アフターサービス



ダイヤモンドの美しさと4C-カット応用編

 それではいよいよ残り一つの4C要素、カットについて掘り下げてご紹介したいと思います。
カットはダイヤモンドの4Cの内、人間が関与する部分であり、他の3つのCに重大な影響を及ぼします。
それでは日本のAGL基準のご紹介をしていきます。

カットの総合評価はDからZカラーに該当する標準的なラウンド ブリリアントに限り行う。
ファンシー カットへの評価は一切行わない。
カットの総合評価はGIA カット グレーディング システムを基準とし、ダイヤモンド グレーディング レポートに「カット グレードの決定には、GIA FacetwareTM Cut Estimatorデータ ベースを使用しています。」のコメントを明記する。

GIAと基本的に同じですが、異なる部分として0.18ct以下のものでもグレーディング依頼が可能です。
0.1ct以上が現実的です。

カット グレード レファレンス チャート

EXCELLENT VERY GOOD GOOD FAIR POOR
全体の深さ
57.5%〜63.0%
56.0%〜64.5%
53.0%〜66.5%
51.1%〜70.9%
51.1%未満、70.9%超
テーブル%
52%〜62%
50%〜66%
47%〜69%
44%〜72%
44%未満、72%超
クラウン角度
31.5°〜36.5°
26.5°〜38.5°
22.0°〜40.0°
20.0°〜41.5°
20.0°未満、41.5°超
パビリオン角度
40.6°〜41.8°
39.8°〜42.4°
38.8°〜43.0°
37.4°〜44.0°
37.4°未満、44.0°超
クラウン高さ%
12.5%〜17.0%
10.5%〜18.0%
9.0%〜19.5%
7.0%〜21.0%
7.0%未満、21.0%超
スター長さ%
45%〜65%
40%〜70%
様々な値
様々な値
様々な値
ロワーガードル長さ%
70%〜85%
65%〜90%
様々な値
様々な値
様々な値
ガードル厚さ
薄い〜やや厚い
極端に薄い〜厚い
極端に薄い〜
非常に厚い
極端に薄い〜
極端に厚い
極端に薄い〜
極端に厚い
ガードル厚さ%
2.5%〜4.5%
2.5%〜4.5%
0.0%〜7.5%
0.0%〜10.5%
0.0%〜10.5%超
キューレット サイズ
なし〜小さい
なし〜ミディアム
なし〜やや大きい
なし〜非常に大きい
なし〜極端に大きい
ポリッシュ
EX〜VG
EX〜G
EX〜F
EX〜F
EX〜P
シンメトリー
EX〜VG
EX〜G
EX〜F
EX〜F
EX〜P

注意:カット グレード レファレンス チャートは、各グレードに属するパラメータの最大範囲を示している。GIA カット グレーディング システムは条件合致方式ではなく、各パラメータ値の組み合わせによりグレードが決定されるため、全てのパラメータが範囲内であっても下位のグレードに評価されることがある。

上の表はグレードごとの各パラメーターの許容値範囲になりますが、ある項目がEXCELLENTであっても、別の項目がその他の場合であること
多々あります。
上記パラメータを利用し総合的なカットグレード判定を導くまでには 各項目の組み合わせは膨大であると想像できますね。
小さな石のファセットの角度であったり、サイズを%で測定するわけですので
0.1ないし0.01mm以下の極微小な違いをデータ化し、光学的理論に基づいて判定がなされています。
もちろん、プログラムのアルゴリズムやソースコードを公開するようなものですので
 内部の理論は公開されていませんが、38,586,240通りから判定されます。


 プロポーション、フィニッシュの定義と表示法
全体の深さ
全体の深さとはテーブルからキューレットまでの深さを平均ガードル直径に対するパーセンテージで表したもの。
小数点第2位を四捨五入して小数点第1位まで求める。

クラウン角度
ベゼル ファセットとテーブル面のつくる角度。 クラウン角度は0.5°刻みで表す。

パビリオン角度
テーブル面とパビリオン メイン ファセットのつくる角度。 パビリオン角度は0.2°刻みで表す。

クラウン高さ
平均ガードル直径に対するクラウンの高さの割合。 クラウン高さパーセンテージは0.5%刻みで表す。

パビリオン深さ
平均ガードル直径に対するパビリオン深さのパーセンテージ。 パビリオン深さは0.5%刻みで表す。

テーブル径
平均ガードル直径に対するラウンド ブリリアントのテーブル直径パーセンテージ。
テーブルの対角線4箇所の平均の長さをテーブル径とする。
テーブル径を平均ガードル直径で割った数字を%で表したもの。小数点第1位を四捨五入し整数のテーブル%にする。

