日本の伝統調味料「醤油の豆知識」

しょうゆの種類


■醤油とは
しょうゆとは、主に大豆などの穀物を原料とした発酵液体調味料で、日本の食卓には欠かせない調味料が「醤油」です。令和元年(2019年)、都道府県民一人当たりの醤油の年間消費量は平均2.36リットル(濃口しょうゆで換算)です。トップは、長崎県で3.50リットル、最下位は沖縄県で年間1.52リットルとなっています。醤油は、大豆(うまみのもとになる)、小麦(香りや甘味のもとになる)、食塩を主な原材料とし、こうじ菌、乳酸菌や酵母による発酵、熟成を経て製造される調味料です。なお、醤油といった場合、薄口醤油など様々な種類がありますが、統計の関係上、濃口醤油で換算しているので、ご注意ください。

原材料の配合割合等の違いにより、JAS規格では、「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の五種類に分類されます。最も一般的な「こいくちしょうゆ」、関西地方発祥の「うすくちしょうゆ」、主に東海地方で造られる「たまりしょうゆ」、山陰から九州地方にかけて特産の「再仕込しょうゆ」、愛知県碧南地方で生まれた「白しょうゆ」があります。

〇「たまり醤油」は、さらりとした液体の濃口や淡口醤油と違い、とろみがあるのが特徴です。一般的な濃口醤油は小麦と大豆の割合が半々くらいで作られますが、たまり醤油の原料はほぼ大豆で、ごく少量の小麦を使用して作られています。そのため大豆のタンパク質の旨味成分を多く含み、特有の濃厚なうま味と香りがあると言われています。
〇「再仕込み醤油」についついて:通常の醤油は、大豆と小麦と麹を発酵させたしようゆ麹に「食塩水」をまぜて熟成しますが、再仕込み醤油は食塩水の代わりに「醤油」を使って熟成します。醤油を2度醸成する製法のため「再仕込み醤油」と呼ばれ、濃厚な味わいが特徴で、「甘露冒油」とも呼ばれています。
〇「白醤油」は、薄口醤油よりさらに色が薄い醤油です。原料に占める大豆の割合が多いたまり醤油とは対照的に、小麦を主な原料として作られ、大豆や小麦は皮を取り除いたり醸造期間が長いと色がつきやすいので、醸造期間を短くするなど、料理に色をつけない琥珀色の醤油にするためいろいろな工夫がされています。独特の香りと甘味が特徴で、素材の味を活かしたお料理に使用されます。白醤油に出汁などを加えたものが「白だし」になります。

しょうゆの「色の濃さ」と「生産量」
白醤油 淡口醤油 濃口醤油 たまり醤油 再仕込み醤油

醤油の種類
日本農林規格(JAS規格)で醤油は「こいくち」「うすくち」「たまり」 「さいしこみ」「しろ」の5種類に分類されています。
濃口醤油 普通に醤油といわれているもので、全しょうゆの生産量80~90%を占めているといいます。現在では全国的に作られていますが、主に千葉県の銚子、野田を中心にして関東で発達したものです。
原料は大豆・小麦50%、食塩。塩分は16~18%です。
一般的な醤油。
つけしょうゆ、かけ醤油、煮物醤油のほか、合わせ醤油にも適しています。
淡口醤油 京都、大阪を中心にして関西で発達したしょうゆです。
原料は「濃口醤油」と同じです。色を淡く仕上るために塩分濃度を高くし発酵を押さえたり、火入れ温度を「こいくち」より低くするなどの工夫により生産されています。また仕上げに甘酒等を加え甘味をつけます。香りが弱い。塩分は「濃口醤油」より約1割ほど高い(約19%)。
関西料理には欠かせない醤油です。
料理の素材を生かす野菜、白身の魚、和風煮物やお吸い物等に使われています。
たまり醤油 東海地方の愛知県・三重県・岐阜県で古くから愛用されています。原料は大豆がほとんどで極めて少量の小麦を加えます。
色が濃くとろりとした濃厚な味がします。醤油の原型というべき性格を備えています。
佃煮、せんべいなどの加工用などや、刺身などのつけ醤油や照り焼き、煮物などのツヤがでる料理に使われています。
再仕込み醤油 山口県が主産地で、九州や山陰地方でつくられています。
「甘露醤油」とも呼ばれ色も成分も特に濃厚な醤油です。再仕込み醤油は名前の通り、一度できあがった生醤油に再び麹を入れて二度仕込んだ醸造法で濃口よりも約倍の材料と時間をかけて造られています。手間と技術を要するため上等の醤油として知られています。
こいくち醤油に比べて色沢・味が濃厚で溜醤油より香りがあります。煮物に使われたり、かけ醤油として刺身や寿司のほか、鍋のつけだれや料理のかくし味などに使用できます。
白醤油 名古屋地方特有の淡口醤油の一種です。
コハク色の透明な醤油です。(「淡口醤油」よりもさらに色がうすいしょうゆです)原料は小麦がほとんどで、大豆が少量使われる。熟成は短時間です。淡白な味と高い香りが特徴です。また小麦が主原料なので糖分が高いのも特徴の一つです。
うどんのつゆや吸い物、鍋料理などに使われます。また、材料の色や風味を生かす料理(野菜や魚などの料理)などにも適しています。



