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ダイヤモンド起源とタイプ

     

    さて、前頁でざっとダイヤモンドの4Cについてご紹介いたしました。
  続いては更に詳しくご紹介しようと思うのですが、ちょっと話をはずれようと思います。
  というのは、ダイヤモンドの4C以前にダイヤモンドの成り立ちをご紹介したい、又ダイヤにタイプがありますが
  それも品質にも関係があること、その為には地球という天体の構造まで関係します。
   どうですか?ちょっとロマンがあって 面白いと思いませんか? それでは少し話を外れてご紹介いたします。


地球の構造と主な組成
地球を岩質で分けると左図のようになります。
ただ、層の境目の状態など解明されていない事も多く、皆さんがご存知のようにプレートは海底からマントルへともぐりこみ図のように平らにクッキリと層が分かれるわけではありません。
時にはダイヤモンドが地球の構造を解く鍵になったりすることもあります。非常に硬く一度ダイヤモンドになると安定しています。そのため生成時にカプセルのような役目を果たし、内包物としてマントル物質を取り込んで産出される事があります。また、炭素を分析、研究する事は最先端技術の発展への可能性も持ち合わせています。
包有物によるダイヤモンドのタイプ
ダイヤモンドはマントル内にあるとされて
いますが様々な鉱物が包有されています。
又、ダイヤモンドは炭素(C)から成りますが、炭素には炭素12、炭素13、炭素14と呼ばれる同位体があり、自然界で殆どをしめる炭素12に対しダイヤモンドは希少な13Cも同時に含有しています。13Cを質量分析することによりタイプの判定も可能となります。
・ペリドタイト型
かんらん石、斜方輝石といったかんらん岩に含まれる鉱物を含むもの。13Cの存在分布がMORB(中央海嶺玄武岩)と似ている。
殆どがこちらの型。
・エクロジャイト型
かんらん石、斜方輝石を含まず、パイロープガーネットやカイヤナイトを含む。ペリドタイト型よりも生成年代が比較的若い。ペリドタイト型と比較し、13Cの質量は少ない。滅多に産出されない。

・カーボナードダイヤモンド
例外的存在のダイヤモンド。産出量は少ない。通常のダイヤモンドが単結晶であるのに対し、こちらは微結晶の集合体で多結晶。通常は高圧で結晶するため、孔は殆どないが、このダイヤモンドは多孔質である。
色が黒く、宝飾には殆ど用いられないが、多孔質にもかかわらず、通常のダイヤモンドより割れにくい。工業用で重宝される。13Cの含有は乏しい。成因に関しての仮説がいくつかありますが 現在のところ明確にはなっていません。

どんな岩から採れる?
ダイヤモンドはマグマにより吹き上げられた非常に硬い岩石中(火成岩)にありますが、火成岩は火山岩と深成岩にわけられます。
・火山岩
地表付近まで急速に吹き上げられ、短時間に固まったもの。時間が短いため高温でも結晶化できる鉱物だけが成長できる。
粘度が比較的さらっとしたマグマが固まった場合が多い。
ダイヤモンドはキンバーライト(通常はこの岩石)、ランプロアイト(オーストラリアのアーガイル鉱山が有名
内包物が多く質が劣るものが多いが、非常に珍しいピンクダイヤが採れる事で有名。)といった火山岩内に存在する
他に極稀にエクロジャイトからも産出される。
いづれも非常に硬い種類の岩石で砕石にも大変な費用と技術が必要になります。
・深成岩
地下深くでゆっくりと冷え固まった岩石。地形の隆起などで地表にも現れて見る事ができる。概ねにおいて、鉱物が結晶化できる時間的余裕がある。
粘度が高いマグマが固まったものが多い。

キンバーライト

川崎重工製ダイヤモンド鉱石粉砕機。
右上に見えるのは人。非常に巨大ですね。
アフリカ南部ボツワナの鉱山に納入されました。
生成条件と場所

ダイヤモンドはマントル捕獲物質や鉛(Pb)同位体の測定、同位体(C12,C13)の含有などから年代や場所が推定されています。
通常は上部マントル内(地下百数十km〜二百kmで5〜6万気圧、800℃〜2000℃といった高温、高圧状態です。)で33億年前に生成されたといわれています。
ダイヤモンドは常圧下、大気中では800度付近から酸素と反応し光を放ちながら消えてしまいますが、マントル内では700℃からダイヤモンド結晶が生まれだし
1700℃を越えるあたりからグラファイト(石墨)に変化しだすといわれています。
温度が高すぎても、低すぎてもグラファイト(石墨)になりますし、地中付近まで上昇流が遅いと同様にグラファイトになってしまいます。
地上付近まで一気に上昇しないとダイヤモンドとしての形をなさないのです。
また、例外的に更に深い400〜660Km(13万〜25万気圧、1400℃〜2000℃)の遷移層から下部マントルといった部分で結晶したと考えられるダイヤモンドも発見されています。滅多に見つかりませんが、ダイヤモンドがマントル物質のカプセルとなり地上付近まで吹き上げられたのです。
ダイヤモンドを研究する事でプレートの沈み込みや、マントル物質の相転移、上部と下部マントルの間で移動があるのか、など地球の構造を解き明かす研究が続けられています。


