
薬は倍量飲めば倍の効果があり、半量では効果も半分と思っていませんか?
これは間違いであり、誤解していると大変に危険です。
薬の効果を左右するのは、目的とする組織に到達した量と、そこに存在した時間です。
組織への到達量を測ることは困難なので、通常は血液を介して運ばれまることから、血液中の濃度(血中濃度)を指標に使います。
左上の図は、横軸を時間・縦軸を濃度として、服用後の血中濃度の推移を大まかに表したものです。
図中にある青いラインが最小有効濃度で、黒色の血中濃度曲線がこれを超えている間は効果を発揮します。
服用量を増やせば血中濃度が高くなるので、山型のグラフが上へ移動します。
血中濃度の上昇によって、組織への到達量が増えますし、効果を発現している時間も長くなります。
薬の増量は効果のアップにつながりますが、図中の赤いラインの存在によって、そんな単純な話ではなくなります。
赤いラインは最小中毒濃度で、これを超えれば中毒症状(=有害な作用)が発現するという境界です。
グラフが上に行き過ぎて赤いラインを超えれば、薬は毒になってしまうのです。
服用量を減らした場合の問題は、血中濃度が低下=グラフが下に移動し、青いラインを超えない量になると効果は全く出ません。
つまり、薬を服用した意味がなくなってしまいます。
薬の服用量はいいかげんに決まっているわけではなく、青いラインを超えて赤いラインを超えないように設定されています。
薬によっては、最小有効濃度と最小中毒濃度の差が非常に狭いものもあり、自己判断による調整は危険です。
また、図には記載していませんが、最小中毒濃度の上に致死濃度というラインがあります。
適切な処置をしないと死亡する可能性がある濃度で、毒薬や劇薬を使用する場合には重要な濃度です。
1回の服用量だけではなく、服用する間隔にも注意が必要です。
前の薬が体内に残っている状態で次を服用すれば、血中濃度は足し算となって高くなります。
1回の服用量が正しくても、短時間に繰り返し服用すると、赤いラインを超えてしまう場合があります。
飲み忘れた時に2回分を同時に服用したり、あまり時間を置かずに服用することは危険です。
常用薬がある人は、飲み忘れた場合の対応方法を、医師や薬剤師に聞いておくことをお勧めします。