ギターアンプのビブラート ( トレモロ )修理
事例集
ユーザーが出来る絞込み
Vibrato failure examples and its fix
【原因と対策・修理方法】

GAMPS logo

(c) copy right Guitar Amplifier Manufacturing and Professional Services ギャンプス 2013.

ビブラートの作動のさせかた【Fig1. Fig2.】

Fender のブラックフェースやシルバーフェースの場合はフットスイッチを使ってオンさせます。
【 Fig.1 】参照

コントロール・ノブの Depth を上げるとギター音が揺れだします。
だいたい目盛り位置 3から 5あたりから次第に効き始めます。
目盛り8 以降でようやく効き始めるような場合は、
真空管が劣化していたり、ビブラート回路が劣化していたり、
フットスイッチのRCA ジャック部の接触不良があったりします。

もしも、手元にフットスイッチが無い場合は、Fig 2 のような RCA プラグを加工して代用します。
市販されている RCA プラグのプラス端子とマイナス端子を直接繋ぎます。( 短絡させる )
それをVibrato 切り替え用の RCAジャックに差し込めば、ビブラートがオンになります。
【 Fig.2 】参照
この簡易 RCA プラグはあくまでテスト用で、常時つなぎっぱなしにはしないでください。
後述するオプトカプラーが常時働き続けとなり、寿命が縮みます。
テストのときだけ差込み、使わないときは抜いておいてください。

Fig1. foot switch, Fig2. Foot Switch の代用, Fig3. ビブラートの真空管ポジション

ビブラート故障の原因の絞込み、ユーザーが出来る範囲の方法
【Fig3. Fig4. Fig5.】

ユーザーでもある程度は原因を絞り込み、不具合を治すことができます。
ユーザーでできるメンテナンスは以下の3つです。

  1. ビブラート機能をつかさどる真空管の交換
  2. フットスイッチ内部のクリーニングとケーブルの先端の RCA プラグのクリーニング
  3. RCA ジャック (アンプ側) のクリーニング

1. ビブラート用真空管の交換 【Fig.3 】
Fig3. は典型的な Fender アンプを後ろから見た画像です。
ブラックフェース以降のビブラートの付いているモデルです。Delluxe , Vibrolux, Pro, Super, Twin etc.
ただしプリンストンは少し異なります。

真空管に V1 から V9 まで番号をふっています。
ちなみに、V とは Valve ( 英国での真空管の通称)です。(米国では Tube が通称)

V5 のポジションの 12AX7 ( もしくは ECC83 ) がビブラートの機能をつかさどっています。
このV5 に新しい 12AX7 を入れてビブラートが直るかどうか見てください。

2. フットスイッチ内部と RCA ジャックの接触不良の解消【Fig.4】
フットスイッチ内部にゴミがたまったり、
フットスイッチのケーブルの先端にある RCA プラグが汚れていたりすることがあります。

そういう場合、接触不良となり、ビブラートが効かないことがあります。

フットスイッチの裏蓋を開けて写真のように綿棒でゴミ取りをしてください。
ケーブルの先端に付いているRCA プラグもアルコールで浸した綿棒でクリーニングしてみてください。

3. RCA ジャック(アンプ側) のクリーニング 【Fig.5】
フットスイッチの RCA プラグが繋がる、アンプ側の RCA ジャックのクリーニングも行います。
写真ではジャックのプラス側をクリーニングしています。
当然のことながら、ジャックの外側(マイナス側)もクリーニングしてください。


ここまで述べた 1.から 3.までの作業でビブラートが鳴り出せばラッキーですね。
修理に費やす、お金と時間の節約になります。

もしもそれでも直らないときは、以下に述べるビブラート部分のオーバーホールをギャンプスで実施し、完璧に治します。

Fig.4 フットスイッチのクリーニング , Fig.5 RCA ジャックのクリーニング

ギャンプスが行なうビブラート部分のオーバーホール
【Fig6. Fig7. Fig8.】

ギャンプスがオーバーホールのご用命を受けた場合、以下に述べる Fig6. と Fig7.の両方の作業を必ず実施しています。
片方だけ実施したり、部分実施したりすると、その時点では直ったように見えても、後々再修理になる可能性があります。

