こんな家は、危ない!!!
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2004年10月21日更新

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耐震診断
主に木造住宅の耐震診断

 私は、一級建築士の杉原正治です。先の阪神淡路大地震の際一週間後に神戸に行きました。主な目的は、私が神戸市役所に勤めている時に設計した建物の被害状況を把握するためのものでした。電車バスを乗り継いで神戸の中心部に向かう途中で見た物は、今まで大学で学んだ木造建築物の倒壊状況と全く違っていました。
私の第一印象は、”木造建築物がバラバラに壊れている”と言うことです。怪獣にでも襲われたかのようにバラバラに壊れています。今までの地震で倒れた木造住宅の写真は、マッチ箱を押さえて倒すように原型をとどめていました。これは、後で詳しく述べますがひとことで言えば、弱い建物が壊れたと言うことです。地震の来ない時には、壊れなくても余力のない建物は、地震の時には壊れてしまいます。
 私が市役所で設計しているときに課長に言われたことがあります。「君の設計は、オーバーストロング(強すぎる)だ。過剰設計だ!」と言われたことがあります。しかし建物さえ倒壊しなければけがをする人は少ないと確信していました。そして、神戸に地震がきたとき私の設計が、正しいことが分かるだろうと心の中で思っていました。はからずも私の設計した建物は残り自説が証明されましたが建築にたずさわる者として多くの生命が、建物の倒壊によって奪われたことを大変悔やみます。
 個々の建物が地震時に倒壊しなければ尊い生命が奪われることは、少ないと思います。道が狭くても、公園がなくても、なかんずく共同溝やライフラインが無くても、建物さえ潰れなかったら死ぬ人は少ないと思います。
 結論から言うと個々の建物を絶対的に強くすることが地震に対する最大の備えだと思います。そして強くすることは、そんなにお金のかかるかことではありません。構造計画(建物の強度を保つために考える総合的な計画)と意匠計画(平面図や立面図などを、考える計画)を巧みに連結させて考えればかえって廉価になることさえあると思います。 



芸予地震について 
☆広島(芸予地震)の地震でなくなられた方にお悔やみ申し上げます。本稿でも取り上げていました内容でしたが、誠に残念です。
(詳しくはわかりませんが、一名の方は、建物から飛び出して(そのような飛び出すことが出来る位の揺れだったのでしょうか。)外部に取り付けていた鉄製のバルコニーが落ちて亡くなったそうです。もうひとりの方は、隣の建物のブロック造の壁(軽量鉄骨の骨に壁に10cmの普通ブロックを積み上げた造り)が家を直撃しその下敷きになったものです。
 また新幹線の橋脚の梁(つなぎ梁)に亀裂が生じたとのことです。写真で見ると柱は、鋼板を巻かれ補強されておりました。そのため比較的弱い梁に亀裂が生じたものと推察されます。これは梁降伏(降伏とは、フックの法則に従わないような変形で変形が増加しても力が比例して増加しない状態)形破壊(柱よりまず梁が降伏して地震エネルギーを吸収します。梁が降伏しても建物は、比較的原型を保つことが知られています。)といって建物に対しては、安全性が高い壊れ方といわれています。大きな地震が起こったとき、全くの被害を生じないように建築物を設計することは、可能です。しかし何百年に一度あるかどうかわからない地震に対して完璧を求めるのは、如何なものかという意見があるのも事実です。これに基づき梁の破壊を容認する設計方法があります。私は反対です。比較的原形を保つと言っても破片が落下するのは、事実ですし危険です。それに丈夫にするのは、それ程不経済では、有りません。それに一度亀裂を生じた梁は放って置くこと出来ないでしょう。
 だからといってまた梁をむやみに補強すれば、今度は接合部の破壊につながります。接合部の破壊は、脆性的な破壊で危険です。梁はむやみに補強しないのが寛容です。


