憲法一覧

Marbury v. Madison  違憲立法審査権の確立

裁判所が違憲立法審査(司法審査)をできることを合衆国最高裁判所が認めた事件


マーベリー 対 マディソン
Marbury v. Madison

5 U.S. 137 (1803)
合衆国最高裁判所
Supreme Court of the United States
1803

 
 アメリカ合衆国憲法(the Constitution of the United States)は、合衆国最高裁判所(Supreme Court of the United States)が、第1審として審理できる訴訟の種類について規定している。つまり、憲法は、特定の種類の訴訟は、地方裁判所や控訴裁判所を経由せずに直ちに最高裁に訴えることができると定めている。この種の訴訟として、外交使節に関わる訴訟などがある。ところが、1789年に制定されたある法律が憲法に規定されたもの以外の事項について最高裁が第1審として審理できると定めたため、最高裁は、この法律が憲法に反して無効であると判決した。
 1800年の大統領選挙と連邦議会議員選挙で、連邦(合衆国)政府の権限強化を主張する連邦派(Federalists)は、連邦政府の権限強化に反対し州権限の維持を主張する共和派(Republicans)に敗北した。連邦派の現職ジョン・アダムズ(John Adams)大統領は残任期間にワシントン特別区に42人の治安判事を任命した。そのうちの1人が上告人のウィリアム・マーベリー(Willima Marbury)であった。マーベリーの辞令には国璽が押され封緘されたが、交付されないまま、政権は共和派の新大統領トーマス・ジェファソン(Thomas Jefferson)に引き継がれた。ところがジェファソンは、新国務長官のジェームズ・マディソン(James Madison)に対して、アダムズ前大統領が任命した治安判事の辞令の交付を保留するように命じたため、マーベリーにも辞令が交付されなかった。

 マーベリーは、辞令交付をマディソン国務長官に強制する職務執行令状(writ of mandamus)の発給を合衆国最高裁判所に求めた。マーベリーがこの請求の根拠としたのは、最高裁が第1審として職務執行令状を発給できると定める連邦法、1789年の「裁判所法(Judiciary Act)」第13条であった。ところが、最高裁が第1審として受理できる訴訟の種類について定める合衆国憲法第3条2節は、「大使その他の外交使節および領事に影響するすべての事件、ならびに州が当事者の事件」と規定しているのみで、裁判官の辞令交付を命じる職務執行令状の発給については規定していない。したがって、裁判所法第13条と憲法第3条2節の抵触の問題が争点となった。
 アダムズ大統領に任命された連邦派合衆国最高裁のジョン・マーシャル(John Marshall)長官が法廷意見(opinion of the court)を書いた。



≪Par.1≫
[1] Certainly all those who have framed written constitutions contemplate them as forming the fundamental and paramount law of the nation, and consequently the theory of every such government must be that an act of the legislature, repugnant to the constitution, is void. [2] It is emphatically the province and duty of the judicial department to say what the law is.  [3] Those who apply the rule to particular cases, must of necessity expound and interpret that rule.  

[4] If two laws conflict with each other, the courts must decide on the operation of each.



[第1文]
  Certainly all those who have framed written constitutions contemplate

them as forming the fundamental and paramount law of the nation, and

consequently the theory of every such government must be that an act ofthe legislature, repugnant to the constitution, is void.

〈語句〉
● certainly 副)~は確かなことである
 特定の動詞や形容詞を修飾するのではなく、

  文章全体を修飾する副詞(文修飾)=It is certain that…. 

 ・文修飾:Happily, President Reagan did not die.

    「幸いなことにレーガン大統領は死ななかった」 
 ・動詞修飾:President Lincoln did not die happily.

    「リンカーン大統領は幸福な死に方をしなった。」

● those who~ =those people who~ ~する人々
  those には「そのような」という意味があるが、「そのような人々

  「どのような」人々かは、who ~で説明されている。

● frame 名)枠組み(フレーム)、他)~の枠組みを作る、構成する、起草する
 英単語の名詞は、その名詞の意味に対応した動詞として使われることが多い 。
   例)water 他)(花などに)水をやる、 oil 他)~に油をさす


● written 形)書かれた
 過去分詞は端的に「~された」という意味の形容詞としてとらえる。受動態と

 分類される文、例えば、The house was built.もThe house was big.と同様に

 builtが「建てられた」という意味の形容詞であるととらえる。

● constitution 名)1.憲法、2.骨格、構造、3. 政体
 例えば、「アメリカ合衆国憲法」(the Constitution of the United States)という
 言葉には「アメリカ合衆国の骨格(基本構造)」というニュアンスがある

● contemplate 自)沈思する 他)1.~を凝視する 2.~を予期する、もくろむ
 contemplate A as B  AがBであると考える
・form 名)形 他)~を形作る 
・fundamental 形)根本的な
・paramount 形)至上の、最高の
・nation 名)1.国家、2.国民 3.民族
・consequently 副)結果として
・theory 名)理論
・government 名)1.政府、2.統治 
 
● act 名)1. 行為 2. 法律(議会制定法)
  おそらく、もともと「行為」という意味で使われていたものが、the act of
 Parliament「英国議会の行為」という文脈で用いられ、そこから「法律」という意味
 が派生したと考えられる。したがって、同じ法律でも「議会制定法」という意
 でか使れず「判例法」という意味では使われない。
  action(行動、訴訟)という単語についても同じことが言える。
   拙稿「日常語の法律用語としての固定化について」『英語教育』

    (2013年2月号)92頁、参照

・legislature 名)立法部、議会
・repugnant 形)1.非常に不快な、2.矛盾した、調和しない
・void 形)無効な


〈文法〉
● 基本構造(第3文型)  

         those contemplate  them.
        S     V      O 
     「人々はそれらについて考える。」
   先行詞(この文では、those)を肉付けして形容詞のように説明するの

   係代名である(動詞を必ず伴う)。 
   肉付け部分のwho~の関係代名詞節の中には必ず1つは動詞があるので(この

   文でframed)、基本構造の動詞は2つめの動詞であり(この文では

   contemplate)その前までが関係代名詞節である。 
       those ←〔…framed…〕 contemplate~
              V1      V2

  ※ contemplate が現在形であるのは、憲法の起草者達がまだ生きているからで

   ある。この訴訟の当事者のマディソン自身が主要な執筆者の一人である。

● as 「~として」以下の~ing…には、意味の上で V + O 「~を~する」という関

 係がある:forming { the fundamental…nation }   
       (v)       (o)     「(~)を形作るものとして」

● and consequently 以下の文の基本構造:
           theory be { that…void } 
          S   V     C     
 「SはCである」という第2文型。第2文型は、基本的にはA=B「AはBであ

  る(になる)」という文型である。したがって、Bは主語の意味内容を補う語

  という意味で「補語(complement)」と呼ばれる。

    この文では、theory =that…
     補語のthat 内部にまた第2文型の文章が入っている二重構造となって

     いる。
     {act  is  void}  act = void 「法律無効である。」
      s   v   c  

● repugnant to…「...に反する」が修飾しているのは、直前のlegislation、あるいは
 act のいずれかという疑問が生じるが、これは文法や語彙の知識だけでは決定で

 きな文法判断の限界に属する事項である。 
  直前をコンマで区切っていること、「憲法に反する立法部」は、それなりに筋

  が通るが、立法部の作った法律が憲法に反するということが言いたいのである

  と考えてact を修飾していると判断する。

         act  ↖

               repugnant to the constitution

      legislature × ↙

 
  文法的には両方の修飾が可能であるが、文法は万能ではない。結局は、文章の

  意がすんなりと理解できるもっとも筋のとおった解釈が優先される。
  (ただし、この部分は「憲法に反する立法部の法律」と訳さざるをえないの

   で、和訳にも同じ曖昧さが残る。)

〈訳〉
 憲法を起草してきた人々すべては、国家の根本的かつ至高の法を形成するも
 のとして憲法をとらえていることは確かであり、結果として、そのような統
 治すべての理論は、憲法に反する議会の法律は無効であるということであ

 る。



[第2文]
 It is emphatically the province and duty of the judicial department to say

 what the law is.

〈語句〉
・emphatically 副)1.断然、まったく 2. 強調して、断固として
 emphasize(~を強調する)の副詞形
・province 名)1.領域、分野 2.地方、地域
・judicial 形)1.司法の、2.裁判の、3.裁判所(裁判官)の 
・department 名)1.(政府、企業の)部、局、部門 

         2.(大学の)学部、学科 3.(米の)省

〈文法〉
● 基本構造(第2文型):
   It is the province and duty. 「それは領域と義務である。」
   It~toの構文である。れは断然に司法部の領域と義務である」と言う

   と、「それとは何か、という疑問が生まれる。続いて「何が法であるか

   を述べること」という不定詞の名詞的用法が続いて説明するという用法で

   ある
    和訳では「何が法であるかを述べることは断然に司法部の領域と義務で

   ある」となる。形式主語の it は訳さない。内容のある主語、to say…を

   文頭に置くと、To say what law is is  the province…という is が連

   続して文構造が分かにくい不格好な文なる。


〈訳〉
  何が法であるかを述べるのは断然に司法部の領分と義務である



[第3文]
 Those who apply the rule to particular cases, must of necessity
  expound and interpret that rule.


〈語句〉
・apply 他)~を適用する
・case 名)事件、事例、ケース
・of necessity 副)必然的に、必要にせまられて (=necessarily)
・expound 他)~を(詳しく)説明する
・interpret 他)~を解釈する


〈文法〉
● 基本構造(第3文型):
 Those expound and interpret rule. 「人々はルールを説明し解釈する」
  S       V        O  
  who~cases は、those を説明する形容詞節である。who~の関係代名詞節の

  中には必ず1つは動詞があるので(この文では、apply)、基本構造の動詞は2つ

  めの動詞のexpound…である。
   Those ←〔who  apply  the rule to particular cases〕must~expound….
             V1                      V2
 「特定のケースにルールを適用する人々」。those はwho~と一緒になると

 「人々」という意味になる。those people who~「~するような、そんな人々」

  という表現が土台にあって、そこからpeopleが省略された形である。


〈訳〉
  ルールを特定の事件に適用する者は、必然的にそのルールを説明し解釈し
  なければならない。



[第4文]
 If two laws conflict with each other, the courts must decide on the
 operation of each.

〈語句〉
● conflict 自)1.矛盾する、2.衝突する、対立する
  A conflicts with B  Aは、Bと矛盾する  conflict of laws 抵触法、国際私法

・each other お互い(に、を)
・operation 名)働き、機能 
● decide on ~について決定する
 on には、talk on the news などのようにabout「~について」という意味

 ある。


〈訳〉
 もし二つの法が互いに矛盾するならば、裁判所はそれぞれの働きについて決

 定しなければならない




≪Par.2≫
[1] So if a law be in opposition to the constitution, if both the law and the constitution apply to a particular case, so that the court must either decide that case conformably to the law, disregarding the constitution, or conformably to the constitution, disregarding the law, the court must determine which of these conflicting rules governs the case.  [2] This is of the very essence of judicial duty.  [3] If then the courts are to regard the constitution and the constitution is superior to any ordinary act of the legislature, the constitution, and not such ordinary act, must govern the case to which they both apply.  [4] Those then who controvert the principle that the constitution is to be considered, in court, as a paramount law, are reduced to the necessity of maintaining that courts must close their eyes on the constitution, and see only the law.



[第1文]
 So if a law be in opposition to the constitution, if both the law and the
 constitution apply to a particular case, so that the court must either
 decide that case conformably to the law, disregarding the
 constitution, or conformably to the constitution, disregarding the law,
 the court must determine which of these conflicting rules governs the
 case.

〈語句〉
・ opposition 名)反対、対立   in opposition to ~に反して、~と対立して 
・constitution 名)1.憲法、2.骨格、構造、3. 政体
・apply 自)適用になる、適用される
・…so that ~ …するので~、…それゆえ(したがって)~
・either A or B  AかBのいずれか 
・conformably to ~に準拠して、~従って  

  conform to ~と一致する、~に従う
・disregard 他)~を無視する
● conflicting 形)矛盾している  conflict (矛盾する、衝突する)の現在分詞
  この種の~ing(現在分詞)は、“She is charming” や“ His story is interesting.”
  などと同様に端的に形容詞ととらえる方が読みやすい。

・govern 他)1.~を規律する 2.~を統治(支配)する


〈文法〉
● 文の全体構造:(1)if a law…,(2)if both the law…, the court must determine…
 「もし(1)であり、(2)であるなら、裁判所は~を決定しなければなら

  ない。」
  the court must determine…の前には、if やso that などの文をつなぐ語句が

  付ておらずコンマしかないので、独立しうる文章、つまり主文であることが

  分る。また、so that…は、(2)if both the law…, に含まれていることも

  分かる。

● 文頭のSo ifの節の中で、動詞がis ではなく原型のbeになっている用法は、仮定

 法現在と呼ばれており、「現在や未来に関する単なる仮定を表す」古風な言い回

 しであり、is となっていても意味は同じである。

● disregarding の~ing は、分詞構文である。分詞構文は、前後の文脈に合った適

 当な接続詞でつなぐ用法であり、何が適当な接続詞であるかは自分が考える。
     ・Feeling sick, Mary went to school.   
      「体調が悪かったけれども、メアリーは学校に行った。」 
     Feeling sick, Mary was absent from school.       
      「体調が悪かったので、メアリーは学校を欠席した」
  これらのの例文では同じFeeling sickでも文脈によって含意が異なる。
 本文では、and disregardというくらいの単純な意味で前文とつながっている
 
● If節が終わった後の主文の基本構造は、第3文型
     court  determine  {which … }  
      S      V       O 「裁判所は、どの…を決定する。」
 文型は多重構造になっている。つまりこの文では第3文型の目的語の中でさらに

 第3文型がある二重構造になっている。
   O={ which of these conflicting rules governs the case} 
                s         v      o
 「これら矛盾しているルールのうちどれが事件を規律するのかを」


<訳>
  それゆえある法が憲法に反し、その法と憲法の両方が特定の事件に適用に

 なり、したがって裁判所はその法に準拠して事件について決定し憲法を無視

 しなければならないか、あるいは憲法に準拠してその法を無視しなければな

 らないかのいずれかとすれば、裁判所はそれらの矛盾するルールのうちどれ

 が事件を規律するのかを決定しなければならない。

 


[第2文]
  This is of the very essence of judicial duty.

〈語句〉
● very 形)まさに  

  後に名詞があるので、「非常に」という意味の副詞ではない。
● essence 名)本質、精髄   essential 形)本質的な


〈文法〉
● of +抽象名詞=形容詞
  of very essence = very essential「まさしく本質的なことである」
 This desk is made of wood.などように、そもそもof には「~の性質をもって

 いる」という含意がある。
  of+抽象名詞は、例えば、She is a woman of no importance.「彼女はつまら

 ない女性である。」というように直接名詞(woman)を修飾する形容詞して

 も、She is of no importance.というように文の補語となる形容詞としても用いら

 れる。


<訳>
 これは、司法の義務についてまさしく本質的なことである。



[第3文]
 If then the courts are to regard the constitution and the constitution is
 superior to any ordinary act of the legislature, the constitution, and not
 such ordinary act, must govern the case to which they both apply.

〈語句〉
・regard 他)1.~を尊重する、 2. regard A as B  AをBと見なす
・superior to 形)~より優れている、~を優越する
・ordinary 形)通常の
● act 名)1.行為、2.法律(議会制定法) 

  ※ Par.1の第1文の語句解説参照。


・legislature 名)立法部、議会  


〈文法〉
文頭のif節の中でBe動詞+to不定詞の形が使われている。この表現は、予定、

 義務、可能、運命、意図などの含意をもつが、基本的には「~する方向を向い

 ている」という意味ある。例えば、Man is to die.という文は、「人は死ぬ運

 命にある」と慣例的に訳されるが、「人は死ぬ方向を向いている」というのが原

 意である。この形で使われる不定詞の用法は形容詞的用法である。

    Man is mortal. 
  拙稿「原型不定詞について」『英語教育 』1997年11月号(84-85頁)参照
                   
  本文のthe court are to regard…は、「裁判所が憲法を尊重しなければなら

 ない、尊重することになっている」くらいの意味である。

● 文末の関係代名詞節 the case ←〔 to which they both apply 〕
  「それら両方が適用される事件」は、they both apply to the case という文が

  もとになっている。


〈訳〉
 それゆえ裁判所が憲法を尊重しなければならず、憲法は立法部の通常の法律

 のどれよりも優越するとすれば、そのような通常の法律ではなく憲法が、

 方が適用になる事件を規律しなければならない。



[第4文]
 Those then who controvert the principle that the constitution is to be
  considered, in court, as a paramount law, are reduced to the necessity of
  maintaining that courts must close their eyes on the constitution, and see
  only the law.

〈語句〉
・controvert 他)1.~ついて議論(論争)する、2.~を反駁(否定)する
・principle 名)原理、原則
・constitution 名)1.憲法、2.骨格、構造、3. 政体
・paramount 形)至上の、最高の

● consider A as B AをBと考える、みなす
  ここでは be considered as~ 「~と考えられている、みなされている」

  という受動態で用いられている。

● reduce A to B 1.AをBまで減らす、引き下げる、2.AをBの状態にする、
         3.AをBまで陥らせる(落とす)
  ここでは、3.の意味で、受動態の形で用いられている。
  例)He was reduced to begging.「彼は物乞いをするまでに落ちぶれた。」

● necessity 名)必要(性)
  本文のare reduced to the necessity of~ing は、「~することが必要な状況に

  陥っいる」「~せざるを得ない立場に追いこまれている」というくらいの意

  味である。

・maintain 他)1.~を維持する、2.~を主張する


〈文法〉
基本構造:Those are reduced to necessity.
 Those(複数形)に対応する動詞は、controvert とareの2つである。1つめの
 controvert は関係代名詞(who)節の内部の動詞であるので、2つめのare が基

 本構造の動詞であることが分かる。
  Those ←〔 who controvert the principle that…〕are  reduced to

             v1               V2      

● who節内のthat…は、the constitution is to be considered…と完全な文章が続いて
 おり関係代名詞ではなくprinciple の内容を説明する同格節である。

 「~という原理」
    関係代名詞節の場合は、後続部分の主語、目的語などが欠けている
      例) the principle ←〔 that they never know×

● principle に続く同格(that)節の中に、is to be considered…という

 Be動詞+to不定詞が用いられている。この形は、予定、義務、可能、運命など

 の意味をもつが、ここでは、「義務」=must be considered の意味である。

● maintaining that…「…と主張すること」のthat節内のmust に続く動詞は、close

 とsee の2つある。


〈訳〉
 したがって、憲法が裁判所において至高の法であると見なされなければなら

 ないという原理に反駁する人々は、裁判所は憲法に対して目を閉じ、法律の

 みを見なければならないと主張せざるを得ない立場に堕している。




≪Par.3≫
[1] This doctrine would subvert the very foundation of all written constitutions. [2] It would declare that an act, which, according totheprinciples and theory of our government, is entirely void; is yet, in practice, completely obligatory. [3] It would declare, that if the legislature shall do what is expressly forbidden, such act, notwithstanding the express prohibition, is in reality effectual. [4] It would be giving to the legislature a practical and real omnipotence, with the same breath which professes to restrict their powers within narrow limits. [5] It is prescribing limits, and declaring that those limits may be passed at pleasure.


[第1文]
 This doctrine would subvert the very foundation of all written constitutions.

〈語句〉
・doctrine 名)教義、教理、主義
・subvert 他)1(政府などを)転覆させる、2(信念などを)次第に失わせる
・very 形)まさにその
・foundation 名)1.設立、2.基礎、土台
・written constitution 名)成文憲法


〈文法〉
● would (will の過去形)の用法は、仮定法過去である。「仮にこのような教義

 が認められるとすれば」というような仮定の意味が込められている。

 

 ※ 仮定法になぜ過去形が用いられるかついては、さまざまな解釈があるであろ

  うが、一つの説明として、過去のことと同様に想起の対象としてしか存在しな

  (現実の世界では現在も将来においても存在しない)ことを表しているとみ

  ることができる。

    拙稿「過去概念と人ー―想起の時制」『ことばから人間を』所収、

    230~241頁(昭和堂 1998年)参照


〈訳〉
  このような教義は、成文憲法の礎そのものを壊すであろう。


[第2文]
 It would declare that an act, which,according to the principles and theory
 of our government, is entirely void, is yet, in practice, completely
 obligatory.


〈語句〉
・It = 前文のdoctrine「教義」を受けている。
・declare 他)~を宣言する、表明する
● act 名)1.行為、2.法律(議会制定法) 

  ※ Par.1の第1文の語句解説参照。
・principle 名)原理、原則
・theory 名)理論
・government 名)1.政府、2.統治
・entirely 副)完全に、まったく
・void 形)無効な
・yet 副)1.まだ、2.それでも、依然として
・in practice 実のところ、実際問題として
・completely 副)完全に、まったく
・obligatory 形)義務としてなすべき、義務的な

〈文法〉
● would は、第1文と同様の仮定の意味が込められた仮定法過去である。
● declare that…「…ということ宣言する」のthat節内の文は第2文型:
        act is obligatory  
         S   V    C            
 according to~や in practice という前置詞句が挿入されているので分かりにくい

 が、以下のような構造になっている。
 act, ←〔which, according~voidis yet in practiceobligatory.
  S                    V            C

 


〈訳〉
 そのような教義は、われわれの統治の原理と理論によれば、まったく無効で

 ある法律が、それでも実際は完全に義務的なものであると宣言するであろ

 う。



[第3文]
 It would declare that if the legislature shall do what is expressly forbidden,
  such act, notwithstanding the express prohibition, is in reality effectual.

〈語句〉
・It = 第1文のdoctrine「教義」を受けている。
・declare 他)~を宣言する、表明する
・legislature 名)立法部、議会 
・expressly 副)明示的に
・forbidden  forbid 他)~を禁じる、の過去分詞形
● act 名)1.行為、2.法律(議会制定法)

  ※ Par.1の第1文の語句解説参照。
・notwithstanding 前)~にもかかわらず
・express 形)明示的な、他)~を表現する、表明する
・prohibition 名)禁止
・in reality (ところが)実は、実際に
・effectual 形)有効な、効果のある


〈文法〉
● would は、第1文と同様の仮定の意味が込められた仮定法過去である。

● declare that…「…ということ宣言する」のthat節内にさらに if~forbidden

 という節が入っている。
  declare { that if the legislature…forbidden, /suchact…is in reality effectual.}

● if 節内は第3文型:legislature shall do{what is expressly forbidden}
            S        V       O
   whatは、do の目的語であるが、what節内では、主語である。

● if 節内にshall が入っているのは、おそらく「どうしても(何がなんでも)

 やる」とい非常に強い意志や強制力を表している。
  未来の仮定を表すif節の中では、未来のことでも原則として will が用いられ

 ないのは語源的には、will が時系列的に未来のことを示す言葉(単純未来)で

 はなく、「~したい」(wish to)という意味であったことから説明できる。

 単に「~場合は…る」という文では(「~したい」と言わない場合は)、

 現在形でよい。
 今日も「~する意志があるなら」と言いたい場合は、if節の中でもwillを使う。
    例)Smoke the cigarette, if you will.

 

 本文のように、if 節の中に shall が用いられている場合も、同じことが言える。

● that節内の主文の基本構造は、notwithstanding~とin realityが挿入されて分かり

 にくいが、act is effectual である。


〈訳〉
 そのような教義は、立法部が明示的に禁じられていることを敢えて行って

 も、のような行為(法律)は、実際には有効であると宣言するであろう。



[第4文]
 It would be giving to the legislature a practical and real omnipotence, with
  the same breath which professes to restrict their powers within narrow
  limits.

〈語句〉
・It = 第1文のdoctrine「教義」を受けている。
・legislature 名)立法部、議会 
・practical 形)1.実際的な、実践的な、2.実用的な
・omnipotence 名)全能 
・breath 名)息 

  with [in] the same breath (矛盾することを)同時に、矢継ぎ早に
・professes 他)1.(~であると)公言する、

          2.(to do~:すると)自称する、ふりをする
・restrict A within [to] B  AをBの範囲に制限する
・power 名)力、能力、権力、権能
・narrow 形)狭い
・limit 名)限度、限界、境界 他)~を限定する


〈文法〉
● would は、第1文と同様の仮定の意味が込められた仮定法過去である。

● be giving の現在進行形には、非難の意味合いが込められている。
  例)You are always finding fault with me.
    「君はいつも私のあらさがしばかりしている。」

 

〈訳〉
 そのような教義は、立法権能を狭い境界内に制限していると公言し、

 その舌も乾かぬうちに、実践的で現実的な全能を立法部に与えて

 いるであろう。



[第5文]
  It is prescribing limits, and declaring that those limits may be passed at
  pleasure.

〈語句〉
・It = 第1文のdoctrine「教義」を受けている。
・prescribe 他)1.(薬など)を処方する、2.(規則など)を定める
・limit 名)限度、限界、境界 他)~を限定する
・declare 他)~を宣言する、表明する
・pass 自)通過する、他)1.~を通りすぎる、2.(試験など)に合格する、
             3.(限界など)を超える
・at pleasure 意のままに


〈文法〉
● is prescribing この現在進行形は、おそらく前文(第4文)のwould begiving~

 との同一性(同時進行)を表している。しがたって、仮定が二重になるので

 wouldbeにていないのであると思われる。

be passed(受動態)は、the legislator may pass those limitsという能動の文が

 もとになっている。
  
 Marshall長官は、立法部が憲法の制限を超える例えとして、「州から輸出され

  た物品に対してはいかなる租税も関税も課してはならない」と定める合衆国憲

  法第1条9節に反して、州から輸出される綿やタバコに関税が課される場合を

  挙げている。

〈訳〉
 そのような教義は、限界を定め、同時にそのような限界は意のままに超え

 うる宣言している。




【解説】
 日本国憲法は、第81条において「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定めている。合衆国憲法には、これに類する条項がない。合衆国最高裁は、このMarbury事件において、裁判所が違憲立法審査(司法審査)を行えるかどうかを判断する必要に迫られた。マーシャル長官は、これを肯定したが、その理論を単純化すれば、憲法は「至高の法」(supreme law)として創られたのであるから、法律が憲法に反する場合、その法律を無効とする、ということである。
 連邦派のアダムズ大統領が大統領選で共和派のジェファソンに敗れた後、司法部における連邦派の勢力を増大させるために泥縄的に裁判官を任命した。この時に任命された裁判官は、「真夜中の裁判官(midnight judges)」と呼ばれることがある。名前の由来は、アダムズが辞令に署名する作業が任期終了の直前の夜中までかかったためであると言われている。そもそもこの強引なやり方に問題があった。
 マーシャル長官は、アダムズ大統領に任命された連邦派の裁判官であったが、「真夜中の裁判官」を任命させる職務執行令状を発給する権限は憲法によって最高裁に認められていないと判決した。これによって共和派との決定的な衝突を避けることができた。同時に、合衆国最高裁には、議会の法律を違憲無効とすることができる強力な権能があることが確立した。
 比較的最近の研究において、合衆国憲法第3条2節によって最高裁に第1審管轄が明示的に認められた事件、すなわち「大使その他の外交使節および領事に影響するすべての事件、ならびに州が当事者の事件」について、最高裁が第1審として職務執行令状を発給できると限定的に解釈して、1789年の裁判所法第13条は、裁判官任命については適用できないが(適用違憲であるが)、条文そのものは合憲と判断することもできたと指摘されている。

 この判決をより詳細に解説・分析したものとして、樋口範雄『アメリカ法ベーシックス10―アメリカ憲法』pp.18-26 (弘文堂、2011)参照






 

 

2018年03月04日

Korematsu v. U.S.  日系アメリカ人の強制退去

第2次大戦時の日系アメリカ人の強制退去命令は合憲

コレマツ 対 合衆国
Korematsu v. United States
323 U.S. 214 (1944)
合衆国最高裁判所
Supreme Court of the United States
1944

 



 1941年12月に日本軍がハワイの真珠湾を攻撃すると、アメリカ本土の西海岸に対する攻撃を恐れたフランクリン・ルーズベルト大統領は、翌1942年2月に大統領令9066(Executive Order 9066)に署名した。この命令は、スパイ活動や国防関連施設への破壊工作に対して防衛措置をとるために、国防長官や軍司令官に、つぎの権限を与えた。① 軍事地域(military areas)を指定する。② 軍事地域内の人々に、地域内に留まるべきことを命じる。③ 軍事地域から退去すべきことを命じる。この命令に違反すると、連邦法によって1年以下の禁固刑や罰金に処せられた。
 西部方面司令長官に任命されたディウィット中将は、大統領令9066の授権にしたがって、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州、アリゾナ州の太平洋岸から約100マイルの帯状の地域を、地理上敵国による攻撃やスパイ活動や破壊工作を受けるおそれがあるとして軍事地域に指定し、軍事地域内のすべての日系アメリカ人に対して、夜8時から朝6時まで外出を禁じる夜間外出禁止令(curfew order)を出した。さらにディウィット司令官は、軍事地域内を108の地区に分割し、それらの地区に順次「民間人退去命令(Civilian Exclusion Orders)」を出し、そこに居住するすべての日系アメリカ人にその地区から6日以内に退去し、競馬場などに設けられた集合センターへ集合することを命じた。その後、軍事地域内の約12万人日系人が強制収容所に送られた。
 この訴訟の原告であるフレッド・トヨサブロウ・コレマツ(Fred Toyosaburo Korematsu)は、1919年に日系移民の両親の三男として生まれた。一家は、カリフォルニア州オークランド近郊に住み、両親は苗木栽培を生業としていた。彼は、オークランドの職業学校で溶接を学び、造船所の溶接工となった。1941年に彼は海軍に志願したが、胃潰瘍を理由に不適格とされた。彼には、ボイタノ(Boitano)という名前のイタリア系アメリカ人の恋人がいた。二人の仲は深まり結婚を約束したが、異人種間の結婚を禁じるカリフォルニア州法のために結婚できないでいた。
 戦争が始まり、日系アメリカ人に退去命令が出されると、彼はボイタノと二人で中西部に行くと言って家と出た。しかし、中西部に移り住むための十分な資力がなかったため、サン・リアンドロの別の場所に部屋を借りて隠れるように暮らし始めた。その間、日系人であることを隠すために顔の整形手術を受けた。1942年5月9日にサン・リアンドロを含む周辺地区に退去命令が出され、5月22日の午後、彼はボイタノと二人で通りを歩いているところを警察に逮捕、起訴された。連邦地方裁判所での事実審理によって連邦法違反で有罪とされた(刑の宣告猶予、5年間の保護観察)。コレマツは、退去命令が、日系人のみを対象とした人種差別であり、合衆国憲法修正第5条に違反するとして上訴した。
 修正5条は、「何人も法の適正なプロセス(due process of law)によらずに生命、自由、財産を奪われない」と規定している。州の法律が差別なものである場合、修正第14条の平等保護条項が適用される。この条項は「どの州も誰に対しても法の平等な保護(equal protection of law)を否定してはならない」と定め、明示的に差別を禁止している。しかし、この訴訟で問題とされているのは、連邦政府の法令であり、平等保護条項は適用されない。修正第5条は、連邦の法令を対象としているが、差別を禁じる明示的な文言がない。このため修正第5条の「法の適正なプロセス」に差別禁止が含まれると解釈されてきた。ここにも連邦国家であるアメリカ合衆国の特徴が表れている。
 合衆国最高裁判所の9人の裁判官は、6対3で合憲と判断し、多数意見を代表してヒューゴ・ブラック(Hugo Black)裁判官が判決文を書いた。



Par.1
[1]It should be noted, to begin with, that all legal restrictions which curtail the civil rights of a single racial group are immediately suspect. [2] That is not to say that all such restrictions are unconstitutional.  [3] It is to say that courts must subject them to the most rigid scrutiny.  [4] Pressing public necessity may sometimes justify the existence of such restrictions; racial antagonism never can.


[第1文]
 It should be noted, to begin with, that all legal restrictions which curtail
 thecivil rights of a single racial group are immediately suspect.

〈語句〉
・note 他)~に注意して心に留める、特に言及する
・to begin with 最初に、第一に
・legal 形)1.法律の、法に関する、 2.適法な
・restriction 名)制限、限定
・curtail 他)~を削減する、切り詰める
● civil right 名)市民的権利 
 広義では、契約を締結する権利など市民が個人として有するさまざまな権利を
 さすが、狭義では選挙権、公教育、雇用、住居の選択など、さまざまな面で平
 等な扱いを受ける権利をさす。

・single 形)単一の
・racial 形)人種の
・immediately 副)ただちに
● suspect 形)疑わしい 他)~を疑う 名)容疑者 
 ここでは、「違憲であることが疑われる」という形容詞の意味で使われている。


〈文法〉
● It should be noted~that…:
 文頭にIt があるので、その前に何もない(代わりをする名詞がない)から、

 it~that…の構文「…は~である」であることが分かりやすい。
  例えば、It is true that she can speak French. 「彼女がフランス語を話せる

 というは本当です」という文では、あくまで英文は、「それは本当です、彼女

 がフランス語話せるということは」と言っている。 

  この構文は、最初に「それは」と言って、「何が」という疑問を持たせて、

 それをthat…で説明する構文である。
  it~to の構文や so~that の構文(それほど~)も同様である。


● that 節の中の基本構造:第2文型
    restrictions are suspect
       S   V   C  制限は疑わしい」

● 関係代名詞節
    restrictions←〔which  curtail~〕 are
      S            v1     V2
 主語に関係代名詞が付いた場合、関係代名詞節の内部に動詞が1つあり

 (curtail)、その後の2つめの動詞(are)が基本構造(この場合は第2

 文型)の動詞であり、その前まで関係代名詞節であることが分かる。

 
〈訳〉
 はじめに、単一の人種グループの市民的権利を削減するすべての法的

 制限は、ただちに違憲であることが疑われることが留意されるべきで

 ある。



[第2文]
 That is not to say that all such restrictions are unconstitutional.

〈語句〉
・restriction 名)制限、限定
・unconstitutional 形)憲法違反(違憲)の


〈文法〉
● That is not to say that…
  That は、全文の内容「違憲の疑いがあること」を受けている。not to say は

  不定詞詞的用法である。「そのことは…ということではない」→

  「そうはいっても…いうことにはならない。

● not…all は、部分否定「すべてが…であるというわけではない。」
 

〈訳〉
  そう言っても、そのような制限すべてが違憲であるというわけではない。



[第3文]
 It is to say that courts must subject them to the most rigid scrutiny.
 Pressing public necessity may sometimes justify the existence of such
 restrictions; racial antagonism never can.

〈語句〉
・subject A to B  AをBに服させる
・rigid 形)厳格な、厳密な
● scrutiny 名)精密な調査、審査
 ここでは、法令が合憲であるかどうかという「司法審査」という意味で使われて

 いる。

・pressing 形)緊急の
・public 形)公共の、公衆の
・necessity 名)必要(性)
・justify 他)~を正当化する
・existence 名)存在
・restriction 名)制限、限定
・racial 形)人種の
・antagonism 名)敵意、反感


〈文法〉
● It is to say that…
   that 節は say の目的語であることから次の2点から分かる。
    ① It~that の構文でない
    ② Itは、前文の That を受けている
   結局は前々文(第1文)の内容「1つの人種の権利の制限は違憲の疑いが

   ある」を受けている。
    前文の not to say that…「…ということではない」に対して、そうではなく
   「…ということ」という展開である。

● them は、最も近い複数名詞、前文の all such legal restrictions を受けている。

● may sometimes 「時々~することがある」

● racial antagonism never can の後に justify the existence of such restrictions. が
 省略されている。


〈訳〉
 それは、裁判所がそれらの制限をもっとも厳格な審査にかけなければなら

 ないということである。緊要な公の必要は、時としてそのような制限の存

 在を正当化することがあるが、人種的反感は、決してそれを正当化できな

 い。



≪Par.2≫
[1] Like curfew, exclusion of those of Japanese origin was deemed necessary because of the presence of an unascertained number of disloyal members of the group, most of whom we have no doubt were loyal to this country.  [2] It was because we could not reject the finding of the military authorities that it was impossible to bring about an immediate segregation of the disloyal from the loyal that we sustained the validity of the curfew order as applying to the whole group.
 

[第1文]
  Like curfew, exclusion of those of Japanese origin was deemed necessary
  because of the presence of an unascertained number of disloyal members
  of the group, most of whom we have no doubt were loyal to this country.


〈語句〉
・like 前)~と同様に
● curfew 名)1.夜間外出禁止令、 2.門限
 この判決に先立って合衆国最高裁は、1943年の Hirabayashi v. United States

 にいて、強制退去命令の前に出された夜間外出禁止令に対して合憲判決を行っ

 ていた。

・exclusion 名)排除、退去
・those 名)人々
● origin 名)1.起源、 2.生まれ、血統
  those of Japanese origin 日系人

・deem O+C  O を C とみなす
・necessary 形)必要な
・because of~ ~のために(原因)
・presence 名)存在
・unascertained 形)不確定の  ←ascertain 他)~を確認する
● disloyal 形)忠誠心をもたない、不忠の 
  ここでは「スパイ活動をするような」という意味で使われている。

・we われわれ=合衆国最高裁の裁判官
・have no doubt [that]… …であることを疑わない
・loyal 形)忠誠心のある、忠実な


〈文法〉
● deem O+C の形が受動態になって、

 O was deemed C「Oは、Cと見なされた」となっている。

● because of the presence of A = because A were present
   「Aの存在のために」→「Aが存在したから」

an unascertained number of~ 「不確定の数の~」

● most of whom~の先行詞が入る位置は、通常の語順にするとwe have no doubt
 [that] most of [先行詞] were loyal である。we have no doubt [that] の後に
 S+V の形がつづくはずであるのに、主語なく were が続いているので分かる。
  「 [先行詞] のほとんどは、忠実であったことをわれわれは疑っていない。」

● whom 先行詞は、直前の group(日系人のグループ)である。
  仮に先行詞が disloyal members であるとすると非論理的な文になる:
  「忠実であったことを疑っていない不忠のメンバー」

 
〈訳〉
 夜間外出禁止令と同様に、日系人の退去が必要であると見なされたのは、

 日系人のグループ――そのほとんどはこの国に忠実であったことをわれわ

 れはまったく疑わないが――の中に数は不確定ながら不忠のメンバーが存

 在したからである。



[第2文]
  It was because we could not reject the finding of the military authorities
  that it was impossible to bring about an immediate segregation of the
  disloyal from the loyal that we sustained the validity of the curfew order as
  applying to the whole group.

〈語句〉
・reject 他)~を拒絶する
・finding 名)認定
・military 形)軍の
・authority 名)当局(者)
・impossible 形)不可能な
・bring about ~をもたらす
・immediate 形)即時の
・segregation 名)分離、隔離
・disloyal 形)不忠の、スパイの
・loyal 形)忠実な
● sustain 他)~を支持する、承認する
 ここでは「~に合憲判断をする」という意味である。

・validity 名)正当性、有効性
・curfew 名)夜間外出禁止
・order 名)命令
・apply 自)適用される、他)~を適用する


〈文法〉
● It is because… 「それは…であるからである。」
 文頭のItが何をさしているかは、単語の意味や文法、構文の知識だけでは確定

 することができない文法判断の限界に属する事項である。このような場合、

 いくつかの可能性を探って論理的な話の筋になる解釈を見つけなければならない。

 この文では3つの可能性がある。
   ① Itの内容として、まず前文の内容を受けていると考えることができる。
    because…の内容が整合するかどうかを検討する。
    ・前文の内容=日系人の中に不忠の者がいた。
    ・because…=最高裁は軍の認定を拒絶できなかった。
   「最高裁が軍の認定を拒絶できなかったから、日系人の中にスパイがいた」

    という因果関係が逆の非論理的な文になる。

  It がさすものが前にないから、後ろを探すことになるが、完全な文を伴っていて
   It~thatを作ることのできるthatが2つある。
   ② that it was impossible to bring… 
   ③ that we sustained…
    ② は、findingの同格としてその内容を説明すると解釈することが可能

     である。
    ③ は他に前のどの部分にもつながらないで、結局、これが It~that の構文

      を作thatであると解釈でき、またそれで論理的な文になる。
       It was because…that we sustained…. 
    「夜間外出禁止令を支持したのは、軍の認定を拒否できなかったから。」

● finding={ that it was impossible ~from the loyal }
          s   v     c   
     後に2文型の完全な文が続いているので同格節:「{ }という認定」

● it was impossible to bring about~   
   it~toの構文:「~をもたらすことが不可能であった。」

● bring about an immediate segregation of the disloyal from the loyal
  = to immediately segregate the disloyal from the loyal

「the+形容詞」=「~な人々」
   the disloyal 「不忠の者、スパイ」、the loyal 「忠実な人々」 

● as applying~
 as はそもそも「見てのとおり、そのまま」というのが原意である。そこから

 さまざまな意味が派生するが、ここでは「見てのとおり、グループ全体に適用

 されているそのままで支持した」というような内容である。

  訳としては、「~に適用されているものとして」くらいに訳しておく。


〈訳〉
 われわれが、日系人のグループ全体に適用されるものとして、夜間外出

 禁止の有効性を支持したのは、忠誠心をもっている者と不忠の者を即

 時に分離することができないという軍当局者の認定を拒否することがで

 きなかったからである。

 


≪Par.3≫
[1] True, exclusion from the area in which one's home is located is a far greater deprivation than constant confinement to the home from 8 p.m. to 6 a.m.  

[2] But exclusion from a threatened area, no less than curfew, has a definite and close relationship to the prevention of espionage and sabotage. [3] The military authorities, charged with the primary responsibility of defending our shores, concluded that curfew provided inadequate protection and ordered exclusion.


[第1文]
 True, exclusion from the area in which one's home is located is a far
  greater deprivation than constant confinement to the home from 8 p.m. to
  6 a.m.

〈語句〉
・true 形)真実の、本当の、副)真実に、本当に
・exclusion 名)排除、退去
・area 名)地域  ここでは特にディウィット中将が指定した軍事地域
・be located in~ ~に位置する
・deprivation 名)(権利の)剥奪
・constant 形)不変の、絶えず続く
・confinement 名)監禁、拘禁


〈文法〉
● 文頭のTrueは全文修飾の副詞を見ることもできるし、また、形容詞として、
  It is truethat exclusion…を略したものと見なすこともできる。

● 基本構造:第2文型
  exclusion is deprivation
    S     V    C   「退去は剥奪である。」
 現在形になっているのは、この事件に限らず、判決当時も妥当することとして述
 べられているからである。
   例えば、Yesterday, She said, " I feel fine" という直接話法の文を間接話法に
    変えると、Yesterday, she said that she felt fine となって、feelが過去形の
    felt になるのは、「時制の一致」という法則があるからではなく、「気分
    が良かった」のが昨日のことであるからである。
  拙稿「時制の一致について」『英語教育 』(1993年11月号)76-77頁、参照。
   
● exclusion  form the  area←〔in which one's home  is located〕 is 
    S                           v1        V2
  主語(exclusion)に付いた前置詞句(from the area)内の名詞(area)に関係
  代詞が付いた形。関係代名詞節の内部に動詞(is)が必要であるから、2つ
  目の動詞is )が基本構造の第2文型の動詞であることが分かる。

● far greater : far は、much や by far と同様に比較級を強調する働きがある。
  「はるかに、ずっと」


〈訳〉
 たしかに、自宅が所在する地区から退去させられることは、午後8時から
 午前時まで継続的に自宅に閉じ込められることより、はるかに大きな権利の
 剥奪でる。



[第2文]
  But exclusion from a threatened area, no less than curfew, has a definite
  and close relationship to the prevention of espionage and sabotage.

〈語句〉
・exclusion 名)排除、退去
・threatened 形)脅威にさらされている
・area 名)地域
・no less than ~に劣らず
・curfew 名)夜間外出禁止
・definite 形)明確な
・close 形)密接な
・relationship 名)関係
・prevention 名)防止
・espionage 名)スパイ活動
・sabotage 名)破壊(妨害)工作


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
    exclusion has relationship
     S    V    O   「退去は関係をもつ」
  現在形になっているのは、この事件に限らず、判決当時も妥当することとして
  述べられているからである。

● no less than curfew 「夜間外出禁止令に劣らず」は、前文のfar greater
  deprivationと対比的に使われている。


〈訳〉
 しかし、脅威にさらされている地域からの退去は、夜間外出禁止令に劣
 らず、スパイ活動と破壊工作の防止に明確で密接な関係がある。



[第3文]
  The military authorities, charged with the primary responsibility of
  defending our shores, concluded that curfew provided inadequate
  protection and ordered exclusion.

〈語句〉
・military 形)軍の
・authority 名)当局(者)
・charge A with B   A(人)にB(責任など)を負わせる
・primary 形)主要な、第一義的な
・responsibility 名)責任
・defend 他)~を防衛する
・shore 名)海岸
・conclude that… …と結論する
・curfew 名)夜間外出禁止
・provide 他)~を与える、提供する
・inadequate 形)不十分な
・protection 名)保護
・order 他)~を命じる
・exclusion 名)退去


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  authorities  concluded  { that~protection }]
    S       V        O
  「当局者は {  } と結論した。」

● authorities, charged with~の charged は、基本構造の動詞ではない。
 charge A with B 「A(人)にB(責任など)を負わせる」という形で使われ
 るが、この文は、charged の後に A にあたる目的語がないので、「~(の責
 任)を負わされた」という過去分詞の形容詞的用法として使われていることが
 分かる
  関係代名詞の非制限用法 authorities, who were charged with~と同じである
  と見なしてもよい。

● and ordered exclusion は、一見するとprovided と並列されているように見
 える。しかし、それでは、curfew が ordered の主語となり非論理的な文になる
 (「夜間外出 禁止が退去を命じた」)。したがって、ordered は、authorities
 を主語としておりconcluded と並列的に使われていることが分かる。
             ↗ concluded that  
      authorities 
            ↘ ordered exclusion   
     

〈訳〉
 軍の当局者は、わが国の沿岸の防衛について第一義的責任を負っており、
 夜間外出禁止では充分な保護をえられないと結論し、退去を命じた




≪Par.4
[1]Korematsu was not excluded from the Military Area because of hostility to him or his race.  [2] He was excluded because we are at war with the Japanese Empire, because the properly constituted military authorities feared an invasion of our West Coast and felt constrained to take proper security measures.  [3] There was evidence of disloyalty on the part of some, the military authorities considered that the need for action was great, and time was short.  [4] We cannot -- by availing ourselves of the calm perspective of hindsight -- now say that at that time these actions were unjustified.


[第1文]
 Korematsu was not excluded from the Military Area because of hostility to
  him or his race. 

〈語句〉
・exclude 他)~を排除する、~を退去させる
・Military Area ディウィット中将が西海岸沿いに指定した軍事地区
・because of~  ~のために、~が原因で
・hostility 名)敵意
・race 名)人種

〈文法〉
● not excluded…because of~ 
 because of は、excluded のみを修飾している。
 →「『~という理由で退去させられた』のではない。」

 not excludedを修飾していると解釈すると非論理的な文になる。

 →「コレマツは退去させられなかった。なぜならば敵意をもたれていたから。」


〈訳〉
 コレマツは、彼または彼の人種に対する敵意を理由に、軍事地区から退去

 させられたのではない。


[第2文]
  He was excluded because we are at war with the Japanese Empire,
 because the properly constituted military authorities feared an invasion of
 ourWest Coast and felt constrained to take proper security measures.

〈語句〉
・exclude 他)~を退去させる
・at war with~ ~と戦争をしている
・Japanese Empire 名)日本帝国
・properly 副)適切に
・constitute 他)~を構成する
・military 形)軍の
・authority 名)当局(者)
・fear 他)~を恐れる
・invasion 名)侵略
・West Coast 名)西海岸
・constrain A to do~ Aに強いて~させる
・proper 形)適切な
・secure 形)安全な、防衛のための
・measure 名)措置


〈文法〉
● because…は、第1文の not~because of…と対比的に使われている。
  「~のためではない。~だからである。」

● 2つ目の because の前に and がないのは、おそらく畳みかけるようなリズム

 の文にるためであろう。

● properly constituted 過去分詞の形容詞的用法「適切に構成された

● felt constrained to~ 
  (~することを強いられていると感じた)→「~せざるをえないと感じた」


〈訳〉
 彼が退去させられたのは、われわれが日本帝国と戦争をしているからで

 あり、適切に構成された軍当局者が、わが国の西海岸への侵略をおそれ、

 適切な防衛措置を講じざるをえないと感じたからである。



[第3文]
  There was evidence of disloyalty on the part of some, the military
  authorities considered that the need for action was great, and time was
  short.