スター長さ
水平方向に投影したガードルからテーブル ファセットエッジまでの距離に対するスター ファセットの長さパーセンテージ。
スター長さは5%刻みで表す。

ロワー ハーフ長さ
水平方向に投影したガードルからキューレットまでの距離に対するガードルからロワー ガードルファセット先端までの距離パーセンテージ。
ロワー ハーフ長さは5%刻みで表す。

キューレット サイズ (パビリオン メイン ファセットが集中しているダイヤモンド底部の小さいファセットのサイズ。)
None (なし) :10倍拡大で、キューレットなし、または研磨されず残っている白色の研磨痕や先端の欠け。
Very small (非常に小さい) :10倍拡大でかろうじて見える。
Small (小さい) :10倍拡大で見えにくい。
Medium (ミディアム) :10倍拡大で明瞭。
Slightly large (やや大きい) :10倍拡大でやや顕著。
Large (大きい) :10倍拡大で顕著。
Very large (非常に大きい) :10倍拡大で非常に顕著。
Extremely large(極端に大きい) :10倍拡大で極めて顕著。


ガードル厚
ガードル谷部の最小と最大の厚さを以下の記述用語の何れかで表す。
Extremely thin (極端に薄い) :10倍拡大でナイフエッジと呼ぶ極細線。
Very thin (非常に薄い) :10倍拡大で微細線。
Thin (薄い) :10倍拡大で細線。
Medium (ミディアム) :10倍拡大で明瞭な線。
Slightly thick (やや厚い) :10倍拡大でやや顕著。
Thick (厚い) :10倍拡大で顕著。
Very thick (非常に厚い) :10倍拡大で非常に顕著。
Extremely thick(極端に厚い) :10倍拡大で極めて顕著。
CHIPPED CULET(欠けたキューレット) ABRADED CULET(摩耗したキューレット)
平均ガードル直径
ラウンド ブリリアント石の最小ガードル直径と最大ガードル直径を足して2で割った数値。
ミリメーター単位で測定し、小数点第3位を四捨五入して小数点第2位までを求める。

ガードル厚さパーセンテージ
平均ガードル直径に対するガードル山部の平均パーセンテージ。
ガードル厚さパーセンテージは0.5%刻みで表す。

ポリッシュ 用語及びガイドライン
Excellent (優秀) :ポリッシュ特徴が全く見つからないものから、数個の僅かな特徴があってもフェイスアップ10倍拡大で
何処にあるか発見の困難な程度である場合。
Very Good (優良) :フェイスアップ10倍拡大で数個の軽度な特徴が見られる場合。
Good(良好) :フェイスアップ10倍拡大で特徴が明瞭に見える部分がある場合。肉眼で見て、石の光沢の程度に影響を与えているかもしれない。
Fair (可) :フェイスアップ10倍拡大で重度の特徴が顕著に見える部分がある場合。 肉眼で見て、光沢の程度に影響を与えていることがわかる。
Poor(不可) :フェイスアップ10倍拡大で重度の特徴が非常に顕著に見える。肉眼で見て光沢の程度に明らかに影響を与えていることがわかる。

ポリッシュの評価は、以下の特徴に基づいて行う。特徴の詳細は、クラリティー特徴の要約を参照。
アブレージョン(Abr)、 リザード スキン(LS)、 ニック(Nk)、 ピット(Pit)、 ポリッシュ ライン(PL)、 ラフ ガードル(RG)、スクラッチ(S)
ポリッシュ マーク(PM)