画像はロシアウダーチナヤ・パイプ。
マグマと共に地下から運ばれる為、キンバラーライトは縦にパイプ上にが存在する形となり、このように深く掘る事になります。鉱山周辺には従事者のためにインフラ整備から学校や病院までと町が作られる事もあるようです。     

鉱山で使用されるダンプ。左画像では豆粒のよう。タイヤの直径は4メートル近く一戸建てが動くような感覚ですね。
200tを超える重さでも常に水平に保つよう、非常に優れたサスペンションシステムを搭載しています。
コマツの技術は自動車レースの最高峰F1レースへも技術供与されたほど。正にハイテクダンプです。
画像はコマツ930E。

 画像ではキンバリーパイプを上から採掘(露天掘り)ですが、ある程度から地下坑道で横へ掘り進める採掘もなされるようです。
又、岩石が風雨で侵食され、川に流れ出した漂砂鉱床でダイヤモンド原石を採掘する場合もあります。
露天掘りで鉱石からダイヤモンドが見つかる割合は2000万分の1、更に宝石品質はその2割程度で殆どが工業用になります。
漂砂鉱床では長い年月の間に不純物が自然に削られ、宝石質の割合は3〜4割程度になりますが、砂礫中の確率は約1億分の1の割合といわれます。
更に天然のダイヤモンドの98%は黄色、茶色、黒色といった色合いを持っています。
ブライダルに使えるような品質となるともう奇跡と言っても良い確率ですね。
開発規模、かかる費用が他の宝石と比べ物にならないほど大きい
ので、資源メジャーといわれる巨大資本が携わります。
有名な企業としてALROSA、BHP、Diavik、De Beers、Rio Tintoなどがあります。最大手のDe Beersで昔は世界を独占していましが
現在では30%あまりのシェア、世界中では30社余りの企業が採掘を行っているようです。
例えてみれば他の宝石が家内制手工業とすれば、ダイヤモンドは大規模な工場制手工業。
そのためダイヤモンドの鉱石中に含まれる確立は非常に低いものの、産出量は多くなります。
 
4種類のダイヤモンド

さて、随分と4Cから離れた話になりますがいかがでしょうか。ダイヤモンドの希少性、様々な分野での利用価値を感じて頂けるかと思います。
又、現代では環境面を考慮され、合成のダイヤモンドを作り出され、品質の向上に向けて開発が日々続けられています。
未来には工業用、宝飾全てが合成になる日がくるのかもしれません。天然と合成の鑑別技術も進歩していますのでご安心ください。
ところで、ダイヤモンドは炭素からできている事は良く知られていますが、純粋に炭素だけでなく、結晶時に不純物を含むことが多くなります。
代表的な物として地球上に最も多く存在する物質のひとつ、窒素が原子レベルで炭素原子と1対1で置換され、その分布や量でタイプわけされます。
他に水素、ホウ素を含むものもあり、一方不純物を取り込まないダイヤモンドも存在します。そういった不純物の量で主に4つのタイプに分けられています。
尚、宝石鑑定機関ではフォトルミネッセンス(PL)やラマン顕微装置により天然であることを確認の上、FT-IR分析でタイプの分析も可能です。
非常に高度な分析を要しますし、未だ解明されていない事もあります。弊社も日々勉強を続けております。ダイヤモンドは概ね黄色〜黄褐色を
持つものが多いですが、そ の色に関しても関係ある話ですので、興味の沸いた方はお読み下さいね。

Ta型
Tb型

窒素原子が凝集、偏析した形で集合体を作り、10〜5,500ppm含有する。
(3000ppm以内という説もあります。)
色は無色と淡黄色〜黄褐色が通常である。2つの窒素原子がペアで炭素原子の 空間に入り込むと色に影響は無く無色となる。(Aセンター)
窒素原子が4個もしくはそれ以上の偶数の窒素原子が入り込んだ場合も無色だが 強い青色の蛍光性を示す事が多い。(Bセンター)
窒素原子が3個のグループが入ると淡い黄色や褐色を帯びる。(N3センター)
通常はA、Bと共にN3センターも混在する事が多く無色のダイヤモンドは少なくなる。 中には特殊なタイプとして炭素原子と結合した水素を含むH-rich型も存在する。 ダイヤモンドの中では熱伝導率が800W/(m・K)と劣る。
産出割合では98%がこのタイプだが、貴重な下部マントル起源のものも僅かに 見つかっており非常に興味深い。

