一句集:全員参加の誌上句会 (ひこばえ俳句会)


   誌上句会・一 句 集   


 一句集:全同人、全会員参加の誌上句会     


令7、5月号一句集(第672回)(730号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    石垣に残る戦火や冬はじめ    上田 芳枝
    水時計発祥の地や龍の玉     北沢 恭子
    空白のなき一年よ日記果つ    田中 道代
    つぶやきの全て消えたる初日かな 北畠 誠
特 選 息災は母ゆずりなり冬帽子    上田 圭子

      楠 田 かつ子 選   
    妻の吐く毒舌にも慣れ年暮るる  草信 勝之
    宿裏はすぐ日本海千鳥鳴く    田中 美月
    空白のなき一年よ日記果つ    田中 道代
特 選 枯野行くもう会えぬ友偲びつつ  大前 邦子

      田 中 美 月 選   
    マスクして無口女になりすます  山口ちあき
    紅梅の空うつくしき天守閣    安孫子一山人
    息災は母ゆづりなり冬帽子    上田 圭子
    人生は下り坂かな山眠る     松岡 節子
特 選 音たてて発つ鴨陣を解かぬ鴨   楠田かつ子

      互選高点句より     
15点 妻の吐く毒舌にも慣れ年暮るる  勝 之
11点 マスクして無口女になりすます  ちあき
10点 紅梅の空うつくしき天守閣    一山人
    石垣に残る戦火や冬はじめ    芳 枝
 9点 きさらぎや風のサインは変化球  邦 夫
 8点 空白のなき一年よ日記果つ    道 代
    枯野行くもう会えぬ友偲びつつ  邦 子
 7点 銀杏枯れ尽せぬ言葉黙とする   知 美
 6点 風に来て風に消えゆく風花ぞ   けい子
    清談の庵にいつしか時雨訪ふ   重 悟
    まねき上げ終へて師走の京の朝  康 子
    柚子二個で息災想ふ冬至の湯   みのる
    湯の街の蟹の行商しぐれをり   千鶴子
    水時計発祥の地や龍の玉     恭 子
 5点 音たてて発つ鴨陣を解かぬ鴨   かつ子
    息災は母ゆずりなり冬帽子    圭 子
    電飾を巻かれ憂き世や冬木の芽  佰 代
    宿裏はすぐ日本海千鳥鳴く    美 月
    つぶやきの全て消えたる初日かな  誠

このページのトップへ

令7、4月号一句集(第671回)(729号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    掃き寄せて落葉のハート若き僧    服部 康子
    行く人に慕情かさなる枯葉かな    芝  惠子
    庵への風の抜け道秋海棠       愛須 淑子―――――――
    石清水野鳥寿ぐ七五三        大橋 保司
特 選 紺碧の空を画布とし冬ざくら     田中 美月

      楠 田 かつ子 選   
    故郷の日の香風の香梅探る      大前 邦子
    しぐるるや弥勒菩薩に微笑まれ    安孫子一山人
    純粋と言ふ気づまりや白障子     守作けい子
特 選 狸小路に茶団子三串時雨けり     上田 圭子

      田 中 美 月 選   
    晩節や素直に生きよ大根炊き     山下あつ子
    手にこぼれ地にこぼれたる零余子かな 黒澤喜美枝
    庵への風の抜け道秋海棠       愛須 淑子―――――――
    遠き世の歴史を秘めて初明り     前田千加子
特 選 故郷の日の香風の香梅探る      大前 邦子

      互選高点句より     
 7点 故郷の日の香風の香梅探る      邦 子
    庵への風の抜け道秋海棠       淑 子―――――
 6点 小春日や屋根に居眠る鬼瓦      道 明
    晩節や素直に生きよ大根炊き     あつ子
 5点 純粋と言ふ気づまりや白障子     けい子
 4点 小春日や杖の十歩をふり返る     文 子
    冬夕焼雅楽の終はるやうに果つ    邦 夫
    手にこぼれ地にこぼれたる零余子かな 喜美枝
    昨日今日明日もおでんひとりなり   茉 美
    紺碧の空を画布とし冬ざくら     美 月

このページのトップへ

令7、3月号一句集(第670回)(728号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    新酒酌む父の民謡あてにして  上田 芳枝
    捥ぎ立てを家族総出の梨売り場 住谷 幸代
    柿熟るるまた古里を語る妻   佐藤ひとし
    空澄みて今年も酸橘届くころ  愛須 淑子―――――――
特 選 縁側の無き家に住みつづれさせ 竹中 則子

      楠 田 かつ子 選   
    父母よりも妻との月日鰯雲   守作けい子
    縁側の無き家に住みつづれさせ 竹中 則子
    千万の葉先の雫秋の虹     沖津 京子
特 選 黄落や大佛殿の鴟尾の燦    後藤 昌弘

      田 中 美 月 選   
    新酒酌む父の民謡あてにして  上田 芳枝
    一人居の問うて答ふる夜長かな 上田 圭子
    風の橋渡るもみそぎ除夜詣   藤川 毅
    香り立ち夕闇和む金木犀    松平 美子
特 選 黄落や大佛殿の鴟尾の燦    後藤 昌弘

      互選高点句より     
12点 父母よりも妻との月日鰯雲     けい子
    柿熟るるまた古里を語る妻     ひとし
 9点 コスモスや揺れゐて影のまとまらず 道 代
 8点 侘助やつむじ風起つ躙り口     一山人
    一人居の問うて答ふる夜長かな   圭 子
 7点 七度目の己年を迎ふ福寿草     恭 子
    ちちははの齢をもらひ秋高し    静 代
    黄落や大佛殿の鴟尾の燦      昌 弘
 6点 鳥声の空に抜けゆく秋の渓     知 実
    八ツ棟の梲に家紋初しぐれ     美 月
 5点 暗き町明るき街も十三夜      道 明
    ひよどりの斜めに切つて五線の塀  貞 子
    昔日の人のその後や秋の風     三恵子
    風の橋渡るもみそぎ除夜詣      毅
    許されよ生きる手立てよ草虱    と し
    縁側の無き家に住みつづれさせ   則 子
    朝日浴び芒は銀の糸となり     喜美枝
    遅れ来し秋足早やによそほふや   千寿子

このページのトップへ

令7、2月号一句集(第669回)(727号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    野地蔵を片手拝みに夕野分     本庄 文子
    椋鳥の騒ぎをさまる一樹かな    田中 美月
    フラメンコ上手にをどり風の罌粟  佐久間さと子
    川の名を変るあたりの秋の水    田中 道代
特 選 施餓鬼会や寺の子どものかいがいし 上田 芳枝

      楠 田 かつ子 選   
    爽やかに昭和に返るロケの町    守作けい子
    椋鳥の騒ぎをさまる一樹かな    田中 美月
    稲妻が眠りを覚ます播磨灘     土井 重悟
    フラメンコ上手にをどり風の罌粟  佐久間さと子
特 選 丸木橋は定員一人草の花      上田 圭子

      田 中 美 月 選   
    花蕎麦にとりとめもなき風の向   藤川 毅
    捨舟の波ひたひたと昼の虫     中野千鶴子
    折紙のメダルの届く敬老日     松岡 節子
特 選 丸木橋は定員一人草の花      上田 圭子

      互選高点句より     
11点 丸木橋は定員一人草の花     圭 子
10点 折紙のメダルの届く敬老日    節 子
    寺田屋の隣は質屋木槿咲く    ひとし
 9点 椋鳥の騒ぎをさまる一樹かな   美 月
 8点 仕舞ひ風呂の星のひとつや鉦叩  佰 代
    野地蔵を片手拝みに夕野分    文 子
 7点 幾度も迎へに出づる良夜かな   知 美
    物差しの墨字は父ぞ秋の声    敏 子
 6点 高高と夕日を捉へ榠の実     貞 子
    捨舟の波ひたひたと昼の虫    千鶴子
 5点 爽やかに昭和に返るロケの町   けいこ
    この川の上は故郷花野行     邦 子

このページのトップへ

令7、1月号一句集(第668回)(726号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    山畑のうねりあらはに霧流る   大前 邦子
    親方へ返事清しき松手入れ    本庄 文子
    送り火の燃え殻雨に匂ひけり   山口 晴空
    名を知るも知らぬも親し秋の草  田中 道代
特 選 サングラス外して上る母の家   広渡 とし

      楠 田 かつ子 選   
    秋灯の薄く点りぬ過疎の村    安孫子一山人
    どこまでも大夕焼の車窓かな   沖津 京子
    あの犬と過ごしたベンチ秋の星  櫻井 綾
    海に向く棚田百枚稲の花     田中 美月
特 選 親方へ返事清しき松手入れ    本庄 文子

      田 中 美 月 選   
    秋耕や街喧噪の中に打つ     谷口 一夫
    山畑のうねりあらはに霧流る   大前 邦子
    あたふたと暮らし気付けば法師蟬 鈴木かず子
    名を知るも知らぬも親し秋の草  田中 道代
特 選 町娘の役は喜寿とや村芝居    上田 圭子

      互選高点句より     
16点 名を知るも知らぬも親し秋の草  道 代
12点 サングラス外して上る母の家   と し
    海に向く棚田百枚稲の花     美 月
10点 解禁の夜明けの静寂鮎釣師    ひとし
    親方へ返事清しき松手入れ    文 子
 9点 山畑のうねりあらはに霧流る   邦 子
    町娘の役は喜寿とや村芝居    圭 子
 8点 秋灯の薄く灯りぬ過疎の村    一山人
 7点 送り火の燃え殻雨に匂ひけり   晴 空
 6点 どこまでも大夕焼の車窓かな   京 子
    逃げ足の影まで速し夜の蜘蛛    毅
 5点 秋耕や街喧噪の中に打つ     一 夫
    あの犬と過ごしたベンチ秋の星   綾
    赤のまま何処か子を呼ぶ夕餉時  千加子
    煩悩を堀り出し秋の墓終ひ    八重子

このページのトップへ

12月号一句集(第667回)(725号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    飛び石のほどよき間合ひ夏座敷 恒藤 邦夫
    肩車されてゆく子の祭髪    田中 美月
    草川の水音やさしき魂迎    大平 静代
    もう一度名月拝し戸を閉める  愛須 淑子
特 選 帆柱の奥に綾なす花火かな   土井 重悟

      楠 田 かつ子 選   
    解禁の夜明けの静寂鮎釣師   佐藤ひとし
    肩車されてゆく子の祭髪    田中 美月
    夜もすがら郡上踊りの下駄の音 住谷 幸代
    草川の水音やさしき魂迎    大平 静代
特 選 若者の一管涼し囃方      守作けい子

      田 中 美 月 選   
    若者の一管涼し囃方      守作けい子
    海峡の空奪ひとる秋の雲    安孫子康夫
    飛び石のほどよき間合ひ夏座敷 恒藤 邦夫
    筆まめの母の筆跡涼しけれ   上田 圭子
特 選 夜もすがら郡上踊りの下駄の音 住谷 幸代

      互選高点句より     
20点 肩車されてゆく子の祭髪       美 月
12点 若者の一管涼し囃方         けい子
11点 夜もすがら郡上踊りの下駄の音    幸 代
10点 解禁の夜明けの静寂鮎釣師      ひとし
    心太突けば光りの川生まる      則 子
 8点 飛び石のほどよき間合ひ夏座敷    邦 夫
    もう一度名月拝し戸を閉める     淑 子
 7点 筆まめの母の筆跡涼しけれ      圭 子
    万緑の包みきれざる電波塔      昌 弘
 6点 人住まぬ家の留守番青大将      勝 之
    老いもまたいのち削りて蟬時雨    道 明
    ビル伸びるクレーンも伸びる蜻蛉舞ふ 芳 枝
    片蔭に身を寄せ積もる話かな     文 子

このページのトップへ

11月号一句集(第666回)(724号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    一水へ倒して竹を伐りにけり    佐久間さと子
    三叉路に標となりて立葵      後藤 昌弘
    鍵穴の小さき闇や梅雨じめり    上田 圭子
    万緑のただ中にある石舞台     沖津 京子
特 選 過ぎし日へつながつている夏野かな 田中 道代

      楠 田 かつ子 選   
    もう空を映さぬ風の青田かな    本庄 文子
    万緑や天女の像をみ扉に      中野千鶴子
    過ぎし日へつながつている夏野かな 田中 道代
    遠き日の父母の声聞く田植時    山根八重子
特 選 芍薬にポンと触れ行く漢かな    竹中 則子

      田 中 美 月 選   
    芍薬にポンと触れ行く漢かな    竹中 則子
    万緑のただ中にある石舞台     沖津 京子
    父の日や父の十八番の歌謡曲    住谷 昭代
    麦笛の曲はポップス散歩道     北沢 恭子
特 選 三叉路に標となりて立葵      後藤 昌弘

      互選高点句より     
17点 過ぎし日へつながつている夏野かな   道 代
12点 舞殿をすいと夏越の風過ぐる       毅 
10点 戦せる国をはるかに夜の新樹      静 代
 8点 三叉路に標となりて立葵        昌 弘
    七月の岬は蒼に囲まるる        康 夫
    鍵穴の小さき闇や梅雨じめり      圭 子
    部屋干しに「蹴り」を入れる子梅雨最中 邦 夫
 7点 芍薬にポンと触れ行く漢かな      則 子
    遺されし者が語りて敗戦忌       けい子
    もう空を映さぬ風の青田かな      文 子
    麦笛の曲はポップス散歩道       恭 子
    遠き日の父母の声聞く田植時      八重子
 6点 まるでアート梅雨を彩る傘の花     邦 子
    万緑のただ中にある石舞台       京 子

このページのトップへ

10月号一句集(第665回)(723号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    代泰山木咲いて青空深くせり    大前 邦子
    四十雀に警戒さるる径かな     楠田かつ子
    この星の安寧願ふ葱坊主      芝  惠子
    三文を払つて眠る春の朝      草信 勝之
特 選 霊峰はマグマを抱き雲の峰     安孫子康夫

      楠 田 かつ子 選   
    梅雨きざすドアの軋みの二度三度  北沢 恭子
    泰山木咲いて青空深くせり     大前 邦子
    覚めやらぬ抜歯の麻酔半夏生    倉坂 桑史
    青梅雨や境内よぎる巫女の傘    中野千鶴子
特 選 散らむとす薔薇の艶めく宵のカフェ 醒井 龍子

      田 中 美 月 選   
    窓全開五月の風のほしいまま    沖津 京子
    えごの花仰ぐ天蓋降りそそぐ    松平 美子
    牛蛙鳴くや堂塔ゆするかに     山口 晴空
    サックスの音の広がり新樹光    恒藤 邦夫
特 選 霊峰はマグマを抱き雲の峰     安孫子康夫

      互選高点句より     
 8点 霊峰はマグマを抱き雲の峰     康 夫
 7点 野路ゆけばやさしきものに姫女菀  けい子
 6点 うつすらと山影の置く蛍の夜     毅
    牛蛙鳴くや堂塔ゆするかに     晴 空
 5点 梅雨きざすドアの軋みの二度三度  恭 子
    泰山木咲いて青空深くせり     邦 子
    この星の安寧願ふ葱坊主      惠 子
    梅雨晴れ間あれもこれもと腕まくり 宗 子
    サックスの音の広がり新樹光    邦 夫

このページのトップへ

9月号一句集(第664回)(722号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    新しき風の行き交ふビル四月   服部 康子
    遠足のしんがりが出て大仏殿   上田 圭子
    しやぼん玉一人遊びに百の空   沖津 京子
    新婚の君は太りて帰省せり    愛須 淑子
特 選 囀りにリズムのありて鍬を打つ  白数千寿子