シンメトリー 用語及びガイドライン
Excellent (優秀):10倍拡大でシンメトリー特徴が認められないものから、発見が困難な僅かなシンメトリー特徴がある。
Very Good (優良):フェイスアップ10倍拡大で軽度なシンメトリー特徴がある。
Good (良好):フェイスアップ10倍拡大で明瞭なシンメトリー特徴がある。 肉眼で見て全体の外観に影響を及ぼしているかもしれない。
Fair (可):フェイスアップ10倍拡大で顕著なシンメトリー特徴がある。 肉眼で見て、全体の外観にしばしば影響を及ぼしている。
Poor (不可):フェイスアップ10倍拡大で非常に顕著なシンメトリー特徴がある。 肉眼で見て全体の外観にあきらかに影響を及ぼしている。

シンメトリーの評価は、以下の特徴に基づいて行う。
アウト オブ ラウンド ガードル(OR):ガードルの輪郭が丸みにかけ正円に見えない特徴で、円周の一部が平たくなっていることもある。

テーブル オフセンター(T/oc):テーブルがクラウンの中心部に位置していない。 キューレット オフセンター(C/oc):中心からずれたキューレット。

テーブル/キューレット アライメント(T/C):テーブルとキューレットが正しい位置から互いに反対方向に移動している。

ウェービー ガードル(WG):ガードル面が平面的でなく波打っている。

テーブル&ガードル ノット パラレル(T/G):テーブ面とガードル面が平行でない特徴。傾斜したテーブルとも表記される。

ガードル厚さのばらつき(GTV):ラウンド ブリリアントにおいてクラウン部とパビリオン部の間の厚さにばらつきが認められる。

クラウン角度のばらつき(CV):ラウンド ブリリアントの8つのクラウン角度間にばらつきが認められる特徴。主としてT/ocと関係する。

パビリオン角度のばらつき(PV):ラウンド ブリリアントの8つのパビリオン角度間にばらつきが認められる特徴。主としてT/ocと関係する。

ミッシング ファセット(MF):あるべきところにファットが刻まれず、欠如している。

エキストラ ファセット(EF):カッティングスタイル上必要とされていないファセットのことで、主にガードル近辺に見られる。
クラリティー グレードのIFグレード決定に関与した場合を除き、シンメトリーの項目で考慮する。

正八角形でないテーブル(T/oct):各辺の長さが不等長で、キューレットをはさんで向かい合って
いる辺が平行ではない形の崩れた八角形。その結果、スターやベゼル ファセットの形状も崩れてくる。

形状の崩れたファセット(Fac):適切な形ではないファセットあるいは同種のファセット同士が合同ではない特徴を指す。

ノン ポインティング(Ptg):先端が一点に集まっていない「オープンファセット」と呼ばれる特徴や、しかるべき位置に先端が到達していないファセットのこと。

クラウン ファセットとパビリオン ファセットの配列ずれ(Aln):取引では「ツイスト」と呼ばれる特徴で、クラウンとパビリオンのファセットが
お互いに向かいあっているべきなのだが、ベゼル ファセットの下端の尖った点とパビリオンメインの上端の尖った点や
アッパー ガードルファセット稜線のロワー ガードル稜線が対向していない特徴を指す。

ペインティングとディギングアウト
ペインティングやディギングアウトを施すことにより研磨ダイヤモンドにより多くの重量を残すことが出来るが、フェイスアップの外観には
マイナスの影響を与える。カットの総合評価はペインティングやディギング アウトを考慮し決定する。

ペインティング
アッパーあるいはロワー ガードル ファセットをベゼルまたはパビリオン メイン方向に傾斜をつけて磨く。ペインテッド ガードルのダイヤモンドでは
隣接するアッパーの稜線とガードルが接する部分と隣接するロワー ガードル ファセットの稜線とガードルが接する部分の厚さが
ベゼルとパビリオン メイン ファセットの先端が対向する部分の厚さより厚くなる。

ディギング アウト
ペインティングの反対でアッパーまたはロワー ガードル ファセット、あるいはその両方をベゼルまたはパビリオン メイン ファセットから離れる方向、つまり隣接するアッパーやロワー ガードル方向に傾斜をつけて磨く。ディギング アウトされたラウンド ブリリアント石のガードルは、ベゼル ファセットの先端とパビリオン メイン ファセットの先端の対向する部分の厚さが、隣接するアッパーの稜線とガードルが接する部分と隣接するロワー ガードル ファセットの稜線がガードルと接する部分の厚さより厚くなる。