【醤油の成分基準】

種 類 基 準
全窒素分 無塩可溶性固形分 直接還元糖
濃口醤油
(本醸造方式)
1.50%(容量)以上 16%(容量)以上
淡口醤油
(本醸造方式)
1.15%(容量)以上 14%(容量)以上
たまり醤油
(本醸造方式)
1.60%(容量)以上 16%(容量)以上
再仕込み醤油 本醸造方式:1.65%(容量)以上
混合醸造方式:2.00%(容量)以上
21%(容量)以上
白醤油
(本醸造方式)
0.40%(容量)以上
0.80%(容量)未満
16%(容量)以上 12%(容量)以上

・全窒素分(うまみ成分)
大豆(タンパク質分約35%)や小麦(タンパク質分約13%)に含まれるたんぱく質が、麹菌の酵素で分解され、うまみ成分である約20種類のグルタミン酸などのアミノ酸が生成される。アミノ酸を形成するアミノ基には窒素が含まれるため、全窒素分=うまみ成分とされている。全窒素分が多いほど旨みがあります。

・無塩可溶性固形分(エキス分)
糖分、酸分、アミノ酸などの成分が溶け込んでいる固形分を「可溶性固形分」と呼び、この「可溶性固形分」から塩分を除いたものが「無塩可溶性固形分」である。

・直接還元糖(白醤油のみ)
糖液中に存在するぶどう糖(還元糖)の割合を示すものを直接還元糖という。つまり、ブドウ糖の含有量を示しているものと思われる。



醤油の流通と主な生産地
しょうゆは、生産数量の約30%が家庭用製品で、約70%が業務用製品である。(一般財団法人日本醤油技術センター推計)家庭用製品は、ほとんどが卸売業者を通じてスーパーやコンビニエンスストア等の小売業者へ販売される。
また、家庭用製品はペットボトルの小型商品が主流であるが、最近では、しょうゆの味と鮮度を保つため、空気に触れないよう工夫したパウチやボトル形態の商品の販売が伸びている。
業務用製品は、レストランなどの外食業者が調味料として使用するほか、食品製造業者がしょうゆ加工品やつゆ・たれ類の原料として使用している。

醤油の原料と産地・全生産量の割合率(まとめ)
種類 原材料 主な生産地 生産量の割合
濃口醤油 大豆にほぼ等量の小麦 全国 約84.0%
淡口醤油 同上および米を使用することあり ほぼ全国 約12.5%
たまり醤油 大豆のみ、または大豆に少量の小麦 愛知、三重、岐阜 約 2.0%
再仕込み醤油 生揚げにこいくちしょうゆの麹を仕込む 山口、中国、九州 約 0.9%
白醤油 少量の大豆に小麦 愛知、千葉 約 0.6%

(注) 醤油の生産量の割合は、2015年度のデータである。 …農林水産省食料産業局

JAS規格では、動物性タンパク質などの使用は認められていないので、魚醤油と呼ばれる秋田県の「しょっつる」や香川県の「イカナゴ醤油」、鰹節を加えた「土佐醤油」などは、醤油の範疇からはずれることになります。