人事労務トピックス


人事労務トピックス :2024年

最低賃金額改定 (2024.10)

 厚生労働省は、中央最低賃金審議会が示した「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について」を参考として、地方最低賃金審議会が答申した地域別最低賃金の改定額を取りまとめ、10月からの最低賃金額を発表しました。 この数年間で最低賃金額は大きく上昇しています。発効年月日とともに、法令違反とならないよう今一度確認しておきましょう(違反した場合は、50万円以下の罰金に処されることがあります)。
<都道府県別(関西地域)最低賃金額と発効年月日>

都道府県 最低賃金時間額 発効年月日
滋賀 1,017円 令和6年10月1日
京都 1,058円 令和6年10月1日
大阪 1,114円 令和6年10月1日
兵庫 1,052円 令和6年10月1日
奈良 986円 令和6年10月1日
和歌山 980円 令和6年10月1日

 尚、地域別最低賃金は、下記の厚生労働省のホームページでも確認することができます。
<厚生労働省地域別最低賃金の全国一覧>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun
/minimumichiran/ 
<令和6年度 最低賃金改定の概要>
・最高額は東京都の1,163円、最低額は秋田県の951円。
・改定額の全国加重平均額は1,055円(昨年度1,004) 全国加重平均額は、過去最高の引上げ。

労働安全衛生関係手続の電子申請の原則義務化 (2024.09)

 労働者が労働災害により休業や死亡等した際には、労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出しなければなりません。このように企業の労働安全衛生について、労働安全衛生法等により一定の報告義務が課せられています。 この労働安全衛生関係の手続について、令和7年(2025年)1月1日より原則電子申請による報告が義務化されることになりました(ただし、経過措置として、当面の間、電子申請が困難な場合は、書面による報告が可能です)。 令和7年1月1日から、電子申請が義務化される報告は、下記の通りです。

<原則義務化される報告>
 ・労働者死傷病報告
 ・総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
 ・定期健康診断結果報告
 ・心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
 ・有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
 ・有機溶剤等健康診断結果報告
 ・じん肺健康管理実施状況報告

 なお、インターネット等を利用して、企業が労働基準監督署に行う申請や届出の支援をするサービス「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用することもできます。詳しくは、下記の厚生労働省ホームページをご参照ください。
 ・https://www.chohyo-shien.mhlw.go.jp/(厚生労働省)

労働基準監督署の調査(臨検監督) (2024.08)

 労働基準監督署には、会社に立ち入り、書類の確認を求めたり、経営者や労働者からヒアリングを行い労働関係法令が遵守されているか調査する権限があります。この立入調査を臨検監督(臨検)といいます。ある日突然、予告なしに労働基準監督署から連絡があり、対応を迫られる場合もあり得ます。これは企業の規模を問わず実施されます。そこで調査(臨検監督)の種類や代表的な確認資料等を以下にご紹介いたします。

<調査(臨検監督)の種類>
 @定期監督(年間計画に基づき毎月事業所を選定して行う定期的な調査)
 A災害時監督(重大な労働災害が発生した際、原因を調べ、再発防止を図るため行われる調査)
 B申告監督(労働者からの申告(賃金未払等の法令違反)によって行われる調査)
 C再監督(上記@〜Bの調査で指摘された事項が是正されているかを確認する調査)

<代表的な確認資料等>
 @労働者名簿
 A出勤簿・タイムカード
 B賃金台帳
 C労働条件通知書(雇用契約書)
 D時間外・休日労働に関する協定届(36協定)
 E年次有給休暇管理簿
 F就業規則・賃金規定等
 G健康診断の実施結果(個人票)
  調査の結果、法令違反や問題点等がある場合は「是正勧告書」または「指導票」が交付されますので、是正や改善を行い労働基準監督署へ報告をする必要があります。

事務所新設時の手続(労働・社会保険関係) (2024.07)

企業が支店や事務所を新設した際には、管轄官庁へさまざまな届出が必要となります。届け出先や提出期限など多岐にわたるため、提出漏れなどのリスクも考えられます。そこで、支店(事務所)新設時等の届け先一覧を以下にあげさせていただきます。
<支店(事務所)新設時の手続一覧>