ペインティング、ディギングアウトはその程度により4段階(Negligible(Excellent),Moderate(Very Good)
Significant(Good),Severe(Fair))に評価し、より顕著な場合はPoorとする。
それぞれ該当するレベルが当該ダイヤモンドの最高カット グレードとなる。

ペインティング、ディギングアウトは新しく評価基準に加えられた項目です。
文章では理解しづらいので、少しご説明しますね。

一言で言えば、ガードルを厚くして、ct数を増やすことです。
通常ガードルは下画像の緑丸と赤丸部分は同じ厚みで一周にわたり山と谷がバランスよく繰り返されます。

ペインティング ディギングアウト
上画像の緑丸の部分の1箇所ないし
複数個所に厚みを持たせます。
フェイスアップに影響を与え
非対称に施された場合は、シンメトリーにも影響し
適切な光の反射が保たれず、極端に厚みがある
場合はファセットが少ない事と同じような影響となり
輝きに影響する場合があります。
上画像の赤丸の部分の1箇所ないし
複数個所に厚みを持たせます。
フェイスアップに影響を与え
非対称に施された場合は、シンメトリーにも影響し
適切な光の反射が保たれず
クラウン側になされるとアッパーガードルファセット
が暗くなり、パビリオン側では
全体が灰色がかって見える場合があります。

ペインティングやディギングアウトに関してはレポートやソーティングカードにコメントがつきます。
[コメント] グレーディング レポート:カット グレードは、ブリリアンティアリングに基づいています。
Cut grade affected by brillianteering.
ソーティング メモ:P/D

オールドオールド ヨーロピアン ブリリアント
以下の4項目中3項目に該当する場合は、オールド ヨーロピアン ブリリアント(OLD EUROPEAN BRILLIANT)とする。
尚、オールド ヨーロピアン ブリリアントは標準的なラウンドブリリアントカットとみなさない。
・テーブル(%) ≦53%
・クラウン角度(°) ≧40°
・ロワー ハーフ(%) ≦60%
・キューレット サイズ ≧Slightly large

パラメーターではイメージしにくいので、オールドヨーロピアンカットついて少し触れておきます。
このカットは 現代のラウンドブリリアントの元となったカットで、18世紀後半頃に考案され
19世紀には主流となっていたカットです。同じ58面ですが、テーブルが小さく、クラウンが高く
深いパビリオンと開いたキューレットでカットされています。
原石をそれ以前よりも効率よくカットした形で、それまではみられなかったシンチレーションを引き出したことにも成功しています。
ファイアも顕著ですので、本来のカラーを分かりにくくする効果もあります。
ただ、ct数の割りにガードル直径が短く、小さく見える事と、現代の電気照明ではフェイアップでキューレットが写りこんで
しまいます。
又、パビリオンメインが大きいため内部での反射が減少し、パビリオンから抜ける光が多くなります。
当時19世紀はガス灯やキャンドルライトといった柔らかな照明でしたので、欠点よりも長所がよく引き出されていた事と思われます。
これはこれで魅力があり、グレードが全てを表さないところがカットの奥深いところです。

その他

1. ガードル刻印
ガードル刻印のコメントを記載する。
フェイスアップで認められず、ガードル幅内に限定されたレーザー刻印は、フローレス(FL)の範囲内とする。
[コメント]
備考:ガードル刻印を認む

2. テーブル上の表示
10倍で深さが確認出来ない場合、ブレミッシュとみなし備考欄にコメントを記載する。
グレーディング レポート発行時は、備考欄にコメントを記載する。
[コメント]
備考:テーブルに表示を認む

3. レーザー溝(Laser groove)の取り扱い
レーザー溝はポリッシュの評価項目とする。
ただし、深さが確認される場合にはクラリティー特徴とする場合がある。
ワークシートに記録を残し、コメントの記載は不要とする。
以上がAGLの評価基準です。次はハート&キューピッドについて触れます。

ハート&キューピッド(ハート&アロー)

ハート&キューピッド(H&C)は特殊なスコープで見るとテーブル面からみると
8本の矢が見え、反対にパビリオン側から見ると8つのハートが見えるダイヤモンドです。
カットグレードの国際基準としては通用しませんが、キューピッドが矢でハートを射るイメージが魅力的で
人気があることから認知度は世界的に広まっています。名称が
ハート・アンド・アロー鰍ノ登録商標になされた為、ハート&キューピッド(中央宝石研究所の登録商標)
Hearts&Arrows、Hearts on Fireなど様々に登録商標にされたりブランド化されています。