〈語句〉
・evidence 名)証拠
・disloyalty 名)不忠、 ここでは具体的に言うと「スパイ行為」のことである。
・some = some people
・military 形)軍の
・authority 名)当局(者)
・consider that… …であると考える
・need 名)必要
・action 名)行動  


〈文法〉
● the military…の前に and がなく、time was…の前に and があることから、3つ
 の文並列されていることが分かる。
     ① There was evidence…     
     ② the military authorities considered…
     ③ time was short

   the military authorities considered that time was short というつながりではな
  いことに注意が必要である。つまり③の「時間が短かった」というのは、軍当

  局者の考えではなくブラック裁判官の評価である。


〈訳〉
 幾人かの者について不忠の証拠があったし、軍当局者は行動の必要が大き

 いと考え、時間は切迫していた。



[第4文]
 We cannot -- by availing ourselves of the calm perspective of hindsight --
  now say that at that time these actions were unjustified.

〈語句〉
・avail oneself of~ ~を利用する
・calm 形)静かな、冷静な
・perspective 名)1.考え方、見方、 2.遠近法
・hindsight 名)後知恵
・unjustified 形)正当化されない


〈文法〉
● 基本構造:第3文型  
    We cannot  say  { that…unjustified }.
      S       V     O 

     「われわれは、{   }と言えない。」

● ダッシュで挟まれた部分は、付加的に挿入されたというよりもむしろ強調して

 いる表現である。「冷静な後知恵の見方を利用することによって」は、冷静

 に振り返ってることができる利点を活かしてというくらいの意味である。
  日系人の退去命令が出たのは、1942年3月であるが、この判決が出された

 のは、それから3年近く後の1944年の12月のことであり、すでに日本の敗

 戦が濃厚であり、西海岸の奇襲攻撃の心配はなくなっていた。判決の時から見れ

 ば、日系人を退去させる必要はなかったと思えるかもしれないが、真珠湾攻撃直

 後の当時としてはやむを得ない措置であったのだという趣旨である。


〈訳〉
 われわれは、冷静に振り返って見ることができる利点を活かして、当時これ

 らの行動が正当化されなかったと言うことはできない。



【解説】
 日米関係が悪化した1939年頃からFBIや軍の情報部は、日系人の活動の監視を強化し、スパイ活動などの恐れのある人物のリストを作成していた。真珠湾攻撃の直後から、そのリストに載った日系人がつぎつぎと逮捕され、逮捕者の数は翌2月には約2,000人に達した。日系人一般の強制退去が始まったのはその後のことである。したがって、強制退去と強制収容の対象となった約12万人もの日系人のうちスパイ活動を行う恐れのある人はほとんどいなかったと言える。
 ある法律の規制の対象となる人の中に、その法律の目的の達成とは無関係の人が含まれることを「過多包含(over-inclusiveness)」と呼ぶ。おおよそすべてのルールにはこの性質がある。スパイ活動などの防止を目的として西海岸の日系人全員を強制退去させたことは、明白に過多包含である。最高裁は、この過多包含について、時間が切迫しておりスパイ活動をする人とそうでない人を即時に分離できないという軍の判断を拒否できないという理由で正当化した。例えば、ある部屋の中に10人の人がいて、その中にジャケットの下に爆弾を巻き付けた自爆テロ犯が紛れている場合、警察の特殊部隊が突入して10人全員を拘束したとしても、テロ犯でない人も拘束したとして特殊部隊を非難する人はいないであろう。過多包含はこのような理由で正当化された。
 1970年代になって、日系人が強制退去・収容によって被った財産的損失の補償を求める運動が日系市民協会(Japanese American Citizen League: JACL)を中心に始められた。連邦議会の中にもこの問題を調査する調査委員会が設置された。調査委員会は、日系人によるスパイ活動を否定する信頼性の高い数多くの証拠が軍を含む連邦機関に存在したと認定し、強制退去・収容の原因を「人種偏見、戦時ヒステリー、政治的指導力の機能不全」であると結論づけた。
 このような動きの中で、コレマツを無罪にするための再審裁判も行われた。そのための調査の中で、コレマツ裁判の最高裁審理のためにディウィット中将が作成した報告書が書き換えられていたことが判明した。最初の報告書では、日系人の忠誠心の有無を「確定する時間が不十分であったというわけではなかった」と書かかれていた。しかし、司法省の弁護士は控訴裁判所において、忠誠心に関する個別審査の時間的余裕がなかったと弁論していた。このためにディウィット中将は、司法省に説得されて不承不承この記述を書き換えた。
 結局、最高裁判決が強制退去を是認した2つの大きな柱、スパイ活動の存在と時間の切迫性の両方に根拠がなかったことになる。コレマツは、1984年の再審裁判で無罪判決を受けた。合衆国政府が控訴しなかったので、無罪判決が確定した(同時に最高裁がコレマツ判決を改める機会も失われた)。再審の手続きが進行中に、司法省の担当官が、コレマツに裁判を取り下げさせるために恩赦(pardon)を申し出た。コレマツは、「政府の方が私から許し(pardon)を求める立場にある」としてこの申し出を拒絶した。この気骨の人は、1998年にクリントン大統領から大統領自由勲章を授与され、2005年に86歳で亡くなった。
 コレマツを無罪にした再審地裁判決は、1944年の最高裁判決について次のように述べている。「国際的な敵意と反感の時代において、われわれの立法、行政、司法の諸機関が、かくも容易に喚起される卑小な恐怖や偏見からすべての市民を保護するためにその権限を行使する覚悟でなければならないという警告として、この判決は存立している。(It stands as a caution that in times of international hostility and antagonisms our institutions, legislative, executive and judicial, must be prepared to exercise their authority to protect all citizens from the petty fears and prejudices that are so easily aroused.)」
 参考文献:姫路獨協大学・戦争と平和研究会編『戦争と平和を考える』「第4章 日系アメリカ人の強制退去」(石田裕敏)(2006年、嵯峨書院)

2018年03月04日

Brown v. Board of Education  学校を黒人用と白人用に分けることは違憲

黒人・白人を別々の公立学校で教育することは平等保護条項違反 

ブラウン 対 教育委員会
Brown v. Board of Education

347 U.S. 483 (1954)
合衆国最高裁判所
Supreme Court of the United States
1954

 合衆国憲法修正第14条(Fourteenth Amendment)は、「どの州もその管轄内の誰に対しても、法の平等な保護を拒否してはならない(No state shall...deny to any person within its jurisdiction the equal protection of the laws)」と定めている。この規定は平等保護条項とよばれている。「法の平等な保護」という文言には、南北戦争後に解放された黒人奴隷を保護するという意味合いがあったが、その後、「保護」にはそのような限定的な意味がなくなり、この条項は、人種や性別などに関わらず法的に平等に処遇する、差別を禁じるという意味に解釈されるようになった。
 この条項が解釈された比較的初期の判例として、1896年の Plessy v. Fergusonがある。黒人と白人を設備が同等の別々の客車に乗車させることを命じるルイジアナ州法が、この条項に違反すると主張されたが、合衆国最高裁は、人種による分離が人種間の優劣を意味するものではなく、福祉や安全を促進する州の権限として列車分離は認められると判決した。この判決は、後に「別々であるが平等」(Separate but Equal:人種によって分けられているが設備などは同等)である場合には平等保護条項に反しないという原則を表明したと解釈されるようになった。
 本判決、Brown v. Board of Educationでは、黒人と白人を別々の公立学校で教育すべきことを定めた南部の州法(カンザス州、サウス・カロライナ州、デラウエア州、ヴァージニア州)が、平等保護条項に違反するという訴訟が各地の連邦地方裁判所で提起され、合衆国最高裁まで争われた。Brown は、娘のリンダ(Linda Brown)のために訴訟を起した原告の一人、オリヴァー・ブラウン(Oliver Brown)である。最高裁はこれらの事件を統合し一括して判決を下した。地裁は、黒人校と白人校の設備に優劣はないと認定した。したがって、Plessy 判決の「別々であるが平等」の法理によれば、平等保護条項の違反はないという結論になる。しかし、最高裁は、全員一致の判決で、学校施設という物理的要素が平等でも精神的要素が不平等であるとして平等保護条項違反であると判示した。アール・ウォーレン(Earl Warren)長官が法廷違憲を書いた。



≪Par.1≫   
[1] Minors of Negro race had been denied admission to schools attended by white children under laws requiring or permitting segregation according to race. [2] This segregation was alleged to deprive the plaintiffs of the equal protection of the laws under the Fourteenth Amendment.  [3] In each of the cases, the federal district court denied relief to the plaintiffs on the so-called "separate but equal" doctrine announced by this Court in Plessy v. Ferguson.


[第1文]
  Minors of Negro race had been denied admission to schools attended by
  white children under laws requiring or permitting segregation according to
  race.

〈語句〉
・minor 名)未成年(者)
・Negro 形)黒人の、名)黒人
・race 名)人種、 Negro race (黒人の人種→)黒人
・deny 他)~を拒否する
・admission 名)1. 入学(許可)、2.入ること、3.入場(料)
・attend 他)1.(学校に)通う、参列する、2~に出席する、

       3.~の世話をする
・require 他)~を要求する
・permit 他)~を許す
・segregation 名)(人種による学校の)分離 
・according to ~にしたがって、~に応じて


〈文法〉
had been~
  過去完了形であり、過去のある時点よりさらに過去のことであることを意味

  する。この文では、最初に地方裁判所に訴訟が提起されるまで継続的に

  入学拒否されてきたという含意がある。

● deny O1+O2(第4文型)「O1にO2を拒む」
  この文(had been denied admission)は、受動態:
  「O1(黒人の未成年者)はO2(入学)を拒まれてきた。」

schools←〔attended by white children〕
  attended が過去分詞の形容詞的用法(「~された、されている」)である。
   次の2点から分かる。
    ① すでに文型が完成している(骨組の動詞は不要)。
    ②他動詞の attend の後に目的語がない。

  受動態の訳では日本語として不自然になる場合、能動に訳しかえる。「白人の

  子供たよって通われている学校」→「白人の子供たちが通う学校」

● 文法判断の限界
  under laws… は何を修飾しているかについて下の4つの可能性がある。

  いずれであるかは、単語の意味や文法、構文の知識だけでは、確定すること

  ができない文法判断の限界に属する事項である。このような場合はどれを選

  択すれば、筋の通った論 理的な文になるかによって確定する。

    ① childrenを修飾する形容詞句   ×
    ② attendedを修飾する副詞句   ×
    ③ schoolsを修飾する形容詞句  ×
    ④ deniedを修飾する副詞句   

                    

    「人種別の学校分離を要求または許可している法律のもとで

     (or もとにある)」いうunder以下の内容ともっとも論

     理的につながるのは「入学を拒否された」であるので、

     ④の denied を修飾することが分かる。

● laws←〔requiring or permitting…〕
  この~ing は、現在分詞の形容詞的用法である(「~する、している」)。
 「~を要求または許している法律」=laws which require or permit~


〈訳〉
 人種によって学校を分けることを要求または許している法律のもとで、

 黒人の未成年者は、白人の子供が通っている学校への入学を拒否されて
 きた。



[第2文]
  This segregation was alleged to deprive the plaintiffs of the equal 
 protection of the laws under the Fourteenth Amendment.        

〈語句〉
・segregation 名)(人種による学校の)分離
・allege 他)~を申立てる、主張する  
・deprive A of B  AからBを奪う 
・plaintiff 名)原告 
・equal protection of laws 名)法の平等保護
・Fourteenth Amendment 名)(合衆国憲法)修正第14条


〈文法〉
● allege
  裁判所が事実かどうかを認定する以前に、当事者がそう主張しているとい
  意味合いでよく使われる。ここでは、allege A to do 「Aが~すると申立て
  る」という形の受動態が使われている。was alleged to do「~すると申し立
  てられてた」

● under the Fourteenth Amendment
  was alleged to deprive を修飾する副詞句見ると「修正第14条のもとで法
  の平等な保護を奪う」という非論理的な文になる。
  the equal protection of the laws を修飾する形容詞句「修正第14条のもとで
  の法の平等保護」と解釈する。


〈訳〉
 この学校分離が原告から修正第14条の法の平等保護を奪うと申立て
 れた。



[第3文]
 In each of the cases, the federal district court denied relief to the plaintiffs
 on the so-called "separate but equal" doctrine announced by this Court in
  Plessy v. Ferguson.

〈語句〉
・case 名)(訴訟になった)事件、ケース
  the casesは、連邦地方裁判所で提起された複数の違憲訴訟を指している。
・federal 形)連邦の
・district court 名)地方裁判所
・deny 他)~を拒む
・relief 名)(判決による)救済
・plaintiff 名)原告
・on 前)~にもとづいて
・so-called 形)(そう呼ばれている→)いわゆる
・separate but equal 別々であるが平等
・doctrine 名)原則、教義、法理
・announce 他)~を公表する、宣言する 
● this Court 当裁判所=合衆国最高裁。Courtが大文字になっているのは、
 合衆国最高であることを示している。

・Plessy v. Ferguson 「別々であるが平等」という法理を宣言した1896年の
 「プレッシー対ファーガソン」判決


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
   court  denied  relief
    S     V     O   「裁判所は、救済を拒んだ。」

doctrine←〔announced by this Court〕
  announcedは、過去分詞の形容詞的用法「宣言された」である。
   次の2から分かる。
   ① on the~doctrine 「法理にもとづいて」という前置詞句が完成している。
    後に目的語がない。 
  能動に訳しかえる。「当法廷によって宣言された」→「当法廷が宣言した」


〈訳〉
 それぞれのケースにおいて、プレッシー対ファーガソンにおいて当裁判所

 が宣言した、いわゆる「別々であるが平等」の法理にもとづいて、連邦地

 方裁判所は原告に対する救済を拒んだ。



≪Par.2≫   
[1] Here, there are findings below that the Negro and white schools involved have been equalized, or are being equalized, with respect to buildings, curricula, qualifications and salaries of teachers, and other "tangible" factors.  [2] Our decision, therefore, cannot turn on merely a comparison of these tangible factors in the Negro and white schools involved in each of the cases.  [3] We must look instead to the effect of segregation itself on public education. [4] We come then to the question presented: Does segregation of children in public schools solely on the basis of race, even though the physical facilities and other "tangible" factors may be equal, deprive the children of the minority group of equal educational opportunities?  [5]We believe that it does.


[第1文]
  Here, there are findings below that the Negro and white schools involved
  have been equalized, or are being equalized, with respect to buildings,
  curricula,qualifications and salaries of teachers, and other "tangible"
  factors.

〈語句〉
・Here 副)ここでは→「この事件では、本件では」
・finding 名)(事実の)認定
・below (下の→)下級審の:ここでは事実認定をした第1審(連邦地裁)
・Negro 形)黒人の、名)黒人
・involved 形)伴われている、関わっている
・equalize 他)~を平等化する、同等のものにする   
・with respect to~に関して 
・curricula 名)curriculum(カリキュラム)の複数形
・qualification 名)資格、資質
・salary 名)給料
・tangible 形)触れられる、有形の
・factor 名)要因


〈文法〉
● there are findings「認定がある」で第1文型が完成しており、that the Negro

 以下第2文型の完全な文が続くことから、that 節は findings の内容を説明す

 る同格節であことが分かる。
  findings={ that school  have been equalized} 「{ }という認定」。
               S         V     C   

  同格節は後に完全な文章がくる点で関係代名詞とは異なる。
    例) findings ←〔that the court made×
  「裁判所が行った認定」という文では、関係代名詞の先行詞になっているので
   made の後に目的語がない。

● are being equalized 
  受動態の進行形「平等化されつつある」
   are equalized という受動態を進行形にするには、2つの手続きが必要

   である。
    ① be動詞を加える(are areequalized)
    ② もとの動詞(are)を ing 形にする(are being equalized)。

● with respect to (~に関して)
  目的語は4つある。4つ目の前に並列の and があので分かる。
 ① buildings, ② curricula, ③ qualifications and salaries of teachers,
 ④ and other "tangible" factors.
  このことから findings に続く同格のthat節が文末まで続いていることも

  分かる。


〈訳〉
 本件では、関わっている黒人校と白人校は、建物、カリキュラム、教師

 の資質と給与、その他の「触れられる」要因に関して、同等になった、

 あるいは同等になりつつあるという下級審の認定がある。



[第2文]
  Our decision, therefore, cannot turn on merely a comparison of these
  tangible factors in the Negro and white schools involved in each of the
  cases.

〈語句〉
・our われわれの=合衆国最高裁の
・decision 名)判決、決定
・therefore 副)それゆえ、したがって
・turn on (~の上で回る→) ~に依存する、~次第である
・merely 副)単に
・comparison 名)比較
tangible 形)触れられる、有形の
・factor 名)要因
・Negro 形)黒人の、名)黒人
・involved 形)伴われている、関わっている
・case 名)(訴訟になった)事件、ケース


〈文法〉
● these tangible factors
  「これら有形の要因」は、前文の「建物、カリキュラム、教師の資質と給与」

   を受けている。これらは白人校と黒人校とで同等であるので、それらの要因

   に依存する(turn on)限りは合憲判断をせざるをえないが、それはできな

   い

● schools ←〔involved in each of the cases〕
  過去分詞の形容詞的用法「それらのケースそれぞれに関わっている学校」
  この判決は、4つの州で提起された訴訟を統合しているので、それぞれ別々

  の学校が関わっている。


〈訳〉
 それゆえ、われわれの判決は、ケース各々に関与している黒人校と白人校

 のこれら触れられる要因の比較のみに依存することはできない。



[第3文]
 We must look instead to the effect of segregation itself on public education.

〈語句〉
・look to ~に目を向ける、気をつける
・instead 副)その代わりに
・effect 名)効果  
・segregation 名)(人種による学校の)分離
・itself それ自体
・public 形)公の
・education 名)教育

〈文法〉
● on the public education は、直前の segregation itself を修飾しているのでは

 ない。
  effect of A on B 「Bに対するAの効果」というフレーズが使われている。
    A = segregation
    B = public education   
        「公教育に対する学校分離の効果」

〈訳〉
 その代わりにわれわれは、公教育に対する学校分離の効果それ自体に目を

 向けなければならない。



[第4文]
 We come then to the question presented: Does segregation of children in
 public schools solely on the basis of race, even though the physical
 facilities and other "tangible" factors may be equal, deprive the children of
 the minority group of equal educational opportunities?

〈語句〉
・we われわれ=合衆国最高裁の裁判官
・come to ~に行きつく
presented 形)提起された
 ここでは、presented by the plaintiffs
      「原告側によって提起された」という意味。

・segregation 名)(人種による学校の)分離
・public school 名)公立学校
・solely 副)単に
・on the basis of ~にもとづいて
・race 名)人種
・even though たとえ~であっとしても
・physical 形)1.物理的な、2.肉体的な
・facility 名)施設、設備
・tangible 形)触れられる、有形の
・factor 名)要因
・equal 形)平等な、同等の
・deprive A of B  AからBを奪う
・minority 名)形)マイノリティ(の)、少数派(の)
・educational 形)教育の
・opportunity 名)機会


〈文法〉
● コロンの後の疑問文は、前の question presented の具体的内容である。疑問文

 の途で、even though…equal 「たとえ~が同等であったとしても」という副

 詞節が挿れている。

● 疑問文の主語の範囲 = 〔 segregation~of race 〕
   even though の節を除けば、deprive まで動詞がないので分かる。

● solely~race
  segregationを修飾する形容詞句:
   segregation~ ←〔solely on the basis of race 
                
● segregation of children
  of の前後で V+O の意味の上で関係がある(目的格の of)。
   「~にのみもとづいて子供を分離すること」と訳すことができる。

● deprive A of B 「AからBを奪う」
  このフレーズの of にあたるのが、後続1つ目の of であるとすると
 「子供からマイノリティのグループを奪う」という意味不明な文になるので
  2つ目のof である。

     A = the  children  of  the  minority  group 
       「マイノリティのグループの子供」                      

〈訳〉
 したがってわれわれは、原告が提起した次の問題に行き当たる。すなわち、
 公学校の子供を単に人種にのみもとづいて分離することは、たとえ物理
 的施設や他の「触れられる」要因が平等であるとしても、マイノリティの
 グループの子供から平等な教育機会を奪うか? 



[第5文]
  We believe  it does.

〈文法〉   
● 基本構造:第3文型 
  We believe { [that] it  does }.
   S    v       O

● it は、前文の主語 “the segregation of children~race”を受けている。

● it does =it deprives the children….

〈訳〉
  われわれは奪うと信じる




≪Par.3≫   

[1] In McLaurin v. Oklahoma State Regents, the Court, in requiring that a Negro admitted to a white graduate school be treated like all other students, again resorted to intangible considerations: “his ability to study, to engage in discussions and exchange views with other students, and, in general, to learn his profession.”  [2] Such considerations apply with added force to children in grade and high schools.  [3] To separate them from others of similar age and qualifications solely because of their race generates a feeling of inferiority as to their status in the community that may affect their hearts and minds in a way unlikely ever to be undone.


[第1文]

  In McLaurin v. Oklahoma State Regents,the Court, in requiring that a
  Negro admitted to a white graduate school be treated like all other
  students, again resorted to intangible considerations: “his ability to study,
  to engage in discussions and exchange views with other students, and, in
  general, to learn his profession.”

 McLaurin v. Oklahoma State Regents
  1950年の「マクローリン判決」:黒人の入学を認めてこなかったオクラ
  ホマ州立大学のロースクールは、合衆国最高裁の違憲判決にしたがって、黒
  人志願者のマクローリンの入学者を認めたが、大学はマクローリンに教室や
  図書館、カフェテリアなど指定された座席に座ることを強制した。合衆国
  最高裁は、さらにこの措置が平等保護条項に違反する判決した。

〈語句〉
・the Court 当裁判所=合衆国最高裁判所 
・require that… …ということを要求する
・Negro 名)黒人
・admit 他)入学を認める   
● graduate school 名)大学院
  graduate 1. from~を卒業する、2. 名)卒業生 3. 形)卒業生のための

・treat 他)~を取り扱う、処遇する
・resort to ~(手段など)に訴える
intangible 形)触れられない、無形の ⇔ tangible
・consideration 名)考慮、考慮事項
・ability 名)能力
・engage in ~に従事する、携わる
・discussion 名)議論
・exchange 他)~を交換する
・view 名)見解、意見
・in general 一般的に言うと
・profession 名)職業


〈文法〉
● 基本構造: 第1文型
  Court resorted to~
   S    V    「当法廷は~に訴えた」

● in requiring… 「…を求めるにさいして」=when we required that…
   in~ing ①~するさいに(=when…)、②~することにおいて

● Negro ←〔 admitted to...〕
  admitted の後に目的語がないので、過去分詞の形容詞用法である。
  「~に入学を許された黒人」

● be treated 仮定法現在  
   require, request, suggest など要求、提案を表すthat 節の中では、
   動詞の原型が使われる。should が省略されていると見ることもできる。

● considerations
  consideration ふつう抽象名詞として「考慮すること」という意味で使われ
  るが、ここでは複数形(可算名詞)であるので具体的な考慮事項を示してい
  る。つまり、続の研究能力などをさしている(この部分が引用符に入って
  いるのはマクローリン判決からの引用でからである)。
   したがって、considerations の後のコロは、前後関係が「同格」(言い
  換え)であることを示している。

  抽象名詞が具体的な意味をもつ可算名詞として使われる他の例
   a kindness 「親切な行為」a beauty 「美人」

his ability to…his profession は、abilityを修飾するto不定詞が3つ並列されて、
 A, B, and,C という形になっている。 Bにあたる語句は、一体的な内容であるた
 め内部でさらにand が使われている。
          ↙ to study
    his ability  to engage~and exchange views
          ↖and to learn his profession


〈訳〉
 当裁判所は、McLaurin v. Oklahoma State Regents において、白人の大
 学院に入学を許された黒人が他のすべての学生と同様に処遇されることを
 要求するに際して、触れられない考慮事項に再び訴えた。すなわち、「研
 究し、他の学生と議論し意見を交換する能力、一般的に言うと自らの専門
 職について学ぶ能力」である



[第2文]
  Such considerations apply with added force to children in grade and high
  schools.

〈語句〉
● such considerations 「そのような考慮事項」とは、前文の研究能力などの
 「触れることのできない考慮事項」のことである。

・apply to~ ~に当てはまる
・add 他)~を加える  
・force名)力、影響力、説得力
・grade school 小(中)学校


〈文法〉
● with added force (加えられた力を伴って→)「いっそうの説得力をもって」 

〈訳〉
そのような考慮事項は、小中高校の子供にいっそうの説得力をもって妥当する。



[第3文]
 To separate them from others of similar age and qualifications solely
 because of their race generates a feeling of inferiority as to their status
 in the community that may affect their hearts and minds in a way unlikely
 ever to be undone.

〈語句〉
・separate 他)~を分ける、分離する
・similar 形)類似した
・qualification 名)資格
・solely because of~ 単に~の理由で
・race 名)人種
・generate 他)~を生みだす
・inferiority 名)劣等  feeling of inferiority 劣等感
・as to~に関して(=about)
・status 名)地位
・community 名)コミュニティ、地域社会
・affect 他)~に影響する
・hearts and minds 感情と知性 
・way 名)方法、やり方
・unlikely to do ~しそうにない
・ever 副)(否定語とともに)決して
・undone (undo 「もとどおりにもどす」の過去分詞)もとどおりにもどされる


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
 [To separate~race]generates feeling.
      S       V     O 
   「分けることは、感情を生み出す。」
 to不定詞と副詞句の組み合わせなどが付いて長くなっている主語の範囲は、動詞
 を探して決める。この文ではgenerates が動詞であることが分かり、その前まで
 が大きく見た場合の主語であると判断できる。

● solely because of their race → separate を修飾する副詞句 
  「単に彼らの人種のみを理由として」分ける      
 
● that may affect~
  thatの後に主語がないので関係代名詞節である。
  先行詞は、3つの可能性があり、文法判断の限界である。
   論理的に筋が通る文を考えると、この場合「心に影響するものは何か」と
   考えるれば、以下の③ feeling of inferiority「劣等感」が先行詞であること
   が分かる。

     ① community       × ↖

     ② status         × ←「心に影響を与える」

     ③ feeling of inferiority 〇 ↙

 

  ※ inferiority のみを先行詞としていると見ると黒人の「劣等性」を所与の

    ものと見なすことになるので、この判決の趣旨に合わない。


● in a way ←〔unlikely ever to be undone〕
   「もと通りになりそうにない方法で」


〈訳〉
 それらの子供を単に人種を理由として、同様の年齢と資質の他の子供から
 分離することは、社会における彼らの地位について劣等感を生みだし、そ
 の劣等感は到底回復できそうにないやり方で彼らの感情と知性に影響を与
 えうる。



≪Par.4≫
[1] We conclude that in the field of public education the doctrine of "separate but equal" has no place.  [2] Separate educational facilities are inherently unequal. [3] Therefore, we hold that the plaintiffs and others similarly situated for whom the actions have been brought are, by reason of the segregation complained of, deprived of the equal protection of the laws guaranteed by the Fourteenth Amendment.

[第1文]
 We conclude that in the field of public education the doctrine of "separate
  but equal" has no place. 

〈語句〉
・conclude that… …であると結論する
・field 名)分野
・public education 名)公教育
・doctrine 名)原則、教義、法理
・"separate but equal" 「別々であるが平等」1896年のPlessy v. Ferguson
 以来、合衆国最高裁が採用してきた「設備が分けられていても、同等のもので
 あれば違憲でない」という法理。


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  We conclude { that … place }.
   S    V       O   「われわれは、{ }であると結論する。」

● 文型の多重構造:that節の中も第3文型
  doctrinehas no place.       
    S    V      O (法理に場所がない→)
               「法理に存在の余地がない」
 
  名詞の直後にand などの接続詞がないのにthe+名詞がくると、そこに文の
  構成要素の切れ目があることが分かる。education the doctrine では、
  education までがin the field of~につながり、the doctrine は後続文の
  主語であることが分かる。
     同じことは、関係代名詞の省略にも当てはまる。
    例)That is the man I saw yesterday. 
    

〈訳〉
 われわれは、公教育の分野において「別々であるが平等」の法理が存在
 する余地はないと結論する。



[第2文]
  Separate educational facilities are inherently unequal.

〈語句〉
・separate 形)分かれた、別々の
・educational 形)教育の
・facility 名)施設、設備
・inherently 副)本来的に、本質的に
・unequal 形)平等(同等)でない

〈訳〉
 分離された教育施設は、本来的に不平等である。



[第3文]
 Therefore, we hold that the plaintiffs and others similarly situated for
 whom the actions have been brought are, by reason of the segregation 
 complained of, deprived of the equal protection of the laws guaranteed by
 the Fourteenth Amendment.

〈語句〉
・Therefore 副)それゆえ、したがって
・hold that… …と判示する(裁判官が判断を示す)
・plaintiff 名)原告
・similarly 副)同様に、類似して
・situated 形)~の境遇にある、~に位置している
・action 名)訴訟  bring an action 訴訟を提起する
・by reason of ~を理由として
・segregation 名)(人種による学校の)分離 
・complain of ~のことについて苦情(不平)を言う
・deprive A of B  AからBを奪う
・equal protection of laws 法の平等な保護
・guarantee 他)~を保証する
・Fourteenth Amendment 名)(合衆国憲法の)修正第14条


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  we hold  { that…Amendment }.
   S  V      O    「われわれは、{   }と判示する。」

● that 節の中の基本構造:
 plaintiffs and others are deprived of~「原告と他の人々は~を奪われている。」

● others ←〔 similarly situated 〕 過去分詞の形容詞的用法
     原告と「同様の状況におかれている他の人々」

others similarly situated        
    ↖〔for whom the actions have  been brought〕are
                      v 1       V2
 関係代名詞節の先行詞は、plaintiffs and others ではなく、others のみである。
 仮にplaintiffも先行詞に含まれるとすれば、原告自身が訴訟を提起しているのに
 「原告のために(原告を代表して)訴訟が提起された」という非論理的な文
 なる。「他の人々を代表して訴訟が原告にって提起された」という趣旨であ
 る。つまり、原告に名を連ねていないが学校分離による差別を受けている他の
 人々という意味である。
  主語(この文ではothers)に関係代名詞が付いた文では、後続の1つ目の動詞
 は関係代名詞節の内部の動詞であるので2つ目の動詞が基本構造の動詞である。
   例)The  girl←〔whom Tom lovesis Mary.
            S            (v)   V   C

● by reason of~が are deprived の間に挿入され、deprived を修飾している。

● segregation ←〔 complained of 〕過去分詞の形容詞的用法
   「苦情が申し立てられている学校分離」
    complain of の形で「~に苦情を申し立てる」という他動詞の意味に
    なるので、過去分詞が形容詞として使われる場合も of が必要である。
     例)He was laughed at.「彼は笑われた。」(←laugh at him)

● equal protection of laws ←〔guaranteed…Amendment〕
  過去分詞の形容詞的用法「修正第14条によって保障された法の平等保護」


〈訳〉
 それゆえ、われわれは、原告および、その人たちのために訴訟が提起さ
 れた同様の境遇にある他の人々は、苦情が申し立てられている学校分離
 のために修正第14条によって保障された法の平等保護を奪われている
 と判示する。



【解説】
 アメリカでは、19世紀中頃から20世紀中頃まで学校、トイレ、バスなどの施設について黒人用と白人用を別々に設けるべきことを定めたジム・クロウ法(Jim Crow law)が存在した。そのような法律や政策にお墨付きを与えていたのが1896年の、Plessy v. Ferguson 判決において最高裁が示した「別々であるが平等」という法理であった。その後、この法理は約60年間にわたって生き続けた。Brown 判決はこの法理を覆した画期的判決であり、おそらくアメリカ憲法史上、3つの指に入る重要な判決である。物理的に設備が同等でも、分離教育によって黒人生徒が劣等感をもつから精神的、心理的な要因について不平等であると判示した。
 人は、グループ分けされるとすぐに優劣を考えたがるものである。例えば、学校の先生がまったく出鱈目に半数の生徒を教室の前半分に座らせて、残りの半数を後ろ半分に座らせた場合、おそらく、生徒は、成績や授業態度によって分けられたなどとあれこれ基準を推測するであろう。これが、奴隷として酷使されてきた先祖をもつ生徒とそうでない生徒である場合、前者の生徒は当然に劣等意識をもつであろう。
 端的に分離自体が憲法に違反する人種差別であると言う方が分かりやすいようにも思うが、Plessy判決が「設備の同等」を根拠にしたので、最高裁は、それを否定する必要があった。ただし、「分離された教育施設は、本来的に不平等である」と明言した。
 その後、最高裁は学校を統合する命令を出すが、統合が実現するまで長い間各地で根強い抵抗にあった。例えば、1957年のアーカンソー州のリトルロックでは、州知事が州兵を派遣して黒人生徒の白人校への登校を阻止し、アイゼンハワー大統領が黒人生徒の護衛のために連邦軍を派遣するという事態にまで発展した。

 












 
2018年03月04日

U.S. v. Virginia  男子軍事大学への女子の入学: 性による差別

厳しい訓練で知られる男子軍事大学に女子を入学させないのは平等保護条項違反

合衆国 対 ヴァージニア州
United States v. Virginia

518 U.S. 515 (1996)
合衆国最高裁判所
Supreme Court of the United States
1996


 ヴァージニア軍事大学(Virginia Military Institute: VMI)は、軍および市民生活においてリーダーシップを発揮できる「市民の兵隊(citizen soldier)」を養成することを目的としており、卒業生の多くが軍や企業で要職を占めている名門男子校である。学生は、軍服風の制服を着て、厳格な規律のもとでプライバシーのない軍隊式の兵舎(バラック)で集団生活し、肉体的にも精神的にも過酷な訓練を受ける。VMIは、私立大学であるが、ヴァージニア州から財政的支援を受けており、また州議会のコントロールの下に置かれている。
 1990年に合衆国政府は、この大学に入学を希望する女子高校生を代表して、女子に入学を認めていないことが、「どの州も誰に対しても法の平等な保護(equal protection of law)を拒んではならない」と定める修正14条の平等保護条項に違反するという憲法訴訟を提起した。合衆国最高裁は、違憲判決を出した。最高裁の多数意見を代表して法廷意見を書いたのは、ギンズバーグ裁判官である。


≪Par.1≫
[1] To summarize the Court's current directions for cases of official classification based on gender, the State must show at least that the challenged classification serves important governmental objectives and that the discriminatory means employed are substantially related to the achievement of those objectives.  

[2] The justification must be genuine, not hypothesized or invented post hoc in response to litigation.  [3] And it must not rely on overbroad generalizations about the different talents, capacities, or preferences of males and females.


[第1文]
  To summarize the Court's current directions for cases of official
  classification based on gender, the State must show at least that the
  challenged classification serves important governmental objectives and
  that the discriminatory means employed are substantially related to the
  achievement of those objectives.

〈語句〉
・summarize 他)~を要約する
● the Court 名)合衆国最高裁 

   大文字の Courtは「合衆国最高裁」の意味で使われることが多い。

・current 形)現在の、流通している
・direction 名)1.指示、命令、2.方角、道順
・case 名)(訴訟になった)事件、ケース
・official 形)公式の、公務上の
・classification 名)分類
・based on ~にもとづく
・gender 名)性、ジェンダー
・the State 名)州、この場合はヴァージニア州
・challenged 形)異議が申し立てられている、違憲であると主張されている
・serve 他)~に役立つ
・governmental 形)政府の
・objective 名)目的、目標
・discriminatory 形)差別的な
・means 名)手段
・employed 形)用いられた
・substantially 副)実質的に
・be related to ~に関係している
・achievement 名)達成(したこと)


〈文法〉
● To summarize~は、to tell the truth「本当のことを言うと」などと同様に、

  意味上の主語が話者(筆者)である独立不定詞「~を要約すると」

● 基本構造:第3文型、目的語の that 節が2つある。
  State must show → ① that the challenged…objectives
           ↘ ② that the discriminatory…objectives
  二重構造:
   ① の that 節の中の構造:第3文型
    classification serves objectives
       s      v     o   「分類は目的に役立つ。」

   ② の that 節の中の構造:第2文型
    means are related
      s    v   c  「手段は関係している。」

● employedは、後に目的語なく、すぐにareが続いているので過去分詞の

 形容詞的用法であると分かる。
   means ←〔 employed 〕 are… 「用いられた手段は…」

● 上の①②の that 節は、性別による分類が合憲となるための2つの条件である。
 discriminatory means を「差別的手段」と訳すと、差別かどうかを判定する基

 準の中ですでに差別であると結論していることになり論理的でないので「区別的

 手段」と訳すほうが良いであろう。英語の discriminate には、単に「区別する、

 識別する」という否定的含蓄のない意味がある。


〈訳〉
  性にもとづいた公的分類に関する事件について当裁判所が現在示してい

 る指針を要約すると、州は少なくとも次のことを示さなければならない。
 すなわち、違憲であると主張されている分類が重要な政府目的に資する

  といこと、および用いられている区別的手段がそれらの目的の達成に実 

  質的に関係しているということである。
 ※注釈:当たり前の例であるが、例えば、自治体が女性のみに無料で乳がん
   の検診を受けさせるという場合は(男性も乳がんになることがあるが)、
   この基準を満たしている。)



[第2文]
 The justification must be genuine, not hypothesized or invented post hoc in
  response to litigation.

〈語句〉
・justification 名)正当化、正当化理由
・genuine 形)本物の、正真正銘の
・hypothesized 形)仮定された、仮説上の
・invented 形)発明された、考案された
・post hoc 副)事後に
・in response to ~に対応して
・litigation名)訴訟


〈文法〉
● must be の補語は、3つある。
  ① genuine ② not hypothesized  ③ invented  
    not hypothesized = must not be hypothesized
                「仮定されたものであってはならない。」

〈訳〉
 正当化理由は、真正なものでなければならず、訴訟に対応して事後的に仮

 定されたものや考案されたものであってはならない。
  (注釈:「訴訟に対応して事後的に考案された」理由が主張された例として、

   1982年の合衆国最高裁の判決、MississippiUniversity for Women v.

   Hoganがある。最高裁は、ミシシッピ州の女子大学が男性の入学を拒否して

   いることが平等保護条違反すると判決した。審理において大学側は、

   「男性がいると女子学生が悪影響を受(adversely affected)」と主張し

   た。しかし、この大学では以前から男性の聴は認められていた。



[第3文]
 And it must not rely on overbroad generalizations about the different
 talents, capacities, or preferences of males and females.

〈語句〉
・rely on ~にたよる、依存する
・overbroad 形)広すぎる
● generalization 名)一般化
 “overbroad generalizations”「広すぎる一般化」とは、「女性は妻として家庭を

 守っ、子供を育てるものだ」などのことである。

・talent 名)才能
・capacity 名)1.(潜在的な知的)能力、2.収容能力(定員)
・preference 名)好み、選好
・male 名)男性
・female 名)女性


〈訳〉
 またそれは、男性と女性の異なる才能、能力、選好に関するあまりに広範

 な一般化に依存してはならない




≪Par.2≫
[1] First, the Commonwealth contends that single-sex education provides important educational benefits, and that the option of single-sex education contributes to diversity in educational approaches.  [2]However, Virginia has not shown that VMI was established, or has been maintained, with a view to diversifying, by its categorical exclusion of women, educational opportunities within the Commonwealth.  [3] In cases of this genre, a tenable justification must describe actual state purposes, not rationalizations for actions.


[第1文]
  First, the Commonwealth contends that single-sex education provides
  important educational benefits, and that the option of single-sex education
  contributes to diversity in educational approaches.

〈語句〉
● Commonwealth 名)1.イギリス連邦、 2.国家、 3.州
 ケンタッキー州、マサチューセッツ州、ペンシルバニア州、ヴァージニア州

 には、State ではなく、Commonwealth を使う。

 ここでは、被告のヴァージニア州。

・contend that… …ということを(強く)主張する。
・single-sex education (単一の性の教育→)男女別学教育
・provide 他)~を提供する
・educational 形)教育の、教育上の
・benefit 名)利益、利得
・option 名)選択肢
・contribute to ~に貢献する
・diversity 名)多様性
・approach 名)取り組み方、手法


〈文法〉
● 基本構造:第3文型、目的語のthat節が2つある。
  Commonwealth contends  → ① that single-sex…benefits
    S        V     ↘② that the option…approaches
   「ヴァージニア州は、

      ①that…ということと、②that…ということを主張する。」


〈訳〉
  第1に、ヴァージニア州は、男女別学教育が重要な教育上の利益を提供

  すということ、および男女別学教育の選択肢が教育手法の多様性に貢献

  すると主張する。



[第2文]
  However, Virginia has not shown that VMI was established, or has been
  maintained, with a view to diversifying, by its categorical exclusion of
  women, educational opportunities within the Commonwealth.

〈語句〉
・Virginia 名)ヴァージニア州
・show that… …ということを示す、証明する
・VMI 名)ヴァージニア軍事大学
・establish 他)~を創設(設立)する
・maintain他)~を維持する 
・with a view to ~ing ~する目的で
・diversify 他)~を多様化する
・categorical 形)分類別の、ある範疇に入るものすべての、無条件の
・exclusion 名)排除
・educational 形)教育の、教育上の
・opportunity 名)機会
・Commonwealth 名)州、ヴァージニア州


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  Virginia has not  shown { that…Commonwealth }.
    S         V       O
  「ヴァージニア州は、{   }ということを証明していない。」

● has not shownは、結果を表す現在完了である。
 「結果としてその主張は認められない」という含意がある。

● has been maintained は、継続を表す現在完である。「創設以来ずっと

● 動名詞 diversifying の目的語は、educational opportunities であり、
  間に by~women が挿入されている。

● exclusion of women は、of の前後で exclude women の関係がある。
 このような ofを「目的格のof」と呼ぶことがある。この知識は名詞句を文章

 化して訳す場合に役立つ。


〈訳〉
 しかしながら、女性を無条件に排除することによって州内の教育機会を

 多様化するという目的で、VMIが創設され、維持されてきたことをヴ

 ァージニア州は示していない。



[第3文]
 In cases of this genre, a tenable justification must describe actual state
 purposes, not rationalizations for actions.

〈語句〉
・case 名)(訴訟になった)事件、ケース
・genre 名)ジャンル、部類
● cases of this genre は、「平等保護条項に違反する性差別が申し立てられてい

 るケース」という意味である。

・tenable 形)批判に耐えうる
・justification 名)正当化、正当化理由
・describe 他)~を描写する、説明する
・actual 形)実際の、現実の
・purpose 名)目的
・rationalization 名)1.正当化、2.合理的説明
・action 名)1.行動、2.訴訟
  

〈文法〉
● state には、①状態、②州、③国家などの意味がある。actual state は

 「実際の状態」という意味で使う。

  actual state purposes が「実際の州の目的」という意味であるのは、

  ヴァージニア州がどういう目的でVMIを創設し維持してきたかが議論になっ

  てことから分かる。

   この文の actual は、第2パラグラフの第2文の genuine と同じ意味で、

  また、hypothesized と invented と反対の意味で使われている。

● rationalizations for actionsは、「行動の正当化」という意味にもとれるが、

 actionが「訴訟」という意味で使われているのは、上述の第2パラグラフの

 第2文に“invented post hoc in response to litigation” 「訴訟に対応して

 事後的に考案された」という表現があり、この言い換えであることから分かる。
  ※ 日本語でも「出るところに出る」という表現を裁判所に訴えるという

    意味で使うように、おそらく、「行動(action)を起す」というよう

    な表現から、「訴訟」という意味が生じたのであろう。 
   拙稿「日常語の法律用語としての固定化について」『英語教育』

   (2013年2月号) 92頁参照 。                                                

〈訳〉
 この部類のケースでは、批判に耐えうる正当化を行うためは、訴訟のため

 の辻褄合わせではなく実際の州の目的を説明しなければならない




≪Par.3≫
[1] In 1839, when the Commonwealth established VMI, a range of educational opportunities for men and women was scarcely contemplated.  [2] Higher education at the time was considered dangerous for women; reflecting widely held views about women's proper place, the Nation's first universities and colleges -- for example, Harvard in Massachusetts, William and Mary in Virginia -- admitted only men.  [3] VMI was not at all novel in this respect: in admitting no women, VMI followed the lead of the Commonwealth's flagship school, the University of Virginia, founded in 1819.
 


[第1文]
 In 1839, when the Commonwealth established VMI, a range of educational
  opportunities for men and women was scarcely contemplated.

〈語句〉
・Commonwealth 名)州、ヴァージニア州
・establish 他)~を創設(設立)する
・VMI ヴァージニア軍事大学
・range 名)範囲
・educational opportunities 教育の機会
・scarcely 副)ほとんど~ない
・contemplate 他)~を熟慮する、~をもくろむ

〈文法〉
● when…VMIは、 1839を修飾する関係副詞節
「ヴァージニア州がVMIを創設した1839年において」、または「1839年

 に、その年にヴァージニア州はVMIを創設したのであるが」

● a range of~
  「~の範囲」という意味と「様々な」という意味がある。「男女の教育機会

  の範囲」でも「男女の様々な教育機会」でもよいと思うが、動詞が was

 (単数)であるので、「範囲」と訳す方が良いように思う。
   そもそも女性が大学に入ることが認められていなった時代のことであり、

  男女別にするのか、共学の方が良いのか、というような「範囲」は問題にな

  らなかったという趣旨である。


〈訳〉
 ヴァージニア州がVMIを創設した1839年において、男女の教育機会

 の範囲というものは、ほとんど念頭におかれていなかった。



[第2文]
  Higher education at the time was considered dangerous for women;
  reflecting widely held views about women's proper place, the Nation's first
  universities and colleges -- for example, Harvard in Massachusetts,
  William and Mary in Virginia--admitted only men.

〈語句〉
・Higher education 名)高等教育
・dangerous 形)危険な
・reflect 他)~を反映する
・hold 他)(考えなどを)もつ、いだく
・view 名)見解
・proper 形)適切な
・place 名)地位、立場
・University 名)大学、特に大学院をもつ4年制の総合大学
・college 名)大学、特に大学院のない2年または4年制の単科大学
・Nation 名)国家
・Harvard 名)ハーヴァード大学
・Massachusetts 名)マサチューセッツ州
・William and Mary 名)ウィリアム・メアリー大学
・Virginia 名)ヴァージニア州
・admit 他)~の入学を認める

〈文法〉
● consider O+C 「 O が C であると考える(みなす)」という第5文型の受動

 態が使われている。O is considered C 「O は C であると考えられている。」
  education was considered dangerous 「教育は危険と見なされた。」
 判決にはこの記述の部分に注が付いており、ハーヴァード大学医学校教授の著作

 に「厳しい勉学と男子との学術的競争の心理的影響が女子の生殖器官の発達を阻

 害する」という趣旨の記述があることが紹介されている。

● reflecting….は、分詞構文である。前にコンマではなく、セミコロンがある

 ので、前の文ではなく後ろの文とつながっていることが分かる。Nation’s 以

 下の文と意味が合うように適当な接続詞でつなぐ。ここでは「….を反映して」

 くらいの意味である。
  分詞構文のポイントは、前後の文脈を考えて何が「適当な接続詞」かを自分

 で考えることである。

● widely held views 過去分詞の形容詞的用法「広くもたれていた見解」

● ダッシュの挿入があるが、主文の基本構造は、第3文型である。
   universities admitted men
      S     V      O  「大学は男性を入学させた。」


〈訳〉
 当時高等教育は女性には危険であると考えられていた。女性の適切な地

 位に関して広く行き渡った見解を反映して、国の最初の大学――例えば、

 マサチューセッツ州のハーヴァード大学やヴァージニア州のウィリアム

 &メアリー大学――は、男性のみを入学させていた。



[第3文]
 VMI was not at all novel in this respect: in admitting no women, VMI
  followed the lead of the Commonwealth's flagship school, the University of
  Virginia, founded in 1819.