      楠 田 かつ子 選   
    ことさらに余花の愛しき歳となり 鈴木かず子
    げんげ田は光纏ひつ鋤込まれ   本庄 文子
    新緑も一品のうち山の宿     田中 道代
    囀りにリズムのありて鍬を打つ  白数千寿子
特 選 憲吉忌切株に降る雨露の光ゲ   醒井 龍子

      田 中 美 月 選   
    げんげ田は光纏ひつ鋤込まれ   本庄 文子
    蒲公英の絮や夕日に吸ひ込まれ  恒藤 邦夫
    遠足のしんがりが出て大仏殿   上田 圭子
    新緑も一品のうち山の宿     田中 道代
特 選 囀りにリズムのありて鍬を打つ  白数千寿子

      互選高点句より     
16点 囀りにリズムのありて鍬を打つ  千寿子
15点 新緑も一品のうち山の宿     道 代
12点 しやぼん玉一人遊びに百の空   京 子
10点 ことさらに余花の愛しき歳となり かず子
    げんげ田は光纏ひつ鋤込まれ   文 子
 8点 新しき風の行き交ふビル四月   康 子
    遠足のしんがりが出て大仏殿   圭 子
    さみだれや大仏殿の軒雫     康 夫
    店仕舞の貼り紙手書桜散る    勝 之
 7点 墓仕舞ひ空地にげんげ咲き延びる 知 美
 6点 木屋町の灯と花ゆらぐ流れかな  保 司
    母の日やゆるゆる指輪の形見分け 幸 代
    和紙に添ふ草仮名筆や螢の夜   静 代

このページのトップへ

8月号一句集(第663回)(721号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    源氏絵巻繰れば春宵深まりぬ 山下あつ子
    手造りの巢箱に番ひ見し朝  愛須 淑子
    啓蟄ややや短めにカットして 佐藤ひとし
    掃かれずに丹の裏門の椿かな 中野千鶴子
特 選 制服の笑ひ弾ける花の駅   本庄 文子

      楠 田 かつ子 選   
    手造りの巢箱に番ひ見し朝  愛須 淑子
    制服の笑ひ弾ける花の駅   本庄 文子
    友が好き故郷が好き青き踏む 大前 邦子
    娘らに花片を添へ串団子   北沢 恭子
特 選 お香水一滴うけし掌     松平 美子

      田 中 美 月 選   
    風花の風に攫はれ風に消ゆ  黒澤喜美枝
    春日影寺を栖の亀あくび   植松 佰代
    友が好き故郷が好き青き踏む 大前 邦子
    花咲けど地震と戦と世の乱れ 横山三恵子
特 選 朧朧と遥か一山桜かな    守作けい子

      互選高点句より     
19点 制服の笑ひ弾ける花の駅     文 子
 8点 友が好き故郷が好き青き踏む   邦 子
    花咲けど地震と戦と世の乱れ   三恵子
 7点 初花や枝に掛けある忘れ傘    貞 子
    三度目の癌にもめげず生きて春  勝 之
    春浅し両手に重き雨戸繰る    圭 子
 6点 源氏絵巻繰れば春宵深まりぬ   あつ子
    手造りの巢箱に番ひ見し朝    淑 子
    風花の風に攫はれ風に消ゆ    喜美枝
    春日影寺を栖の亀あくび     佰 代
    風光る新社会人の背すじ伸び   芳 枝
    木々芽吹き確とあしたへ樹齢継ぐ  毅
    春雨の淡きに濡るる旅かばん   一 夫
 5点 人責めし我を責むるか木瓜の花  知 美
    健ちやんも光ちやんもゐて石鹼玉 京 子
    啓蟄ややや短めにカットして   ひとし
    掃かれずに丹の裏門の椿かな   千鶴子
    朧朧と遥か一山桜かな      けい子

このページのトップへ

7月号一句集(第662回)(720号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    暖かや満つる慈顔の円空仏    佐藤ひとし
    山上に青き権現桜ちる      安孫子康夫
    生き生きと森を抜け来し雪解水  中野千鶴子
    盛装のもどりに葱を買ひにけり  佐久間さと子
特 選 背山より風花の舞ふ塔ふたつ   田中 美月

      楠 田 かつ子 選   
    暖かや満つる慈顔の円空仏    佐藤ひとし
    青年の初の髭剃り青き春     守作けい子
    せせらぎやゆつくり動く春日傘  本庄 文子
    布施行の声冴え返る高野道    鈴木かず子
特 選 慟哭の山河残して鳥帰る     愛須 淑子

      田 中 美 月 選   
    せせらぎやゆつくり動く春日傘  本庄 文子
    山上に青き権現桜散る      安孫子康夫
    雛の間へ光りを入れる花頭窓   中谷 貞子
    慟哭の山河残して鳥帰る     愛須 淑子
特 選 片減りの靴の春泥ぬぐひけり   上田 圭子

      互選高点句より     
10点 青年の初の髭剃り青き春       けい子
    片減りの靴の春泥ぬぐひけり     圭 子
    生き生きと森を抜け来し雪解水    千鶴子
    布施行の声冴え返る高野道      かず子
 9点 しばらくは雛の明りの仏間かな     毅
 7点 暖かや満つる慈顔の円空仏      ひとし
    雛の間へ光りを入れる花頭窓     貞 子
    慟哭の山河残して鳥帰る       淑 子
 6点 悴むや能登の訛を忘れまじ      惠 子
    トロトロと角煮煮ている寒戻り    と し
 5点 せせらぎやゆつくり動く春日傘    文 子
    梅近き上七軒の石畳         保 司
    補助機・杖・かなぐり捨てて青き踏む 敏 子

このページのトップへ

6月号一句集(第661回)(719号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    大寒の陽を抱きしめて医者通ひ   山口 道明
    休み田へ朝日きらめくおくれ霜   山下あつ子
    海見ゆる迄坂登り冬ぬくし     森本 知美
    丘の上のポストを濡らす木の芽雨  大平 静代
特 選 延べし手に触るる餅花二寧坂    守作けい子

      楠 田 かつ子 選   
    参道に並ぶ灯籠雪の笠       草信 勝之
    休み田へ朝日きらめくおくれ霜   山下あつ子
    古絵図に村多かりし落椿      安孫子康夫
    寒月や振れてはならぬ事のあり   松岡 節子
特 選 初春や空をつらぬく神の杉     沖津 京子

      田 中 美 月 選   
    薄氷に囚はるる風逃げる風     広渡 とし
    スケートボード寒風を蹴り宙を蹴り 田中 敏子
    山門に老幹の梅真白なる      中野千鶴子
    下鴨の社を拝す寒九かな      佐久間さと子
特選  よちよちの子の尻餅や下萌ゆる   大前 邦子

      互選高点句より     
12点 泣き声も混じる園舎の鬼やらひ    三恵子
11点 寒月や振れてはならぬ事のあり    節 子
 9点 大寒の陽を抱きしめて医者通ひ    道 明
 7点 参道に並ぶ灯籠雪の笠        勝 之
    よちよちの子の尻餅や下萌ゆる    邦 子
    湯豆腐の湯気に溶け入る会話かな   昌 弘
    延べし手に触るる餅花二寧坂     けい子
 6点 つくづくに手の皺増して年の明く   千寿子
    休み田へ朝日きらめくおくれ霜    あつ子
    山門に老幹の梅真白なる       千鶴子
    風花の舞ふ被災地や海暗き      晴 空
 5点 冬草の畦の日溜り小さき幸      佰 代
    初春や空をつらぬく神の杉      京 子
    あれこれと策を巡らすちやんちやんこ 一 夫
    古絵図に村多かりし落椿       康 夫
    薄氷に囚はるる風逃げる風      と し
    検査着と肌の間に冷え籠る       毅

このページのトップへ

5月号一句集(第660回)(718号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    山小屋に樫の実の降る風の音  森本 知美
    歳末の古都の古着屋異人客   大橋 保司
    ジェット機の底に電飾聖夜来る 山下あつ子
    茶の花や夕日に影絵めく天守  田中 美月
特 選 一山の色抜けるまで枯るるかな 田中 道代

      楠 田 かつ子 選   
    菊枯れて残る色あり香りあり  本庄 文子
    茶の花や夕日に影絵めく天守  田中 美月
    木の葉降りやまず祈りの老紳士 醒井 龍子
    初御空八幡の神の裾に棲み   山口 晴空
特 選 湯豆腐に銚子一本父老ゆる   土井 重悟

      田 中 美 月 選   
    行く年や天才駆くる将棋界   山口 道明
    兄妹スキップで来るクリスマス 中野千鶴子
    母の年いくつか超えて年の暮  山根八重子
    初御空八幡の神の裾に棲み   山口 晴空
特 選 湯豆腐に銚子一本父老ゆる   土井 重悟

      互選高点句より     
12点 一山の色抜けるまで枯るるかな  道 代
11点 朝市や売り子も客も着ぶくれて  ちあき
11点 湯豆腐に銚子一本父老ゆる    重 悟
 8点 仏石に光落とすや冬ざくら    佰 代
    茶の花や夕日に影絵めく天守   美 月
 7点 くさめして百の視線の車中かな  京 子
    母の年いつしか超えて年の暮   八重子
 6点 歳末の古都の古着屋異人客    保 司
    暮早しぽつり灯りの古本屋    邦 夫
    冬薔薇の風の死角に咲きゐたり   毅
 5点 菊枯れて残る色あり香りあり   文 子
    山小屋に樫の実の降る風の音   知 美
    枯葉踏み異人館までジャズライブ 邦 子
    美しき噓は許され冬菫      圭 子
    凍空に滲む外灯釧路の夜     三恵子
    初御空八幡の神の裾に棲み    晴 空

このページのトップへ

4月号一句集(第659回)(717号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    祇王寺の一ト葉いただく散紅葉 翁長三和子
    香を聞く無言の儀式冬紅葉   楠田かつ子
    野面積の城の石垣返り花    沖津 京子
    正暦寺の紅葉且つ散る只中に  松岡 節子
特 選 猪鍋や窓打つ風の荒荒し    大前 邦子

      楠 田 かつ子 選   
    文豪の生家の井戸や雪の舞ふ  安孫子康夫
    笑顔よし乳歯ころころ小春かな 山口ちあき
    吊し柿幸村の里暮れ初めし   守作けい子
    冬晴を恃みて庭師枝を打つ   谷口 一夫
特 選 山腹に貼り付く家の冬構    倉坂 桑史

      田 中 美 月 選   
    名を呼べば耳だけ動く炬燵猫  鈴木かず子
    枝々に威を示しゐる冬木かな  田中 道代
    香を聞く無言の儀式冬紅葉   楠田かつ子
    式部像の頰やはらかに冬日差す 山口 晴空
特 選 電飾の並木に集ふ聖夜かな   後藤 昌弘

      互選高点句より     
12点 名を呼べば耳だけ動く炬燵猫  かず子
 9点 生ききつて清しきまでに枯蓮  道 明
 6点 文豪の生家の井戸や雪の舞ふ  康 夫
    顔見世の街騒抜くる都鳥    恭 子
    祇王寺の一ト葉いただく散紅葉 三和子
    いつの間にしかと傘寿の十二月 康 子
    吊し柿日差し動けば動かされ  文 子
    香を聞く無言の儀式冬紅葉   かつ子
    山腹に貼り付く家の冬構    桑 史
    菊日和旧街道のしるべ石    淑 子
 5点 漁火の消ゆれば春星西へ飛ぶ   毅
    繕ひの色糸探す夜半の秋    美 月

このページのトップへ

3月号一句集(第658回)(716号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    初鴨の日にけに増ゆる朝満月   楠田かつ子
    アルプスの夕日に増ゆる赤とんぼ 中野千鶴子
    亀甲の黄色うるはし竹の春    黒澤喜美枝
    肩車の子のはしやぎ声天高し   沖津 京子
特 選 秋時雨夫の残せし癖字読む    広渡 とし

      楠 田 かつ子 選   
    軽四にテープの囃し過疎神輿   大橋 保司
    生駒嶺の稜線確かと星月夜    後藤 昌弘
    アルプスの夕日に増ゆる赤とんぼ 中野千鶴子
    何ごともなき検診日菊うらら   大平 静代
特 選 山峡に啼く猿の声霧深し     土井 重悟

      田 中 美 月 選   
    何ごともなき検診日菊うらら   大平 静代
    長き夜や音盤拭いてまた拭いて  佐久間さと子
    鉢ばちを日向に移し冬支度    守作けい子
    木犀の闇に包まれ和みたる    田中 道代
特 選 ゆきあひの空とまどふや秋暑し  愛須 淑子

      互選高点句より     
 9点 合ひの手の子の声清めり村祭  惠 子
 8点 一声に秋深めゆく鳶の笛    三和子
    大銀杏村の真ン中廃校舎    ひとし
 7点 色変へぬ松に隠せし吾が決意  晴 空
 6点 軽四にテープの囃し過疎神輿  保 司
    生駒嶺の稜線確かと星月夜   昌 弘
    今日の日の終る影曳き秋桜    毅
    はなれ咲く一花は寂し曼殊沙華 美 月
    戸口迄月連れ添ふて日課終ふ  康 子
    拾ふては年に一度のむかご飯  三恵子
 5点 秋時雨夫の残せし癖字読む   と し
    人と言ふ厄介なもの葛の花   一 夫
    秋の野の無音に一人佇みて   八重子

このページのトップへ

2月号一句集(第657回)(715号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    稲の種の名札立ちけり赤まんま  本庄 文子
    城跡の森に学校小鳥来る     守作けい子
    お花畑佳き名持つ橋渡りけり   谷口 一夫
    左右から異国語飛ぶや秋日和   服部 康子
特 選 水澄むや大仏殿の屋根の反り   後藤 昌弘

      楠 田 かつ子 選   
    川底の鮒の反転秋うらら     佐藤ひとし
    百歳の現となりし敬老の日    山口 道明
    不意に来し永遠の別れや鳥渡る  大平 静代
    白き馬柵昏れのこりたる帰燕かな 中野千鶴子
特 選 水澄むや大仏殿の屋根の反り   後藤 昌弘

      田 中 美 月 選   
    左右から異国語飛ぶや秋日和   服部 康子
    シャキシャキと米研ぐ水や涼新た 翁長三和子
    八十路とて少女に帰る秋桜    上田 圭子
    不意に来し永遠の別れや鳥渡る  大平 静代
特 選 城跡の森に学校小鳥来る     守作けい子

      互選高点句より     
12点 はみ出した絵手紙届く菊日和   佰 代
10点 稲穂いま芳しき香を刈られをり  恭 子
 8点 秋風にのりて夜汽車の遠音かな  千寿子
    城跡の森に学校小鳥来る     けい子
    打首の石に安らぐ秋あかね    千代子
 7点 長き夜の削除ぽつぽつ住所録   かず子
    シャキシャキと米研ぐ水や涼新た 三和子
    明日香野のいつしか迷ふ真葛原  美 月
 6点 川底の鮒の反転秋うらら     ひとし
    葬送のその夜の月の丸さかな   貞 子
    八十路とて少女に帰る秋桜    圭 子
 5点 考えてまた考えて夜長かな    勝 之
    故郷の夢をみてゐる星月夜    八重子
    不意に来し永遠の別れや鳥渡る  静 代

このページのトップへ

1月号一句集(第656回)(714号)

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    梅花藻咲く川戸で濯ぐ巫女の足 山下あつ子
    無果花の熟れて湯の町母の町  上田 圭子
    一舟の離りゆく湖晩夏光    田中 美月
    秋の滝おのれの音の中に落つ  藤川  毅
特 選 撒水の心づくしの涼もらふ   楠田かつ子