この現象が発見されたのは比較的最近で、 カットの理想形の話にも関わってきます。
様々な数学者が研究してきた理想のカットは次ページで紹介します。
ダイヤモンドはカットすること事態が困難でした。ダイヤモンド自体は13世紀頃から欧州へ広まりだしていましたが
現在のラウンドブリリアントカットにできるようになったのは20世紀からとつい最近のことです。
ダイヤモンドの歴史は欧州が中心になりますが、H&C(H&A)は1970年代に日本で発明されたスコープが発端で
カットに研究が重ねられ、1980年代後半から世界に広がりました。

テーブル面から見た図 パビリオンから見た図
8本の矢軸と矢先が綺麗に反射し
8本の矢の位置、形状が対称になっています。
8つのハートと根元のV字マークが綺麗に反射し
対称になっています。 

H&Cが出るカットはシンメトリーが整っていない場合、矢軸と矢先の位置がずれたり非対称になる
パビリオンではハート(クレフト)が初心者マークのようになったり、完全に出ない
一見出ているようでもハートの位置が付け根のV字パターンと左右バランスがくずれていたりと様々です。
本当に評価が出る石はほんの僅かしか存在しません。
また、内包物も影響しますので、質が良いダイヤモンドでないと現れないことも事実ではあります。

ただし、
H&Cはシンメトリーが優れているといった事をあらわすだけですので、カットグレーディングとしては
必ずしもExcellentで判定されないことがあります。Very Goodでも良く見られすし、テーブルの広さが
合えばGoodでも見られる可能性があります。2004年、International Diamond Cut Conference(国際ダイヤモンドカット会議)で
南アフリカのBrian GavinというダイヤモンドカッターがH&Aのグレーディングを提唱しましたが
今のところは鑑定機関で国際的に通用するグレードではありません。

参考までにGIAではH&Cはグレードとして表記はしません。一方、欧州のHRDという大手機関ではオプション的な
サービスとして別途行っています。日本の鑑定機関ではH&Cの歴史が日本から始まった事や市場のニーズからも
HRD同様に別サービスで行っている場合が多いです。
前述のとおり本国GIAでは行っていませんが、GIA Japanの鑑定、鑑別部門のAGTでは華標レポート
中央宝石研究所ではハートハート&キューピッドレポートとして依頼すれば発行していただけます。
ただ、認定基準は鑑定機関ごとの独自のものとなります。参考程度にお考えいただけたらと思います。


カットは一番大切とご紹介したのですが、実は一番複雑で何が優れているとも断定しにくい部分があります。
それはカットのページやオールドヨーロピアンカットのところでも触れましたが、主観の問題でもあるからです。
ラウンドブリリアントは代表的なカットですが、歩留まりが悪く原石の形によっては他のカットにされる事があります。
特にカラーダイヤモンドの場合は存在そのものが極めて稀なため、歩留まりが最優先と言っても良いくらいになります。
又、歴史に名が残るような大きなダイヤモンドも、原石を活かしたカットにされるため様々な形にカットされています。
4Cとは少し別の話ですが、ダイヤモンドにされる一般的な種類のカットをご紹介します。


 エメラルドカット
 最も一般的なステップカット(ファセットが側面のガードルに対して平行に削られている)ですが
ファセットが50面と少なめですのでファイアやブライトネスは控えめになりシックな雰囲気が漂います。
内包物が目立つためクラリティーの高さを引き立てます。
好まれる長さと幅の比率は1.5-1.75:1。大抵が同心円状の3列のファセットがあり、トップの列
(ガードルのすぐ下の列)はガードル面から48度、2列目は41度、3列目は34度が良いとされています。
角度が変化しますので、パビリオンにはある程度バルジ(ふくらみ)がありますが、極端なバルジは
歩留まりを良く出来る代わりに、光の漏れが発生し輝きに影響するだけでなく、加工の際の石留めもしにくい石となってしまいます。
又、不均等なバルジはキールライン(中心線)も中央からずれている場合もあります。
           正方形のものはアッシャーカットとも呼ばれ、中にはファセット数が72面のものもあります。

