界面・・・エネルギーや物質をやり取りする場

 

 

界面について

 

 

界面

吸着

表面科学

真空

単結晶

トップ

 

 

界面 吸着 表面のふしぎ

ある均一な液体や固体の相が、他の均一な相と接している境界です。

 

他の均一な相が、気体または真空である時、界面を、特に表面といいます。

 

ただし、お互いが完全に混ざり合うことはせず、混ざり合うと、界面でなくなります。

界面付近の数原子層で、互いの原子からなる化合物を形成する場合はありますが。

 

ちなみに、表面といえば、生命の起源に関する、表面代謝説がありますね。

 

界面は、気相と液相、液相と液相、液相と固相、固相と固相の、二相間で形成されます。

 

界面を構成する分子や原子は、界面を挟んでいる相から連続的に続いていますが、

相内部とは性質が異なり、のような働きをします。

界面では、光線が反射や屈折、散乱、吸収を起こし、

界面間には、界面張力が働きます。

 

特に固体同士の界面は、固相界面と呼ばれ、

単に界面といえば、固相界面を指す場合が多いです。

 

界面の性質

理想気体のように、分子相互作用分子間力や静電気力等)がなく、凝縮しない場合には、

複数の成分を混ぜ合わせても、乱雑さ(エントロピー)が増大する方向に自発的に変化して混合し、均一となります。

 

しかし、実在分子のように、分子間相互作用があり、凝縮相となる場合は、

異種分子間の相互作用より、同一種分子間の相互作用の方がはるかに強い時、

混合するよりも、それぞれが相分離して、同一種同士の相互作用で安定化する方が有利です。

 

この時、相分離した二つの相の境界が、界面です。

 

水と油は混ざり合わないのは、

分子同士には、分子間力よりかなり強い、水素結合が働き、

油の分子同士では、互いに弱い分子間力しか働かないため、

水は水分子同士で集まっていた方が、安定だからです。

 

界面近傍の分子は、周囲を取り囲む同一種分子の総数が内部より少なくなるために、

同一種分子の相互作用で安定化されている内部の分子より、自由エネルギー的に不利な状態になります。

 

つまり、内部と比べて過剰の自由エネルギー(界面自由エネルギー)をもちます。

界面自由エネルギーを低下させるために、界面はできる限り小さくなろうとします

これが、界面張力で、単位面積当たりの界面自由エネルギーです。

気体との界面の場合は、表面張力といいます。

 

界面自由エネルギーは、

分子間相互作用による安定化が、界面近傍で低下することにより生じます。

このため、相分離する二つの成分それぞれの化学構造に類似した構造を、

一つの分子中に併せもつものが界面に並ぶことで、高エネルギー状態を緩和することができます。

このような物質を、界面活性剤といいます。 吸着

水と油のように、互いに混合せず相分離する系では、

水と油にそれぞれ親和性のある、親水基と親油基を一つの分子中に併せもつ、

両親媒性構造をもつものが、界面活性剤となります。

 

単一の元素で構成される物質の、ほぼ無限につながるバルク内部での、

各原子間に働く力や距離は、全く同一ですが、

劈開(へきかい)等によって、そろった分子の層が表面に現れた時、

それまで前方向に等しく働いていた力の均衡が変わって、

2層目にある分子が少し内側へとずれて、最も外側の層にある分子との距離が開きます

これは、表面緩和と呼ばれ、更に外側にあった分子がなくなることで、

2層目の分子が受ける、外向きに働く力が弱くなったために起こる現象です。

尚、表面がそろっていなくとも、同様の現象は起こります。

 

金属原子で構成される表面付近では、

金属原子同士を結び付けている自由電子が、表面から内部に引き込まれているために、

(表面近くでの、自由電子の存在確率が低くなっているために)

金属原子も引きずられて、少し内部に変位しています。

 

このため、バルク内部に比べて、金属表面付近の原子層の間隔が小さくなっています。

 

表面緩和や、金属原子表面での原子層間隔の縮小は、清浄な表面での現象であり、

これらの表面に、他の原子・分子が付着すると、結果も異なります。

トップ

 

 

吸着 表面科学

物体の界面において、濃度が周囲よりも増加する現象です。

 

気相/液相、液相/液相、気相/固相、液相/固相の各界面で生じ得ます。

 

界面の原子は、物質内部の原子のように周囲と結合していないため、

自由エネルギーが大きくなります(界面自由エネルギー)。

このため、界面原子は、近接した分子やイオン等の化学種を結合し、自由エネルギーを小さくしようとします。

この現象を、吸着といいます。

 

反対に、吸着していた物質が界面から離れることを、脱着または脱離といいます。

 

吸着現象には、

ファンデルワールス力による、物理吸着と、

共有結合による、化学吸着があります。

 

物理吸着は、比較的弱く、温度や圧力の制御で可逆的に吸脱着できます。

化学吸着は、強固で、吸着質の電子状態が変化するため、触媒反応等を進行させることもあります。

 

吸着する物質を、吸着剤

吸着される物質を、吸着質といいます。

 

吸着する表面が平らな場合にも、吸着現象は起こりますが、

工業的には、小さな孔(細孔)をたくさん持つ素材(多孔体)が用いられることが多いです。

 

熱力学的には、

吸着反応では、吸着質が界面に束縛され自由度が低下するため、エントロピーは低下します ( Δ S < 0 )

従って、吸着反応が自発的に進行( 自由エネルギー変化 Δ G = Δ H - T Δ S < 0 )するためには、

エンタルピーが大きく低下する必要があります ( Δ H < 0 )

 

このため、吸着反応は、発熱反応となります。

 

