指揮をするために
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ここでは、本格的な指揮法の話ではなく、アマチュアの人が練習時間をかけずに、簡単にアプローチできる方法を
紹介しています。さらに深く勉強したい場合は、いろいろな指揮法の本が出版されているので、それを参考にしてください。
文章表現が古いですが、小沢征爾氏など多くの名指揮者を育てた、齋藤秀雄氏の指揮法の本もいまだに版を重ねています。
少し前までは、外国で出版された本の翻訳本が多かったのですが、最近では、アマチュアにもわかり易く解説した本も出版されています。
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1.指揮棒の振り方
よく指揮棒の振り方を習いたいという人がいますが、指揮棒の振り方は、習って学習しなければいけないような問題ではありません。 「習うより慣れろ」、で対応できます。プロの指揮者ならば、指揮棒から演奏している音楽に対する指示が出ることが要求されますから、 棒を振る練習は大切でしょう。それでも、その棒の振り方が最優先ではありません。まして、アマチュアの吹奏楽団や合唱団の活動での指揮者は、 棒を振る訓練をするわけではないのですから、そんなに振り方を気にする必要はありません。それより、指揮棒を振ることに気を取られてしまって、 大切な音楽の流れを指揮者が邪魔している場合も見受けられます。音楽をみんなで楽しむために、指揮は、かっこよく振るより、 みんなにわかりやすく振ることが出来るようになればいいのです。
2.図形
指揮の棒の振り方の基本は、音楽の教科書に載っているような振り方で十分でしょう。あまり小さな動きは気にせずに、 描いている図形が相手からはっきり見えるように動かせばいいのです。複雑に動かせば動かすほど、 指揮は見にくくなります。シンプルに振る、極端な場合、三拍子なら、「三角形」を描いても指揮は出来ます。 一度、鏡の前で自分の指揮棒の動きを見てみるといいでしょう。注意するところは、自分で思ったより、 縦または横方向に図形が伸びたり縮んだりしていませんか。図形のバランスが悪いのは、図形の形が悪くなっている付近で 腕の動きが一定の速度で動いていないからです。この動きが指揮を見にくくする、原因の一つです。
3.一定のテンポ
図形の形を見ていてきれいにするには、まず、一定のテンポを維持する練習をすればいいでしょう。 メトロノームで出したテンポを覚えてから、メトロノームなしで振り始めます。30秒くらい後で、もう一度メトロノームを鳴らしてみると、 腕の動きとズレています。腕に力が入っているほど、このズレはおおきくなりますから、リラックスして振ることが大切です。 まずは、レガートな一定の速度で腕が動かせるように心がけましょう。図形の大きさを変えながら、この一定のテンポを保つ練習は、 判りやすい指揮への第一歩です。
4.手首とひじ
次に、図形の練習をする時に注意することは、ひじと手首です。 手首が必要以上に曲がっていませんか?ひじを張りすぎて、 脇があいていませんか?この2つとも、一定のテンポと指揮棒の動きにズレを生じさせてしまいます。 まず、ひじが大きく動くと、棒の先とひじの動きが違った動きをしていまい、演奏者にとって指揮を大変見にくい状態になることがあります。 脇を軽く締めて、あまり動かないようにして一定のテンポを出してください。手首は、テンポ感の微妙な表現をする時には必要なのですが、 基本練習の時に大きく動かす必要はありません。こちらも、リラックスした状態でレガートな動きをマスターして下さい。
5.一歩先
もう一つ注意しなければいけないことがあります。「長さを合わせる」でも書いたように、 指揮棒は演奏される音楽より先に動いていると言うことです。 指揮棒の1拍目は、棒を上に上げた時が開始位置ですが、実際に音の出るのは棒を振り下ろした瞬間です。つまり半拍後なのです。 指揮棒は半拍前に動いて、演奏者への指示を出しています。しかし、指揮をはじめたころは、どうしても音楽と一緒に指揮棒を動かしてしまいます。 これでは、音楽を後追いしてしまっているのです。演奏される音楽より、半拍早く音楽の指示を出す。 (場合に寄れば、もっと早く)これが出来るようになれば、基本的な棒の振り方は出来上がりと言っていいでしょう。
6.左手