〈語句〉
・VMI ヴァージニア軍事大学
・not at all まったく~ない
・novel 形)目新しい
・respect 名)点
・follow 他)~について行く、従う
・lead 名)先導
・flagship 名)1.旗艦 2.最も重要なもの 形)最も重要な、1番目の
・founded 他)~を設立する 

〈文法〉
● in admitting~ 「~の入学を認めることにおいて」

● flagship schoolの後に、名詞が and なしに並列されているので、前後が同格

 の関係であことがわかる。

● University of Virginia, ←〔 founded in 1819 〕
  found という他動詞の後ろに目的語がないので過去分詞の形容詞的用法

  である。「1819年に設立されたヴァージニア大学」

    
〈訳〉
 この点において、VMIは決して目新しくなかった。女性をまったく入学

 させないことにおいて、VMIは、ヴァージニア州の最重要学校、つまり

 1819年に創立されたヴァージニア大学に追随した




≪Par.4≫
[1] Second, the Commonwealth argues, "the unique VMI method of character development and leadership training," the school's adversative approach, would have to be modified were VMI to admit women.  [2] However, the parties agree that some women can meet the physical standards VMI now imposes on men.  [3] Neither the goal of producing citizen soldiers, VMI's raison d'etre, nor VMI's implementing methodology is inherently unsuitable to women.  [4] State actors controlling gates to opportunity may not exclude qualified individuals based on fixed notions concerning the roles and abilities of males and females.


[第1文]
  Second, the Commonwealth argues, "the unique VMI method of character
  development and leadership training," the school's adversative approach,
  would have to be modified were VMI to admit women.

〈語句〉
・Commonwealth 名)州、ヴァージニア州
・argue 他)~を主張する、論じる
・unique 形)独特な、
・VMI ヴァージニア軍事大学
・method 名)方法
・character 名)性格
・development 名)発達、発展、開発
・leadership 名)リーダーシップ、統率力
・training 名)トレーニング
・adversative 形)(意味などが)反対を表す
・approach 名)アプローチ、取り組み方
● adversative approach は、この表現だけでは意味が分からない。判決の別の箇

 所に「肉体的過酷さ、精神的ストレス、絶対的な平等処遇、プライバシーの欠如、

 詳細な行動規則、望ましい価値の教化」を特徴とする教育方法であるという説明

 がある。

  adversative は、adversity「逆境」という語と関連するので「逆境的アプロー

  チ」と訳しておく。

・modify 他)~を修正(変更)する
・admit 他)~の入学を認める


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  Commonwealth argues,  { "the unique … admit women }
      S       V     O

        「ヴァージニア州は、{ } と主張する。」

● Second 「第2に」は、第2パラグラフの文頭の First「第1に」に続いて、

 ヴァージニア州側の主張の2つめであることを示している。“the unique…

 training,” は、ヴァージニア州側の主張の引用である。

● argues の目的語の中を見ると、would have まで動詞がないので、その前の
 approach までが、大きく見た場合の主語であることが分かる。“the unique…
 training,” the school's adversative approach の間に and がなく、意味から判

 断して後者が前者の言い換え(同格)であることが分かる。

● were to…は、前の述部にwouldがあること、直前のmodifiedで文が完結しうる

  ことから、=if VMI were to admit women「仮にVMIが女性の入学を認めると

  すれば」 であることが分かる。
  were to は、実現の可能性に関わらない純粋な話の上での仮定を表す。

  この用法は「実現の可能性の乏しい、ありそうもないことの仮定」と説明

  されるが、江川泰一郎の『英文法概説』(金子書房)に次の説明がある。
  「Were to が未来を表わすのは、were のためではなくwere to(つまりbe to
  の仮定法過去)のためである。未来表現の be to を仮定法について使うと、

  それだ事柄の実現性に対する強い疑いを表わすことになる。そこで were

  toは『仮に~するとしたら』という、いわば議論のための仮定の呈示に使われ

  るのである。議論のための仮定の呈示だから、その内容は…実際にはまず起こ

  りえない事柄でもいいし、…現実に起こりうる事柄でもよい。」(§169)

  (改訂新版、1964年)
   議論の上での仮定であるから、結果的に「ありそうもないことの仮定」に

  なることが多いであろうが、このような至当な解説が継承されていないのは、

  まことに残念である。


〈訳〉
 第2に、仮にVMIが女性の入学を認めるとすれば、「人格開発とリー

 ダーシップ訓練に関するVMIの独特の方法」、つまり、この学校の逆

 境的アプローチが修正されなければならなくなるであろうとヴァージニ

 ア州は主張する。



[第2文]
  However, the parties agree that some women can meet the physical
  standards VMI now imposes on men.

〈語句〉
・party 名)(訴訟の)当事者 ここでは合衆国政府とヴァージニア州
・agree that… …ということに同意する
・meet 他)(基準など)を満たす   
・physical 形)1.肉体の、 2.物質の
・standard 名)基準
・impose A on B  B(人)にA(義務、負担など)を課す 


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  parties agree { that some women…men }
    S     V     O 

  「当事者達は、{ }ということに同意している。」

● VMI now imposes on men
  VMI の前に関係代名詞が省略されていることは、次の2点から分かる。
    ①すでに第3文型(women meetstandards)が完成している。
    standardsとVMIが接続詞なく並列されている。
    imposesの目的語が後ろにない。

   standards←〔 (which) VMI now imposes on men 〕
   

〈訳〉
 しかしながら、VMIが現在男性に課している肉体的基準を充たすことが

 できる女性もいるということに両当事者は同意している。



[第3文]
  Neither the goal of producing citizen soldiers, VMI's raison d'etre, nor
  VMI'simplementing methodology is inherently unsuitable to women.

〈語句〉
・neither A nor B  AもBも~ない 
・goal 名)目的
・produce 他)~を作り出す、輩出する 
● citizen soldiers 市民兵士 この呼称は、判決の他の部分で「市民生活と軍務

 においてリーダーシップを発揮する準備のできた人」と説明されている。

・raison d’etre  存在理由 この語はフランス語。英語に直すと reason of being
・implement 他)~を実施する、実行する 
・methodology 名)方法論、やり方
・inherently 副)本質的に、本来的に 
・unsuitable形)不適当な


〈文法〉
● VMI’s raison d’etre は、その前のgoal of…soldiersの言い換えである。

 「市民兵士を輩出するという目的、すなわちVMIの存在理由」
  neither A nor B のAに該当する部分に接続詞なしに名詞句が並列されている

  ことか分かる。


〈訳〉
 VMIの存在理由である市民の兵士を輩出するという目的も、VMIの

 実施方法も本質的に女性に不向きであるということはない。



[第4文]
  State actors controlling gates to opportunity may not exclude qualified
  individuals based on fixed notions concerning the roles and abilities of
  males and females.


〈語句〉
● State actor 「州の行為者」
   合衆国憲法修正第14条は「州は、・・・法の平等な保護を拒んではなら

  ない」と規定しており、州政府(行政、立法、司法)による差別を禁止して

  おり、私人の行為は禁止していない。VMIは、私立大学であるが、ヴァー

  ジニア州による資金援助を受けており、また州議会のコントロールの下に置か

  れている。そのためVMIの入学制度が「州の行為」とみなされるとみなされ

  ており、ヴァージニア州がこの訴訟の直接の被告となっている。

・gate 名)門、門戸
・opportunity 名)機会
・exclude 他)~を排除する
・qualified 形)資格のある
・individual 名)個人
・based on ~にもとづいて
・fixed 形)固定的な
・notion 名)概念、観念
・concerning~に関して
・role 名)役割
・ability 名)能力
・male 名)男性
・female 名)女性


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  actors may not exclude individuals 
   S         V     O

    「行為者は個人を排除してはならない。」

● controlling は、現在分詞の形容詞的用法
   actors ←〔 controlling…opportunity 〕
 「機会への門をコントロールしている」の「機会」は「教育の機会」のことで

  ある。

  要するに、どのような人を入学させるかを決定するというような意味である。

● based on…females は、その内容から exclude を修飾する副詞句だとわかる。
 「~にもとづいて排除する」


〈訳〉
 教育機会の門戸を制御している州の行為者は、男性と女性の役割と能力

 に関する固定観念にもとづいて資格のある個人を排除してはならない。



【解説】
 アメリカでは、19世紀中頃に各州が「既婚女性の財産に関する法律」(Married Women’s Property Act)を制定するまで、女性は財産を所有する権利をもたなかった。また、黒人男性の投票権は、1870年制定の修正第15条によって認められたが、女性に投票権が認められたのは、その半世紀後の修正19条が制定された1920年のことであった。
 第2次大戦後、バーの男性所有者の妻あるいは娘でなければ、女性はバーテンダーとしての免許を受けられないことを定めたミシガン州法が平等保護条項に違反するという訴訟が提起されたが、合衆国最高裁は、女性がバーテンダーとして働くことで生じる「道徳的問題や社会的問題」を理由にこの法律を合憲とした(Goesaert v. Cleary(1948))
 「ステレオタイプ」という言葉がある。「判で押したように多くの人に浸透している先入観、思い込み、認識、固定観念やレッテル」などと定義されている。はじめの全般的説明のところで、「法廷意見を書いたのは、ギンズバーグ裁判官である」と書いたが、このルース・ギンズバーグ(Ruth Ginsburg)裁判官は、女性である。そこを読んだ人の多くが当然に男性であると思ったと想像する。それが「ステレオタイプ」である。現在、合衆国最高裁の9人の裁判官のうち4人が女性である。
 この判決の趣旨は、「軍服風の制服を着て、厳格な規律のもとでプライバシーのない軍隊式の兵舎で集団生活し、肉体的にも精神的にも過酷な訓練を受ける」というVMIの教育方法に適正のある人を入学させるべきであり、おおよそ女性はおしなべてそのような適正をもたないと見なすことは「ステレオタイプ」であり、適正の判断に性別は関与性をもたない(irrelevant)である、ということであろう。
 この判決を受けてVMIは、女性の入学を認めるようになった。VMIのホームページによると学生の8人に1人がが女性である。

  

2018年03月04日

Texas v. Johnson  国旗焼却は表現の自由

表現行為としての国旗焼却に刑罰を科すことは憲法違反

テキサス 対 ジョンソン
Texas v. Johnson

491 U.S. 397 (1989)
合衆国最高裁判所
Supreme Court of the United States
1989


 合衆国憲法修正第1条(First Amendment)は、「連邦議会は、・・・言論または出版の自由・・・を縮減する法律を制定してはならない(Congress shall make no law … abridging the freedom of speech, or of the press)」と規定し、表現の自由を保障している。
 1984年、共和党大会がテキサス州ダラスで行われ、次期大統領候補として、再選をかけた現職のレーガン大統領が選ばれた。この大会開催中にレーガン政権の政策に反対するデモ行進が行われた。デモの終着点であるダラス市庁舎で、この事件の主人公のグレゴリー・リー・ジョンソン(Gregory Lee Johnson)は、アメリカ国旗を灯油にひたして火をつけて燃やした。国旗が燃えている間、デモ参加者は、「アメリカ、赤、白、青、唾をかけろ」と繰り返し唱えた。デモ隊が解散した後、この様子を見ていた人が、心を痛めて、国旗の燃えかすを集めて自分の家の裏庭に埋めた。
 ジョンソンは、国旗を損傷することを禁じ刑罰を科すテキサス州法に違反したとして逮捕、起訴され、有罪判決を受けた(1年の禁固刑と2,000ドルの罰金)。ジョンソンは、自分が行った国旗焼却は、レーガン政権に反対するというメッセージをこめた言論であり、修正第1条によって保護されていると主張して、有罪の取消しを求めて上訴した。刑事事件に関するテキサス州の最上級裁判所は、ジョンソンの主張を認めて有罪判決を破棄した。テキサス州側が合衆国最高裁に上訴した。


≪Par. 1≫   
[1] We must first determine whether Johnson's burning of the flag constituted expressive conduct, permitting him to invoke the First Amendment in challenging his conviction.  [2] If his conduct was expressive, we next decide whether the State's regulation is related to the suppression of free expression.  [3] In deciding whether particular conduct possesses sufficient communicative elements to bring the First Amendment into play, we have asked whether an intent to convey a particularized message was present, and whether the likelihood was great that the message would be understood by those who viewed it.



[第1文]
  We must first determine whether Johnson's burning of the flag constituted
  expressive conduct, permitting him to invoke the First Amendment in
  challenging his conviction.

〈語句〉
・we われわれ=合衆国最高裁の裁判官 
・determine 他)~を決定する、確定する
・burning 名)焼却 
・flag 名)旗 ここでは星条旗を指す。
・constitute 他)~を構成する 
・expressive 形)表現の、表現的な 
・conduct 名)行為 
・permit A to do A が~することを許す、認める
・invoke 他)(法律、権威など)に訴える
・First Amendment 合衆国憲法修正第1条
・challenge 他)~に異議を唱える
・conviction 名)1.有罪判決、2.信念、確信


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
   We determine { whether…conviction }
    S    V        O 「われわれは、{…かどうか} を決定する」

● Johnson’s burning of the flag の Johnson は、動名詞の意味上の主語である。
   動名詞の意味上の主語は、カタカナ語として日本語化している英単語の例に

  よると分かりやすい。例)his jogging, my training, her shopping, など。
   of の前後で burn the flag という「他動詞+目的語」の関係があり、

   このような of的格の ofと呼ぶことがある。

    この句は全体として「ジョンソンが国旗を燃やしたこと」と訳せる。

● permitting~は、分詞構文であり、分詞構文は、文脈に合う適当な接続詞を

  補うが適当かは自分で考える
      ・Feeling sick, Mary went to school.   
         「 体調が悪かったけれども、メアリーは学校に行った。」  
       ・Feeling sick, Mary was absent from school.       
        「体調が悪かったので、メアリーは学校を欠席した。」  
     これらの例文では同じ Feeling sick でも文脈によって含意が異なる。

 本文では、and therefore permitted himくらいの意味である。 permit の主語は、
 permitting 以下の内容から論理的に考えて、つまり修正第1条に訴えること

 をジョンソンに許すものは何か」を考えて、前の whether 節の内容「国旗焼却

 が表現行為であること(Johnson’s …conduct)である。

● in ~ing は、~するさいに(時に)、~することにおいてという意味が

 ある。in challenging his conviction 「彼の有罪判決に異議を唱えるさいに」


〈訳〉
 われわれは、まず次のことを確定しなければならない。つまり、ジョンソン
 が国旗を焼いたことが表現行為を構成し、したがってジョンソンが自分の有
 罪判決に異議を唱えるさいに修正第1条に訴えることが許されるかどうか、
 である。



[第2文]
  If his conduct was expressive, we next decide whether the State's
 regulation is related to the suppression of free expression.

〈語句〉
・conduct 名)「行為」
・expressive 形)表現の、表現的な
・decide 他)~を決定する、判断する
・State’s 州の、 ここでは「テキサス州の」
・regulation 名)規制、規則
・is related to ~に関係している 
・suppression 名)(自由などの)抑圧
・expression 名)表現


〈文法〉
● 基本構造:第3文型 
   We decide { whether…expression }.
     S   V       O 

      「われわれは、{…かどうか} を決定する」
   
● his conduct was /regulation is 過去形と現在形が使われている:
  これは、ジョンソンの星条旗焼却は、過去の出来事であるが、テキサス州法

  の解釈は現在にも妥当するからる。
   例えば、Yesterday, she said, " I feel fine." という直接話法の文を間接話

    法変えると、 Yesterday, she said that she felt fine.となって、feel が過

    去形felt になる。これは時制の一致」という法則があるからではなく

   「気分がかった」のが昨日のことであるからである。
 拙稿「時制の一致について」『英語教育 』(1993年11月号)76-77頁参照。


〈訳〉
 彼の行為が表現であった場合、次にわれわれは、テキサス州の規制が自由な表
 現の抑圧に関係しているかどうかを決定する。



[第3文]
  In deciding whether particular conduct possesses sufficient
 communicative elements to bring the First Amendment into play,
 we have asked whether an intent to convey a particularized message
 was present, and whether the likelihood was great that the message
 would be understood by those who viewed it.   
 

〈語句〉
・particular 形)特定の
・conduct 名)行為
・possess 他)1.(性質など)をもつ、2.(資産など)を所有する
・communicative 形)コミュニケーションの、コミュニケーション的な
・element 名)要素
・bring ~into play  ~を活動させる、を発動する、の出番になる
・intent 名)意図 
・convey 他)1.(思想、感情など)を伝える 、2.~を運ぶ
・particularized 形)個別の、特定された、特殊な
・message 名)メッセージ
・present 形)存在している
・likelihood 名)見込み、可能性
・those who…= those people who…  …する人々 
・view 他)~を見る


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
   we have asked { whether…it }      
    S   V     O   「われわれは、{…かどうか} を問うてきた。」  
    have asked 現在完了の 継続用法「(以前からずっと)問うてきた」

● asked の目的語は、2つある。  
 ① whether an intentwas present     
            S   V  C  「意図が存在したかどうか」    
 ② whether the likelihood was great      
            S   V   C 「可能性が大きかったかどうか」 
     文型の多重構造:① ② とも whether 節内は、第2文型である。
   
● in ~ing は~するにさいに(時に)、~するにあたりという意味である。
   In deciding { whether …} 「 {…かどうか} を決定するにあたり」
   whether の節内は、第3文型である。 
     conduct possesses elements
         S      V     O 「行為が要素を有している。」

● sufficient communicative elements to … 
  sufficient~to do… 「…するのに充分な~」という構文が使われている。
 
● 基本構造:第3文型
   we have asked { whether…it }
   S    V   O   「われわれは、{…かどうか} を問うてきた。」
   have asked 現在完了の継続用法「(以前からずっと)問うてきた」

● intent ←〔to convey~message〕不定詞の形容詞的用法「~を伝える意図」

● that the message~
   that がlikelihood の内容を説明する同格節であることは次の2点から分かる。
   ① likelihood was great までですでに第2文型が完してる。
   ② that の後に第2文型の完全な文が続いている

  likelihood{ that themessage would be understood by…it }]
                 S        V    C       
    「メッセージが理解される可能性」


〈訳〉
 特定の行為が修正第1条を発動するに充分なコミュニケーションの要素

 を有しているかどうかを決定するにあたり、われわれは、特定的なメッ

 セージを伝える意図が存在したかどうか、およびそのメッセージがそれ

 を見る人によって理解される可能性が大きかったかどうかを問うてきた。




≪Par.2≫ 
[1] Johnson burned an American flag as part -- indeed, as the culmination -- of a political demonstration that coincided with the convening of the Republican Party and its renomination of Ronald Reagan for President.  [2] The expressive, overtly political nature of this conduct was both intentional and overwhelmingly apparent. [3] In these circumstances, Johnson's burning of the flag was conduct sufficiently imbued with elements of communication.



[第1文]
  Johnson burned an American flag as part -- indeed, as the culmination --
 ofa political demonstration that coincided with the convening of the
 RepublicalParty and its renomination of Ronald Reagan for President.

〈語句〉
・burn 他)~を燃やす
・as part of ~の一部として
・indeed 副)実際、それどころか
・culmination 名)最高潮、頂点
・political 形)政治的な、政治の 
・demonstration 名)1.デモ(行進)、 2.実演、デモンストレーション
・coincide with 1.~と同時に起こる、2.~と符号する
・convene 他)(会議、大会など)を招集する、開催する
● Republican Party 名)共和党
  the convening of the Republican Party

   大統領候補者指名のための「共和党大会」

● renomination 名)再指名 re(再び)+nomination(指名)   
  その当時大統領であったロナルド・レーガンを次の大統領選挙でも共和党の

  大統領候補として指名すること。


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  Johnson  burned  flag
    S    V      O 「ジョンソンは旗を焼いた。」

● ダッシュで挿入された indeed~は、as part ともに of a politiclal ~につながる。
          as part ↘
                of a political demonstration
    indeed, as culmination ↗
        「政治デモの一部として、実際、そのデモの頂点として」

● demonstration ←〔that coincided with ~President〕
   関係代名詞節であることは、thatの後に主語がないことから分かる。

● and its renominationが、つながる可能性のある前置詞は2つである。
     × as part ~ of   ↘ 
                 its nomination
     coincided with  

  いずれであるかは、文法判断の限界である。
    「レーガンの指名の一部としてジョンソンが国旗を焼いた」

     ×事実に反する
     → 共和党大会とレーガンの一体であり、ワンセットで

       coincidedwithにつながっている。
  

〈訳〉
 共和党大会とロナルド・レーガンの大統領候補としての再指名と同時に行

 われ政治デモの一環として、実際、その頂点として、ジョンソンはアメ

 リカ国旗を燃やした



[第2文]
 The expressive, overtly political nature of this conduct was both intentional
  and overwhelmingly apparent.

〈語句〉
・expressive 形)表現的な
・overtly 副)公然と、あからさまに
・political 形)政治的な
・nature 名)1.性質、2.自然
・conduct 名)行為
・intentional 形)意図的な、故意の」
・overwhelmingly 副)圧倒的に、徹底的に 
・apparent 形)明白な 

〈文法〉
● 基本構造:第2文型 
   nature was  intentional and apparent
    S    V        C「性質は、意図的で明白であった。」

〈訳〉
 この行為の表現的であからさまに政治的な性質は、意図したものであると同
 時に火を見るよりも明らかであった。



[第3文]
 In these circumstances, Johnson's burning of the flag was conduct
 sufficiently imbued with elements of communication.

〈語句〉
・circumstance 名)状況、事情
・burning 名)焼やすこと
・conduct 名)行為
・sufficiently 副)充分に
・imbued A with B  AにB(感情、意見など)を吹き込む


〈文法〉
● 基本構造:第2文型 
  burning was conduct
    S    V   C   「焼くことは行為であった。」

● Johnson's burning of the flagは、「ジョンソンが~を燃やしたこと」と訳す。

imbued with~「 ~を吹き込まれた行為 」
  imbued が conduct を修飾している過去分詞の形容詞的用法であることは、

  次の2点から分かる。
    ① その前にすでに第2文型が完成している。
    ② 後に目的語がない。
  conduct の後に関係代名詞があるとみなしてもよい。
    conduct ←〔(which was) sufficiently imbued with~〕


〈訳〉
 これらの状況において、ジョンソンが国旗を燃やしたことは、コミュニケ

 ーションの要素が充分に吹き込まれた行為であった。




≪Par.3≫ 
[1] The State asserts an interest in preserving the flag as a symbol of nationhood and national unity.  [2] In Spence v. Washington, we acknowledged that the government's interest in preserving the flag's special symbolic value “is directly related to expression in the context of activity” such as affixing a peace symbol to a flag.  [3] We are equally persuaded that this interest is related to expression in the case of Johnson's burning of the flag.


[第1文]
 The State asserts an interest in preserving the flag as a symbol of
  nationhood and national unity.

〈語句〉
・State 州=テキサス州 
・assert 他)~を断言する、(強く)主張する
・preserve A as B  AをBとして保存する、保護する
・symbol 名)象徴、シンボル
・nationhood 名)国家であること 
・national 名)国家の、国民の
・unity 名)統一、結束


〈文法〉
● 基本構造:第3文型 
  State asserts interest
   S    V   O 「州は利益を主張する。」

● in~ing は、「~するさい」「~することにおいて」などの意味のある

   用法ではなく、nterest in 「~に対する利益」という語法である。

    もともとこの語法も「~における利益」という意味であるので、両者

    の in の意味にあまり差異はない。


〈訳〉
 テキサス州は、国家と国家統合の象徴として国旗を保護することに対する

 利益を主張する。



[第2文]
  In Spence v. Washington, we acknowledged that the government's

  interestin preserving the flag's special symbolic value “is directly related

 toexpression in the context of activity” such as affixing a peace symbol to

 aflag.

〈語句〉
● Spence v. Washington 「スペンス対ワシントン州事件」
 星条旗にピース・マークを張って逆さまに窓に掲げたことが、国旗にマーク

 や絵などを張ることを禁じるワシントン州法に違反したとされた事件で、最高

 裁は1974年にこの州法を違憲と判決した。

・acknowledge 他)(事実として)~を認める、承認する
・government 名)政府
・interest in ~に対する利益
・preserve 他)~を保存する、保護する
・special 形)特別な
・symbolic 形)象徴的な、シンボルとしての
・value 名)価値
・directly 副)直接的に
・is related to ~に関係している
・expression 名)表現
・in the context of ~の文脈において
・activity 名)活動
・affix 他)~を貼り付ける」
● peace symbol 平和のシンボル(=ピース・マーク) 


〈文法〉
● 基本構造:第3文型 
  we acknowleged  { that the government~flag }
   S    V       O 

   「われわれは{ }ということを承認した。」

● that 節の中の基本構造:第2文型 
    interest is related  
      S  V   C  「利益は関係している。」
 
● “is directly…activity” は、Spence判決からの引用である。is が was になって
  いないのは、引用であるからであると説明できるし、また真理であるから

  であるとも説明できる。

● such as A 「例えばAのような」
    A = affixing a peace symbol   
         目的語をとる動名詞「平和のシンボルを貼り付けること」


〈訳〉
 われわれは、スペンス対ワシントン州事件において、国旗の象徴としての

 特別な価値を保護する政府の利益が、ピース・マークを国旗に貼り付ける

 などのような「活動の文脈において表現と直接に関係している」ことを認

 めた。
 注釈:つまり、ワシントン州は、例えば、単に破れて見苦しい国旗の掲揚を

    規制したのではなく、国旗の象徴としての特別な価値を維持するために

    メッセージ性のある表現を伴った国旗を規制した。)



[第3文]
 We are equally persuaded that this interest is related to expression in the
 case of Johnson's burning of the flag.

〈語句〉
・equally 副)平等に、同様に
・persuade A that… Aに….ということを説得して納得させる
・interest 名)利益
・is related to ~に関係している
・expression 名)表現
・in case of ~の場合、~のケースでは


〈文法〉
● are persuaded that…(…ということに説得させられている→)
 「…ということを確信(納得)している」

● this interest は、第1文の interest in~unity「国家と国家統合の象徴として

 国旗を保存することに対する利益」を指している。


〈訳〉
 われわれは、ジョンソンが国旗を燃やしたケースにおいてもこの利益が表

 現関係していることを同様に確信している。




≪Par.4≫
[1] If we were to hold that a State may forbid flag burning wherever it is likely to endanger the flag's symbolic role, but allow it wherever burning a flag promotes that role -- as where, for example, a person ceremoniously burns a dirty flag -- we would be saying that when it comes to impairing the flag's physical integrity, the flag itself may be used as a symbol -- as a substitute for the written or spoken word or a short cut from mind to mind -- only in one direction.  [2] We would be permitting a State to prescribe what shall be orthodox by saying that one may burn the flag to convey one's attitude toward it and its referents only if one does not endanger the flag's representation of nationhood and national unity.


[第1文]
 If we were to hold that a State may forbid flag burning wherever it is likely to endanger the flag's symbolic role, but allow it wherever burning a flag promotes that role -- as where, for example, a person ceremoniously burns a dirty flag -- we would be saying that when it comes to impairing the flag's physical integrity, the flag itself may be used as a symbol -- as a substitute for the written or spoken word or a short cut from mind to mind -- only in one direction.

〈語句〉
・hold 他)(裁判官が判断を示す→)判示する
● a State ある州 ここではテキサス州に限らない一般論を述べていることが不定

 冠詞によって分かる。

・forbid 他)~を禁止する
・flag burning 国旗焼却
・wherever S + V… …する場合はいつでも
・is likely to ~しそうである
● endanger 他)~を危険にさらす
  en-:「~の状態にする」という意味の接頭辞  danger 名)危険

・symbolic 形)象徴的な
・role 名)役割
・allow 他)~を許す
・promote 他)~を促進する
・as where S + V… (例えば)…するような場合
・ceremoniously 副)儀式にしたがって、厳かに
・when it comes to ~といことになると、~に関して言えば
・impair 他)(価値など)を害する、傷つける
・physical 形)1.物質の、物理的な、2.肉体の
・integrity 名)高潔、完全な状態
・symbol 名)象徴、シンボル
・substitute for 名)~の代用品 
・short cut 名)近道
・mind 名)心
・direction 名)方向


〈文法〉
● If we were to~dirty flag
  仮定法「仮にわれわれが~するとすれば」
   If S were to~は、実現の可能性の有無にかかわらず、純粋な話の上で

   仮定用いられる。
    ※ U.S. v. Virginia、 ≪Par.4≫ 第1文の文法解説参照 

● hold that~「~であると判示する」
  hold の目的語の that 節は、dirty flag までつづいている。
     hold { that a State~a dirty flag }
      V    O
     
  that の中の構造
          ↗① forbid flag burning wherever it is…role
   State  may
         ↘ ② allow it wherever burning a flag…dirty flag

  「州は、①…の場合はいつでも国旗焼却を禁じ、②…の場合はいつでもそれ

   を許してもよい」 
   forbid とallow が反意語であり、また①と②内のwhenever…が対照的に使

   われていることから、allow it が a State may とつながっていることが分

   かる。 

● ② の wherever 節内は、第3文型であり目的語をもつ動名詞(「旗を燃やす

  こと」)が主語になっている。
    [burning a flag] promotes role
       S       V    O

      「 [ 旗を燃やすこと ] が役割を促進する。」
   
● --as where~flag-- は、その例示である。「例えば、~の場合のように」

● we would be saying が前の if S were to~に対応する主節である。接続詞

 なく新たに完全な文が始まっているので分かる。「…と言っていることになる

 であろう。」

● saying の後の that 節(言っている内容)は、文末の direction まで続き、

 その中にさらに when の節がある入れ子構造になっている。
    { that when it~integrity, /the flag itself may be…}

● --as a substitute は、as a symbolの言い換えである。


〈訳〉
 国旗焼却が国旗の象徴的役割を危険にさらしそうである場合は、州はいつ

 でもそれを禁じることができるが、例えば、ある人が汚れた国旗を厳かに

 焼く場合などのように、国旗を焼くことが象徴的役割を促進する場合、州

 はいつでもそれを許すことができると仮にわれわれが判示するとすれば、

 われわれは、国旗の物理的一体性を損ねることに関して言えば、国旗自身

 が象徴として――書かれた言葉、話された言葉の代用あるいは心と心をつ

 なぐ近道として――一方向のみに使用できると言っていることになるであ

 ろう。



[第2文]
  We would be permitting a State to prescribe what shall be orthodox by
  saying that one may burn the flag to convey one's attitude toward it and
  its referents only if one does not endanger the flag's representation of
  nationhood and national unity.

〈語句〉
・permit A to do Aが~することを許す
・prescribe 他)~を指示する、命じる
・orthodox 形)正統な、オーソドックスな
・one 名)一般的な人  特に訳出しなくてもよい。
・convey 他)1.を伝える、2.を運ぶ
・attitude 名)態度
・referent 名)指示対象
・only if …する場合のみ
・endanger 他)~を危険にさらす
・representation 名)表示、表現
・nationhood 名)国家であること、国家としての地位
・national 名)国家の、国民の
・unity 名)統一、結束


〈文法〉
● We would be permitting~は、第1文の仮定(If we were to hold…)を受け継

  いだ仮定法である。「われわれは、~を許していることになるであろう。」

● permit a State to prescribe A 「ある州がAを命じることを許す」
  A=what shall be orthodox 「正統であって然るべきもの(こと)」
  shall には、「州の判断として、何かが正統であるべきだとされれば、

  その判断が強要される」という含意がある。

● by saying { that… unity } 「 {  } と言うことによって」
  that 節の中に if 節が入っている:one may burn…,only if…unity
 「…である場合のみ、人は~するために国旗を焼いてもよい」

● to convey は副詞的用法の不定詞「~を伝えるために(旗を焼く)

● convey以下の語句のつながりについて、次の2つの選択肢がある。
          ↗ one’s attitude toward it  
   ① convey
          ↘ its referents

 

               ↗ it
    ② attitude toward
            ↘ its referents     

  どちらであるかは、単語の意味や文法、構文の知識だけでは、確定すること
 ができな文法判断の限界に属する事項である。このような場合はどちらを選
 択すれば論理的な話になるかによって決定しなければならない。
  決め手になるのは its referents の意味である。its は「国旗の」という意味で
 ある。referents は「指示対象」である。「国旗の対象」は、第一義的には「国
 家」であるので、①では、「国旗に対する態度と国家を伝える」という意味不明
 の文になる。②は「国旗と国家に対する態度」となり、こちらが論理的で正しい
 ことが分かる。  

● flag's representation of nationhood のof は、目的格のofである。
  「国旗が国家を表徴していること。」

● 以上の内容を理解してはじめて、by saying…は、proscribeではなくpermitting
 を修飾することが分かり、これも文法判断の限界である。「州は…と述べること
 によってオーソドックなことを命じる」ではなく、「最高裁の裁判官は…と述べる
 ことによって~を許す」である。


〈訳〉
 国家としての地位や国家統合を国旗が表象していることを危険さらすこ
 とがない場合のみ、国旗やその指示対象に対する態度を伝えるため国旗
 を焼いてもよいと述べることによって、われわれは、何が正統であるべき
 かを命じことを州に許していることになるであろう。
(※注釈:この文は抽象的で分かりにくいが、第1文の「汚れた国旗を厳かに焼
  く」ことがこの文の「正統であって然るべき態度」の例であるととらえると分
  かりやすい。)




≪Par.5≫
[1] The way to preserve the flag's special role is not to punish those who feel differently about these matters.  [2] It is to persuade them that they are wrong. [3] We can imagine no more appropriate response to burning a flag than waving one's own, no better way to counter a flag burner's message than by saluting the flag that burns, no surer means of preserving the dignity even of the flag that burned than by -- as one witness here did -- according its remains a respectful burial.  [4] We do not consecrate the flag by punishing its desecration, for in doing so we dilute the freedom that this cherished emblem represents.


[第1文]
  The way to preserve the flag's special role is not to punish those who feel
  differently about these matters. 

〈語句〉
・way 名)方法
・preserve 他)~を保存する、保護する
・role 名)役割
・punish 他)~を罰する
・those who = those people who
・feel 自)他)(を)感じる
・differently 副)違ったふうに
・matter 名)事柄


〈文法〉
基本構造:第2文型
   way is not  [to punish~matters]  
   S  V      C   
  補語は、目的語をとる不定詞の名詞的用法である;to punish those
                             v    o  
    「方法は、[~を罰すること]ではない。」

● 主語のwayは、目的語をとる不定詞の形容詞的用法によって修飾されている。
      way ←〔to  preserverole] 
              v     o  「…役割を維持する方法」

● those ←〔who feel~matters〕 「~を感じる人々」


〈訳〉
 国旗の特別な役割を維持する方法は、これらの事柄について異なった感じ

 をする人々を罰することではない。


[第2文]
 It is to persuade them that they are wrong. 

〈語句〉
・persuade A that… Aを説得して…と分からせる
・wrong 形)間違った

〈文法〉
 第1文と同じ構造:第2文型
   It  is  [ to persuade…wrong ]
   S    V        C    

       「それは […説得すること] である。」

 It = way であり、persuade は、第1文のpunish と対照的に使われている。


〈訳〉
  その方法は、その人達に間違っていると説得することである。



[第3文]
  We can imagine no more appropriate response to burning a flag than
 waving one's own, no better way to counter a flag burner's message than
 by saluting the flag that burns, no surer means of preserving the dignity
 even of the flag that burned than by -- as one witness here did --
 accordingits remains a respectful burial.

〈語句〉
・imagine 他)~を想像する
・appropriate 形)適切な、似つかわしい 
・response to 名)~に対する反応
・wave 他)~を振る
・counter 他)~に対抗する、反論する
・burner 名)燃やす人(物)
・message 名)メッセージ
・salute 他)~に敬礼する、挨拶する
・surer sure の比較級「より確かな」
・means 名)手段
・preserve 他)~を保存する、保護する 
・dignity 名)威厳、品位
・witness 名)目撃者、証人
・here 副)ここで ここでは、「この事件で」
・accord O1+O2 O1にO2を与える
・remain 名)残りもの、遺骸
・respectful 形)うやうやしい、敬意に満ちた
・burial 名)埋葬、墓


〈文法〉
● imagine の目的語は3つある。共通して“no比較級~than”の形が使われている

  ので分かる。
   ① no more appropriate response
    ② no better way
   ③ no surer means

  ① の can imagine no more appropriate response~than waving…
   「…を振るよりも適切な対応を想像することできない」という意味であ

    るが、②③も同様の文造である。

 burning a flag 目的語をとる動名詞「旗を焼くこと」。
   s       v

better way ←〔to counter~message〕
   不定詞の形容詞的用法 「~に対抗するより有効な方法」

● flag ←〔that burns〕 関係代名詞「燃える旗」

● -- as one witness here did –は、by according~の付加的な説明

according its remains a respectful burial
 (燃えかすに恭しい埋葬を与えること)→「燃えかすを恭しく埋葬すること」


〈訳〉
 われわれは、国旗を燃やすことに対して自分自身の国旗を振ることより適
 切な反応を想像することはできないし、燃える国旗に敬礼するよりも国旗
 を燃やす人のメッセージに対抗する有効な方法を想像できないし、この件
 の目撃者が実際そうしたように、その燃えかすを恭しく埋葬することより
 も、燃えた国旗であってもその威厳を維持する確かな方法を想像すること
 ができない。



[第4文]
 We do not consecrate the flag by punishing its desecration, for in doing so
  we dilute the freedom that this cherished emblem represents.

〈語句〉
・consecrate 他)~を神聖なものにする
・punish 他)~を罰する
・desecration 名)冒涜
・for 接)というのは=because
・dilute 他)~を薄める
・freedom 名)自由
・cherish 他)~を大切にする、育む
・emblem 名)紋章」
・represent 他)~を表す、象徴する


〈文法〉
● for の後に、we dilute freedom という第3文型の完全な文が続いているので、
 forが接続詞「というのは~だからである」という意味で使われているのが分か
 る。

● in so doing so 「そうすることにおいて、そうするさいに」

● freedom ←〔that~represents〕 
  関係代名詞のthatであることは、freedomですでに第3文型が完成している
  こと、representsに目的語がないことから分かる。

● cherished emblem 過去分詞の形容詞的用法「大切にされている紋章」


〈訳〉
 われわれは、国旗の冒涜を罰することにより国旗を神聖化することをし
 ない。そうすることで、われわれはこの大事な紋章が表している自由を
 希薄化するからである。


【解説】
 表現の自由に関する古典的な考え方として、「思想の自由市場」(free market of idea)というものがある。この考え方には、真理を追究する原理として、さまざまな解釈や批判があるが、筆者流に説明すると、コンビニの棚に並ぶ商品は、売れ行きが悪くなると、他の評判のよい商品に押されて目につきにくい所に並び替えられ、さらには棚から消える。これと同様に思想や言論、表現についても、多くの人々によって好ましくないと見られれば、一時的に非難や論争の対象として注目されることはあっても、結局は賛同者がえられず話題にもされなくなり消滅していくであろうという考え方である。
 最高裁は、国旗の焼却による表現行為は、刑法によって禁じるのではなく、燃え盛る国旗に敬礼し、その燃えかすを恭しく埋葬するというような表現行為によって対抗せよと述べた。いわば思想の自由市場にしたがった判決であると言える。刑罰の威嚇力を借りなければ国旗を燃やす人を規制できないということは、国旗はテキサス州が主張するほど「国家統合の象徴」になっていないと言える。
 この判決は、全国的に激しく非難され、合衆国議会は国旗焼却を禁じる憲法修正を何度か提案したが、必要な票(両議院の3分の2)を得られていない。

2018年03月04日

District of Columbia v. Heller  コロンビア地区の銃規制法は違憲

コロンビア地区の銃規制法は、修正第2条違反              

コロンビア地区 対 ヘラー
District of Columbia v. Heller

554 U.S. 570 (2008)

合衆国最高裁判所
Supreme Court of the United States
2008

 合衆国憲法修正第2条は、「よく規律された民兵組織は自由な国家の安全に必要であり、武器を保持し携帯する人民の権利は侵害されてはならない(A well regulated militia being necessary to the security of a free state, the right of the people to keep and bear arms shall not be infringed)と規定し、武器所持の権利を保障している。この条項が保障している武器所持の権利の範囲について、とりわけ「民兵組織は…必要であり」という文言について、次の二つの解釈の争いがある。つまり、①民兵組織の必要性は、武器所持の一つの目的にすぎず、民兵組織として武器を所持する権利に限定されない個人の権利であるのか、それとも②民兵組織という集団として武器を所持する権利であるのか、という二つの解釈の争いがある。
 コロンビア地区(District of Columbia)は、初代大統領の名を冠して「ワシントンDC」とも呼ばれるが、どの州にも属さず、アメリカ合衆国憲法第1条第8節第17項に従って創設された連邦政府の直轄地である。ホワイトハウス、連邦議会議事堂、合衆国最高裁判所、FBIなどの連邦政府の建物が所在する。コロンビア地区は、1976年に銃規制法(Firearms Control Regulation Act)を制定した。この法律は、銃砲器(firearm)を携帯するために登録する(register)ことを求め、未登録の銃砲器を携帯する(carry)ことは犯罪とされた。さらに、銃砲器の一種である拳銃(handguns)については、その所持(possession)自体が禁じられ、また登録も禁じられていた。さらに、登録済の猟銃など合法的に銃砲器の所持を認められた住民には, それが職場に置かれているか, もしくは合法的なレクレーションのために使われていないかぎり, 装填されていない状態にして, なおかつ, 分解されたままにしておくか, もしくは錠あるいは同様な安全装置をかけておくことを義務づけていた。
 原告は、コロンビア地区の特別警察官(special police officer)であるが、勤務中携帯を認められた拳銃を自宅で所持したいのでその登録を申請したが、拒絶された。彼は、拳銃の登録禁止および銃砲器の分解と施錠の要件が修正第2条に違反しているとして、その差し止めを求めてコロンビア地区地方裁判所に提訴した。地裁は訴えを退けた。連邦控訴裁判所は, 原告は自己防衛に必要とされるかぎりにおいて、すぐに使用可能な銃砲器の保持を求めているのであり, 修正第2条は個人の自己防衛のための銃砲器の保有権を保障したものであるとして,銃規制法を違憲と判断した。
合衆国最高裁は、この判決は、9人の最高裁裁判官のうち5人が武器所有の権利は、民兵組織に限られない個人の権利であるという解釈が支持し多数意見となり、コロンビア地区の銃規制法を憲法違反であると判決した。多数意見を代表してアントニン・スカリア(Antonin Scalia)裁判官が法廷意見を書いた。



≪Par.1≫
[1] The Second Amendment is naturally divided into two parts: its prefatory clause and its operative clause.  [2] The former does not limit the latter grammatically, but rather announces a purpose.  [3] The Amendment could be rephrased, “Because a well regulated Militia is necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms shall not be infringed.”  [4] Logic demands that there be a link between the stated purpose and the command.  [5] The Second Amendment would be nonsensical if it read, “A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to petition for redress of grievances shall not be infringed.”  [6] That requirement of logical connection may cause a prefatory clause to resolve an ambiguity in the operative clause.  [7] But apart from that clarifying function, a prefatory clause does not limit or expand the scope of the operative clause.


[第1文]
  The Second Amendment is naturally divided into two parts: its prefatory
  clause and its operative clause.

〈語句〉
・Second Amendment 名)(合衆国憲法の)修正第2条
・naturally 副)1.当然に、2.自然に、3.本来、もともと
・divide A into B AをBに分ける
・prefatory 形)序文の、前置きの
・clause 名)1.(文法)節、2.(法律の)条項
・operative 形)機能する、効力のある


〈文法〉
● clause という語は、法律の文書では「条項」という意味で使われることが多

 いが修正第2条という条項(clause)が、2つに分けられる(is divided into

 two parts)と書かれており「修正第2条という1つの条項が2つの条項に分け

 られる」というのは非論理的である。

  しがって、「条項」という意味ではなく、文法用語として文章の主節(main

  clause)どと言う場合の「節」という意味で使われていることが分かる。

● prefatory clause 「導入節」は、修正第2条の前半 “A well regulated Militia

 beingnecessary to the security of a free state,”の部分を指している。

● operative clause「機能節」は、修正第2条の後半“the right of the people to

 keepand bear arms shall not be infringed”の部分を指している。


〈訳〉
 修正第2条は、もともと2つの部分に分かれていれる:その導入節と

 機能節である。



[第2文]
 The former does not limit the latter grammatically, but rather announces a
  purpose.

〈語句〉
・the former 名)前者
・limit 他)~を制限する
・the latter 名)後者
・grammatically 副)文法的に
・rather 副)むしろ
・announce 他)~を告知する、発表する
・purpose 名)目的


〈文法〉
● not A but B 「AではなくB」のA、Bがそれぞれ「動詞+目的語」の形になって

  いる。
   
〈訳〉
 前者は、文法的に後者を制約するものではなく、むしろ目的を宣明するも

 のである。



[第3文]
 The Amendment could be rephrased, “Because a well regulated Militia is
  necessary to the security of a free State, the right of the people to keep
  and bear Arms shall not be infringed.”


〈語句〉
・The Amendment = the Second Amendment 名)修正第2条
・rephrase 他)~を言い換える
・well 副)よく、十分に
・regulated 形)規制された
・Militia 名)民兵組織、市民軍
・necessary 形)必要な
・security 名)1.安全、2.警備
・free 形)自由な
・State 名)国家  ここでは「州」という意味で使われていない。
・right 名)権利
・keep 他)~を取っておく、保持する
・bear 他)~を身につける
・arm 名)武器、兵器
 

〈文法〉
● could be は、仮定法の婉曲用法である。「あえて言い換えるとすれば」という

 ような仮定の含意がある。

● 言い換える前の修正第2条の文言は、“A well regulated Militia being~”となっ

 ており、being は主節の主語(the right of the people)と意味上の主語が異なる

 のでそれを明示した(A well regulated Militia)独立分詞構文である。
  分詞構文は、前後の内容が論理的に一貫するように適当な接続詞を自分で考

 えて補うというのがポイントである。この条文では、スカリア裁判官が書いて

 いるように、
   “Because a well regulated Militia is~”

 「よく規律された民兵組織は自由な国家の全に必要であるから」となる。


〈訳〉
 修正第2条は、次のように言い換えることができるであろう。「よく規律

 された民兵組織は自由な国家の安全に必要であるから、武器を保持し携帯

 する人民の権利は侵害されてはならない。」



[第4文]
 Logic demands that there be a link between the stated purpose and the
  command.

〈語句〉
・logic 名)論理
・demand that… 他)…ということを要求する
・link 名)結びつき、関連
・stated 形)明言された
・purpose 名)目的 
・command 名)命令


〈文法〉
● there be a link は、要求(demand)を表すthat節の中で用いられる仮定法現在

 である。=there should be a link  

● stated purpose and the commandは、抽象的で分かりにくいが、次の文

 (第5文)が「目的と命令」に結びつきのない仮定的な条文であることから、

  修正第2条の「民兵組織の必要性」(目的)と「武器所持の権利の保障」

 (命令)を念頭において書かれていることが分かる。


〈訳〉
 明言された目的と命令との間に結びつきがあることを論理は要求する。



[第5文]
  The Second Amendment would be nonsensical if it read, “A well regulated
  Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the
  people to petition for redress of grievances shall not be infringed.”

