店長 | さぁキューちゃん、いよいよ『たこ善復活プロジェクト』の始まりだよ。みんなで「たこ善」の復活のための問題解決を始めよう!! |
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キューちゃん | 店長、盛り上がるのはいいけれども、みんなって私と二人だけですよ。復活できるんだったらとっくにやれているでしょ。第一私はたこ焼きの作り方もバイトを始めたときからやっているだけで、全くの素人なのよ、役に立つ訳ないでしょ。勝手に『たこ善復活プロジェクト』なんて名前だけ決めちゃうんだから。第一「さぁ、始めよう」って何から始めるんですか? |
店長 | 大 丈夫、大丈夫!!「 問題解決」の定石といえば、『QCストーリー』というのがあるからそれに従ってやっていけばいいんだよ。 |
キューちゃん | えーーーー。『QCストーリー』って「QC七つ道具」とかいうのを使うやつでしょ。そんな難しいこと、か弱い女子高生にできるわけないじゃない。やっぱり店長一人で頑張ってくださいね。私はその間お客さんにたこ焼きを焼いておきますから。 |
店長 | おや、キューちゃん「QC七つ道具」知っているんだ。 |
キューちゃん | えぇまぁ、知っているというほどじゃないけれども、今年就職したお兄ちゃんが新入社員研修で「QC七つ道具」の勉強をさせられたって散々文句言っていたもん。研修に参加したのはいいけれども、講師の人の言っていることが全く分からないし、結局支給されたパソコンのソフトにデータを入れてグラフを作って以上終了。試験の時にグラフの名前を書けたから合格したんだって。まぁ合格はしたからいいけれど、名前を覚えたからって絶対役に立つ訳ない!ってブチブチ文句言ってたもん。私は、可憐な女子高生ですよ。そんな難しいことなんかできる訳ないじゃないですか。パソコンを買うお金があったらおしゃれとかしたいし。そんなことをやっている暇なんかないわよ。そんな時間があったら駅前でビラ配りでもしましょうよ。 |
店長 | まぁまぁ。キューちゃんが可憐かどうかの議論はさておいて。 |
キューちゃん | じゃ、何ですか!! 私が可憐じゃないとでもいうのですか。 |
店長 | ごめん、ごめん。キューちゃんは可憐で、か弱い女子高生です。 そうだとしてもだ、QCストーリーやQCツールってそんなに難しいものじゃないんだよ。 |
キューちゃん | でも、お兄ちゃんがぁ……。 |
店長 | だよね。確かに、「QC」っていうだけでものすごーく難しいものだというイメージはあるようだよね。QCってQuality Controlの略だし、英語だから外国製のものだと思われるんだけど、うれし恥ずかし昭和の日本語なんだよ。それで、QCストーリーができた「時代背景」を考えると、難しいパソコンソフトが必要だとか、難しい計算をしないといけないとか、そんなことが誤解だということが分かるだよ。 |
キューちゃん | 「 時代背景」って? |
店長 | キューちゃんは、朝ドラの「ひよっこ」って見てた? |
キューちゃん | 朝ドラですか?なんか突然ね。おかぁさんは朝ドラ大好きだから毎朝見てたわ。有村架純ちゃんがウェイトレスになるって話でしょ。 |
店長 | そうだよね。でもヒロインの有村架純ちゃんがやっていたみね子が東京に出てきた理由は覚えてる? |
キューちゃん | 武道館にビートルズを見に来たんだっけ? |
店長 | それは、峯田和伸さんがやってた宗男おじさんでしょ。そうじゃなくって、高校を卒業してお父さんを探しに奥茨城村から集団就職で東京のトランジスタラジオの工場に入ったんだよ。65年の春の話として描かれていたかな。みね子は高校を卒業してからの就職だけれども、同じ職場の藤野涼子ちゃんがやっていた豊子は中学を卒業して青森からやって来てたよね。「ひよっこ」の時代よりも少し前の50年代だと中学を卒業して地方から東京に集団就職をした子もたくさんいたんだよ。 |
キューちゃん | アニメ映画の「蛍の墓」のお兄ちゃんもその世代だよね。 |
店長 | そうなんだよ。当時の製造現場は、そんな集団就職で都会にやってきた若い人たちに支えられていたんだよ。そんな人たちの頑張りのおかげで、45年に終戦を迎えたときは日本中が焼け野原だらけだったのに、わずか10年ほどで急激な復興を迎えることになったんだよね。でも復興したとはいうものの当時の日本製品は、安いけれども粗悪品だと言われていたんだよ。 |