      楠 田 かつ子 選   
    金星に新涼もらふ橋の上    本庄 文子
    無果花の熟れて湯の町母の町  上田 圭子
    布袋撫づ招福の腹し暑し   松岡 節子
    一舟の離りゆく湖晩夏光    田中 美月
特 選 梅花藻咲く川戸で濯ぐ巫女の足 山下あつ子

      田 中 美 月 選   
    送電線に盆の月乗せ演奏会   森本 知美
    撒水の心づくしの涼もらふ   楠田かつ子
    夜の秋や妣のヘラ台クジラ尺  鈴木かず子
    無果花の熟れて湯の町母の町  上田 圭子
特 選 古丹波へ秋七草を溢れ占め   大前 邦子

      互選高点句より     
10点 秋夕焼硝子細工の工房に    一 夫
    秋の滝おのれの音の中に落つ   毅
 9点 思ひ出と歩くふる里星月夜   道 代
 8点 金星に新涼もらふ橋の上    文 子
    古丹波へ秋七草を溢れ占め   邦 子
    一舟の離りゆく湖晩夏光    美 月
    物忘れ頑と認めず百日紅    ひとし
 7点 撒水の心づくしの涼もらふ   かつ子
    醒めやらぬ耳にじよんがら鰯雲 恭 子
    風の道残して揺るる秋桜    昌 弘
    秋蝶来雨後の光を纏ひつつ   三和子
 6点 夜の秋や妣のヘラ台クジラ尺  かず子
 5点 炎昼や喉元鳴らす神の水    惠 子
    短命を知りて蛍の川燃やす   静 子
    恋でせうか疲れでせうか法師蟬 はるみ

このページのトップへ

12月号一句集(第655回)(713号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    暫は青葉しぐれや二の鳥居   谷口 一夫
    湖沿ひを走る単線合歓の花   田中 美月
    習い立ての漢字大小夏見舞   松岡 節子
    蜩や若き日のこと死後のこと  馬場 静子
特 選 滴りや霊気漂ふ奥吉野     後藤 昌弘

      楠 田 かつ子 選   
    暫は青葉しぐれや二の鳥居   谷口 一夫
    習い立ての漢字大小夏見舞   松岡 節子
    息災てふ魔法のことば百日紅  上田 圭子
    白シャツの満艦飾や男子寮   醒井 龍子
特 選 秋乗せて夕日の小舟連なれり  植松 佰代

      田 中 美 月 選   
    俳聖の地を訪ふベンチ蟬しぐれ 山根八重子
    轟きの不穏や四囲に雲の峰   横山三恵子
    蝉時雨一樹まるごとゆるがせて 田中 道代
    地下を出て四万六千日の雨   田中 敏子
特 選 つつがなく生ききて仰ぐ夏の月 大平 静代

      互選高点句より     
 9点 青田風田の神のはく吐息とも    毅
 8点 暫は青葉しぐれや二の鳥居    一 夫
    蝉時雨一樹まるごとゆるがせて  道 代
    雷ひとつ雲をとばして梅雨の明  ちあき
 7点 青芒穂を孕むときすくと立ち   文 子
    習い立ての漢字大小夏見舞    節 子
 6点 つつがなく生ききて仰ぐ夏の月  静 代
    風炉仕度梢ほど良く塀を越え   惠 子
    滴りや霊気漂ふ奥吉野      昌 弘
    自転車の背中ふくらむ風みどり  あつ子
 5点 ビール注ぎ忘るる良さを説く母よ りゑ子
    秋乗せて夕日の小舟連なれり   佰 代
    川遊び素足の甲の白さかな    邦 夫
    湖沿ひを走る単線合歓の花    美 月
    朝の静寂ポンと音して蓮の花   すみ子

このページのトップへ

11月号一句集(第654回)(712号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    葛城山の風じつぱうに青田波   安孫子康夫
    滝壺に吸ひこまれゆく話声    恒藤 邦夫
    梅干すや平和な暮し喜寿迎ふ   松岡 節子
    月涼し良きも悪しきも過ぎしこと 横山三恵子
特 選 人力車が誘ふ老舗の夏料理    楠田かつ子

      楠 田 かつ子 選   
    にはか雨俄に虹の出て消ゆる   馬場あゆみ
    山葵田の水きらきらと道祖神   中谷 貞子
    梅干して平和な暮し喜寿迎ふ   松岡 節子
    銀輪の渡る唐橋夕焼くる     愛須 淑子
特 選 葛城山の風じつぱうに青田波   安孫子康夫

      田 中 美 月 選   
    葛城山の風じつぱうに青田波   安孫子康夫
    気嫌良く太る青柿植木市     植松 佰代
    語り部は同い年なり沖縄忌    広渡 とし
    梅干すや平和な暮し喜寿迎ふ   松岡 節子
特 選 山葵田の水きらきらと道祖神   中谷 貞子

      互選高点句より     
14点 月涼し良きも悪しきも過ぎしこと 三恵子
10点 語りすぎ聞きすぎた夜の溽暑かな けい子
 8点 ねぢ花のいとも確かな捩れかな  道 代
 7点 滝壺に吸ひこまれゆく話声    邦 夫
    語り部は同い年なり沖縄忌    と し
 6点 葛城山の風じつぱうに青田波   康 夫
    辿り来て夕焼けに染まる熊野灘  重 悟
    山葵田の水きらきらと道祖神   貞 子
    梅干すや平和な暮し喜寿迎ふ   節 子
    尾の切れし蜥蜴に我を重ねる日  三和子
 5点 鳥たちの騒ぐ一日桜の実     りゑ子
    行水の盥に二人水しぶき     芳 枝
    睡蓮の葉影に鯉の口開く     昌 弘
    黒南風や山門に上ぐ大草鞋    邦 子
    地球儀をくるりと廻し半夏生   圭 子
    幼ナ児も母と手つなぎ夏祓    恭 子

このページのトップへ

10月号一句集(第653回)(711号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    どの道も椎の花影丹波国       谷口 一夫
    一ト雨の洗ひし空の朴の花      翁長三和子
    をみな三人なんじやもんじやの花の下 沖津 京子
    枇杷は黄に線状降水帯に堪へ     田中 敏子
特 選 伊吹より雲ひきつれてはたた神    田中 美月

      楠 田 かつ子 選   
    百席の午後のライブや新樹光     北沢 恭子
    空色のリボン大きや夏始       松岡 節子
    サイクリングの列逆しまに代田澄む  大前 邦子
    ざわざわと風のあつまる夜の新樹   田中 道代
特 選 ロボットの運ぶプリンや「子供の日」 服部 康子

      田 中 美 月 選   
    百席の午後のライブや新樹光     北沢 恭子
    青蔦やレンガの塀を猫悠々      恒藤 邦夫
    をみな三人なんじやもんじやの花の下 沖津 京子
    枇杷は黄に線状降水帯に堪へ     田中 敏子
特 選 捩花や個性ゆたかな姉妹       醒井 龍子

      互選高点句より     
18点 伊吹より雲ひきつれてはたた神    美 月
 8点 百席の午後のライブや新樹光     恭 子
 7点 どの道も椎の花影丹波国       一 夫
    襟元に風若返る更衣         小夜子
    サイクリングの列逆しまに代田澄む  邦 子
 6点 竹皮を脱ぐ中学生の力満ち      芳 枝
    雨粒の丸く揺れてる薔薇を挿す    知 美
    「大丈夫」短く医師や若葉風     圭 子
    一ト雨の洗ひし空の朴の花      三和子
    道端で咲くかたばみの一途なる     毅
 5点 ロボットの運ぶプリンや「子供の日」 康 子
    もつれては離る夏蝶川の上      静 代
    をみな三人なんじやもんじやの花の下 京 子
    捩花や個性ゆたかな姉妹       龍 子

このページのトップへ

9月号一句集(第652回)(710号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    聖鐘の響く港や夏つばめ      安孫子康夫
    山藤は羽音の賛歌受けてをり    本庄 文子
    見えてゐて遠し長谷寺花の門    藤川  毅
    菜の花の盛りも過ぎぬ流人墓    上田 圭子
特 選 廃校に創立碑あり松落葉      真田 正恵

      楠 田 かつ子 選   
    見えてゐて遠き長谷寺花の門    藤川  毅
    杜深き風の参道新樹光       田中 道代
    菜の花の盛りも過ぎぬ流人墓    上田 圭子
    読みかけの新聞まるめ蠅たたく   草信 勝之
特 選 聖鐘の響く港や夏つばめ      安孫子康夫

      田 中 美 月 選   
    廃校に創立碑あり松落葉      真田 正恵
    聖鐘の響く港や夏つばめ      安孫子康夫
    菜の花の盛りも過ぎぬ流人墓    上田 圭子
    開帳や大きな耳朶は妣ゆづり    田中 敏子
特 選 新人のナースピンクの聴診器    醒井 龍子

      互選高点句より     
10点 廃校に創立碑あり松落葉       正 恵
 8点 咲きさきて散りちりてこそ桜かな   けい子
   「知らんけど」は大阪ことばあたたかし かつ子
 7点 聖鐘の響く港や夏つばめ       康 夫
    見えてゐて遠し長谷寺花の門      毅
    飛行機雲金龍となる春夕焼      あゆみ
 6点 泡沫は流れに任せ春の逝く      重 悟
    山藤は羽音の賛歌受けてをり     文 子
 5点 東京へ切符買ふ子や花の風      知 美
    新人のナースピンクの聴診器     龍 子
    病院の雀隠れに鞠ひとつ       一 夫
    すかんぽを手折らばぽんと山谺    邦 子
    菜の花の盛りも過ぎぬ流人墓     圭 子
    ひと吹きの風に春知る肌触り猫柳    瞭

このページのトップへ

8月号一句集(第651回)(709号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    もう居ない人と見てゐる山桜    翁長三和子
    初咲きのたんぽぽまずは鳥かごに  馬場あゆみ
    様様なことはさて置く桜かな    広渡 とし
    春うらら猫の欠伸を貰ひけり    服部 康子
特 選 賑はへる墓苑の出口苗木市     醒井 龍子

      楠 田 かつ子 選   
    集まれば病気自慢や山笑ふ     山口ちあき
    様様なことはさて置く桜かな    広渡 とし
    その風を逃さずに散る山桜     藤川 毅
    春うらら猫の欠伸を貰ひけり    服部 康子
特 選「ただいま」の亡父似の声や春夕焼け 大前 邦子

      田 中 美 月 選   
    抜き捨てた大根の花咲きほこる   本庄 文子
    踏青や八十路の足を励まして    田中 道代
    春うらら猫の欠伸を貰ひけり    服部 康子
    杣道を隠し背高き新樹かな     西川千代子
特 選 ものの芽の息吹を肌に朝の庭    沖津 京子

      互選高点句より     
12点 春耕やまほろばの土匂はせて    美 月
10点 耳つけて樹液の音を聴く朧     かず子
    もう居ない人と見てゐる山桜    三和子
 7点 雛段の下は秘密の場所になり    邦 夫
    マスク取り別の顔もて初音聞く   かつ子
 6点 猫柳遠嶺の雪の消えやらず     千鶴子
    春うらら猫の欠伸を貰ひけり    康 子
 5点 「ただいま」の亡夫似の声や春夕焼 邦 子
    手に触れて今満開のさくらかな   貞 子
    野良猫の消えて何やら足りぬ春   三恵子

このページのトップへ

7月号一句集(第650回)(708号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    鈍行で帰る古里彼岸参      草信 勝之
    啓蟄やカレー屋を出る二三人   上田 圭子
    新設の幼児の遊具木々芽吹く   楠田かつ子
    鱒のゐるはずの乱れや花筏    恒藤 邦夫
特 選 春耕や心をこめて鍬洗ふ     加藤みのる

      楠 田 かつ子 選   
    淡淡と日の差す下の芽吹きかな  谷 美知子
    春光へそつと踏み出す母の試歩  翁長三和子
    鱒のゐるはずの乱れや花筏    恒藤 邦夫
    シネマ座の火照りを醒ます冬の星 倉坂 桑史
特 選 名代なる餅屋の暖簾春彼岸    紺谷 葵

      田 中 美 月 選   
    芽柳の風やはらかく高瀬川    大前 邦子
    春光へそつと踏み出す母の試歩  翁長三和子
    春浅し机上プランのダイエット  松岡 節子
    シネマ座の火照りを醒ます冬の星 倉坂 桑史
特 選 早春賦諳んずる径東風渡る    吉岡すみ子

      互選高点句より     
13点 春光へそつと踏み出す母の試歩  三和子
12点 野地蔵に供えたるごと落ち椿   文 子
 7点 シネマ座の火照りを醒ます冬の星 桑 史
 6点 さみどりの珠を持ち上げ蕗の薹  美 月
    鳴き交はす近つ飛鳥の寒鴉    龍 子
    木霊する木槌の音や実朝忌    恭 子
    春耕や心をこめて鍬洗ふ     みのる
 5点 重畳の稜線かすれ木の芽雨    敏 子
    早春賦諳んずる径東風渡る    すみ子
    寒木瓜のただひたすらの色であり  昇
    水鳥に街の灯遠く点り初む    貞 子
    鱒のゐるはずの乱れや花筏    邦 夫
    鉤形に曲がる指先針祭る     と し
    名を付けてみても懐かぬ寒雀   りゑ子

このページのトップへ

6月号一句集(第649回)(707号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    待春や人のあふるる道の駅   切建 昇
    鳴き交はす近つ飛鳥の寒鴉   醒井 龍子
    水仙や剣舞きりりと美少年   山口ちあき
    置炬燵日にち薬の一日過ぎ   寺野りゑ子
特 選 探梅へ風を押し切る車椅子   藤川 毅

      楠 田 かつ子 選   
    青麦の風渡りゆく神武陵    田中 美月
    水仙や剣舞きりりと美少年   山口ちあき
    睨み鯛据ゑて文楽初芝居    服部 康子
    廻廊を春着が通る銅羅の音   山口はるみ
特 選 初夢や青き地球を俯瞰する   松岡 節子

      田 中 美 月 選   
    公園の遊具まはるや春立つ日  大平 静代
    暮れどきに集ふ川瀬の鴨談議  白数千寿子
    睨み鯛据ゑて文楽初芝居    服部 康子
    目礼のマスクは誰ぞ行き過ぎぬ 田中 道代
特 選 霜柱踏んでリズムよき径   楠田かつ子

      互選高点句より     
11点 青麦の風渡りゆく神武陵      美 月
 9点 表札の歪みを直し年迎ふ      美知子
 8点 探梅へ風を押し切る車椅子      毅
    雪女実は寒がり寂しがり      と し
 6点 鳴き交はす近つ飛鳥の寒鴉     龍 子
    寒昴いのちの種は宇宙から     かず子
    深爪の指の先なる霜夜かな     圭 子
    大根干す洞が峠や禅の寺      ひとし
    冬うらら一人年取る自由かな    失 名
 5点 待春や人のあふるる道の駅      昇
    芭蕉庵幾星霜の冬の黙       喜美枝
    振り返へることなく過ぎし枇杷の花 淑 子

このページのトップへ

5月号一句集(第648回)(706号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    小さき部屋大きく見ゆる風邪心地 上田 圭子
    本殿へ踏みゆく真砂淑気満つ   後藤 昌弘
    遠まきに響く電車の冬の音    中原 鷗汀
    「無事」の軸内陣にして去年今年 中野千鶴子
特 選 出土品並べ風土記の丘枯るる   切建 昇

