人事労務トピックス


人事労務トピックス :2022年

両立支援等助成金(介護離職防止支援コース) (2022.12)

 昨今、介護と仕事の両立に悩む従業員が増えており、介護離職を余儀なくされる方も出てきています。そこで、介護離職防止に取り組む事業主に支給される「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」について紹介いたします。 この「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」は、「介護支援プラン」を策定し、プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰の取組みを行い、実際に介護休業を取得または介護両立支援制度を利用する労働者が生じた場合に、中小企業事業主に対して支給されるものです。支給額と主な要件は、以下の通りとなります。 
※<>内は生産性要件を満たした場合の支給額

【介護休業の取得の場合】 休業取得時:28.5万円 ※<36万円> / 職場復帰時:28.5万円 ※<36万円>
 プランに基づき、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の介護休業を取得するなど。

【介護両立支援制度の利用の場合】 28.5万円 ※<36万円>
 プランに基づき業務体制の検討を行い、以下の介護両立支援制度のいずれか1つ以上を対象労働者が合計20日以上利用していること。
  (所定外労働の制限制度、介護のための在宅勤務制度、時差出勤制度、法を上回る介護休暇制度 、深夜業の制限制度、介護のためのフレックスタイム制度、短時間勤務制度、介護サービス費用補助制度)

その他、新型コロナウィルス感染症対応の特例などもございます。詳しくは、下記の厚生労働省ホームページ(両立支援等助成金)をご参照ください。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba
_kosodate/ryouritsu01/index.html)

労働基準監督署の監督指導 (2022.11)

 厚生労働省では、本年11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、その一環として「過重労働解消キャンペーン」を行うとしています。長時間・過重労働の削減や賃金不払い残業の解消等を推進するため、長時間労働が行われていると考えられる事業場等に対する重点監督を、下記の要領で実施するとしています。監督署調査等で求められる賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、36協定届等の帳簿類について、直ぐに対応できるよう整備しておくことが求められます。

<主な対象事業場>
 @ 長時間・過重労働による過労死等の労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休    日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場など。
 A 労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等から、離職率が高い(若者の「使い捨て」が疑われる)企業など。
<重点的に確認する事項>
 @ 時間外・休日労働が「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」の範囲内であるか等について確認する。
 A 賃金不払残業が行われていないかについて確認する。
 B 不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導する。
 C 長時間労働者に対して、医師による面接指導等、健康確保措置(健康診断の実施等)が確実に講じられているか確認する。

尚、監督指導の結果、 重大・悪質な法違反が認められた場合は、書類送検や企業名の公表等の厳しい対応がとられます。

最低賃金額改定 (2022.10)

 厚生労働省は、中央最低賃金審議会が示した「令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について」を参考として、地方最低賃金審議会が答申した地域別最低賃金の改定額を取りまとめ、10月からの最低賃金額を発表しました。 この数年間で最低賃金額は大きく上昇しています。特に大阪府では初めて1,000円を超えました。発効年月日とともに、法令違反とならないよう今一度確認しておきましょう。
<都道府県別(関西地域)最低賃金額と発効年月日>

都道府県 最低賃金時間額 発効年月日
滋賀 927円 令和4年10月6日
京都 968円 令和4年10月9日
大阪 1,023円 令和4年10月1日
兵庫 960円 令和4年10月1日
奈良 896円 令和4年10月1日
和歌山 889円 令和4年10月1日

 尚、地域別最低賃金は、下記の厚生労働省のホームページでも確認することができます。
<厚生労働省地域別最低賃金の全国一覧>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun
/minimumichiran/ 
<令和4年度 最低賃金改定の概要>
・最高額は東京都の1,072円、最低額は沖縄県等10県で853円
・改定額の全国加重平均額は961円(昨年度930円) 全国加重平均額31円の引上げは、過去最高

育児・介護休業法の改正 (2022.09)

 令和4年10月1日より、育児・介護休業法が改正されることになりましたので、以下にその概要についてご案内いたします。
 ・産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(子の出生後8週間以内に、4週間まで取得可能となる育児休業)
 ・育児休業について、2回まで分割取得を可能とする。(現行法では、原則分割不可)

産後パパ育休
(出生時育児休業)
育児休業制度
(10月1日〜)
育児休業制度
(現行)
育児休業制度
(現行)
対象期間等 子の出生後8週間以内に
4週間まで取得可能
原則子が1歳
(最長2歳)まで
原則子が1歳
(最長2歳)まで
申出期限 原則休業の2週間前まで 原則1か月前まで 原則1か月前まで
分割取得 分割して2回取得可能
(初めにまとめて申し出る必要)
分割して2回
取得可能
原則分割不可
休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能 原則就業不可 原則就業不可
1歳以降の延長 (なし) 育休開始日を柔軟化 育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定
1歳以降の再取得 (なし) 特別な事情がある場合に限り再取得可能 再取得不可
 なお、改正内容の詳細についましては、下記の厚生労働省のホームページをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html(厚生労働省HP)