オーバルブリリアントカット
 ラウンドと似ていますが、形が楕円になっています。ファセットは概ね56〜58面。
原石のロスが20〜25%程度になることも利点で、同じct数ではラウンドより大きく感じるため
存在感があります。又指を細く、長く見せる効果もあります。
縦横の比率は1.33-1.66:1が良く、あまりに縦横比が大きくなったり(パビリオン角度の変化が大きくなる)
浅いカットやとても深いカットだとボウタイと呼ばれるテーブルの中央に横に広がる
黒い影(語源の通り蝶ネクタイのような形)が出てしまう場合もあります。
カッターがボウタイが出ないようファセットを工夫します。

 

マーキースブリリアントカット
 両先端が尖ったようなカットで、中心の内包物は目立ちますが、端の内包物は目立ちにくい特徴のカットです。
中心の石にも利用されますが、脇石としても利用されるカットで、海外では特に人気があるカットです。
縦横の比率が1.75〜2.25:1が良いですが、バランスが悪いとやはりボウタイが出てしまう場合もあります。
又対向するウィングの円弧は等しくなっているべきですが、マーキースはウィングが4個あることになりますので
シンメトリーに注意が必要です。

 

 

ペアシェイプブリリアントカット
  しずく型のカットでオーバルとマーキースをミックスしたようなシェイプです。
通常58面のファセットで、シンチレーションが美しいため石が動きやすいペンダントやイヤリングに人気のカットです。
縦横の比率は1.5〜1.75:1が良いとされます。 ラウンドでは1ctが直径約6.5mmですが、こちらは約8×5mmと
ct数の割りに大きく見えますので 指輪にも使われます。その時は指を長く見せる効果もありますが
他のファンシーシェイプカットよりも 色や内包物が見えやすくなりボウタイも出やすいカットです。

 

ハートシェイプブリリアントカット
 ハートをかたどったカットで65面とファセットは多めです。
ペアシェイプの変形ともいえますが、縦横比率は1:1が良いとされます。
純粋な無償の愛を表現し、特別な人へ送るのにぴったりのカットです。
ハートシェイプはボウタイが出やすく、複雑な形のシンメトリーを保つ必要もあり
カットには高度な技術が必要です。

 

クッションシェイプドブリリアントカット
 丸(ラウンド)と正方形(スクエア)、あるいは楕円(オーバル)と長方形(レクタングル)
が混ざったようなカット。アンティーククッション、オールドクッションとも呼ばれる事もあります。
バリエーションに富みますが、テーブルが概ね54-62%と小さめでパビリオンは深めとなります。
カラーが活かせる為ファンシーカラーダイヤモンドに多くなります。

 

トライアングルブリリアントカット
 
トリリオン、トリリアントとも呼ばれるカットです。 名前のとおり三角形のカットで、縦横比率は1:1が良いとされます。
ファセット面が44面で、ファンシーシェイプがセンターストーンで使用された時にサイドストーンで使われる事が多くなります。
より中心の宝石を引き立てることが出来るからなのでしょう。 大きなものはセンターストーンにも利用されますが
深さを変化させる事で、ブライトネス、ファイア、シンチレーションの変化が分かりやすいため
カッターの腕の見せ所といったシェイプでもあります。

 

プリンセスカット
 スクウェアをブリリアントにしたカット。1960年代に考案され、1980年代から広く使われだしました。
今ではラウンドブリリアントに次いで、2番人気と言っても良いカットです。
ブライトネスとシンチレーションが美しく、 パビリオン側を細かく刻む事で
49面から78面とバリエーションにも富み、 細やかな煌きがその名の通り気品をかもし出します。
又、中心からピラミッドのように4辺へ広がるカットは色を濃く見せることができ
中心から色のグラデーションが放射状に広がります。
ラウンドブリリアントは歩留まりが50%程度ですが、原石からのロスが20〜30%で済むところも良い点です。

ラディアントカット
 ラディアントとは放射を意味します。中心から4つの角へ放射上に広がる輝きが特徴です。
角きりをした四角のミックスドカット(ブリリアントとステップファセットを組み合わせています)で
縦横比率は概ね1.2-1.5:1です。エメラルドカットよりはブライトネスが顕著で70面のファセットを持ちます。
色を活かす事が出来るカットでファンシーカラーダイヤモンドに適していますが
S〜Zあたりのlight Yellowでも色を際立たせます。
鑑定書では(カットコーナードレクタンギュラー)モディファイドブリリアントとなります。