      楠 田 かつ子 選   
    春光の比良の稜線ゆるびけり   安孫子康夫
    行く年の星座傾ぶく山の黙    大平 静代
    ゼブラゾーンの右往左往や街師走 醒井 龍子
    言ひ出して濁す言葉の寒さかな  守作けい子
特 選 酔ふほどに婿の漫談年の酒    横山三恵子

      田 中 美 月 選   
    転生のあらば日暮れの雪螢    藤川 毅
    学園の真中に大樹クリスマス   恒藤 邦夫
    本殿へ踏み行く真砂淑気満つ   後藤 昌弘
    五・六個の柚子と戯る柚子湯かな 沖津 京子
特 選 春光の比良の稜線ゆるびけり   安孫子康夫

      互選高点句より     
11点 大仏の鼻をくすぐる煤払     康 子
 9点 福寿草一鉢置かれ古着市     貞 子
 8点 津軽には七つの雪が降るさうな  数 子
    極月の大安売りに無駄を買ひ   ちあき
    山眠る下弦の月は肩にあり    文 子
 7点 春光の比良の稜線ゆるびけり   康 夫
    山肌に残る「大」の字冬夕焼   美 月
    転生のあらば日暮れの雪螢     毅
    冬三日月銃は置けない兵士たち  と し
 6点 本殿へ踏み行く真砂淑気満つ   昌 弘
 5点 行く年の星座傾ぶく山の黙    静 代
    これぞこの鯖さうめんや外は雪  三和子

このページのトップへ

4月号一句集(第647回)(705号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    急流に落ちて色増す寒椿      田中 美月
    竹の花咲いたと聞けり里は過疎   木下 数子
    自然薯は杖の長さや山眠る     北沢 恭子
    庭のもの焚くや菊の香惜しみつつ  倉坂 桑史
特 選 蒼き静寂花柊のほの香なる     吉岡すみ子

      楠 田 かつ子 選   
    山茶花や古刹に適ふ花手水     切建 昇
    魚河岸に漢の匂ひ冬の朝      安孫子康夫
    自然薯は杖の長さや山眠る     北沢 恭子
    地獄絵の寺の紅葉ことさらに    翁長三和子
特 選 山暮れて川に残りぬ冬の月     失 名

      田 中 美 月 選   
    露天湯の四方山話星月夜      松岡 節子
    冴ゆる夜や明日は眼科の手術台   大前 邦子
    冬夕焼木立に入る鳥の群れ     中谷 貞子
    木守柿残る梢や鳥のこゑ      田中 敏子
特 選 クラス会記憶広がる牡丹鍋     寺野りゑ子

      互選高点句より     
11点 言ひだして濁すことばの寒さかな  けい子
 9点 急流に落ちて色増す寒椿      美 月
 7点 魚河岸に漢の匂ひ冬の朝      康 夫
    竹の花咲いたと聞けり里は過疎   数 子
 6点 息災といふ言の葉や石蕗の花    圭 子
    ランナーの足音刻む落葉道     昌 弘
    自然薯は杖の長さや山眠る     恭 子
    兄弟も終に一人の夜寒かな     千代子
    庭のもの焚くや菊の香惜しみつつ  桑 史
 5点 山茶花や古刹に適ふ花手水      昇
    地獄絵の寺の紅葉ことさらに    三和子
    快復の絵手紙に書く栗の笑み    惠 子

このページのトップへ

3月号一句集(第646回)(704号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    不用意な言葉悔いをりそぞろ寒   田中 道代
    閉店の貼り紙突如冬薔薇      本庄 文子
    落葉搔くとほき人の名ひよいと出て 鈴木かず子
    椋鳥わたる駅裏ネオン灯し初め   倉坂 桑史
特 選 時代祭バイトの龍馬眼鏡ずれ    馬場 静子

      楠 田 かつ子 選   
    不用意な言葉悔いをりそぞろ寒   田中 道代
    夜咄や籠に熟柿の五つほど     上田 圭子
    天平の伽藍けぶらす朝時雨     田中 美月
    夕日抱き芒が原の無音界      大前 邦子
特 選 山頂に豊穣の神木の実降る     木下 数子

      田 中 美 月 選   
    風の棲むところより暮れ枯尾花   藤川 毅
    餅投げにどつと湧き立つ秋祭    翁長三和子
    椋鳥わたる駅裏ネオン灯し初め   倉坂 桑史
    草虱ここらあたりは遺蹟跡     田中 敏子
特 選 日に眠り月に眠れる冬木かな    片岡 和子

      互選高点句より     
14点 風の棲むところより暮れ枯尾花    毅
10点 夕日抱き芒が原の無音界      邦 子
 9点 不用意な言葉悔いをりそぞろ寒む  道 代
    日に眠り月に眠れる冬木かな    和 子
 8点 山頂に豊穣の神木の実降る     数 子
 7点 夜咄や籠に熟柿の五つほど     圭 子
    餅投げにどつと湧き立つ秋祭    三和子
 6点 秋風に野良着の埃たたき脱ぐ    美知子
    天平の伽藍けぶらす朝時雨     美 月
 5点 秋うらら徐々に遠のく「まあだだよ」りゑ子
    小春日やお前か俺か腕相撲     佰 代
    忘却を武器に露の世遊泳す     道 明
    椋鳥わたる駅裏ネオン灯し初め   桑 史

このページのトップへ

2月号一句集(第645回)(703号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    浦深く灯す一船秋の声     藤川 毅
    夕映への河口遠チ近チ鯔の飛ぶ 大前 邦子
    ビルの玻璃独り占めする秋夕焼 服部 康子
    蓑虫の蓑に縫目のなかりけり  守作けい子
特 選 長老の今日はネクタイ秋祭   翁長三和子

      楠 田 かつ子 選   
    東塔の影を引きずる冬日かな  安孫子康夫
    浦深く灯す一船秋の声     藤川 毅
    新涼や背丈の伸びる音のあり  広渡 とし
    二上の秋風を聴く当麻寺    吉岡すみ子
特 選 ビルの玻璃独り占めする秋夕焼 服部 康子

      田 中 美 月 選   
    東塔の影を引きずる冬日かな  安孫子康夫
    葛の花こぼれ吉野に法螺ひびく 切建  昇
    兄妹負けず嫌ひや鳳仙花    松岡 節子
    生身魂智者の如くに法を説き  黒澤喜美枝
特 選 蓑虫の蓑に縫目のなかりけり  守作けい子

      互選高点句より     
15点 葛の花こぼれ吉野に法螺ひびく    昇
12点 東塔の影を引きずる冬日かな    康 夫
    老いてなほ消せぬ火のあり赤とんぼ 静 子
 8点 浦深く灯す一船秋の声        毅
    評判の売り子は傘寿ねこじやらし  道 明
    長老の今日はネクタイ秋祭     三和子
    流行服の案山子の見てる電車かな  知 美
    蓑虫の蓑に縫目のなかりけり    けい子
 7点 引力は縦方向や長瓢簞       邦 夫
 6点 ビルの玻璃独り占めする秋夕焼   康 子
 5点 露の世や自分史書けば父母のこと  圭 子
    月こよひ郵便ポストへ落とす音   かつ子
    カラス鳴き庭にざくろの叫ぶ声   ちあき

このページのトップへ

1月号一句集(第644回)(702号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    風に乗りタンゴ舞ふかに赤とんぼ  福多小夜子
    夜半の雨俄に秋をつれて来し    田中 道代
    夕焼けていつもと違ふ町にゐる   大前 邦子
    言の葉も短になりし残暑かな    服部 康子
特 選 願ひごと願ひ尽くして星流る    上田 圭子

      楠 田 かつ子 選   
    夜半の雨俄に秋をつれて来し    田中 道代
    爪紅や触診の指うら若し      醒井 龍子
    残暑とは肩で息する厨事      鈴木かず子
    八幡の社の中の竹の春       草信 勝之
特 選 禅寺の鯨骨白し夜の秋       中野千鶴子

      木 下 数 子 選   
    夜半の雨俄に雨をつれて来し    田中 道代
    葛の花変体仮名の文学碑      本庄 文子
    夕焼けていつもと違ふ町にゐる   大前 邦子
    夕立や駅舎に残る水溜り      黒澤喜美枝
特 選 生身魂経読む声の衰へず      吉岡すみ子

      互選高点句より     
15点 綿の実のひとりはぜたる日和かな  けい子
12点 風鈴に風の言葉を持たせをり    りゑ子
 8点 願ひごと願ひ尽くして星流る    圭 子
    夕焼けていつもと違ふ町にゐる   邦 子
 6点 禅寺の鯨骨白し夜の秋       千鶴子
    物忘れ許容範囲や生身魂      節 子
    秋風や日の丸なびく村役場     康 夫
    葛の花変体仮名の文学碑      文 子
 5点 草雲雀の鳴きごゑを踏み農夫かな  かつ子
    原色の街になじめず秋の月      毅
    残暑とは肩で息する厨事      かず子
    野崎唄流れ掛茶屋心太       静 子

このページのトップへ

12月号一句集(第643回)(701号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    夏休み雑魚寝たのしき祖母の家   楠田かつ子
    流燈の思ひ水面に漂へり      片岡 和子
    空蟬や公園にもう誰もゐず     中野千鶴子
    晩夏なる風の軽さや駅の椅子    鈴木かず子
特 選 腕白も畏みくぐる茅の輪かな    翁長三和子

      楠 田 かつ子 選   
    招かれて裏の川まで鰻筒      芝  惠子
    言わぬ愚痴耐える愚痴あり麦茶飲む 田中 道代
    白壁に潮騒をきく秋はじめ     安孫子康夫
    挿絵ある野ざらし紀行夏深し    木下 数子
特 選 木の椅子のレトロな駅舎夏至の昼  谷 美知子

      木 下 数 子 選   
    山百合や古民家早き夕灯し     切建  昇
    始めてはならぬ戦や夏の雲     広渡 とし
    今朝空へ太郎次郎も夏燕      谷口 一夫
    晩夏なる風の軽さや駅の椅子    鈴木かず子
特 選 夏休み雑魚寝たのしき祖母の家   楠田かつ子

      互選高点句より     
11点 夏休み雑魚寝たのしき祖母の家   かつ子
 8点 若者の野性に戻る盛夏かな     けい子
    遠雷や物理教師の怒り肩      圭 子
 6点 夏座敷陶土の豚の鼻けぶり     邦 子
    腕白も畏みくぐる茅の輪かな    三和子
    言わぬ愚痴耐える愚痴あり麦茶飲む 道 代
    海峡を炎に染めて大夕焼      昌 弘
 5点 流燈の思ひ水面に漂へり      和 子
 4点 百度踏む姉妹の背ナに梅雨雫    康 子
    高層ビルを押しつぶさむか雲の峰  し の
    メロン切る児の口程の大きさに   八重子

このページのトップへ

11月号一句集(第642回)(700号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    坪庭の花となりたる金魚かな   中野千鶴子
    夏蝶の行く手はまほら無人駅   山根八重子
    神代より戦は定めはたた神    横山三恵子
    一声の樹々に透けたるほととぎす 大橋 保司
特 選 日に増して老鶯のこゑ太くなり  鈴木かず子

      楠 田 かつ子 選   
    かき氷五感に順位ありにけり   守作けい子
    万葉の山の夕日や蕎麦の花    藤川  毅
    かなかなや明治を残す石畳    安孫子康夫
    夕鐘の届く湖畔の涼しさよ    谷口 一夫
特 選 父忌日もつとも父の日のやうな  片岡 和子

      木 下 数 子 選   
    夏草の匂ふ史跡の忠魂碑     後藤 昌弘
    一声の樹々に透けたるほととぎす 大橋 保司
    急ぎつゝ足のそろひし百足かな  本庄 文子
    夕日差す海の奥より土用波    大前 邦子
特 選 かなかなや明治を残す石畳    安孫子康夫

      互選高点句より     
10点 かき氷五感に順位ありにけり    けい子
    片陰をパズルのごとく拾ひをり   かつ子
 8点 かなかなや明治を残す石畳     康 夫
 7点 白南風や幟のうなぎ泳ぎ出す    敏 子
 6点 万葉の山の夕日や蕎麦の花      毅
    呼べば「ハイ」返事の良い子夏帽子 圭 子
 5点 夏草の匂ふ史跡の忠魂碑      昌 弘
    短夜や寝返り打てば厨音      恭 子
    夏つばめ巣立ちしあとの空家かな  あゆみ
    神代より戦は定めはたた神     三恵子
    一声の樹々に透けたるほととぎす  保 司

このページのトップへ

10月号一句集(第641回)(699号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    ひなげしや少女のような風少し  沖津 京子
    業平の色香残して杜若      翁長三和子
    リラ咲かす家の主を未だ知らず  中野千鶴子
    ユニホーム乾く高階夏夕べ    田中 敏子
特 選 花は葉に同じ話に湧く法事    横山三恵子

      楠 田 かつ子 選   
    遊船の沖へ水尾引く潮ぐもり   田中 美月
    リラ咲かす家の主を未だ知らず  中野千鶴子
    花は葉に同じ話に湧く法事    横山三恵子
    雲一つ流れて吉野夏となり    倉坂 桑史
特 選 業平の色香残して杜若      翁長三和子

      木 下 数 子 選   
    梅花藻の花ゆらめくや岩倉郷   藤川  毅
    短命を力のかぎり蟬しぐれ    大前 邦子
    薫風の城址母校を足許に     森本 知美
    草千里牧場に放つ仔馬かな    馬場 静子
特 選 時の日茶葉ひらく間の砂時計  楠田かつ子

      互選高点句より     
10点 時の日の茶葉ひらく間の砂時計  かつ子
    業平の色香残して杜若      三和子
 9点 雲一つ流れて吉野夏となり    桑 史
 8点 草千里牧場に放つ仔馬かな    静 子
    花は葉に同じ話に湧く法事    三恵子
 7点 まざまざと原野を見せる夏野かな 和 子
    寺に残る木版活字梅雨に入る   数 子
    リラ咲かす家の主を未だ知らず  千鶴子
 6点 遊船の沖へ水尾引く潮ぐもり   美 月
    薫風の城址母校を足許に     知 美
    ひなげしや少女のような風少し  京 子
    滝の道音近くなり遠くなり    道 代
 5点 鬱とあらば若葉の光浴びてこよ  かず子
    ゆつくりと風に逆らふ柳かな   さかえ

このページのトップへ

9月号一句集(第640回)(698号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    掘割の水の匂ひや半夏生     田中 美月
    一駅を歩いて嵯峨の春惜しむ   後藤 昌弘
    戦争を知らぬ幸せ豆ごはん    広渡 とし
    北山の杉千本の梅雨入かな    安孫子康夫
特 選 橋際の護り地蔵や竹の秋     田中 敏子

      楠 田 かつ子 選   
    春満月はるかな人と交信す    翁長三和子
    一駅を歩いて嵯峨の春惜しむ   後藤 昌弘
    みどりさす町屋土蔵の写真展   紺谷  葵
    川上は風のふるさと鯉幟     恒藤 邦夫
特 選 海風もふるさとの香花蜜柑   谷口 一夫

      木 下 数 子 選   
    桜蕊降るランドセル色いろいろ  伊藤 しの
    戦争を知らぬ幸せ豆ごはん    広渡 とし
    畦塗りや光集めててらてらと   上田 芳枝
    田に空を映して田植はじまりぬ  黒澤喜美枝
特 選 青空へ服だぶつかせ入園す    山根八重子

