感じて楽しむ吹奏楽

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 「スコアリーディング」の本来の意味は、指揮者がスコアから音楽を読み取り、その音楽を分析して演奏のために準備をすることです。 プロの指揮者は、この「スコアリーディング」に、多くの時間を費やしています。しかし、アマチュアの吹奏楽団や合唱団の指導する人は、 その準備ために多くの時間は取れないですし、そもそも、「スコアをどうやって読めば」と最初から戸惑います。 しかし、やはり、少しでも事前にスコアに目を通しておくと、効率の良い練習が出来ます。それより、スコアから音楽を発見した時には、 とても大きな感動が得られます。ここでは、スコアを読むための基本的な考え方のポイントを挙げていきます。 そんなに多くの時間をかけずに出来ることを中心にしていますので、是非、練習の前に、スコアを読んで見てください。

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1.音楽の三要素 

 まず、スコアから音楽の三要素を探し出しましょう。音楽の三要素とは、「いい耳つくろう」の 10で取り上げたように、「旋律」・「和音」・「リズム」です。どのパートに旋律があり、 それを他のパートが和音やリズムで支えているのかを見つけ出しましょう。ついでに、旋律に絡みついている「対旋律」がある場合は、 それもチェックしておきましょう。

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2.同じ動き 

 次に見ておく点は、同じ動きをしているパートを探しだすことです。三要素のそれぞれが、 どのパートの組み合わせて動いているのかをチェックします。もちろん、練習ではそれらの同じ動きをするパートがずれていないか、 よく聞いて合わせる必要があります。

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3.違った動き 

 今度は、反対のことです。合唱の場合と違い、吹奏楽の演奏者は、演奏する時にはパート譜しか見ていません。 そうすると、例えば、木管はクレッシェンドしてるのに、金管はデクレッシェンドしているというようにスコアに書かれている場合、 演奏者はそんなこと意識せずに演奏しています。スコアでしか、その情報を確認できません。違った動きを しているところも確認しておきましょう。

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4.息つぎ

 次に、三要素それぞれの息継ぎを考えておきましょう。上達すれば、演奏者は自分で息継ぎの位置を 考えて演奏してくれます。しかし、どうしても初心者から上級者までがまじって一緒に活動する場合、演奏力に差がでます。その差に合わせて、 息継ぎを多めに設定したり、また、力を伸ばすために適正な息継ぎの配置で必ず演奏するよう指示したりする工夫が必要です。 それを、スコアを見るときに考えておきましょう。もちろん、決めた位置を、個人練習やパート練習で、事前に合わせる練習も必要ですが。

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5.音楽の全体像

 ここまでは、分析的に曲を見てきましたが、今度は、曲の全体をつかんでおきましょう。 曲には、形式というものがあります。この、形式というのは、文章で言えば、起承転結に当たります。これを意識しないで文章を読んでも、 文章の意図をつかみにくいように、音楽でも、ひとつの曲としてのまとまった大きな流れを、つかむことは出来ません。 だからと言って、あまり、厳密にこれをやろうとすると、第一主題がどうの、第二主題がどうのと、かなり専門的になり、かえって分析的になって、 細部にだけ目が行ってしまってしまい、「木を見て森を見ず」になってしまいます。そのため、「この曲は『早い・遅い・早い』で出来ている」とか、 「旋律は3種類ある」とか、大きな流れをつかむことをまず心がけましょう。そのほうが、 曲全体を把握するのに役に立ちます。

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6.旋律

 次は、音楽の三要素、それぞれをスコアから読む時のポイントです。まず、「旋律」です。旋律を見るときは、 旋律の重なりを注意しておきましょう。吹奏楽の場合は、高音楽器に旋律が来た場合、 よく、 そのオクターブ下で音を重ねます。この方が、断然、響きが安定します。ですので、どの楽器と、どの楽器が重なっているのか、 チェックしておくといいでしょう。しかし、間につなぎの楽器がなく、2オクターブ以上離れて旋律が重なっているときは、 特殊な効果を狙っているときだと考えられます。例えば、フルートとユーフォのみが、旋律を吹いているというような場合です。 間に、サックスなどが重なっていると響きは安定するのですが、そうでない場合は、 作曲家がこの不安定な感じを必要としていると 考えていいでしょう。合唱の場合は、ユニゾンの所をチェックする必要があります。 ユニゾンは全員が同じ音程を歌うので、音程は取りやすいのですが、音質まで合わせて、完璧に仕上げるのは、かえって難しい所です。 また、ユニゾンとその前後の和音が鳴っている所のバランスを整えるのも工夫がいります。 ですので、合唱では、ユニゾンの箇所をチェックしておきましょう。

