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ギャンプスは、ギターアンプの製作・修理・MODを専門とするショップです。

ギターアンプの技術情報tech.info

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接点復活材の正しい使い方
アンプの回路にダメージを与えない使い方について  ---> Blog へ GO
Fender アンプのトランス
トランスの種類とモデル毎の違いについて  ---> Blog へ GO
インプット・ジャック
Hi と Lo もとくはTとUの違いについて ---> Blog へ GO
Twin Rerverb 見分け方
135Wと100W, 85W の見分け方 --->Blogへ GO
ギターアンプの配線材
芯線の太さの持つ意味 --->Blogへ GO
抵抗・コンデンサーの選定
抵抗・コンデンサーの種類と選定方法について --->Blogへ GO
ハンダのテクニック
ハンダ・ジョイントとボードのクリーニングについて  ---> GO
真空管交換で治る故障
各真空管の役割を知り、故障の症状を元に交換しよう---> Blog へGO
真空管の交換方法
自分で出来る真空管の交換方法とソケットクリーニング ---> GO
真空管の光について
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バイアス調整について
バイアス調整不要のアンプと調整必要なアンプ ---> GO
ビブラート (トレモロ) 機能
ビブラートのオンの方法、ユーザーが出来る故障原因の絞込み ---> GO
Fender ツイード チャンプ
Fender Tweed Champ の各年式・モデルとその特徴 --->Blog へGO

当ページ内の情報のインデックス

0. 寄生発振とは

英語では Parasitic Oscilation と標記します。Parasitic は パラサイトの形容詞です。
ギターアンプの中でギター信号は何度か増幅されます。Fender のデラックスリバーブの Normal チャネルを例にとると、ギター信号はプリアンプで2回増幅され、パワーアンプ・ドライバー(フェーズインバーターともいう)で1回増幅され、最後にパワーアンプで一回増幅されます。信号は増幅される度に大きなレベルになっていきます。
増幅段の前の方の信号の上に、増幅段の後の方の信号が乗り移って、寄生することを寄生発振といいます。

プリアンプの増幅段の数が多いほど寄生発振は起こりやすくなります。
Fender アンプの Vibrato チャンネルは Normaチャンネルよりも 増幅回路は 1段多く、そのため、Vibrato チャンネルのほうが寄生発振は起こりやすいようです。

Distortion 回路やエフェクトループは増幅回路でできています。つまりこれらの機能は寄生発振を起こしやすい環境を作り出していると言えます。
これらの多くの機能を所狭しとシャーシーの中にぎっしり詰め込んだアンプはとても発振しやすいように思います。

寄生発振のおよぼすギターアンプの不具合の症状としてはいくつかあります。

a) 特定の音程を弾いたときにその音と同時に低い周波数でビリビリビリと振動するような不快な音がまとわりつく
 スピーカーのコーン紙が破れているのかそうでないのか判別しずらいケースもあります。

b) 高い周波数の濁った歪みがギター音にまとわりつく
  a) や b) のことを Gohst note と呼ぶこともあります。

c) やけに音が小さかったり、ボリュームを上げるほど、音が詰まったように失速するような感じがする。
 この場合は、可聴領域よりも高い周波数で発振しています。そのため発振音は耳で聴こえません。
 代わりにギター音が小さくなるような感覚を覚えます。実際にはアンプはものすごい勢いで増幅をしており、
 耳で聴こえない発振シグナルがギターのシグナルをかき消しています。放置すると何かの部品が壊れます。

寄生発振の原因は、増幅段の後ろのほうの信号が前のほうに寄生することです。
対策としては寄生しにくい配線にしてやるとことです。
配線のはわせかたひとつで発振したり、しなかったりします。
部品の配置レイアウトや向き、配線の向き、配線材を最適にすることです。

スピーカーの端子の向きによっても発振することがあります。ご自分でスピーカー交換なさる場合は、注意してください。
当サイトのギターアンプ修理の実例の中にいくつか実際の対策を紹介しています。参考にしてください。


1. ギターアンプとオーディオアンプの違い

「アンプと名が付いているからには増幅器、全くおんなじものである、あるいはちょっとだけ違うがほとんど同じもの」という考えをお持ちの方が大半かと思います。両者は似ているけれど別物です。それは各々の増幅の目的が異なるからです。

オーディオ・アンプの目的は「音源を再生する」です。既に音楽として出来上がり、録音された「音源」を、音源が録音されたときに近づけて忠実に再生することが目的です。オーディオアンプ・システムという言葉があります。しかし、このシステムは音を作ることはできません。いいえ作ってはいけません。全てのコンポーネントは「音源を再生するためのシステムの一部」でしかありません。

一方、ギター・アンプは音楽を作りだすことが目的です。「音源を作り出す」コンポーネントです。ギターと同じく楽器の一部と考えることもできます。エレキギター⇒シールド・ケーブル⇒アンプ部⇒スピーカーとキヤビネットまででひとつの楽器と捕らえて。エレキギター・アンプ・システムであると言っても良いでしょう。

目的が異なりますから、アンプの設計方針も異なります
ギターアンプではギターの信号に、いかに暖かい倍音( Harmonic distortion )を付け加えるかが大切です。アンプごとの音が異なり、アンプの良し悪しをきめることにもなります。クリーン・サウンドといっても倍音が全く付加されていないクリーン・サウンドはアンプが壊れているという判断をされるぐらい無機質な音になります。かといって、なんでもかんでも倍音が加わればよいということはありません、偶数次歪みは歓迎され、奇数次歪みは冷たく耳を刺すとして嫌われることもあります。
倍音というのを言い換えて「歪み」や「Harmonic Distortion 」という言葉を使います。これらの言葉があらわす倍音は決してディストーション・エフェクターやリードチャンネルを使って得られる強い歪みサウンドではありません。増幅回路の概念で使用される用語のひとつで、ギタリストが「普通のクリーン音」と表現するサウンドになくてはならない倍音( Harmonic Distortion, もしくは歪み) です。

