地球の構造と主な組成 |
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地球を岩質で分けると左図のようになります。
ただ、層の境目の状態など解明されていない事も多く、皆さんがご存知のようにプレートは海底からマントルへともぐりこみ図のように平らにクッキリと層が分かれるわけではありません。
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時にはダイヤモンドが地球の構造を解く鍵になったりすることもあります。非常に硬く一度ダイヤモンドになると安定しています。そのため生成時にカプセルのような役目を果たし、内包物としてマントル物質を取り込んで産出される事があります。また、炭素を分析、研究する事は最先端技術の発展への可能性も持ち合わせています。 |
包有物によるダイヤモンドのタイプ |
ダイヤモンドはマントル内にあるとされて
いますが様々な鉱物が包有されています。
又、ダイヤモンドは炭素(C)から成りますが、炭素には炭素12、炭素13、炭素14と呼ばれる同位体があり、自然界で殆どをしめる炭素12に対しダイヤモンドは希少な13Cも同時に含有しています。13Cを質量分析することによりタイプの判定も可能となります。 |
・ペリドタイト型
かんらん石、斜方輝石といったかんらん岩に含まれる鉱物を含むもの。13Cの存在分布がMORB(中央海嶺玄武岩)と似ている。
殆どがこちらの型。 |
・エクロジャイト型
かんらん石、斜方輝石を含まず、パイロープガーネットやカイヤナイトを含む。ペリドタイト型よりも生成年代が比較的若い。ペリドタイト型と比較し、13Cの質量は少ない。滅多に産出されない。 |
・カーボナードダイヤモンド
例外的存在のダイヤモンド。産出量は少ない。通常のダイヤモンドが単結晶であるのに対し、こちらは微結晶の集合体で多結晶。通常は高圧で結晶するため、孔は殆どないが、このダイヤモンドは多孔質である。
色が黒く、宝飾には殆ど用いられないが、多孔質にもかかわらず、通常のダイヤモンドより割れにくい。工業用で重宝される。13Cの含有は乏しい。成因に関しての仮説がいくつかありますが
現在のところ明確にはなっていません。 |
4種類のダイヤモンド |
さて、随分と4Cから離れた話になりますがいかがでしょうか。ダイヤモンドの希少性、様々な分野での利用価値を感じて頂けるかと思います。
又、現代では環境面を考慮され、合成のダイヤモンドを作り出され、品質の向上に向けて開発が日々続けられています。
未来には工業用、宝飾全てが合成になる日がくるのかもしれません。天然と合成の鑑別技術も進歩していますのでご安心ください。
ところで、ダイヤモンドは炭素からできている事は良く知られていますが、純粋に炭素だけでなく、結晶時に不純物を含むことが多くなります。
代表的な物として地球上に最も多く存在する物質のひとつ、窒素が原子レベルで炭素原子と1対1で置換され、その分布や量でタイプわけされます。
他に水素、ホウ素を含むものもあり、一方不純物を取り込まないダイヤモンドも存在します。そういった不純物の量で主に4つのタイプに分けられています。
尚、宝石鑑定機関ではフォトルミネッセンス(PL)やラマン顕微装置により天然であることを確認の上、FT-IR分析でタイプの分析も可能です。
非常に高度な分析を要しますし、未だ解明されていない事もあります。弊社も日々勉強を続けております。ダイヤモンドは概ね黄色〜黄褐色を
持つものが多いですが、そ
の色に関しても関係ある話ですので、興味の沸いた方はお読み下さいね。 |
Ta型 |
Tb型 |
窒素原子が凝集、偏析した形で集合体を作り、10〜5,500ppm含有する。
(3000ppm以内という説もあります。)
色は無色と淡黄色〜黄褐色が通常である。2つの窒素原子がペアで炭素原子の
空間に入り込むと色に影響は無く無色となる。(Aセンター)
窒素原子が4個もしくはそれ以上の偶数の窒素原子が入り込んだ場合も無色だが
強い青色の蛍光性を示す事が多い。(Bセンター)
窒素原子が3個のグループが入ると淡い黄色や褐色を帯びる。(N3センター)
通常はA、Bと共にN3センターも混在する事が多く無色のダイヤモンドは少なくなる。
中には特殊なタイプとして炭素原子と結合した水素を含むH-rich型も存在する。
ダイヤモンドの中では熱伝導率が800W/(m・K)と劣る。
産出割合では98%がこのタイプだが、貴重な下部マントル起源のものも僅かに
見つかっており非常に興味深い。
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窒素原子が置換され単独で存在しているもの。(Cセンター)
窒素含有量は500ppm以内。
色は黄色〜褐色。
窒素濃度が50ppm以内のイエローの場合は色濃く