                    
理由 手続書類名 届出先 提出期限
労災保険成立(加入)させるとき 労働保険保険関係成立届 労働基準監督署10日以内
   〃 労働保険概算保険料申告書 労働基準監督署50日以内
雇用保険成立(加入)させるとき 雇用保険適用事業所設置届 公共職業安定所(ハローワーク)10日以内
   〃 雇用保険被保険者資格取得届 公共職業安定所(ハローワーク)採用月の翌月10日迄
社会保険成立(加入)させるとき 健康保険厚生年金保険新規適用届 年金事務所5日以内
   〃 健康保険厚生年金保険資格取得届 年金事務所5日以内
   〃 健康保険被扶養者(異動)届 ※家族を扶養するとき 年金事務所5日以内

 尚、各届出内容によって、添付書類等が必要になる場合がありますので、ご留意ください。

労働保険年度更新に関するFAQ (2024.06)

 今月は、労働保険の年度更新手続(労働保険概算保険料の申告・納付と前年度の保険料を精算 する確定保険料の申告・納付)を行う必要があります。(期限は、6月1日〜7月10日)そこで、労働保険年度更新に関するFAQを下記に紹介させていただきます。

Q. 保険料の計算をしたら、小数点以下の数字が出てきました。端数処理(切り上げ、切り捨て、四捨五入等)はどのように行いますか?
A. 切り捨て処理を行います(労災保険と雇用保険の算定基礎額が同額の場合、両保険の算定基礎額の合計を両保険の料率の合計に乗じた後切り捨てます)。

Q. 計算した労働保険料が高額になりました。分割して支払いできますか?
A. 概算保険料のみで40万円(労災保険、雇用保険のどちらか一方のみの適用事業所については20万円)以上の場合等には、3回に分割納付(延納)ができます。

Q. 今年の様式「令和5年度算定基礎賃金集計表」が少し変わったような気がします。どのような理由で、何が変更されたのでしょうか?
A. 昨年の申告時に利用された「令和4年度算定基礎賃金集計表」については、令和4年度の年度途中において、雇用保険料率が変更されたため、前期と後期に分けて集計する必要がありました。そのため、様式も前期と後期に分けて集計するものになっていました。令和5年度については、そのような年度途中での雇用保険料率の変更がなかったため、年間での集計となり、それに伴い様式も変更(期間別確定保険料算定内訳等の削除)されました。

労働時間に関するFAQ (2024.05)

 企業が労務管理や給与計算を行う際、労働時間を適切に把握することが必要になりますが、労働時間に該当するかどうか、その判断に悩むことがあるかと思います。そこで労働時間の取扱いについてのFAQを、下記にご紹介いたします。

Q. 出張時にJR(新幹線)などの公共交通機関を利用しました。この出張先まで往復する時間は、出張扱い(労働時間)として取り扱いますか?
A. 労働時間は、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより決定されます。一般的に出張中の移動時間は自由な利用が保障されていることが多いため、原則として労働時間として取り扱いません。一方、移動中にPC等を利用して業務を指示している場合等では、労働時間として取り扱います。

Q. 従業員を教育研修等に参加させる時間は、労働時間として取り扱う必要がありますか?
A.  教育研修等を受ける時間が、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、原則として労働時間として取り扱いません。ただし、教育研修等へ参加しないと減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、労働時間として取り扱われます。

労働条件明示ルールの改正 (2024.04)

 労働基準法施行規則の改正に伴い、2024年4月1日から労働条件の明示ルールが変更されることになりました。労働契約の締結時や更新のタイミングで下記の労働条件の明示が新たに必要となります。

明示のタイミング 新しく追加される明示事項
全ての労働契約締結時と有期労働契約の契約時 1.就業場所・業務の変更の範囲
有期労働契約の締結時と更新時 2. 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限) の有無とその内容
・最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する 場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明することが必要になります。
無期転換ルール※に基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時 3.無期転換申込機会
4.無期転換後の労働条件
・無期転換後の労働条件を決定するに当たって、就業の実態 に応じて、正社員等とのバランスを考慮した事項について、有期契約労働者に説明するよう努めなければなりません。