オーディオアンプの世界では使われない回路手法もギターアンプでは使われます。一旦増幅してパワー・ドライバーの入力として十分な電圧になった信号をわざわざ Voltage Deviderを通過させ、電圧を下げてから再度増幅することがあります。これは増幅するのが目的ではなく、倍音( harmonic distortion )を付加するのが目的です。

オーディオアンプは音源の再生時に何も足してはいけません。倍音を付加するなどもってのほかです。偶数時歪みは、歪みとしてひとまとめに扱われ、なるべく排除されます。「音源がシャープに聞こえる」という理由と、デジタルをアナログに変換するときの DA 変換回路で全てはとりきれないからという理由で奇数次倍音が残されたままのことさえもあります。

ギターアンプはギターを弾く人が弦を弾いた瞬間に音が出てくるような応答性能が重要です。
しかし、オーディオアンプは入力された信号とスピーカーから出てくる信号との間に遅延があっても全く問題ありません。CD プレイアーの出力とスピーカーから出てくる音の間にタイムラグがあってもかまわない。スピーカーの音が全てだから。そのため、ギターアンプに使うと応答速度を遅く感じるトランジスター回路も迫力のある音を安価なコストで再生できるという理由でオーディオアンプで重宝されています。

真空管特有の暖かいサウンドが好みで真空管オーディオのマニアの方はたくさんいらっしゃいます。
そのため、真空管アンプ用の部品として国内で売られているのは、ほとんどがオーディオ・アンプ向けのものです。オーディオアンプ用の部品でまかなえる部分はそれでまかないます。しかしギターアンプ用としてこれだけはこのメーカーのこの部品でないと音にならないというものがかなりあります。それらはギターアンプの部品の専門店から買ったり、米国の大手部品卸から輸入することが必要となります。例えばギターアンプの プリアンプで使う3.3MΩやヴィブラート回路で使う 10MΩのカーボンコンポジットなんてものは売っていないオーディオ向け部品屋さんがほとんどです。特に3.3MΩはカーボン皮膜や金属皮膜抵抗で置き換えると音が変になってしまいます。

ギターアンプはステージで使ったり、スタジオで使ったり、家で使ったりと、一台で複数の演奏場所が想定されます。持ち運びができるという前提での筐体設計がなされています。取っ手、ハンドルやキャスターが付いているだけでなく、中の真空管なども運搬中に抜け落ちない工夫が要求されます。重さも重要なファクターです。一人で抱えられないような重さにはできません。一見するととても大きなマーシャルのスタックでさえ、ヘッドとスピーカーボックスを別々にすれば一人で運搬可能です。
例外はPeavy の5150 のコンボタイプ。これは重くて私一人ではうんともすんとも動きません。アンプの片側を持ち上げることすら難しいです。5150よりは少し軽めながら Fender の シルバーフェイス晩期の 135W ツインリバーブも一人で持って階段をあがることはできません。
一方、オーディオアンプは基本的にリビングなどの部屋に据え付けっぱなしで運搬することはあまり気にしなくて良い設計です。筐体も激しくぶつけるとへこんでしまうような華奢なシャーシーのままであることが多いです。

アンプは増幅器であるという大まかな骨組みという観点ではオーディオ・アンプもギター・アンプも同じ形態をとります。コンセントの AC100V を 400V の DC 電圧に変換する電源回路。電源回路から出るノイズをなるべく信号経路に入れないという思想。グラウンド配線に気を使い、グランドから増幅回路に侵入するノイズの低減。これらはオーディオアンプから学ぶところが多々あります。アンプの概念を理解するという観点から、オーディオアンプを学ぶことには意義があります。しかし、一旦、増幅器の概念が身に付いたら、オーディオアンプの枝葉末節はギターアンプにとって不要であったり、音質を悪くする回路構成であったりするのも事実です。

周波数帯域の観点
オーディオアンプは低い周波数から高い周波数まで、なるべく平らに、ピークのない同じ増幅度で再生することが必要です。音源に盛り込まれている人の息遣いや、ありとあらゆる音域の楽器の音色を「再生」することが必要です。アンプでの味付けは極力無いほうが良いからです。

ギターアンプは低い周波数ではベースギターのローE の音程、高いところでエレキギターの1弦の24フレットの音までの周波数領域とそれに含まれる倍音を鳴らせれば良い。増幅する周波数帯域はオーディオよりも狭くてよいのです。増幅度についても、ピークはむしろあった方が良い。ある程度フラットでない方がギターの音を楽器として表現豊かに鳴らせることができるのです。どの部分がフラットでないかにより、ギターアンプの音色が決まってくるとということも言えます。

この差は使用される色々なコンポーネントの差となって現れます。

@ アンプの回路
オーディオ・アンプの回路はフラットで広帯域の再生を目指した回路構成で作られます。
ギターアンプの回路の周波数特性はオーディオアンプほどに平らではありません。
そのでこぼこ加減はアンプの種類により異なります。
大雑把な言い方をしますと、いわゆるギターアンプのクリーンなサウンドは、中域=ミドルがへこんでいます。ブラックフェイス以降の Fenderのアンプはツイードや Marshall に比べると、ミドルのへこみが少し大きめです。
ハイゲインのアンプに付いている Lead Channel や Fender シルバーフェイス後期のプリンストン・リバーブに付いていたブースト回路は逆に中域を大きく持ち上げたりします。

