さて、少し話が外れましたが、4Cの事をもう少し掘り下げていきますね。GIAの評価基準は昔からずっと同じというわけでなく
世の中のニーズや科学技術の発達による分析機器の向上、そういったものでずっと同じではありません。
クラリティーの名称が変わったり、カット評価に関しても機械とアプリケーションソフトを利用するようになりました。
とはいえ、過去の基準が全く役に立たないほど大幅に変わってしまうわけではありません。そこには長年の研究と積み重ねがあります。
ダイヤモンドは4Cの評価としては同じ結果でも、その結果には内容があり項目検査による総合判断で決められます。
工業製品とは異なり、
1石1石個性を持つのが天然宝石です。
最大の消費国、米国ではFTC(Federal Trade Commission 連邦取引委員会)が非常に厳しく、消費者保護が根付いていて
様々な規定があるようです。GIA G.G資格は日本では一民間資格ですが、米国では大変権威のある資格として認知されています。
日本もジュエリー消費国としては大きな市場となり、日本においては、AGL(宝石鑑別団体協議会)、JJA(日本ジュエリー協会)はG I A本部協力のもと
平成8年9月からこの制度のもとダイヤモンドのカラーグレードの平準化へ向けて動き出しました。
いづれも、ジュエリーに関して公正な情報開示による消費者保護と業界の健全な発展を目的とする社団法人です。
それでは、具体的に検査項目をご紹介していきますね。
マスターストーン(GIA資料より。インフォメーション米国内(800)421-7250)
・最小0.25ct(0.30-0.40ctが好ましい)
・クラリティSI1以上
・カラー 無色〜ライトイエロー、無色〜ライトブラウンの範囲のみ
・カット ラウンドブリリアントのみ
・プロポーション クラウン高さ:12-16%、パビリオン深さ:41-45%、ガードル:薄い〜厚い
・数 3個〜5個(または、それ以上)
キャラット(AGL基準)
1ct=0.2gで小数点以下第三位までを表示する。但し、小数点以下第3位を切り捨てて小数点以下第2位までの表示も可とする。
小数点以下第2位表示の場合は、第3位を八捨九入(例0.998ct⇒0.99ct 0.999ct⇒1.00ct)とする。
複数石をまとめて計測する場合は、その旨を正確に表記する。
カラー
環境、検査における注意点
・マスター、検査石共に綺麗にされた状態である事。(マスターは硫酸に入れて煮沸洗浄する。)
・検査石のクラリティを決め、プロッティング(内包物の位置や種類を記載する事。)をしておく。
・検査石の蛍光検査をする。(なし、フェイント、ミディアム、ストロング、ベリーストロング)
・鈍いホワイトの背景のものにマスターを左端に最も明るい色、右に行くほど暗くなるよう約1.3cm間隔に並べる。
・マスターをガードル面と平行、又はパビリオンファセットに垂直の方向からパビリオンを見る事ができるように
グレーディング面に置く。
・検査石をこの列に沿って移動させ、パビリオン〜パビリオン全体、又は対応する部分の色を比較する。
・検査石はマスターと同じ位置に保ち、可能な限り近づけるが、マスターとは接触させない事。
・検査石を最も近いマスター2石と比較し、最も色が近いマスターを見つけカラーグレードを指定する。
・再検査しマスターと検査石が入れ替わっていない事を確認する。
以下AGL(宝石鑑別団体協議会)より引用
・カラー グレードがDからJカラーに該当する場合は、その結果と共にJJA/AGL認定マスター ストーン セット番号を記載する。
すべてのカラー グレードについてカラー オリジン(色の起源)を結果の近くに記載する。
・グレーディングに使用される部屋は暗くし、グレーディングに使用する光源以外の光を最小限にとどめる。
・大きいサイズ、小さいサイズにかかわらず、マスター ストーンと比較し見えた通りでカラー グレードを決定する。
石の大きさを考慮し個々人の判断によるグレードの調整は一切行わない。
・インクルージョン(黒色等)を有する石のグレーディング
基本的には黒色等のインクルージョンは無視し、地色にてカラー グレードを決定する。
ただし、地色が判断できないほど夥しいインクルージョンが存在する場合は、グレーディング不可とする。
ややインクルージョンの影響があり、カラー グレードのばらつきを生ずる可能性のある石の場合
ソーティングによる提示は不可としグレーディング レポートで対応しコメントを記載する。
[コメント]
グレーディング レポート:インクルージョンの影響により、カラー グレードに差異を生ずる場合があります。
