晴れれば濡れた羽も乾きますぅ」とカーニが言ったかどうかは忘れたが、腹ごなしに今回二つ目の塔、グロッサの塔に登ることとする。

「塔の入り口はあっち!あ、ちゃんと券を買ってくださいね!シニョーラ、この展示室も帰る前にどうぞ!」と、観光客をさばく入り口のオバちゃんに圧倒されながら塔内部へ。

シエナのマンジャの塔の方が世界の塔マニアに受けるやも
シエナのマンジャの塔の方が世界の塔マニアに受けるやも

シエナのマンジャの塔と違いこのグロッサの塔内部は広々としており階段も鉄板製と現代風、それほど苦労もなく頂上到達。この塔を中心とするように他の塔がニョキニョキ生えており、そのはるか向こうにはやはりトスカーナ調の風景が広がっている。

そこへ、目の前の塔の屋上に赤シャツを着たおっちゃんがヒョコっと出てきた。屋上にしつられたテラスセットへ腰をおろし観光客が満載されてる当グロッサの塔に顔を向けるおっちゃんと目が合う。
「ミ、ミヅーラさま、何者でしょうか・・・。」「塔の管理人でしょうか・・・。ご覧なさい、くつろいでますよ」。試しにおーいと手を振ってみると手を振り返す赤シャツ管理人を不思議に思いながら、再びコロナ隊は塔内部へ消えた。

背後には牧歌的な風景が広がりすぎる
背後には牧歌的な風景が広がりすぎる
権力を塔の高さで競ってた時代の、二つ合わせて一番高いふたごの塔
権力を塔の高さで競ってた時代の、二つ合わせて一番高いふたごの塔

「ミヅーラさま、このあとのご公務はエノテカ訪問でございます」というカーニに促され、しぶしぶ(ウソ)静かな路地の1件に潜入することとする。

中は石造りで広く、どうやら客はコロナ隊だけのよう。ここの試飲システムはまずカードを渡され、それを試飲マシンに挿しそれぞれ単価の違うヴィーノ選択ボタンを押すと一定量がグラスに注がれる。また次をという場合はカードを別マシンに挿しこみ、そうするとカードに計2杯の記録が残り、最後にお勘定するらしい。

サン・ジミニャーノに来たからには!ということで、DOCGの白ヴィーノ『ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ』をお試し。ごきゅんと一口すると、そのしっかりしたお味たるや、赤ヴィーノに匹敵する、今まで味わった白の常識を覆されたと言っても過言ではない力強さ!帰りがけには「ぜひ地下のカンティーナを覗いておいきなさい」と勧められた地下貯蔵庫を見学、大満足で再び街の散策へ。

カーニボン!お城と同じような甲冑がいますよ~
カーニボン!お城と同じような甲冑がいますよ~

この地域の特産物はイノシシ肉加工品のようで、あちこちに強烈なニオイを放った食料品屋などが軒を連ねており、見るだけでも楽しい。少しのお土産をゲットしたところで「ミヅーラさま、お帰りのバスの時間が近づいてございます」というカーニの残念な宣言でこの中世の摩天楼都市訪問を終えた。

「お食事も雰囲気もよろしゅうございますねぇ」「ミヅーラさま、先ほどから羽に視線を感じますです」
「お食事も雰囲気もよろしゅうございますねぇ」
「ミヅーラさま、先ほどから羽に視線を感じますです」

よる9時~~~
カーニボンが頭の羽をブラッシングしながら「ミヅーラさま、そろそろお食事でも」。いつも以上にカーニは本日の夕食に気合を入れてるようで、いいヴィーノとお肉を食すつもりでございます、と鼻息荒く語る。

本日のお食事処は隣の席で親子3人がピッツァをかっ喰らっている庶民的な雰囲気のお店。向こうの団体は歓声をあげて特大ステーキを迎え入れている。「ミヅーラさま、ヤツらアレを平らげるのですね」「二人では喰いきれないデカさですねぇカーニボン」

一方我々はプロシュット盛りをキアンティと共においしくいただく。カモ肉のラグーソースパスタ、トリュフとフンギのパスタ、豚煮込みなどをつつく。最後はサービスで頂戴したリモンチェッロをキュッ!道すがら調達したジェラート舐め舐め宿路についた。