      互選高点句より     
16点 一駅を歩いて嵯峨の春惜しむ   昌 弘
15点 北山の杉千本の梅雨入かな    康 夫
 8点 掘割の水の匂ひや半夏生     美 月
    海風もふるさとの香の花蜜柑   一 夫
 7点 エレベーター五月の街を垂直に  圭 子
 6点 行く春や鳥のアカペラ粲さんと  けい子
    春満月はるかな人と交信す    三和子
 5点 船に添い海豚八頭春の海     恭 子
    揚雲雀記紀の山々模糊として   邦 子
    戦争を知らぬ幸せ豆ごはん    と し
    滴りの断ち切れさうで断ち切れず 道 代

このページのトップへ

8月号一句集(第639回)(697号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    菜の花や女系家族の丸き鼻    上田 圭子
    ぼろぼろの野鳥図鑑や山笑ふ   守作けい子
    山の端は花の盛りや登り窯    吉岡すみ子
    捨てし句を拾ひ直して山笑ふ   寺野りゑ子
特 選 この辺り廃寺址とやつくし摘む  木下 数子

      楠 田 かつ子 選   
    壬申の戦の橋や散る桜      安孫子康夫
    誰か手を上げて近づく朧かな   中野千鶴子
    かにかくに吟行楽し風光る    翁長三和子
    三椏や紙は神なり和紙の里    山口 道明
特 選 この辺り廃寺址とやつくし摘む  木下 数子

      木 下 数 子 選   
    燕来る何かくはえてをりにけり  福多小夜子
    春日野の杜深々と囀れり     田中 美月
    春の闇いのちの気配充ちみちて  片岡 和子
    使はねば文字忘れをり花曇り   愛須 淑子
特 選 ぼろぼろの野鳥図鑑や山笑ふ   守作けい子

      互選高点句より   
12点 菜の花や女系家族の丸き鼻    圭 子
    ぼろぼろの野鳥図鑑や山笑ふ   けい子
11点 こはれゆく母へ花びらかがやけり 佰 代
10点 春日野の杜深々と囀れり     美 月
 9点 春風に五体預けて無となりぬ   八重子
 8点 この辺り廃寺址とやつくし摘む  数 子
 7点 山の端は花の盛りや登り窯    すみ子
    捨てし句を拾ひ直して山笑ふ   りゑ子
    ぽつかりと亀の首浮く日永かな  京 子
    使はねば文字忘れをり花曇り   淑 子
 6点 人生を違ふ道来て桜時      恵 子
    誰か手を上げて近づく朧かな   千鶴子
 5点 浮かびくる悲喜こもごもや花吹雪 三恵子
    花冷の耳をはなれぬ水の音    道 代
    三椏や紙は神なり和紙の里    道 明
    風は野の春動かせて過ぎにけり   毅

このページのトップへ

7月号一句集(第638回)(696号) ps

(・は選者の添削)
      中 谷 貞 子 選   
    山笑ふいつも心に夫のゐて    沖津 京子
    花手水椿浮かべて観音堂     横山三恵子
    小流れの森に鼓動や風光る    田中 道代
    いつの間に母と娘逆転山笑   服部 康子
特 選 風光る向かう岸にも走る人    恒藤 邦夫

      楠 田 かつ子 選   
    日脚伸ぶけやき並木の続きをり  村岡 靖子
    神童も美少女も老ゆ朝桜     切建  昇
    下萌や橋の真中に風の音     大前 邦子
    春立つや風にやさしさ戻りけり  島本 一麻
特 選 名も知らぬ山の頂き春の雪    谷口 一夫

      木 下 数 子 選   
    ペダル踏む音軽やかに花菜風   後藤 昌弘
    虎落笛意地張る父の後ろ行き   寺野りゑ子
    汀子逝く芦屋鎮もる春の雨    翁長三和子
    いつの間に母と娘逆転山笑   服部 康子
特 選 風光る向かう岸にも走る人    恒藤 邦夫

      互選高点句より   
11点 小流れの森に鼓動や風光る    道 代
 9点 ペダル踏む音軽やかに花菜風   昌 弘
    神童も美少女も老ゆ朝桜      昇 
    風光る向かう岸にも走る人    邦 夫
 8点 春風を待つ観音のくすりゆび   と し
    春雷や丹波の鬼の男ぶり     康 夫
 7点 山笑ふいつも心に夫のゐて    京 子
    いつの間に母と娘逆転山笑ふ   康 子
    待つ人に待たるる人に春の雨   けい子
 6点 花手水椿浮かべて観音堂     三恵子
 5点 隙間風ひとりの夜はことさらに  し の
    汀子逝く芦屋鎮もる春の雨    三和子
    会ひたくて遠回りするすみれ草  八重子

このページのトップへ

6月号一句集(第637回)(695号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    年毎に病名ふえし若菜粥     芝  恵子
    社家町の水の流れや緑立つ    安孫子康夫
    集まりて病気自慢の日向ぼこ   山口ちあき
    それぞれの嶺のまとひし雪の色  松村さかえ
特 選 冬ざくら湖北の空のあをみたる  田中 美月

      楠 田 かつ子 選   
    ひとひらに闇ひとつづつぼたん雪 鈴木かず子
    鞦韆に坐せば自づと唱歌出て   中谷 貞子
    梲には鏝絵の家紋寒雀      木下 数子
    桜貝海は奪ひも与へもす     片岡 和子
特 選 浮雲の風花こぼしゆきにけり   馬場 静子

      木 下 数 子 選   
    鞦韆に坐せば自づと唱歌出て   中谷 貞子
    伸びるだけ伸ばす手足や初湯あぶ 松岡 節子
    寒椿徳利に一輪違ひ棚      吉岡すみ子
    立春の湖にひかりの戻りけり   草信 勝之
特 選 桜貝海は奪ひも与へもす     片岡 和子

      互選高点句より   
12点 弾めどもみんな切なき手毬唄   けい子
 8点 街路樹の伐られて冬空高きかな  千寿子
    桜貝海は奪ひも与へもす     和 子
 7点 登校の子らを見てをり雪達磨   三和子
    浜干しの目刺は海の色香のせ   淑 子
 6点 ひとひらに闇ひとつづつぼたん雪 かず子
    伸びるだけ伸ばす手足や初湯あぶ 節 子
    立春の湖にひかりの戻りけり   勝 之
 5点 夜の湖に星座のやうな百合鷗   邦 夫
    待春のこころ育てて八十路かな  昌 弘
    鞦韆に坐せば自づと唱歌出て   貞 子
    社家町の水の流れや緑立つ    康 夫
    けんぱーの円の残りし春の土   京 子
    集まりて病気自慢の日向ぼこ   ちあき
    冬ざくら湖北の空のあをみたる  美 月
    梲には鏝絵の家紋寒雀      数 子

このページのトップへ

5月号一句集(第636回)(694号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    サイレンは正午の合図薪を割る   翁長三和子
    地図上は点にも成らず山眠る    寺野りゑ子
    一羽二羽雀まず来る注連飾     沖津 京子
    駅伝や小雪の古都を抜き抜かれ   横山三恵子
特 選 歓喜して日輪抱く枯木立      山口 道明

      楠 田 かつ子 選   
    禅寺の縁に落葉の積りけり     紺谷 葵
    老いらくの渾身冬至南瓜切る    醒井 龍子
    鶏鳴のよく響きたる寒日和     重松 里代
    川音も小さくなりぬ寒の月     大前 邦子
特 選 聞き上手話し上手や温め酒     吉岡すみ子

      木 下 数 子 選   
    「こん」と来て石狐の遊ぶ枯野道  馬場 静子
    冬うらら犬が顔出す乳母車     伊藤 しの
    冬うらら村に一つの土橋あり    谷口 一夫
    川音も小さくなりぬ寒の月     大前 邦子
特 選 バス停にミニ図書館や冬日濃し   楠田かつ子

      互選高点句より   
13点 聞き上手話し上手や温め酒      すみ子
 9点 言の葉の棘にぢんわり玉子酒     かず子
 7点 通船の運河をすべる小春かな     ひとし
    眼科・歯科・耳鼻科も行かな師走なり 圭 子
 6点 潮騒を耳朶に残して寒明くる     康 夫
    航跡の末広がりに水仙花       美 月
    鶏鳴のよく響きたる寒日和      里 代
 5点 遠吠へのいつしか消へし冬満月     昇
    一羽二羽雀まず来る注連飾      京 子
    いにしへを語る老松雪纏ひ      千寿子
    息白し悲しい事を言うときも      毅
    親御はす湖北の里は雪しまき     淑 子

このページのトップへ

4月号一句集(第635回)(693号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    五百年の銀杏黄葉や行在所     木下 数子
    人間を好きな鳥ゐてけふ小春    鈴木かず子
    太閤傘に劣らぬ楓もみぢかな    田中 敏子
    香ばしく味噌の焼けゆく囲炉裏かな 翁長三和子
特 選 朱の鳥居艶やかにして片時雨    沖津 京子

      楠 田 かつ子 選   
    雪催ひポストに入れる音ひとつ   重松 里代
    ともづなに千の電飾クリスマス   田中 美月
    黄落や呼応の長き鹿の声      中谷 貞子
    香ばしく味噌の焼けゆく囲炉裏かな 翁長三和子
特 選 翔平てふ名は半額や夜鷹蕎麦    寺野りゑ子

      木 下 数 子 選   
    雪催ひポストに入れる音ひとつ   重松 里代
    黄落や呼応の長き鹿の声      中谷 貞子
    もみづれるもの映さんと山湖あり  馬場 静子
    冬に入る川の流れのゆるやかに   岩佐 純子
特 選 終点は狼煙の町の能登時雨     佐藤ひとし

      互選高点句より   
17点 雪催ひポストに入れる音ひとつ  里 代
12点 終点は狼煙の町の能登時雨    ひとし
10点 人間を好きな鳥ゐてけふ小春   かず子
 9点 黄落や呼応の長き鹿の声     貞 子
 8点 ともづなに千の電飾クリスマス  美 月
    夕闇の寂しさ乗せて鳰の笛    ちあき
    切株の年輪数ふ日向ぼこ     龍 子
 7点 眉上げて凩起こす風の神     康 子
 6点 千手仏の千を救ふ手花八手    一 夫
    雪降るや百万石の菱櫓      康 夫
    初弓や冷気切り裂く弦の音    重 悟
 5点 五百年の銀杏黄葉や行在所    数 子
    老妻は呑める口なり玉子酒    勝 之

このページのトップへ

3月号一句集(第634回)(692号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    秋晴や公園デビューの小さき靴 大前 邦子
    沈む日に影絵のやうな冬木立  恒藤 邦夫
    木守柿へ鳥の来てゐる夕べかな 太田 明子
    秋日濃き村の一所の案内図   村岡 靖子
特 選 新装の菓子店のあり秋うらら  山口 晴空

      楠 田 かつ子 選   
    古都奈良の「フクロウカフェ」
             敬老の日  藤川 毅
    沈む日に影絵のやうな冬木立  恒藤 邦夫
    蛤御門くぐり一日の秋惜しむ  吉岡すみ子
    天空の風の強さよ冬に入る   谷口 一夫
特 選 鳩吹くや父の孤独をかいま見る 守作けい子

      木 下 数 子 選   
    沈む日に影絵のやうな冬木立  恒藤 邦夫
    海峡の果の果まで星月夜    後藤 昌弘
    かりんの実人に十人十色かな  田中 敏子
    冬立つや少し流れの遅くなり  横山三恵子
特 選 秋晴や公園デビューの小さき靴 大前 邦子

      互選高点句より   
10点 鳩吹くや父の孤独をかいま見る  けい子
    沈む日に影絵のやうな冬木立   邦 夫
    海峡の果の果まで星月夜     昌 弘
 8点 寝返りが出来てにつこり菊日和  数 子
 6点 老い先も死に方もまた霧の中   道 明
    かりんの実人に十人十色かな   敏 子
 5点 三方五湖色を違へて水澄めり   美 月
    秋晴や公園デビューの小さき靴  邦 子
    釣鐘に清姫の炎や秋深し     恵 子
    天高し奈良の旧家の深廂     し の
    湧ける雲消ゆる雲あり野路の秋  静 子
    黄金波に湧きて飛び立つ稲雀   保 司

このページのトップへ

2月号一句集(第633回)(691号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    秋夕べ夜間中学はや灯る     木下 数子
    師の俤立ちし美男葛かな     楠田かつ子
    不夜城のコンビナートや秋澄めり 横山三恵子
    飛蝗跳ぶ幼き児らの騒ぐかに   翁長三和子
特 選 境内の手づくり市や神の留守   恒藤 邦夫

      楠 田 かつ子 選   
    川底に砂の流るる寒の入     安孫子康夫
    昨日より山近く見ゆ今朝の秋   伊藤 しの
    秋深し縁切尼寺の絵馬の文字   谷口 一夫
    古代史を辿る明日香の秋茜    後藤 昌弘
特 選 少女期を過ぎし頃の香青蜜柑   上田 圭子

      木 下 数 子 選   
    境内の手づくり市や神の留守   恒藤 邦夫
    月を見て語れば夫婦五十年    山口 道明
    古代史を辿る明日香の秋茜    後藤 昌弘
    曼珠沙華墓地にもありし両隣   藤川 毅
特 選 師の俤立ちし美男葛かな     楠田かつ子

      互選高点句より   
15点 境内の手づくり市や神の留守   邦 夫
10点 古代史を辿る明日香の秋茜    昌 弘
 8点 曼珠沙華墓地にもありし両隣    毅
 7点 不夜城のコンビナートや秋澄めり 三恵子
    出格子の旧家はしんと水の秋    昇
    稔り田を包む丹波の高曇り    邦 子
    昨日より山近く見ゆ今朝の秋   し の
 6点 神宮の玉砂利行けば水澄める   けい子
    薬掘る水路の先の飛鳥仏     美 月
    つかの間の秋の暮色を見届けり  ひとし
 5点 秋夕べ夜間中学はや灯る     数 子
    嚙み合はぬ世間話や敬老の友   すみ子

このページのトップへ

1月号一句集(第632回)(690号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    又も雨茗荷の花の白さかな  鈴木かず子
    稲の花ホームの長き無人駅  田中 美月
    美しく素直に育ち大糸瓜   翁長三和子
    昏れなづむ秋の夕焼観覧車  佐藤ひとし
特 選 コロナ禍に提灯あらた地蔵盆 上田 芳枝

      楠 田 かつ子 選   
    稲の花ホームの長き無人駅  田中 美月
    読書する外湯の人や秋の昼  西川千代子
    そぞろ寒施設に帰る母の背  寺野りゑ子
    薬とは知らぬや続く蟻の列  重松 里代
特 選 天高し星形の彫り城垣に   木下 数子

      木 下 数 子 選   
    銀漢の端を摑みて野径行く  谷口 一夫
    稲の花ホームの長き無人駅  田中 美月
    祈り続く鶴に二つの原爆忌  守作けい子
    昏れなづむ秋の夕焼観覧車  佐藤ひとし
特 選 そぞろ寒施設に帰る母の背  寺野りゑ子

      互選高点句より   
14点 稲の花ホームの長き無人駅    美 月
10点 蟬のこゑ焦げたる日なり終戦忌  保 司
 7点 それぞれの名を持つて咲く草の花 道 代
    大楠や秋のひかりを散らしをり  晴 空
 6点 朝焼けの空に音無く終戦忌    恭 子
 5点 捨て案山子家族並べて町おこし  知 美
    蟻地獄ここで生き抜くつらがまへ  毅
    もらひ湯をせし母と子に天の川  圭 子
    老杉に月かかりゐて蔵王堂    康 夫
    秋暑し主治医の声は宙を舞ふ   八 重