さて具体的にどうすればよいかというと次のようです


  .施行令の壁率を満足すること
当たり前のことですがこのことが意外と守られていません。難しく考えないで点検して下さい。
以前 NHKテレビで3階建ての欠陥住宅について放送がありました。ペンシルビルと同じ様な間口が極端に狭い住宅の揺れ(剛性のなさ)についてのものです。間口の狭い敷地に木造で3階建てをたてると1階は、開口部をとれなくなる恐れがあります。だからと言って柱と同材をたすき掛けに筋交いに入れ壁率(法規上は、実際長さの5倍になります。)を、無理やり満足させても剛性が不足するだけでなく剛性率が不均一になり大変危険です。また、柱の浮き上がりや、接合部についても検討すべきです。
  .均等に壁を配置すること(偏心率が小さいこと)
 このことは、間口が狭く奥行きが長い建物については、特に重要です。正方形に近い構造物の場合は、正面に耐震要素がなくても横に壁があることで、ねじりにに対処できますが、細長い建物には、ねじり力が、かかり極めて危険です。
  .耐久性があること。
耐久性とは、当初の耐力を維持することです。通常の方法で建築された建て物は、相当の余力(設計では、考えに入れられていない耐力、たとえば材料の安全率や、構造計算には、入れられていない間仕切り壁などの安全側の誤差の合計)があり、それを維持することが必要です。
 このことは、先の地震の時新しい建物より古い建物が被害が多かったことからも容易に想像されます。
 耐久性は、使用材料の良否や保守管理の良否によって決まります。
   a使用材料は、耐久性のあるものを、使ってほしい。
■耐久性のある材料 
○防蟻処理を施した木材(防蟻処理には、耐用年数があります。耐用年数が過ぎた場合は、すみやかに再度防蟻処理を施す必要があります。再施工できるような設計のしておきましょう。床下点検が出来るように点検口・床下の高さの確保をお願いします。)
○桧/杉(杉材は、優れた材料です。特に芯のある柱材あるいは、赤みの板材は、優れています。)松・芯持ち材(木の芯のある木材)
○断面の大きな鉄材(腐食しろを見込んであること)(ステンレススチールは、多くの種類がありますので見分けがつかない。またもらい錆があり薄い材料は、注意が必要です。)
○水に濡れない・乾燥している所にある材
■耐久性の乏しい材料 
○防蟻処理がない木材・米栂・芯去り材(木の芯がない木材)
○合板(タイプ1でも合板は、劣ります。接着面が剥がれ千枚めくりのようになります。)
○断面の薄い鉄材
○湿気のあるところに使われた石膏ボード
使用例;合板ラス下地(モルタル塗りの下地です。)は、最近よく使われている工法ですが、壁が濡れなくても内部結露(気密性が高いため)によって合板は、濡れる場合が多いものです。合板自体は、腐朽に対して強いが(赤みのラワンならほとんど腐らない)接着層がつぶれて千枚めくりのようになります。それに対して杉板小幅板(バラ板)張りラス下地は、極めて耐久性が高いです。解体現場などをよく見ますが30年以上たち表面のラスモルタルは、ひびだらけなのにも拘わらず内部の杉材は、新品同様でまだ香りさえ残っているのです。これは、小幅板の通気性のため内部結露が起こらなかったためと、杉材の耐久性によるものと考えられます。
   正しい保守管理をしてほしい。
定期的なペンキ塗り・シーリングの取り替え・雨樋の補修・屋根のふき替え設備機器の更新等耐用年数を良く見極めて補修すること。補修期間等については、後述します。 
 4.階毎の剛性率が著しく違わないこと。
 .金物等を正しく使うこと。金物は、特に優れた材料です。しかしボルト締めを用いる時は、増し締めが必要です。
金物にあまり頼りすぎるのもいかがなものかと思います。
木材は、乾燥すると細くなります。よく土台のアンカーボルトが緩んでて、手抜き工事だと言うことがありますが、これは、乾燥して土台が細くなってしまったためです。これらの問題がでないように,実際は難しいのですが、乾燥済みの材料(含水率計でで容易にはかることが出来ます。)を使いたいものです。
 .家を、正しく使用すること。
正しい使用とは、具体的に言うと難しいのですが、常識的な使い方です。
 .建物を乾燥させるように努めること。
木造でも鉄筋コンクリート造でも同じです。乾燥させると当初の耐力を維持します。それどころか木でもコンクリートでも耐力は、増加します。
  a.建物の周りに花壇等を作って嵩上げしない。
施行令では、1階の床高は、地盤高さより45cmと決められています。これは、室内の環境を、良くするために決められているばかりではなく、建物を乾燥させるための規定です。(前述の再防蟻処理時に必要です。)建物の周りは、建物の中の地面の高さよりも低くしてかつコンクリート敷き(犬走りに)にする事。家の回りは、意図的に低くしようとしないと、すぐに高くなってしまいます。ポーチやバルコニーも含みます。
 極端に悪い事例;木造住宅の周りに花壇を作り土台天端よりも高く土を盛り上げ植木を作っている。毎日水をまいている。
 事例の解説;建物の外壁と基礎のコンクリートの境目は、換気口の位置で判断できます。換気口は、土台下に設けますので、
換気口上端が、基礎天端です。もっとも一般的な外壁であるラス下地モルタル塗り(内部に黒色のアスファルトフェルト紙を含む)は、空気に接する面においては、下地等が優れており水がかりの無いよう軒等で覆われていれば、極めて耐久力のあるものです。これは、アスファルトフェルト紙等が水蒸気は、通すが水は、通さないことに由来します。しかるに常に外壁が土で濡れた状態にあると反対に内部に水蒸気が侵入し内部の木材をぬらし腐らせます。このようなことが常時起こると建物の土台は、すぐにその力を失います。
  b.建物周りに植木鉢等を置かない。
建物の周りに植木鉢を置いたりすると風通しが悪くなったり水をまいたりしていつもジメジメします。
 .建物の床下は、乾燥させるよな作りにすること。