・認定マスター ストーンがEからZまで完全に揃うまでの対応
ベース カラーがYellow又はBrownで、カラー グレードがNからZに該当する場合は、Underを冠してカラー グレードを表記する。
尚、ベース カラーがGrayの場合はUnderを冠しない。
例:Underを冠する場合 −Under N (Very Light Grayish Yellow)
Underを冠しない場合−Very Light Yellowish Gray
N以下(Yellow系)のグレーディング
・D−M:単独のアルファベットで表示
・N−R:Under N、またはUnder N (Very Light Yellow)
・S−Z :Under S、またはUnder S (Light Yellow)
Brown、Gray系のグレーディング
Brown、Grayの濃さを黄色味に置き換えてグレーディングする。
DからJでBrownish、Grayishなどグレードにばらつきが生ずる可能性のある場合は、ワークシートに特徴を記録する。
Brown系
・K−M:結果に応じて K (Faint Brown)、
L (Faint Brown)、
M (Faint Brown)
・N−R: Under N (Very Light Brown)
・S−Z: Under S ( Light Brown)
Gray系
・K−M:アルファベット表示はせず、Faint Grayと表示する。
・N−R: Very Light Gray
・S−Z: Light Gray
・ カラー グレーディング時の観察方向
ラウンド
ダイヤモンドのカラー グレードを行うには、パビリオン面に垂直方向から石の中央部を観察する。
ファンシー カット
石をフェイスダウンにして双方の対角線方向から観察する。
次いでフェイスアップでも検査する。フェイスダウンよりカラーが濃く見えたならば、グレード調整を行う。
ただし、1グレード以上グレードを調整してはいけない。
g) カラー グレーディング時の観察方向
g−1. ラウンド
ダイヤモンドのカラー グレードを行うには、パビリオン面に垂直方向から石の中央部を観察する。
g−2. ファンシー カット
石をフェイスダウンにして双方の対角線方向から観察する。次いでフェイスアップでも検査する。フェイスダウンよりカラーが濃く見えたならば、グレード調整を行う。ただし、1グレード以上グレードを調整してはいけない。
・蛍光性に関するコメント
None(なし) ⇒ None なし
Faint(弱) ⇒ Faint 弱い 弱
Medium Medium Blue ⇒ 青色 青色
Strong(強) ⇒ Strong Blue 強い青色 青色(強)
Very strong(鮮) ⇒ Very strong Blue 鮮青色 青色(鮮)
*Faintの場合は、蛍光色の表記は任意とする
イエロー、ブラウン以外の ファンシー カラーの用語統一
ここで少し補足しますと、カラーダイヤモンドの場合、黄色や褐色系はマスターストーンの”Z”の範囲を超える色に対し
Fancyグレードがつく(カラーダイヤモンドとして認められる扱い)事になりますが、他の色相(上記のピンクなど)はほんの少しでも
色づいているとカラーダイヤモンドの扱いになります。存在があまりに少ないためでもあります。
具体的にはイエローでもfaint〜Fancy vivid等のグレードがありますが、例えばK-Mの薄い黄色(faint Yellow)の場合はカラーダイヤモンドとしては
扱われず、Zを超える彩度、濃度のFancyと名のつくグレードだけがカラーダイヤモンドとなります。
一方、他の色は滅多に産出されないこともあり、例えば faint pink、faint blue といったグレードでもそれぞれピンクダイヤ、ブルーダイヤとして扱われます。
又、下記の色相で混同されやすいものとして、例に挙げると
Orange(橙。オレンジダイヤの扱い)
Yellowish Orange(黄色がかった橙。オレンジダイヤの扱い)
Yellow-Orange(黄と橙が同等の中間色でわずかに橙が強い。オレンジダイヤの扱い)
Orange-Yellow(黄と橙が同等の中間色でわずかに黄が強い。イエローダイヤの扱い)
Orangy YellowまたはOrangish Yellow(橙がかった黄色。イエローダイヤの扱い)
となります。
黄色〜グリーン系も同じです。Green-Yellowはイエローダイヤ、Yellow-Greenはグリーンダイヤとなります。
とはいえ、この2つ見慣れない人が例えばYellow-Green1石だけをみるとイエローダイヤと思われるかもしれません。