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7.和音

 次は、「和音」をスコアから読む時のポイントです。そのポイントを一言で言えば、低音に注意です。 例えば、トロンボーンに「ドミソ」の音が鳴っているときに、バスが「ド」の音を鳴らしているのなら、 これは「ドミソ」の和音で問題ないのですが、「ラ」の音を鳴らしている場合があります。 これだと、合わせて、「ラドミソ」という和音になります。これによって、和音の種類が変わってしまいます。 合唱の場合も、同じようなことが声と伴奏の間で起こります。合唱は、3つないし4つの声部で判断する場合が多いので、 和音の判断は簡単なように思えますが、声で「ドミソ」の音が鳴っているときに、伴奏の音に「ラ」が入っていたりします。 ただ、厳密に言えば、「ドミソラ」という和音なのか、「ラドミソ」という和音なのか判定する必要があるのですが、 いずれにせよ、単なる長三和音でなくなってしまいます。明るい長三和音、シックな短三和音、開放的な増三和音、緊張感のある減三和音、 基本になるこの四つの和音を判定する時に、低音に注意しながら、どの和音になるのかを読み取って下さい。

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8.和音2

 「和音」をスコアから読む時のもうひとつのポイントです。基本的な和音は、三度を二つ重ねて作りますね。 ところが、この重なって出来た三つの音が作り出す音程(三度・四度・五度・六度)のうち、完全に協和して響くのは四度と五度だけです。 理論的に言うと、四度と五度(一度と八度もそうなのですが)は、完全協和音程ですが、三度や六度は、不完全協和音程と言います。 三度や六度には少し濁りがあるのです。この五度と四度が、曲の中のどこにあるかを見ておきましょう。 この完全協和音程の五度や四度がちゃんと合うと、それだけで大きなパワーを出します。 他の音との関係によっては、バランスが崩れてくる場合があります。合唱の場合にその効果は大きく、 この五度や四度だけが浮き出てくる場合があるのでチェックが必要です。

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9.リズム

 「リズム」をスコアから読む時のポイントは、組み合わせの妙を見ることです。 リズムは、いろいろなパートの組み合わせで構成る場合が多いのです。ポップス系の曲の場合には、 リズムをドラムが一人で演奏している場合もありますが、それでも、スネア・ベース・シンバルなどいろいろな楽器が組み合わされています。 音に注目して、基本の四拍子を考えてみても、1小節の四拍の中には、表拍と裏拍を合わせて8個の音があります。 この8個の音を組み合わせるのに、表の拍を大太鼓・裏の拍を小太鼓という単純な組み合わせから、1拍目と2拍目の裏と3拍目はバス、 2拍目の裏と3拍目の表と4拍目はホルンなど、と組み合わせはいろいろ出来ます。その上に、アクセントをどこにつけるかでも、 その8倍変化があり、それらの変化の組み合わせは数え切れません。その曲が、どんな音の組み合わせで、どんな楽器の組み合わせで、 どんなアクセントの組み合わせでリズムを構成しているのかを見ていきましょう。

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10.移調楽器

 吹奏楽の場合、いろいろな楽器が使われます。そして、その楽器の中に移調楽器と呼ばれるものがあります。移調楽器とは、 その楽器の「ド」を吹くと、ピアノの「ド」ではなく、違った音が出る楽器のことです。例えば、クラリネットは「シのフラット」が出ますし、 アルトサックスは「ミのフラット」が出ます。これらは、その楽器が発達してきた過程で、その音を基準にして楽器の大きさなどを決めたほうが 良い響きになるので、自然とそのように楽器が発達してきたためです。楽器の「ド」とピアノの「ド」がずれているので、 実際に鳴っている音は何なのか、スコアを読む時に読み替えが必要になってきます。Bb(変ロ)、Eb(変ホ)、F(へ)が、 主に出てくる移調楽器の調で、たとえば、Bb(変ロ)「シのフラット」が基準になっている楽器は、「ド」と1音(二半音)離れているので、 実際になっている音というのは1音低く読みかえる必要があります。このように読み替えた音は、V-4で書いたように、 記譜上の音と実際の音の名前を区別して読む習慣をつけるといいでしょう。

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11.楽譜と楽器

 楽器と楽譜の関係の話です。面白いことに、たいていの楽器は、楽譜の五線の間が吹きやすい音が出ます。 つまり、加線、五線の上と下へ加えた線になると出し難い音になります。前項の移調楽器であろうと、五線の間は吹き易い音です。 五線の妙と言っていいでしょう。ただ、例外といっては大げさですが、テナーサックスは下第1線のドが限界音になるのでその手前から 出しにくい音になります。また、ホルンは五線を超える手前からすでに難しい高音域になります。楽譜と楽器のこのような関係は、 まだ技術的に未熟な演奏者に対して適切な指導を行えるので、事前にチェックしておくといいでしょう。

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12.特殊楽器 NEW

 吹奏楽の場合、特殊楽器に注意しておきましょう。最近の曲の中には、特に打楽器の中に、通常の楽器構成にはない、特殊な楽器を要求する曲があります。 何か他の楽器で代用できる場合はいいのですが、出来ない場合は音色や雰囲気が変わっても、代用の楽器で演奏するか、 その曲の演奏そのものをあきらめなければいけない場合があります。また、通常ある楽器でも、小編成のバンド場合には、オーボエやファゴットなどを 編成に加えるのが難しいです。その場合も、他の楽器に置き換えるのですが、クラリネットやサックスでは音色が重なってしまいうまくいかない場合があります。 その時は、オーボエをトラペットのミュートで演奏するなど、金管楽器で代用するなど、特殊楽器にはいろいろな工夫が必要です。

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