〈語句〉
・nonsensical 形)無意味な、ばかげた
・petition 名)請願
・redress 名)救済、是正
・for 前)~を求めて
・grievance 名)(不当な扱いに対する)苦情、不平
・infringe 他)~を侵害する

〈文法〉
● would be nonsensical if it read は、仮定法過去である。現在形であれば

  it readsとなるはずである。 it read [red] の it は、修正第2条を指している

 ので、それが「読んだ」というのは非論理的であり、また何を読むか(目的語)

 がない。このことから、“This book sells well”「この本はよく売れる」などと

 同様受け身の意味の自動詞として使われていることが分かる。

  if it read=if it were read,「(もしそれが以下のようにまれるとすれば→)

 もし以下のように書かれているとすれば」

 

※ 仮定法になぜ過去形が用いられるかついては、さまざまな解釈があるであろ
 うが、一つの説明として、過去のことと同様に想起の対象としてしか存在しな
 い(現実の世界では現在も将来においても存在しない)ことを表しているとみ
 ることができる。
  拙稿「過去概念と人ー―想起の時制」『ことばから人間を』所収、
  230~241頁 (昭和堂 1998年)参照

● A well~Stateは、前文で説明した修正第2条前半の導入節である。

● right~infringed は、「連邦議会は、苦情の救済を求めて政府に請願する権利

 を縮減する法律を制定してはらない(Congress shall make no law…abridging

 the right ofthe people…to petition the Government for a redress of

 grievances)」と定める修正第1条を模した表現である。

  前半と後半が論理的に結びつかない仮定的な条文の例として書かれている。


〈訳〉
 もし修正第7条が以下のように書かれているとすれば、無意味になるであ

  ろう。「よく規律された民兵組織は自由な国家の安全に必要であり、苦情

  の救を求めて請願する人民の権利は侵害されてはならない。」



[第6文]
 That requirement of logical connection may cause a prefatory clause to
 resolve an ambiguity in the operative clause.

〈語句〉
・requirement 名)要件
・logical 形)論理的な
・connection 名)連結、関連
・cause A to do~ Aに~させる、結果としてAが~する
・prefatory clause 導入節
・resolve 他)~を解決する、解消する
・ambiguity 名)曖昧さ
・operative clause 名)機能節

〈文法〉
● That requirement of logical connectionは、第4文のLogic demands that

  there be a link の言い換えである。 

●「~の要件はAに…させる」→(意訳)「~が求められる結果としてAが…する」


〈訳〉
 論理的な結びつきが求められる結果として導入節が機能節の曖昧さを解消 
 することがある。
 


[第7文]
 But apart from that clarifying function, a prefatory clause does not limit or
 expand the scope of the operative clause.

〈語句〉
・apart from ~から離れて、は別として
・clarify 他)~をはっきり説明する、明らかにする
・function 名)機能
・prefatory clause 名)導入節
・limit 他)~を制限する
・expand 他)~を拡張する
・scope 名)範囲
・operative clause 機能節


〈文法〉
● that「そのような」は、前文の内容を指している。

● ここですでにスカリア裁判官の論理展開が示されている。「民兵組織の必要
 性」は 「武器を保持し携帯する人民の権利」を制限しない。つまり、民兵
 組織の必要性に関わらず個人が武器を所有する権利は保障される。


〈訳〉
 しかし、そのような明確化機能から離れて、導入節は機能節の範囲を制限
 することもなければ拡張することもない。




≪Par.2≫
[1] The first salient feature of the operative clause is that it codifies a “right of the people.”  [2] The unamended Constitution and the Bill of Rights use the phrase “right of the people” two other times, in the First Amendment’s Assembly–and–Petition Clause and in the Fourth Amendment’s Search–and–Seizure Clause.  [3] The Ninth Amendment uses very similar terminology.  [4] All three of these instances unambiguously refer to individual rights, not “collective” rights, or rights that may be exercised only through participation in some corporate body.  [5] What is more, in all six other provisions of the Constitution that mention “the people,” the term unambiguously refers to all members of the political community, not an unspecified subset.


[第1文]
 The first salient feature of the operative clause is that it codifies a “right of
  the people.”

〈語句〉
・salient 形)顕著な、目立った
・feature 名)特徴
・operative clause 名) 機能節
・codify 他)~を成文化する、法典化する
・“right of the people” 「人民の権利」


〈文法〉
● 基本構造:第2文型
  feature is { that~” }.
    S   V    C  「特徴は { } ということである。」

● 文型の二重構造:
  that節内の構造=第3文型
   it codifies right
   S   V   O  「それは、権利を成文化している。」

● 第1の特徴が「人民の権利」であり、後の第3パラグラフにおいて第2の
 「武器を保持する」、第3の「武器を携帯する」という文言が検討されて
 いる。


〈訳〉
 機能節の際立った特徴の1つ目は、それが「人民の権利」を成文化してい
 るということである。



[第2文]
 The unamended Constitution and the Bill of Rights use the phrase “right of
  the people” two other times, in the First Amendment’s
  Assembly–and–Petition Clause and in the Fourth Amendment’s
  Search–and–Seizure Clause.  

〈語句〉
● unamended Constitution 修正されていない憲法、「もともとの憲法」
 合衆国憲法は、1788年に成立した本文(全7条)とその後に成立した修正
 条項(第1~第27条)から成るが、「修正されていない憲法」とは、修正条
 項が加えられる前の憲法を指す。「もともとの憲法(original Constitution)」
 とも呼ばれる。

● Bill of Rights「権利章典」修正条項のうち1791年に成立した第1~第10条
 は、この名で呼ばれる。
  言論・出版の自由(修正第1条)、不合理な捜索・押収の禁止(修正第
  4条)、黙秘権(修正第5条)、弁護人依頼権(修正第6条)、残酷で異
  常な刑罰の禁止(修正第8条)などを保障している。
  スカリア裁判官が「もともとの憲法と権利章典」についてのみ検討し、それ
 以後に制定された修正条項を除外しているのは、修正第2条が制定された当時
 の言葉の理解を検討しているからである。

・phrase 名)句、フレーズ
・“right of the people” 「人民の権利」
・First Amendment 修正第1条
● Assembly–and–Petition Clause 「集会及び請願条項」 
 修正第1条は、政教分離や言論・出版の自由などいくつかの権利を保障してい
 るが、そのうち「連邦議会は、平和的に集会し、苦情の救済を求めて政府に請
 願する人民の権利を縮減する法律を制定してはらない(Congress shall make
  no law…abridging…theright of the people peaceably to assemble, and to
  petition the Government fora redress of grievances)」と定めた部分を指し
 ている。

・Fourth Amendment 修正第4条
● Search–and–Seizure Clause 捜索及び押収条項
 修正第4条のうち「不合理な捜索および押収に対し、身体、家屋、書類および
 所有物の安全を保障されるという人民の権利は、侵されてはならない(The right
 of thepeople to be secure in their persons, houses, papers, and effects,
 againstunreasonable searches and seizures, shall not be violated」と規定
 している部分を指す。
 

〈文法〉
● two other times, in the~and in the~は、「~と~の中で2度」と訳すと、
 それぞれ2回で合計4回と解釈することも可能であるので、コンマの前後は同
 格と見て区切って訳す方が意味が明確になる。「2度、すなわち~と~」
  other は、other than in the Second Amendmentという意味である。


〈訳〉
 もともとの憲法と権利章典は「人民の権利」という句を他に2度使って
 いる。すなわち、修正第1条の集会及び請願条項において、および修正
 第4条の捜索及び押収条項においてである。 



[第3文]
 The Ninth Amendment uses very similar terminology.

〈語句〉
● Ninth Amendment 「修正第9条」
 「この憲法における特定の権利の列挙は、人民によって保有されるその他の権
  利を否定、または軽視するものと解釈されてはならない(The enumeration
   in theConstitution, of certain rights, shall not be construed to deny or
   disparageothers retained by the people)」と定める。
   つまり、ある権利が憲法に明示的に保障されていないからと言って、
  その権利が否定・軽視されるものではないと定めている。

・similar 形)類似の
・terminology 名)専門用語、用語法


〈訳〉
 修正第9条は、非常に類似した文言を使っている。



[第4文]
 All three of these instances unambiguously refer to individual rights, not “
 collective” rights, or rights that may be exercised only through
 participation in some corporate body.

〈語句〉
・instance 名)例、実例、事例
・unambiguously 副)曖昧なところなく、明確に
・refer to ~に言及する
・individual 形)個人の、個々の
・right 名)権利
・collective 形)集団的な
・exercise 他)(権利など)を行使する
・participation 名)参加
・some 形)何らかの
・corporate 形)法人の、団体の
・body 名)集団、組織、団体


〈文法〉
● 文末のcorporate body「法人組織」は、“collective”「集団的」 と類似する意味
 をもつ。したがって、or rights〔that may~body〕は、“collective” rightsの言
 い換えであることが分かる。
          ↗ individual rights
    refer to  → × “collective” rights
         ↘ × rights that may…

● may be exercised は、受動態として「行使されうる」と訳すと日本語として不
 自然あり、日本語では必ずしも主語を明示しなくてもよいので「行使しうる」
 と訳す。


〈訳〉
 これらの事例の3つすべてが、曖昧なところなく個人の権利に言及してお
 り「集団」権利や何らかの法人組織に参加することを通じてのみ行使し
 うる権利に言及してるのではない



[第5文]
 What is more, in all six other provisions of the Constitution that mention “
 the People,” the term unambiguously refers to all members of the political
 community, not an unspecified subset.

〈語句〉
・What is more 副)その上、しかも
・provision 名)(法律の)条文
・the Constitution 名)合衆国憲法
・mention 他)~に言及する=refer to
・term 名)術語、用語、言葉  ここでは“the People”を指している
・unambiguously 副)曖昧なところなく、明確に
・refer to ~に言及する=mention
・member 名)構成員、メンバー
・political 形)政治の
・community 名)共同体、地域社会、コミュニティ
・unspecified 形)不特定の
・subset 名)部分集合、下位集合


〈文法〉
● 基本構造:第1文型
   term refers
    S   V
  What is moreと in all~という副詞の部分が長く続いた後、the term以下の文
  が続く。

●    provisions  ↖
                 that mention “the People"
    Consititution × ↙

  thatの後に主語がないので関係代名詞であることが分かる。また節内の動詞
  mentionに3単現のSが付いていなので、先行詞はConstitutionではなく、
  複数形のprovisionsであることが分かる。

● 武器所有の権利が個人の権利であるというスカリア裁判官の論理から、
 unspecifiedsubset「不特定の下位集団」は、民兵組織を念頭に置いた表現であ
 ることが分かる。


〈訳〉
 その上、合衆国憲法のうち「人民」に言及している他の6つの条項すべて
 において、人民という用語は、曖昧なところなく政治共同体の全メンバー
 に言及しており、不特定の下位集団に言及していない。




≪Par.3≫
[1] We move now from the holder of the right—“the people”—to the substance of the right: “to keep and bear Arms.” [2] Johnson defined “keep” as, most relevantly, “to retain; not to lose,” and “to have in custody.”  [3] No party has apprised us of an idiomatic meaning of “keep Arms.”  [4] Thus, the most natural reading of “keep Arms” in the Second Amendment is to “have weapons.”  
[5] “Keep arms” was simply a common way of referring to possessing arms, for militiamenand everyone else.  [6] Although the phrase “bear arms” implies that the carrying of the weapon is for the purpose of “offensive or defensive action,” it in no way connotes participation in a structured military organization.  [7] In numerous instances, “bear arms” was unambiguously used to refer to the carrying of weapons outside of an organized militia.


[第1文]
 We move now from the holder of the right—“the people”—to the substance
  of the right: “to keep and bear Arms.” 

〈語句〉
● We ここではスカリアと意見をともにする最高裁の裁判官ではなく、
 単に筆者を表す(いわゆるeditorial we)。訳出しなくてもよい。

・holder 名)保有者
・right 名)権利
・“the people” 「人民」
・substance 名)内容、実質
・keep 他)~を取っておく、保持する
・bear 他)~を身につける
・Arm 名)武器、兵器


〈文法〉
● move from A to B ここでは、「話題をAからBに移す」という意味で使われて
  いる。

● “the people”は、holder of the right 「権利の保有者」の言い換えであり、
 そのことをダッシュで示している。前パラグラフでright of the people 「人民
 の権利」(権利の保持者は人民)について論じられていたことから分かる。


〈訳〉
 ここで権利の保持者―「人民」―から権利の実質、すなわち「武器を保持
 し携帯すること」に話を移す。



[第2文]
 Johnson defined “keep” as, most relevantly, “to retain; not to lose,” and
 “to have in custody.”

〈語句〉
● Johnson   Samuel Johnson のこと。18世紀に英語辞典 “Dictionary of the
 English Language 106 (4th ed.1773) (reprinted 1978)” を編纂した。修正第2
 条制定されたのが1791年であるので、同時代の辞書の定義が引用されて
 いる。

・define 他)~を定義する
・relevantly 副)適切に、関連性をもって
・retain 他)~を留める
・custody 名)保管


〈文法〉
● defined A as B 「AをBと定義する」 A=“keep” B=“to retain; not to lose,”
  “tohave in custody.” 

● most relevantly は、他の辞書と比較して「もっとも適切に」定義していると
 いう意味ではなく、例えば「(動物)を飼う」などの“keep”のたくさんの用法
 のうち、武器所有と「もっと関連する」定義という意味である。asの後にmost
  relevantly が挿入されていることから分かる。


〈訳〉
 ジョンソンは「保持する」を、ここでもっとも関連する意味として、
 「留めると;失わないこと」、「保管しておくこと」と定義した。



[第3文]
 No party has apprised us of an idiomatic meaning of “keep Arms.”

〈語句〉
● party 名)(訴訟の)当事者
  ここでは、原告のヘラーさんと被告のコロンビア地区

・apprise A of B AにBを知らせる、通告する =inform A of B
・us われわれ=合衆国最高裁の裁判官
・idiomatic 形)慣用的な、イディオムとしての
・meaning 名)意味
・“keep Arms” 「武器を保持する」


〈文法〉
● has apprised は、「結果」を表す現在完了形である。
 「その結果として、ふつうの意味に解釈する」という含意がある。

〈訳〉
 いずれの当事者もわれわれに「武器を保持する」の慣用句としての意味を
 伝えなかった。



[第4文]
 Thus, the most natural reading of “keep Arms” in the Second Amendment

  isto “have weapons.”   

〈語句〉
・Thus 副)このように、したがって
・natural 形)自然な
・reading 名)読み、解釈
・Second Amendment 名)「(合衆国憲法)修正第2条」
・weapon 名)武器、兵器


〈文法〉
● 基本構造:第2文型
  reading is to “have weapons.”
    S   V     C  「解釈は『武器をもつ』こと」

● the most natural reading は前文のidiomatic meaningと対照的に使われている。


〈訳〉
 したがって、修正第2条の「武器を保持する」のもっとも自然な解釈は、

 武器をもつこと」である。



[第5文]
 “Keep arms” was simply a common way of referring to possessing arms,
 for militiamen and everyoneelse.

〈語句〉
・simply 副)単に、単純に
・common 形)共通の、ふつうの、平凡な
・refer to ~に言及する
・possess 他)所有する
・arm 名)武器
・militiaman 名)民兵


〈文法〉
● and everyone else がイタリックになっているのは、「武器を所持する」とい

 う言葉が民兵に限られず、誰に対しても使われたことを強調するためである。


〈訳〉
 「武器を保持する」は、民兵にとっても、また他の誰にとっても、武器を

  所有することに言及するありふれた言い方にすぎなかった。



[第6文]
  Although the phrase “bear arms” implies that the carrying of the weapon

  isfor the purpose of offensive or defensive action, it in no way connotes
  participation in a structured military organization.

〈語句〉
・phrase 名)句、フレーズ
・“bear arms” 「武器を携帯する」
・imply 他)~を暗に意味する、含意する
・carry 他)~を持ち運ぶ
・weapon 名)武器
・for the purpose of ~の目的で
・offensive 形)攻撃的な
・defensive 形)防御的な
・action 名)行動
・in no way 決して~ない
・connote 他)(基本的意味の他に)意味する、暗示する
・participation 名)参加
・structured 形)構造化された
・military 形)軍の
・organization 名)組織


〈文法〉
● Although節内の基本構造:第3文型
   phrase implies   { that … action }
    S    V        O 

    「句は、{ } ということを暗に意味する。」


〈訳〉
 「武器を携帯する」という句は、武器を持ち運ぶことが攻撃的または防御

 的行動の目的でなされることを含意するけれども、決してその句は統制の

 とれた軍事組織への参加を意味するものではない。



[第7文]
 In numerous instances, “bear arms” was unambiguously used to refer to  
 the carrying of weapons outside of an organized militia.

〈語句〉
・numerous 形)多数の、おびただしい
・instance 名)事例
・unambiguously 副)曖昧なところなく、明白に 
・refer to ~に言及する
・outside of ~の外側で、とは別に
・organized 形)組織化された
・militia. 名)民兵組織、市民軍


〈文法〉
● was~used to refer は、受動態「使われた」に不定詞の副詞的用法「~するた

 めに」が続いている形である。used には紛らわしい用法が他に2つある。

  ①used to do~「以前は~したものである」の場合は、be動詞がない

  ②be used to~「~するのに慣れている」の場合は、~が名詞(動名詞)

   である。


〈訳〉
 数多くの事例において、「武器を携帯する」は、編成された民兵組織の域

 外で武器を持ち運ぶことに言及するために曖昧なところなく使われた。




≪Par.4≫
[1] We reach the question, then: Does the preface fit with an operative clause that creates an individual right to keep and bear arms?  [2] It fits perfectly, once one knows the history that the founding generation knew.  [3] That history showed that the way tyrants had eliminated a militia consisting of all the able-bodied men was not by banning the militia but simply by taking away the people’s arms.  [4] It is therefore entirely sensible that the Second Amendment’s prefatory clause announces the purpose for which the right was codified: to prevent elimination of the militia.  [5]The prefatory clause does not suggest that preserving the militia was the only reason Americans valued the ancient right; most undoubtedly thought it even more important for self-defense and hunting.  [6]The inherent right of self-defense has been central to the Second Amendment right.


[第1文]
 We reach the question, then: Does the preface fit with an operative clause

 that creates an individual right to keep and bear arms?

〈語句〉
・We 単に筆者を表す。
・reach 他)~に到達する
・question 名)問題、疑問
・preface 名)序文、導入  ここでは前述の「導入節」のこと。
・fit with ~とぴったり合う、調和する
・operative clause 名)機能節
・create 他)~を創り出す
・individual 形)個人の
・right 名)権利
・keep and bear arms 武器を保持し携帯する


〈文法〉
● clause ←〔 that creates…arms 〕 
 clauseで文を完結でき、またthatの後に主語なく動詞から続くので関係代名詞

 節であることが分かる。

 文を完結できる箇所に関係代名詞が付く場合、節は文末まで続くとが多い。

● Does the preface fit with an operative clause 
  スカリア裁判官は、ここまでで「人民の権利」や「武器を所持し携帯する」

 という文言が民兵組織に限定されないことを論証した。ここでは、それらが

 「民兵組織~必要であり」と書かれている修正第2条の前半の導入節と整合す

 るかどうかを問題にしているのである
 
● an operative clause となっており、冠詞が the でないことに注意が必要であ

 る。定冠詞であれば修正第2条の後半の機能節を指しているが、不定冠詞となっ

 ているのは武器所有の権利を創設する規定一般について説明しようとしてい

 るからである。

  後続の文から推測して、修正第2条の文言が明示的に確定される前の起草者

 などの意図について考察しようとしているからである。


〈訳〉
 次にわれわれは以下の疑問に到達する。導入節は、武器を所持し携帯する

 個人の権利を創設する機能節と適合するか?



[第2文]
 It fits perfectly, once one knows the history that the founding generation  
 knew.

〈語句〉
・fit 自)ぴったり合う、調和する
・perfectly 副)完全に、申し分なく
・once 接)ひとたび~すると
・one 一般的な人  特に訳出しなくてもよい
・history 名)歴史
● founding generation 建国の世代 合衆国憲法が制定されて連邦国家が誕生す

 る頃の世代。憲法の起草者達は、“Founding Fathers”「建国の父祖」と呼ばれ

 ることがある。


〈文法〉
● once の中の基本構造は、第3文型であり、目的語に関係代名詞が付いた形で

 ある。that が関係代名詞であることは、knewに目的語がないことから分かる。
  one knows history←〔that the founding…knew〕 
   S   V    O


〈訳〉
 ひとたび建国の世代が知っていた歴史を知れば、それは、完全に適合する。



[第3文]
 That history showed that the way tyrants had eliminated a militia
 consisting of all the able-bodied men was not by banning the militia but
 simply by taking away the people’s arms.

〈語句〉
・history 名)歴史
・show that… …ということを示す
・way 名)やり方
・tyrant 名)専制君主、暴君
・eliminate 他)~を除去する、削除する、廃止する
・militia 名)民兵組織、市民軍
・consist of ~から構成される
・able-bodied 形)健康で丈夫な、壮健な
・ban 他)~を禁止する
・take away ~を取り去る
・arm 名)武器


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
   history showed { that the way…arms }
    S     V     O

     「歴史は { } ということを示した。」

● that節の中の構造:第2文型
   way was (not) by~ing
    S  V     C   

     「方法は、~することによってであった。」

● that 節内の tyrants~men までは way を修飾する関係副詞節である。
     way ←〔 [ how ] tyrants…men 〕 was…
  way と他の名詞(tyrants)が接続詞なく連続していること、後に完全な文

 (ここでは第3文型)を伴っていることから分かる。
  節の中に動詞(eliminated)があるので、その後の2番目の動詞(was)

  が基本構造の動詞である。

● consisting of~は、現在分詞の形容詞的用法であり、militia を修飾する。
     militia ←〔 consisting of…men 〕
       「~な人から構成される民兵組織」

● not by A but by B 「AによってではなくBによって」という形が使われている。
   by の後は目的語をとる動名詞が使われている。
    A= banning the militia      B= takingarms
        v       o            v   o


〈訳〉
 専制君主がもっぱら壮健な男性から成る民兵組織を廃絶した方法は、民兵

 組織を禁止することによってではなく、単に人民の武器を取り上げること

 によってであったことを歴史は示した。



[第4文]
 It is therefore entirely sensible that the Second Amendment’s prefatory  
 clause announces the purpose for which the right to keep and bear arms
  was codified: to prevent elimination of the militia.

〈語句〉
・therefore 副)それゆえ、したがって
・entirely 副)まったく、完全に
・sensible 形)道理にかなった、分別のある
・Second Amendment (合衆国憲法)修正第2条
・prefatory clause 導入節
・announce 他)~を告知する、発表する
・purpose 名)目的
・right 名)権利
・keep and bear arms 武器を所持し携帯する
・codify 他)~を成文化する
・prevent 他)~を妨げる、阻止する
・elimination 名)除外、削除、廃止
・militia 名)民兵組織


〈文法〉
● It is~sensible that… 
  It~thatの構文:
   「(それは~である。…ということは→)…ということは、~である。」 
 
● that節の中は、第3文型である。
  clause announces purpose
    S    V     O   「節は目的を宣明する」

● purpose ←〔 for which…militia 〕  前置詞+which は関係代名詞節である。
   もとの文は、the right was codified for the purposeである。

● :to prevent~は、第3文で述べられた、purposeの内容の説明である。


〈訳〉
 それゆえ修正第2条の導入節は、武器を保持し携帯する権利が成文化され

 た目的、すなわち民兵組織の廃絶を阻止することを宣明しているというこ

 とは、まったく道理にかなっている。



[第5文]
 The prefatory clause does not suggest that preserving the militia was the
  only reason Americans valued the ancient right; most undoubtedly
  thought it even more important for self-defense and hunting.

〈語句〉
・prefatory clause 導入節
・suggest that… …ということを示唆する
・preserve 他)~保存する、維持する
・militia 名)民兵組織
・reason 名)理由
・value 他)~を高く評価する、尊重する
・ancient 形)昔の、古代の、古来の
・right 名)権利
・undoubtedly 副)疑う余地のないほど、確かに
・self-defense 名)自衛、自己防衛
・hunting 名)狩猟


〈文法〉
基本構造:第3文型
  clause does not suggest { that…right }
   S         V     O 

    「節は { } ということを示唆しない」

● that節の中は第2文型であり、補語に関係副詞節が付いた形である。
  preserving~  was  reason ←{ [ why ] Americans…right }
    S      V   C  「~を維持することが理由であった。」 
   主語は目的語を取る動名詞である:
       preserving militia
        (v)     (o)  「民兵組織を維持すること」

Americans~が関係副詞節であることは、reasonと他の名詞(Americans)が

 続詞なく連続していること、完全な文(第3文型)が後続していること

 から分かる。 
    Americans valued  right
      S     V      O  「アメリカ人は権利を尊重した。」  

●;most~のセミコロンは、後続の文が前の文を説明する関係を示している。
  「唯一の理由ではなかった」→「~という理由もあった」という話の流れで

   ある。

● most undoubtedly は、最上級ではなく、most は名詞である。そう見なければ、

 く動詞 thought の主語がない。 most=most Americans
    most thought it important (第5文型)
     S    V   O   C 
     「ほとんどのアメリカ人はそれを重要だと考えた。」

● it は、直近の名詞であるancient right を受けている。

● even more のevenには much や far と同様に比較級を強調する働きがある。

 
〈訳〉
 導入節は、民兵組織を維持することが、アメリカ人が古来の権利を尊重し

 た唯一の理由であったとは示唆していない。ほとんどのアメリカ人は、

 その権利が自衛と狩猟のためによりいっそう重要であると考えていた。



[第6文]
  The inherent right of self-defense has been central to the Second
  Amendment right.

〈語句〉
・inherent 形)固有の、生来の
・right 名)権利
・self-defense 名)自衛
・central 形)中心的な
・Second Amendment right 修正第2条の権利

〈文法〉
has been は、現在完了の継続用法である。「昔から現在までずっと」

〈訳〉
 生来の自衛の権利は、修正第2条の権利に中心的なものであった。




≪Par.5≫
[1] The handgun ban amounts to a prohibition of an entire class of “arms” that is overwhelmingly chosen by American society for that lawful purpose.  [2] The prohibition extends, moreover, to the home, where the need for defense of self, family, and property is most acute.  [3] Under any of the standards of scrutiny, banning from the home “the most preferred firearm in the nation to ‘keep’ and use for protection of one’s home and family,” would fail constitutional muster.  [4] We hold that the District’s ban on handgun possession in the home violates the Second Amendment, as does its prohibition against rendering any lawful firearm in the home operable for the purpose of immediate self-defense.


[第1文]
 The handgun ban amounts to a prohibition of an entire class of “arms” that
  is overwhelmingly chosen by American society for that lawful purpose.

〈語句〉
・handgun 名)拳銃
・ban 名)禁止
・amount to (金額や量が)~に達する、結局~と等しい(を意味する)
・prohibition 名)禁止
・entire 形)全体の、そっくりそのままの
・class 名)部類
・arm 名)武器
・overwhelmingly 副)圧倒的に
・society 名)社会 
・lawful 形)合法的な
・purpose 名)目的


〈文法〉
● handgun ban amounts to~ ban も amount もそれぞれ名詞と動詞の用法が

 ある。
 3単現の S の有無から ban が名詞で amounts が動詞だと分かる。

  「拳銃の禁止は~に達する」

●    class 
      of    〔that is…purpose〕
     “arms” × ↙   

  関係代名詞のthatの先行詞は、arms(複数形)ではなくclass(単数扱い)

  である。 “arms”で文が完成できる箇所に関係代名詞が付いているので、節は

  文末まで続く。 


● that lawful purpose のthatは、すでに述べた自衛などの目的を指している。
 「前述の、件(くだん)の」


〈訳〉
 結局のところ拳銃禁止は、アメリカ社会において前述の合法的目的のため

 に圧倒的に多く選ばれている「武器」の一つの部類をまるごと禁止するこ

 とになっている。



[第2文]
 The prohibition extends, moreover, to the home, where the need for
  defense of self, family, and property is most acute.

〈語句〉
・prohibition 名)禁止
・extend to (範囲などが)~までおよぶ、達する
・moreover 副)そのうえ、さらに
・defense 名)防衛
・self 名)自身、自己
・property 名)財産
・acute 形)鋭い、深刻な


〈文法〉
● The prohibitionとは、前文の「拳銃の禁止」のことを指している。

● ,where… 関係副詞の非制限用法として「そしてそこでは」と訳す。

● defense of 以下は3つのものの並列であり、3つ目の property の前にだけ and

 が付いている。


〈訳〉
 そのうえ拳銃の禁止は、家庭にまで及んでおり、そこでは自分や家族、

 財産を守る必要がもっとも緊要である。



[第3文]
 Under any of the standards of scrutiny, banning from the home the most
 preferred firearm in the nation to keep and use for protection of one’s  
 homeand family would fail constitutional muster.

〈語句〉
・under 前)(法令や基準)のもとで
・standard 名)基準
● scrutiny 名)精査
  ここでは法令が合憲かどうかを判断するための「司法審査」

・ban A from B 他)AをBから締め出す、追放する
・preferred 形)(他のものより)好まれた
・firearm 名)火器
・nation 名)国家
・protection 名)保護
・fail 他)~に失格する
・constitutional 形)憲法の、合憲の
・muster 名)招集、検閲  


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  banning fail muster
   S    V   O
  修飾語句が付いて長くなっている主語の範囲を確定する時は動詞(述部)を

 探すこの文では、would fail が動詞部分であるのでそこまでが大きく見た時

 の主語である。

● standards of scrutinyという句は、憲法訴訟の判決文ではよく使われる。

  司法審査(合憲や違憲か)の基準を指している。例えば、人種による区別を

  用いている法令は、“strict scrutiny” 「厳格審査」にかけられる。

● 動名詞 banning の目的語は、挿入句の from the home の後、the most

  preferredfirearmである。

● to keep and useは、firearmを修飾する形容詞的用法である。「家庭を守るた

 めに使われる武器を家庭から追放する」という趣旨である。preferred を修飾

 している副詞的用法と見てもほぼ同様の趣旨になる「~するために好まれた」。

● would は婉曲用法の仮定法過去である。「どんな~でも…であろう。」

● pass muster 「合格水準に達する」という意味の慣用句であるので、

 fail musterは、その反対の意味「合格水準に達しない」である。


〈訳〉
 どのような審査基準のもとでも、家庭と家族の保護のために保持し使用さ

 れ国でもっとも好まれる火器を家庭から締め出すことは、合憲の水準に達

 しないであろう。



[第4文]
  We hold that the District’s ban on handgun possession in the home

 violatesthe Second Amendment, as does its prohibition against rendering

  anylawful firearm in the home operable for the purpose of immediate
  self-defense.

〈語句〉
・We 合衆国最高裁の裁判官
・hold that… (裁判官が…という判断を示す→)判示する
・the District = District of Columbia コロンビア地区
・ban on 名)~に対する禁止
・handgun 名)拳銃
・possession 名)所有
・violate 他)~に違反する、を侵害する
・Second Amendment 名)修正第2条
・prohibition 名)禁止
・render O + C OをCの状態しておく
・operative 形)働く、機能する
・purpose 名)目的
・immediate 形)即座の
・self-defense 名)自衛


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  We hold { that…self-defense }
   S   V      O  「われわれは、{  } と判示する。」

● that節内の文型は第3文型である。
  ban violates Second Amendment
   S   V      O  「禁止は修正第2条に違反する」

● as 以下の骨組みは、as does its prohibitionである。
   → as its prohibition does: 
    its = the District’s
    does = violates the Seventh Amendment 

● prohibition against 〔rendering~self-defense]  [ ]に対する禁止

● render は、絵を描く、音楽を演奏する、翻訳する、など目的語に合わせて多様

 な意味をもつ特徴的な語である。そうするとrender a firearm で「発砲する」と

 いうような意味にでもなりそうであるが、そういう意味はなさそうであるし、

 文脈に合わない。
  そこで後ろのoperable とつながって第5文型を作っていることが

  分かる。    
    render firearm operable
     V    O    C    武器を使える状態にする」


〈訳〉
 われわれは、家庭において即座の自衛の目的で適法な火器を使用可能な状

 態にしておくことをコロンビア地区が禁じていることが修正第2条に違反

 しているのと同様に、コロンビア地区の家庭における拳銃所持禁止が修正

 第2条に違反すると判示する。



【解説】
 この判決文を書いたスカリア裁判官は、原意主義者として知られている。原意主義とは、法律の文言を、その起草者やそれが制定された頃の人々の理解にしたがって解釈しようとする主義である。このケースでも、修正第2条が制定された当時に、条文中の文言がどのように理解されていたかを検証している(この教材には反映できなかった、18世紀後半の判例や文献が多数引用されている)。そのような検証の結果として、スカリア裁判官は、つぎの3つのことを示した。①「よく規律された民兵組織は自由な国家の安全に必要であり」という修正第2条の導入節は、武器所有の権利が保障される理由を示すものであるが、その権利を制限も拡張もしない。②武器所有の目的には自衛や狩猟も含まれる。③「武器を保持し携帯する人民の権利」のそれぞれの文言(人民、保持、携帯)は、民兵組織と結びついたものではない。したがって「武器を保持し携帯する権利」は、個人(一般市民)の権利であり、コロンビア地区の銃規制がこの権利を侵害していると判示した。
 しかし、言葉は時とともにその内実を変化させる。例えば、「電話」という言葉の内実がここ20年ほどでどれほど劇的に変化したかを想起してみるがよい。修正第2条の「武器(Arms)」の内実も、修正第2条が制定された1791年とは大きく変化した。18世紀末には、2012年12月にコネティカット州のサンディフック小学校で26人の命を奪った銃乱射事件で使われたような自動小銃はなかった。原意主義を徹底すれば、修正第2条は、その起草者や当時の人々が“Arms”という言葉で想起する武器のみを所持する権利を保障しているということになるはずである。
 言葉は時とともにその内実を変えるというのは、いつの時代の立法者も了解していることであると思う。そうであるからこそ法は長期的にその有効性と有用性を維持できる(解釈の変化を避けたい立法者は厳密な定義規定を置くであろう)。スカリア裁判官が「修正第2条の権利に中心的なものであった」とする自衛の権利によって認められた武器所有によって毎年罪のない多数の人々が殺害されていることは、まことに皮肉なことである。おそらく銃によって正当に守られた命よりも、銃があるために不条理に奪われた命の数の方が圧倒的に多いと想像する。「よく規律された民兵組織は自由な国家の安全に必要であり」という修正第2条の文言を現在の社会状況に照らして解釈して、同条項は、民兵組織の維持におおよそ不必要な個人の武器所有の権利までも保障するものではないという解釈も可能であると思う。
 全米ライフル協会(NRA:National Rifle Association of America)の議会への強力な影響力の前に、銃器規制を求めてデモを行う人々は、いわゆる「切り離され孤立したマイノリティ」(discrete and insular minority)である。そのような人々の声に議会が耳をかさない場合、選挙で再選される必要のない合衆国最高裁の裁判官は、銃関連法規の司法審査の在り方にそのような声を反映すべきである。
 

2018年03月04日

New York Times v. United States ペンダゴン・ペーバーズ事件

 

 合衆国政府はニューヨーク・タイムズ社とワシントン・ポスト社のベトナム戦争に関する記事の公表を差し止めることができない。ペンダゴンペーバーズ事件。
 

ニューヨーク・タイムズ 対 合衆国

New York Times v. United States     
 (The Pentagon Papers Case)

403 U.S. 713 (1971)

合衆国最高裁判所

Supreme Court of the United States

1971

 

First Amendment to the Constitution of the United States
 Congress shall make no law respecting an establishment of religion or prohibitingthe free exercise thereof; or abridgingthe freedom of speech, or of the press; orthe right of the people peaceably to assemble, and to petition the government foa redress of grievances.

合衆国憲法修正第1条
「合衆国議会は、宗教の国教化を尊重する、もしくは自由な宗教活動を禁止する法律、または言論、出版の自由、もしくは平和的に集会し、苦情の救済をもとめて政府に請願する人民の権利を縮減する法律を制定してはならない。」


≪事件の経緯≫
1976年、当時のマクナマラ(Robert McNamara)国防長官は,アメリカのベトナム政策は失敗だったと確信し、この失敗を繰り返さないようにするため,アメリカのインドシナ政策に関する資料を広く収集し報告書を作成するよう指示した。このためにプロジェクトチームが組まれ,ランド研究所(Rand Corporation)の研究員,ハーヴァード大学の歴史学教授,国防総省と国務省の官僚ら,合わせて34人のメンバーで構成された。1 年半後の1968年12 月に,「ベトナム政策に関する合衆国政策決定過程の歴史 (History of U.S. Decision-Making Process on Viet Nam Policy)(全47巻) および「トンキン湾事件の司令と統御に関する研究(Command and Control Study of the Tonkin Gulf Incident)」(全1巻)、本文約3,000 頁,資料約4,000 頁に上る膨大な記録、いわゆるペンタゴン・ぺーバが完成した。各頁には「極秘(top secret)」のスタンプが押されていた。
 このプロジェクトチームの中に,ランド研究所の経済学者ダニエル・エルズバーグ(Daniel Ellsberg)がいた。エルズバーグは,この文書を公表すればベトナム戦争を早期に終わらせることができるのではないかと考え,ランド研究所の金庫に保管されていた文書のうち,当時進行中の和平交渉に関する4巻を除く43巻を,「極秘」のマークを白紙で覆ってコピーした。コピーされた文書は、アイゼンハワーからニクソンまで4代にわたる大統領の在任中、政府が危険性と戦費を実際よりも高く見積り,他方で戦勝の見込みが低いと判断しており、国民を欺いてきたことを示していた。エルズバーグは、1971年2月から3月にかけて,ニューヨーク・タイムズの記者のシーハン(Neil Sheehan)に接触し,文書のコピーを手渡した。
 6月13日,ニューヨーク・タイムズ社は、記事の連載を開始した。しかし,その2日後、合衆国政府の請求にもとづいて、文書公表に対する暫定的差し止め命令(temporary restraining order)が出された。エルズバーグは、今度は,ワシントン・ポストにコピーを渡した。ワシントン・ポストは、6月18日に記事の連載を開始したが、この連載に対しても暫定的差し止め命令が出されると、エルズバーグは、他の17紙に文書を渡した。


≪差し止め命令≫
ある行為をさせない、させるための裁判所の命令
 次の3種類がある。
暫定的差し止め命令(temporary restraining order):
 緊急性があり、差し止めなければ直ちに回復不能な損害(irreparable injury)を生じ  させる と裁判官が判断した場合に、他方当事者に通知することなく、また審理を経る ことなく、申立人の一方的要求にもとづいて出される差し止め命令。 次の「予備的差 し止め命令」について裁判官が判断するまで効力をもつ短期的な命令である
予備的差し止め命令(preliminary injunction):
 差し止めなければ回復不能な損害が生じると申し立てられている場合に、差し止め命令 の是非が最終的に終局判決によって確定するまで効果をもつ命令。 裁判官が、申立人 と他方当事者それぞれの主張を聞いた上で、申立人が最終的に勝訴する可能性、回復不 能な損害の範囲などを考慮して認めるか否かを決定する。
局的差し止め命令(permanent injunction)
 差し止めが報道の自由を侵害して違憲であるか否かなどの本案について事実審理を行  い、それにもとづいて出される終局的な差し止め命令。

●ニューヨーク・タイムズ
 ニューヨーク南部地区の連邦地裁は、暫定的差し止め命令を認めたが、予備的差し止め命令を求める合衆国政府の請求を退けた。連邦控訴裁は、暫定的差止命令の継続を認めた上で,本文書の公表が「合衆国の安全に重大かつ差し迫った危険を引き起こす」かどうかについて,さらに審理するよう求めて事件を地裁に差し戻す決定を行った。この決定に対して、ニューヨーク・タイムズ社が最高裁に上告した。

●ワシントン・ポスト
 コロンビア地区の連邦地裁も控訴裁も暫定的差し止めを認めたが、予備的差し止め命令を認めなかったので、合衆国政府が最高裁に上告した。
  


≪合衆国最高裁判決≫
 この判決は、執筆者を明示しない「裁判所の意見(per curiam)」として公表された。簡潔な意見であり、要約すると以下のようになる。
 表現に対する事前抑制は、 違憲であるという強い推定を受ける。政府には、そのような制約(事前抑制)を課すことを正当化する重い責任がある。ニューヨーク・タイムズ社の事件においてニューヨーク南部地区の地裁が、ワシントン・ポスト社の事件において、コロンビア地区の地裁と控訴裁が、政府はそのような責任を果たさなかったと判決した。われわれはそれに同意する。


以下では、個別意見の書いた裁判官の一人、ブラック(Black)裁判官による意見を抜粋して読むことにする。

≪Paragraph 1≫
 [1] When the Constitution was adopted, many people strongly opposed it because the document contained no Bill of Rights to safeguard certain basic freedoms . [2] They especially feared that the new powers granted to a central government might be interpreted to permit the government to curtail freedom of religion, press, assembly, and speech . [3]In response to an overwhelming public clamor, James Madison offered a series of amendments to satisfy citizens that these great liberties would remain safe and beyond the power of government to abridge. [4]Madison proposed what later became the First Amendment. [5]In the First Amendment the Founding Fathers gave the free press the protection that it must have to fulfill its essential role in our democracy. [6]The press was to serve the governed, not the governors. [7]The Government’s power to censor the press was abolished so that the press would remain forever free to censure the Government. [8]The press was protected so that it could bare the secrets of government and inform the people. [9]Paramount among the responsibilities of a free press is the duty to prevent any part of the government from deceiving the people and sending them off to distant lands to die of foreign fevers and foreign shot and shell.

上のブラック裁判官の意見の前半部分を理解するためには、次の解説による背景知識の確認が有用である。

[解説]
 植民地から独立した13の「邦(state)」(州の前身)の 55名の代表がフィラデルフィアに集まって憲法制定会議を開いて議論し、1787年に合衆国憲法(案)が採択された。この憲法案は、その成立のために、13の邦のうち9の邦の議会による批准(承認)が必要であった。
 各邦で批准の是非が議論されているときに、表現の自由の保障や令状のない捜索押収の禁止などを定めた「権利章典(Bill of Rights)」が含まれていないことついて、不満や批判の声が強く、必要な数の批准がえられることが危ぶまれた。そこで、起草者達は、この案が批准され合衆国憲法が発効すれば、修正条項として「権利章典」を憲法に追加することを約束した。1788年に必要な批准がえられ、合衆国憲法が成立し、翌1789年に施行された。この憲法は、「もともとの憲法(original constitution)」と呼ばれることがある。
 施行の年に、第1回合衆国議会が開催され、ワシントンが初代大統領に選出され、修正第1条~第10条までの憲法修正条項(権利章典)が採択された


[第1文]
When the Constitution was adopted, many people strongly opposed it because the document contained no Bill of Rights to safeguard certain basic freedoms.

〈語句〉
・the Constitution 名) 合衆国憲法
・adopt 他) 1.~を採用する、2.~を採択する、3.~を養子にする
  adopted 形)採択された
・strongly 副)強く
・oppose 他)~に反対する、対抗する 名)opposition
・the document 「その文書」= 合衆国憲法
・contain 他)~を含む   
・Bill of Rights 「権利章典」
・safeguard 他)~を守る、保護する  名)保護手段、安全装置
・certain 形) ある、特定の                             ※何(誰)かが分かっていても、あえて明言しない場合に使われる。
      例)A certain man came.
・basic 形)基本的な                              ・freedom 名)自由   

  

〈文法〉
・ to safeguard…
   文法判断の限界:この不定詞の用法
     ① 副詞的用法 「~を保護するために」
     ② 形容詞的用法「~を保護する権利章典」 
             the Bill of Rights ←〔 to safeguard…〕         ※どちらでも同じ趣旨が伝わるが、①の場合「保護するために権利章典を含んでいなかった」となるので、「含んでいない」ことが権利保護に資すると言っているようにも読めなくもないので②の方が良い。
 
〈訳〉                                
 合衆国憲法が採択された時、多くの人々がそれに強く反対した。その文書が、特定の基本的自由を保護する権利章典を含んでいなかったからである。

 

 

[第2文]
They especially feared that the new powers granted to a central government might be interpreted to permit the government to curtail freedom of religion, press, assembly, and speech.

〈語句〉
・They = 第1文の many people
・especially 副)特に、とりわけ
・fear  他)~を恐れる、名)恐れ
・power 名)権限、権能
・grant 他) (願いに承諾して)~を与える、 許す
・central government 中央政府=合衆国政府
・might 助動詞 may 「かもしれない」の過去形
・interpret Atodo~ Aが~すると解釈する
  →(受動態) A is interpreted to do~ 「Aが~すると解釈される」
・permit Atodo~ Aが~することを許す
  ※不定詞のtoには、前置詞のtoと共通する意味があり、「~する方向で解釈する、許  す」という含意がある

curtail 他)1.(経費を)削減する
       2.(権利を)縮小する、制限する
・freedom 名)自由
・religion 名) 宗教
・press 名)出版、報道
・assembly 名)集会
・speech 名)1.言論、2.演説

 

〈文法〉                                 ・基本構造:第3文型                               They feared 〔that the new powers…〕                    S    V      O   「彼らは…ということを恐れた。」

文型の二重構造:               
  feared that のthat節の中の文型:第2文型
      powers~ might be interpreted~  
        S         V    C

  grantedは動詞ではなく、「~に与えられた」という意味の過去分詞の形容詞
   的用法であり、powersを修飾する。
    それが分かる理由:① grantは他動詞なのに目的語が右にない。
             ②(might) be の箇所が動詞部分である。
    powers←(granted to a central government) might be~


〈訳〉
  多くの人々は、中央政府に与えられた新しい権能が、宗教、出版、集会、言論 の自由を制限することを政府に許していると解釈されることを特に恐れた。




[第3,4文]
In response to an overwhelming public clamor, James Madison offered a series of amendments to satisfy citizens that these great liberties would remain safe and beyond the power of government to abridge. Madison proposed what later became the First Amendment.

〈語句〉
・in response to ~に対応して
・overwhelming 形) 圧倒的な  overwhelm 他)~を圧倒する
・public 形)国民一般の、公の
・clamor 名) 非難の声、叫び(声)
・James Madison ジェームズ・マディソン
  合衆国憲法の主たる起草者。彼も含めて起草者たちは、「建国の父達(Founding
  Fathers)」と呼ばれる。第4代大統領。
・offer 他) ~を提供する、申し出る、提案する
    名)提供、提案、(売買の)申込
・a series of~  一連の~
・amendment 名)(合衆国憲法の)修正条項
・satisfy 他)~を満足させる 、納得させる
  satisfy A(人) that…(文章)…「…であるとAを納得させる」 
・liberty 名)自由
・would 助)will の過去形:過去の時点から見た未来
   ※ここでは、マディソンが修正条項を提案した時から見た未来
・remain 自)~の(状態の)ままである
・beyond 前)~を超えている
・power 名)権能
・abridge 他) (権利など)を縮減する
・propose 他)~を提案する=offer
・later 副)後に
・First Amendment 修正第1条


〈文法〉
・to satisfy citizens that …:不定詞の副詞的用法「市民に…を納得させるために」
 このthat…の内部の動詞のremainの補語(c)が二つある:
       remain ①safe & ②beyond~abridge

power←(to abridge) 不定詞の形容詞的用法「縮減する権能」

what の用法 「外と内」の働き
 例えば、〔What she likes〕 is a cake.という文章では、 whatの節は、文全体(外) の主語になっているが、what 節の内部では、likes の目的語になっている。
 本文では、what 節は文全体(外)ではproposed の目的語になっており、内部では、
 became の主語になっている。

〈訳〉 
 国民の圧倒的な非難の声に応えて、ジェームズ・マディソンは、これらの自由が侵害されないままであり、自由を制限する政府の権限が及ばないままであることを国民に納得させるために一連の修正条項を提案した。マディソンは、後に修正第1条になったものを提案した。
 



【第5文】
In the First Amendment the Founding Fathers gave the free press the protection that it must have to fulfill its essential role in our democracy. 

