20世紀末に始まった出版不況が、すでに10年を超えたのに、まだ続いています。余暇の過ごし方の多様化に伴う活字離れ、インターネットの普及による情報入手の容易化などの理由から、出版業界が構造不況業種になってしまったのでしょうが、意外にも新刊点数はかえって年々増える傾向にあるとのことです。しかも、『出版指標年報』(2008 年版)によると、とくに売れ筋の書籍となっているのがビジネス読み物だそうで、経済の研究に関ってきた者としては御同慶の至りと申すべきかもしれません。
 しかし、話はそれほど単純ではなさそうです。返品を前提とした委託販売制度が根を張っているもとで、資金繰りに窮した出版社が新刊を出し取次業者に納品して売り上げを計上する、けれど売れ残りの返品が多ければ代金の返却が重荷になり、次なる新刊書の発行を急がざるをえなくなる――こんなメカニズムが作動しているので、書籍がどんどん短命化し、それと関連しあいながら中身も大味化・薄味化するってことにもなっているのでしょう。表題やキャッチ・コピーはひどく派手で魅力的なのに、いざページを開いてみれば雑駁きわまりないというのでは、悲しくなります。また、丹精こめて仕上げられた質の高い学術書が、配本先の少なさ・配本期間の短さと値段の高さゆえに、人目につきにくく入手しにくいことにも、不条理さと淋しさを覚えます。
 私の目に留まるのは、陸続と世に現れる数多の経済書・ビジネス書のほんの一部にすぎません。実際に読めるのは、そのまた一部だけです。そうした中のさらに一部の学術書について、私なりの書評をする場を設けました。
ちょっと経済談義を私のあゆみ
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        【ラインアップ】

河音琢郎・藤木剛康編著『オバマ政権の経済政策―リベラリズムとアメリカ再生の行方―』(ミネルヴァ書房、2016年)
     
中本悟・宮崎礼二編著『現代アメリカ経済分析――理念・歴史・政策――』(日本評論社、2013年)
      
坂出健『イギリス航空機産業と「帝国の終焉」――軍事産業基盤と英米生産連携――』(有斐閣、2010年)
      
河音琢郎・藤木剛健康編著『G.W.ブッシュ政権の経済政策――アメリカ保守主義の理念と現実』(ミネルヴァ書房、2008年
      


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