A OT アウトプット・トランス
こちらもアンプの回路と同じくオーディオ向けとギターアンプ向けとで、大きな差があります。

オーディオアンプ向けのものはとにかく広帯域のトランスです。 4Hz ぐらいの低音から高域は 80K Hzぐらいまで幅広い周波数特性を持っています。そして回路のところで述べたと同じくなるべくフラットな特性を示します。

ギターアンプ用のトランスは 15Hz ぐらいから高域は高くて 40K Hz ぐらいの周波数特性です。
高域が 20KHzまでというものもあります。
そしてその周波数ごとの音圧はフラットではありません。あるいくつかの周波数領域にピークがあります。
このピークが音色として感じられるのです。言い換えると そのアンプらしさの音を作り出すのに貢献しています。
オーディオ用のアウトプット・トランスをギターアンプに流用することは可能です。この場合、アンプの回路配線はさらにデリケートに仕上げる必要があります。ギターアンプ用のトランスならマスキングされて拾われてなかった周波数のノイズがオーディオ用トランスにしたがために拾われてしまうということがあります。配線のレイアウトや慎重なグランド配線を怠ると低域のバックグラウンドでのハムノイズや、高域のシャーノイズに悩まされます。
ギターアンプの回路とギターアンプ向けのアウトプット・トランスとのコンビネーションにより、そのアンプの音色が決定されると思っています。もちろんその他の要素として使う真空管のメーカーによる差というものもあります。しかし、その影響よりもトランス本体の持つ音色と回路との相性の方がより支配的であると感じています。

B スピーカー
スピーカーについては特性という観点からはギター用とオーディオ用で、アウトプット・トランスほどには差がありません。
むしろコーンやリムの耐久性が異なります。
ギターアンプ向けとして作られるスピーカーはオーディオ向けよりも頑丈に作られています。
ギターの弦を思いっきりはじいたときにスピーカーのコーンがすぐに破けては困るからです。
耐圧が十分にたかければオーディオ用をギター・アンプに流用することは可能です。

ギターアンプの音色という観点から、スピーカーもかなり大きな比重を持っています。
アンプの回路とアウトプット・トランスの次に音色に支配力を持ちます。

アコースティック・ギター用アンプ
最近になり手ごろなアコースティック・ギター用アンプが数多く出ています。
これらは私がここで述べているギターアンプとは少し回路の目的が異なります。どちらかというとオーディオ・アンプや PA アンプの仲間です。アコースティック・ギターはそれ自体で既に完結した楽器です。弦の振動はフラット・トツプのボディーの中で増幅され、サウンドホールから出力されて、楽器として「音源として」完成されています。アコースティックギターアンプの使命は、いかにアコギの音を損なわずにそのまま増幅するかです。アンプの中で倍音を付加するとオリジナルのアコギのニュアンスが変えられてしまいます。
アコギのニュアンスが損なわれた例として、私が若かりし頃、頭脳警察という名前のバンドがいました。彼らはアコギにエレキ用のピックアップを付け、そのピックアップにエレキ用のアンプを繋いで演奏していました。そのサウンドはエレキそのものでした。歪んだ音(おそらくエフェクターをつないでいた)でかき鳴らしていました。アコギの演奏に慣れているのでエレキに持ち替えたくはない、しかし、音はエレキにしたいという発想だったのではないかと思われます。
アコースティック・ギター用のアンプは基本的にオーディオ・アンプや PA アンプと同じ増幅回路を使っています。しかし、筐体、シャーシーやそれを収めたキャビネットだけはギターアンプと同じように作られています。ステージやスタジオに持ち運んでで演奏するからです。
価格を安くおさえたいという要求も手伝い、トランジスターアンプが主流です。真空管を使ったアコギ・アンプは……つくれないことはありません。しかし、高くつきます。オーディオ用の真空管アンプを流用して、アコースティック用ピックアップやピエゾ・ピックアップに対応できるように入力部分の回路を MOD する方が、一から作るよりは手間が省けるでしょう。

2. Fender の ブラックフェィス や シルバーフェィス って何のこと ?

Fender が1945 年-- 1947年頃に作ったアンプは Woodie( ウッディー)シリーズと呼ばれます。
1948年--1960年頃までのアンプはツイード・シリーズと呼ばれます。このツイードの音が好きな人は多く、やれTV フロントがどうの、ナローパネルがどうのと多くの解説が既に多くのサイトに掲載されています。ここでは触れません。

ここで述べるのは、
おおよそ 1959 年以降のアンプ。年代順にブラウンフェイス、ブラックフェィス、シルバーフェィスと呼ばれるアンプについてです。この xxx フェイスについて簡単に解説しておきます。
まずフェィスとは Face Plate (フェィス・プレート)のことです。アンプのつまみ ( POT ノブ ) やジャックが取り付けられている部分の座金のことを Face Plate と言います。
Face Plate の塗装の色が茶色なら「ブラウンフェィス」、黒色なら「ブラックフェィス」、アルミ色なら「シルバーフェィス」といいます。
To identify three different face plates. フェースプレートの見分け方
このフェイスプレートの違いから、生産された年代の違いが大まかに識別できる以外に、アンプの回路が異なり、音色も異なってきます。同じ ProReverb という名前が付いていても ブラックフェイスの回路とシルバーフェイスの回路では音色が異なります。