フランダースカット
 ほぼ正方形に近い8角形のでカットでラディアントとも似た外見。
ベルギーのアントワープ、1980年代に生まれた新しいカットです。
光学的な理論により計算された理想の輝きを追求したカットで
ファセット数は61(やや長方形のものは65面)と多面で非常に美しいものです。
ただし、原石に対し55%ものロスがあるため歩留まりが悪く流通量も少なくなります。
鑑定書ではオクタゴナル モディファイト ブリリアントカットとなります。

 

ローズカット
 バラのつぼみのようなイメージのカットです。まだカット技術が進歩していない16世紀から導入され
19世紀まで人気がありました。 テーブル、パビリオンがなく、 頂点が六角形のドーム状にファセットが
カットされているのが特徴です。 ファセット数は大抵は12面か24面ですが、それ以下の石もあり
バリエーションがあります。 アンティークジュエリーでよく見られ、当時は金属箔を敷くことで鏡のように
光を反射させていました。 現代でも数は少ないものの、ミル打ちされたアンティーク調のデザインジュエリーで
個性を演出するために 使用されたりメレーダイヤで利用されています。
古いカットでファイアはあまり出ませんが、美しいブライトネスと清楚な雰囲気が魅力です。

バゲットカット
ジュエリーではサイドストーンとして用いられる事が多いカットです。
石が小さくなりますので、ファセット面も25面と控えめにする事で輝きを出しており
センターストーン引き立たせる役割をもっています。
右画像は広がりを持った形でテーパードバケットと呼ばれます。
指輪のショルダー部分を扇形にしたり、バレリーナと呼ばれるような
センターストーンの周り全体をダイヤモンドで飾る時に利用されます。

 

他にも有名なカットとして凧型5角形のカイトカットや半月型のハーフムーンカットも有名です。
又、歴史に残るようなダイヤモンドや、巨大な原石には唯一無二のカットもあります。
原石の形状や、カッターの想像力に応じて唯一の形で総じてファンシフルカットと呼ばれます。
原則として大きな石の場合はファセット面が大きいとブライトネスとファイアが出ませんので
面の数を増やし、0.1ct未満のような小さな石は逆にファセットを減らした方が
美しい輝きが得られます。通常のラウンド・ブリリアント・カットはクラウン側に33面
 パビリオン側に25面(キューレット1面を含む)の合計58面(0.5ct未満はキューレットはNoneが殆どで57面とされる場合が多いです)
 のファセットですが、最近は66,72,81,86,98,101,102,114,144といった面を持つような多面カットも
 あります。他との差別化、ブランド化による販売戦略であると思いますが  0.5ct未満のような石であればそれほどメリットはありません。地色が暗い石であれば良いと思いますが
 そうでない場合はシンチレーションやファイアが弱く感じられる事もあります。
 錯覚に代表されるように、人間の目は案外いい加減な部分もあります。
 どうしても多面カットのブランドがほしいと思う場合はその輝きがお好みに合うかどうか
 直接ご覧になってご自身の感性でお選び頂けたらと思います。

ダイヤモンドに全く同じ石は一つとしてありません。
様々な要因が無限に組み合わさり、1つ1つが美しい個性を放つのです。
石を動かしながらご覧いただくことでハッと感動を覚えられる事がきっとあることでしょう。
普段はジュエリーや宝石に興味がない方も、ずっと見つめていると必ずその美しさに魅了されると思いますよ。
ラウンドブリリアントカットはカッター兼数学者でもある人たちにより物理学、光学的研究が継続されて様々なパラメーターが発表されてきました。
そのダイヤモンドの歴史の流れの中で背景として欠かせないのがヨーロッパになります。
欧州と米国、国連と僅かですが4Cの基準に違いがあることも事実ですが
そもそも、カットグレードを明記するようになったのはGIAで2006年、HRDで2009年とつい最近の事なのです。
次ではそのあたりに軽く触れ、鑑定機関の違いもご紹介したいと思います。

  



ダイヤモンドの歴史とその他の鑑定基準のページ


(C)Copyright Art Jewelry All Rights Reserved.