このページのトップへ

12月号一句集(第631回)(689号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    寺大工堂の裏にて三尺寝     鈴木 成子
    睡蓮の葉裏くすぐる池の鯉    後藤 昌弘
    太文字の百味簞笥や合歓の花   切建  昇
    雷一つ遊ぶ子供の声奪ふ     谷口 一夫
特 選 喝采に応ふ役者の汗涼し     山口 道明

      楠 田 かつ子 選   
    どつと来てどつと攫ふや梅雨出水 守作けい子
    喝采に応ふ役者の汗涼し     山口 道明
    五位鷺の流れ啄むはやさかな   田中 敏子
    短夜の津軽三味線たびの宿    重松 里代
特 選 太文字の百味簞笥や合歓の花   切建  昇

      木 下 数 子 選   
    寺大工堂の裏にて三尺寝     鈴木 成子
    麦わら帽忘れ置かれて草茂る   白数千寿子
    五位鷺の流れ啄むはやさかな   田中 敏子
    太文字の百味簞笥や合歓の花   切建  昇
特 選 夾竹桃咲けば広島思ひけり    大前 邦子

      互選高点句より   
14点 寺大工堂の裏にて三尺寝     成 子
10点 少年の瞳にあふる雲の峰     康 夫
 9点 睡蓮の葉裏くすぐる池の鯉    昌 弘
 8点 喝采に応ふ役者の汗涼し     道 明
 7点 どつと来てどつと攫ふや梅雨出水 けい子
    烏瓜咲きて一ト夜の夢舞台    三和子
 6点 太文字の百味簞笥や合歓の花    昇 
    星合の逢瀬はならず涙雨     京 子
 5点 夾竹桃咲けば広島思ひけり    邦 子
    田の水を張る夜の蛙のこゑ高く  保 司
    とんぼ来て洗濯鋏になりすます  静 子
    短夜の津軽三味線たびの宿    里 代

このページのトップへ

11月号一句集(第630回)(688号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    枇杷の実や空高き日の墓仕舞   森本 知美
    まちなかに一枚田あり夕蛙    鈴木 成子
    遺骨かも知れぬ白砂沖縄忌    広渡 とし
    川音の高まる渓の濃あぢさゐ   沖津 京子
特 選 逝く夏や舟屋にかへす波頭    安孫子康夫

      楠 田 かつ子 選   
    半寿てふ年を教はる梅雨葵    北沢 恭子
    逝く夏や舟屋にかへす波頭    安孫子康夫
    「ぐいのみ」は揃ひの赤絵鱧料理 吉岡すみ子
    川音の高まる渓の濃あぢさゐ   沖津 京子
特 選 音高き宇治の流れや夏兆す    大前 邦子

      木 下 数 子 選   
    少女摘む蚊吊草と知らぬまま   谷口 一夫
    故郷は代替りして更衣      愛須 淑子
    生き様を皺に刻みし日焼顔    山口 道明
    遠雷や机の隅の反抗期      上田 圭子
特 選 遺骨かも知れぬ白砂沖縄忌    広渡 とし

      互選高点句より   
13点 逝く夏や舟屋にかへす波頭    康 夫
    まちなかに一枚田あり夕蛙    成 子
12点 生き様を皺に刻みし日焼顔    道 明
 9点 老鶯や尼寺朝の茶粥噴く     数 子
    「ぐいのみ」は揃ひの赤絵鱧料理 すみ子
    遺骨かも知れぬ白砂沖縄忌    と し
 8点 風鈴の音のもつるる夕べかな   昌 弘
    遠雷や机の隅の反抗期      圭 子
 7点 銀輪にまつ赤なベスト夏木立   かつ子
    枇杷の実や空高き日の墓仕舞   知 美
 6点 故郷は代替りして更衣      淑 子
 5点 言葉などいらぬベンチの若葉風  道 代
    朝蟬やラヂオの電池入れ換へる  恵 子

このページのトップへ

10月号一句集(第629回)(687号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    拓本は津波の教へ五月波     木下 数子
    ブラシの花赫と暗渠の水ひびく  楠田かつ子
    小満や進路を決めし高校生    横山三恵子
    石段の奥も石段沙羅の花     後藤 昌弘
特 選 老鶯のこゑの聞こゆる窯の跡   山口 清子

      楠 田 かつ子 選   
    お隣もそのお隣も薔薇の門    田中 美月
    拓本は津波の教へ五月波     木下 数子
    沖に船卓に真紅の薔薇一花    山口 道明
    姫の名も母も妓もある椿展    白数千寿子
特 選 石段の奥も石段沙羅の花     後藤 昌弘

      木 下 数 子 選   
    万緑や一樹の下に荷物置く    田中 道代
    二の宮の小さき標夏あざみ    山根八重子
    渡し船の離るる岸や風薫る    草信 勝之
    梅雨兆す湖北の波の高くあり   太田 明子
特 選 沖に船卓に真紅の薔薇一花    山口 道明

      互選高点句より   
12点 母の日や身の丈ほどの幸を知る  康 子
    喧嘩などなかつたように子ら昼寝 し の
10点 石段の奥も石段沙羅の花     昌 弘
 8点 盛り塩の門を迂回のなめくぢり  龍 子
 7点 お隣もそのお隣も薔薇の門    美 月
 6点 廃屋の木戸の傾ぎや蟻の列    和 江
 5点 拓本は津波の教へ五月波     数 子
    秘めやかに水琴窟や五月雨    佰 代
    鞍馬路の移動パン屋や若葉風   圭 子
    棟上げの槌音梅雨の中休み    敏 子
    鉄棒に挑む幼やゆすらうめ    貞 子
    二の宮の小さき標夏あざみ    八重子
    少年の思慕の沈黙四葩咲く    けい子
    沖に船卓に真紅の薔薇一花    道 明
    生きるとはワクチン予約夏帽子  淑 子
    老鶯のこゑの聞こゆる窯の跡   清 子

このページのトップへ

9月号一句集(第628回)(686号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    神苑の水辺華やぐ藤の花     後藤 昌弘
    挨拶を交はすまくなぎ払ひつつ  伊藤 しの
    鱒釣りの鱒を隠して花筏     恒藤 邦夫
    鳥ゆする枝の間に間に夏来たる  山口 晴空
特 選 風の手も借りて皮脱ぐ今年竹   藤川 毅

      楠 田 かつ子 選   
    行く春や木串の太き五平餅    田中 美月
    翔つ影のひねもす零れ楠若葉   中谷 貞子
    菜の花の向うに覗く世の暗さ   山口 道明
    春一番買つてしまひし売り言葉  寺野りゑ子
特 選 新緑や何でも許せさうな朝    田中 道代

      木 下 数 子 選   
    行く春や木串の太き五平餅    田中 美月
    風の手も借りて皮脱ぐ今年竹   藤川 毅
    逝く春の笛一管の哀史かな    安孫子康夫
    オオルリの声朗朗と渓越えて   横山三恵子
特 選 菖蒲田に囲まる句碑をおもひをり 鈴木 成子

      互選高点句より   
14点 新緑や何でも許せそうな朝      道 代
 8点 逝く春の笛一管の哀史かな      康 夫
    これといふ理由なく疎遠花の冷    かず子
 7点 青き踏む友と言の葉拾ひつつ     邦 子
    風の手も借りて皮脱ぐ今年竹      毅
    老いの瞳もわらべとなりてしやぼん玉 佰 代
    春一番買つてしまひし売り言葉    りゑ子
 6点 春暮るる五右衛門風呂の板を踏む   と し
    行く春や木串の太き五平餅      美 月
    曳船の高鳴る音や春河口       ひとし
 5点 神苑の水辺華やぐ藤の花       昌 弘
    花菜雨傘を回して子らのゆく     ちあき

このページのトップへ

8月号一句集(第627回)(685号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    老祢宜の前もうしろも春落葉   木下 数子
    少年のひなた臭さや桃の花    渕元 幸子
    地方紙に包む春筍届きけり    沖津 京子
    春暁の光を返すビルの玻璃    服部 康子
特 選 鶯を椅子に聞きつつ診療所    森本 知美

      楠 田 かつ子 選   
    春の風知らない町を歩きたし   伊藤 しの
    夏草や義経道は海へ落つ     安孫子康夫
    啓蟄や大地閂はづしけり     山口 道明
    回廊に猫の足跡春の泥      重松 里代
特 選 初めての吾子の化粧や桃の花   馬場あゆみ

      木 下 数 子 選   
    のどけしや明日の来ること疑はず 広渡 とし
    かんざし屋のぞく花街花の昼   田中 美月
    一握り半端な数の土筆摘み    菅野 節子
    気がつけば五月の声を聞きにけり 小倉  瞭
特 選 初めての吾子の化粧や桃の花   馬場あゆみ

      互選高点句より   
12点 回廊に猫の足跡春の泥       里 代
11点 啓蟄や開かずのままの勅使門    貞 子
 9点 地方紙に包む春筍届きけり     京 子
 8点 夏草や義経道は海へ落つ      康 夫
    手話習ふ少女の耳朶や風光る    圭 子
 7点 紙風船風と転る坂の街       すみ子
    少年のひなた臭さや桃の花     幸 子
 6点 薄氷を出でたる鯉のひるがへり   和 江
    春の風知らない町を歩きたし    し の
    一握り半端な数の土筆摘み    節 子
    初めての吾子の化粧や桃の花    あゆみ
 5点 老祢宜の前もうしろも春落葉    数 子
    啓蟄や大地閂はずしけり      道 明
    のどけしや明日の来ること疑はず  と し
    まなうらに古里の景草の餅     かつ子
    春暁の光を返すビルの玻璃     康 子

このページのトップへ

7月号一句集(第626回)(684号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    みささぎの裾野ゆるやか麦青む  田中 美月
    立ち直り早き呪文や桜草     上野 和江
    古代雛飾る現代美術館      谷口 一夫
    木々芽吹く神の嶺あり道のあり  大前 邦子
特 選 暗がりに鹿とゆき逢ふ修二会かな 鈴木 成子

      楠 田 かつ子 選   
    渦潮の淵に裾ひく阿波人形    紺谷 葵
    春の月三十階の窓明かり     木下 数子
    梅が香や鴟尾の眩しき朱雀門   後藤 昌弘
    水音は下社へ春の社かな     白数千寿子
特 選 意外にも老いは軽やか風光る   鈴木かず子

      木 下 数 子 選   
    門前や綿菓子の噴く春の色    醒井 龍子
    春一番自転車漕ぎの写楽顔    守作けい子
    意外にも老ひは軽やか風光る   鈴木かず子
    水音は下社へ春の社かな     白数千寿子
特 選 暗がりに鹿とゆき逢ふ修二会かな 鈴木 成子

      互選高点句より   
17点 みささぎの裾野ゆるやか麦青む   美 月
15点 万物の空へはじける聖五月     純 子
10点 意外にも老いは軽やか風光る    かず子
 8点 遠き日の誰彼に似て木彫雛     千鶴子
    暗がりに鹿とゆき逢ふ修二会かな  成 子
 7点 一斉に名残の円舞春の鴨      三恵子
    門前や綿菓子の噴く春の色     龍 子
 6点 宝物館の古文書読めず山笑ふ     昇 
    渦潮の淵に裾ひく阿波人形      葵
    梅が香や鴟尾の眩しき朱雀門    昌 弘
    古代雛飾る現代美術館       一 夫
    母の皺愚痴も楽しき春炬燵     あゆみ
    春なれや心の奥の恋ごころ     道 明
    せめぎ合う病と寿命春疾風     一 麻
 5点 青麦や虚空に澄み征く鳶の笛    幸 子

このページのトップへ

6月号一句集(第625回)(683号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    さきがけて紅梅に吊る女文字   上野 和江
    朧夜や街騒をきく石畳      安孫子康夫
    冬うらら何でもない日の写真館  上田 圭子
    菜の花や日溜り似合ふ人と居る  谷口 一夫
特 選 岩を割る千年楠や寒月光     木下 数子

      楠 田 かつ子 選   
   いつからかポケットに住む懐炉かな 恒藤 邦夫
    落葉踏む記憶の中の足の裏    岩佐 純子
    草萌えや放牧の牛呼べば来る   北沢 恭子
    流れつつ色の戻りし春の川    大前 邦子
特 選 岩を割る千年楠や寒月光     木下 数子

      木 下 数 子 選   
    初雀ひとりですかとベランダへ  木村 菊恵
    中天にまろき月あり春そこに   鈴木 成子
    粕汁にあたためられてひとりなり 伊藤 しの
   武骨なる手にあるリズム注連を綯ふ 藤川 毅
特 選 冬うらら何でもない日の写真館  上田 圭子

      互選高点句より   
16点 武骨なる手にあるリズム注連を綯ふ  毅
15点 岩を割る千年楠や寒月光      数 子
11点 落ちてより紅の際立つ寒椿     と し
 8点 冬うらら何でもない日の写真館   圭 子
    曳船の音遠ざかる冬埠頭      ひとし
 7点 一徹な杜氏の辛苦寒造り      けい子
 6点 草萌えや放牧の牛呼べば来る    恭 子
 5点 落葉踏む記憶の中の足の裏     純 子
    さきがけて紅葉に吊る女文字    和 江
    雪女独りの夜半に家軋む      りゑ子
    子守歌聞かせた子からお年玉    康 子

このページのトップへ

5月号一句集(第624回)(682号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    大楓まだ裸木になり切れず     森本 知美
    冬鷗肩を寄せ合ふ艀かな      佐藤ひとし
    白足袋の爪先余る母のもの     広渡 とし
    年玉の数に入りし初曾孫      愛須 淑子
特 選 蒼天の臍となりゐて木守柿     古藤いさむ

      楠 田 かつ子 選   
    高からぬ火の見櫓や冬の鵙     上野 和江
    野面積に転用石や冬ざるる     木下 数子
    探梅行記憶の中の道さぐり     大前 邦子
    暖炉燃ゆロビーに下ろす旅鞄    田中 美月
特 選 雪を来て津軽三味線きく夜かな   鈴木 成子

      木 下 数 子 選   
    高からぬ火の見櫓や冬の鵙     上野 和江
 「サンタさんマイネームイズハナ」きてね 楠田かつ子
    虎落笛子を断りて一人生き     寺野りゑ子
    埒外に鷺のとび立つ寒夕焼     藤川  毅
特 選 雪を来て津軽三味線きく夜かな   鈴木 成子

      互選高点句より   
15点 雪を来て津軽三味線きく夜かな   成 子
10点 蒼天の臍となりゐて木守柿     いさむ
 9点 探梅行記憶の中の道さぐり     邦 子
 8点 残照の水面に遊ぶ番鴨       ちあき
    綿虫のつかず離れず風の舞     道 代
 7点 高からぬ火の見櫓や冬の鵙     和 江
    冬の影下校の子等の肘タッチ    龍 子
    大楓まだ裸木になり切れず     知 美
    野面積に転用石や冬ざるる     数 子
    ひととせの情の通ひし古日記    けい子
    冬蝶も植物園の門くぐる      京 子
    万両はひそと古刹の庭清し      昇
    年玉の数に入りし初曾孫      淑 子

このページのトップへ

4月号一句集(第623回)(681号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    山粧ふ麓の村の開拓碑       木下 数子
    しぐるるや東山にもまねきにも   伊藤 しの
    御手洗の竹あをあをと年用意    小川 清子
    彫り深きステンドグラス冬夕焼   山口 晴空
特 選 研ぎ減りし包丁勤労感謝の日    上野 和江