Brown Face _ Vibroverb2-1. ブラウンフェイス Brwon Face
ブラウン・フェイスのアンプは1959年から1963年ごろまで生産されました。3つの xxx フェイスの中では最も暖かい音がします。

回路図の識別子は 6G2, 6G6 , 6G8, 6G12 というように 6G が頭につきます。6Gの後ろに付く数字がモデルをあらわします。2は Princeton, 6 は Bassman, 8 は Twin, 12 は Concertを表します。
回路に対して設計変更をほどこすと、その回路識別子の最後にアルファベットのSuffixがつけられています。
例: 6G6⇒6G6A⇒6G6B

ブラウンフェイスの回路の特徴を概略、簡単に説明すると

1. プリアンプの中のトーンスタック( トレブル、バスのトーンコントロール) 回路が3つの xxx フェイスの
 中ではユニークな回路構成です。抵抗値20%のところで タップの切ってある特殊なトレブル・ポットを使って
 います。このポットによってある程度、高域を削っています。ここに暖かいサウンドの秘密があります。
 ギター信号の中に含まれる特定の周波数成分を削除すると残りの周波数帯が強調されて聞こえるという仕組み。

2. ヴィブラート回路はバイアス回路に直接つながっています。真空管の発信機で作り出したゆれを
 パワーチューブのバイアス電圧に加えて、音をゆらします。パワーアンプそのものの音をゆらすので、
 ヴィブラートの利きがとてもダイナミックです。
 フットスイッチをつながなくてもヴィブラートのインテンシティーをまわすだけでヴィブラートがかかるのも
 特徴です。

ブラウンフェイスは当時あまり多くの台数が生産されておらず、現在はオリジナルにほとんどお目にかかりません。数あるモデルの中で Vibroverb ( 回路形式 6G16 )だけは 1990年にリイシューモデルが出されました。
(注: 2012年現在は生産されていません)
Face Plate も茶色でトーレックスやグリルクロスを含む外観はブラウンフェイスそのものです。
しかし、残念なことにプリント基板( PCB Print Circuit Board )を使っています。
基板特有の音圧の物足りなさと、音の応答速度(ピッキングに対する応答) の遅さの印象があります。
( 基板を使ったリイシュー・モデル全般について同じ感想を私は抱いています)
オリジナルに似ている音ながら、いま一歩何かがたりないと言えばよいでしょうか。
スピーカーはオリジナルに近い特性を持っています。キャビネットの作りも良いです。
このモデルをポイント・ツー・ポイントに MOD し、OT ( アウトプット・トランス)を Mercury Magnetics の
Tone Cloneに付け替えると、オリジナルの音により近づけて再現することは可能です。

Black Face _ Pro Reverb2-2. ブラックフェイス Black Face
ブラックフェイスのアンプは 1963年頃から1967年頃まで生産されました。3つの xxx フェイスの中で最も人気があります。

回路図の識別子は AA763, AB763, AA864,AA964, AB165などです。
このころから回路識別子の意味が変更されています。
1番左の桁はアルファベット A でアンプを表します。
2桁目は、A であれば設計・試作段階で書かれた回路図、Bであれば量産段階で書き直された回路図を意味します。
3,4,5桁目の3桁の数字で設計時の年代と月を表します。 763 は7月1963年に設計されたことを意味します。
回路識別子にモデルを表す記号は含みません。そのため、Twin reverb の AB763 もあれば Delluxe Reverb の AB763もあります。

これら数あるブラックフェイスの回路の形式の中では AB763 が最も人気があります。
中でも スティーヴィー・レイ・ボーン ( Stievie Ray Vaughan )が使用していた Vibroverb の AB763 回路は根強い人気を得ています。基本的に AB763 回路は Delluxe Reverb でも Vibroverbでもほぼ同じ回路構成をしています。違いは パワーチューブのタイプ( 6V6 か 6L6 か) の違いとその違いによる OT (アウトプット・トランス) の違い、ワット数の違いによる PT ( パワートランス) の容量の違い、それに伴う電源回路の若干の差です。
Twin reverb は上記の違いに加えて整流回路にダイオードを使用しているところが異なります。
Deluxxe Reverb と Vibroverbは整流菅であるGZ34 ( 5AR4)という真空管を使っています。

また別の見方をすると、AA 763 回路と AB763 回路の間には音質にはっきりとした差が感じられます。
AA 763 のトーンスタック回路は少しだけ中粋を持ち上げています。AB763 は中域をほんの少し削り、その効果として低域と高域が少しだけ前に出ています。
ギャンプスのお客さまの中には AA763 が好きな方も AB763 が好きな方もどちらもいらっしゃいます。
フル・オリジナルの AA763 にお目にかかるのは非常に稀です。量産段階で AB763 に変更されているため、市場に出荷された台数は極小だからです。今となってはオリジナルの AB763もお目にかかることは減ってきています。

ブラックフェイス回路の特徴を概略、簡単に説明すると

1. プリアンプの中のトーンスタック( トレブル、バスのトーンコントロール) 回路がブラウンフェイスに比べて
 少しだけ高域が強調されました。ブラックフェイスで確立されたトーンスタックは以後シルバーフェイスにも
 引き継がれていきます。
 ツイードからブラウンフェイスまでの間、トーンスタックは幾度と無く設計変更(回路図変更)を繰り返して
 きました。しかし、ブラックフェイスの AB763でようやくの設計変更が収束しました。
 ブラックフェイスの AB763 によって、いわゆるフェンダーのプリアンプの音色が確立されたともいえます。