夏季休暇前の留意事項 (2022.08)

 働き方が多様化してきていますが、今月は夏期休暇やお盆休みなどの長期休暇を取得する方も多いかと思います。夏期休暇前には、取引先等に休暇スケジュールを連絡するなど、通常とは異なる業務が発生します。トラブルなく安心して休暇を迎えることができるよう、夏季休暇に入る前に確認しておきたい事項について、以下にあげさせていただきます。
<夏期休暇前の留意事項>
 ・休暇中の出勤者の把握(役員動静等も含む)
 ・休暇中の緊急連絡網の整備・確認
 ・取引先・顧客への休暇スケジュールの通知
 ・取引先・顧客の休暇スケジュールの確認・把握
 ・オフィスの整理整頓、
 ・オフィスの防犯・防火体制の確認
 ・休暇中の郵便物・宅配物の受け取り確認
 ・暑中見舞い、中元などの取扱い確認
 ・定期購読している新聞・雑誌類の取扱い確認
 ・休暇中のゴミの処理方法の確認
 尚、全社一斉休暇ではなく、従業員が個々に交替で長期休暇を取得する場合等では、取引先等に休暇スケジュールの通知を行う際に、代替業務を行う担当者名や期間等についても連絡し、担当者に引き継ぎを行っておくなどの配慮も求められます。

社会保険の適用拡大 (2022.07)

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大とは、これまで社会保険の加入対象外であったパート・アルバイト等の短時間労働者が新たに加入対象となることです。法改正により、2022年10月から被保険者数が常時100人を超える企業は、下記の4つの要件をすべて満たす短時間労働者について、社会保険に加入させる必要がでてきました。また、2024年10月からは、さらに適用範囲が拡大され、常時50人を超える企業でも同様の要件を満たす短時間労働者について加入が必要となります。
 <短時間労働者が被保険者になる要件>
 @1週の所定労働時間が20時間以上であること(契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含みません)
 A雇用期間が2か月以上見込まれること
 B賃金の月額が88,000円以上であること(基本給や諸手当をさし、残業代・賞与・臨時的な賃金等は含みません)
 C学生でないこと
 尚、上記の要件に該当しない短時間労働者は、引き続き社会保険の加入対象外となっています。
<ご参考> 
 現状、週の所定労働時間数および月の所定労働日数が正社員の3/4未満である短時間労働者は社会保険加入対象外となっています。

労働保険年度更新 (2022.06)

 本年も労働保険年度更新の申告・納付の時期(本年は6月1日から7月11日までに申告)がやってきました。本年度は特に雇用保険料率が年度途中で変更され注意が必要なため、その概要や計算・手続方法等についてご案内いたします。
 <年度更新の概要>
 労災保険と雇用保険を総称して労働保険といいますが、従業員を雇用する企業等では、毎年1回、この労働保険料を計算して申告・納付手続を行わなければなりません。この申告・納付手続を「年度更新」といいます。 年度更新の計算は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(年度)を単位として、その間に支払われた従業員の賃金総額に事業毎に定められた保険料率を掛けて計算します。また、労働保険料は概算分(概算保険料)を先払いし、翌年度に賃金総額が確定した後で精算(確定保険料)する仕組みとなっています。
 <令和4年度注意事項>
 令和4年度の雇用保険料率は、年度前半(4月〜9月)と、年度後半(10月〜令和5年3月)で異なります。そのため例年と異なり、概算保険料は前半と後半の2段階で、それぞれ計算したものを合算する必要があります。具体的には、「確定保険料算定基礎賃金集計表」にある「概算保険料(雇用保険分)算定内訳書」を利用して、年度前半(4月〜9月)と、年度後半(10月〜令和5年3月)を計算し、「労働保険 概算・確定保険料申告書」へ転記します。

 尚、この申告・納付手続が遅れると、追徴金(納付すべき労働保険料等の10%)を 課される場合がありますのでご注意ください。

パワーハラスメント防止対策の義務化 (2022.05)

 労働施策総合推進法により、本年4月から中小企業においても、パワーハラスメント(パワハラ)の防止対策を講じることが義務化されました(大企業は、令和2年6月から義務化)。厚生労働省は、パワハラ防止対策の具体的内容について、下記の「事業主が講ずべき措置等」をあげています。今一度確認しておきましょう。

<事業主が講ずべき措置等>
@ 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、 労働者に周知・啓発すること
A 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、 労働者に周知・啓発すること
B 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
C 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
D 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
E 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
F 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
G 再発防止に向けた措置を講ずること
H 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、 その旨労働者に周知すること
I 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、 労働者に周知・啓発すること
尚、パワハラ事案の対応について厚生労働省等より指導、勧告等があった際に適切な対応をとらなければ、企業名が公表される可能性もあります。

雇用保険料率の変更 (2022.04)