〈語句〉
・First Amendment 修正第1条
・Founding Fathers 「建国の父達」=合衆国憲法の起草者達
・free press 名)自由な報道機関
・protection 名)保護
・fulfil 他)(義務など)を果たす、遂行する
・essential 形) 不可欠な、本質的な
・role 名)役割
・democracy 名)民主主義

   

〈文法〉
・基本構造:第4文型  
  Founding Father gave  the free press  the protection
        S   V        O       O
  「建国の父達は、自由な報道機関に保護を与えた。」

・that it must…は、protectionを先行詞とする関係代名詞    
  protection ←(that it must have~)「それがもたなければならない保護」
   ※have to fulfil ~「~を果たさなければならない」と見て、thatをprotectionを
   の内容を説明する同格節と解釈すると意味不明の文になる。to fulfil ~は、不定詞   の副詞的用法「~を果たすために」              

〈訳〉
 修正第1条において、建国の父達は、自由な報道機関がわれわれの民主主義において不可欠な役割を果たすためにもたなければならない保護を与えた。




【第6文】
The press was to serve the governed, not the governors.

〈語句〉
・press 名)報道機関
・serve 他)1.~仕える、3.~の役に立つ、~に資する   
・govern 他)~を支配する、統治する
・governor 名)1.知事、2.植民地の総督、3.統治者

〈文法〉
・The press was to serve ~   
  be動詞+to不定詞:主に次の5つの意味をもつ    
  ※基本的意味は、「~する方向を向いている」 
    ① 予定: The party is to begin at seven.
    ② 義務: What am I to do?  
    ③ 可能:  Not a star was to be seen.  
    ④ 意図: If you are to succeed, you must make efforts.
    ⑤ 運命: Man is to die. = Man is mortal.    
     ⑤の例文から分かるように、この不定詞は形容詞的用法である。

・the+形容詞=「~な人々」  
  the rich=rich people  
  the injured = injured people   
  the governed 統治される者、被治者

〈訳〉
報道機関は、統治する者ではなく統治される者に仕えるべきものとされていた。




【第7文】
The Government’s power to censor the press was abolished so that the press would remain forever free to censure the Government.

〈語句〉
・power 名)権能
・censor 他) ~を検閲する  censorship 名)検閲
・press 名)報道機関
・abolish 他) ~を廃止する
・forever 副)永久に、永遠に
・free to do 自由に~できる(する) 
・censure 他) ~を非難する

〈文法〉
so that S +[may, would, can]… 「Sが…できる[する]ように」

〈訳〉
 報道機関が未来永劫に変わらず政府を自由に批判できるように、報道機関を検閲する政府の権限は廃止された。



【第8文】
The press was protected so that it could bare the secrets of government and inform the people.

〈語句〉
・press 名)報道機関
・protect 他)~を保護する
・bare 形) 裸の
    他)1. ~を裸にする、2.(秘密など)を暴露する
・secret 名)秘密 、機密
   classified  1.分類された、2.機密扱いの
・inform 他)~に知らせる、~に情報を提供する
   inform A of B  A (人)にBを知らせる
   informed consent インフォームドコンセント(情報を提供された上での同意)

〈文法〉
・so that S +[may, would, can]… 「Sが…できる[する]ように」

〈訳〉
政府の秘密を暴露して人々に知らせることができるように報道機関は保護された。




【第9文】
Paramount among the responsibilities of a free press is the duty to prevent any part of the government from deceiving the people and sending them off to distant lands to die of foreign fevers and foreign shot and shell.

〈語句〉
・paramount 形)もっとも重要な、最高の
・among 前)(3つ以上のもの)の間に
・responsibility 名)責任
・free press 名)自由な報道機関
・duty 名)義務
・prevent A from ~ing  Aが~するのを防止する、妨げる
・part of the government 政府の部門(立法、司法、行政)
・deceive 他)~をだます、欺く
・send off ~ (学校や旅などに)~を送り出す      
・distant land 遠く離れた土地=ベトナム
・die of (病気や飢餓などが原因で)死ぬ
・foreign 形)外国の、異国の
・fever 名)熱、熱病
・shot 名)発砲、銃声
・shell 名)砲弾、薬莢
   shot and shell ワンセットのフレーズとして「銃弾」と訳しておく。

〈文法〉
・基本構造:第2文型
  Paramount という単独の形容詞が強調のために文頭にある→倒置構文
  Paramount is the duty →Theduty is paramount
                 S   V    C
・倒置構文の作り方
   ① 強調する語を文頭に置く(目立つ)
   ② 残りの部分を疑問文の語順にする。

・prevent~from 〔deceiving…and sending…shell.〕
   防止すべき事柄は、文末まで続いている。
・to die of ~:結果を表す不定詞「~して(その結果)…」

〈訳〉
自由な報道の責任の中でもっとも重要なのは、政府のいずれかの部門が人々を欺いて遠い国に送り異国の熱病と異国の銃弾で死なせることを防止する義務である。





≪Paragraph.2≫
[1] In my view, far from deserving condemnation for their courageous reporting, the New York Times, the Washington Post, and other newspapers should be commended for serving the purpose that the Founding Fathers saw so clearly. [2] In revealing the workings of government that led to the Vietnam war, the newspapers nobly did precisely that which the Founders hoped and trusted they would do. [3]To find that the President has ‘inherent power’ to halt the publication of news by resort to the courts would wipe out the First Amendment and destroy the fundamental liberty and security of the very people the Government hopes to make ‘secure.’[4]No one can read the history of the adoption of the First Amendment without being convinced beyond any doubt that it was injunctions like those sought here that Madison and his collaborators intended to outlaw in this Nation for all time.[5]The word ‘security’ is a broad, vague generality whose contours should not be invoked to abrogate the fundamental law embodied in the First Amendment.


【第1文】
In my view, far from deserving condemnation for their courageous reporting, the New York Times, the Washington Post, andnewspapers should be commended for serving the purpose that the Founding Fathers saw so clearly.

〈語句〉
・view 名)1.景色、2.見解
・far from ~ing  ~するどころか
・deserve 他)~に値する
・condemnation 名)非難
・courageous 形)勇敢な  courage 名)勇気
・reporting 名)1.報告、2.報道(記事)
・commend A for B  BのことでAを褒める、賞賛する
・serve 他)1.~仕える、2.~の役に立つ、~に資する
・purpose 名)目的
・Founding Fathers 建国の父達=合衆国憲法の起草者
・clearly 副)明らかに、明瞭に

〈文法〉
 purpose ← 〔that the Founding Fathers saw so clearly〕
      that は、purposeを先行詞とする関係代名詞
       ※他動詞 saw の右に目的語(何を見たか)がないので分かる。

〈訳〉
私の見解では、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、その他の新聞は、その勇気ある報道について非難に値するどころか、建国の父達が非常に明瞭に見定めた目的に貢献したことで賞賛されるべきである。



【第2文】
In revealing the workings of government that led to the Vietnam war, the newspapers nobly did precisely that which the Founders hoped and trusted they would do.

〈語句〉
・reveal 他)~明らかにする
・working 名)仕事、所業
・led、lead の過去形、lead to  ~につながる、(結果として)~になる、~に導く
・Vietnam war ベトナム戦争
・nobly 副)気高く、立派に、堂々と
・did 代動詞 do の過去形「行なった」
・precisely 副)正確に、まさに
・Founders = Founding Fathers  建国の父達=合衆国憲法の起草
・hope 他)~を希望する  hope A to do Aが~することを望む
・trust 他)~を信用する  trust A to do Aが~すると信用する
・would 助)will の過去形:過去の一時点(憲法の起草者)から見た未来

〈文法〉
・in~ing  ~するにあたり、~するさいに
workings of government ←〔that led to the Vietnam war〕
    that は関係代名詞、led の前に主語がないので分かる
    先行詞は、意味からgovenmentではなく、workings
that ←〔which the Founders…do〕 that は、代名詞「それ」
  「建国の父達が…したところのそれ」→「建国の父達が…したこと(もの)」
    that which = what
・基本構造:第3文型
   newpapers did  that
     S     V   O

〈訳〉
ベトナム戦争へと導いた政府の所業を明らかにするにあたり、新聞は、建国の父達がまさに新聞がなすべきであると望み信じたことを気高く行なった。



【第3文】
To find that the President has ‘inherent power’ to halt the publication of news by resort to the courts would wipe out the First Amendment and destroy the fundamental liberty and security of the very people the Government hopes to make ‘secure.
 補足)この文の前に、政府側が差し止め命令の根拠として、ある情報の公開が国家の安全(natinal security)を危険にさらす場合、そのような公開から国家を守る権限が、行政府の長として、および軍最高司令官としての大統領にあると主張しているが、その根拠となる法律が示されていないことが指摘されている

〈語句〉
・find 他)~を認定する
・inherent 形)固有の、本来の、内在する
・power 名)権能
・halt 他)~を停止させる、自)立ち止まる、停止する
・publication 名)出版、発行、刊行、公開、公表
・resort 名)(手段に)訴えること、頼みとすること
・wipe out 1.~を拭く、2.(記憶などから)消す
・First Amendment 名)修正第1条
・destroy 他)~を破壊する
・fundamental 形)根本的な、基本的な
・libery 名)自由
・very 形)まさにその
・make 使役動詞「~(な状態)にする」
・secure 形)安全な make A secure 「Aを安全(な状態)にする」

〈文法〉
・基本構造:第3文型
 主語=To find out that~courts
     that 節の内部も第3文型:President has power
 動詞=①wipe out, ② destroy
 目的語=①First Amendment, ②liberty and security
inherent power ←〔to halt~courts〕
      不定詞の形容詞的用法「~を停止させる固有の権能」
・would 主語に仮定の意味がこめられている仮定法過去
    「~であると認定するとすれば、それは~することになるであろう。
・security of the very people [that] the Government hopes to make secure
  people の後に関係代名詞が省略されている。
   Government hopes to make ≪the very peole≫ secure
   「政府はまさにその人々を安全な状態にすることを希望した」の「まさにその人々   (the very peole)」を先行詞にした文。
    ※使役動詞のmake の目的語が右にないから分かる。

〈訳〉
大統領が裁判所という手段に訴えることによってニュースの公表を差し止める「固有の権能」をもっていると認定するとすれば、それは修正第1条を消し去り、基本的自由と、政府が「安全」な状態しておきたいと望むまさにその人々の安全を破壊することになるであろう。



【第4文】
No one can read the history of the adoption of the First Amendment without being convinced beyond any doubt that it was injunctions like those sought here that Madison and his collaborators intended to outlaw in this Nation for all time.

〈語句〉
・adoption 名)1.採用、2.(法令などの)採択、3.養子縁組
・First Amendment 名)修正第1条
・convince 他)~に確信(納得)させる、~を説得する
 convince A that…  Aに…ということを確信させる
・beyond any doubt まったく疑いの余地なく
・injunction 名)差し止め命令
・sought 他)seek ~を求めるの過去分詞形
・Madison、James Madison ジェームズ・マディソン
    合衆国憲法の主たる起草者。第4代大統領。
・collaborator 名)協力者 ここでは憲法の共同起草者達
・intend to do ~することを意図する
・outlaw 他)非合法化する、不法とする、禁止する
・for all time いつまでも、永久に

〈文法〉
・No one can read~without being… 「…することなしに~を読めない」
・being convinced that… (…ということを確信させられる→)
  「…ということを確信する」
・it was injuctions~that Madison…強調構文
 「マディソンが…したのは差し止め命令であった。」
  ※it was から始まり、that以下が完全な文章であることから分かる。
・those、 injunctions の繰り返しを避けた言葉
  injunctions like those←(sought here) 過去分詞の形容詞的用法
 「ここ(本件)で求められている差し止め命令と同様の差し止め命令」

〈訳〉
マディソンと彼の共同起草者達がこの国において永久に非合法化すること意図したのは、本件で求められているものと同様の差し止め命令であったと何らの疑いもなく確信することなしに、修正第1条の採択の歴史を読むことはできない。



【第5文】
The word ‘security’ is a broad, vague generality whose contours should not be invoked to abrogate the fundamental law embodied in the First Amendment.

〈語句〉
・security 名)安全
・broad 形)広い
・vague 形)漠然とした、曖昧な
・generality 名)一般性、一般的な意味
 ※ここでは文脈から「汎用性」という意味で使われている。
・contour 名)輪郭、外形
・invoke 他)~を呼び起こす、発動する、援用する
・abrogate 他)~を縮減する
・fundamental 他)根本的な、基本的な
 fundamental law「根本法」は、報道の自由を制約してはならないという法を指す。
・embody 他)~具体化する、具現する
・First Amendment 名)修正第1条

〈文法〉
  vague generality←〔whose contours should not be invoked
   whose はgeneralityを先行詞とする関係代名詞 
   ※訳しにくいのでwhose のところで区切って訳す。

〈訳〉
「安全」という言葉は、広く漠然とした汎用性のあるものであり、その輪郭は、修正第1条に具現された根本法を縮減するように拡張して援用されてならない。

補足: 「安全」という言葉は、漠然として汎用性があり、それを拡大解釈して「国家の安全」を理由に、報道の自由を制約してはならないという趣旨。


【解説】
 最高裁判決に至るまでの事件の背景と経緯は、スピルバーグが監督し、トムハンクスとメリルストリープが共演した「ペンダゴンペーバーズ・最高機密文書」(2018年)によって映画化された。
 「報道機関は、統治する者ではなく統治される者に仕えるべきものとされていた
(The press was to serve the governed, not the governors) 」(Paragraph 1 第6文)は、有名な文章であり、この判決の速報を新聞社に電話で伝える記者のセリフの一部として映画にも出てくる。おそらく、統治者(governor)は、立法と行政に携わる公務員(政府)のことであり、統治される者(governed)は、国民のことを指しているのであろう。
 しかし、よく考えてみるとこれは間違っている。主権者は国民であるので、国民こそが「統治する者」である。立法や行政に携わる公務員は、国民によって選ばれた代理人である。その代理人が適正に任務を遂行していない場合、それはその代理人を選任した主権者である国民の責任である。この事件では、代理人は2つの大きな誤りを犯した。1つは、主権者を欺きながらベトナム戦争を継続したことであり、2つめは、それを告発しようとした記事を差し止めようとしたことである。その究極的責任は、国民にある。
 代理人である政府が授権された任務を適正に行っているかどうかを常に監視する必要がある。政府を監視することは、主権者である国民が主権を適正に行使していることを自ら点検することでもある。そのような国政にとってきわめて重要な監視任務は、国家の機関が行うこともあるであろうが、限界がある。私的企業である新聞社などのマスメディアがそのきわめて重要な役割を担っている。彼らは競争原理によって動いている。国民にとって重要な情報を他社よりも迅速に公にするという苛烈な競争のもとにある。そのような競争原理が、代理人である政府を監視して、その情報を主権者に知らせることについて、有効に機能している。
 国民は、主権者でありながら公にされていない政府活動に関する情報を自ら得る能力を備えていない。もしそのような情報を収集し公開するマスメディアの活動を阻害すれば、それはすなわち民主主義の破壊につながる。マスメディアの使命はまことに大きく、その活動の自由を保障することは民主主義の維持と発展に不可欠である。ブラック裁判官の意見は、このことを説得力のある格調高い文体で宣言している。
「自由な報道の責任の中でもっとも重要なのは、政府のいずれかの部門が人々を欺いて遠い国に送り異国の熱病と異国の銃弾で死なせることを防止する義務である。」(Paragraph 1 第9文)

2020年04月13日

Obergefell v. Hodges 同性婚を認めた合衆国最高裁判決


 

 
オーバージェフェル 対 ホッジス
Obergefell v. Hodges

576 U.S. 644 (2015)


同性カップルの結婚を認めない州法は、合衆国憲法修正14条に違反する。

≪事実の経緯≫
 合衆国最高裁への上訴人(第1審原告)は、14組の同性カップル、および同性パートナーに死に別れた2人の男性である。彼らの居住するそれぞれの州(ミシガン州、ケンタッキー州、オハイオ州、テネシー州)では、憲法や法律によって結婚は男性と女性の間の結合と定義されており、同性婚が認められていなかった。そのような憲法や法律の条項が合衆国憲法修正14条に違反するとして、合衆国地方裁判所に提訴した。被上訴人は、それぞれの州法の執行に責任のある公務員である。
 各地方裁判所は上訴人の訴えを認めたが、これらの訴訟を統合審理した合衆国控訴裁判所は、地裁判決を破棄した。上訴人は、合衆国最高裁に上訴した。争点は、①修正14条が同性間の結婚を許可することを州に義務付けているか否か、②修正14条が、同性婚を認めている州において適法に成立した結婚を、それを認めていない州に承認することを義務付けているか否か、の2点である。
 合衆国最高裁の判決の中で以下の3人の上訴人の状況が詳しく説明されている。


1.ジェームス・オバージフェル(James Obergefell:男性
  ジョン・アーサー(John Arthur:男性)と長年一緒暮らしていた。2011年にアーサーが筋萎縮性側索硬化症(ALS)であると診断された。2人はアーサーが死ぬ前に結婚することを望んだ。彼らは、居住するオハイオ州から医療搬送用飛行機で同性間の結婚を認めているメアリー州に行ったが、アーサーが身体を動かせないのでバルティモア空港で機内にとどまったまま結婚式を挙げた。その3ヶ月後にアーサーが死亡した。オハイオ州は、彼らの結婚を認めず、アーサーの死亡証明書にオバージフェルを「生存配偶者」として記載することを拒否した。

2. エープリル・デボー(April DeBoer:女性)ジェイン・ロウズ(Jayne Rowse:女性
  彼女たちは、2007年に永続的関係を誓う儀式を行った。彼女たちは2人とも看護師として働いていた。彼女たちは、2009年に母親に早産で遺棄され24時間の看護が必要な新生児を養子にするなどして、3人の子供を養子として育てていた。彼女たちが居住するミシガン州は、性別の異なる夫婦か、個人にしか養子をとることを認めていない。したがって、彼女たちは、やむをえず3人の子供たちを2人のいずれかの一方の養子にしている。何らかの悲劇的事態が親となっている方に生じた場合、もう1人は、子供たちに対して何らの法的権利ももたないことになる。2人は、この不安定な状態を解消すべく提訴した。


3.イプ・デコー(Ijpe DeKoe:男性)                           
  デコーは、陸軍予備軍1等軍曹(Army Reserve Sergeant First Class)である。トーマス・コツラ(Thomas Kostura:男性)をパートナーとしていた。2011年にデコーは、アフガニスタンに派遣されることになった。その前に彼らは同性婚を認めているニューヨーク州で結婚した。デコーは、約1年間アフガニスタンで任務についたのち、帰国した。2人はテネシー州に居をかまえ、デコーは陸軍予備軍で働いている。彼らの結婚は、テネシー州では認められておらず、旅行などで州外へ出て再びテネシー州にもどるたびに彼らの結婚の合法性は奪われる。デコーは合衆国憲法が保護する自由を守るために国家に尽くしているが、結婚に関して実質的な負担を負わされている。

≪合衆国最高裁≫
 合衆国最高裁は、同性婚を認めない州法を5対4で違憲と判決した。
 この判決は、同性婚を認めていない州法を違憲無効とした判決、つまり同性カップルの結婚を公的に認めて公的手続きなどについて同性婚に対して異性婚と同様の扱いをすべきことを命じた判決と要約的に説明すれば、分かりやすい。しかし、それを理由づけた合衆国最高裁のケネディ裁判官の法廷意見を理解することは難しく簡単には紹介できない。関連する憲法条項である修正14条のデュー・プロセス条項と平等保護条項に関する先例との整合性について詳しく論じられており、抽象度はかなり高い。
 不正確であるとの誹りを覚悟して、ケネディ裁判官の法廷意見をあえて大雑把に説明すると、結婚権は、合衆国憲法によって明示的に保障されていないが、その権利は非常に重要な基本的権利であるから、憲法によって保障され、そのような基本的権利を異性カップルに認めて同性カップルには認めないことは、憲法が禁じる差別にあたる、という内容の意見である。
 卑俗な例で説明すれば、チョコレートが大好きな兄弟がいたとして、母親が兄にだけチョコレートを与えて、弟に与えない場合、弟が大好きなチョコレートを食べることができないという問題が生じる。それと同時に、母親の扱いが兄と弟とで異なるという不平等の問題が生じる。結婚権は、この例のチョコレートに該当する。もし弟がチョコレートを嫌いである場合、このような問題は生じない。弟が兄だけにチョコレートを与えたことについて母親に不平を言ったとすれば、それは弟にとってもチョコレートが貴重なものであることを示すことになる。
 やはり、このチョコレートの例は、少し卑俗すぎるかもしれない。母親は、兄弟2人ともにチョコレートを与えないことによって平等を保つことができるからである。結婚は、チョコレートと異なり、同性カップルにも異性のカップルにも等しく認めないというわけにはいかない。
 ケネディ裁判官は、ある権利が基本的であるかどうかという考察と、不平等があるかどうかという考察には、共働関係(synergy)があり、一方を理解すれば他方をより深く理解できるようになると述べている。


合衆国憲法修正14第1節
「どの州もどの人からも法の適正なプロセスによらず生命、自由または財産を奪ってはならない。また、その管轄内においてどの人に対しても法の平等保護を拒否してはならない(No state... shall any state deprive any person of life, liberty, or property, without due process of law; nor deny to any person within its jurisdiction the equal protection of the laws)。


この条項の前半は、「デュー・プロセス条項(due process clause)」、後半は「平等保護条項(equal protection clause)」と呼ばれている。

≪手続的デュー・プロセス≫
デュー・プロセス条項は、「どの州もどの人からも法の適正なプロセスによらず生命、自由または財産を奪ってはならない」と定める。この条項の意味するところを分かりやすく説明するために、極端な例を示すと、被疑者を裁判にかけずに死刑(または禁固刑)にすれば、それは「法の適正なプロセス」によらずに「生命」(または「自由」)を奪うことになるから、この条項に違反することになる。実際に訴訟になったケースでは、福祉金受給者がその資格要件を喪失するようになった場合、関係行政庁は、支給打ち切りの決定を行う前に、証拠にもとづいてなされる聴聞(hearing)の機会を受給者に与えなければならないとされた(Goldberg v. Kelly, 397 U.S. 254 (1970))。そのような聴聞を行わずに支給を打ち切れば、それは「法の適正なプロセス」によらずに受給者から「財産」(=福祉金)を奪うことになる。このように字句どおりに解釈される “due process”は、「手続的デュー・プロセス」と呼ばれている。

≪実体的デュー・プロセス≫
 上述のようにデュー・プロセス条項は、州政府がその公権力の行使として人からその生命、自由、財産を奪う場合は、適正なプロセスによって行うことを要求している。しかし、この条項は、ロセスの適正さにとどまらず、権利章典(Bill of Right:合衆国憲法修正1条~10条)など他の憲法条項に列挙されていない権利をも保障していると解釈されるようになった。プライバシーの権利がそのような権利の1つである。また、プライバシーの権利の1つの内容として妊娠中絶手術を受ける権利もデュー・プロセス条項によって認められていると解釈されてきたこのように実体的な権利を保障していると解釈される “due process”は、「実体的デュー・プロセス」と呼ばれている。
しかし、個人的な嗜好によるありとあらゆる権利が、実体的デュー・プロセスによって認められるわけではない。例えば、警察官の長髪規制がプライバシーの権利の侵害であるという主張は認められない(Kelly v. Johnson, 452 U.S.238 (1976) )。合衆国最高裁は、デュー・プロセス条項によって認められる権利は、「この国の歴史と伝統に深く根差している(deeply rooted in this Nation’s history and tradition)」権利、「秩序だった自由の概念に黙示されている」権利、「基本的権利(fundamental right)」でなければならないと述べてきた。

≪実体的デュー・プロセスと平等保護条項の関係≫
 1967年のLoving v. Virginia (388 U.S. 1) では、白人と有色人種の間の結婚を禁止するヴァージニア州法が違憲とされた。合衆国最高裁は、結婚が「自由な人間による幸福の秩序だった追及にとって不可欠であるきわめて重要な個人的権利の1つ(one of the vital personal rights essential to the orderly pursuit of happiness by free men)」であると判示した。問題のヴァージニア州法は、白人と結婚したい有色人、および有色人と結婚したい白人にとって結婚権の侵害である。
 他方、この州法は、人種による分類にもとづいて権利を制限しているので、平等保護条項の違反である。



≪合衆国最高裁:ケネディ裁判官の法廷意見≫

 合衆国最高裁は、同性婚を認めない州法を5対4で違憲と判決した。多数意見を代表してケネディ(Kennedy)裁判官が法廷意見を書いた。以下で判決原文の中から比較的重要な文章を選んで(全訳ではない)、文型、構文、語句の意味などを解説して和訳していく。
 以下の章立て(「Ⅰ.結婚の歴史と重要性」~)は、この和訳のためのもので、原文のものではない

〈目次〉
Ⅰ.結婚の歴史と重要性(①~㉓)
Ⅱ.修正14条のデュー・プロセス条項―結婚権は憲法によって保障された基本的権利(①~㉔)
Ⅲ.結婚権が基本的権利である理由―同性カップルにも当てはまる4つの理由
1.結婚に関する個人的選択の権利は、個人の自律に内在する(①~⑩)
2.結婚は、2人の結びつきを支え、その重要性は他に例を見ない(①~⑪)
3.結婚は、子供と家族を守り、子育て、生殖、教育から意味を引き出す(①~⑯)
4.結婚は社会の要石である(①~㉕)
Ⅳ.デュー・プロセス条項と平等保護条項の共働作用(①~㉛)
Ⅴ.結論(①~⑪)

【解説】


Ⅰ.結婚の歴史と重要性

≪Ⅰ①
From their beginning to their most recent page, the annals of human history reveal the transcendent importance of marriage.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  annals  reveal  importance

  ・their後のannalsを先に受けている。
 ・beginning 名)始まり
 ・most 副)最も
 ・recent 形)最近の
 ・annals 名)(複数形で)年代記
 ・human history 名)人間の歴史
 ・reveal 他)~を明らかにする
 ・transcendent 形)超越的な、並はずれた
 ・importance 名)重要性
 ・marriage 名)結婚

〈訳〉
人間の歴史の年代記は、始まりからもっとも最近のページまで結婚の並はずれた重要性を明らかにしている。



≪Ⅰ②≫
The lifelong union of a man and a woman always has promised nobility and dignity to all persons, without regard to their station in life.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  union  promised  nobility and dignity

 ・lifelong 形)一生の、生涯にわたる
 ・union 名)結合、合体、結びつき(結婚)
 ・promise 他)~を約束する  has promised:「(昔からずっと)約束してきた」
 ・nobility 名)気高さ、高貴さ
 ・dignity 名)尊厳
 ・without regard to ~に関わりなく
 ・station 名)身分、地位

〈訳〉
男女の生涯の結びつきは、社会的地に関わらず常にすべての人に気高さと尊厳を約束してきた。



≪Ⅰ③≫
Marriage is sacred to those who live by their religions and offers unique fulfillment to those who find meaning in the secular realm.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  Marriage  is  sacred
    
  第3文型(S+V+O)
   (Marriage )and offers  fulfilment
   
 ・marriage 名)結婚
 ・sacred 形)神聖な
 ・those who =those people who~

  (そのような人々、つまりwho~するような→)~する人々
   those←〔who live by their religions〕
 ・live by~ (信条など)に従って生きる
 ・religion 名)宗教
 ・offer 他)~を提供する
 ・unique 形)唯一の、比類のない、独特な
 ・fulfilment 名)実現、成就、達成、充足感
 ・those who~
   those←〔who find~realm〕
  ※who が関係代名詞であることは、右に主語がないから分かる。
 ・meaning 名)意味
 ・secular 形)世俗の
 ・realm 名)領域

〈訳〉
結婚は、宗教に生きる人々にとっては神聖なものであり、世俗的な領域に意味を見出す人々にとっては比類のない充足感を与えてくれる。



≪Ⅰ④≫
Its dynamic allows two people to find a life that could not be found alone, for a marriage becomes greater than just the two persons.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  dynamic  allows  people   

  for~:第2文型(S+V+C)
   marriage  becomes  greater


 ・Its その ※前文の「結婚」を受けている
 ・dynamic 名)力学、動力、ダイナミズム
 ・S allow A to do  SはAが~することを許す
  →(意訳)SによってAは~することができる
 ・that~ lifeを説明する関係代名詞
   life←〔that could not be found alone〕 
   ※thatが関係代名詞であることは、右に主語がないから分かる。
    could not~は、仮定法過去:alone に仮定の意味がある。
     「一人では~できなかったであろう」
   受動を能動に訳す方が読みやすい:
    1人では見出されることができないであろう人生→
     「1人では見出すことができないであろう人生」

 ・alone 副)一人で
 ・for 接)というのは~だからである
 ・marriage 名)結婚
 ・greater 形)より大きい、より偉大な
 
〈訳〉
そのダイナミズムによって、2人は1人では見出すことができないであろう人生を見出すことができる。というのも結婚はただ2人だけのもの以上のものになるからである。



≪Ⅰ⑤
Rising from the most basic human needs, marriage is essential to our most profound hopes and aspirations.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  marriage  is  essential
    
 ・rise from~ ~(源など)から生じる、生まれる
    Rising~は、分詞構文。
  分詞構文の~ingには3つの要素がある:
    ① 主節と同じ主語(marrage)
    ② ~ingを適切な形(時制)に変えた動詞
      この文では過去形のrose。
    ③文脈に合う接続詞
     この文では、As [because]marriage rose from the most basic human
      needsくらいの意味。
 ・most 形)最も
 ・basic 形)基本的な、基礎的な
 ・human 形)人間の
 ・needs 名)必要 ※複数形になっている具体的な必要事項というニュアンス
 ・marriage 名)結婚
 ・essential 形)不可欠な
 ・profound 形)深い、深遠な
 ・hope 名)希望
 ・aspiration 名)切望、願望

〈訳〉
結婚は人間の最も基本的な必要から生まれたので、私たちの最も奥深い希望と願望にとって不可欠である。



≪Ⅰ⑥≫
The centrality of marriage to the human condition makes it unsurprising that the institution has existed for millennia and across civilizations.

● 基本構造: 
 第5文型(S+V+O+C)
  目的語がthat 節であり、長いので形式的な目的語itが置かれている。
   centrality  makes  it  unsurprising

    it =〔that~civilizaitions〕
      that節の中:第1文型(S+V)
        institution  existed
       
 ・centrality 名)中心にあること、中心性
 ・marriage 名)結婚
 ・human 形)人間の
 ・condition 名)条件
 ・make A+B AをB(の状態)にする
   A=it=〔that~civilizaition〕  B=unsurprising 
 ・unsurprising 形)驚くに当たらない
 ・institution 名)制度 ※結婚のこと。
 ・exist 自)存在する   has existed (昔からずっと)存在してきた
 ・for~ ~(期間など)の間
 ・millennia 名)千年
 ・across 前)~を横切って、~の違いをこえて
 ・civilization 名)文明

〈訳〉
結婚が人間の条件にとって中心的なものであることを考えれば、この制度が何千年もの間、文明の違いをこえて存在してきたのも驚くに当たらない。
(←人間の条件にとっての結婚の中心性は、この制度が何千年もの間、文明の違いをこえて存在してきたを驚くに当たらないことにしている。)



≪Ⅰ⑦
Since the dawn of history, marriage has transformed strangers into relatives, binding families and societies together.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   marriage  transformed  strangers
      
 ・since 前)~以来
 ・dawn 名)夜明け、始まり
 ・history 名)歴史
 ・marriage 名)結婚
 ・transform A into B AをBに変える、変換する
 ・stranger 名)見知らぬ人
 ・relative 名)親戚、親族
 ・bind 他)~を結びつける。最後にtogetherがあるので、「一緒に結び付ける」と
   いう動詞の意味で使われており、「拘束力のある」という形容詞として使われてい
   ないことが分かる。
  binding~は、分詞構文。
    分詞構文の~ingには3つの要素がある:
    ① 主節と同じ主語(marrage)
    ② ~ingを適切な形(時制)に変えた動詞([has] bound)
    ③文脈に合う接続詞
    この文では、~relatives, and marriage has bound families…くらいの意味。
 ・family 名)家族
 ・society 名)社会
 ・together 副)一緒に、互いに

〈訳〉
歴史の黎明以来、結婚は他人を親族に変え、家族と社会を互いに結びつけてきた。



≪Ⅰ⑧
Confucius taught that marriage lies at the foundation of government.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   Confucius  taught  that marriage~government.
      
 ・Confucius 名)孔子
 ・taught  teach他)「~を教える」の過去形
 ・marriage 名)結婚
 ・lie 自)ある、存する
 ・foundation 名)基礎、基盤
 ・government 名)政治、政府、統治

〈訳〉
孔子は、結婚が統治の基盤にあると説いた。



≪Ⅰ⑨
This wisdom was echoed centuries later and half a world away by Cicero, who wrote,"The firstbond of society is marriage; next, children; and then the family."

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  wisdom  was  echoed  

 ・wisdom 名)知恵、賢明さ
    This wisdom =結婚が政治の基礎にあるという孔子の知恵
 ・echo 他)~をおうむ返しに繰り返す
 ・century 名)世紀
 ・later 副)後に
 ・half a world away (世界の半分を離れたところで→)地球の裏側で
 ・Cicero キケロ 古代ローマの政治家、哲学者
 ・who wrote~ キケロを説明する関係代名詞あるが、
   区切って「~した。彼は~と書いた」と訳す方がよい。
 ・first 形)最初の、第1の
 ・bond 名)結びつき、絆
 ・society 名)社会
 ・marriage 名)結婚
 ・children 名)子供(childの複数形)
 ・then 副)それから
 ・family 名)家族

〈訳〉
この知恵は、何世紀も後に、地球の裏側でキケロによって同じように語られた。彼は次のように書いた。 「社会の最初の絆は結婚であり、次に子供、それから家族である。」



≪Ⅰ⑩≫
There are untold references to the beauty of marriage in religious and philosophical texts spanning time, cultures, and faiths, as well as in art and literature in all their forms.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)→(V+S)

    are   references
   There is (are)~の構文は「~がある」という意味であるが、文型としては
  「S+be動詞」の第1文型であり、there が文頭にあるので倒置されている
  (V+S→S+V)。
   be動詞には「~がある」という意味がある。例)The book is on the desk. 
  
 ・There are ~ ~がある
 ・untold 形)数え切れない
 ・reference 名)言及
 ・beauty 名)美
 ・marriage 名)結婚
 ・religious 形)宗教の
 ・philosophical 形)哲学の
 ・text 名)文章、本文、原文
 ・span 他)~(月日など)にわたる、またがる
  spanning~は、texsを説明する形容詞
   texts←〔spanning time, cultures, and faiths〕
     3つのものの並列:A, B, and C
 ・A as well as B BだけではなくAも、Bと同様にAも
 ・art 名)芸術、美術
 ・literature 名)文学
 ・form 名)形、形態

〈訳〉
あらゆる形態の芸術や文学だけでなく、時代、文化、信仰にまたがる宗教書や哲学書の中には、結婚の美しさに関する数え切れないほどの言及がある。



≪Ⅰ⑪≫
It is fair and necessary to say these references were based on the understanding that marriage is a union between two persons of the opposite sex.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  It  is  fair and necessary  

   It~to do… の形式主語の構文:
   (それは~である、…することは→)「…することは~である」

 ・fair 形)公正な、公平な
 ・necessary 形)必要な
 ・reference 名)言及  these referencesは、前文で説明した言及
 ・be based on~ ~にもとづいている
 ・understanding 名)理解
 ・that~ understandingの内容を説明する同格節「~という理解」
   understanding =〔that marriage  is  a  union~sex〕
    ※第2文型の完全な文が続いているので同格節であることが分かる。
 ・marriage 名)結婚
 ・union 名)結合、合体、結びつき(結婚)
 ・between 前)~の間の
 ・person 名)人
 ・opposite sex 異性

〈訳〉
これらの言及は、結婚は2人の異性の間の結合であるという理解に基づいていると言うのが公正であり、必要である。



≪Ⅰ⑫≫
That history is the beginning of these cases.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   history  is  beginning  

 ・history 名)歴史  that history=これまでの文で説明してきた歴史
 ・beginning 名)始まり
 ・case 名)事件、ケース、判例
    these cases この訴訟で審理の対象となっている事件

〈訳〉
そのような歴史がこれらのケースの始まりである。
  ※そのような結婚の歴史にもとづいて原告が同性婚を認めさせるために訴えを提起
   したというような意味。




≪Ⅰ⑬≫
The respondents say it should be the end as well.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   respondents  say  [that] it~well.
      接続詞のthatが省略されている。

 ・respondent 名)被上訴人 
    結婚を異性の結合と定義している法律の執行に責任のある公務員
 ・it =前文のthat history
 ・should 助)~すべき
 ・end 名)終わり
 ・as well ~も、~でもある、~もする

〈訳〉
被上訴人は、そのような歴史が終わりでもあるべきだと述べる。
 ※被上訴人には、結婚の歴史はこれ以上発展することはなく、同性どうし結合が結婚に
  含まれることはないと考えているという意味。



≪Ⅰ⑭≫
To them, it would demean a timeless institution if the concept and lawful status of marriage were extended to two persons of the same sex.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  it  demean  institution

 ・them =前文の被上訴人(respondents)
 ・it 後のif節の内容を先に受ける。「もし~だとすれば、それは」
 ・would 仮定法過去「もし~だとすれば、・・・することになるであろう」
 ・demean 他)~貶める、品位を落とす
 ・timeless 形)時代を超えた
 ・institution 名)制度  
   timeless institution「時代を超えた制度」=結婚
 ・concept 名)概念、観念、コンセプト
   concept~of marriage とつながっている。
 ・lawful 形)合法的な
 ・status 名)地位
 ・marriage 名)結婚
 ・extend 他)~を拡張(拡大)する
  were extended to (受動態)~に拡張される  
   ※be動詞がwereになっているのは、仮定法過去「もし現在仮に~だとすれば」
 ・same sex 名)同性

〈訳〉
彼らにとっては、結婚の概念と合法的な地位が同性の2人にまで拡張されるとすれば、時代を超えた制度を貶めることになるであろう。



≪Ⅰ⑮≫
Marriage, in their view, is by its nature a gender-differentiated union of man and woman.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   Marriage  is   union  

 ・marriage 名)結婚
 ・view 名)見解 
 ・by its nature その性質上、本質的に
 ・gender 名)性、性別、ジェンダー
 ・differentiate 他)~を区別する、~に差異を生じさせる
   gender-differentiated 形)性別に差異のある
 ・union 名)結合、合体、結びつき(結婚)
 
〈訳〉
彼らの見解では、結婚は本質的に男女という性別に差異のある結合である



≪Ⅰ⑯≫
This view long has been held--and continues to be held--in good faith by reasonable and sincere people here and throughout the world.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  view   been    held  

 ・view 名)見解  This view 「この見解」=前文の見解
 ・long 副)長い間
 ・hold 他)~(考えなど)を抱く、保持する
  be held (受動態)抱かれる  has been held (昔からずっと)抱かれてきた
 ・continue to do~ ~し続ける
 ・good faith 名)誠実さ、信義
 ・reasonable 形)合理的な、理性的な
 ・sincere 形)誠実な、正直な、偽りのない
 ・here 副)ここで  この文ではworld と対比して「この国で」
 ・throughout 前)~の至る所で
 
〈訳〉
この見解は、この国で、そして世界中の至る所で、理性的で偽りのない人々によって長きにわたって誠実に守られてきたし、また守られ続けている。



≪Ⅰ⑰≫
The petitioners acknowledge this history but contend that these cases cannot end there.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
    petitioners   acknowledge   history 
        but contend  that these~there
          
 ・petitioner 名)上訴人
 ・acknowledge他)~を承認する
 ・history 名)歴史
 ・contend 他)~ということを主張する
 ・case 名)事件、ケース、判例 
    these cases この訴訟で審理の対象となってい る事件
 ・end 自)終わる
 ・there 副)そこで 
   end there「そこで終わる」とは、結婚は異性カップルによるものであり、それ以
   上、結婚の歴史は発展しないということ。


〈訳〉
上訴人は、このような歴史は認めつつも、これらのケースをそこで終わらせるわけにはいかないと主張している。



≪Ⅰ⑱≫
Were their intent to demean the revered idea and reality of marriage, the petitioners' claims would be of a different order.

 ● 基本構造:
  ・Were~ 仮定法過去の倒置形=If their intent were to demean~
     if S were to do~ 仮にSが~するとすれば、
  ・第2文型(S+V+C)
    claims  be   of~order  

 ・their 彼らの  ※後のpetitioners を先に受けている。
 ・intent 名)意図
 ・demean 他)~貶める、品位を落とす
 ・received 形)受け入れられた
 ・idea 名)考え、アイデア、理念
 ・reality 名)現実
 ・marriage 名)結婚
 ・claim 名)主張、請求
 ・would willの過去形:仮定法過去
 ・order 名)順序、秩序、命令
   be of a different order まったく(種類、次元の)異なるもの

〈訳〉
結婚という受け入れられた理念と現実を貶めることが上訴人の意図であったなら、彼らの主張はまったく次元の異なるものになったであっただろう。



≪Ⅰ⑲≫
But that is neither their purpose nor their submission.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
   that  is   purpose

 ・that それは=前文の「結婚の理念と現実を貶めること」
 ・neither A nor B AでもBでもない。
 ・purpose 名)目的
 ・submission 名)提案、具申、申し立て

〈訳〉
しかし、それは彼らの目的でも申し立てでもない。



≪Ⅰ⑳≫
To the contrary, it is the enduring importance of marriage that underlies the petitioners' contentions.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
   it  is   importance

 ・contrary 名)反対  to the contrary 反対に、逆に、それどころか
 ・it is~that… 強調構文「…するのは(他でもない)~である」
   it が受けていると解釈できるものが前文にはない。
 ・enduring 形)永続的な
 ・importance 名)重要性
 ・marriage 名)結婚
 ・that~ marriage を説明する関係代名詞だとすると、意味不明になる。
 ・underlie 他)~の下にある、基礎となる
 ・petitioner 名)上訴人
 ・contention 名)論点、主張

〈訳〉
それどころか、上訴人の主張の根底にあるのは、結婚の永続的な重要性である。



≪Ⅰ㉑≫
This, they say, is their whole point.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
  This  is   point

 ・This このこと=「結婚の永続的な重要性」
 ・they say は、挿入されている=They say that this is….
 ・whole point 肝心なこと(言いたいこと)のすべて

〈訳〉
彼らが言うには、これが彼らの主張のすべてである。



≪Ⅰ㉒≫
Far from seeking to devalue marriage, the petitioners seek it for themselves because of their respect--and need--for its privileges and responsibilities.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  petitioners  seek  it

 ・far from ~ing ~するどころか
 ・seek to ~しようとする
 ・devalue 他)~の価値を下げる
 ・marriage 名)結婚
 ・petitioner 名)上訴人
 ・seek 他)~を(探し)求める
 ・because of ~のために(原因、理由)
 ・respect 名)尊敬、尊重
 ・need 名)必要
 ・privilege 名)特権
 ・responsibility 名)責任

〈訳〉
上訴人は、結婚を軽んじようとしているどころか、結婚の特権と責任を尊重し、それを必要としているので自らのために結婚を求めている。



≪Ⅰ㉓≫
And their immutable nature dictates that same-sex marriage is their only real path to this profound commitment.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  nature  dictates   that~commitment

  that 節の中:第2文型(S+V+C)
   marriage  is  path

 ・their それらの=「結婚の特権と責任」の
 ・immutable 形)不変の
 ・nature 名)性質
 ・dictate 他)~を命じる、指図する
 ・same-sex marriage 名)同性婚
 ・only 形)唯一の
 ・real 形)現実的な
 ・path 名)道
 ・profound 形)深い、深遠な
 ・commitment 名)深い関与、約束、コミットメント

〈訳〉
そして、それらの不変の性質は、同性婚がこの奥深いコミットメントへの唯一の現実的な道であると命じている。
 ※結婚の特権と責任をえるためには、同性婚という手段しかないという趣旨。





Ⅱ.修正14条のデュー・プロセス条項―結婚権は憲法によって保障  された基本的権利

≪Ⅱ①≫
The fundamental liberties protected by this Clause include most of the rights enumerated in the Bill of Rights.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  liberties  include  most
     
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・liberty 名)自由
 ・protect 他)~を保護する  protected はlibertyを説明する受身の意味の形容詞
   liberties←〔protected by~〕 「~よって保護されている自由」
    ※protected の右に目的語がなく、すぐbyがあるので分かる。
 ・clause (法律の)条項  
   this Clause=修正14条のデュー・プロセス条項
   この1つ前に文で引用されている。
   「どの州もどの人からも法の適正なプロセスによらず生命、自由または財産を奪っ
    てはならない(No state...shall any state deprive any person of life, liberty,
    or property, without due process of law)。」
 ・include 他)~を含む
 ・most of ~のほとんど、ほとんどの~
 ・right 名)権利
 ・enumerate 他)~を列挙する
   enumeratedは、rightsを説明する受身の意味の形容詞
    rights←〔enumerated in~〕「~の中で列挙されている権利」
    ※enumerated の右に目的語がなく、すぐinがあるので分かる。
 ・Bill of Rights 権利章典(合衆国憲法修正1条~10条)
   例えば、修正1条は、政教分離、表現の自由、修正2条は、武器所持の権利、修正
  4条は、令状のない捜索押収の禁止、修正5条は、黙秘権、修正6条は刑事手続きに
  おける弁護人依頼権、修正8条は、残虐で異常な刑罰の禁止、などについて定めてい
  る。

〈訳〉
デュー・プロセス条項によって保障される基本的な自由は、権利章典に列挙されている権利のほとんどを含んでいる。



≪Ⅱ②≫
In addition, these liberties extend to certain personal choices central to individual dignity and autonomy, including intimate choices that define personal identity and beliefs.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
  liberties  extend

 ・in addition 副)それに加えて、さらに   
 ・these liberties 「これらの自由」 権利章典で明示的に保障されている自由
 ・extend to (範囲などが)~まで及ぶ、広がる、わたる
 ・certain 形)特定の
 ・personal 形)個人的な
 ・choice 名)選択
 ・central to ~にとって中心的な 
  choiceを後ろから説明している。
    choices ←〔central to individual dignity anautonomy〕    
 ・individual 形)個人の
 ・dignity 名)尊厳、威厳
 ・autonomy 名)自治、自主性
 ・including 前)~を含めて
 ・intimate 形)親密な
  choices ←〔that define personal identity and beliefs〕
     that は関係代名詞:直後にdefineという動詞があるので分かる。
 ・define 他)~を定義する、~の境界を定める
 ・identity 名)アイデンティティ
 ・belief 名)信念、信仰

〈訳〉
加えて、これらの自由は、個人の尊厳と自律の中心となる特定の個人的な選択にも及び、これには個人のアイデンティティと信念を定義する親密な選択も含まれる。



≪Ⅱ③≫
The identification and protection of fundamental rights is an enduring part of the judicial duty to interpret the Constitution.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  identification and protection is part
         
 ・identification 名)特定、同一であることの証明 
   つまり、ある権利が基本的権利であると特定すること。 identify A with B 「Aを
   Bと同一視する、同一であると証明する」 いわゆるIDカードは、同一性の証明の
   ためにある。
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・right 名)権利
 ・enduring 形)永続的な  endure 他)~に耐える、自)もちこたえる、我慢する
 ・part 名)部分
 ・judicial 形)司法の、裁判の
 ・duty 名)義務
 ・interpret 他)~を解釈する
   to interpret~は、dutyを説明する形容詞的用法の不定詞。※内容から分かる。
 ・the Constitution 名)合衆国憲法

〈訳〉
基本的権利の特定と保護は、合衆国憲法を解釈する司法の義務の永続的な部分である。



≪Ⅱ④≫
That responsibility, however, "has not been reduced to any formula."