2. ビブラート回路は一部のモデル(Tremolux)を除き、Optoisolator ( Opto coupler )というデバイスを介して
 フェーズインバーターの入力にミックスする形に変更され、以後、踏襲されるようになりました。
 Optoisolator とは発信機で作られた揺れの元となる発振信号を一旦光の点滅に変え、それを再度電気信号に
 変換するものです。これを使うことにより、発振信号が及ぼす回路や真空管の劣化や疲労を低減します。
 反面ブラウンフェイスで使われていた直接バイアスを揺らす形に比べて効きは弱くなりました。
 なにごとも長所と短所がつきまとうものです。

  Optoisolator は光の点滅を長時間していると壊れてしまいます。
 そのため、Fender はフットスイッチをつながないときは Vibrato がかからないように設計しました。
 Vibrato を使わない間に無駄に Optoisolator を疲弊させないという考えです。
 一方で、このことをご存知ない人が多いようです。Intensity のつまみを廻してみると、ワンワンという唸り
 のようなノイズだけが増すので、「 Vibrato が効きません、壊れています」とおっしゃいます。
 フットスイッチをつないで、Vibrato をオンしてから Intensity を上げてみてください。
 アンプのフットスイッチが付いていないという方のために、ギャンプスのアウトレットでフットスイッチ
 販売しています。ギャンプス・アウトレットは肝心かなめのものだけを最小限、厳選して販売しています。

 ビブラートが鳴らない場合のユーザーの出来るメンテナンスについて別ページで解説しています。
 ユーザーメンテナンスをしても直らない場合、ギャンプスで行なう回路の修理についても、まとめました。
 ⇒参考ページ

3. パワーアンプ回路
 実はブラックフェイスの音の魅力を決定づけているのがこの部分です。
 プリアンプである程度増幅された信号をパワーアンプで増幅させるための前段としてパワー・ドライバー
 もしくはフェーズインバーターと呼ばれる回路があります。この回路が非常にデリケートに設計されています。
 ここに使われる抵抗の抵抗値やコンデンサーの容量値が絶妙の配合で設計調合されています。
 足してもいけない、引いてもいけない。
 既に何度も実験済みです。足すと音圧は大きくなるが、絶妙なピッキング・ニュアンスが減っていったり、
 回路内部で発生する寄生発振に悩まされて、ギターの音色に変なゴースト・ノート(音の影のようなノイズ)が
 乗ったりします。引くと音圧が乏しくなる、音が暗くなる。といった具合です。
 発振するギリギリのところで設計されているがために、ワイアー・ドレス( 配線のとりまわし) や抵抗・
 コンデンサー部品の向きや角度は細心の注意を払って配置し、ハンダ付けする必要があります。
 そのノウハウは実際に発振しているアンプをきちっと直して発振しないアンプに仕上げるという経験があって
 はじめて身に付きます。単に回路図とレイアウト図を見てそのまま配線すると、ある程度の電気回路の知識
 を持っていても必ず発振するアンプに仕上がると言っても過言ではないかもしれません。

ブラックフェイスは、その音質が良いということで、生産されなくなってから、大変な人気となりました。
1980年代には、Fender 自らが、Face Plate だけを黒くして、アンプの中身は後期のシルバーフェイスをそのまま使って需要をほりおこす手法に出ました。今でも時々オークションでみかけます。
中身は後述するシルバーフェイスの晩期の回路です。購入の際にはくれぐれもご注意ください。
リイシューは '65 Twin Rwverb ( 1991~ )と '65 Delluxe Reverb( 1993 ~ )の 2機種が出されています。
どちらもプリント基板です。
オリジナル・ブラックフェイスと比べると音圧の物足りなさと、音の応答速度(ピッキングに対する応答) の遅さは避けてとおれず、基板をはずして作り直さないとオリジナルには近づきません。

Silver Face _ Pro Reverb2-3. シルバーフェイス Silver Face
単純に Faceplate がシルバーかどうかで見ると 1968 年頃 ~ 1981年頃まで生産されました。
前述したように Facepplate だけを黒くして、回路は Silverface というモデルは 1981~1982まで生産されています。また Twin reverb U、Concert U、Deluxxe reverb Uなど 1982~1986 まで生産されたモデルはシルバーフェイスの晩期の回路にオーバードライブ回路を追加したモデルです。

回路図の識別子は AB668, AB868, AA769, AA1069, AA270があります。
1968~1969年の回路はブラックフェイスとほぼ同じ回路図で作られています。
しかし、1970年以降は CBS色の濃い回路へと次第に変更されていきます。
1971年以降(後期以降)は回路図の識別子は振られなくなり、アンプのモデル名そのものを回路図の識別子としました。また回路図の右下に CBS のロゴが振られています。
シルバーフェイスの音質という観点からいうと、どの設計図で作られたか、つまり、どの年代のシルバーフェイスなのかにより、大いに音質が異なります。その意味で回路と音という観点から私はシルバーフェイスを以下のように区別しています。以下に述べる「初期・中期・後期・晩期」という言い回しは区別の目安として、独自に付けたものです。
楽器やさんやインターネットのとあるサイトでは、アンプの年代を特定するのにスピーカーの年式を調べたり、ロゴの形で特定したり、ポットのデート・コードを調べたりと色々な情報が出回っています。しかし、それらは生産されてから、現在までのあいだに交換できてしまいます。通常はキャビネットの内側に紙のチューブチャートが貼られています。この紙には、ソケットごとに入れらているチューブの型と共にAB763 や AA1065 などの回路識別子が書かれています。ひどいアンプになるとこの紙が偽造されているものがあります。
私のアンプの年代特定方法はいたって正確です。回路そのものを見ることです。配線材料には何が使われていて、どの年代のコンデンサーが使われているか。どの値の抵抗値が使われているか。配線のとりまわしはどこを通過してどこに繋がっているかをみれば確実にどの年代のアンプかが特定できてしまいます。これらを MOD することは可能です。しかし、 MOD した箇所はこれまた一目瞭然とわかります。古いオリジナルのアンプを数多く見て得た経験から、配線材の退色の程度を観察したり、抵抗値の劣化の程度を計測すれば済みます。