次は左手の動かし方です。(サウスポーの方、ごめんなさい。ここでは、右利きの方を前提に書きますので、左右を読み替えてください。) 左手は主に強弱などや音楽の表情に指示によく使われます。しかし、その指示が無意味な動きをして、かえって指揮を見る人から邪魔になっている場合が あります。まず、それを避けるには、今まで書いてきた基礎的な振り方を使って、左手を動かさずに右手だけで 振ってみましょう。右の手だけで、テンポや強弱や表情など、演奏者に指示しなければならない事を振れるようにしてみましょう。 その後で、右手だけで表現し切れなかったことを、左手を使って指示を出してみましょう。こうすることで、左手の無駄な動きの多くは避けられます。 音楽の表情を伝えたり、パートに入る指示を出したり、左手の動きは大切なのですが、まずは、わかりやすく指示が出るように心がけて 左手の動きが出来るようにして下さい。
7.左手2
もう一つ、左手の使い方で大切なのは、音を止める方法です。これは、右手を使う方が難しいので、左手の得意分野といえるでしょう。 曲の最後では、右手を使っても問題はないのですが、曲の途中であるパートの音を止めるというような場合には、 右手は音楽の流れを維持しています。このため、その流れを維持しながら、なおかつ音を止める指示を出すというのは、とても難しい作業です。 そこで、左手の登場となります。右手は、テンポを維持しつつ、左手で音を止める位置を指示する。このような、共同作業が必要になってきます。 慣れれば、右手と左手を違った動きを自然にできるようになりますが、うまく行かない場合は、異なった手の動きの練習 をするといいでしょう。例えば、どちらかの手で2拍子、他の手で3拍子という風に。
8.変拍子
最近の吹奏楽曲や合唱曲には、変拍子を使った曲が多く見受けられます。この、変拍子の振り方の説明です。 以前、ホルストの「木星」の5拍子の部分を、一筆書きの星の形にして振っているのを見たことがあります。 発想としは、面白いですが、大変見にくい指揮でした。変拍子を振るのに、このように考えすぎる必要はありません。 基本の2拍子や3拍子を振ることが出来れば出来るのです。 5拍子を例にあげると、指揮譜をよく見てみると5拍子は2拍子と3拍子、または3拍子と2拍子で書かれています。 どちらのパターンになっているのかは、アクセントの位置に注目しなくてはいけないので、出てくる拍子の順序は間違えないでください。 この順番が分かれば、5拍子はその順序で2拍子と3拍子に分けて振ればいいわけです。 7拍子なら、3+4や2+3+2などに分かれています。このようにして、基本の振り方を組み合わせれば、変拍子を振ることが出来ます。
9.指揮棒を使う、使わない?(1)
オーケストラや吹奏楽を指揮するときには指揮棒を使いますが、合唱を指揮するときにはあまり指揮棒は使いません。 これには、理由があります。まず、人数の問題です。前者は人数が多い場合が多く、また、楽器を持っているために座る場所を広く取り、 広い範囲に指示を出す必要があります。これに対して、合唱は比較的、少数な場合が多く、場所も広く取りません。このため、吹奏楽など場合は、 指揮の動きをはっきり示すために指揮棒が必要です。ですので、合唱の場合でも人数が多いときには、指示を隅々にまで伝えるために、 指揮棒を使うことを考える必要があります。
10.指揮棒を使う、使わない?(2) NEW
もう一つのポイントは、歌詞が「ある」か、「ない」かです。歌詞のない楽器への指揮の場合、音の出るポイントを明確にする必要があり、 それを示すには指揮棒を使う方が効果的です。それに対して、合唱の場合は、歌詞の発音のタイミングを指示する必要があります。 しかし、歌詞を発音するときの子音の発音タイミングは、音の出るポイントより少し前にあり、しかも、同じ子音でも、発音のニュアンスによって、 そのポイントは前後します。このため、合唱で指揮棒を使うと、発音のニュアンスがうまく伝わらない場合が出てきます。 動きが鋭くなく、音の出るポイントが少しはっきりしない手の動きの方が、子音の発音タイミングを合わせやすく、 言葉のニュアンスを出せます。合唱の時でも、歌詞よりリズム感を出すことを優先するような曲の場合は、 指揮棒を使ったほうがいいでしょう。逆に、吹奏楽でも、ゆったりした曲で微妙なニュアンスを要求されるような時には、 指揮棒なして指示を出したほうが効果的です。指揮棒を使うかどうかは、演奏する曲の状況に合わせて決めていきましょう。