ギターアンプのバイアス調整について

GAMPS: Guitar Amplifier Manufacturing And Professional services

Guitar Amplifier Manufacturing And Professional Services

(c) copy right Guitar Amplifier Manufacturing and Professional Services ギャンプス 2013

このページではギターアンプのバイアス調整について解説します。
ネット上で、バイアス調整についての誤解があるようです。
ここにまとめてクリアになるように解説しておきます。

バイアス電圧が不適切だとどんな悪さをするのか

バイアス電圧が不適切であると真空管が早く壊れます。

アンプのバイアスという言葉は真空管を使用する増幅回路全てに必要な概念です。
プリアンプ( 12AX7 や 12AT7 の回路) も増幅器ですからバイアス回路があります。しかし、ほとんど全てのギターアンプのプリアンプは次項目で述べる自己バアイ( カソード・バイアス)方式です。
バイアスは自動調節が働きます。そのためあまり気に留める人はいません。

バイアス調整が必要と言われている対象はパワーアンプの回路です。

バイアス電圧は増幅回路の動作点を決めます。

バイアス電圧が深くかかりすぎると、サウンドは暗くなります。
バイアス電圧を浅くすると元気の良いサウンドになります。
しかし、バイアス電圧を浅くしすぎると真空管は暴走します。
たくさんの電流を流してしまい、その電流によって自分自身を壊してしまいます。
最も大きな音を出したときに、その真空管で流すことのできる許容範囲内ギリギリの電流が流れるようにすることがバイアス調節するということです。

バイアス調整不要のアンプと必要なアンプ

ネット上の質問サイトで見受けることが多いのが「バイアス調整不要である」あるいは「バイアス調整はしないといけない」と言い切ってしまっている答えです。
実はバイアス調整が必要か不要かはアンプのモデルによって決まるのです。

自己バイアス ( カソードバイアスとも言う) 方式のギターアンプは調整不要です
Fig.1 にそのバイアス回路の写真と、自動的に適切なバイアスに保たれる仕組みを書いておきました。ほとんど全てのギターアンプのプリアンプはこの自己バイアスです。
パワーアンプに自己バイアス方式を使っているアンプがあります。これらのアンプはバイアス調整不要です。
Fender では Champ 全般、ツイードデラックス、ツイードハーバード等が該当します。
VOX のAC15や AC30、Marshall では 18W のギターアンプ が該当します。

固定バイアス ( 英語では Fixed bias) 方式のアンプでバイアス調整用のポットの付いているギターアンプはバイアス調整することが可能です。

Fig..2 にその調整の様子を写真で紹介しています。
Champ を除く、ブラックフェースとシルバーフェースの Fender ギターアンプがこれに該当します。
Marshall の 1987 や 1959 が該当します。

固定バイアス ( 英語では Fixed bias) 方式のではあるが、バイアス調整用のポットの無いギターアンプはバイアス調整できません。

Champ を除くブラウンフェース( ブロンズともよばれる) のほとんどのモデルと、ツイード・ベースマン、ツイード・バントマスター、ツイード・ツインなとがこれに該当します。
VOX AC100 の後期がこれに相当します。

この固定バイアス方式なのに調整ポットの付いていないモデルは、ポット(可変抵抗)の代わりに
固定抵抗でバイアス電圧の値を固定しています。
もしも「バイアス調整」を行なうとしたら、この固定抵抗を外し、値の異なる抵抗にしてバイアス電圧を
変えて、調整することになります。

工場出荷レベルでのバイアス電圧は、そのモデルに使われる真空管のタイプ( 6L6 や EL34 等)であれば、おおよそこのぐらいでいいだろうという値に設定されています。
現在生産されている新品の真空管に交換するのであれば、バイアス回路が劣化していなければ問題はありません。

もしも、新しい真空管を入れても、真空管の寿命がすぐに尽きてしまうようなときには、当然のことながらバイアス電圧がおかしくなっています。しかし、即バイアス調整するのではなく、バイアス回路のオーバーホールをすることが正解です。バイアス調整で固定抵抗の値だけを変えてもバイアス電圧は正常に戻らないことが多いのです。
バイアス回路はダイオード、アルミ電解コンデンサー、抵抗で構成されています。
これらの部品が経年変化で劣化すると正しいバイアス電圧を出せなくなります。
古いダイオードやアルミ電解コンデンサーは必ず劣化します。
これらの部品を新品にしてやることで、工場出荷レベルのバイアス電圧に戻してやることができるのです。
ですから、ゆめゆめバイアス調整をしようと短絡思考するのではなく、バイアス回路そのものの劣化を疑うと無駄に時間とお金を費やすことを防げます。

Fig.1 自己バイアスの仕組み 

固定バイアス方式で調整用のポットが付いているアンプのバイアス調整の方法

真空管のベストな動作点というのは真空管に加わる電圧の大きさと真空管のタイプにより変わります。
バイアス調整とは何を調整するのかというと、
真空管に流れる電流の量を調整するのです。
何によって、調整するのかというと
真空管に加わるバイアス電圧の大きさを変える事によって、
真空管に流れる電流の量を調整するのです。

そのため Fig.2 のように電圧計をつないで真空管に加わっている電圧を計測しながら、
電流計を見て真空管に流れる電流の量を読みつつ、バイアス調整用のポットを廻し、
バイアス電圧の値を変えることによって調整します。


Fig.2 Fender ギターアンプのバイアス調整方法


特殊なバイアス調整方法のギターアンプ Fig.3

Marshall の DSL401 の例を Fig.3 に示しておきます。

Fender や他の Marshall のギターアンプと異なり、基板上のピンの間の電圧を観測しながら
バイアス調整するタイプです。パワーチューブの電流を電流計で計る必要はないものの、
バアス調整時に端子間の狭いピン間の電圧測定をするため、繊細な測定方法が必要です。

Marshall DSL401 ギターアンプのバイアス調整方法


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