1968-1969 :初期シルバーフェイス( グリルクロスの周りをアルミフレームで囲ったもの)
回路は 1963年~1965年のものをそのまま使っています。とはいっても若干のマイナー・チェンジが入っています。ほんの数個の抵抗・コンデンサーを変更するだけで、簡単に回路と音をブラックフェイスにできます。
1年数ヶ月しか生産されておらず、絶対数は圧倒的に少ない希少なモデルです。
Faceplate がシルバーだということで、回路のことは考えずに安値で取引されています。
回路の特徴はほぼブラックフェイスと同じです。

1969-1971:中期シルバーフェイス( アルミフレームは無く、マスターボリュームも付いていないもの)
回路は CBS によって書き換えられました。 Leo Fender が体調を崩し始めた時期でもあり、 Fender 社の第一線からしりぞき次第に CBSの影響力がアンプの設計に及んできた時代です。Twin Reverb や ProReverb を例にとると、外観上の最もわかりやすい特徴はシルバーフェイスであるのにマスターボリュームが付いていないことです。
マスターボリューム付きは後で述べる後期になります。

この頃から大きな改悪がなされ始めました。それはパワーアンプ・ドライバー( フェーズシフターのこと) をより鈍感にするという改訂です。鈍感にとは、どういうことかというと、ブラックフェイスのときにはデリケートで繊細で緻密なバランスのもとで鳴っていた回路を、ゲインをさげたり、入力の電圧レベルを下げたりして、多少のことでは発振しないようにしました。発振で悩まされることがなくなった分、ギターの音が削られました。
そのようにした理由は大量生産するためです。
ブラックフェイスから初期シルバーフェイスまでは回路の配線とハンダを担当するのはいわゆる熟練工で、ワイアーのはわせかたひとつをとっても慎重に美しくレイアウトされていました。ワイアーによってはボードの裏側をはわせて複数のワイアーが近接するのを避け、ワイアーとワイアー間での電気信号の干渉を防ぐ配線がなされていました。
Fender社を買い取った CBS は労力のかかる美しい実配線よりも大量に同じものを早く作ることを重視しました。熟練工に一本一本ていねいに配線させるよりもパートさんやアルバイトさんに何も考えずにチャチャッと配線させたかったのです。何も考えずにチャチャッと配線するとアンプは発振します。そこで、そんなら発振しないように鈍感な回路に設計しなおせば良いという考えに立ったのです。
下の写真を見て比較すれば一目瞭然です。
ブラックフェイスの実配線に比べてシルバーフェイスの実配線は雑然としていて、「とにかく部品間が繋がっていればOKよね」的な作業がされているのがお分かりになると思います。

シルバーフェイス中期以降のアンプを MOD してブラックフェイス回路にする 改造の作業、ブラックフェイス化もしくは、別名ブラックフェーシングの作業は、単に抵抗やコンデンサーの値をブラックフェイスと同じにするだけでは実施不可能なことがお分かりいただけるでしょうか。
ブラックフェイスの音を取り戻すためには、配線材( 写真の白色ビニールワイアー)を全て外し、はわせかたや配線の材質に工夫を凝らし、発振やノイズの出ない回路に配線しなおすことが必要となります。
ブラックフェイスと全く同じ経路とレイアウトにするだけではすまないケースがほとんどです。微妙にボードのリベットの位置がずれていて、部品レイウトや角度も微妙に異なる場合があります。シルバーフェイス一台ごとに特有の配線のはわせかたや部品のレイアウトが必要となります。ときにはボード以外にラグ端子を使って配線したほうが、発振やノイズに対してデリケートなブラックフェイス回路を無理なく再現できる場合もあります。
ギャンプスの アンプ修理のページで紹介している MOD とはこういう作業のことをいっているのです。

【 写真:ブラックフェイスとシルバーフェイスの配線の違い】
配線方法の比較 ブラックフェースとシルバーフェースの違い

1971~1976: 後期シルバーフェイス( Proreverb や Twin reverb では Matsre Volume 付き)

この頃の最大の特徴はマスターボリュームが付いたことです。大型のモデルである ProReverb や TwinReverb それに Bassman にマスターボリュームがつけられました。Delluxe Reverb や Vobrolux reverb などには付いていません。

マスターボリュームを付けると、マスターを 10 にして弾く人は少なく、せいぜい 3 ぐらい、多くて 5 ぐらいにして、プリアンプの方のボリュームを目一杯に上げて弾く人が増えました。この頃からプリアンプの歪みを利用したアンプ( メサブギーなど) が人気を博したこともあり、このマスターボリューム付きのアンプの音の悪さの欠点はあまり目立ちませんでした。当時、美しいクリーントーンはあまり需要がなかったとも言えるかもしれません。
回路的に見るとマスターボリュームの付いていないアンプ(ブラックフェイスやシルバーフェイス初期)の動作と似た動作をさせるにはマスターボリュームをフルテンにして音量はプリアンプのボリュームで調節します。
Masterを 10 にして Volume を 3 から 7 ぐらいの間で使用します。味気ないクリーン・トーンつまり、パワーアンプの音の味気なさが後期の特徴です。「ゴンゴンとうるさいのに色気がない」と私は感じます。
マスター・ヴォリューム無しに比べてマスター・ボリューム付きのシルバーフェースの人気がいまいちな理由は以下のとおりです。