※ 同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えるときは、労働者の申込みにより、期間の定めの ない労働契約(無期労働契約)に転換する制度。
 労働条件明示ルール改正について、詳しくは下記の厚生労働省HPアドレスをご参照ください。
・https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156050.pdf(厚生労働省)

年次有給休暇について (2024.03)

 3月は年度末にあたるため、多くの企業において、4月基準で付与されている年次有給休暇の管理業務が発生するかと思われます そこで、年次有給休暇の要件や留意事項について、以下にあげさせていただきます。

 <年次有給休暇の付与要件>
 労働基準法では、下記の2つの要件を満たした労働者に対して、原則10日以上の年次有給休暇を付与する義務があります(パートタイム労働者のように所定労働日数が少ない労働者についても、所定労働日数に応じて年次有給休暇を比例付与しなければなりません)。
  @雇い入れの日(入社日等)から6か月間の継続勤務している
  A全労働日の8割以上を出勤している  
 付与された年次有給休暇は、原則2年で消滅時効を迎えるため、取得日数や残日数の管理等が求められます。また、年次有給休暇の管理簿等を労働者毎に作成し、3年間保存する義務があります。
 このように企業側に年次有給休暇を付与する義務等がある反面、労働者には、権利として年次有給休暇を取得することが認められています。しかし、権利だからと言って、会社に無断で休んだり、事後に年次有給休暇を申し出たりする労働者もおられるようです。 労働者側においても年次有給休暇の取得の際に、取得予定日を事前に(できるだけ早めに)申し出ることや関係部署(上司・同僚・取引先など)への連絡や休暇中の業務に関する引き継ぎなどに留意することが求められます。

厚生労働省の認定制度「えるぼし」「くるみん」 (2024.02)

 厚生労働省は、雇用管理の改善に取り組む企業を支援するための認定制度を設けています。 認定されると、企業イメージの向上や優秀な人材の確保などのメリットが考えられます。また、認定レベルに応じて、税額控除加算や日本政策金融公庫から低利融資を受けることができるなどの優遇措置もあります。 この厚生労働省が定める認定制度の概要について、以下に紹介いたします。

(1)「えるぼし」認定制度
 「女性活躍推進法」に基づく認定制度です。一般事業主行動計画の策定・届出を行った事業主で、 女性の活躍促進のため取り組みの実施状況が優良な企業を、「えるぼし認定企業」、より厳しい基準を満たした企業を「プラチナえるぼし認定企業」として認定します。
(2)「くるみん」認定制度
 「次世代育成支援対策推進法」に基づく認定制度です。一般事業主行動計画の策定・届出を行った事業主で、子育て支援に関する計画に定めた目標を達成し一定の基準を満たした企業を、「くるみん認定企業」、より厳しい基準を満たした企業を「プラチナくるみん認定企業」として認定します。 不妊治療と仕事との両立支援に取り組む企業を認定する「プラス」認定制度も始まりました。

尚、認定制度の詳細につきましては、下記の厚生労働省ホームページをご参照ください。
・「えるぼし」認定制度 :  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
・「くるみん」認定制度 :  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba
 _kosodate/kurumin/index.html

「年収の壁」対策 (2024.01)

 厚生労働省は、いわゆる「年収の壁」に対応するために、令和5年10 月からキャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)を新設しました。 この助成金は、パートやアルバイトなどの短時間労働者を新たに社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させ、社会保険料の控除による手取り額が減少しないように収入を増加させる取組みを行った場合に、労働者1人あたり最大50万円が事業主に対して助成されるものです。
 労働者の手取り額が減少しないようにする取組みとして、次の2つのメニューがあります。

(1)手当等支給メニュー
  新たに社会保険が適用される労働者に対して、手取り額が減少しないように賃金をアップしたり手当(社会保険適用促進手当)を支給した場合に、最大1人あたり50万円の助成金が支給されるものです。
(2)労働時間延長メニュー
  新たに社会保険が適用される労働者に対して、週の所定労働時間を4時間以上延長するか、賃金を増額しながら週の所定労働時間を1〜4時間未満延長した場合、1人あたり30万円の助成金が支給されるものです。

詳細については、下記のホームページをご参照ください。
「厚生労働省 キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内」
 ・https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001181112.pdf 

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