 雇用保険法の改正により、令和4年度雇用保険料率が4月と10月の2段階で引き上げられることになりました(4月は、事業主負担分のみ、10月からは、労働者負担分と事業主負担分の両方が引き上げられます)。本年は年度の途中で保険料率が引き上げられるので注意が必要です。
<令和3年度>
・一般の事業      9/1000 (うち労働者負担 3/1000 ・ 事業主負担 6/1000)
・農林水産業等     11/1000 (うち労働者負担 4/1000 ・ 事業主負担 7/1000)
・建設業        12/1000 (うち労働者負担 4/1000 ・ 事業主負担 8/1000)
<令和4年4月1日〜>
・一般の事業      9.5/1000 (うち労働者負担 3/1000 ・ 事業主負担 6.5/1000)
・農林水産業等   11.5/1000 (うち労働者負担 4/1000 ・ 事業主負担 7.5/1000)
・建設業      12.5/1000 (うち労働者負担 4/1000 ・ 事業主負担 8.5/1000)
<令和4年10月1日〜>
・一般の事業    13.5/1000 (うち労働者負担 5/1000 ・ 事業主負担 8.5/1000)
・農林水産業等   15.5/1000 (うち労働者負担 6/1000 ・ 事業主負担 9.5/1000)
・建設業      16.5/1000 (うち労働者負担 6/1000 ・ 事業主負担10.5/1000)

 尚、従業員数が多い企業では、労働保険の年度更新(労働保険料概算・確定申告)の申請時に、納付保険料額の増額が予想されますので、事前に担当部署へアナウンスしておくとよいでしょう。

道路交通法施行規則の改正(アルコールチェック等の義務化) (2022.03)

 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上又はその他の自動車を5台以上(原動機付自転車を除く自動二輪車については、1台を0.5台として計算)使用している事業所では、安全運転管理者を選任しなければなりません。令和4年4月から道路交通法施行規則の改正により、安全運転管理者の行うべき業務として、運転前後におけるアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認、その確認内容を記録すること等が段階的(令和4年4月1日施行・令和4年10月1日施行)に義務付けられました。これら義務化の内容について、下記に紹介いたします。
<令和4年4月1日からの義務>
 @ 運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること。
 A 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること。
<令和4年10月1日からの義務>
 @ 運転者の酒気帯びの有無の確認を、アルコール検知器を用いて行うこと。
 A アルコール検知器を常時有効に保持すること。
尚、安全運転管理者を選任した時は、15日以内に事業所管轄の警察署に届出をする必要があります。

新型コロナウィルス支援策 (2022.02)

 新型コロナウィルス感染症により影響を受けた企業に対する主な支援策について、その概要を紹介いたします。
 1.事業復活支援金
 <給付対象>
 下記@とAを満たす中小法人・個人事業者が給付対象となります。
@ 新型コロナウィルス感染症により影響を受けた事業者
A 2021年11月〜2022年3月のいずれかの月(対象月)の売上高が、2018年11月〜2021年3月の任意の同じ月(基準月)の売上高と比較して、50%以上又は30%以上50%未満減少した事業者
<給付額>
  基準期間の売上高 − 対象月の売上高 × 5か月分 (上限あり)
 <申請期間>
 2022年1月31日(月)〜5月31日(火)
  (参照アドレス・事業復活助成金:https://jigyou-fukkatsu.go.jp/) 
 2.雇用調整助成金
  売上高等が減少した企業等が、労働者を休業させた場合などに、休業手当等の全部又は一部を支給する助成金です。本年より助成率・上限額等が縮小されていましたが、緊急事態宣言の実施区域、まん延防止等の対象区域で知事による休業等の要請に協力する企業について、助成率を最大10/10に上限日額15,000円に引き上げる特例が適用されます。
 (参照アドレス・雇用調整助成金: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html#abstract)

雇用保険マルチジョブホルダー制度 (2022.01)

 令和4年1月1日から、雇用保険の加入について65歳以上の労働者を対象とした「雇用保険マルチジョブホルダー制度(高年齢被保険者の特例)」が創設されました。 従来の雇用保険は、主たる事業所での労働条件が週所定労働時間20時間以上 かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たす場合に適用されていました。 新設された雇用保険マルチジョブホルダー制度では、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して下記のような適用対象者の要件を満たす場合に、本人がハローワークに申出を行うことで、雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。 その概要について以下に紹介させていただきます。
<適用対象者>
 @ 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
 A 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
 B 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
 通常の雇用保険資格の取得・喪失手続は会社側で行いますが、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、原則として適用を希望する労働者本人が手続を行う必要があります。 会社は、本人からの依頼によって雇用の事実や所定労働時間などの必要な証明を行うことになります。この証明を受けて本人が、適用を受ける2社の必要書類を揃えて ハローワークに申し出します。また、マルチ高年齢被保険者の資格を取得した日から雇用保険料の納付義務が発生しますので、いつ資格を取得したか本人にご確認いただく必要があります。

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