吸着剤が、一定量の吸着質を吸着して安定である状態は、

実際には、吸着と脱着が等速な、動的平衡状態にあります。

平衡状態での吸着量は、吸着質の濃度(気体の場合は分圧)と温度に依存します。

 

吸着量の評価は、温度一定の条件下で濃度または圧力を変えて調べた、吸着等温線が用いられます。

吸着等温線は、吸着剤の特性を知る上で最も重要な情報です。

 

吸着状態をモデル化し、吸着等温線を数式で表現したものが、吸着等温式です。

 

吸着速度は、

吸着剤の流体境膜における拡散、

吸着剤細孔内での拡散、

細孔内表面での吸着、

3段階の速度で決定されます。

 

吸着質と吸着剤の物性により、律速段階は異なります。

 

触媒機能多孔体に与え、吸着を活用して化学反応を促進することも行われます。

触媒そのものを多孔体にする場合と、

アルミナ等に担持させる場合があります。

 

界面活性剤の他、

脱臭(活性炭)、

脱湿(シリカゲル)、

浄水(中空紡糸)、

等で利用されています。

 

将来的には、

燃料電池自動車用の水素貯蔵や、

メタン(天然ガス)貯蔵、

二酸化炭素の分離・固定化、等への利用も期待されています。

トップ

 

 

表面科学 

表面または界面を扱う自然科学です。

 

スピントロニクスや、触媒絶縁体表面等に重要です。

 

固体の表面を構成する原子は、

固体内部(バルク)を構成する原子よりもはるかに数が少ないですが、

固体が、外部とエネルギーや物質をやり取りする場として、重要です。

 

固体物理学では、xyz方向に無限に続く、完全結晶を理想的なモデルとして用いているため、

3方向の並進対称性を仮定できます。

 

しかし、表面または界面がある場合、

系の表面に垂直な方向での対称性が破れるため、

電子の表面準位の発生や、

原子配列の表面再構成等、

表面や界面に特有の現象が起こります。

 

また、外から飛来した分子は、表面に物理吸着化学吸着します。吸着

 

特に、不均一触媒の表面では、吸着した分子の状態が変化し、

分子単独では持っていなかったような反応性を得ることもあります。

 

実際の結晶表面は、2次元の結晶となっています。

全く同じ物質の表面でも、結晶を切断する面の方向によってその性質は異なります。

 

結晶面は、ミラー指数によって指定されます。

例えば、Si単結晶を、ミラー指数が( 111 )となる格子面に沿って切断した切断面は、Si ( 111 )といいます。

同じSi結晶の表面でも、方向が異なれば、異なる表面として扱います。

 

バルクの断面と同じ構造の表面を、理想表面といいます。

 

理想表面と実際の表面で、完全に構造が一致することはまれで、

多くは、電荷密度の偏りや、ダングリングボンド未結合手がある状態)に起因する不安定性を緩和するために、

原子が理想表面での位置からずれます。

このような構造の変化を、表面再構成(再配列)といいます。

表面に吸着した原子や分子が原因で、表面再構成が起こることもあります。

 

表面を測定するためには、

超高真空と、単結晶が重要です。 表面の測り方

トップ

 

 

真空

古典論において、真空は「何も無い状態」です。

 

絶対真空 :物質・圧力が 0 の仮想的状態。

負圧 :標準大気圧より圧力が低い状態。

があります。

 

絶対真空は、空間中に分子が一つもない状態を示しますが、

地球表面上の圧力(1気圧)は、100 kPa0℃で、1 cm3中の気体分子は、2.69×1019も存在します。

 

人工に作り出せる真空状態は、10-11 Pa程度です。

この圧力下でも、1 cm3に数千個の気体分子が存在するようです。

 

外宇宙と呼ばれる、銀河と銀河の間でも、気体分子は存在するとされます。

 

尚、量子論における真空は、決して「何もない」状態ではなく、

常に電子と陽電子の仮想粒子としての、対生成や対消滅が起きています。

 

大気中にある容器内を真空にするために、各種の真空ポンプを使用します。

 

10-1 Pa程度の真空は、

ロータリーポンプで、得ることができます。

 

10-5 Pa程度の真空は、

真空チャンバーと銅ガスケットを用い、ターボ分子ポンプ(TMP)で排気することにより達成できます。

スパッタ(真空蒸着に類する薄膜製造)等で必要です。

 

10-9 Pa台の超高真空は、

真空チャンバーを、ターボ分子ポンプで高真空状態にした後、

真空チャンバー全体を加熱(ベーキング)して、チャンバー内壁に付着した気体分子を排除することで得られます。

排気は、多くの場合、イオンポンプゲッターポンプも用いられます。

電子顕微鏡、粒子加速器等で必要です。

トップ

 

 

単結晶 表面科学

結晶の、どの位置であっても、結晶軸の方向が変わらないものです。

 

単結晶の集合体が、多結晶です。

 

多結晶中の個々の単結晶を、結晶粒といいます。

 

シリコン(ケイ素の単結晶は、半導体製造に不可欠です。

 

有機分子や生体分子の分子構造、無機化合物の結晶構造を決定する技術に、

X線結晶構造解析があります。

 

単純な有機化合物や無機塩の、単結晶の製造について。

溶質を溶媒に溶かした溶液を、ゆっくりと冷却するか、徐々に溶媒を蒸発させると、結晶が発生・成長します。

この際、冷却や蒸発が速すぎると、多結晶や双晶となりやすいです。

 

小結晶をとして入れて、結晶化を促進させることもあります。

 

タンパク質は、分子量が大きく、軟らかいため、

重力により、構造が歪み、きれいな単結晶が得にくいため、

強磁場中や、宇宙ステーション等の微小重力環境での結晶作製が試みられています。

トップ

 

 

ホーム