 コンクリート敷きや木炭敷きにすること。地下水位が低く、水はけの良い土質の場所においては、土のままの方が良いと思います。
全面地盤改良した場合は水が地中に抜けません。コンクリート敷きの場合も漏れた水(結露水も含みます)がある場合は、かえって建物に悪い影響があります。
 .床下換気口を作ること。施行令では、外壁5m毎に300平方センチメートル以上と決められています。
施行令で大きさ設置個数が決められていますが、それ以上にもうけることが大切です。特に布基礎の場合建物内部の布基礎は、大きく切り開くこと。風の通り道を調べ風上と風下に設けること。布基礎を大きく切り開くためには相当な高さと強度が必要です。
 10.一階床高は、できるだけ高いこと。
建物の耐力維持には、かかせませんがバリヤフリーと相反します。
 11.雨漏りがなく、水仕舞い(水仕舞いとは、雨やその他の水(結露水を含みます。)を適切に処理すること。)が適切に行われていること。
  a.軒、けらば(家の妻壁の上にある屋根のでた部分)、ひさしが適切な長さがあること。日本では、雨は、下から降ると考えてもいい位強い風と雨が同時に家を、襲います。なるべく雨にかからないようにすること
  b.シーリング(コーキングとも言う)に頼った水仕舞いを、してはいけません。シーリングは、少なくとも水圧のかかるところ(壁側面も風圧によって水圧がかかります。)に使っては、いけません。
  c.樋をもうけ木の葉等で塞がれないように保守する事。
 12.外部に木を使わないこと。
前にも述べたようにどんなに庇や軒があっても雨は、かかります。木の回りは、木が乾燥して隙間を生じます。その部分から必ず水が浸入します。日本には、ハーフティバーコンストラクション(木造の半分だけ見せる物)は、不向きです。
 13.木造の家には、雨が降り込むようなバルコニーを設けない。
 雨が漏らないようにもちろん防水工事を何らかの方法で行うと思いますが、どのような防水工事でも完全は、あり得ない。水は、どんなに小さい穴からでも漏れます。その下で暮らしていても分からないほどの、少しの水であっても少しずつ木を腐らせます。防水層が新しいときは、完全と言えますが、しかし完全であれば完全であるほど風通しが悪く内部結露を生じやすいものです。
 木が腐ると例えそれがごく一部であっても全体が腐ったと同じです。(1本の梁のごく一部が腐ってもその梁は、その腐った部分から折れてしまいます。) 耐力は、低下します。
 よく屋根付のアルミのバルコニーを見かけますが、始めから水仕舞いを考えて、家に取り付けていたら問題は、ありません。しかし取り付け部位に水仕舞いの良い水切り等を、設けていないと極めて危険です。もちろん屋根が充分に長く家に雨がかからない事が基本です。
 14.筋交い等の水平力を、負担する部材が堅固でかつ土台や梁等にしっかりと固定されていること。
筋交いは、その部材が充分に太く、かつ土台や梁(胴差と普通言います。)に堅固に固定されている事が必要です。
 みなさんは、私が筋交いのことについて述べないのは何故かと不思議に思っていることでしょう。耐震と言えば筋交いと思っている人は、多いと思います。もちろん筋交いは、必要です。筋交いや筋交いに代わる部材を持たない家は、ありません。しかし先の地震を細かく見るとき本当に筋交い等が、いや筋交い等だけが、耐震要素か疑いが見えます。木造の倒壊建物の多くは、老朽化建物です。昭和30年以前の建物には、筋交いは、普通ありません。しかし中には、本当に古い建物でも倒壊していないものがあります。これは、明らかにそれ以外の耐力(余力)によっている物だと言うことが分かります。
 15.基礎が堅固であること。それに付随する土台等もしっかりと固定されていること。
 基礎が堅固であることは、必須条件です。地盤調査に基づいて適切な基礎を、選ぶことが寛容です。しかし経済性と兼ね合いで考えれば、特に細長い家でなければ逆スラブのべた基礎を推奨します。(逆スラブは、顎(基礎からはみ出した部分)を作りにくいため。)また土台(基礎の上に載っている横木)と固定するアンカーボルトの位置、個数も基礎施工時に確認すべきです。
 アンカーボルトは、建物の出隅、筋交いの下、壁の下その他耐震要素の下に設けて下さい。
 16.筋交い以外の耐震要素を大事にして下さい。
 耐震と言えば筋交いと考えるのは、早計です。施行令でも筋交いの倍率は、低く定められています。
筋交い以外の耐震要素と言えば、壁、垂れ壁、腰壁、柱、控え柱、方杖、ですが壁の中に含まれる貫、胴縁、桟、化粧用プリント合板・石膏ボード、外壁下地板、壁小舞、土塗壁、通柱、管柱などです。これらの物が一体となって地震の時の衝撃に耐えます。これらを出来る限り多くし、かつ堅固に相互に連結する事が賢明です。そして何よりその強度を維持するために保守していくことが必要です。
 17.靱性(じんせい:粘りがある性質)のある構造にすること。
地震の外力は、衝撃的です。靭性のある部材・結合方法を使うことが賢明です。
■靭性のある構造;大断面の柱・梁、特に通り柱は、意図的に大きくし、胴差しの切り欠きも少なくする。欠点のない木材、ボルト接合、金物接合のような補助部材を使うことや、適切な断面を持つ貫、長ほぞ差し、鎌継ぎ、などの木継ぎ手、仕口も有効です。
■脆性を含んだ構造:少数の釘による接合、適切な材端がない釘・ボルトの接合、ボルト接合でも木材を裂くような方向にかかる力を受ける継ぎ手、接着剤による接合、耐震要素に極小な断面を用いた構造、反対に一部のみを異常に強くした構造、短ほぞ差し、あり継ぎ、のような簡単な木継ぎ手、
 18.基礎を含めてコンクリートで作られた部分があるときは、所定のかぶり厚さを維持するようにスペーサーを、適宜使用すること。
 このことは、新幹線のコンクリートは、なぜ落ちたで詳しく説明しています。もちろん鉄筋の数・場所等が正しいことは、必須条件です。後日詳述


