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内丹術(内観法) 
“nei-dan” (the inner alchemy)
 
マルセル・デュシャン《彼女の独身者達によって裸にされた花嫁、不二》
  Marcel Duchamp,"La Mariée mise à nu par ses célibataires, même"
 (別称《大ガラス》)1915-1923
 
【石川虚舟註】題名の末尾にある même は、「さえも」と誤訳されてきたが、 ロゴス(精神)とエロス(生命)は「不二」の意味。類語として「色心不二」。   ⇒ 性命双修
因に、「彼女の独身者達によって裸にされた花嫁」という言い回しは、*錬金術の図像に由来する。
  *cf. John Golding, Duchamp: The Bride Stripped Bare by her Bachelors, Even
      (東野芳明訳、みすず書房、1981、p.87)
題名の趣意は、「ロゴスとエロスの不二は、錬金術の如く アンフラマンス  (玄妙)  」。
 
デュシャンの初期の大作である《大ガラス》は、北京・白雲観の 『内経図』 " Nei Jing Tu" ( Inner Passageways Illustration ) に依拠している。
  『内経図』は陰刻された縦長の碑刻であり、墨を地とするその拓本は、 ガラス絵のように地が透け、図が浮いて観える。 上部には仙山の峰々が描かれ、山中から水が麓へ流れ落ちる構図は、山水画のようではあるが、 座する身体の側面図でもある。
「泥丸宮」のある九峰山は脳であり、
「上丹田」 は両眼の間、つまり眉間の後方にある。 「中丹田」 は心臓近くに、 「下丹田」 は臍の下に位置する。
  それぞれの丹田に「気」を循環させることによって、体内に「金丹」を錬成しようとするのが、 「内丹」の行気法である。 性命双修、 つまり性(精神)と命(生命)の融合(不二)によって、 不老長生の霊薬「金丹」を錬成しようとする。
  『内経図』は、不老長生への身体的実践を促し、 デュシャンのいう「網膜的絵画」を離脱している。
     ⇒   アンフラマンス       ⇒   L.H.O.O.Q.
     ⇒   石川虚舟《石庭内経図》(僊窩)2007~?
 

北京・白雲観 『内経図』 (随風庵蔵)