並べると明らかに緑味を感じますが、本当に微妙で繊細な色合いです。
それ以外にはRedに関しては例外的に明度や彩度のグレードはつきません。
色相のみで「Fancy Red」、「Fancy Purplish Red」、「Fancy Orangy Red」の表記となります。
色というのは人間の目の癖や光源でもかわり専門の研究機関(日本色彩研究所など)があるほど難しく繊細です。
主観も入りますので客観的な基準による判断が必要になります。
マンセルのカラーチャートとマスターストーンを基準に判定がなされます。
a) 色相として使用する用語とマンセル表示
RがRed、YがYellow、GがGreen、BはBlue、PがPurpleを示します。
Red (Pink) 2.5R〜7.5R Orangy Red (Orangy Pink)7.5R〜.5YR
Reddish Orange (Pinkish Orange) 2.5YR〜5YR Orange 5YR〜7.5YR
Yellowish Orange 7.5YR〜10YR Yellow Orange 10YR〜2.5Y
Orange Yellow 2.5Y〜5Y
Orangy YellowまたはOrangish Yellow 5Y〜7.5Y
Yellow 7.5Y〜2.5GY
Greenish Yellow 2.5GY〜5GY
Green-Yellow 5GY〜7.5GY
Yellow-Green 7.5GY〜10GY
Yellowish Green 10GY〜5G
Green 5G〜10G
Bluish Green 10G〜5BG Blue-Green 5BG〜10BG
Green-Blue 10BG〜5B
Greenish Blue 5B〜10B
Blue 10B〜5P8
Violetish Blue 5PB〜7.5PB
Bluish Violet 7.5PB〜10PB
Violet 10PB〜5P
Purple 5P〜10P
Reddish Purple (Pinkish Purple) 10P〜2.5RP
Red-Purple (Pink-Purple) 2.5RP〜5RP
Purple-Red (Purple-Pink) 5RP〜7.5RP
Purplish Red (Purplish Pink) 7.5RP〜2.5R
b) その他の用語
White、
Black、
Gray、
Brown
c) グレード用語及びガイド ライン

Faint :フェイスアップで色相が認識できず、フェイスダウンでは概ね認識できる。
Very Light :フェイスアップで色相が概ね認識でき、フェイスダウンでは認識できる。
Light :フェイスアップで色相が認識でき、フェイスダウンでは明瞭に認識できる。
Fancy Light :フェイスアップ及びフェイスダウンで色相が明瞭に認識できる。
Fancy :明度が中程度から高く、彩度が中程度から低い。
Fancy Intense :明度、彩度共に中程度から高い。
Fancy Vivid :明度が中程度から高く、彩度が非常に高い。
Fancy Dark :明度、彩度共に低い。
Fancy Deep :明度が中程度から低く、彩度が中程度から高い。
以上がカラーに関する主な評価基準です。最近は人為的な処理により色を変化させる事も可能になってきています。
3つのタイプが認識されています。AGL加盟の鑑定機関では色の起源も検査し、人為的照射、高温高圧プロセスなどが記載され
放射線残留量に対しても安全かどうか検査されています。
1. 放射線を照射する。
典型的なのがブルー〜グリーニッシュブルーに変化させたものです。
2.HPHT(高温高圧)プロセス
非常に高温、高圧下に置き、マントル内の自然環境下に近い環境へ戻すことで格子結晶の歪みを変化させて色を変えます。
具体的にはTypeIa型⇒黄緑色(TypeIa)や濃い黄色(TypeIb)へ、TypeIIa型の褐色、⇒無色(TypeIIa)へ
TypeIIb型の褐色、⇒青色(TypeIIb)へと変化させる事が可能です。
HPHT処理は淡褐色や淡黄色の物を本来あった姿へ戻すという意味合いを持ちますが
検査はされます。
3.コーティング
石の表面をコーティングすることで色をつける。
いづれも、元は淡い黄色〜褐色の石を無色やその他の色合いへと見せる事が目的とされているようです。
又カラーダイヤモンドの色の分布が不均一な場合やカメレオンと呼ばれる色が変化するものもコメントで記載がなされます。
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