■その他
地震の時、けがをしないために、以下のことをお守りください。
1,ベッドで寝てください。家具が倒れてきても少しは、安全です。地震後部屋が家具で埋まってしまいます。
2,家具は、必ず倒れます。家具の近くには、居ないでください。
3,棚の上のものや、テレビ台の上のものは、落ちてくると言うより飛んできます。決して近くにいないでください。
4,一階は、危険です。お住まいの家が危険と思われる方は、少しは、二階の方が安全です。
5,隣の家は、大丈夫でしょうか。隣の家や、ビルがふっ飛んできます。隣の家のピアノが壁を突き破って飛び込んできた事例もあります。隣に煙突や鉄柱が立っていませんか。
6,家の外には、出ないでください。瓦などが飛んできます。ひさしの中にいても同じです。こわいですよー。見た人の証言に依れば、「ばんばん飛んできて壁に当たって砕けるのが見えた」ということです。
7,今回の地震は就業時間外の人が多かったのであまり問題になりませんでしたが、職場は、家庭より危険です。倉庫は、物で埋まり、オフィスは、ロッカーやキャビネットが倒れ、お店は商品で埋まります。もし天ぷらでもしていたら熱い油が飛んできます。直下型の大きな地震に、予告の最初の小さな揺れはありません。突然縦波より始まります。足場の上の人は、必ず落ち重い物を持っている人は、必ず落とします。クレーンで吊り下げた物は、必ず落ち、ワイヤーは切れ、ビームは折れる、こともあると考えた方がいいでしょう。
職場の防災を一から見直すべきです。
8,地震の時机の下にかくれるように習ったことがあると思います。確かに有効な手段だと思いますが、直下型地震では、果たして可能かどうか疑問です。突然大きな縦揺れが来ます。その時人間は立っていることは、出来ません。(先の地震の時私は、寝ていました。這って子供の所に行こうとしましたが、体が跳ねるように揺れるのでそれもできませんでした。)揺れと同時に棚のものが横に、飛んできます。日頃から職場や家庭の環境を整備しましょう。

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