      楠 田 かつ子 選   
    争うてゐし神々の山眠る      田中 敏子
    かへらじと扉に残し冬ざくら    古藤いさむ
    熟田津に出船の月を待つや君    田中 衡子
    大根干し湖が見えなくなりにけり  鈴木 成子
特 選 祇王寺に一彩添へる旅しぐれ    山口 道明

      木 下 数 子 選   
    研ぎ減りし包丁勤労感謝の日    上野 和江
    長身の火縄鉄砲秋たける      中谷 貞子
    黄葉や又振り返る父の墓      翁長三和子
    芋洗ふ昭和は遠くなりにけり    愛須 淑子
特 選 大根干し湖が見えなくなりにけり  鈴木 成子

      互選高点句より   
15点 研ぎ減りし包丁勤労感謝の日     和 江
11点 山粧ふ麓の村の開拓碑        数 子
 8点 欄干に枯るる蟷螂見得を切る     龍 子
    月光の導く天心鳥渡る        ひとし
 7点 しぐるるや東山にもまねきにも    し の
    御手洗の竹あをあをと年用意     清子
    大根干し湖が見えなくなりにけり   成 子
    母を呼ぶ鹿の遠鳴き春日道      あゆみ
 6点 天井より口あけ睨む千の鮭      邦 夫
 5点 厳寒や少年の声透きとほる      康 夫
    来し方に思ひめぐらす夜の長き    千鶴子
    争うてゐし神々の山眠る       敏 子
    眉をかく鏡の中の秋思かな      節 子
    黄葉や又振り返る父の墓       三和子
    祇王寺に一彩添へる旅しぐれ     道 明

このページのトップへ

3月号一句集(第622回)(680号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    氏神は村人と消え山眠る      木下 数子
    十三夜白馬めく雲従へり      醒井 龍子
    歌舞伎座でありし廃屋鵙たける   横山三恵子
    かいつぶり潜り居る間に陽の落つる 吉岡すみ子
特 選 遠巻きに冬の来てゐる滑り台    古藤いさむ

      楠 田 かつ子 選   
    氏神は村人と消え山眠る      木下 数子
    鵙猛る嘴より零す日の雫      田中 美月
    「ハイ」とのみ答ふ少年青蜜柑   上田 圭子
    日を受けて医門の中の冬桜     山口 清子
特 選 秋夕焼伏せ家の白き梲かな     佐藤ひとし

      木 下 数 子 選   
    草蔭に渡し跡の碑鵙日和      北沢 恭子
    赤とんぼ水底にある雲の国     沖津 京子
    歌舞伎座でありし廃屋鵙たける   横山三恵子
    コンバイン去ればはやくも穭見ゆ  小川 清子
特 選 かなかなや勧請縄の幣取れて    中谷 貞子

      互選高点句より   
14点 遠巻きに冬の来てゐる滑り台     いさむ
 9点 豆剣士の瞑想の輪や天高し      かつ子
    「ハイ」とのみ答ふ少年青蜜柑    圭 子
 8点 大銀杏古刹の逸話黄に染むる     晴 空
    一枚を句帳に収め紅葉狩       昌 弘
 7点 氏神は村人と消え山眠る       数 子
    赤とんぼ水底にある雲の国      京 子
    ふり出しに戻る話や暮の秋      と し
 6点 雨戸繰る手を止めしばし虫のこゑ   邦 子
    草蔭に渡し跡の碑鵙日和       恭 子
    武庫川を声で揺らして鳥渡る     佰 代
 5点 新米の赤子抱くよに頂きぬ      けい子
    エプロンの母の横顔根深汁      尚 江
    身上ぐれば呵呵大笑の石榴の歯    敏 子
    熟れ柿を早く捥げよと風騒ぐ     幸 子

このページのトップへ

2月号一句集(第621回)(679号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    鉢巻を締める指先秋高し      服部 康子
    補聴器を外して秋の風の中     切建 昇
    地獄絵を方言で聞く鵙日和     古藤いさむ
    日の暮れを惜しみて峡のつくつくし 佐藤ひとし
特 選 暇乞す一言主へ秋の蛇       広渡 とし

      楠 田 かつ子 選   
    生垣に忘れ眼鏡や菊咲かす     木下 数子
    切字てふ停留所あり虫の声     谷口 一夫
    武家門の名残りをしかと新松子   藤川 毅
    四・五本の糸瓜それぞれ反り返り  木村 菊恵
特 選 地獄絵を方言で聞く鵙日和     古藤いさむ

      木 下 数 子 選   
    拍手を打てば応ふる落葉風     馬場あゆみ
    補聴器を外して秋の風の中     切建 昇
    地獄絵を方言で聞く鵙日和     古藤いさむ
    割烹着は白が良きかな鰤大根    山口 晴空
特 選 戴帽のナースの列や菊薫る     醒井 龍子

      互選高点句より   
10点 地獄絵を方言で聞く鵙日和      いさむ
 9点 雨二日三日来ぬ間の彼岸花      敏 子
    戴帽のナースの列や菊薫る      龍 子
    補聴器を外して秋の風の中       昇
 8点 寺小屋の落書跡や秋時雨       けい子
    子規の忌や雲せつせつと故郷へ    淑 子
    武家門の名残りをしかと新松子     毅 
    日の暮れを惜しみて峡のつくつくし  ひとし
    割烹着は白が良きかな鰤大根     晴 空
 7点 鉢巻を締める指先秋高し       康 子
 6点 墨絵なる比叡を抱き秋日落つ      葵
 5点 鈴虫の鳴きひろがるる石舞台     里 代
    異国めくメタセコイアの黄葉道    邦 子
    光秀の墓に罅とて雪催        康 夫
    情念の色を尽くして曼珠沙華     三和子

このページのトップへ

1月号一句集(第620回)(678号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    ため息の今日何度目か秋暑し   伊藤 しの
    がらす瓜群れて咲きたる香も妖し 松岡 節子
    赤とんぼ見えぬ階段あるやうに  恒藤 邦夫
    朝々に掃いて露けくなりにけり   嶋 豊
特 選 色鳥や森の中なる美館      上野 和江

      楠 田 かつ子 選   
    それぞれに風の重さの秋桜    後藤 昌弘
    色鳥や森の中なる美術館     上野 和江
    水うてば三和土に生気甦る    吉田 尚江
    赤とんぼ見えぬ階段あるやうに  恒藤 邦夫
特 選 新涼を迎へ入れたる山のカフェ  渕元 幸子

      木 下 数 子 選   
    八月や遠き昭和のよみがへり   山口ちあき
    金泉に又銀泉へ虫の声      愛須 淑子
    色鳥や森の中なる美術館     上野 和江
    夜風ふと好もし一葉落ちにけり  吉岡すみ子
特 選 七人が二人となりし秋の風    西川千代子

      互選高点句より   
14点 色鳥や森の中なる美術館      和 江
13点 端書きの「後を頼む」や敗戦忌   けい子
12点 それぞれに風の重さの秋桜     昌 弘
 9点 禅寺の魚板玉吐く良夜かな     桑 史
 8点 片隅に金剛杖や昼ちちろ      数 子
    捨てがたきものを数多に黄落期   道 代
 7点 稲妻や宙に一瞬ピカソの線     京 子
 6点 ため息の今日何度目か秋暑し    し の
    また一人偲ぶ人ふゆ盆の月     いさむ
    赤とんぼ見えぬ階段あるやうに   邦 夫
    新涼を迎へ入れたる山のカフェ   幸 子
 5点 八月や遠き昭和のよみがへり    ちあき
    蝉取りの子に付く爺の疲れ顔    貞 子
    暮れて尚暑き牛舎や黙す牛     知 美
    七人が二人となりし秋の風     千代子
    銭湯帰りやえのころ草と吹かれをり 成 子
    朝々に掃いて露けくなりにけり    豊

このページのトップへ

12月号一句集(第619回)(677号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    嘘少しまじる話や蟬の殼      楠田かつ子
    紀の川や手燕に空明け渡す      広渡とし
    父の日のステテコ売場の少女かな  佐藤ひとし
    中途半端な返事してをりソーダ水   上田圭子
特 選 ひとひらの落葉素足の観世音     嶋 豊 

      楠 田 かつ子 選   
    町中に風呂敷ほどの青田かな    翁長三和子
    説法を度忘れと僧梅雨の月     山根八重子
    中庭にあうむの寵や夏館      中野千鶴子
    一村の奥の一戸の夏の風       大前邦子
特 選 送電線だらりと朱夏の島つなぐ   古藤いさむ

      木 下 数 子 選   
    町中に風呂敷ほどの青田かな    翁長三和子
    半夏生農事あれこれ納屋の壁     愛須淑子
    淀川の河口の濁り梅雨激し     佐々木順子
    静かなる朝の来たりて秋となる   白数千寿子
特 選 再生を終へし森あり夏鶯       村岡靖子

      互選高点句より   
13点 送電線だらりと朱夏の島つなぐ     いさむ
11点 町中に風呂敷ほどの青田かな      三和子
10点 引波に沈む素足やひかる砂       邦 夫
 9点 嘘少しまじる話や蟬の穴        かつ子
    半夏生農事あれこれ納屋の壁      淑 子
 7点 昼寝覚午後と午前をとり違へ      尚 江
 6点 紀の川や子燕に空明け渡す       と し
    夏潮の志摩の入江を洗ひ行く       毅
    ひとひらの落葉素足の観世音       豊
 5点 片陰や竹の葉擦れの心地好し      道 代
    コンチキチン石橋渡る白絣       恭 子
    先達の教へあれこれ土用干し      幸 子
    一村の奥の一戸の夏の風        邦 子

このページのトップへ

11月号一句集(第618回)(676号) ps

          中 谷 貞 子 選   
    掌の中に蟬騒がせて帰りけり     馬場静子
    笑ふ嬰の点ほどの歯や聖五月     木村菊恵
    鬼やんま湖の真中の水たたく     重松里代
    バス待つ間の母と分けあふかき氷   岩佐純子
特 選 万緑に包みきれざる避雷針      後藤昌弘

      楠 田 かつ子 選   
    かんかん帽ふたりは今もモボとモガ 守作けい子
    尼寺の風は祗王か苔の花      翁長三和子
    境内の野外保育や栗の花       沖津京子
    竹伐の法師の太刀の早き技      嶋 豊 
特 選 天平の相輪橖や去ぬ燕       安孫子康夫

      木 下 数 子 選   
    立葵そこから海が見えますか     大前邦子
    憂き雨を千金となす濃紫陽花     山口道明
    笑ふ嬰の点ほどの歯や聖五月     木村菊恵
    蛍火のこの世あの世の分かたれず  横山三恵子
特 選 掌の中に蟬騒がせて帰りけり     馬場静子

      互選高点句より   
12点 立葵そこから海が見えますか      邦 子
11点 掌の中に蟬騒がせて帰りけり      静 子
 9点 鬼やんま湖の真中の水たたく      里 代
 8点 夏立ちて培炉のかほり宇治の里     康 子
    憂き雨を千金となす濃紫陽花      道 明
    境内の野外保育や栗の花        京 子
    三伏の雨に洗はる二面石        美 月
    バス待つ間の母と分けあふかき氷    純 子
 6点 少年の大志漲る雲の峰         淑 子
 5点 かんかん帽ふたりは今もモボとモガ   けい子
    下馬の文字薄れし石碑梅雨晴      ひとし
    万緑に包みきれざる避雷針       昌 弘
    巣立ちの子見送る鴉こゑ激し      貞 子
    笑ふ嬰の点ほどの歯や聖五月      菊 恵
    梅雨深しお膝擦り減る撫で仏      成 子
    街道の口の白壁青田風         靖 子
    参道を下れば近江麦の秋        勝 之

このページのトップへ

10月号一句集(第617回)(675号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    田水張るビルの狭間の一枚田    大前邦子
    夏草や伎芸天女の領巾の丈     後藤昌弘
    子が身繕ひし退院の日の夏帽子   上田圭子
    滴りや分校に有るヘリポート    松岡節子
特 選 小判草手に久闊を叙すマスク   楠田かつ子

      楠 田 かつ子 選   
    麦は穂に三井の晩鐘はるかなる  翁長三和子
    通天閣あをく灯りぬビール酌む   鈴木成子
    滴りや分校に有るヘリポート    松岡節子
    犬と坐す背の温もりや夕焼雲    山口晴空
特 選 車道行く子鴨警官引き連れて   山根八重子

      木 下 数 子 選   
    入梅や気象神社に下駄の絵馬   安孫子康夫
    雨の藤石灯龍に垂れかかる     藤川 毅
    緑陰に憩ふ白杖犬も又       愛須淑子
    ほととぎす鳴きつぐ杜のありにけり 山口清子
特 選 夏草や伎芸天女の領巾の丈     後藤昌弘

      互選高点句より   
13点 麦は穂に三井の晩鐘はるかなる    三和子
11点 田水張るビルの狭間の一枚田     邦 子
10点 緑陰に指定席あり婆四人       千代子
 9点 車道行く子鴨警官引き連れて     八重子
 8点 入梅や気象神社に下駄の絵馬     康 夫
    湯どうしにパッと花咲く祭り鱧    静 子
    老いらくの恋の味かも新茶汲む    龍 子
 7点 高々と取る人もなき枇杷熟るる    京 子
    葉桜や肩へ馴染みしランドセル    いさむ
 6点 山河いま若葉盛りや下り舟      道 明
    夏草や伎芸天女の領巾の丈      昌 弘
    葉桜やゆるりと落とす雨の粒     あゆみ
 5点 通天閣あをく灯りぬビール酌む    成 子
    滴りや分校に有るヘリポート    節 子
    巣龍りにコロナ太りの薄暑かな    勝 之

このページのトップへ

9月号一句集(第616回)(674号) ps

      中 谷 貞 子 選   
    青麦の畝の先なる日本海      田中美月
    花筏流れに合はす歩幅かな     菅野節子
    新品の綿シヤツひらく初夏の朝   山口晴空
    この駅で亡夫まつ昔桐の花     馬場静子
特 選 藁足して爺がもてなす初鰹     渕元幸子

      楠 田 かつ子 選   
    青麦の畝の先なる日本海      田中美月
    葉桜の影の騒ぎや竜田川      藤川 毅
    花筏流れに合はす歩幅かな     菅野節子
    飛火野に鹿呼ぶホルン草青む   古藤いさむ
特 選 奉納の立華・狂言疫の春     鈴木かず子

      木 下 数 子 選   
    魂のやうに現わる蝶一つ     中野千鶴子
    シヤッター街の風の真中燕来る   松岡節子
    井の中の蛙老いゆく花は葉に    切建 昇
    幼児とテレビ体操春うらら    山口ちあき
特 選 芽柳のゆるる白川辺りかな    佐藤ひとし

      互選高点句より   
12点 青麦の畝の先なる日本海       美 月
 8点 藁足して爺がもてなす初鰹      幸 子
    春宵や青春の日々巻き戻す      道 明
 7点 シヤッター街の風の真中燕来る   節 子
    花筏流れに合わす歩幅かな     節 子
 6点 鬼子母神角を曲れば花ざくろ     恭 子
    老鶯の誘ふ坂道七曲り        昌 弘
    野葛土産に提げて花疲札       成 子
    蝌蚪の昼そろそろ来るかちんどん屋  一 夫
    井の中の蛙老いゆく花は葉に      昇
 5点 葉桜の影の騒ぎや竜田川        毅
    行間に春愁にじむ便り来る      菊 恵
    飛火野に鹿呼ぶホルン草青む     いさむ