窒素原子が置換され単独で存在しているもの。(Cセンター)
窒素含有量は500ppm以内。
色は黄色〜褐色。 窒素濃度が50ppm以内のイエローの場合は色濃く
彩度が高いファンシーインテンスイエローなどの非常に美しい色を呈するダイヤモンドを生む。
ブラウンはタイプIaより色濃い傾向にある。
熱伝導率が800〜2000W/(m・K)。産出量は全体の0.1%未満と極めて少ない。
紫外線で蛍光反応を示す。
合成ダイヤモンドはこのタイプが殆どで注意が必要。

Ua型
Ub型
窒素原子を包有する場合は単独で存在している。
含有する窒素原子は0〜10ppm未満。検出不能といってよいほどの窒素濃度。
色は無色。 ほぼ純粋な炭素成分のためか、良質のダイヤモンドの場合が多い。
下部マントル起源のものも発見されている。
熱伝導率は2000W/(m・K)と優れ、電気の絶縁性にも優れている。
産出量は全体の1〜2%と極めて少ない。


格子結晶の空孔に窒素ではなくホウ素が置換されている。
ホウ素を0.05〜0.06ppmの割合で含有。色は
不純物が少ないため、比較的クラリティの高いブルーダイヤモンドが多い。
炭素は価電数4に対し、ホウ素は3のため、孔(正孔)が生じ
電子が移動する状態がおきる。P型半導体といわれる性質を持つ事で
電子工学分野で強い興味をひきつけている。
産出量は殆ど無いに等しいほど希少。
※ppm(100万分のいくらであるかという割合) 炭素原子100万個に対して何個異種原子が含まれているか。
上記の例で10ppmだと炭素原子100万個に対し10個の窒素原子を含むことになる。
ちなみに1ctのダイヤモンドは「96億×1兆」個の炭素原子から成っています。


黄色以外の色をもつダイヤモンド。
非常に希少で例外的存在。解明されていない事もあるようですので、参考までにどうぞ。

タイプIa型
ピンク、紫色・青色・緑色・黄色〜橙〜褐色、白が存在する。
オーストラリアの アーガイル鉱山のピンクダイヤはIa型であるが非常に強い圧力と緊張が四面の結晶構造の成長中に塑性変形がおき
格子結晶のゆがみが生じる事が原因とされる。
窒素原子が取り込まれ、その隣の炭素原子が欠けること(カラーセンター)で、ピンク色や赤色を呈している。
ブラウンやパープル(赤紫系)も同様の理由による。
極稀に存在するブルー、バイオレット(青紫)のIa型の場合は上記のH-rich型が原因とされる。H-rich型は全般的に灰色味を帯びた色合いが多い。
グリーンは結晶格子中に取り込んだ窒素原子2個にはさまれた炭素原子が欠けることで緑色になる。
自然現象として放射線の影響を受けた後、アニール(加熱)を受けたと考えられている。
白はやはり格子結晶の歪みから生じるグレイニングが原因と考えられています。N(窒素)-V(空孔)において4つの窒素が
ゼリーオパールのようなミルキーな雰囲気の地色を呈し強い蛍光反応を示す場合が多い。

タイプIIa型
極稀にピンク。ピンクはタイプIaのアーガイル産と比較すると明度が高い色相でクラリティーが高い場合が多い。
原因はやはり格子結晶の歪みによる。他に淡いブラウンも存在。

緑に関してはタイプは関係なく、放射線による影響とされています。純粋な緑は滅多に存在せず、他の色と混ざった色相が多くなります。
又、型が混在するMix型のイエローダイヤも存在し、typeIbであったものが、地中で高温高圧の元、分散型の窒素原子が集結しtypeIaになることあるようです。
窒素原子が20%集結するのに、800℃で7500万年、1000℃で17000年、1200℃で34年かかるという実験結果も発表されています。
炭素原子と置換する窒素原子の数や空孔の位置関係で名前(N3センター、N-Vセンターなど)がつけられ、紫外可視分光、赤外線分光といった
装置で特徴的な吸収数値やCL,PLといった検査で構造的な特徴と蛍光反応で分析がなされます。


肉眼でタイプを判断する事は不可能ですし、カラーセンターは様々な色を生み出します。
非常に複雑で専門の研究者でないと理解が困難な部分でもありますので、タイプは気にせず(といってもタイプTa型以外は非常に入手が困難です)
宝石の色や輝きをご覧になってご自身のインスピレーションでお求め頂く事が一番だと思います 。

いかがでしたか。ダイヤモンドは奥が深いですよね。上記の文章でもほんの一部分のご紹介です。
地中深くで気の遠くなるような年月を経て、温度、圧力、時間など条件が整わないと生まれません。
偶然の産物といっても良いほどの確率で生まれるダイヤモンド。
宝石と しても大変魅力のあるものですが、他の事からも興味がつきませんね。
さて、次は本題の4Cをもう少し具体的にご紹介いたします。



4Cカラーの応用編へ





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