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
  responsibility  been  reduced
       
 ・responsibility 名) 責任
   That responsibility 「その責任」とは、前文の「憲法を解釈する司法の責任」
   のことである。
 ・however 副)しかし(ながら)
 ・has not been この現在完了は、「現在まで~されてこなかった」という経験を含意
  する。
 ・reduce A to B AをBの状態にする、変える   be reduced to ~に変えられる
 ・formula 名)決まりきった言い方、定式、公式
   "has not been reduced to any formula."は、Poe v. Ullman, 367 U.S.
  497(1961)におけるHarlan 裁判官の反対意見からの引用である。避妊薬の使用と
  使用に関する医師の助言を禁じるコネティカット州法が修正14条に違反すると
  いう訴えがなされたが、合衆国最高裁の多数意見は、制定以来この州法によって訴
  追された人がおらず、事件争訟性の要件(合衆国憲法第3条)を欠いているという
  理由で、訴えを却下した。

〈訳〉
しかし、その責任は、「いかなる定式にもまとめられてこなかった。」



≪Ⅱ⑤≫
Rather, it requires courts to exercise reasoned judgment in identifying interests of the person so fundamental that the State must accord them its respect.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  it  requires  courts
   
 ・rather 副)むしろ
 ・it = 前文の responsibility
 ・require A to do Aに~することを求める、要求する
 ・exercise 他)~を働かせる、行使する
 ・reasoned 形)道理にもとづいた、熟慮の上での   
    reason 名)1.理由、2.理性  自)推論する、理由を考える
 ・judgement 名)1.判断、2.判決
 ・in ~ing ~する時に、~するさいに、~することにおいて
 ・identify 他)~を特定する
 ・interest 名)利益
 ・so fundamental that… 
   so~thatの構文「非常に基本的であるので…」
   so~respectまでは、一体としてinterestを説明している形容詞節である。
   interest ←〔so fundamental that the State~respect〕
   ※「それほど基本的」であるものは何かを考えると分かる。
 ・State 名)州
 ・accord A+B AにBを与える
 ・respect 名)尊重、尊敬

〈訳〉
むしろその責任は、人の利益のうちで非常に基本的であるので州が尊重しなければならないものを特定するにあたり、熟慮ある判断を用いることを裁判所に求める。



≪Ⅱ⑥≫
That process is guided by many of the same considerations relevant to analysis of other constitutional provisions that set forth broad principles rather than specific requirements.

● 基本構造:

 第2文型(S+V+C)
    process is  guided
    
 ・process 名)過程、プロセス  
    that process 「そのプロセス」とは、前文の内容と受けて、基本的な利益を特定
   するにあたり裁判所が熟慮ある判断を行うプロセスのことである。
 ・guide 他)~の道案内をする、指導する  is guided by~によって導かれる
 ・same 形)同じ
 ・considerations考慮事項  ※複数形になると具体的な意味になる。
 ・relevant to形)~に関連する  
   relevant to~requirementsは、一体として前のconsiderationsを修飾する
   considerations←〔relevant to…provisions that set forth…requirements〕
     ※途中のthatが関係代名詞でprovisions を説明していることから分かる。
 ・analysis 名)分析 複数形はanalyses
 ・constitutional 形)憲法の
 ・provision 名)(法律、契約書などの)条項
 ・that 関係代名詞
  provisions ←〔that set forth…requirements〕
  ※that の後にすぐsetという動詞があるので分かる。
 ・set forth 他)~を定める、表明する、打ち出す
 ・broad 形)幅の広い
 ・principle 名)原理、原則
 ・A rather than B BというよりはむしろA、BではなくA
 ・specific 形)特定の
 ・requirement 名)要件
  
〈訳〉
このプロセスは、特定の要件ではなく広範な原則を定めた他の憲法条項の分析に関連する同じ考慮事項の多くによって導かれる。



≪Ⅱ⑦≫
History and tradition guide and discipline this inquiry but do not set its outer boundaries.

● 基本構造:

 第3文型(S+V+O)
  History and tradition  guide and discipline  inquiry
    but do not  set   boundaries
    
 ・history 名)歴史
 ・tradition 名)伝統
 ・guide他)~の道案内をする、指導する
 ・discipline 他) ~に規律を与える 
   ※名詞の「規律」として使われていると判断すると、後続のthisとのつながりがつ
    かない。
 ・inquiry 名)探求 ※ある権利が「基本的な権利」かどうかを見極めること。
 ・set 他)~を置く、(境界など)を設定する
 ・outer 形)外側の
 ・boundary 名)境界(線)

〈訳〉 
歴史と伝統は、この探求を指導し規律するが、外側の境界を決めるものではない。
 ※「外側の境界を決めるものではない」とは、歴史と伝統以外にもの考慮すべきことがあ
  るということ。



≪Ⅱ⑧≫
That method respects our history and learns from it without allowing the past alone to rule the present.

● 基本構造: 
 ・第3文型(S+V+O)
   method  respects  history
 ・第1文型(S+V)
   method  learns 
   
 ・method 名)方法  
   ※That method 「その方法」とは、基本的権利を特定するための方法
 ・respect 他)~を尊重する、尊敬する
 ・history 名)歴史 
 ・learn from ~から学ぶ
 ・without~ing ~することなく
 ・allow A to do Aが~することを許す、認める
 ・past 名)過去
 ・alone 副)1.独りで、2.もっぱら、~だけで
 ・rule 他)~を支配する、規律する 
  ※名詞の「規則」という意味と解釈すると、後のthe presentとのつながりがつかな
   い。
 ・present 名)現在

〈訳〉
その方法は、われわれの歴史を尊重し、それから学ぶが、過去のみに現在を支配させることはない。
  ※読みやすくするためにwithout の前で区切って訳している。



≪Ⅱ⑨≫
The nature of injustice is that we may not always see it in our own times.

● 基本構造:

 第2文型(S+V+C)
  nature  is  that we …times
     
 ・that節内部の文型:第3文型(S+V+O)
      we  see  it
    
 ・nature 名)性質、本質
 ・injustice 名)不正義、不当
 ・may 助)かもしれない、してもよい、できる
 ・not always (部分否定)いつも~というわけではない
 ・it = nature of injustice
 ・our own times われわれ自身の時代、現代

〈訳〉
不正義の本質は、われわれ自身の時代において常にそれが見えるわけではないということである。



≪Ⅱ⑩≫
The generations that wrote and ratified the Bill of Rights and the Fourteenth Amendment did not presume to know the extent of freedom in all of its dimensions, and so they entrusted to future generations a charter protecting the right of all persons to enjoy liberty as we learn its meaning.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  generations  presume  to know…
   
  and so  they  entrusted  charter
  
 ・generation 名)世代
 ・that 関係代名詞 ※すぐ後に動詞wrote があることから分かる。
    generations ←〔that wrote and ratified~Fourteenth Amendment〕
     この後のdid not presume は、文全体の骨組みの動詞部分である。
 ・ratify 他)~を批准する、承認する
  憲法改正には4分の3の州の批准(承認)が必要である(合衆国憲法第5条)。
 ・Bill of Rights 権利章典(合衆国憲法修正1条~10条)
 ・Fourteenth Amendment 修正14条
 ・presume to do あつかましくも~する
 ・extent 名)範囲、程度
 ・freedom 名)自由
 ・itsは、freedom を受けている。
 ・dimension 名)1.寸法、面積、容積、2.重要性
 ・entrust A to B AをBに託す、委ねる
  ※ to B にあたる部分(to future generations)が先に書かれている。
     Aにあたる部分(a charter~persons)が長いからである。
 ・charter 名)憲章 合衆国憲法のことである。
 ・protect 他)~を保護する
   charter ←〔protecting the right…liberty〕
    protecting~は、charterを説明する形容詞句である。「~を保護する憲章」
 ・right 名)権利
 ・enjoy 他)(権利、自由など)を享受する
    to enjoy~は、right を説明する形容詞的用法
   〇 right←〔to enjoy liberty〕 「自由を享受する権利」
   × persons←〔to enjoy liberty〕「自由を享受する人々」とすると、権利の内容
     が不明確になる。
 ・liberty 名)自由
 ・as 接)~するにつれて
 ・itsはlibertyを受けている。freedom→its dimension;liberty→its meaning
 ・meaning 名)意味
     as we learn its meaning 「われわれがその意味を学ぶにつれて」
    →「権利を保護する」につながる。
 
〈訳〉
権利章典と修正14条を作成し批准した世代は、あらゆる次元において自由(freedom)の程度を知っているわけではなかったので、彼らは、われわれが自由(liberty)の意味を学ぶにつれて、すべての人々の自由(liberty)を享受する権利を保護する、そのような憲章を未来の世代に託したのである。
 ※訳しにくいが、おそらく「われわれ」と「未来の世代」は同じである。憲法によって
  保護されるべき自由には、修正14条が採択された当時ではまだ見極められなかった
  ようなものもあり、そのような自由が将来的に明らかになった場合、憲法に新しい解
  釈をしてそれ自由を保護する、という趣旨である。



≪Ⅱ⑪≫
When new insight reveals discord between the Constitution's central protections and a received legal stricture, a claim to liberty must be addressed.

● 基本構造: 
  When節の中:第3文型(S+V+O)
     insight  reveals  discord
  主節:第2文型(S+V+C)
     claim  be  addressed
   
 ・insight 名)洞察(力)、識見
 ・reveal 他)~を明らかにする
 ・discord 名)不調和、不一致
 ・between A and B  AとBの間の
 ・Constitution 名)合衆国憲法
 ・central 形)中心的な
 ・protection 名)保護
 ・received 形)一般に受け入れられた、容認された
 ・legal 形)法の、合法的な
 ・stricture 名)制約、厳格さ
 ・claim to A 名)Aを求める請求、要求 
 ・liberty 名)自由
 ・address 他)~に対処する、取り組む

〈訳〉
新しい見識によって合衆国憲法の中心的な保護と一般に受け入れられている法的制約との間に不調和が明らかになった時、自由に対する要求に対処しなければならない。
 ※「一般に受け入れられている法的制約」とは、下で言及されている異人種間の結婚を禁
  じる法律などを指している。



≪Ⅱ⑫≫
Applying these established tenets, the Court has long held the right to marry is protected by the Constitution.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court  held   [that] the right…Constitution
     the rightの前に接続詞のthatが省略されている。

 ・apply 他)~を適用する
  Applying~tenetsは、分詞構文。
   分詞構文の~ingには3つの要素がある:
    ① 主節と同じ主語(the Court)
    ② ~ingを適切な形(時制)に変えた動詞(applied)
    ③文脈に合う接続詞
   この文では、The Court applied these established tenet, andくらいの意味。
 ・established 形)確立された
 ・tenet名)教義、信条、主義
 ・the Court 合衆国最高裁
 ・held, holdの過去形 他)~と判示する
   has long held 現在完了継続「長い間~と判示してきた」
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権
 ・protected 形)保護されている
 ・Constitution 名)合衆国憲法

〈訳〉
これらの確立教義を適用して、合衆国最高裁は、結婚権が合衆国憲法によって保護されていると長い間判示してきた。
 ※「これらの確立教義」とは、これまで説明してきた解釈原理のことである。



≪Ⅱ⑬≫
In Loving v. Virginia (1967), which invalidated bans on interracial unions, a unanimous Court held marriage is "one of the vital personal rights essential to the orderly pursuit of happiness by free men."

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court  held   [that] marriage is…free men
     the rightの前に接続詞のthatが省略されている。

 ・Loving v. Virginia (1967). 合衆国最高裁が、白人と有色人種の間の結婚を禁止する
   ヴァージニア州法が修正14条に違反するとした判決。
 ・which~unions: Loving v. Virginiaを説明する関係代名詞。
 ・invalidate 他)~を無効とする
 ・ban 名)禁止
 ・interracial 形)異人種間の
 ・union 名)結合、合体、結びつき(結婚)
 ・unanimous 形)全員一致の ※合衆国最高裁の9人の裁判官全員が賛成した判決。
   a unanimous Court は、「全員一致の合衆国最高裁」→「合衆国最高裁は全員一
   致で~」
 ・held, holdの過去形 他)~と判示する
 ・marriage 名)結婚
 ・vital 名)生命維持に必要な、極めて重要な
 ・personal 形)個人的な
 ・right 名)権利
 ・essential to A 形)Aにとって不可欠な  ※直前のright を修飾。
   A=the orderly pursuit of happiness by free men
   rights←〔essential to the orderly pursuit of happiness by free men〕
 ・orderly 形)秩序だった
 ・pursuit 名)追及
 ・happiness 名)幸福

〈訳〉
1967年のLoving v. Virginia判決は、異人種間の結合に対する禁止を無効としたが、この判決において、合衆国最高裁は全員一致で、結婚が「自由な人間による幸福の秩序だった追及にとって不可欠なきわめて重要な個人的権利の1つ」であると判示した。



≪Ⅱ⑭≫
The Court reaffirmed that holding in Zablocki v. Redhail (1978), which held the right to marry was burdened by a law prohibiting fathers who were behind on child support from marrying.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court   reaffirmed   holding
 which節の中の文型:第3文型(S+V+O)
   which   held    [that] the right…from marrying
     the rightの前に接続詞のthatが省略されている。
 that 節の中は、第2文型(S+V+C):       
   right   was   burdened
   
 ・Court 合衆国最高裁
 ・reaffirm 他)~を再確認する
 ・holding 名)判示事項、判決
   that holding その判示事項=Loving v. Virginiaの判示事項
 ・Zablocki v. Redhail (1978) 別居している未成年者に扶養義務を負っている人の結
   婚に裁判所の許可を要求し、養育費の支払いが滞っている場合は許可されないと定
   めたウィスコンシン州法が修正14条に違反するとした判決。合衆国最高裁は、結
   婚権が「基本的権利(fundamental right)」であると判示した。
 ・held, holdの過去形 他)~と判示する
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権
 ・burden 他)(負担など)を負わせる  burdened 形)負担を負わされた
 ・prohibit A from~ing Aが~することを禁じる
   A=fathers who were behind on child support
    =prohibit とfrom に挟まれた部分
   prohibiting は、直前のlawを説明する形容詞的用法。
    law←〔prohibiting…marrying〕
 ・behind on~を滞納している
 ・child support 子供の養育費

〈訳〉
合衆国最高裁は、1978年のZablocki v. Redhail判決においてLoving判決の判示事項を再確認したが、その判決は、養育費を滞納している父親が結婚することを禁じている法律によって結婚権に重荷が課されていると判示した。



≪Ⅱ⑮≫
The Court again applied this principle in Turner v. Safley (1987), which held the right to marry was abridged by regulations limiting the privilege of prison inmates to marry.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   Court   applied   principle
 ・which節の中の文型:第3文型(S+V+O)
   which   held    [that] the right…from marrying
     the rightの前に接続詞のthatが省略されている。
 ・that 節の中は、第2文型(S+V+C):       
   right   was   abridged
   
 ・Court 合衆国最高裁
 ・again 副)再び
 ・apply 他)~を適用する
 ・principle 名)原理、原則
   this principle 「この原則」とは、すなわち、結婚が「自由な人間による幸福の秩
   序だった追及にとって不可欠であるきわめて重要な個人的権利の1つ」(Loving
   v .Virginia)であるという原則である。
 ・Turner v. Safley (1987)
    刑務所の被収容者は、刑務所長の許可がなれば結婚できず、やむにやまれぬ理
   由がなければ許可されないと定めるミズリー州の刑務所規則が、修正14条に違
   反する判決された事件。合衆国最高裁は、結婚権は「基本的権利(fundamental
    right)」であると判示した。
 ・abridge 他)1.(話など)を短くする、要約する、2.(権利など)制限する、縮
  減する
 ・regulation 名)規則
 ・limit 他)~を制限する
   limiting~は、regulation を説明する形容詞的用法
    regulations←〔limiting the privilege of prison inmates to marry〕
 ・privilege 名)特権、(憲法によって保障された)権利
 ・prison 名)刑務所
 ・inmate 名)(刑務所などの)被収容者
 ・to marry は、前のprivilege を修飾する形容詞的用法
   privilege to marry 結婚する特権

〈訳〉
合衆国最高裁は、1987年のTurner v. Safley 判決において再びこの原則を適用したが、この判決は、刑務所の被収容者の結婚する特権を制限している規則によって結婚権が侵害されていると判示した。



≪Ⅱ⑯≫
Over time and in other contexts, the Court has reiterated that the right to marry is fundamental under the Due Process Clause.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court  reiterated   that the right…Clause
    that 節の中は、第2文型(S+V+C):       
        right  is  fundamental
    
 ・over time 副)時が経つにつれて
 ・context 名)文脈、背景
 ・Court 名)合衆国最高裁
 ・reiterate 他)何度も繰り返し述べる
   has reiteratedは、継続を表す現在完了
 ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・Due Process Clause 名)デュー・プロセス条項

〈訳〉
長きにわたり、また他の文脈においても、合衆国最高裁は結婚権がデュー・プロセス条項のもとで基本的であると繰り返し述べてきた。



≪Ⅱ⑰≫
It cannot be denied that this Court's cases describing the right to marry presumed a relationship involving opposite-sex partners.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   It  be  denied
  It~that… の構文:
   ※英語はあくまで「それは~である。…ということは」と言っているのであるが、
    日本語として不自然であるので「…ということは~である。」と訳す。

   ・that節の中の文型:第3文型(S+V+O)
       Court   presumed  relationship
    
 ・deny 他)~を否定する
  cannot be denied (~は否定されえない→)「~を否定できない」
   ※日本語は主語を明示しなくてもよい。
 ・this Court’s 合衆国最高裁の→「当法廷の」
 ・case 名)事件、ケース、判例
 ・describe 他)~を描写する、説明する
   describingは、casesを説明する形容詞的用法。
    cases ←〔describing the right to marry〕
     marry の後にpresumed という動詞があるので、marryまで形容詞句である
     ことが分かる。
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権
 ・presume 他)~を想定(仮定)する
 ・relationship 名)
 ・involve 他)~を伴う
   involving は、relationshipを説明する形容詞的用法。
    relationship←〔involving opposite-sex partners〕
 ・opposite-sex (反対の性の→)異性の
 ・partner 名)パートナー

〈訳〉
結婚権を説明した当法廷の判例が異性のパートナーを伴う関係を想定していたことは、否定できない。



≪Ⅱ⑱≫
The Court, like many institutions, has made assumptions defined by the world and time of which it is a part.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court  made  assumption
    
 ・Court 名)合衆国最高裁
 ・like 前)~と同様に
 ・institution 名)1.機関、施設、2.制度
 ・assumption 名)想定、仮定 make assumptions 想定(仮定)する
   has made assumption は、現在完了の継続用法(以前からずっと~してきた)
 ・define 他)~を定義する  
   defined は、assumptions を説明する受身の意味の形容詞 
    「~によって定義される想定」
     assumptions ←〔defined by the world and time of which it is a part〕
      ※definedの右に目的語がなく、すぐbyがあるので分かる。
 ・world 名)世界
 ・time 名)時代
   world and time ←〔of which it is a part〕
   この関係代名詞節は、it is a part of the world and time という文がもとになっ
   ている。
    it = Court この文の唯一の単数名詞。合衆国最高裁自身も世界と時代の一部で
    あるという趣旨。
〈訳〉
合衆国最高裁は、他の多くの機関と同様に、合衆国最高裁もその一部である世界や時代によって定義される想定を行ってきた。



≪Ⅱ⑲≫
This was evident in Baker v. Nelson, a one-line summary decision issued in 1972, holding the exclusion of same-sex couples from marriage did not present a substantial federal question.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  This  was  evident
 
 ・This 「このこと」、つまり合衆国最高裁が世界や時代によって定義される想定を行
  ってきたこと。
 ・evident 形)明らかな
 ・Baker v. Nelson (1972) ミネソタ州最高裁は、結婚に関する州法を解釈して結婚
   は異性間に限られると判決したが、合衆国最高裁は、この判決が合衆国憲法に違反
   しないと判決した。
 ・one-line 1行の
 ・summary 形)略式の、要点のみの、サマリーの
 ・decision 名)判決、決定
 ・Baker v. Nelson, a one-line summary decision
   コンマの前後は同格である。「Baker v. Nelson、つまり1行のサマリー判決」
   サマリー判決とは、詳しい理由や意見を述べずに要約的に結果だけが書かれた短い
   判決。
 ・issue 他)1.(出版物を)発刊する、発行する、2.(判決など)を発する
   issued は、summary decision を説明する受身の意味の形容詞
    summary decision ←〔issued in 1972〕
    「1972年に出されたサマリー判決」
    ※issuedの右に目的語がなく、すぐinがあるので分かる。 
 ・hold 他)~と判示する
   holding~は、summary decisionを説明する形容詞的用法
    後が長いので “, which held~”となっている場合と同様に、「~だが、その判決
    は…と判示した」と訳す。
       holding 以下の文型:第3文型(S+V+O)
         exclusion  present  question
 
 ・exclusion 名)排除  後ろのfrom marriage とつながって「結婚からの排除」
 ・same-sex 形)同性の
 ・present 他)~を提示する
 ・substantial 形)実質的な
 ・federal 形)連邦の
 ・question 名)問題
   federal question 「連邦問題」:
     合衆国の憲法、法律、条約の解釈に関する問題。

〈訳〉
このことは、1972年に出された1行のサマリー判決であるBaker v. Nelsonにおいて明らかである。この判決は、同性カップルを結婚から排除することは、実質的な連邦問題を提起しないと判示した。
 ※原告の男性カップルは、合衆国最高裁での審理の前に結婚許可証を受けており、事件争
  訟性の要件を欠いていたので、「実質的な連邦問題を提起しない」と判断された。



≪Ⅱ⑳≫
Still, there are other, more instructive precedents.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)→(V+S)
   are  precedents
    There is (are)~の構文は「~がある」という意味であるが、文型としては
  「S+be動詞」の第1文型であり、there が文頭にあるので倒置されている
  (V+S→S+V)。
    be動詞には「~がある」という意味がある。例)The book on the desk.
 
 ・still 副)1.さらに、2.それにもかかわらず
 ・instructive 形)教育的な、ためになる、有益な
 ・precedent 名)前例、先例、判決例

〈訳〉
それでも他により参考になる先例がある。



≪Ⅱ㉑≫
This Court's cases have expressed constitutional principles of broader reach.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court   expressed   principles
    
 ・Court 名)合衆国最高裁  This Court 「当法廷」
 ・case 名)事件、ケース、判例
 ・express 他)~を表現する、表明する
   have expressed 現在完了の継続用法 「以前からずっと」
 ・constitutional 形)憲法の
 ・principle 名)原理、原則
 ・of 前)~の性質をもった
   ※of+抽象名詞=形容詞 例)of importance = important
 ・broad 形)広い、広範囲の  broader (比較級)より広い
 ・reach 名)1.届く距離、2.適用範囲
 
〈訳〉
当法廷の判例は、より広い適用範囲をもった憲法原理を表明してきた。



≪Ⅱ㉒≫
In defining the right to marry these cases have identified essential attributes of that right based in history, tradition, and other constitutional liberties inherent in this intimate bond.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   cases   identified   attributes
    
 ・in~ing ~するさいに、~するにあたり
 ・define 他)~を定義する
 ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権
 ・case 名)事件、ケース、判例
 ・identify 他)~を特定する
    have identified 現在完了の継続用法 「以前からずっと」
 ・essential 形)不可欠な、本質的な
 ・attribute 名)特質、属性
 ・based in 副)~にもとづいて
   identified ←〔based in~tradition〕
    based から文末までが全体としてidentifiedを修飾している。「~にもとづいて
    特定してきた」
 ・history 名)歴史
 ・tradition 名)伝統
 ・constitutional 形)憲法の
 ・liberty 名)自由
 ・inherent in 形)~に固有の、生来の
   history, tradition~liberties←〔inherent in this intimate bond〕
    内容から判断して inherent in~は、history, traditionも修飾している。
 ・intimate 形)親密な
 ・bond 名)結びつき、絆
   intimate bond とは「結婚」のことである。

〈訳〉
結婚権を定義するにあたり、これらの判例は、この親密な絆に固有の歴史、伝統、その他の憲法上の自由にもとづいて、この権利の本質的な属性を特定してきた。



≪Ⅱ㉓≫
And in assessing whether the force and rationale of its cases apply to same-sex couples, the Court must respect the basic reasons why the right to marry has been long protected.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court   respect   reasons
    
 ・in~ing ~するさいに、~するにあたり
 ・assess 他)~を評価する、査定する
 ・whether S+V… 接)~かどうか
  assessing の目的語は、〔whether the force~couples〕
   「~かどうかを評価する」
  whether の内部の文型は第1文型(S+V) force and rationale  apply
 ・force 名)力、説得力
 ・rationale 名)論理的根拠、理論的解釈
 ・its cases 「その判例」は、合衆国最高裁の判例のこと。
 ・apply to 自)~に当てはまる、妥当する
 ・same-sex couple 名)同性カップル
 ・the Court 名)合衆国最高裁
 ・respect 他)~を尊敬する、尊重する
 ・basic 形)基本的な
 ・reason 名)理由
 ・why 理由を説明する関係副詞
  reasons←〔why the right to marry has been long protected〕
   「〔why~protected〕する理由」
   whyの内部の文型は、第2文型right  been  protected
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権
 ・protect 他)~を保護する
   has been long protected 現在完了の継続用法「長い間保護されてきた」


〈訳〉
そして自らの判例の説得力と論理的根拠が同性カップルにも当てはまるかどうかを評価するにあたり、合衆国最高裁は結婚権が長い間保護されてきた基礎的理由を尊重しなければならない。



≪Ⅱ㉔≫
This analysis compels the conclusion that same-sex couples may exercise the right to marry.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  analysis  compels  conclusion
     conclusion の後のthat節の内部の文型も第3文型(S+V+O)
      couples  exercise  right
   このように第3文型の完全な文章を伴っているのでこのthat節は、関係代名詞節
   ではなくconclusionの内容を説明する同格節である。「~という結論」
 ・analysis 名)分析
 ・compel 他)強いる
 ・conclusion 名)結論
 ・same-sex couple 名)同性カップル
 ・may 助)~してもよい、しうる
 ・exercise 他)(権利など)を行使する
 ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権


〈訳〉
 (この分析は、同性カップルが結婚権を行使しうるという結論を強いる→)
この分析によれば、同性カップルが結婚権を行使しうると結論せざるをえない。





Ⅲ.結婚権が基本的権利である理由―同性カップルにも当てはまる4つ  の理由
1.結婚に関する個人的選択の権利は、個人の自律に内在する

≪Ⅲ-1①≫
The four principles and traditions to be discussed demonstrate that the reasons marriage is fundamental under the Constitution apply with equal force to same-sex couples.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   principles and traditions  demonstrate  that the reason…couples
          
    conclusion の後のthat節の内部の文型は第1文型(S+V)
        reasons  apply
    reason の後に関係副詞のwhyが省略されている。
       reason←〔why marriage is fundamental under the Constitution〕
        このように分析しないと、is とapplyという2つの動詞があることを
        説明できない。

 ・principle 名)原理、原則 
 ・tradition 名)伝統
 ・discuss 他)~について議論する
   to be discussed は、前のprinciples and traditionsを説明する形容詞的用法
   「後の文章で議論される原則と伝統」という意味。To不定詞は本来的に未来を
   含意する。
 ・demonstrate 他)~を実証する
 ・reason 名)理由
 ・marriage 名)結婚
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・under 前)~のもとで
 ・the Constitution 名)合衆国憲法
 ・apply to~に当てはまる、妥当する
   apply とtoの間にwith equal forceが入っている
 ・equal 形)同等の ※ここでは「平等な」という意味では使われていない。
 ・force 名)力、説得力
 
〈訳〉
以下で議論する4つの原則と伝統は、結婚が合衆国憲法のもとで基本的である理由同等の説得力をもって同性カップルにも当てはまることを実証している。

 


≪Ⅲ-1②≫
A first premise of the Court's relevant precedents is that the right to personal choice regarding marriage is inherent in the concept of individual autonomy.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   premise  is   that the right…autonomy
    
     that節の内部の文型も第2文型(S+V+C)
        right   is   inherent
    ※ right~の句が長いが、主語の範囲は動詞(is)の前まで。

 ・premise 名)前提(条件)、根拠
 ・the Court 名)合衆国最高裁
 ・relevant 形)関連する
 ・precedent 名)先例
 ・right to 名)~に対する権利   ※ right to attorney 弁護人依頼権
 ・personal 形)個人の、個人的な
 ・choice 名)選択
 ・regarding 前)~に関する
 ・inherent in 形)~に内在する、~に固有の
 ・concept 名)概念
 ・individual 形)個人の
 ・autonomy 名)自治、自律

〈訳〉
合衆国最高裁の関連先例の1つ目の前提は、結婚に関する個人的選択の権利が個人の自律の概念に内在しているということである。



≪Ⅲ-1③
This abiding connection between marriage and liberty is why Loving invalidated interracial marriage bans under the Due Process Clause.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   connection  is  why Loving…Clause
    
     why節の内部の文型は第3文型(S+V+O)
        Loving   invalidated   bans

 ・abiding 形)不変の、持続的な
 ・connection 名) 連結、結合、結びつき
 ・between A and B  AとBの間の 
 ・marriage 名)結婚
 ・why = reason why… …する理由
 ・liberty 名)自由
 ・Loving Loving v. Virginia (1967)判決。
 ・invalidate 他)~を無効にする
 ・interracial 形)異人種間の
 ・ban 名)禁止
 ・under 前)~のもとで
 ・Due Process Clause デュー・プロセス条項

〈訳〉
結婚と自由の間のこの不変の結びつきは、Loving判決が異人種間の結婚の禁止をデュー・プロセス条項のもとで無効にした理由である。



≪Ⅲ-1④≫
Like choices concerning contraception, family relationships, procreation, and childrearing, all of which are protected by the Constitution, decisions concerning marriage are among the most intimate that an individual can make.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   decisions  are  among the most intimate
    
 ・like 前)~と同様に
 ・choice 名)選択
 ・concerning 前)~に関する
 ・contraception 名)避妊
  ※最高裁は、Griswold v. Connecticut(1965) において、避妊具の使用を禁じたコネ
   ティカット州がプライバシーの権利を侵害し違憲であると判決した。
 ・family relationship 名)家族関係
 ・procreation 名)生殖
 ・childrearing 名)子育て
 ・all of which~  contraception…childbearingを先行詞とする関係代名詞節
  ここでは、後ろから前に訳さず、「そのすべては~であるが」と訳す。
 ・protected 形)保護されている
 ・the Constitution 名)合衆国憲法
 ・decision 名)決定
 ・marriage 名)結婚
 ・among 前)~うちの1つ
 ・most 副)もっとも~ (最上級)
 ・intimate 形)親密な
   the most intimateの後にdecisions が省略されている。
    後のthat~は、関係代名詞節
      the most intimate decisions←〔that an individual can make〕
       ※ makeの後に目的語がないから分かる。make decisions 決定する
 ・individual 名)個人
 ・make an decision 決定する

〈訳〉
避妊、家族関係、生殖、出産に関する選択―それらすべては合衆国憲法によって保護されているがーと同様に、結婚に関する決定は、個人が行うことができるもっとも親密な決定のうちの1つである。



≪Ⅲ-1⑤≫
Indeed, the Court has noted it would be contradictory "to recognize a right of privacy with respect to other matters of family life and not with respect to the decision to enter the relationship that is the foundation of the family in our society."


● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court  noted   [that] it would…society
   that節内部の文型:第2文型(S+V+C)     
      it  be  contradictory
       it~to の構文:to recognize~が内容のある主語
 ・indeed 副)実に、実際、本当に、確かに
 ・the Court 名)合衆国最高裁
 ・note 他)~を特に言及する、指摘する
 ・would 助)仮定法過去 to recognize~に仮定の意味が含まれている。
   「するとすれば、それは~であろう」
 ・contradictory 形)矛盾した
 ・recognize 他)~を認める、承認する
 ・right of privacy 名)プライバシーの権利
 ・with respect to ~に関して、
 ・matter 名)事柄、事項、問題
 ・family life 名)家族生活
 ・decision 名)決定
 ・enter 他)(場所、関係など)に入る
 ・relationship 名)関係
 ・that  relationshipを説明する関係代名詞  
  relationship ←〔that is the foundation…society〕
   ※直後に動詞isがあるから分かる。
 ・foundation 名)基礎
 ・society 名)社会

〈訳〉
実際、合衆国最高裁は、「家族生活の他の事柄に関してプライバシーの権利を認めて、われわれの社会において家族の基礎となっている関係に入る決定に関してはそれを認めないとすれば」矛盾することになるであろうと指摘した。
 ※「 」は、Zablocki v. Redhail (1978)判決(養育費を滞納している父親の結婚を
  禁じる州法は違憲)からの引用である。「家族の基礎となっている関係」とは結婚
  による関係のことである。



≪Ⅲ-1⑥≫
Choices about marriage shape an individual's destiny.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   Choice  shape  destiny    
 ・choice 名)選択
 ・shape 他)~を形作る
 ・individual’s 個人の
 ・destiny 名)運命

〈訳〉
結婚に関する選択は、個人の運命を形作る。



≪Ⅲ-1⑦≫
As the Supreme Judicial Court of Massachusetts has explained, because "it fulfils yearnings for security, safe haven, and connection that express our common humanity, civil marriage is an esteemed institution, and the decision whether and whom to marry is among life's momentous acts of self-definition."

● 基本構造: 
  because節の中は第3文型(S+V+O)
    it  fulfills  yearnings
   because節の後ろ(主節)は2つの第2文型(S+V+C)
     marriage  is  institution/decision  is  among~
    
 ・As 接)~しているように
 ・the Supreme Judicial Court of Massachusetts マサチューセッツ州最高裁
 ・explain 他)~を説明する
 ・it =後の(主節の) civil marriageを先に受けている。
 ・fulfil 他)~を果たす、満たす
 ・yearning 名)憧れ、切望
   yearning for A Aの切望
   意味の上からA=security, safe haven, and connection
 ・security 名)安全
 ・safe haven 名)安全な非難所、安全でいられる場所
 ・connection 名)連結、結合、結びつき
   後ろのthatは、yearningsを説明する関係代名詞
   yearnings←〔that express our common humanity〕
    ※先行詞がconnection のみでなく、yearningsであることは、thatの後の動詞
     expressに三単現のSがないことと、意味から分かる。that節がhumanityま
     でであることは、その後にS+V(civil marriage is~があるから分かる。
 ・express 他)~を表現する、表明する
 ・common 形)共通の
 ・humanity 名)人間性
 ・civil marriage 名)民事婚  
   行政機関に届け出て承認を受けることにより婚姻関係が成立する形の婚姻のこと。
   主に「宗教婚」などの語と対比される。
 ・esteem 他)~を尊重する、重んずる  esteemed 形)重んじられた
 ・institute 名)制度
 ・decision whether and whom to marry
   =decision [of] whether [to marry] and whom to marry
   「結婚するかどうか、誰と結婚するかに関する決定」
 ・among =one of ~のうちの1つ
 ・life’s 人生の
 ・momentous 形)重大な、ゆゆしい
 ・act 名)行為
 ・self-definition 名)自己定義  
   ※自分とはどんな人間であるかの定義のことであり、その定義は結婚によって変化
    する。define oneself という表現には「自分の本質を明らかにする」という意
    味がある。

〈訳〉
マサチューセッツ州最高裁が説明しているように、「われわれの共通の人間性を表す、安心や安全な居場所、そして結びつきへの切望を満たすものであるため、市民婚は重んじられている制度であり、結婚するかどうか、誰と結婚するかという決定は、人生の重大な自己定義行為の1つである」。
 ※「  」は、マサチューセッツ州憲法が同性婚の権利を保障している判示したマサチュー
  セッツ州最高裁の判決、Goodridge v. Department of Public Health(2003)からの引用
  である。



≪Ⅲ-1⑧≫
The nature of marriage is that, through its enduring bond, two persons together can find other freedoms, such as expression, intimacy, and spirituality.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  nature  is  that, through…spirituality
    that節内部の文型は第3文型:(S+V+O)
      persons  find  freedoms
    
 ・nature 名)本質、特質
 ・marriage 名)結婚
 ・through 前)~通じて
 ・enduring 形)永続的な
 ・bond 名)結びつき、絆
 ・freedom 名)自由
 ・such as (例えば)~などのような
 ・expression 名)表現
 ・intimacy 名)親密さ、交わり
 ・spirituality 名)霊性、高い精神性

〈訳〉
結婚の本質とは、その永続的な絆によって、2人が一緒にいることで、表現、親密さ、精神性といった他の自由を見出すことができるということである。
 ※「表現」とは何か分かりにくいが、Lawrence判決において合衆国最高裁は、性的関心が
  他の人との親密な行為においてあからさまに表現される場合、その行為は、より永続的
  な個人的絆の1つの要因でしかありえない」と述べている。下の≪Ⅲ-3⑨≫参照。



≪Ⅲ-1⑨
This is true for all persons, whatever their sexual orientation.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   This  is  true
    
 ・This このこと=前文の内容
 ・true for 形)~に当てはまる
 ・whatever S+be Sがどんなものであっても
   whatever their sexual orientation (is)
 ・sexual orientation 名)性的志向
〈訳〉
このことは、その性的志向がどのようなものであれ、すべての人に当てはまる。



≪Ⅲ-1⑩≫
There is dignity in the bond between two men or two women who seek to marry and in their autonomy to make such profound choices.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)→(V+S)
   is  dignity
  There is (are)~の構文は「~がある」という意味であるが、文型としては
 「S+be動詞」の第1文型であり、there が文頭にあるので倒置されている
 (V+S→S+V)。be動詞そのものに「~がある」という意味がある。
  例) The book is on the desk.

 ・dignity 名)尊厳
 ・bond 名)結びつき、絆
 ・between ~の間の
 ・two men or two women ←〔who seek to marry〕
 ・seek to ~しようとする
 ・ in their autonomy~ 前のdignity につながる。
    There is dignity ①in the bond~ and ②in their autonomy~
 ・autonomy 名)自律
 ・to make はautonomyを説明する受身の意味の形容詞
   autonomy←〔to make such profound choices〕 
 ・make~choices 選択する
 ・profound 形)深い、深遠な

〈訳〉
結婚しようとする2人の男性や2人の女性の間の絆の中に、そしてそのような奥深い選択を行う彼らの自律の中に尊厳がある。





Ⅲ.結婚権が基本的権利である理由―同性カップルにも当てはまる4つ  の理由
2.結婚は、2人の結びつきを支え、その重要性は他に例を見ない

≪Ⅲ-2①≫
A second principle in this Court's jurisprudence is that the right to marry is fundamental because it supports a two-person union unlike any other in its importance to the committed individuals.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
    principle  is  that the right…individual
      that節の内部の文型も第2文型(S+V+C)
        right  is  fundamental

      because節の内部の文型は第3文型(S+V+O)
          it  supports  union
    ※意味からbecauseはfundamentalの理由となっているので、because節は
    that節の内に入る。

  ・principle 名)原理、原則
  ・this Court 名)「当法廷」、合衆国最高裁
  ・jurisprudence 名)1.法学、2.判例法
  ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権
  ・fundamental 形)基本的な、根本的な
  ・support 他)~を支える
  ・union 名)結合、合体、結びつき(結婚)
  ・unlike 前)~とは異なって    unlike any other (right)
    ※ supportを修正する副詞として機能している。他の権利ではできないような
      形で2人の結びつきを支えるという趣旨。   
  ・importance 名)重要性
  ・committed 形)約束しあった、契りあった
  ・individual名)個人

〈訳〉
当法廷の判例法の2つ目の原理は、結婚権が、契りあった個人に対する重要性の点において他では見られないような形で2人の結合を支えるので基本的であるということである。



≪Ⅲ-2②
This point was central to Griswold v. Connecticut, which held the Constitution protects the right of married couples to use contraception.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   point   was   central
    
   which節の内部の文型は第3文型(S+V+O)
      which  held  (that) the Constitution…contraception

     (that)節の内部の文型も第3文型(S+V+O)
         Constitution  protects  right

 ・point 名)点、論点  This point 「この点」=前文の内容
 ・central 形)中心的な
 ・Griswold v. Connecticut 避妊具の使用を禁じたコネティカット州法が、合衆国憲
  法が保障する夫婦のプライバシーの権利を侵害し違憲であると判決した1965年の
  合衆国最高裁判決。
 ・held hold「判示する」の過去形
 ・the Constitution 名)合衆国憲法
 ・protect 他)~を保護する 
    ※この判決が書かれた時も(そして現在も)「保護している」ので時制の一致に
     よって過去形(protected)にする必要はない。
 ・right 名)権利
 ・married 形)結婚した
 ・couple 名)カップル
 ・contraception 名)避妊(具)
   to use~は、rightを説明する形容詞的用法
    right←〔to use contraception〕 避妊具を使う権利

〈訳〉
この点は、合衆国憲法が結婚しているカップルの避妊具を使う権利を保護していると判示したGriswold v. Connecticut判決にとって中心的なものであった。



≪Ⅲ-2③≫
And in Turner, the Court again acknowledged the intimate association protected by this right, holding prisoners could not be denied the right to marry because their committed relationships satisfied the basic reasons why marriage is a fundamental right.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   Court   acknowledged   association
    because節の中も第3文型(S+V+O)
      relationship   satisfied   reason
    
 ・Turner 1987年のTurner v. Safley 判決。刑務所の被収容者は、刑務所長の許可
   がなれば結婚できず、やむにやまれぬ理由がなければ許可されないと定めるミズリ
   ー州の刑務所規則が、修正14条に違反する判決された事件。合衆国最高裁は、結
   婚権は「基本的権利(fundamental right)」であると判示した。
 ・the Court 名)合衆国最高裁
 ・acknowledge 他)~を承認する
 ・intimate 形)親密な
 ・association 名)付き合い、交際、交わり
 ・protected 形)保護された   
   associationを説明している。association←〔protected by this right〕
     ※protectedの右に目的語がないから分かる。
 ・this right 名)この権利=結婚権
 ・holding~
     分詞構文:~ingには3つの要素がある:
    ① 主節と同じ主語(the Court)
    ② ~ingを適切な形(時制)に変えた動詞(held)
    ③文脈に合う接続詞
     ここでは、and held ~くらいが文脈に合っていると思う。
 ・deny A+B  A(人)にB(物)を与えない、拒む
    受動態:A is denied B 「AはBを与えられない、拒まれる」
 ・the right to marry 結婚する権利、結婚権
 ・committed 形)約束しあった、契りあった
 ・relationship 名)関係
 ・satisfy 他)(条件など)を満たす
 ・basic 形)理由
 ・why~  reasonを説明する関係副詞節
  reason ←〔why marriage is a fundamental right〕
 ・marriage 名)結婚
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・right 名)権利

〈訳〉
さらに、Turner判決において合衆国最高裁は再びこの権利によって保護されている親密な交わりを承認して、刑務所の被収容者の契り合った関係は結婚が基本的権利である基礎的理由を満たしているから彼らはこの権利を否定されえないと判示した。



≪Ⅲ-2④≫
The right to marry thus dignifies couples who "wish to define themselves by their commitment to each other."

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   right   dignifies   couples
    who節内も第3文型(S+V+O)
       who   wish   to…other
          
 ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権
 ・thus 副)このように
 ・dignify 他)~に尊厳を与える
 ・couple 名)カップル
 ・wish to ~することを望む
 ・define 他)~を定義する 
    define oneself 自らを定義する(自分の本質を明らかにする)。
 ・commitment 名)深い関与、約束、コミットメント

〈訳〉
このように結婚権は、「互いのコミットメントによって自らを定義したい」と望むカップルに威厳を与える。
 ※「 」は、United States v. Windsor (2013)からの引用。連邦法上の「結婚」を異性間の結
  婚に限定している「結婚防衛法(DOMA)」が修正5条のデュー・プロセス条項に違反す
  るとした最高裁判決。原告は、ニューヨーク州法によって合法的に結婚したが、配偶者に先立
  たれてその遺産相続について生存配偶者の資格で連邦租税法上の免除を申請したが、「結婚防衛
  法」によって生存配偶者と認められずに免除されなかった。



≪Ⅲ-2⑤≫
Marriage responds to the universal fear that a lonely person might call out only to find no one there.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)
   Marriage   responds
    that節内も第1文型(S+V)
       person  call
  ※第1文型の完全な文が続いているのでthatは、関係代名詞ではなく同格の接続詞
        fear = 〔that a lonely…there〕 〔 〕という恐れ

 ・marriage 名)結婚
 ・respond to ~に応える、反応する
 ・universal 形)普遍的な、万人の
 ・fear 名)恐れ
 ・lonely 形)孤独な、寂しい
 ・person 名)人
 ・might 助)~するかもしれない(may よりも可能性が低い)
 ・call out 大声で叫ぶ
 ・only to~ 「結果」を意味するto不定詞 
   「…したが、結果として~しただけであった」
 ・find 他)~を見つける、見出す

〈訳〉
孤独な人が叫んでもそこには誰もいないかもしれないという万人の恐れに結婚は応じる。



≪Ⅲ-2⑥≫
It offers the hope of companionship and understanding and assurance that while both still live there will be someone to care for the other.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   It   offers   hope ~and assurance
    that節内は第1文型(S+V)
       be   someone
          
 ※第1文型の完全な文が続いているのでthatは、関係代名詞では同格の接続詞
  assurance = 〔that while…other〕 〔 〕という保証
   that節内にさらにwhile節が挿入されている。
     内容から判断してthat節はassurance のみの説明となっている。

 ・It = marriage 結婚
 ・offer 他)~を提供する
 ・hope 名)希望
  ※ hope of は、① companionship ② understanding の2つのみと繋がってお
   り、assuranceは、hope と並列してoffer の目的語になっている。3つすべてが
   hope of と繋がっているとすると3つのものの並列であり、“companionship,
   understanding, and assurance” となっているはずである。 offer hope and
   assurance
・companionship 名)交際、交友、伴侶でいること
・understanding 名)理解
・assurance 名)保証、請け合い、確信
・while 接)~する間
・both 代)両者
・there will be 「~がいるであろう」
  there is~の未来形
・care for ~の世話をする、~のことを心配する
   to care for ~は、someoneを説明する不定詞の形容詞的用法
    someone←〔to care for the other〕
  
〈訳〉
結婚は、伴侶でいることと理解への希望、そして両者がまだ生きている間は誰かがいて他方の世話をしてくれるだろうという保証を提供する。



≪Ⅲ-2⑦≫
As this Court held in Lawrence, same-sex couples have the same right as opposite-sex couples to enjoy intimate association.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   couples   have   right
    
 ・As 接)~するように
 ・Court 名)合衆国最高裁  this Court 当法廷
 ・held hold 「判示する」の過去形
 ・Lawrence  2003年のLawrence v. Texas 判決: 合衆国最高裁が同性愛者による
    肛門性交、オーラルセックスを禁じたテキサス州法がデュー・プロセス条項に
    違反するとした判決。

 ・same-sex 形)同性の
 ・couple 名)カップル
 ・the same A as B Bと同じA
 ・opposite-sex 形)異性の
 ・enjoy 他)(権利など)を享受する
    to enjoy~はrightを修飾する形容詞的用法
      right←〔to enjoy intimate association〕
 ・intimate 形)親密な
 ・association 名)付き合い、交際、交わり

〈訳〉
Lawrence判決において当法廷が判示したように、同性カップルは異性カップルと同じ親密な交わりを享受する権利をもつ。



≪Ⅲ-2⑧
Lawrence invalidated laws that made same-sex intimacy a criminal act.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   Lawrence   invalidated   laws
      
 ・Lawrence 2003年のLawrence v. Texas 判決: 合衆国最高裁が同性愛者による
    肛門性 交、オーラルセックスを禁じたテキサス州法がデュー・プロセス条項に
    違反するとし た判決。
 ・invalidate 他)~を無効にする
 ・that~は、laws を説明する関係代名詞
     laws ←〔that made   same-sex intimacy    criminal act〕
             (v)       (o)         (c)
    ※that の後にすぐ動詞(made)があるから分かる。
    第5文型:make O+C OをC(の状態)にする
 ・same-sex 形)同性の
 ・intimacy 名)親密さ、交わり
 ・criminal 形)犯罪の、刑法上の
 ・act 名)行為

〈訳〉
Lawrence判決は、同性の親密な行いを犯罪行為とする法律を無効とした。



≪Ⅲ-2⑨≫
And it acknowledged that "[w]hen sexuality finds overt expression in intimate conduct with another person, the conduct can be but one element in a personal bond that is more enduring."