キューちゃん | 聞いたことある。映画の「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」で、1955年のドクが「故障するのも不思議じゃないな。”メイド イン ジャパン”って書いてあるぜ。」って言ったってやつね。社会の授業で習ったよ。 |
店長 | ふーん、授業を全く聞いていないと思ったらそんな話は覚えているんだな。ま、それだけでも役に立つってもんだね。それでね、粗悪品だという風評を何とかしなくてはいけないと、日本全国で全社的な品質管理をしようという活動が始まったんだよ。その中で62年には製造現場での品質管理活動の参考書として品質管理の普及を目的とした雑誌『現場とQC』が発行されたんだね。みね子達が就職する3年前のことだ。品質管理活動はQC活動とも呼ばれて、当時はかなり活発に活動をしていたみたいなんだよ。QC活動の本部もできて全国に支部ができたらしいよ。その時に改善を進めていく方法として、「QCストーリーで考えよう」ということになったんだよね。それで、その時に改善活動に共通して使う道具をまとめて「QC七つ道具」と名付けたんだよ。その活動のおかげで、1985年のマーティが「どういう意味? “メイド・イン・ジャパン”は最高だよ」というぐらいにまで日本製の品質への評価が高まったんだよ。 |
キューちゃん | やっぱりなんか難しそうな話だよね。キュートな女子高生には似合わない世界だわ。 |
店長 | キュートなキューちゃん、もうちょっと話を聞いて。さっきも話をしたけれども、当時の製造現場の中心は、「金の卵」と呼ばれていた集団就職でやってきた学校を出たばかりの若者たちだったんだよ。学校で特別な勉強をしてきたわけではない普通の若者たちが工場を何とかしないといけないと一生懸命勉強したのが「QC七つ道具」なんだよ。つまりキューちゃんと同世代の若者たちが使っていたものなんだよ。素敵な女子高生のキューちゃんにだって絶対分かるはずだよ。 |
キューちゃん | 素敵な女子高生って(テヘ)。そう言われちゃったら、やらないわけにはいかないよね。でも、お兄ちゃんが会社の研修で習ってきたみたいに、パソコンがないとQCツールってできないんじゃないの? 私、スマホなら持っているけど、パソコンは持っていないわよ。 |
店長 | うーーーーん。物心ついた時には家にテレビゲームがあったり、普通にパソコンがあったりした世代には実感が分かないことかもしれないね。 |
キューちゃん | どうゆうこと? |
店長 | 日本でパソコンが急速に普及したのはWindos95が発売された90年代に入ってからなんだよ。80年代には一部の人たちが使うだけだったんだよ。電卓だって、品質管理活動が始まった60年代には世の中にあったけれども、当時の価格は50万円以上もしていたんだ。当時の大卒初任給が1万円ぐらいだったんだから、高級車並みだったのかな。とても普通には手に入るものじゃなかったし、会社にだってほとんどなかった時代なんだよ。 |
キューちゃん | え! じゃどうやって計算していたの? スマホの計算アプリを使ってたの? |
店長 | そんな訳ないよね。ソロバンは知っているだろ。四則計算はソロバンでやったんだよ。それと、計算尺っていうのは知ってる? |
キューちゃん | なにそれ? |
店長 | いろんな目盛りが付いた動いた物差しなんだよ。それをうまく動かして目盛りを組み合わせると計算ができる道具なんだよ。 |
キューちゃん | なんか魔法の道具みたいね。 |
店長 | 魔法というわけではないけれども、なかなか使いこなせなかったから、計算尺で計算できるってちょっと自慢だったらしいよ。そんな時代に普及したものなんだから、QC七つ道具はパソコンがないとできないなんてことは大きな誤解なんだよ。計算もほとんどやらなくっても使えるものなんだよ。だって計算をするといったって手計算でやれる範囲でないと無理だったんだから、複雑な計算なんてできなかったんだよ。紙と鉛筆、定規ぐらいあれば十分できるのがQCツールなんだよ。 |
キューちゃん | そりゃそうだね。当時なかったものがないとできないなんて、無茶苦茶な話よね。つまり、QCツールって普通の人たちが、特別な道具を使わないでも使えるということなのね。お兄ちゃんに教えたら凹むだろうなぁ。 |
店長 | そういうこと。だから、か弱い、可憐で、素敵な女子高生のキューちゃんにだって使いこなせるツールだから、駆使して現場改善をやっていこうぜ! 明日からがんばろうね。 |
キューちゃん | キュートが抜けてる! |

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