RCA ジャック部分のオーバーホール【Fig.6】

ビブラートをオンにするためには RCA ジャックにフットスイッチをつなぐ必要があります。
フットスイッチの RCA プラグ部分で起こる接触不良を将来に亘り防止するために行なう作業です。
ギャンプスではオーバーホールと同時に実施する作業です。
a) まずRCA ジャックに繋がる配線のハンダを外します。
b) インチ径・レンチを使い、RCA ジャックを外し分解します。
c) RCA ジャックはジャック本体、歯付きワッシャー、配線端子付きワッシャー、とナットに分解できます。
  これらを全て洗浄クリーニングします。
d) ジャックの付いていたシャーシー穴の周辺も洗浄クリーニングし、錆びをとります
e) 洗浄した RCA ジャックを組み立て、シャーシー穴に取り付けます。
  このとき十分なトルクで締め付けます。
  配線端子付きワッシャーの電位がグランドと同じ 0Vになるようにします。
f) 新しい配線材を使い、RCA ジャックに配線をします

これでビブラート部分のオーバーホールの一部が完了です。

Fig.6 RCA ジャック部分のオーバーホール ( 分解掃除 )

ビブラート回路部分のオーバーホール【Fig.7】

ビブラートは発振回路です。意図的に増幅回路を発振させ、ワンワンという唸り音の元となる電気信号を作ります。
次にその電気信号を一旦、光の点滅に変え、その光の点滅を再度電気信号に変換してギター信号とミックスします。

ビブラートの故障の原因で最も多いのが、発振回路に使われるカップリング・コンデンサーの不良です。発振というのはとても大きな電気エネルギーを消費します。この大きな電気エネルギーによるストレスに常にさらされているコンデンサーは壊れやすいのです。
ビブラートをオンにしたとき、ウンウンウンという電気信号のゆれが全く感じられない場合はこのコンデンサー不良です。つまり、発振していません。
【Fig.7 の写真の中の赤く囲った部分の右側】

その次に多いビブラート故障の原因は光変換回路です。
発振している電気信号を一旦光に変換し、再度電気信号に戻す部分です。この部分に使われる抵抗とオプトカプラと呼ばれる部品は劣化しやすいのです。
ビブラートをオンしたときウンウンウンという電気信号の揺れは感じられるが、ギター音に揺れが反映されないときはこのオプトカプラー部分の故障です。
【Fig.7 の写真の左側の赤く囲った部分】

最近、オプトカプラを交換すればビブラートは直るということは知られるようになってきたようです。ところが、「オプトカプラさえ交換すれば直る」というように誤解している人が大半です。
発振回路が悪い場合はいくらオプトカプラーだけを交換しても直りません。
オプトカプラに繋がっている抵抗が劣化している場合、この抵抗を同時交換しないと、新しいオプトカプラを壊し、すぐに鳴らなくなることもあります。

Fig7. ビブラート回路部分の修理、オーバーホール

ビブラート回路への Fix のアプライ【fig.8】---唸りを押さえる Mod

この Fix というのは Fender がアンプ・テクニシャン向けに公開したビブラートの問題への対処措置です。あくまで対処療法です。

ビブラートをオンしたとき、ウンウンウンという唸り音が出ます。この唸り音があまりにも大きいときに回路を MOD する一時措置です。
英語では、この問題のことを Ticking といいます。対処措置は Tech-note として公開されています。

どちらかというと TX (Temporary Fix) の意味合いが強い対策です。
通常ではこの Fix は不要です。
部品の劣化もなく全て正常であり、全てのハンダ付けが正常であり、なおかつ、配線の取り回し、レイアウトが正しく行なわれておればこの Ticking の問題は起きません。
全てが正常であっても、まれに固体によって Ticking の問題が起きることがあります。
そういうときにこの Fix を入れます。

Fig6. と Fig7. で示したオーバーホールをきちっと行なわずに、この Fix を入れても、あまり効果はありません。この点をくれぐれもお間違いにならないようにしてください。

Fix の内容は .01μF-600Vのフィルムコンデンサーをオプトカプラーの足に取り付けるというものです。
ときどき、他の修理屋さんにより、この値よりも大きな .02μF が取り付けられたアンプを見かけることがあります。その値は無意味です。 あくまで .01μでないといけません。
.01 μF よりも大きな値にしないと問題が解決しないような場合は、オーバーホールすべき部品のどれかが劣化していることを意味します。

Fig.8 ビブラートに関するTech-note の適用

以上でビブラートに関する修理情報とその解説は終わりです。

ご自分でできるメンテナンスをなさった上で修理に出すかどうかを判断くださいますと、
あなたのお時間とお金の節約になります。

めんどうだから全ておまかせでもかまいません。その場合には真摯に対応いたします。

良きギターライフをお過ごしください。 Enjoy your nicest guitar life !

ギャンプスのホームページ経由でこちらにこられた場合はこのページは閉じてください。

ネット検索でこのページに直接こられた方は以下のリンクもどうぞ
BACK ボタンギターアンプ 修理 のページへ戻る

Home へ戻るギャンプスのホームへ行く