実はアンプの中枢部を鈍感にする改悪はエスカレートしていったのです。
パワードライバーのゲインを落としたり、入力電圧を下げたりしただけでは、もはや大量生産による雑然とした配線が原因の発振やノイズへの弱さは克服できなくなったのです。そこで行われた改悪が積極的にギター信号の高域を削り落とす手法です。電気信号に含まれる高い周波数成分が干渉しやすいことから、この高域のカットが行われ発振やノイズへの対策とされました。信号の通り道にコンデンサーをつないでグランドとつなぐことで一定以上の周波数の音を削るのです。当然のことながらスピーカーから出てくる音は倍音成分がたくさん削られています。
倍音が削られると美しいクリーン音からは遠ざかり、味気の無いクリーン音へと変わっていきます。
倍音は音圧の豊かさとしても人は感じます。倍音の削られた音は同じワット数であるにも関わらず、なんとなく音圧の低い音、いいかえると「大きい音なんだけどどこか元気の無い音」に感じられるものなのです。

1977~1982: 晩期シルバーフェイス( 50W ⇒ 75W, 100W ⇒135W)

ベースマン 75W, ProReverb 75W, TwinReverb 135W が登場しました。

6L6GC パワーチューブ 2本を使って、無理なく出せる出力は 50W までです。
6L6GC パワーチューブ 4本を使って、無理なく出せる出力は 100W です。
このワット数の標記は 音響出力、もしくは実効出力とよばれるものです。
つまりスピーカーを振るわせるのに使われる電力のことです。
( アンプ全体で消費される電力はもっと大きく 260W から 380W ぐらいまでです。)

実効出力のワット数をさらに無理やりに大きくしたモデルの時期を晩期として定義させていただいております。
ワット数の大きいアンプの最大の特徴はパワーアンプがウルトラリニア方式になったことです。
ウルトラリニアとは、OT (アウトプット・トランス) の一次側にタップを設け、パワー・チューブ( 6L6GC ) の SG ( セカンダリー・グリッド) を直接繋ぐ方式です。
ブラウンフェイスからシルバーフェイスの後期まではパワーチューブの SGは CT (チョークトランス) につながれていました。

ウルトラリニア方式の長所は幅広い周波数を増幅できる広帯域化と大きな増幅出力です。オーディオアンプでよく使われる方式です。しかもチョークトランスを省くことができ、メーカーにとっては製造コストをトランス1個分安くできます。
短所は、ギターアンプの持つ心地よいサステインや、ピッキングに対するダイナミックなレスポンスなどが減少してしまうことです。より PA アンプやオーディオアンプ寄りなったといえるかもしれません。OT に SG タップを設けたり、最終的なワット数を上げるために、OT が大きく重くなりました。PT ( パワートランス ) も高出力化のために大きく重くなりました。
このウルトラリニア方式のアンプは大きな出力と引き換えにギターアンプとしての大事なニュアンスを犠牲にしたといえます。
「重いアンプは良い音のするアンプ」という定説に唯一反するアンプとなりました。
重いアンプというのはトランスの重量が大きいアンプのことです。良い音がするのはあくまでブラックフェイスなどのパワーアンプの方式のまま OT の重量を増やしたときのみに当てはまる定説です。ウルトラリニア方式にしてトランスを重たくしても決して音は良くなりません。

135W のツインリバーブは、Fender のどのアンプよらりも重いアンプです。2階にある作業場に持っていくために私一人で階段をのぼることはできません。

いまとなっては、このウルトラリニア方式による高出力化は改悪とよべます。しかし、当時の開発者は改善したと思っていたのです。パワー競争が一段と激しくなり、楽器店のディーラーや販売店の多くが回路の中身やオーディオアンプとの違いに対する認識の乏しく「大きな出力のアンプは良いアンプ」という思い込みをしていた時期だったのです。

この晩期以後に出てくる、Faceplate だけを黒くしたモデルは全てこの晩期のモデルと同じです。

1982-1986:モデル名の後ろにUの付くアンプ
(TwinreverbU,ConcertU, Deluxe ReverbU, Princetone ReverbUなど)

パワーアンプのウルトラリニア方式をやめて、チョークトランスとSG をつなぐパワーアンプの方式に戻りました。回路は元に戻したのではなく、それまでの fender のアンプとは大幅に異なる回路になりました。
どちらかというメサブギーを意識した回路の作りになり、プリアンプの回路をリレーでスイッチングしてリード・チャンネルのオーバードライブをつけたり、エフェクト・ループの Send/Return を付けたりしています。
ブラックフェイスで見られた配線美や発振・ノイズを防ぐレイアウト哲学はここでも見られず、シルバーフェイス時代の後期と同じ考え方で発振しないように信号から高域を削るコンデンサーは装着され続けました。
メサブギーよりも勝る点は、PCB ( プリント・サーキット・ボード) の基板は使わず、ポイント・ツーポイント配線を継続しているところです。
メサブギーのサウンドの出るアンプを、修理しながら、長く使いたいのであれば、こちらのアンプに MOD をしてメサブギーの Boost 回路を作りこんだほうが、得策かもしれません。
入手可能ブギーは、たとえ古いものでも基板を仕様しているものしか手に入らないからです。
これはあくまで思い付きです。