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   it  acknowledged  that “when…enduring.”
    that節内は、第2文型(S+VC)
       conduct  be  element
        that節内のwhen節は、第3文型(S+V+O)
           sexuality  finds  expression
          
 ・it = Lawrence 判決
 ・acknowledge 他)~を承認する
 ・sexuality 名)性的関心、性欲
 ・find 他)~を見出す
 ・overt 形)あからさまな、公然の
 ・expression 名)表現  find expression 「表現を見出す」=「表現される」
 ・intimate 形)親密な
 ・conduct 名)行為
 ・but =only
 ・element 名)要素
 ・personal 形)個人的な
 ・bond 名)絆
 ・that~は、bondを説明する関係代名詞節
   bond←〔that is more enduring〕 ※thatのすぐ後にisがあるから分かる。
 ・enduring 形)永続的な

〈訳〉
またLawrence判決は、「性的関心が他の人との親密な行為においてあからさまに表現される場合、その行為は、より永続的な個人的絆の1つの要因でしかありえない」ことを承認した。



≪Ⅲ-2⑩≫
But while Lawrence confirmed a dimension of freedom that allows individuals to engage in intimate association without criminal liability, it does not follow that freedom stops there.

● 基本構造: 
   while節内は、第3文型(S+V+O)
      Lawrence   confirmed   dimension
        
        while節の後(主節)は第1文型(S+V)
           it  follow
                  
 ・while 接)~であるが、~とはいえ
 ・Lawrence  Lawrence v. Texas (2003): 合衆国最高裁が同性愛者による肛門性
    交、オーラルセックスを禁じたテキサス州法がデュー・プロセス条項に違反す
    るとした判決。
 ・confirm 他)~を確認する
 ・dimension 名)側面、様相、特質 
 ・freedom 名)自由
 ・that allows~は、freedomを説明する関係代名詞節
   freedom←〔that allows…liability〕 ※thatの後にすぐ動詞(allows)があるか
   ら分かる。
 ・allow A to Aが~することを許す
 ・individual 名)個人
 ・engage in ~に従事する
 ・intimate 形)親密な
 ・association 名)付き合い、交際、交わり
 ・criminal 形)犯罪の、刑法上の
 ・liability 名)責任
 ・it does not follow that…  it~thatの構文
    (結果)として…ということにはならない。

〈訳〉
しかし、Lawrence 判決は、刑事責任を負うことなく親密な交わりを行うことを個人に許すという自由の一面を確認したが、自由はそこで留まるということにはならない。
 


≪Ⅲ-2⑪≫
Outlaw to outcast may be a step forward, but it does not achieve the full promise of liberty.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   Outlaw  be  step
     butの後は第3文型(S+V+O)
        it  achieve  promise

 ・outlaw 他)~を追放する、違法とする
 ・outcast 名)追放された人
   Outlaw to outcast は、文法的には説明できないが、文脈からすると「同性カップ
   ルを追放することを違法とすること」とは、Lawrence 判決が同性間の性的行為の
   禁止を違憲としたこと。
 ・step 名)歩み、ステップ
 ・forward 形)副)前方へ  a step forward 一歩前進
 ・achieve 他)~を達成する
 ・full 形)完全な
 ・promise 名)約束
 ・liberty 名)自由

〈訳〉
追放を違法とすることは、一歩前進かも知れないが、自由の約束を完全に達成しているわけではない。

 



Ⅲ.結婚権が基本的権利である理由―同性カップルにも当てはまる4つ  の理由
3.結婚は、子供と家族を守り、子育て、生殖、教育から意味を引き出す


≪Ⅲ-3①
A third basis for protecting the right to marry is that it safeguards children and families and thus draws meaning from related rights of childrearing, procreation, and education.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   basis  is  that it…education
     that内は、第3文型(S+V+O)
       it  safeguards  children and family
    and (it)  draws  meaning
  
  ・basis 名)基礎
  ・protect 他)~を保護する
  ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権
  ・it = right to marry
  ・safeguard 他)~を守る、保護する
  ・thus 副)結果として、したがって、それゆえに
  ・draw 他)~を引き出す
  ・meaning 名)意味
  ・related 形)関係する
  ・right 名)権利
  ・childrearing 名)子育て
  ・procreation 名)生殖
  ・education 名)教育

〈訳〉
結婚権を保護する3つ目の基礎は、それが子供と家族を守り、それゆえ子育て、生殖、教育という関係する権利から意味を引き出すということである。



≪Ⅲ-3②
The Court has recognized these connections by describing the varied rights as a unified whole: "[T]he right to 'marry, establish a home and bring up children' is a central part of the liberty protected by the Due Process Clause."

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   Court   recognized   connections
      引用(“[T]he right…Clause.")内は、第2文型(S+VC)
         right   is    part
        
  ・Court 合衆国最高裁
  ・recognize 他)~を認める、認識する
    has recognizedは、現在完了の継続用法「以前からずっと」
  ・connection 名)連結、結合、結びつき
   these connections 「これらの結びつき」とは、前文の結婚権と、子育て、生殖、
   教育の権利との結びつき。
  ・describe A as B  AがBであると言い表す、描写する
  ・varied 形)様々な
  ・right 名)権利
    to marry…childrenは、rightを説明する形容詞的用法:
     2つ目のestablish前がコンマで3つ目のbringの前がand になっていることか
    ら分かる(3つのものの並列:A, B and C)
    right←〔to marry, establish a home and bring up children〕
  ・unify 他)~を統一(統合)する  unified 形)統一(統合)された
  ・whole 名)全体
  ・establish 他)~を設立する、~を打ち立てる
  ・bring up 他)~を育てる
  ・central 形)中心的な
  ・liberty 名)自由
  ・protected 形)保護された
   liberty←〔protected by the Due Process Clause〕

 〈訳〉
合衆国最高裁は、様々な権利を統合された全体と言い表すことによってこれらの結びつきを認めてきた。「『結婚し、家庭を築き、子供を育てる』権利は、デュー・プロセス条項によって保護された自由の中心的な部分である。」
 ※「  」内はZablocki v. Redhail (1978)からの引用。 別居している未成年者に扶養義
  務を負っている人の結婚に裁判所の許可を要求し、養育費の支払いが滞っている場合は
  許可されないと定めたウィスコンシン州法が修正14条に違反するとした合衆国最高裁
  判決。合衆国最高裁は、結婚権が「基本的権利(fundamental right)」であると判示
  した。



≪Ⅲ-3③≫
By giving recognition and legal structure to their parents' relationship, marriage allows children "to understand the integrity and closeness of their own family and its concord with other families in their community and in their daily lives."

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  marriage   allows   children
    
 ・recognition 名)認識
  give recognition to ~を認識する
 ・legal 形)法の、合法的な
 ・structure 名)構造
 ・their =children’s
 ・relationship 名)関係
 ・marriage 名)結婚
 ・allow A to Aに~することを許す、~させておく
 ・understand 他)~を理解する
  内容のまとまりから考えて understandの目的語は
   ① the integrity and closeness of their own family
   ②its concord with other families in their community and in their daily lives
 ・integrity 名)高潔、誠実、正直
 ・closeness 名)近さ、親密さ
 ・concord 名)一致、調和、協調
 ・daily life 名)日常生活

〈訳〉
両親の関係を認識してそれに法的構造を与えることによって、子供たちは、結婚から「彼ら自身の家族の高潔と親密さと、彼らのコミュニティと日常生活における他の家族との調和を理解」するようになる。
  ※「 」は、United States v. Windsor (2013)からの引用。連邦法上の「結婚」を異性間の結婚に限定している「結婚防衛法(DOMA)」が修正5条のデュー・プロセス条項に違反するとした合衆国最高裁判決。原告は、ニューヨーク州法によって合法的に結婚したが、配偶者に先立たれてその遺産相続について生存配偶者の資格で連邦租税法上の免除を申請したが、「結婚防衛法」によって生存配偶者と認められずに免除されなかった。



≪Ⅲ-3④≫
Marriage also affords the permanency and stability important to children's best interests.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   marriage   affords   permanency and stability
    
 ・marriage 名)結婚
 ・afford 他)~を与える
 ・permanency 名)永続性、不変性
 ・stability 名)安定性
 ・important 形)重要な
    permanency and stability←〔important to children's best interests〕
 ・best interest 名)最善の利益、ベストインタレスト

〈訳〉
結婚はまた子供の最善の利益にとって重要な永続性と安定性を与える。



≪Ⅲ-3⑤≫
As all parties agree, many same-sex couples provide loving and nurturing homes to their children, whether biological or adopted.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   couples   provide   homes
    
 ・as 接)~するとおり、するように
 ・party 名)(この訴訟の)当事者
 ・agree 自)同意する
 ・same-sex couple 名)同性カップル
 ・proved A to B BにAを与える
 ・loving 形)愛情あふれる
 ・nurture 他)~養育する、大事に育てる
 ・whether A or B AであろうとBであろうと
    whether they (=children) are biological or adopted
 ・biological 形)生物学上の、血のつながった
 ・adopted 形)養子とされた

〈訳〉
すべての当事者が同意しているように、多くの同性カップルは、実の子供にせよ養子にせよ、自分達の子供に愛情あふれる養育家庭を提供する。



≪Ⅲ-3⑥≫
And hundreds of thousands of children are presently being raised by such couples.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  children   are   being raised
     受動態の現在進行形「育てられている」
     進行形は①be動詞を加える、②もとの動詞を-ing形にする
      children are raised という受動態の文を現在進行形にすると、
       ①children are are raised →②children are being raised.

・hundreds of thousands 形)何十万もの
・presently 副)現在、目下
・raise 他)~を育てる
・couple 名)カップル  such couples 「そのようなカップル」=同性カップル

〈訳〉
そして何十万もの子供が現在そのようなカップルによって育てられている。



≪Ⅲ-3⑦≫
Most States have allowed gays and lesbians to adopt, either as individuals or as couples, and many adopted and foster children have same-sex parents.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   States  allowed  gays and lesbians
   children  have  parents
    
 ・most 形)ほとんどの
 ・State 名)(アメリカの)州
 ・allow A to Aに~することを許す
   have allowed は、現在完了の継続用法「以前からずっと」
 ・gay 名)ゲイ
 ・lesbian 名)レズビアン
 ・either A or B AかBかいずれか
 ・as ~として
 ・individual 名)個人
 ・couple 名)カップル
 ・adopt 他)~を養子をとる  adopted child名)(養子にとられた子供)養子
 ・foster child 名)里子
   ※adopted and fosterは、many~childrenに挟まれているのでchildren を
    説明する形容詞であることが分かる。
 ・same-sex 形)同性の

〈訳〉
ほとんどの州は、個人として、またはカップルとして、ゲイとレズビアンに養子をとることを許しており、多くの養子や里子は同性の親をもっている。



≪Ⅲ-3⑧
This provides powerful confirmation from the law itself that gays and lesbians can create loving, supportive families.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  This  provides  confirmation
    that節の中も第3文型
      gays and lesbians  create  families
    ※第3文型の完全な文が続くのでこのthat節は、confirmationの内容を説明する
     同格節である。「~という確認」

 ・This =前文の内容
 ・provide 他)~を提供する
 ・powerful 形)強力な
 ・confirmation 名)確認
 ・gay 名)ゲイ
 ・lesbian 名)レズビアン
 ・create 他)~を創りだす
 ・loving 形)愛情あふれる
 ・supportive 形)支えとなる、支援してくれる

〈訳〉
このことは、ゲイとレズビアンが愛情あふれ支えとなる家族を創ることができるという法そのものからの強力な確認となっている。



≪Ⅲ-3⑨≫
Excluding same-sex couples from marriage thus conflicts with a central premise of the right to marry.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)
  Excluding same-sex couples  conflicts
    主語の内部で Excluding  couples というV+Oの関係がある。
             v      o

 ・exclude 他)~を排除する、除外する
 ・same-sex 形)同性の
 ・couple 名)カップル
 ・marriage 名)結婚
 ・thus 副)このように、したがって
 ・conflict with ~と相容れない、矛盾する
 ・central 形)中心的な
 ・premise 名)前提(条件)、根拠
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権

〈訳〉
したがって結婚から同性カップルを排除することは、結婚権の中心的な前提と相容れない。



≪Ⅲ-3⑩≫
Without the recognition, stability, and predictability marriage offers, their children suffer the stigma of knowing their families are somehow lesser.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  children  suffer  stigma
  ・marriage offers の前に関係代名詞のthat が省略されている:
    the recognition~predictability←〔that marriage offers〕  
   ※offersの右側に目的語がないこと、offersまでがWithoutの前置詞句であること
    か分かる。
  ・knowing の後に接続詞のthatが省略されている。
    knowing 〔that their families are somehow lesser〕
     ※stigma で第3文型が完成しており、areが文の骨組みの動詞でないことな
      どから分かる。

 ・recognition 名)認識、承認、認知
 ・stability 名)安定性
 ・predictability 名)予見可能性
 ・marriage 名)結婚
 ・offer 他)~を提供する
 ・suffer 他)~に苦しむ、~に悩まされる
 ・stigma 名)(社会的)烙印、汚名
 ・somehow 副)どういうわけか、どことなく
 ・lesser 形)より劣った、より小さい

〈訳〉
結婚が提供する認知、安定性、予見可能性がなければ、彼らの子供は自分の家族がどこか劣っていると知るという烙印に苦しむ。



≪Ⅲ-3⑪≫
They also suffer the significant material costs of being raised by unmarried parents, relegated through no fault of their own to a more difficult and uncertain family life.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  They  suffer  cost
    
 ・suffer 他)~を被る、~に苦しむ
 ・significant 形)重要な、意義深い、大きな影響を与える
 ・material 形)物質的な、実質的な
 ・cost 名)コスト、犠牲
  cost of 〔being raised~, relegated~life〕 〔 〕という犠牲
 ・raise 他)~を育てる
 ・unmarried 形)未婚の
 ・relegate 他)~を追いやる
 ・through 前)(原因)~によって、~のために
 ・fault 名)過失、落ち度
 ・uncertain 形)不確かな

〈訳〉
彼らはまた未婚の親に育てられ、自分自身には何ら落ち度はないのにより困難で不確かな家族生活に追いやられるという多大な実質的犠牲を強いられる。



≪Ⅲ-3⑫≫
The marriage laws at issue here thus harm and humiliate the children of same-sex couples.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   laws  harm and humiliate  children
    
 ・marriage laws 名)結婚に関する法  結婚を同性カップルに限定している諸法
 ・issue 名)争点  at issue 争点となっている
  ・thus 副)このように、したがって
 ・harm 他)~を害する、傷つける
 ・humiliate 他)~に屈辱を与える
 ・same-sex couple 名)同性カップル

〈訳〉
したがって、ここで争点となっている結婚に関する法は、同性カップルの子供を傷つけ屈辱を与える。



≪Ⅲ-3⑬≫
That is not to say the right to marry is less meaningful for those who do not or cannot have children.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  That   is   to say [that]…children
    say の後に接続詞のthatが省略されている。
     the right以下も第2文型(S+V+C)
      right   is  meaningful
          
 ・That is not to say… (前文を受けて)だからと言って…というわけではない。
 ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権
 ・less 形)より~でない
 ・meaningful 形)意味のある、有意義な
 ・those who… =those people who…  …する人々
    those←〔who do not…children〕 

〈訳〉
だからと言って、子供をもたない、あるいはもてない人々にとって結婚権は、その意義が劣るというわけではない。



≪Ⅲ-3⑭≫
An ability, desire, or promise to procreate is not and has not been a prerequisite for a valid marriage in any State.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  ability, desire, or promise   is not and has not been  prerequisite
           
 ・ability 名)能力
 ・desire 名)欲望、願望
 ・promise 名)見込み
 ・procreate 自)子供をもうける
 ・has not been は、現在完了の経験「これまで~であったことはない」
 ・prerequisite 名)必要条件、前提条件
 ・valid 形)有効な
 ・State 名)州

〈訳〉
子供をもうける能力、願望、見込みは、どの州においても有効な結婚の必要条件ではないし、そうであったこともない。



≪Ⅲ-3⑮≫
In light of precedent protecting the right of a married couple not to procreate, it cannot be said the Court or the States have conditioned the right to marry on the capacity or commitment to procreate.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  it   be  said[that]...
    said の後にit~thatの構文のthatが省略されている。
    the Court以下は第3文型(S+V+O)
     Court or Sate  conditioned   right
    
 ・in light of ~に照らして、~の観点から
 ・precedent 名)先例、判決
 ・protect 他)~を保護する
   protecting~procreate は、precedentを説明する形容詞的用法
   precedent←〔protecting~procreate〕
 ・right 名)権利
 ・married couple 名)結婚したカップル、夫婦
 ・procreate 自)子供をもうける
  not to procreateは、rightを説明する形容詞的用法
   right ←〔not to procreate〕 子供をもうけない権利
    ※直前のmarried couple を説明していると解釈すると、
      「子供をもうけない夫婦」の権利となり、どのような権利が不明確になる。
  ・it cannot be said (that)…  it~thatの構文:
  (…と言われることはできない→)…と言うことはできない。
  ・the Court 名)合衆国最高裁
  ・State 名)州
  ・condition A on B BをAの条件とする
    have conditionedは、現在完了の継続用法「以前からずっと」
  ・right to marry 結婚する権利、結婚権
  ・capacity 名)能力
  ・commitment 名)深い関与、約束、コミットメント
  ・to procreate は、capacity or commitmentを説明する形容詞的用法
    capacity or commitment←〔to procreate〕

〈訳〉
夫婦の子供をもうけない権利を保護する先例に照らして、合衆国最高裁や州が子供をもうける能力やコミットメントを結婚権の条件としてきたとは言えない。



≪Ⅲ-3⑯≫
The constitutional marriage right has many aspects, of which childbearing is only one.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  right   has   aspects
    
 ・constitutional 形)憲法に関する、合憲の
 ・marriage right 名)結婚の権利、結婚権
 ・aspect 名)側面、様相
 ・of which は、aspectsを説明する関係代名詞節  
    childbearing is only one 〔of the aspects〕がもとになっている。
 ・childbearing 名)出産、分娩

〈訳〉
 憲法上の結婚権には、多くの側面があり、出産はその1つにすぎない。





Ⅲ.結婚権が基本的権利である理由―同性カップルにも当てはまる4つ
  の理由
結婚は社会の要石である

≪Ⅲ-4①≫
Fourth and finally, this Court's cases and the Nation's traditions make clear that marriage is a keystone of our social order.

● 基本構造: 
 第5文型(S+V+O+C)
  目的語がthat 節であり、長いので後回しになっている(S, V, C, O)
   this ~tradidions  make   clear  〔that~order〕
      s         v     c      o
 ・Forth 副)4番目に
 ・finally副)最後に
 ・this Court名)当裁判所(=合衆国最高裁)
 ・cases 名)事件、ケース、判例
 ・the Nation’s tradition 名)国の伝統
 ・make ~ clear ~を明瞭にする。~の部分=that marriage…order
 ・marriage 名)結婚
 ・key stone名)要石、根本原理
 ・social order 名)社会秩序

〈訳〉
4つ目として、そして最後に、当法廷の判例とこの国の伝統は、結婚がわれわれの社会秩序の要石であることを明瞭にしている。



≪Ⅲ-4②≫
Alexis de Tocqueville recognized this truth on his travels through the United States almost two centuries ago:

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Tocqueville  recognized  truth
    
 ・Alexis de Tocqueville アレクシ・ド・トクヴィル 
  フランス人の政治思想家・法律家・政治家(1805~1859)。
  アメリカ合衆国を旅して『アメリカのデモクラシー』という古典的大著を著わした。
 ・recognize 他)~を認識する
 ・on his travel 彼の旅の途中で、彼が旅をしたさいに
 ・century 名)世紀

〈訳〉
アレクシ・ド・トクヴィルは、ほぼ2世紀前に合衆国を旅したさいにこの真実を認識した。

※この文の後に『アメリカのデモクラシー』からの次の引用がある。
 「世界の中でアメリカほど結婚の絆が尊重されている国まずない。・・・アメリカ人が
  公の生活の喧騒から家族の懐に退く時、彼は家族の中に秩序と平和のイメージを見出
  す。」("There is certainly no country in the world where the tie of
  marriagesso much respected as in America . . . [W]hen the American retires
  from theturmoil of public life to the bosom of his family, he finds in it the
  image of orderand of peace"



≪Ⅲ-4③
Marriage remains a building block of our national community.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   Marriage   remains   block
    
 ・marriage 名)結婚
 ・remain ~ ~の(状態の)ままである
 ・building block 名)建築用ブロック、基礎的要素
 ・national community 名)国民共同体

〈訳〉
結婚は、現在でもわれわれの国民共同体を築いている基礎的要素である。



≪Ⅲ-4④≫
For that reason, just as a couple vows to support each other, so does society pledge to support the couple, offering symbolic recognition and material benefits to protect and nourish the union.

● 基本構造:
 just as S+V…, so does S2+V2… ちょうどSがVするのと同様に、S2はV2する。

 ・For that reason その理由で
 ・couple 名)カップル
 ・vow to do ~することを誓う
 ・support 他)~を支える
 ・each other お互い(に、を)
 ・society 名)社会
 ・pledge to do ~することを誓約する
 ・offer 他)~を提供する ~ing になっているのは分詞構文 =and offers
 ・symbolic 形)象徴的な
 ・recognition 名)承認、認知
 ・material 形)物質的な、実質的な、具体的な
 ・benefit 名)利益、恩恵、(社会保障の)給付、手当
 ・protect 他)~を保護する ※目的語は次のnourish と共通=union
   不定詞の副詞的用法「保護するために」
 ・nourish 名)~を養う
 ・union 名)結合、合体、結びつき(結婚)

 〈訳〉
その理由で、ちょうどカップルが互いを支え合うと誓う様に、社会はカップルを支えると誓約し、その結合を保護し養うために象徴的な認知と具体的な恩恵を提供する。



≪Ⅲ-4⑤≫
Indeed, while the States are in general free to vary the benefits they confer on all married couples, they have throughout our history made marriage the basis for an expanding list of governmental rights, benefits, and responsibilities.

● 基本構造:
 第5文型(S+V+O+C)
  they   made   marriage   basis
    
 ・indeed 副)実際
 ・while 接)~とは言え、~であるのだが、
 ・State 名)州 
 ・in general 副)一般に、概して
 ・are free to do 自由に~できる
 ・vary他)~を変更する
 ・benefit 名)利益、恩恵、(社会保障の)給付、手当
 ・confer A on B BにAを与える(授与する)
   ※ benefitsとthey confer の間に関係代名詞が省略されている
    benefits←〔which they confer on~〕confer の後に目的語がないので分かる。
 ・have~made 継続用法の現在完了:「以前からずっと」という含意
 ・throughout our history われわれの歴史を通じて
 ・made marriage the basis for (第5文型) 結婚を~のための基礎としてきた
 ・expand 他)広げる、拡大(拡張)する
    expanding list 現在分詞(形容詞)の ing 「拡大してきたリスト」
 ・governmental 形)政府の、政治の
 ・right 名)権利
 ・responsibility 名)責任

〈訳〉
実際、一般的に州はすべての夫婦に与える恩恵を自由に変更できるのであるが、われわれの歴史を通じて、州は結婚を政府の権利、給付、責任の拡大リストの基礎としてきた。



≪Ⅲ-4⑥≫
These aspects of marital status include: taxation; inheritance and property rights; rules of intestate succession; spousal privilege in the law of evidence; hospital access; medical decision making authority; adoption rights; the rights and benefits of survivors; birth and death certificates; professional ethics rules; campaign finance restrictions; workers' compensation benefits; health insurance; and child custody, support, and visitation rules.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   aspects   include   taxation;…rules
    ※ セミコロンでつながっている文末までの単語がすべて目的語である。

 ・aspect 名)側面、様相
 ・marital 形)結婚の、夫婦(間)の
 ・status 名)(社会的)地位、身分
   marital status は、結婚しているか否かということ
   aspects は、「結婚しているか否かよって扱いが異なる側面」という意味。
 ・taxation 名)課税、徴税
 ・inheritance 名)相続
 ・property 名)財産
 ・right 名)権利
   inheritance [rights] and property rights 「相続権と財産権」
 ・intestate 形)無遺言の
 ・succession 名)相続
    intestate succession 名)無遺言相続
 ・spousal 形)配偶者に関する
 ・privilege 名)特権  spousal privilege 名)配偶者特権
 ・evidence 名)証拠  the law of evidence 証拠法
  spousal privilege in the law of evidence 「証拠法における配偶者特権」とは、
    裁判において配偶者に不利益になる証言を拒否できる特権のこと。
 ・hospital access 名)病院へのアクセス
 ・medical 形)医療の
 ・decision 名)決定  make a decision 決定する
 ・authority 名)権限
    medical decision making authority 「医療上の意思決定権限」とは、例えば配
    偶者の手術の同意を意識のない配偶者に代わって行う権限のこと。
 ・adoption 名)養子縁組  adoption rights 「養子縁組をする権利」
    夫婦として公的に認められていない同性カップルが養子を採る場合、カップルの
    子供とすることが認められず、いずれか一方の養子としなければならない。
 ・benefit 名)利益、恩恵、(社会保障の)給付、手当
 ・survivor 名)生存者、遺族 ここでは、夫(妻)に先立たれた妻(夫)
 ・certificate 名)証明書 birth and death certificates 出生証明書と死亡証明書
 ・professional 形)職業上の
 ・ethics 名)倫理
 ・campaign 名)選挙運動
 ・finance 名)財政、融資
 ・restriction 名)制限 campaign finance restrictions 「選挙資金の制限」
 ・compensation 補償  workers' compensation benefits「労働災害補償給付」
 ・health insurance 「健康保険」
 ・child custody 「子供の監護」
 ・visitation 名)(病院や施設の)面会、見舞い

 〈訳〉
結婚しているか否かよって変わる側面には次のものが含まれる。無遺言相続の規則、証拠法における配偶者特権、病院へのアクセス、医療上の意思決定権限、養子縁組の権利、生存者の権利と利益、出生証明書と死亡証明書、職業倫理規則、選挙資金の制限、労働災害補償給付、健康保険、子供の監護、サポート、面会の規則。



Ⅲ-4⑦≫
The States have contributed to the fundamental character of the marriage right by placing that institution at the center of so many facets of the legal and social order.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   States   contributed
   
 ・States 名)(複数の)州
 ・contribute to ~に貢献する
  have contributed 継続用法の現在完了形 「以前からずっと」という含意。
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・character 名)性格、性質
 ・marriage right 名)結婚権
 ・by -ing ~することによって
 ・place 他)~を置く、配置する
 ・institution 名)制度 that institution 「その制度」とは、結婚のこと。
 ・at the center of ~の中心に
 ・facet 名)(宝石などの)小面、(物事の)側面
 ・legal 形)法的な
 ・social 形)社会の
 ・order 名)秩序

〈訳〉
州は、結婚という制度を法的、社会的秩序の非常に多くの側面の中心に据えることによって、結婚権の基本的な性格に貢献してきた。



≪Ⅲ-4⑧≫
There is no difference between same- and opposite-sex couples with respect to this principle.
 
● 基本構造:
 第1文型(S+V)→(V+S)
   is   no difference
  There is~「~がある」の構文:There が文頭にあるために倒置されている。
   be動詞に「ある、いる」の意味がある。例)The book is on the desk.

 ・difference 名)違い、相違
 ・between A and B  AとBの間
 ・same- and opposite-sex couples =same- [sex couples] and opposite-sex
   couples 同性カップルと異性カップル
 ・with respect to ~に関して
 ・principle 名)原理、原則

〈訳〉
この原則に関して同性カップルと異性カップルの間に違いはない。



≪Ⅲ-4⑨≫
Yet by virtue of their exclusion from that institution, same-sex couples are denied the constellation of benefits that the States have linked to marriage. 

● 基本構造:
   couple are denied~「カップルは~を拒否されている」
 ・yet 副)しかし、依然として
 ・by virtue of ~によって、~のせいで
 ・their 「彼ら」は、後の「同性カップル」を先に受けている。
 ・exclusion 名)排除
 ・that institution 「その制度」=結婚
 ・same-sex couples 同性カップル
 ・ deny A+B 「AにBを拒否する、与えない」
   受動態になって A is denied B
   「AはBを拒否されている、与えられていない。」
 ・constellation 名)星座、一群  a [the] constellation of  一群の~
 ・benefit 名)利益、恩恵、(社会保障の)給付、手当
 ・that 関係代名詞:
   benefits ←〔that the States have linked to marriage〕
     ※linkedの後ろに目的語がないので分かる。
 ・States 名)州
 ・link A to B  AをBに結び付ける。
   Aにあたる語(benefit)が関係代名詞の前にある。
 ・have linked 継続用法の現在完了:「以前からずっと」という含意

〈訳〉
しかし、同性カップルは、結婚という制度から排除されているため、州が結婚に結びつけてきた一群の恩恵を与えられていない。



≪Ⅲ-4⑩≫
This harm results in more than just material burdens.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   harm   results
     
 ・harm 名)(精神的、肉体的、物質的な)害、弊害
 ・result in ~という結果になる、~をもたらす
 ・more than ~以上のもの moreは名詞として使われている。
 ・material 形)物質的な
 ・burden 名) (義務、責任、心の)重荷、負担

〈訳〉
この弊害は、単に物質的な負担をもたらすだけではない。



≪Ⅲ-4⑪≫
Same-sex couples are consigned to an instability many opposite-sex couples would deem intolerable in their own lives.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  couples   are   consigned
    
 ・same-sex couples 同性カップル
 ・consign A to B AをBに託す、ゆだねる、引き渡す
    be consigned to (受動態)~にゆだねられる
 ・instability 名)不安定 an が付いているので具体的な含意「不安定な状況」
 ・opposite-sex couples 異性カップル
  many の前に関係代名詞が省略されている。名詞が連続していること
 (instability-couples)と後の動詞deemの後ろに目的語がないことから分かる。
   instability←〔many opposite-sex couples would deem intolerable〕
 ・would 仮定法「異性カップルなら~するであろう」
 ・deem A+B  AをBとみなす、思う  目的語Aにあたるinstabilityは前にある
 ・intolerable 形)耐え難い

〈訳〉
同性カップルは、多くの異性カップルが自身の生活では耐えられないと思うような不安定な状況に身をゆだねられている。



≪Ⅲ-4⑫≫
As the State itself makes marriage all the more precious by the significance it attaches to it, exclusion from that status has the effect of teaching that gays and lesbians are unequal in important respects.

● 基本構造: 
 ・As~:第5文型(S+V+O+C)
   State   make   marriage   precious
 ・exclusion~:第3文型(S+V+O)
   exclusion   has   effect
    
 ・As 接)~するので、
 ・State 名)州
 ・make A+B AをB(の状態)にする
 ・all the more 副)よりいっそう 
   theには「その分だけ」という含意がある。後のby~の分だけ。
 ・precious 形)貴重な
 ・significance 名)重要性、意義
 ・attach A to B   AにBを付ける
    itの前に関係代名詞が省略されている。名詞が連続していること
   (significance-it)と後の動詞attachの後ろに目的語がないことから分かる。
     significance ←〔it attaches to it〕
 ・exclusion 名)排除
 ・status 名)(社会的)地位、身分
   that status =結婚しているという地位
 ・effect 名)効果
 ・teaching 〔that gays and lesbians are unequal in important respects.〕
   (v)         (o)
 ・unequal 形)不平等な
 ・respect 名)点  in important respects 重要な点において

〈訳〉
州が結婚に付与している重要性によって、州自体が結婚をそれだけ貴重なものにしているので、その地位からの排除は、ゲイやレズビアンが重要な点で不平等であると悟らせる効果がある。



≪Ⅲ-4⑬≫
It demeans gays and lesbians for the State to lock them out of a central institution of the Nation's society.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   it   demeans    gays and lesbians
  it~for A to do… の構文「Aが…することは~である。」
   英語はあくまでも「それは~である。Aが…することは」と言っているが、日本
   語として不自然なので「それは」とは訳さない。itは形式的な主語であると説明
   されている。
 ・demean 他)~貶める、品位を落とす
 ・lock A out of B  AをBから締め出す
 ・central 形)中心的な
 ・institution 名)制度 central institution 「中心的制度」とは結婚のことである。
 ・Nation’s 形)国家の、国民の
 
〈訳〉
州がゲイやレズビアンを国民社会の中心的制度から締め出すことは、彼らを貶める。



≪Ⅲ-4⑭≫
Same-sex couples, too, may aspire to the transcendent purposes of marriage and seek fulfillment in its highest meaning.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   couples   aspire
 第3文型(S+V+O)
   and(couples)  seek   fulfillment
 
 ・may 助)~してもよい、~しうる
 ・aspire to ~を切望する
 ・transcendent 形)卓越的した、超越的な
 ・purpose 名)目的
 ・seek 他)~を求める
 ・fulfillment 名)実現、達成、成就

〈訳〉
同性カップルもまた、結婚の超越的な目的を切望し、その最高の意味での実現を求めうる。



≪Ⅲ-4⑮≫
The limitation of marriage to opposite-sex couples may long have seemed natural and just, but its inconsistency with the central meaning of the fundamental right to marry is now manifest.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
   limitation  seemed  natural and just
 第2文型(S+V+C)
   but  inconsistency  is  manifest
   
 ・limitation of A to B AをBに制限すること
 ・marriage 名)結婚
 ・opposite-sex couple 名)異性カップル
 ・long 副)長い間
 ・seem 自)~ように見える、思われる
 ・natural 形)自然な
 ・just 形)正当な、公正な
 ・inconsistency 名)一貫性の欠如、矛盾
 ・central 形)中心的な
 ・meaning 名)意味
 ・fundamental right 名)基本的権利
 ・manifest 形)明白な

〈訳〉
結婚を異性カップルに限定することは、長い間、自然で正当なことのように思われてきたかもしれないが、結婚する基本的権利の中心的意味との矛盾は、今や明白である。



≪Ⅲ-4⑯≫
With that knowledge must come the recognition that laws excluding same-sex couples from the marriage right impose stigma and injury of the kind prohibited by our basic charter.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   come   recognition
    With~が強調のために文頭にあるので倒置されている。
 ・that節の中:第3文型(S+V+O)
    laws   impose   stigma and injury
   このthat 節は、recognition の内容を説明する同格説である。「~という認識」

 ・With that knowledge 「その知識とともに」 前文の内容を受けている。
 ・come 自)生じる
 ・recognition 名)認識
   recognition =〔that laws~charter〕 同格節 〔  〕という認識
    that 以下が第3文型の完全な文になっているので関係代名詞節ではない
    ことが分かる。
   ※関係代名詞節の場合:
    the cake ←〔that her mother baked〕「彼女の母が焼いたケーキ」
     baked の目的語が右側にない。
 ・exclude ~を排除する  excluding~は形容詞としてlawsを説明している。
   laws←〔excluding same-sex couples from~〕
     同性カップルを~から排除している法律
 ・marriage right 結婚の権利、結婚権
 ・impose 他)~を負わせる
 ・stigma 名)汚名、屈辱
 ・injury 名)傷、傷害、損害
 ・A of the kind~ ~の種類のA
 ・prohibit 他)~を禁止する
  prohibited はkind を説明する受動態の形容詞として使われている。
   kind←〔prohibited by~〕~によって禁止されている種類
      ※prohibitedの後ろに目的語がないから分かる。
 ・basic 形)基本的な
 ・charter 名)憲章  
   our basic charter 「われわれの基本憲章」とは、合衆国憲法のことである。

〈訳〉
その知識とともに、同性カップルを結婚権から排除している法律がわれわれの基本憲章によって禁じられている類いの汚名と傷害を負わせることを認識しなければならない。


≪Ⅲ-4⑰≫
Objecting that this does not reflect an appropriate framing of the issue, the respondents refer to Washington v. Glucksberg, which called for a "careful description" of fundamental rights.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   respondents  refer
  Objecting that の中は、第3文型(S+V+O)
    this reflect  framing

 ・object that… …と述べて反対する
  Objecting~ は分詞構文
   分詞構文の~ingには3つの要素がある:
    ① 主節と同じ主語(respondents)
    ② ~ingを適切な形(時制)に変えた動詞(objected)
    ③文脈に合う接続詞
  この文では、~framing of the issue,and the respondents~くらいの意味。
 ・this このこと=前文の内容:同性カップルを結婚権から排除している法律が汚名
   と傷害を負わせること。
 ・reflect 他)~を反映する
 ・appropriate 形)適切な
 ・framing 名)枠組み
 ・issue 名)争点、問題点
 ・respondent 名)被上訴人=結婚を異性カップルに限定している州法の執行責任者
 ・refer to ~に言及する
 ・Washington v. Glucksberg 合衆国最高裁が、医師の補助によって自殺する権利
  は、デュープロセス条項によって認められる基本的権利ではないと判示した
  1997年の判決。
 ・call for ~を求める
 ・careful 形)注意深い、記述
 ・description 名)記述、描写
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・right 名)権利

 〈訳〉
これは問題の適切な枠組みを反映していないと反論し、被上訴人らは、基本的権利の「慎重な記述」を求めたWashington v. Glucksberg判決に言及する。



≪Ⅲ-4⑱≫
They assert the petitioners do not seek to exercise the right to marry but rather a new and nonexistent "right to same-sex marriage."

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  They   assert   [that] the petitioners~marriage”
   assert の後に接続詞のthatが省略されている。
    that 節の中も第3文型(S+V+O)
     petitioners  seek  to exercise…
 ・They=respondents 被上訴人=結婚を異性カップルに限定している州法の執行責
                 任者
 ・assert 他)~を主張する
 ・petitioner 名)上訴人=同性婚の権利を主張している当事者
 ・not A but B AではなくB
    A=the right to marry
   B=right to same-sex marriage
 ・seek to do ~することも求める、~しようとする
 ・exercise 他)~(権利など)を行使する
    目的語はthe right to marry とright to same-sex marriage
 ・right to marry 名)結婚権
 ・rather 副)むしろ
 ・nonexistent 形)存在しない
 ・right to same-sex marriage 同性婚の権利

 〈訳〉
彼らは、上訴人が結婚する権利ではなく、存在しない新たな 「同性婚の権利」を行使することを求めていると主張する。



≪Ⅲ-4⑲≫
Glucksberg did insist that liberty under the Due Process Clause must be defined in a most circumscribed manner, with central reference to specific historical practices.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  Glucksberg   insist   that liberty…practices
   that 節の中は第2文型(S+V+C)
      liberty  be  defined 

 ・Glucksberg Washington v. Glucksberg判決:合衆国最高裁が、医師の補助によっ  て自殺する権利は、デュープロセス条項によって認められる基本的権利ではないと
  判示した1997年の判決。
 ・insist 他)~を主張する
 ・liberty 名)自由
 ・Due Process Clause 合衆国憲法修正14条のデュー・プロセス条項
 ・must 助)~しなければならない
 ・define 他)~を定義する   be defined (受動態)定義される
 ・most 副)もっとも
 ・circumscribe 他)~の周りに境界線を描く、~を限定する
   circumscribed 形)限定された
 ・manner 名)方法、仕方、態度
 ・with 前)~とともに
 ・central 形)中心的
 ・reference to ~への参照
 ・specific 形)特定の
 ・historical 形)歴史的な
 ・practice 名)慣行

 〈訳〉
Glucksberg判決は、デュー・プロセス条項の自由は、特定の歴史的慣行を参照することを中心にして、最も限定された方法で定義されなければならないと主張した。



≪Ⅲ-4⑳≫
Yet while that approach may have been appropriate for the asserted right there involved (physician-assisted suicide), it is inconsistent with the approach this Court has used in discussing other fundamental rights, including marriage and intimacy.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
    it  is  inconsistent
   while の節内も第2文型(S+V+C)
     approach  been  appropriate

 ・Yet 接)しかしそれでも
 ・while 接)~するとは言え、一方~であるが、他方…
 ・approach 名)アプローチ、手法 
    that approach そのアプローチ=前文の限定的アプローチ
 ・may 助)かもしれない  may have been ~であったかもしれない
 ・appropriate 形)適切な
 ・asserted 形)主張された
 ・right 名)権利
 ・there 副)そこで=Glucksberg判決で
 ・involve 他)~を伴う  
   involved 伴われている  right を説明する形容詞
    right ←〔there involved〕 そこに伴われている権利
 ・ physician 名)内科医
 ・assist 他)~を助ける、援助する  assisted 形)助けられた・
 ・suicide 名)自殺
   physician-assisted suicide 医師の幇助によってなされる自殺
 ・inconsistent with~  ~と矛盾する、一貫しない
 ・approach 名)アプローチ、手法
 ・approach の後に関係代名詞が省略されている。
    approach←〔 [which] this Court has used…〕
   ※approach とthis というふつう繋がらない2語が連続していることと、
    used の後に目的語がないことから分かる
 ・this Court 「当法廷」=合衆国最高裁
 ・has used (以前から)用いてきた
 ・in~ing ~するさいに
 ・discuss 他)~ついて議論する
 ・fundamental 形)根本的な
 ・right 名)権利
 ・including 前)~を含めて
 ・marriage 名)結婚
 ・intimacy 名)親密さ、親密な行為

〈訳〉
しかし、このアプローチはそこで主張された権利(医師の幇助による自殺)には適切であったかもしれないが、結婚や親密さを含む他の基本的権利を論じる際に当法廷が用いてきたアプローチとは矛盾する。



≪Ⅲ-4㉑≫
Loving did not ask about a "right to interracial marriage"; Turner did not ask about a "right of inmates to marry"; and Zablocki did not ask about a "right of fathers with unpaid child support duties to marry."

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
  Loving/Turner/Zablocki  ask

 ・Loving 1967年のLoving v. Virginia判決:合衆国最高裁は、白人と有色人と
  の間の結婚を禁じるヴァージニア州法が修正14条に違反すると判決した。
 ・ask about ~について問う
 ・right to~ ~を得る権利、~に対する権利
 ・interracial marriage 名)異人種婚
 ・Turner 1987年のTurner v. Safley 判決。刑務所の被収容者は、刑務所長の許
   可がなれば結婚できず、やむにやまれぬ理由がなければ許可されないと定める
   ミズリー州の刑務所規則が、修正14条に違反する判決された事件。合衆国最高
   裁は、結婚権は「基本的権利(fundamental right)」であると判示した。
 ・right 名)権利
 ・inmate 名)(刑務所などの)被収容者、受刑者、囚人
 ・marry 自)結婚する   right to marry 結婚する権利、結婚権
 ・with ~をかかえている
 ・unpaid 形)未払いの
 ・child support 名)子供の養育
 ・duty 名)義務、税、(公的に支払い義務のある)費用、child support duty 養育費

 〈訳〉
Loving 判決は、「異人種間の結婚の権利」を問うものではなかったのであり、Turner判決は、「被収容者の結婚の権利」を問うものではなかったのであり、また、Zablocki判決は、「養育費未払いの父親の結婚の権利」を問うものではなかった。



≪Ⅲ-4㉒≫
Rather, each case inquired about the right to marry in its comprehensive sense, asking if there was a sufficient justification for excluding the relevant class from the right.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   case   inquired

 ・rather 副)むしろ
 ・each 形)各々の
 ・case 名)ケース、事件  ここでは前文の3つの判決
 ・inquire 自)尋ねる、問う
 ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権
 ・comprehensive 形)包括的な
 ・sense 名)意味
 ・asking~は分詞構文
   分詞構文の~ingには3つの要素がある:
    ① 主節と同じ主語(case)
    ② ~ingを適切な形(時制)に変えた動詞(asked)
    ③文脈に合う接続詞
   この文では、~comprehensive sense,andaskedくらいの意味。
 ・if 接)~かどうか=whether
 ・there was ~があった
 ・sufficient 形)十分な
 ・justification 名)正当化(理由)
 ・exclude 他)~を排除する
 ・relevant 形)関連する
 ・class 名)部類、種類、階級、身分
 ・right 名)権利  the right =right to marry

 〈訳〉
むしろ各ケースは、包括的な意味での結婚権について問い、関連する身分をその権利から排除する十分な正当化理由があるかどうかを問うた。



≪Ⅲ-4㉓≫
That principle applies here.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
  principle  applies

 ・principle 名)原理、原則
   That principle 「その原則」=結婚を包括的意味でとらえるという前文の原則
 ・apply 自)当てはまる、妥当する
 ・here 副)ここで、本件で  この訴訟で審理されている問題

〈訳〉
その原則は、本件にも当てはまる。



≪Ⅲ-4㉔≫
If rights were defined by who exercised them in the past, then received practices could serve as their own continued justification and new groups could not invoke rights once denied.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
  practices  serve
   If 節の中は、第2文型(S+V+C)
     rights  were  defined

 ・right 名)権利
 ・were 仮定法過去:現実に反する仮定
 ・define 他)~を定義する  were defined (受動態)定義される
 ・who~ 誰が~するか(名詞節の疑問詞節)
 ・exercise 他)~(権利など)を行使する
 ・in the past 副)過去に
 ・received 形)一般に受け入れられた
 ・practice 名)慣行
 ・could 助)仮定法過去
 ・serve as ~として働く、機能する
 ・continued 形)継続的な
 ・justification 名)正当化(理由)
 ・group 名)グループ、集団
 ・invoke 他)~(権利など)を援用する
 ・once 副)一度、いったん
 ・deny 他)~を否定する、拒否する、与えない
     once denied は、rights を説明する受身の意味の形容詞
      rights←〔once denied〕 一度拒否された権利
         ※denied の後に目的語がないから分かる

〈訳〉
もし権利が、過去に誰が行使したかによって定義されるのとすれば、受け入れられた慣行は、それ自体で継続的な正当化理由として機能でき、新しいグループは一度否定された権利を援用することはできなくなる。



≪Ⅲ-4㉕≫
This Court has rejected that approach, both with respect to the right to marry and the rights of gays and lesbians.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  Court  rejected  approach

 ・This Court 当法廷=合衆国最高裁
 ・reject 他)~を拒否する  has rejected (以前から)拒否してきた
 ・approach 名)アプローチ
    that approach そのようなアプローチ=前文のアプローチ
 ・both A and B AとBの両方
    A=with respect to the right to marry
    B=(with respect to)the rights of gays and lesbians
 ・with respect to ~に関して
 ・right to marry 名)結婚権
 ・right 名)権利
 ・gay 名)ゲイ
 ・lesbian 名)レズビアン

〈訳〉
当法廷は、結婚する権利とゲイとレズビアンの権利の両方に関して、そのようなアプローチを拒否してきた。





Ⅳ.デュー・プロセス条項と平等保護条項の共働作用

≪Ⅳ①≫
The right of same-sex couples to marry that is part of the liberty promised by the Fourteenth Amendment is derived, too, from that Amendment's guarantee of the equal protection of the laws.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   right  is  derived
    ※ is part of のis は、thatの関係代名詞節内の動詞である。

 ・right~to marry 結婚する権利、結婚権
 ・same-sex couple 名)同性カップル
 ・that is~ は、rightを先行詞とする関係代名詞節。
   right ←〔that is part~Amendment〕
    ※thatの後にすぐ動詞(is)があるので分かる。
     後ろに骨組みの動詞と補語(is derived)があるのでAmendmentまでが
     関係代名詞節であることが分かる。
 ・part of ~の一部
 ・liberty 名)自由
 ・promised は、libertyを説明する受身の意味の形容詞「約束された」 
  liberty←〔promised by the Fourteenth Amendment〕
    ※promised の後ろに目的語がないので分かる。
 ・is derived from ~に由来する
 ・Fourteenth Amendment (合衆国憲法)修正14条
 ・that Amendment's その修正条項の=修正14条の
 ・guarantee 名)保障
 ・equal protection of the laws 法の平等保護

〈訳〉
修正14によって約束された自由の一部である同性カップルの結婚権は、同条の法の平等な保護の保障にも由来する。



≪Ⅳ②≫
The Due Process Clause and the Equal Protection Clause are connected in a profound way, though they set forth independent principles.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   Due~Pretection Clause  are  connected
     
 ・Due Process Clause 名)デュー・プロセス条項
 ・Equal Protection Clause 名)平等保護条項
 ・are connected 結びついている
 ・profound 形)深い、深遠な
 ・though 接)~だけれども、~にもかかわらず
 ・set forth ~を定める
 ・independent 形)独立した
 ・principle 名)原理、原則

〈訳〉
デュー・プロセス条項と平等保護条項は、独立した原則を定めてはいるが、深いところでつながっている。



≪Ⅳ③≫
Rights implicit in liberty and rights secured by equal protection may rest on different precepts and are not always coextensive, yet in some instances each may be instructive as to the meaning and reach of the other.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)
   Rights   rest 
 第2文型(S+V+C)
  (Rights)  are  extensive
 第2文型(S+V+C)
  (Rights)  be  instructive
   
 ・right 名)権利
 ・implicit 形)暗に示された、黙示された
 ・liberty 名)自由
   Rights ←〔implicit in liberty〕 自由に内在する権利
 ・secure 他)~を保証する、守る 
    secured は、rightsを説明する受身の意味の形容詞「保障された」
   rights←〔secured by equal protection〕「平等保護によって保障された権利」
     ※securedの後ろに目的語がないので分かる。
 ・rest on ~に基礎を置く、~に基づく
 ・precept 名)教訓、戒律、訓示
 ・not always 部分否定 必ずしも~ではない
 ・coextensive 形)同一の広がりをもつ
 ・yet 接)しかし
 ・instance 名)事例、場合
 ・instructive 形)教育的な、ためになる、有益な
 ・as to~に関して
 ・reach 名)範囲
 
〈訳〉
自由に黙示された権利と、平等保護によって守られている権利は、異なる戒律に基づくものであり、必ずしも両者が同一の広がりをもつものではないが、場合によっては、それぞれが他方の意味と範囲について示唆を与えることもある。



≪Ⅳ④≫
In any particular case one Clause may be thought to capture the essence of the right in a more accurate and comprehensive way, even as the two Clauses may converge in the identification and definition of the right.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   Clause  be  thought
 第1文型(S+V)
   Clauses  converge  
 
 ・particular 形)特定の
 ・Clause 名)条項
 ・be thought to do ~すると考えられる 
    think A to do 「Aが~すると考える」の受動態
 ・capture 他)~をとられる
 ・essence 名)本質
 ・right 名)権利
 ・accurate 形)正確な
 ・comprehensive 形)包括的な
 ・even as ~するとしても
 ・converge 自)収斂する
 ・identification 名)特定、同一性の確認
 ・definition 名)定義

〈訳〉
たとえ2つの条項が権利の特定と定義において収斂することがあるとしても、特定のケースにおいては、一方の条項の方がより正確かつ包括的に権利の本質をとらえていると考えられるかもしれない。



≪Ⅳ⑤≫
This interrelation of the two principles furthers our understanding of what freedom is and must become.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   interrelation   furthers   understanding
   
 ・interrelation 名)相互関係
 ・principle 名)原理、原則
 ・further 他)~を促進する
 ・understanding of ~に関する理解 of = about
 ・what freedom is 自由とは何であるかということ
 ・[what freedom] must become
    自由はどんなものにならなければならないかということ

〈訳〉
2つの原則のこの相互関係は、自由とは何か、そしてどうならなければならないのかに関するわれわれの理解を促す。



≪Ⅳ⑥≫
The Court's cases touching upon the right to marry reflect this dynamic.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   cases   reflect   dynamic
   
 ・The Court's cases 合衆国最高裁の判決、判例
 ・touch upon (話題として)~に触れる、言及する
  touching upon~は、cases を説明する形容詞 
    cases←〔touching upon~marry〕
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権
 ・reflect 他)~を反映する
 ・dynamic 名)力学、動力、ダイナミズム

〈訳〉
結婚権に触れた合衆国最高裁の判例は、このようなダイナミズムを反映している。



≪Ⅳ⑦≫
In Loving the Court invalidated a prohibition on interracial marriage under both the Equal Protection Clause and the Due Process Clause.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   Court   invalidated   prohibition
   
 ・Loving Loving v. Virginia (1967). 合衆国最高裁が、白人と有色人種の間の結婚を
  禁止するヴァージニア州法が修正14条に違反するとした判決。
 ・the Court 名)合衆国最高裁
 ・invalidate 他)~を無効にする
 ・prohibition 名)禁止  prohibition on~に対する禁止
 ・interracial 形)異人種間の
 ・Equal Protection Clause 名)(修正14条の)平等保護条項
 ・Due Process Clause 名)(修正14条の)デュー・プロセス条項

〈訳〉
Loving判決において合衆国最高裁は、平等保護条項とデュー・プロセス条項の両方に基づいて、異人種間結婚の禁止を無効とした。



≪Ⅳ⑧≫
The Court first declared the prohibition invalid because of its unequal treatment of interracial couples.

