感じて楽しむ吹奏楽

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 吹奏楽の面白さの一つは、いろいろな楽器の音が、混じり合い、溶け込み合い、また、 逆に溶け込まずに旋律を浮き出させたりすることなどを通しての音楽作りにあるといえます。 最初は、ずれてぶつかりあい、うまく合わなかった音が、練習によって整理され、ブレンドされて味のある音や、 表情豊かな音楽が作り出されていきます。この時に、吹奏楽は素晴らしい感動をともないます。 そのブレンドされ、混ざり合った音のことを、ここではサウンドと呼ぶことにします。 ここからは、そのサウンド作りに役に立つノウハウです。このサウンド作りをするためには、 みんなで合奏して音楽を合わせていくことが必要で、この時間が大切です。そしてその時間が、合奏する人にとって楽しくなることが、 いいサウンド作りにも影響します。しかし、指導者が、合奏のときに、どんなポイントに注意すればいいのか、 何が悪くてうまく合わせられないのか、が分からなくて戸惑っていると、楽しい合奏にはなりません。そんな時に、 この章にあげたポイントを参考にして、うまく合奏をまとめてください。また、演奏を直すだけでなく、 吹奏楽団員もみんなと合せるためには何が必要かを知り、楽しみながら一緒にサウンド作りをすることが出来るようになれば、 合奏することが単なる合わせるための技術としてではなく、心の中から出てくる音楽作りへと繋がっていくことでしょう。

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1.音楽作りの全体図

 次にあげるのは、吹奏楽で必要な練習の形を、指導者・指揮者がその練習にどのように関わっているかを、 合奏の人数という軸との関係で図にしたものです。この章で取り上げる、「サウンド作りのノウハウ」が、 指導・指揮する人が充実させていく力と、音楽作りを進める上で必要な練習内容をつなぎ、その間を埋めていくもので あることが、判ると思います。この、合奏指導法とでも言うべきものは、個々の指導者の持っている経験には蓄積されるのですが、 それをなかなか他の人には伝えにくく、また、初めて指導する人には、すぐには得られないものです。次の項目からこの合奏指導法です。

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2.出だしを合わせる

 吹奏楽には、木管・金管・打楽器といろいろな種類の楽器があり、それぞれ音を出すための準備の仕方が違います。 しかも、金管楽器という同じ種族の楽器でさえ、マウスピースの大きさの違いや、管の長さの違いにより、 大きい楽器ほど早く音を出すための準備をしなければいけません。このため、何も意識せずに吹いたのでは、 出だしの音は合わないのがあたりまえです。では、出だしを合わせるにはどうするか。音を出す準備の時から合わせればいいのです。 音を出す準備、つまり、みんなで同じブレスをしましょう。 出だしを指揮者の棒の動きに合わせて音の出だしを合わせることより、みんなで一緒にブレスをして音を出せば、 とても合いやすいのです。もちろん、演奏のために息のいらない打楽器も同じようにブレスをします。

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3.長さを合わせる

 指揮者は1拍目を上から下に向かって振り下ろします。ですから、1拍目の開始位置は指揮棒を上げたところです。 しかし、実際に音が出るポイントは指揮棒が下におりたところです。つまり、開始の指示は上で出ているのに、 実際に音の出るところはそこから半拍遅れているのです。このことを音の長さという点から考えると、 実際の音の長さは指揮の指示の終わりより、半拍ほど長く吹かないと正しい長さで演奏していないということです。 この点に注意して、基礎練習で長さを合わせる練習をしましょう。

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4.チューニングを合わせる

 なかなか、合わないのがチューニング音だと思っておいたほうがいいでしょう。でも、合わせないといけない音です。 まず、楽器の演奏技術として、均一な音程が出せることが前提条件です。そのためには、しっかりした、いい音で吹くことが大切です。 しかし、基準になる音を聞きながら合わせようとするので、気持ちがどうしてもその音へ行ってしまいます。 そして、基準音につられて、自分の吹いている音が不安定な音になっている場合が多いのです。 まだいい音が出せない、どうしても基準音につられてしまう場合には、特効薬ではないけど効果のある方法があります。 響きの中で合わせる方法です。合わせたい音と五度の関係の音 (例えばドとソ、またはドとソとドとオクターブを重ねてもよい)を同時に出して、その響きを基準に音を合わせる方法です。 五度の響きが、音を聞きやすくしてくれて、合わせやすい効果を生みます。

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5.音の名前を合わせる

 吹奏楽には移調楽器が沢山あります。その楽器の「ド」の音が、実際に演奏される音としては「シのフラット」になったり 「ファ」の音に鳴ったりする楽器です。そのため、楽譜に「ド」の音が書いてあっても、吹く楽器によって出る音が違っていることになります。 これが、みんなで合わせるときに、勘違いを起こして混乱の元になってしまいます。楽譜に書いてある音と、 実際に出ている音を区別して呼びましょう。例えば、楽譜に書いてある音を指摘するときには、 「ドレミ….」(階名)を使い。実際に出ている音(実音)は、英語読みもしくはドイツ語読み「C,D,E,F,G,A,B,(H)」として、 使い分けるのです。こうして、今、みんなが注目している音が正しく認識できるようにしましょう。 最初は、戸惑いますが、自分で実音として音を読めるようになると、楽譜に対する関心や読みが深くなって、 思わぬ違った効果を上げることもあります。