Champ U( 1982-1983)と Super Champ( 1982-1985)について
これらのアンプは日本でまだ人気があるのだそうです。
その中身の回路についてご存知無い人が多いようなので解説しておきます。
普通に Champ と言えばシングル・アンプのことを連想します。シングル・アンプとはパワーアンプ部がパワーチューブ (Champ は6V6GT) 1本だけで構成します。
分かりやすくするため、パワーアンプを 車のエンジンにたとえるとすると、
ブラックフェイスのツインリバーブは 4気筒( 6L6GC x4 )、
プリンストンリバーブは 2気筒( 6V6GT x2 )、
そしてチャンプは 1気筒 ( 6V6GT x1 )といえます。

ところがこの Champ Uも Super Champ も実は 2気筒なんです。

Champ Uの回路は、シルバーフェイス中期の プリンストン・アンプと大部分は同じ回路です。
異なる部分は、プリンストンの回路の整流回路を真空管からダイオードに変え、マスターボリュームを追加したところです。

Super Cump の回路は Champ Uの回路にリバーブ回路と ブースト回路を追加したものです。
シルバーフェイス後期のプリンストン・リバーブ(ブースト付き)とほぼ同じ回路になりました。
整流回路部だけは整流菅ではなくダイオードです。

本来であれば、プリンストン・リバーブのシャーシーに収めるべき規模の回路部品が Champ の小型シャーシーに詰め込まれて、キャビネットに収められています。
部品と部品の間は密集しています。回路間の干渉が高く、発振しやすくなっています。この発振を避けるためにシルバーフェイス後期以降で用いられた、高域を削り取るコンデンサーがちりばめられています。結果として倍音の少なめアンプに仕上がっています。
シンプルなチャンプのアンプを連想して Cump Uや SuperChamp をお買い求めになり、デレク・アンド・ドミノスのアルバムでのクラプトンのフレーズをお弾きになってみると「あれっ?」ということになるでしょう。
プリンストンリバーブと違うし、チャンプとも違う独特なサウンドであるともいえなくはないです。

3. Fender アンプのモデル間の相違

同じブラックフェースでも Princeton Reverb 、Deluxe Reverb、Pro Reverbなど複数のモデルが存在します。
これらのモデル間のギターアンプ回路の観点からの相違について述べます。話を分かりやすくするために、同時期のブラックフェースでのモデルの違いを見ていきます。
下表を見ながら解説を読み進めてください。……工事中

4. 情報に振り回されず、情報を使う側に立ちましょう

広く世間では「アンプのポットのガリが出てたら接点復活剤でなおる」ということがさも全面的に正しいかのごとく思われ、なんでもかんでも接点復活剤が噴射されています。適量というものを考えずに大量に噴射され、せっかくのヴィンテージアンプを使い物にならなくしていることが多々あります。
「ハンダ付け、簡単にできる」と信じて、やみくもにハンダ付けが行われ、さらに「スピーカー端子とスピーカー・ケーブルはハンダ付けがよい」という神話が、さもあたりまえのようにまかり通ることにより、見た目付いているが実はイモハンダになっているアンプを数多く見かけます。先の細いハンダ・コテ先を長時間スピーカー端子に当てたことによりハンダの熱でスピーカーのボイスコイルが焼けて壊されていたり、ハンダ接合部の接触不良によって不快なノイズが出ていたりします。このイモハンダがじめからわかっておれば問題ありません。ハンダを溶かしてやれば治ります。しかしイモハンダは見た目はハンダ付けされているように装っています。表面はきれいでも内部でクラックしていることもあります。ここで仮にスピーカー・ケーブルとスピーカー端子は正常であるという仮定に立つと、前述の「不快なノイズ」の原因をアンプの回路の中で探すはめになります。この不快なノイズはいわゆる Ghost Note もしくは Parasytic Oscilation という症状に酷似しています。そのため、それらの症状を起こす回路のレイアウト、部品との接合、部品自身の性能向上に膨大な無駄な時間を費やすことになります。

「……が良い」という情報の一部は正しいです。
しかし、全面的に信用したり、どんな場合にもそれが正しいと信じ込むと痛いめにあいます。
特にネット上の情報には要注意です。さも、それが神の啓示のごとく何にも勝る素晴らしい方法なのだと誇張されている場合があります。ある偏った情報を全面的に信用してしまうと、もったいない時間を過ごすことになります。正確な情報を正しく理解なさることが最終的にみなさんの貴重な時間を有効に使うことにつながると思います。そのコツは「……にするとメチャクチャ音が良くなる」という情報を「ある程度は良くなるかも、しかし、短所もあるはず。他の方法にも長所と短所があるように」とお考えになるとよろしいかと存じます。

自分でできることはなるべく自分でしようという人がギタリストには多いと思います。
よくよく情報を吟味して、正しく理解してから DIY をなさってください。

当サイトに掲載されている情報で「……のような音になる」というものは、あくまで私個人の感じたことを、私なりの表現方法・言葉を使ってあらわしたものにすぎません。そのことを考慮なさり、ある程度差し引いてご参考になさってください。人それぞれ感じ方や表現方法が異なります。

当サイトの情報は最低限の節度として、「実際に私が経験したり、使用したり、演奏したりして感じた結果」だけを掲載しております。憶測や推測は載せておりません。  

(c) copy right Guitar Amplifier Manufacturing and Professional Services ギャンプス 2013

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