● 基本構造: 
 第5文型(S+V+O+C)
   Court   declared   prohibition   invalid
   
 ・The Court 名)合衆国最高裁
 ・declare A+B AがBであると宣言する
 ・prohibition 名)禁止  前文の異人種間の結婚の禁止のこと
 ・invalid 形)無効な
 ・because of ~のために、~という理由から、~が原因で
 ・unequal 形)不平等な
 ・treatment 名)取り扱い、処遇
 ・interracial 形)異人種間の

〈訳〉
合衆国最高裁はまず、異人種間のカップルを不平等に扱っているとして、異人種婚の禁止を無効と宣言した。



≪Ⅳ⑨≫
It stated: "There can be no doubt that restricting the freedom to marry solely because of racial classifications violates the central meaning of the Equal Protection Clause."

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   It   stated   “There~Clause
 ・引用文の内部は第1文型(S+V)→(V+S)
       be   doubt 
  There が文頭にあるために倒置されている。
   ・引用文内のthatの内部は第3文型(S+V+O)
       restricting   violates   meaning
     
 ・It =合衆国最高裁
 ・state 他)~を述べる
 ・There can be no doubt that~ ~ということに疑いの余地はない。
   that~は、doubtを説明する同格節「~という疑い」
 ・restrict 他)~を制限する
   restricting (動名詞「制限すること」)~はthat節の主語になっている。
   〔restricting~classifications〕 violates~
         S          V
     violatesに三単現のSがあるので、骨組みの動詞であることが分かる。
     主語の範囲は、動詞までである。
 ・freedom to marry 結婚する自由  不定詞の形容詞的用法
 ・solely 副)単に
 ・because of ~のために、~という理由から、~が原因で
    solely because of 単に~のみを理由として
 ・racial 形)人種の
 ・classification 名)分類
 ・violate 他)~を侵害する
 ・central 形)中心的な
 ・meaning 名)意味
 ・Equal Protection Clause 名)(修正14条の)平等保護条項

〈訳〉
最高裁は次のように述べた: 「単に人種的分類のみを理由に結婚の自由を制限することは、平等保護条項の中心的意味を侵害することに疑いの余地はない。」



≪Ⅳ⑩≫
With this link to equal protection the Court proceeded to hold the prohibition offended central precepts of liberty:

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   Court   proceeded

 ・with 前)~のために ※「~と一緒に」→「~があるので、~のために」
 ・link to ~との結びつき、絆
 ・equal protection 平等保護
 ・the Court 合衆国最高裁
 ・proceed to do 続けて~する
 ・hold 他)~であると判示する
   holdの後にthatが省略されており、第3文型の文章とつながっている。
    hold [that]  prohibition  offended   precepts
 ・prohibition 名)禁止 ここでは具体的に異人種婚の禁止のこと。
 ・offend 他)(規則など)に反する、を犯す
 ・central 形)中心的な
 ・precept 名)教訓、戒律、訓示
 ・liberty 名)自由
 ・liberty: セミコロンの後にLoving 判決からの引用が続く(次のⅣ⑪)。

〈訳〉
このような平等保護と結びつきのために、合衆国最高裁は、さらに進んで異人種婚の禁止は自由の中心的戒律に反すると判示した:



≪Ⅳ⑪≫
"To deny this fundamental freedom on so unsupportable a basis as the racial classifications embodied in these statutes, classifications so directly subversive of the principle of equality at the heart of the Fourteenth Amendment, is surely to deprive all the State's citizens of liberty without due process of law."

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   To deny~  is  to deprive~
     不定詞の名詞的用法「~すること」が主語と補語になっている。

 ・deny 他)~を拒否する、与えない
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・freedom 名)自由
 ・on 前)~にもとづいて
 ・basis 名)基礎、根拠
 ・so~as… …のような~
   ~の部分に形容詞と不定冠詞を伴った名詞が入る場合、
  「形容詞+不定冠詞+名詞」語順になる。 
 ・unsupportable 形)支持できない、耐えられない
 ・on so unsupportable a basis as~
   ~のような支持できない基礎にもとづいて
 ・racial 形)人種の
 ・classifications 分類  racial classifications 人種による分類
 ・embody 他)~を具体化する、具現化する
   embodied はclassificationsを説明する受動態の意味の形容詞 
    classifications ←〔embodied in these statutes〕
     ※embodiedの後ろに目的語がないから分かる。
 ・statute 名)(議会)制定法 these statutes とは、異人種婚を禁じる法律のこと。
 ・classifications so directly~は、racial classificationsの言い換え的説明(同格)。
   前に接続詞がないこと、骨組みの動詞のisがこの後にあることから分かる。
 ・so 副)非常に、これほどまでに
 ・directly 副)直接的に
 ・subversive 形)破壊するような
 ・principle 名)原理、原則
 ・equality 名)平等
 ・heart 名)核心、中心  at the heart of~の核心にある
 ・Fourteenth Amendment 名)(修正14条の)デュー・プロセス条項
 ・surely 副)確かに、間違いなく
 ・deprive A of B  AからBを奪う
 ・States 名)(合衆国の)州
 ・citizen 名)市民
 ・liberty 名)自由
 ・due process of law デュー・プロセス、適正な法の手続き

〈訳〉
「この基本的自由を、これらの法律に具体化されている人種分類のような支持できない根拠、すなわち修正第14条の核心にある平等原則をこれほ直接破壊するような分類にもとづいて否定することは、州のすべての市民から法の適正な手続きなしに自由を奪うことであることに間違いはない。」



≪Ⅳ⑫≫
The reasons why marriage is a fundamental right became more clear and compelling from a full awareness and understanding of the hurt that resulted from laws barring interracial unions.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  reason   became   clear and compelling
     
 ・why~は、reasonを説明する関係副詞 「~である理由」
   reasons ←〔why marriage is a fundamental right〕became
    関係副詞節の中に動詞(is)があり、2つ目の動詞(became)が骨組みの
    動詞である。
 ・fundamental形)基本的な、根本的な
 ・right 名)権利
 ・become ~になる
 ・clear 名)明白な、明らかな
 ・compelling 形)強制的な、抵抗しがたい、説得力のある
 ・from 原因や理由を表す
 ・full 形)十分な
 ・awareness 名)気づいていること、意識、認識
 ・hurt 名)傷、傷害
 ・that~は、hurtを説明する関係代名詞
  hurt ←〔that resulted~unions〕 ※resultedの前に主語がないので分かる。
 ・result from ~の結果として生じる、~に起因する
 ・bar 他)~を禁じる 
  baringは、lawsを説明する形容詞 laws←〔barring interracial unions〕
 ・interracial 形)異人種間の
  ・union 名)結合、合体、結びつき(結婚)

〈訳〉
結婚が基本的権利である理由は、異人種間の結合を禁止する法律の結果生じた傷害を十分に認識し理解することで、より明白で抗いがたいものとなった。



≪Ⅳ⑬
The synergy between the two protections is illustrated further in Zablocki.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
   synergy  is  illustrated
     
 ・synergy 名)共同作用、共働関係、相乗効果
 ・between ~の間の
 ・protection 名)保護 two protections は、平等と基本的権利の2つの保護のこと。
 ・illustrate 他)~を例証する、例証する
 ・further 副)さらに
 ・Zablocki  Zablocki v. Redhail (1978) 別居している未成年者に扶養義務を負
   っている人の結婚に裁判所の許可を要求し、養育費の支払いが滞っている場合
   は許可されないと定めたウィスコンシン州法が修正14条に違反するとした判
   決。合衆国最高裁は、結婚権が「基本的権利(fundamental right)」であると
   判示した。

〈訳〉
2つの保護の共働関係は、Zablocki判決においてさらに例証されている。



≪Ⅳ⑭≫
There the Court invoked the Equal Protection Clause as its basis for invalidating the challenged law, which, as already noted, barred fathers who were behind on child-support payments from marrying without judicial approval.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
  Court  invoked  Equal Protection Clause
   
 ・There 副)そこで=Zablocki判決において
 ・Court 名)合衆国最高裁
 ・invoke 他)~を援用する、(手段として)~に訴える
 ・Equal Protection Clause 名)(修正14条の)平等保護条項
 ・as ~として
 ・basis 名)基礎
 ・invalidate 他)~を無効にする
 ・challenge 他)~に異議を唱える、~に挑む
   challengedは、lawsを説明する受身の意味の形容詞 
    challenged law 「異議が唱えられている法」
 ・which~は、law を説明する関係代名詞節 
   law←〔which~approval〕
 ・as already noted (すでに指摘されているように→)すでに指摘したように 
 ・bar A from B AをBから解除する、AにBを禁じる
    A=father~payments   B=marring~approval
 ・who~は、father を説明する関係代名詞節:前のwhichの節の内部にある。
    law←〔which~father (who…payments)from~approval〕
     ※ who節の終わりはfromの前であることが分かる。
 ・behind on ~(支払いなど)が滞っている
 ・child-support payments 名)子供の養育費
 ・payments 名)支払い
 ・marrying 結婚すること
 ・without ~なしに
 ・judicial 形)裁判所の、司法の
 ・approval 名)承認、認可、許可

〈訳〉
この判決では、すでに指摘したように、子供の養育費の支払いが滞っている父親が裁判所の許可なしに結婚することを禁じる法律に異議が唱えられ、合衆国最高裁はこの法律を無効にする根拠として平等保護条項を援用した。
 ※訳しにくいので、原文の構造と異なる訳になっています(特に「法律に異議が唱えられ」
  の部分)。



≪Ⅳ⑮≫
The equal protection analysis depended in central part on the Court's holding that the law burdened a right "of fundamental importance."

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)
   analysis  depended
   
 ・equal protection 名)平等保護
 ・analysis 名)分析
 ・depend on ~に依存する ※depend とonの間にin central partが入っている。
 ・central 形)中心的な
 ・part 名)部分
 ・Court’s 合衆国最高裁の
 ・holding 名)判示(事項)
 ・that~は、holdingの内容を説明する同格節 「~という判示」
  holding=〔that law  burdened   right "〕
    that節内に第3文型の完全な文があるので関係代名詞節ではない。
 ・the law   Zablocki判決によって違憲無効とされた法律
 ・burden 他)(負担など)を負わせる
 ・right 名)権利
 ・of +抽象名詞=形容詞  A of~の性質をもっている
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・importance 名)重要性 right of fundamental importance 基本的に重要な権利

〈訳〉
平等保護の分析は、その中心的部分において、その法律が「基本的に重要な」権利に負担を課しているという合衆国最高裁の判示に依存していた。
  ※「 」は、Zablocki判決からの引用。



≪Ⅳ⑯≫
It was the essential nature of the marriage right, discussed at length in Zablocki that made apparent the law's incompatibility with requirements of equality.

● 基本構造: 
 第2文型(S+V+C)
  it  is  nature  that
   強調構文:~するのはnatureである。
   ※thatの後に主語がないから、形式主語(It~that)の構文ではない。
    that~は第5文型(S+V+O+C):
     ・that   made   apparent   incompatibility
           v      c        o 
      ※ incompatibilityの前後に修飾語句が付いて長くなっているので、
        後回しになっている。

 ・essential 形)本質的な、不可欠な
 ・nature 名)性質、本質
 ・marriage right 名)結婚の権利、結婚権
 ・discuss 他)~について論じる 
   discussed~は、essential natureを説明する受身の意味の形容詞
    essential nature←〔discussed at length in Zablocki〕 
   ※直前のmarriage rightsを説明すると当然すぎて何も付け加える内容のない文
    になる。
 ・at length 副)詳しく
 ・Zablocki  Zablocki v. Redhail (1978)。別居している未成年者に扶養義務を負
   っている人の結婚に裁判所の許可を要求し、養育費の支払いが滞っている場合は許
   可されないと定めたウィスコンシン州法が修正14条に違反するとした判決。合衆
   国最高裁は、結婚権が「基本的権利(fundamental right)」であると判示した。
 ・made A+B AをB(の状態にした)
 ・apparent 形)明らかな
 ・incompatibility 名)両立しがたいこと、不適合(with~)
 ・requirement 名)要件、必要な条件
 ・equality 名)平等

〈訳〉
この法律が平等の要件と両立しがたいことを明らかにしたのは、Zablocki判決で詳しく論じられた結婚権の本質的な性質であった。



≪Ⅳ⑰≫
Each concept--liberty and equal protection--leads to a stronger understanding of the other.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)
  concept   leads
      
 ・each 形)それぞれの
 ・concept 名)概念、観念、コンセプト
 ・liberty 名)自由
 ・equal protection 名)平等保護
 ・lead to ~(という結果)につながる、至る
 ・stronger 形)より強力な
 ・understanding 名)理解
 ・the other 他方

〈訳〉
それぞれのコンセプト、すなわち自由と平等保護は、他方のコンセプトのより強い理解につながる。



≪Ⅳ⑱≫
Indeed, in interpreting the Equal Protection Clause, the Court has recognized that new insights and societal understandings can reveal unjustified inequality within our most fundamental institutions that once passed unnoticed and unchallenged.

● 基本構造:
  第3文型(S+V+O)
   Court  recognized  that~unchallenged
     that 節の中も、第3文型(S+V+O):
      insights and understandings  reveal  inequality

 ・Indeed 副)実際、確かに
 ・interpret 他)~を解釈する  in interpreting ~を解釈するさいに
 ・Equal Protection Clause (修正14条の)平等保護条項
 ・Court 名)合衆国最高裁
 ・recognize 他)~を認識する  has recognized (以前からずっと)認識してきた
 ・insight 名)洞察力、見識
 ・societal 形)社会の
 ・understanding 名)理解
 ・reveal 他)~を明らかにする
 ・unjustified 形)正当化されない、不当な
 ・inequality 名)不平等
 ・within 前)~の内側の、範囲内の
 ・most 副)もっとも
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・institution 名)制度
 ・that~  inequalityを説明する関係代名詞節
    inequality←〔that once passed~unchallenged〕
      ※passed に主語がないから分かる。
       内容から判断して、直前のinstitutionを説明しているのではない。
 ・once 副)かつて、以前
 ・pass 自)通り過ぎる、見過ごされる
 ・unnoticed 形)気づかれない
    passed unnoticed (気づかれずに通りすぎる)見過ごされる
 ・unchallenged 形)異議を唱えられない
   passed unchallenged 異議を唱えられないままにされる

〈訳〉
実際、合衆国最高裁は、平等保護条項を解釈するさい、新たな見識や社会的理解が、かつては見過ごされ異議を唱えられることもなかった、われわれの最も基本的な制度における不当な不平等を明らかにしうることを認識してきた。
 ※この文の後、女性差別が容認されていた時代の説明が続く。



≪Ⅳ⑲≫
Responding to a new awareness, the Court invoked equal protection principles to invalidate laws imposing sex-based inequality on marriage.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
  Court  invoked  principles
     
 ・respond to ~に反応する、応答する
   Responding to~は、分詞構文。
    分詞構文の~ingには3つの要素がある:
     ① 主節と同じ主語(the Court)
     ② ~ingを適切な形(時制)に変えた動詞(responded)
     ③文脈に合う接続詞
   この文では、The Court responded to a new awareness, andくらいの意味。
 ・awareness 名)気づいていること、意識、認識
 ・invoke 他)~を援用する、(手段として)~に訴える
 ・equal protection principle 名)平等保護原則
 ・invalidate 他)~を無効にする
  ~to invalidate… ①…を無効とするために~ ②…して、~を無効にした
 ・impose A on B AにBを負わせる、課す
   A=sex-based inequality  B=marrage
   imposing は、lawsを説明する形容詞
    laws←〔imposing…marriage〕 「~に~を負わせている法律」
 ・sex-based 形)性にもとづく
 ・inequality 名)不平等
 ・marriage 結婚

〈訳〉
新たな認識に応答して、合衆国最高裁は、平等保護原則を援用して、性にもとづく不平等を結婚に課している法律を無効とした。



≪Ⅳ⑳≫
Like Loving and Zablocki, these precedents show the Equal Protection Clause can help to identify and correct inequalities in the institution of marriage, vindicating precepts of liberty and equality under the Constitution.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   precedents  show [that] the Equal~Constituion
        ※接続詞のthatが省略されている。

 ・Loving 1967年のLoving v. Virginia判決:合衆国最高裁は、白人と有色人との
  間の結婚を禁じるヴァージニア州法が修正14条に違反すると判決した。
 ・Zablocki  1978年のZablocki v. Redhail判決:
   別居している未成年者に扶養義務を負っている人の結婚に裁判所の許可を要求し、
   養育費の支払いが滞っている場合は許可されないと定めたウィスコンシン州法が修
   正14条に違反するとした合衆国最高裁判決。
 ・precedent 名)先例
   these precedents 「これの判例」:この文の前に、合衆国最高裁が性にもとづく
   区別が平等保護条項に違反するとした判決名が列挙されている。
 ・show 他)~を示す
 ・Equal Protection Clause (修正14条の)平等保護条項
 ・help to do ~するのに役立つ、~の助けになる
 ・identify他)~を特定する  目的語はcorrectの後のinequalitiesである。
 ・correct 他)~を訂正する、是正する、修正する
 ・inequality 名)不平等
 ・institution 名)制度
 ・marriage 名)結婚
 ・vindicate 他)~の正当性を証明する
   vindicating~は、分詞構文。
    分詞構文の~ingには3つの要素がある:
     ① 主節と同じ主語(precedents)
     ※内容から判断してEqual Protection Clauseが主語ではない。 
     ② ~ingを適切な形(時制)に変えた動詞(vindicate)
     ③文脈に合う接続詞
      この文では、~institution of marriage, andくらいの意味。
 ・precept 名)教訓、戒律、訓示
 ・liberty 名)自由
 ・equality 名)平等
 ・Constitution 名)合衆国憲法

〈訳〉
Loving判決やZablocki判決と同様、これらの判例は、平等保護条項が結婚制度における不平等を特定し是正するのに役ちうることを示しており、合衆国憲法の下での自由と平等の戒律を正当化する。



≪Ⅳ㉑≫
Other cases confirm this relation between liberty and equality.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   cases   confirm   relation
   
 ・case 名)事件、ケース、判例
 ・confirm 他)~を確認する
 ・relation 名)関係
 ・between A and B  AとBの間の
 ・liberty 名)自由
 ・equality 名)平等

〈訳〉
他のケースは、このような自由と平等の関係を確認している。



≪Ⅳ㉒≫
In M. L. B. v. S. L. J., the Court invalidated under due process and equal protection principles a statute requiring indigent mothers to pay a fee in order to appeal the termination of their parental rights.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   Court   invalidated   statute
     
 ・M. L. B. v. S. L. J.  1996年の合衆国最高裁判決。生物学的父親と生物学的母
   親との間で実子の親権が争われ、第1審で父親が勝訴した。母親は、控訴しようと
   したが控訴手数料が高額で支払うことができなかった。合衆国最高裁は、親権を終
   了させる判決から控訴するさい、貧困な母親に手数料を支払うことを要求している
   州法を違憲無効とした。
 ・Court 名)合衆国最高裁
 ・invalidate 他)~を無効にする
 ・due process (修正14条の)デュー・プロセス
 ・equal protection (修正14条の)平等保護
 ・principle 名)原理、原則
 ・statute 名)法律、議会制定法
 ・require A to do~ Aに~することを要求する
   requiring は、statuteを説明する形容詞
    statute ←〔requiring~parental rights〕 「~を要求している法律」
 ・indigent 形)貧困な、生活困窮状態にある
 ・fee 名)料金、手数料
 ・in order to do ~するために
 ・appeal 他)~(判決)から控訴する
 ・termination 名)終了
 ・parental 形)親の
 ・right 名)権利  parental right 親権

〈訳〉
M. L. B. v. S. L. J.判決において、合衆国最高裁は、デュー・プロセスおよび平等保護の原則にもとづき、生活困窮状態にある母親が親権終了の判決から控訴するために手数料を支払うことを義務づける法律を無効とした。



≪Ⅳ㉓≫
In Lawrence the Court acknowledged the interlocking nature of these constitutional safeguards in the context of the legal treatment of gays and lesbians.

● 基本構造:
 第3文型(S+V+O)
   Court   acknowledged   nature
     
 ・Lawrence  2003年のLawrence v. Texas判決:合衆国最高裁が同性愛者によ
   る肛門性交、オーラルセックスを禁じたテキサス州法がデュー・プロセス条項に違
   反するとした判決。
 ・Court 名)合衆国最高裁
 ・acknowledge 他)~を承認する
 ・interlock 他)~を連結する、結合する
 ・nature 名)性質
 ・constitutional 形)憲法の、合憲の
 ・safeguard 名)安全装置、保護措置
 ・context 名)文脈
 ・legal 形)法的な
 ・treatment 名)扱い、処遇
 ・gay 名)ゲイ
 ・lesbian 名)レズビアン

〈訳〉
Lawrence判決において、合衆国最高裁は、ゲイとレズビアンの法的扱いの文脈において、これらの憲法上の保護措置の連動性を認めた。



≪Ⅳ㉔≫
Although Lawrence elaborated its holding under the Due Process Clause, it acknowledged, and sought to remedy, the continuing inequality that resulted from laws making intimacy in the lives of gays and lesbians a crime against the State.

● 基本構造:
  Although~:第3文型(S+V+O)
    Lawrence   elaborated   holding
  主節:第3文型(S+V+O)
    it  acknowledged~remedy  inequality
    
 ・Although 接)~ではあるが
 ・Lawrence 2003年のLawrence v. Texas判決:合衆国最高裁が同性愛者による
   肛門性交、オーラルセックスを禁じたテキサス州法がデュー・プロセス条項に違反
   するとした判決。
 ・elaborate 他)~を詳しく述べる
 ・holding 名)判示(事項)
 ・Due Process Clause (修正14条の)デュー・プロセス条項
 ・acknowledge 他)~を承認する
 ・sought seek他)「~を求める」の過去形 seek to do ~しようとする(務める)
 ・remedy 他)~を改善する、是正する
 ・inequality 名)不平等
 ・that~  inequalityを説明する関係代名詞節
   inequality←〔that resulted~against the State〕
    ※resultedの前に主語がないから分かる。
 ・result from ~(結果として)生じる
 ・making~ lawsを説明する形容詞
   laws ←〔making  intimacy ~ crime against the State〕
         v     o       c    使役動詞「OをCにする」
 ・intimacy 名)親密さ、交わり
 ・gay 名)ゲイ
 ・lesbian 名)レズビアン
 ・crime 名)犯罪
 ・against 前)~に対する
 ・State 名)犯罪

〈訳〉
Lawrence判決は、デュー・プロセス条項にもとづいてその判示事項を詳述したが、ゲイとレズビアンの生活における親密さを州に対する犯罪であるとする法律から結果的に生じる継続的不平等を認めて、それを是正しようとした。



≪Ⅳ㉕≫
This dynamic also applies to same-sex marriage.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   dynamic  applies 

 ・dynamic 名)力学、動力、ダイナミズム
   This dynamic 「このダイナニズム」とは、デュー・プロセスと平等保護の共同
   作用のこと。
 ・apply to ~に当てはまる、妥当する
 ・same-sex marriage 同性婚



≪Ⅳ㉖≫
It is now clear that the challenged laws burden the liberty of same-sex couples, and it must be further acknowledged that they abridge central precepts of equality.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
   It is  clear that ~
   It~thatの構文。
     that 節の中は、第3文型(S+V+O): laws  burden  liberty
  ・it~equality=第2文型(S+V+C)
    it be acknowledged
      It~thatの構文。
      that 節の中は、第3文型(S+V+O):they  abridge  precepts

 ・It is now clear that…. It~thatの構文「…することは明白である」  
  英語はあくまで「それは~である、…することは」と言っている。
 ・challenge 他)~に異議を唱える、~に挑む
   challenged は、受身の意味の形容詞。challenged law
   「異議を唱えられている法」
 ・burden 他)~に負担をかける
 ・liberty 名)自由
 ・same-sex couple 同性カップル
 ・further 副)さらに
 ・acknowledge 他)~を(事実であると)認める、~を承認する
   it must be further acknowledged that…
   「さらに・・・ということが承認されなければならない。」
 ・abridge 他)~縮減する、(権利)を侵害する
 ・central 形)中心的な
 ・precept 名)教訓、戒律、訓示
 ・equality 名)平等

〈訳〉
異議を唱えられている法が同性カップルの自由に重荷を負わせていることは今や明らかであり、さらに平等の中心的戒律を侵害していることも認められなければならない。



≪Ⅳ㉗≫
Here the marriage laws enforced by the respondents are in essence unequal: same-sex couples are denied all the benefits afforded to opposite-sex couples and are barred from exercising a fundamental right.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
  laws   are   unequal
  couples  are  denied/and  are  barred

 ・here 副)つまり=here is the thing
 ・marriage laws 結婚に関する法律
   結婚を男性と女性の間の結合と定義して同性婚を認めていない法律
 ・enforce 他)~を強制する
   enforcedは、lawsを説明する受身の意味の形容詞
    laws ←〔enforced by~〕 「~によって強制された法」
       ※enforcedの後に目的語がないから分かる。
 ・respondent 名)被上告人=結婚に関する州法の執行に責任のある公務員
 ・in essence 本質において
 ・unequal 形)不平等な
 ・same-sex couple 同性カップル
 ・deny A+B 「AにBを拒否する、与えない」
    受動態になって A is denied B
    「AはBを拒否されている、与えられていない。」
 ・benefit 名)利益、恩恵、(社会保障の)給付、手当
 ・afford A to B AにB(便宜など)を与える
   affordedは、benefitを説明する受身の意味の形容詞
    benefits ←〔afforded to~couples〕「~に与えられた恩恵」
     afforded の後に目的語がないので分かる。
 ・opposite-sex couple 名)異性カップル
 ・bar A from B 他) AにBを禁じる  
    A is barred from B  Aは、Bを禁じられている
 ・exercise 他)(権利など)を行使する  exercising (動名詞)~を行使すること
 ・fundamental right 基本的権利

〈訳〉
つまり、被上告人によって強制されている結婚に関する法律は、本質的に不平等である。同性カップルは異性カップルに与えられるすべての恩恵を否定され、基本的権利を行使することを禁じられている。



≪Ⅳ㉘≫
Especially against a long history of disapproval of their relationships, this denial to same-sex couples of the right to marry works a grave and continuing harm.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   denial   works   harm
     
 ・especially 副)特に、とりわけ
 ・against 前)~を背景として、~に照らして
 ・history 名)歴史
 ・disapproval 名)不承認、不賛成
 ・their relationship 同性カップルという関係
 ・denial to A of B  Aに対するBの拒絶
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権 
 ・work 他)~として働く(作用する)、~をもたらす
 ・grave 形)重大な、ゆゆしい
 ・continuing 形)継続的な
 ・harm 名)害、傷害、弊害

〈訳〉
特に、同性カップルという関係に対する長い不承認の歴史を背景として、同性カップルが結婚権を否定されることは、重大かつ継続的な弊害をもたらす。



≪Ⅳ㉙≫
The imposition of this disability on gays and lesbians serves to disrespect and subordinate them.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)
   imposition   serves 
   
 ・imposition 名)課すこと、負わせること  impose A on B BにAを課す
   imposition of A on B BにAを課すこと
 ・disability 名)無能力、無力、障害 
    this disability とは、要するに結婚できないこと。
 ・gay 名)ゲイ
 ・lesbian 名)レズビアン
 ・serve to do ~するのに役立つ、~する働きがある
 ・disrespect 他)~を軽蔑する
 ・subordinate 他)~を従属させる

〈訳〉
この障害をゲイやレズビアンに負わせることは、彼らを軽視し、従属させることになる。



≪Ⅳ㉚≫
And the Equal Protection Clause, like the Due Process Clause, prohibits this unjustified infringement of the fundamental right to marry.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   Clause   prohibits   infringement
     
 ・Equal Protection Clause 名)(修正14条の)平等保護条項
 ・like ~と同様に
 ・Due Process Clause 名)(修正14条の)デュー・プロセス条項
 ・prohibit 他)~を禁止する
 ・unjustified 形)正当化できない、不当な
 ・infringement 名)(権利などの)侵害
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・right to marry 名)結婚する権利、結婚権

〈訳〉
そして、平等保護条項は、デュー・プロセス条項と同様に、結婚する基本的権利のこのような不当な侵害を禁止している。



≪Ⅳ㉛≫
These considerations lead to the conclusion that the right to marry is a fundamental right inherent in the liberty of the person, and under the Due Process and Equal Protection Clauses of the Fourteenth Amendment couples of the same-sex may not be deprived of that right and that liberty.

● 基本構造: 
 第1文型(S+V)
   considerations  lead 
  ・that 節の中
    第2文型(S+V+C)
      right  is  right / couples  be  deprived
       
 ・considerations 名)考慮事項 
   ※複数形になっているので具体的な考慮の対象の意味
 ・lead to ~(という結果)につながる、至る
 ・conclusion 名)結論
   同格節 conclusion 〔that the right~that liberty〕
    内容から判断して、that 節は文末まで
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・inherent in~に固有の、~に内在する
   right←〔inherent in the liberty of the person〕
 ・liberty 名)自由
 ・Equal Protection Clause 名)(修正14条の)平等保護条項
 ・Due Process Clause 名)(修正14条の)デュー・プロセス条項
 ・same-sex 名)同性
 ・may not ~してはならない(禁止)
 ・deprive A of B AからBを奪う  A is deprived of B AはBを奪われる
 ・that right, that liberty 「その権利、その自由」=結婚する権利と自由

〈訳〉
これらの考慮事項から、結婚権は人の自由に内在する基本的権利であり、修正第14条のデュー・プロセス条項および平等保護条項のもとで、同性カップルはその権利と自由を奪われてはならないという結論が導かれる。


Ⅴ.結 論

≪Ⅴ①≫
The Court now holds that same-sex couples may exercise the fundamental right to marry.

● 基本構造: 
 第3文型(S+V+O)
   Court   holds   that same-sex~marry
  ・that 節の中:第3文型(S+V+O)
     couples   exercise   right

 ・The Court 「当法廷」=このケースを審理している合衆国最高裁
 ・now ※この文が宣言的内容をもっているので「ここで」と訳す。
 ・holds 他)~であると判示する
 ・same-sex couple 名)同性カップル
 ・may ~してもよい、~することができる
 ・exercise 他)(権利など)を行使する
 ・fundamental 形)基本的な、根本的な
 ・right to marry 結婚する権利、結婚権

〈訳〉
ここで当法廷は、同性カップルは結婚する基本的権利を行使しうると判示する。



≪Ⅴ②≫
No longer may this liberty be denied to them.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
   liberty  be  denied
  ※ this liberty may no longer be denied to themという文がもとにあり、
   強調のためにNo longerを文頭の置いたために倒置されている。倒置されると
   疑問文と同じ語順になる。

 ・No longer もはや~ない
 ・may (no longerがあるので)~してはならない
 ・liberty 自由  this liberty 結婚する自由
 ・deny A to B AをBに拒否する、与えない 
   A is denied to B AがBに与えられていない
 ・them = same-sex couples

〈訳〉
もはや彼らにこの自由を拒否してはならない。



≪Ⅴ③≫
Baker v. Nelson must be and now is overruled, and the State laws challenged by Petitioners in these cases are now held invalid to the extent they exclude same-sex couples from civil marriage on the same terms and conditions as opposite-sex couples.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
  Baker v. Nelson  be/is   overruled
 ・and the State~
   law   are   held invalid
   ※もともと第5文型の文が受動態になったものである。一応第2文型としておく。

 ・Baker v. Nelson(1972)ミネソタ州最高裁が結婚に関する州法を解釈して結婚が
  異性間に限られると判決したことが合衆国憲法に違反しないと合衆国最高裁の判決
 ・now ※この文が宣言的内容をもっているので「ここで」と訳す。
 ・overrule 他)~を先例変更する、覆す
 ・challenge 他)~に異議を唱える、~に挑む
   challengedは、lawsを説明する受身の意味の形容詞 
    laws←〔challenged by~cases〕「~によって異議が唱えられている法」
     challengedの後に目的語がないから分かる。
 ・Petitioner 名)上告人  
 ・held invalid 無効であると判示される
   held laws invalid「法を無効である判示する」
   これが受動態になって laws are held invalid 「法は無効であると判示される」
 ・to the extent [that]~ ~の限りにおいて、~の程度まで
 ・exclude 他)~を排除する
 ・same-sex couple 同性カップル
 ・civil marriage 民事婚  行政機関に届け出て承認を受けることにより婚姻関係
   が成立する形の婚姻のこと。主に「宗教婚」などの語と対比される。
 ・same A as B  Bと同じA
 ・term 名)条件  on the same term 同じ条件で
 ・condition 名)条件 terms and conditions で一体として「条件」と訳しておく。
 ・opposite-sex couple 名)異性のカップル

 〈訳〉
ベーカー対ネルソン判決は、先例変更されなければならないし、ここで先例変更される。これらのケースで上告人が異議を唱えた州法は、異性カップルと同じ条件の市民婚から同性カップルを排除する限りにおいて、ここで無効であると判示される。



≪Ⅴ④≫
It follows that the Court also must hold--and it now does hold--that there is no lawful basis for a State to refuse to recognize a lawful same-sex marriage performed in another State on the ground of its same-sex character.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
  It   follows   that…
    It~thatの形式主語の構文:Itは仮の主語、中身はthat…

 ・follow 自)引き続いて起こる 
   It follows that~ 結果として当然に~ということになる
 ・Court 名)合衆国最高裁
 ・also また
 ・must 助)~しなければならない
 ・hold 他)~であると判示する
 ・does 動詞を強調する用法「実際に~する」
 ・there is no~  ~はない
 ・lawful 形)合法的な
 ・basis 名)基礎
 ・State 名)州
 ・refuse 他)~を拒む  to refuse はbasis を説明している「~を拒む基礎」
   basis for a State to refuse~ ある州が~を拒む基礎
 ・recognize 他)~を認める、認識する
 ・same-sex marriage 同性婚
 ・perform 他)~を実行する、実施する、履行する
 ・another 形)別の
 ・ground 名)根拠  on the ground of ~を根拠として
 ・character 名)性格

〈訳〉
結果として、当法廷は次のように判示しなければならないし、ここではっきりとそう判示する。ある州が他州で行なわれた合法的な同性婚をその同性という性格ゆえに認めることを拒む合法的な基礎は存在しない。



≪Ⅴ⑤≫
No union is more profound than marriage, for it embodies the highest ideals of love, fidelity, devotion, sacrifice, and family.
No union is more profound than marriage, for it embodies the highest ideals of love, fidelity, devotion, sacrifice, and family.

● 基本構造:
 第2文型(S+V+C)
   union  is  profound 
 第3文型(S+V+O)
   it  embodies  ideal

 ・No A is more B than C  CよりBなAはない
 ・profound 形)深い、深遠な
 ・marriage 名)結婚
 ・for 接)というのも~だから
 ・embody 他)~を具体化する、体現する
 ・highest 形)もっとも高い
 ・ideal 名)理想、理念
 ・love 愛
 ・fidelity 名)忠実、忠誠、貞節
 ・devotion 名)献身
 ・sacrifice 名)犠牲
 ・family

〈訳〉
結婚ほど奥深い結びつきはない。愛、忠誠、献身、犠牲、家族という最高の理想を体現しているからだ。



≪Ⅴ⑥≫
In forming a marital union, two people become something greater than once they were.

● 基本構造:  
第2文型(S+V+C) 
  people  become  something

 ・in~ing ~するにさいして、~することで
 ・form 他)~を形成する
 ・marital 形)結婚の、夫婦の
 ・union名)結合、合体、結びつき(結婚)
 ・something 名)何か、あるもの
 ・greater 形)より大きい、より偉大な
 ・once 副)かつて

〈訳〉
結婚による結びつきを形成することで、2人はかつてよりも大きな存在となる。



≪Ⅴ⑦≫
As some of the petitioners in these cases demonstrate, marriage embodies a love that may endure even past death.

● 基本構造:  
 第3文型(S+V+O)
   marriage   embodies    love

 ・As S+V... 接)SがVするように
 ・petitioner 名)上訴人
 ・case 名)事件、ケース、判例
   these cases これらのケース ※この訴訟の対象となっているケース
 ・demonstrate 他)~を実証する、証明する
 ・marriage 名)結婚
 ・embody 他)~を具体化する、体現する
 ・love 名)愛 
   that~は、love を説明する関係代名詞
    love←〔that may endure~death〕 
      ※thatの後ろに主語がないから分かる。
 ・may 助)~するかもしれない、~しうる
 ・endure 自)持ちこたえる、持続する
 ・even 副)~でえも、なお
 ・past 前)~を過ぎて、~を超えて
 ・death 名)死

〈訳〉
これらのケースにおける上訴人の何人かが実証しているように、結婚は死後も続きうる愛を体現する。



≪Ⅴ⑧≫
It would misunderstand these men and women to say they disrespect the idea of marriage.

● 基本構造:  
 第3文型(S+V+O)
   It  misunderstand   men and women to say~
    It~to do…  It to の形式主語の構文「…することは~」
   英語はあくまでも「それは~である、…することは」と言っている
   が、日本語としては不自然であるので、「それは」とは訳さない。

 ・would 助)will の過去形 
   仮定法過去:to~に仮定の意味がこめられている。
    「…するとすれば~することになるであろう」
 ・misunderstand 他)~を理解する
 ・say 他)~と言う  後に接続詞のthat が省略されている。
 ・disrespect 他)~を尊敬していない、軽蔑する
 ・idea 名)考え、理念
 ・marriage 名)結婚

〈訳〉
彼れらの男女が結婚の理念を軽んじていると述べるとすれば、それは彼らを誤解していることになるであろう



≪Ⅴ⑨≫
Their plea is that they do respect it, respect it so deeply that they seek to find its fulfillment for themselves.

● 基本構造:  
 第2文型(S+V+C) 
   plea  is  that they~themselves
    that 節の中は第3文型((S+V+O)
      they  respect  it

 ・plea 名)請願、訴え、申し立て
 ・they =前文の these men and women
 ・do 助)事実、実際に  respectの強調
 ・respect 他)~を尊敬する、尊重する
  ・it = marriage
 ・so so~that…の構文  非常に~なので…
 ・seek to do~  ~することも求める、~しようとする
 ・find 他)~を見つける、見出す
 ・fulfillment 名)実現、達成、成就
 ・for themselves 彼らのために、自力で

〈訳〉
彼らの申し立ては、実際彼らが結婚を尊重しているということ、非常に深く尊重しているので自らの力でそれを実現しようとしているということを示している。
 ※「示している」は、原文にはない。



≪Ⅴ⑩≫
TTheir hope is not to be condemned to live in loneliness, excluded from one of civilization's oldest institutions.

● 基本構造:  
 第2文型(S+V+C)
    hope   is  to be condemned

 ・hope 名)希望
 ・to be~ 不定詞の名詞的用法 ~すること
 ・condemn A to do~  Aに~するように宣告する、運命づける
   be condemned to do~ ~するように宣告される、運命づけられる
 ・live in ~(の状態)の中で生きる
 ・loneliness 名)孤独
 ・exclude 他)~を排除する
   excluded はbeing が省略された分詞構文「排除されて」
    not to beと繋がっていると解釈するより、live in loneliness を
    説明していると解釈する方が自然である。
 ・civilization 名)文明
 ・oldest 形)もっとも古い
 ・institution 名)制度
   one of civilization's oldest institutions とは結婚のこと。

〈訳〉
らの希望は、文明最古の制度のひとつから排除され、孤独に生きることを宣告されないことである。



≪Ⅴ⑪≫
They ask for equal dignity in the eyes of the law.

● 基本構造:
 第1文型(S+V)
   They  ask

 ・ask for ~を求める
 ・equal 形)平等な
 ・dignity 名)尊厳
 ・in the eye of ~ ~の目から見て、~の視点から、

〈訳〉
彼らは法の目から見た平等な尊厳を求めている。



≪Ⅴ⑫≫
The Constitution grants them that right.

● 基本構造:  
 第4文型(S+V+O+O)
   Constitution   grants   them   right

 ・Constitution 名)合衆国憲法
 ・grant A B  AにBを与える、(正式に)付与する
 ・right 名)権利
   that right は、平等な尊厳をえる権利、平等な結婚権のこと。

〈訳〉
合衆国憲法は彼らにその権利を付与する。



【解説】
 憲法の起草者達は、同性婚を憲法が保障するとは想定していなかったであろう。そもそも同性婚を望む人々が現れるという事態すら考えなかったであろう。ケネディ裁判官は、「不正義の本質は、われわれ自身の時代において常にそれが見えるわけではないということである(Ⅱ⑨)。権利章典と修正14条を作成し批准した世代は、あらゆる次元において自由(freedom)の程度を知っているわけではなかったので、彼らは、われわれが自由(liberty)の意味を学ぶにつれて、すべての人々の自由(liberty)を享受する権利を保護する、そのような憲章を未来の世代に託したのである(Ⅱ⑩)。」と述べている。
 歴史と伝統に深く根差した権利が、デュー・プロセス条項によって保障される「基本的権利」であるとすると、「同性どうしが結婚する権利」は、歴史にも伝統にも根差していないであろう。しかし、ケネディ裁判官は、「結婚する権利」が歴史と伝統に深く根ざしていると論じた。Loving判決は「異人種間の結婚の権利」を認めたものではなく、Zablocki 判決は「養育費の支払いが滞っている父親が結婚する権利」を認めたものではなく、Turner判決は「刑務所の被収容者者が結婚する権利」を認めたものではない(Ⅲ-14㉑)。それらの判決は、デュー・プロセス条項によってそれらの人々に保障されている「結婚する権利」が侵害されていると判示したのである。
 ある権利が基本的権利であると認定する司法の責任は、「いかなる定式にもまとめられてこなかった(Ⅱ④)。」それを認定する「責任は、熟慮ある判断を用いることを裁判所に求める(Ⅱ⑤)。」ケネディ裁判官は、「熟慮ある判断」を用いて、結婚する権利を基本的なものとしている4つの要因を指摘して、それらの要因は、同性カップルにも当てはまると論じた。すなわち、(1)結婚に関する個人的選択の権利は、個人の自律に内在する(Ⅲ-1)。(2)結婚は、2人の結びつきを支え、その重要性は他に例を見ない(Ⅲ-2)。(3)結婚は、子供と家族を守り、子育て、生殖、教育から意味を引き出す(Ⅲ-3)。(4)結婚は社会の要石である(Ⅲ-4)。
 結婚する権利を憲法によって保障される基本的なものにしている本質的要素が、同性カップルにも異性カップルと同様に妥当するのであれば、その権利を同性カップルに認めないことは、同性カップルに対する権利侵害である。また、そのような扱いは、同性カップルに対する差別であり平等保護条項違反である。ケネディ裁判官は、デュー・プロセス条項と平等保護条項は共働関係(synergy)にあり(Ⅳ⑬)、結婚を異性カップルに限定している州法が、「平等の要件と両立しがたいことを明らかにしたのは、…結婚権の本質的な性質」(Ⅳ⑯)であり、そのような法律は、彼らに「われわれの基本憲章によって禁じられている類いの汚名と傷害を負わせる」(Ⅲ-14⑯)と述べた。結婚の権利を性別に関わらず等しく認めないことによって平等保護条項の違反を回避することはできない。その権利は、デュー・プロセス条項によって保障された自由(liberty)の一部であるからである。
 合衆国最高裁は、医師の幇助によって自殺する権利は、デュー・プロセス条項によって保障される基本的権利でないと判決した(Washington v. Glucksberg, 1997)。デュー・プロセス条項は、人種的、宗教的、性的マイノリティや女性など劣後の立場におかれた(subordinated)人々を保護するために新しい権利を認めるとする分析がある。Kenji Yoshino, A New Birth of Freedom?: Obergefell v. Hodges, Harvard Law Review, Vol.129, pp.147-180(2015) 参照.

2020年04月13日