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6.和音を合わせる

 和音をうまく合わせるコツです。まず、歌って声で合わせる練習をしましょう。声は、純正調で和音の響きを確認することが出来ます。 この時、注意することは、しっかりした声で合わせることです。小さな声、かすれた声ではこの感じは分かりません。 音を出す順番は根音、第5音、第3音の順です。まず、根音と第5音で完全5度の響きを作った上に、 第3音を重ねます。長3和音の場合、平均率より半音の約1割ほど音程を下げたところが純正調で合うポイントです。 でも、こんなことを知らなくても、声だと感覚的に合うポイントが分かります。 だから、この方法が有効なのです。この時、第3音の音量を少し小さめにすると、よりきれいに響きます。 この、和音が合っている感覚を耳で覚えてから、楽器を使って同じ手順で音を重ねていくと和音を合わせる感覚が身につきます。

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7.発音を合わせる

 合唱などでは普通の練習ですが、吹奏楽で「発音を合わせる」というのは奇妙な感じがするかもしれません。 しかし、この発音という問題は吹奏楽にとっても大切な基礎の要素です。例えば8分音符3つを、「タタタ」と吹くのか、 「タッタッタッ」と吹くのか、「ダダダ」と吹くのか、と言った音の表情の違いを表現することが 「発音を合わせる」という意味です。楽譜には、音の高さや長さは正確に書いてあります。 しかし、この音の表情に関しては楽譜から演奏者自身や指揮者が読み取らなければなりません。 その読み取る力をつけるために、一つの音符にスラーやスタッカート・テヌートなどいろいろな表情をつけて基礎練習をする必要があるでしょう。 このような練習を取り入れて、音楽の表情つけるという演奏法を身につける練習をしておく必要があります。

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8.リズムを合わせる

 リズムがうまく合わない初心者に対する対処法です。楽器を吹き始めたころには、楽器を吹くことに力んでしまい、 他のことなど気にすることができずに、うまくリズムを合わせられないことがあります。 こんな時に有効なのが、体を使うことです。 例えば、行進曲のような曲を演奏するときには、実際の足踏みをしながら演奏してみると、演奏の力みからも開放されますし、 体を使ってリズムを感じることもできます。具体的には、まずは、座った状態で、いつもは足先だけ動かしてリズムを取っているのを、 足ふみに変えてみましょう。これで慣れたら、その場で立ち上がって足踏みしながら演奏してみましょう。 これで、リズムのノリはかなり良くなってきます。耳でリズムを聞くことも大事ですが、リズムは体で感じるのが一番です。

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9.弦楽器のイメージ

 吹奏楽で弦楽器の話をするのは、変に感じるかもしれません。しかし、管弦楽曲をアレンジしたものや、最近の優れた吹奏楽の曲の中には、 弦楽器の音色や奏法をイメージして書かれている部分が含まれています。そのような部分を演奏する場合に注意が必要です。 なぜなら、管楽器は息を送るのを止めたとたんに音が切れます。しかし、弦楽器は弓が弦を離れても すぐ弦の振動は止まらないので、少し音が残っています。 この特色により、吹奏楽でこのような曲を演奏する場合、音符を実際より少し長めに演奏 しないと弦楽器の雰囲気はでません。また、弦楽器の音の出だしは、ゆっくり膨れ上がるように出る音と、 弦をひっかいてすばやく立ち上がる音など、いろいろな表情を出すことが出来ます。ですので、音の出だしの部分についても、 そのイメージに合った、音の立ち上がりにすることも注意点が必要です。

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10.音程の不思議

 世界標準音の「ラ」の音は、周波数でいうと440ヘルツです。オクターヴ上の「ラ」の音はその倍の880ヘルツ。 そして、オクターヴ下の「ラ」の音は半分の220ヘルツ。すると、ここで不思議なことが起こります。 つまり、標準音から1オクターヴ上の周波数幅は、880−440=440ヘルツだけど、標準音から1オクターヴ下の幅は 440−220=220ヘルツになります。すると、標準音より上の1オクターヴは、440ヘルツを12等分したものが半音であるのに対して、 下の1オクターヴは220ヘルツを12等分したものが半音になります。つまり、上の音ほど半音の幅が広くなります。 このことは、1ヘルツ周波数がずれると、1秒間に1回うなりが増えるので、間隔の数値が広いほど、うなりが生まれやすいことを示しています。 高い音ほど音程を正確に取るのが難しい、このことを意識して合奏のときに全体の音を聞いてください。

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11.録音の不思議

 いい演奏を聞くことは大切です。しかし、それを真似して演奏してみようというのはやめましょう。 特に、ライブ録音ではなく、CD等を作成するために録音された演奏を真似するのは危険です。 CD等を作成するために録音された演奏は、マイクを何本も立て、そのマイクの音をミックスして出来た演奏です。 ということは、楽器のソロがあった場合、他の楽器の音量を落として、ソロの楽器のマイクから入ってきた音量を上げるというようなことが可能です。 つまり、実際の演奏では出来ない表現が可能なわけです。ライブ録音にしても、録音するマイクの位置でかなり演奏の印象は異なっています。 このように、録音された音は、なんらかのフィルターを通して出てきた音です。演奏は参考にしても、その演奏をまねて演奏する必要はありません。 自分の音を大事にして、いい演奏を心がけるようにすることが大切です。

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