彩度が高いファンシーインテンスイエローなどの非常に美しい色を呈するダイヤモンドを生む。
ブラウンはタイプIaより色濃い傾向にある。
熱伝導率が800〜2000W/(m・K)。産出量は全体の0.1%未満と極めて少ない。
紫外線で蛍光反応を示す。
合成ダイヤモンドはこのタイプが殆どで注意が必要。 |
Ua型 |
Ub型 |
窒素原子を包有する場合は単独で存在している。
含有する窒素原子は0〜10ppm未満。検出不能といってよいほどの窒素濃度。
色は無色。
ほぼ純粋な炭素成分のためか、良質のダイヤモンドの場合が多い。
下部マントル起源のものも発見されている。
熱伝導率は2000W/(m・K)と優れ、電気の絶縁性にも優れている。
産出量は全体の1〜2%と極めて少ない。
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格子結晶の空孔に窒素ではなくホウ素が置換されている。
ホウ素を0.05〜0.06ppmの割合で含有。色は青。
不純物が少ないため、比較的クラリティの高いブルーダイヤモンドが多い。
炭素は価電数4に対し、ホウ素は3のため、孔(正孔)が生じ
電子が移動する状態がおきる。P型半導体といわれる性質を持つ事で
電子工学分野で強い興味をひきつけている。
産出量は殆ど無いに等しいほど希少。
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※ppm(100万分のいくらであるかという割合) 炭素原子100万個に対して何個異種原子が含まれているか。
上記の例で10ppmだと炭素原子100万個に対し10個の窒素原子を含むことになる。
ちなみに1ctのダイヤモンドは「96億×1兆」個の炭素原子から成っています。 |
黄色以外の色をもつダイヤモンド。
非常に希少で例外的存在。解明されていない事もあるようですので、参考までにどうぞ。
タイプIa型
ピンク、紫色・青色・緑色・黄色〜橙〜褐色、白が存在する。
オーストラリアの
アーガイル鉱山のピンクダイヤはIa型であるが非常に強い圧力と緊張が四面の結晶構造の成長中に塑性変形がおき
格子結晶のゆがみが生じる事が原因とされる。
窒素原子が取り込まれ、その隣の炭素原子が欠けること(カラーセンター)で、ピンク色や赤色を呈している。
ブラウンやパープル(赤紫系)も同様の理由による。
極稀に存在するブルー、バイオレット(青紫)のIa型の場合は上記のH-rich型が原因とされる。H-rich型は全般的に灰色味を帯びた色合いが多い。
グリーンは結晶格子中に取り込んだ窒素原子2個にはさまれた炭素原子が欠けることで緑色になる。
自然現象として放射線の影響を受けた後、アニール(加熱)を受けたと考えられている。
白はやはり格子結晶の歪みから生じるグレイニングが原因と考えられています。N(窒素)-V(空孔)において4つの窒素が
ゼリーオパールのようなミルキーな雰囲気の地色を呈し強い蛍光反応を示す場合が多い。
タイプIIa型
極稀にピンク。ピンクはタイプIaのアーガイル産と比較すると明度が高い色相でクラリティーが高い場合が多い。
原因はやはり格子結晶の歪みによる。他に淡いブラウンも存在。
緑に関してはタイプは関係なく、放射線による影響とされています。純粋な緑は滅多に存在せず、他の色と混ざった色相が多くなります。
又、型が混在するMix型のイエローダイヤも存在し、typeIbであったものが、地中で高温高圧の元、分散型の窒素原子が集結しtypeIaになることあるようです。
窒素原子が20%集結するのに、800℃で7500万年、1000℃で17000年、1200℃で34年かかるという実験結果も発表されています。
炭素原子と置換する窒素原子の数や空孔の位置関係で名前(N3センター、N-Vセンターなど)がつけられ、紫外可視分光、赤外線分光といった
装置で特徴的な吸収数値やCL,PLといった検査で構造的な特徴と蛍光反応で分析がなされます。
肉眼でタイプを判断する事は不可能ですし、カラーセンターは様々な色を生み出します。
非常に複雑で専門の研究者でないと理解が困難な部分でもありますので、タイプは気にせず(といってもタイプTa型以外は非常に入手が困難です)
宝石の色や輝きをご覧になってご自身のインスピレーションでお求め頂く事が一番だと思います
。
いかがでしたか。ダイヤモンドは奥が深いですよね。上記の文章でもほんの一部分のご紹介です。
地中深くで気の遠くなるような年月を経て、温度、圧力、時間など条件が整わないと生まれません。
偶然の産物といっても良いほどの確率で生まれるダイヤモンド。
宝石と
しても大変魅力のあるものですが、他の事からも興味がつきませんね。
さて、次は本題の4Cをもう少し具体的にご紹介いたします。
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