このページのトップへ

8月号一句集(第615回)(673号)ps

      中 谷 貞 子 選   
    散策の試歩の畦道あたかかし   佐藤ひとし
    中の子がもう二つ目の桜餅     上田圭子
    水音の絶えぬ茶店や草の餅     鈴木成子
    スカンポを折れば宇宙に丸き音   森本知美
特 選 桜咲く曼荼羅の仏たち      安孫子康夫

      楠 田 かつ子 選   
    鬼ごつこの声止みしとき楊雲雀   小川清子
    赤楽の濃茶一服花きぶし     守作けい子
    両の手に萌黄香るや蕗の薹    横山三恵子
    桃咲いて村の入口あかるくす    大前邦子
特 選 胸鰭は春の陽ざしを掬ふため    恒藤邦夫

      木 下 数 子 選   
    夕永し傾いて立つ我の影      吉田尚江
    スカンポを折れば宇宙に丸き音   森本知美
    身の周り未完だらけや山笑ふ   山根八重子
    山桜遠くに人の声ありて     白数千寿子
特 選 天上の臍となりゆく揚雲雀    古藤いさむ

      互選高点句より   
11点 スカンポを折れば宇宙に丸き音    知 美
10点 行く春や種火の消ゆる利久の忌    和 江
 9点 たんぽぽの絮吹き上げて空の青    恭 子
 7点 天上の臍となりゆく揚雲雀      いさむ
    故郷の木風呂なつかし雲の峰     静 子
 6点 鬼ごつこの声止みしとき揚雲雀   清 子
    通宝に隠し卜字架屏返る       数 子
    鳥影のよぎる寺苑の春障子      昌 弘
    沈丁の香や露地奥の軒行灯      かず子
 5点 桜咲く大曼荼羅の仏たち       康 夫
    夕映えの帰雁に混ざる機影かな    幸 子
    島うらは波のしのび音大石忌      毅

このページのトップへ

7月号一句集(第614回)(672号)ps

      中 谷 貞 子 選   
    みづうみの見ゆる大厦や雛祭る   鈴木成子
    剥落の弥勒の笑まひ春の闇    鈴木かず子
    天領の掛屋に吊す和紙の雛    古藤いさむ
    割算の割り切れぬ子や山笑ふ   山口ちあき
特 選 つばくらや煉瓦倉庫のアーチ窓  安孫子康夫

      楠 田 かつ子 選   
    卒寿まであと一息や冬の蝿     島本一麻
    熱爛や話し上手に聞き上手     大前邦子
    みづうみの見ゆる大厦や雛まつる  鈴木成子
    土筆つむ双手に残る陽のぬくみ   馬場静子
特 選 天領の掛屋に吊す和紙の雛    古藤いさむ

      木 下 数 子 選   
    あたたかし我が生涯の終の友   中野千鶴子
    苔の上に命輝く落椿       翁長三和子
    鶯の再びの声足を止む       紺谷 葵
    土筆つむ双手に残る陽のぬくみ   馬場静子
特 選 上座の岩に音して春落葉      中谷貞子

      互選高点句より   
15点 天領の掛屋に吊す和紙の雛      いさむ
12点 卒寿まであと一息や冬の蝿      一 麻
    土筆つむ双手に残る陽のぬくみ    静 子
11点 剥落の弥勒の笑まひ春の闇      かず子
10点 つばくらや煉瓦倉庫のアーチ窓    康 夫
    かなくぎの母のハガキや春彼岸    純 子
 9点 熱爛や話し上手に聞き上手      邦 子
    万葉の歌碑をめぐりて青き踏む    昌 弘
    早春の君の孤独や十五歳       と し
 8点 灯おぼろ晶子源氏の墨のいろ     数 子
    白梅の一樹静もる神の庭        豊
 7点 日も風も透かしてなびく柳の芽    美 月
 6点 春愁やさかさにしても砂時計     道 代
 5点 みづうみの見ゆる大厦や雛祭る    成 子
    青磁よりきりりと一枝白き枝     道 明
    割算の割り切れぬ子や山笑ふ     ちあき

このページのトップへ

6月号一句集(第613回)(671号)ps

      中 谷 貞 子 選   
    探梅やダム湖に残る朝の靄     後藤昌弘
    探梅に置かれしままの脚立かな   重松里代
    十枝より湧き立つ百の寒雀     山口道明
    九十の端生き延び日脚伸ぶ     醒井龍子
特 選 白鳥来暮色の水面動かしむ     田中美月

      楠 田 かつ子 選   
    笛の音や雪積む朝の伊勢神楽    北沢恭子
    木の芽吹き励ましている雨の音   田中道代
    春隣るスキップの子の赤い靴    切建 昇
    日時計へ落つる雀や初日さす    山口清子
特 選 少年の初恋らしき初詣       上田圭子

      木 下 数 子 選   
    桜鯛娶の泣きたる頬の色      紺谷 葵
    蝉丸に助けられたる初かるた   馬場あゆみ
    湖に向き一人一人が麦を踏む   鈴木かず子
    日時計へ落つる雀や初日さす    山口清子
特 選 使ひ捨ての今生に慣れ久女の忌   田中敏子

      互選高点句より   
 9点 笛の音や雪積む朝の伊勢神楽     恭 子
 8点 使ひ捨ての今生に慣れ久女の忌    敏 子
    探梅やダム湖に残る朝の靄      昌 弘
    餅三つ焼いてひとりの女正月     し の
    春隣るスキップの子の赤い靴      昇
 7点 浜の子の武者凧凛と海の上      いさむ
    寒木瓜の深紅重たき一卜日かな    かつ子
    涅槃図の猫眠りゐて春の雪      康 夫
    波の花太宰も乗りし五能線      けい子
    少年の初恋らしき初詣        圭 子
    摘み草の香りののこる指の先     純 子
 6点 探梅に置かれしままの脚立かな    里 代
 5点 蝉丸に助けられたる初かるた     あゆみ
    利息二円の足るを知りたる日向ぼこ  と し

このページのトップへ

5月号一句集(第612回)(670号)ps

      中 谷 貞 子 選   
    小春日を授かり城内歩きけり   佐藤ひとし
    短日を刻む庭師の鋏音      古藤いさむ
    緋衣の達磨大師や雪の寺      谷口一夫
    太竿に干菜連なる禅の寺      紺谷 葵
特 選 冬桜一垂まぶたの少女かな    守作けい子

      楠 田 かつ子 選   
    高野への標石てふ石蕗の花    𠮷岡すみ子
    短日を刻む庭師の鋏音      古藤いさむ
    惜敗のグランド駈ける師走かな   嶋 豊
    どんと果て足より上る背の冷え   倉坂桑史
特 選 冬桜一重まぶたの少女かな    守作けい子

      木 下 数 子 選   
    柚風呂におまけの命しづめけり   上野和江
    時化ぐせの越前岬波の花      田中美月
    冬野行く足元よりの日暮れかな   恒藤邦夫
    冬桜かそけき日をも留めけり   鈴木かず子
特 選 短日を刻む庭師の鋏音      古藤いさむ

      互選高点句より   
20点 短日を刻む庭師の鋏音        いさむ
12点 時化ぐせの越前岬波の花       美 月
10点 柚風呂におまけの命しづめけり    和 江
    緋衣の達磨大師や雪の寺       一 夫
 9点 「雪乞ひ」の紙吹雪舞ふスキー場   かつ子
    冬野行く足元よりの日暮れかな    邦 夫
 8点 柚子たわわ清和の御陵守る里     数 子
 7点 冬桜一重まぶたの少女かな      けい子
    高野への標石てふ石蕗の花      すみ子
 6点 煤払古新聞を読み耽ける       成 子
 5点 不揃ひの手袋二つ捨て切れず     京 子
   「さわつてええよ」坊主頭や年用意  節 子
    太竿に千菜連なる禅の寺        葵

このページのトップへ

4月号一句集(第611回)(669号)ps

      中 谷 貞 子 選   
    花ハツ手浦曲どの家も海に向き   田中美月
    シヤム猫の体臭強し漱石忌     上野和江
    露の月彫りしばかりの墓碑照らす 古藤いさむ
    大根焚寺の白壁剥落す       鈴木成子
特 選 どんぐりを拾ふ真顔の爺と孫    重松里代

      楠 田 かつ子 選   
    かつかつと板前の下駄一葉忌    木下数子
    地下街に入れば異国よ十二月    谷ロ一夫
    独酌の生牡蠣すする浜のれん   守作けい子
    山よりの風に揺れゐる冬の滝   松村さかえ
特 選 美濃和紙に千年の季雪降れり   安孫子康夫

      木 下 数 子 選   
    紅葉晴ジャズ流れ来る異人館    大前邦子
    越前は今日より霰降るといふ    紺谷 葵
    大根焚寺の白壁剥落す       鈴木成子
    近きより声のしてゐる密柑山    村岡靖子
特 選 美濃和紙に千年の季雪降れり   安孫子康夫

      互選高点句より   
12点 美濃和紙に千年の季雪降れり     康 夫
 8点 花ハツ手浦曲どの家も海に向き    美 月
    地下街に入れば異国よ十二月     一 夫
    じよんがらに合はす手拍子紅葉山   三和子
 7点 豆菓子は風呂敷の中一葉忌      圭 子
    大根焚寺の自壁剥落す        成 子
    近きより声のしてゐる蜜柑山     靖 子
 5点 名園をゆたにたゆたに鴛鳥の笛    敏 子
    枯葉にも色づく重さありにけり    昌 弘
    どんぐりを拾ふ真顔の爺と孫     里 代
    木の葉散るストレートありカーブあり 勝 之

このページのトップへ

3月号一句集(第610回)(668号)ps

      中 谷 貞 子 選   
    木の実降り仔犬も鳩も鳥羽絵めく 醒井龍子
    柿熟るる峠越えして郷に入る   紺谷 葵
    地母神の吐息の如き朝の霧   守作けい子
    出番待つ幼の欠伸秋祭     佐藤ひとし
特 選 いきなりの人声に逢ふ薄原    大前邦子

      楠 田 かつ子 選   
    古民家の苔むす屋根や草の花  山口ちあき
    車座の円の崩るる夜長かな    切建 昇
    刈田の香藁家つつみて谷戸日和  嶋 豊
    出番待つ幼の欠伸秋祭     佐藤ひとし
特 選 神殿の奥の闇より冬の音     草信勝之

      木 下 数 子 選   
    静けさが境内つつむ黄落期    田中道代
    八十路いま釣瓶落しの道遠し   愛須淑子
    小鳥来る社に小さな池一つ   西川千代子
    小春日の海の中なる浮灯台    太田明子
特 選 郵便局の老眼鏡や菊日和     上田圭子

      互選高点句より   
10点 車座の円の崩るる夜長かな      昇
    野を活けて風と遊ばす猫じゃらし  幸 子
 9点 神殿の奥の闇より冬の音      勝 之
 8点 古民家の苔むす屋根や草の花    ちあき
    無人駅に人のぬくもり柿の村    かつ子
 7点 十夜寺粥炊く婆の影法師      一 夫
    川音と夜霧に更けて峡の町     美 月
 6点 いきなりの人声に逢ふ薄原     邦 子
    刈出の香藁家つつみて谷戸日和    豊
    地母神の吐息の如き朝の霧     けい子
    出番待つ幼の欠伸秋祭       ひとし
 5点 新藁麦の幟の下の床几混む     貞 子
    飛行機雲の彼方は茜神の旅     いさむ
    首塚の人鹿伝説草紅葉       三和子
    郵便局の老眼鏡や菊日和      圭 子
    秋曇陶の狸の遠目線        邦 夫

このページのトップへ

2月号一句集(第609回)(667号)ps

      中 谷 貞 子 選   
    神主が白馬に秋の商店街      森本知美
    裏六甲へ下り来て足湯涼新た    大前邦子
    一人居の自由不自由木橿咲く    上田圭子
    爽籟や由良川となる水一縷    西川千代子
特 選 逝く秋や百万石の大手門     安孫子康夫

      楠 田 かつ子 選   
    ひとひらの雲金色に神の旅    古藤いさむ
    一人居の自由不自由木様咲く    上田圭子
    新しき頁の匂ふ秋灯し       木村菊恵
    萩まつり野点の亭主カナダ人   守作けい子
特 選 ゆきあひの空を見てをり捨案山子 翁長三和子

      木 下 数 子 選   
    新しき頁の匂ふ秋灯し       木村菊恵
    風神と雷神猛る野分かな      渕元幸子
    身に人むや長き齢を賜りて     吉田尚汪
    秋風や小さき杜の本々の音     重松里代
特 選 爽籍や由良川となる水一縷    西川千代子

      互選高点句より   
12点 ひとひらの雲金色に神の旅      いさむ
    一人居の自由不自由木種咲く     圭 子
10点 ゆきあひの空を見てをり捨案山子   三和子
 8点 国宝の敷居は高し鵙の声        昇
    俳人の触れて行きたる萩の花     貞 子
    風神と雷神猛る野分かな       幸 子
 7点 どの顔も風を楽しむ秋桜       道 代
    新しき頁の匂ふ秋灯し        菊 恵
    ねこじやらし雀の派閥二つ三つ    と し
 6点 先付は初物三つ衣被         和 江
    遠き日のとぎれて繋ぐ彼岸花     ミイ子
 5点 二上ミにかかる鯖雲夕映えて     美 月
    途中下車したくなるよな秋日和    ちあき
    逝く秋や百万石の大手門       康 夫
    あちこちに案山子家族の明日香みち  昌 弘

このページのトップへ

1月号一句集(第608回)(666号)ps

      中 谷 貞 子 選   
    父の背に触るるおもひや稲の花  楠田かつ子
    拒むかに青さ柚の実刺の中    横山三恵子
    幼子の手の温もりや鶏頭花     大前邦子
    安曇野に屹立の嶺稲を刈る     倉坂桑史
特 選 水澄むやまだ青足りぬ空の色    谷ロ一夫

      楠 田 かつ子 選   
    黒牛といふ大岩や夜光虫      木下数子
    数珠玉を詰めておじやみは俵型   菅野節子
    日焼子の脛つやつやと坐しにけり  太田明子
    安曇野に屹立の嶺稲を刈る     倉坂桑史
特 選 稲の花晩年といふ時を得る     広渡とし

      木 下 数 子 選   
    坊様へ祖母やはらかに団扇風    松岡節子
    あゝ秋と思ふ夜風となりにけり  中野千鶴子
    酔芙蓉夕日の光ゲを包みけり    醒井龍子
    たどり来て終の住み家や吾亦紅   愛須淑子
特 選 父の背に触るるおもひや稲の花  楠田かつ子

      互選高点句より   
13点 坊様へ祖母やはらかに団扇風    節 子
11点 父の背に触るるおもひや稲の花    かつ子
 8点 廃線の昭和の駅舎鰯雲        知 美
    出してみる米穀通帳終戦日      剛 宏
    鯛や鍵つ児一人ゐる砂場       恒 夫
 7点 稲の花晩年といふ時を得る      と し
    たどり来て終の住み家や吾亦紅    淑 子
 6点 あゝ秋と思ふ夜風となりにけり    千鶴子
    夜話の衣桁に及ぶ秋の宿        昇
    水澄むやまだ青足りぬ空の色     一 夫
    萩に風触れて直哉の旧居跡      昌 弘
    酔芙蓉夕日の光ゲを包みけり     龍 子
    日焼子の脛つやつやと坐しにけり   明 子
 5点 黒牛といふ大岩や夜光虫       数 子
    幼子の手の温もりや鶏頭花      邦 子
    色槌せぬ思ひ出つれて遠花火     菊 恵

このページのトップへ