![]() ![]() ![]() はじまりはキャメロン・ディアスでした。『ベスト・フレンズ・ウェディング』『真夏の出来事』『普通じゃない!』を見て彼 女のファンになった私は『メリーに首ったけ』も封切り時に駆けつけて見ました。ご存知のとおりこの映画の彼女はとっ てもキュートだったので、かわいいキャメロンみたさにその後3回も劇場まで足を運んだのですが、この時はまだ映画 については”下品だけど面白いコメディ”という宣伝文句通りの印象しかありませんでした。 しばらく後に、京都のみなみ会館で"メリーに首ったけ祭り"というオールナイトのイベントがあり、そこで彼女の出演 作『マスク』『彼女は最高』とファレリー兄弟の監督作『ジム・キャリーはMr.ダマー』『キングピン/ストライクへの道』を4 本続けて見ました。どれも面白い映画でしたが、中でも片腕のプロボーラーの復活を描いた『キングピン/ストライクへ の道』にひっかかるものがありました。これはフック船長、ピーターパン、ティンカーベルが同じ目的で旅をするロード・ ムーヴィーじゃないのか、そんな風に考えてみると、今まで何度も見ている『メリーに首ったけ』も白雪姫に出てくる7 人の小人がピーピングトム(覗き屋)だったら?という話のような気がしてきて、映画のパンフレットの表紙を見たらメ リーのまわりには確かに7人のピーピングトムが…。まあその中には魔女役のマグダや犬のパフィもいるので私の思 い違いかもしれませんが、でもそうだとしたらこの映画は『白雪姫と7人の小人』をモチーフにビリー・ワイルダーが脚 本を書いてハワード・ホークスが監督したクラッシックコメディの名作『教授と美女』と兄弟作なんじゃないと考えるよう になりました。 そして今度はキャメロンではなくこの映画の内容に興味を持ってもう一度映画を見ました。そこで気になったのが、ラ ストにテッドがメリーの弟の耳に「さよなら」と囁きかけるシーンです。弟は耳を触られてもいつもように怒り出さず、そ れが多くのストーカー達の中からメリーがテッドを選ぶ理由になっています。弟は物語の中でどういう役割を担ってい るのだろうか?「さよなら」と耳に囁きかける行為は白雪姫から毒リンゴの魔法をといた王子様のキス? ![]() その後も何度かこの映画を劇場で見たんですが、映画がはじまるとストーリーよりもキャメロンのことしか目に入らなく なって、”やっぱりキャメロンはかわいいなあ”、馬鹿みたいで申し訳ありませんが、とりあえずまたそういう印象しか 残りませんでした。ストーカー、AIDS、精神薄弱者、身体障害者という社会問題をスウィートでファニーな恋愛物語に 盛り込んだエポックメイキングなコメディというこの映画に対する評価に異論はありませんが、この映画の一番の魅力 はやはりキャメロン・ディアス演じるメリーの白痴美にあると思います。 それから2年後『ふたりの男とひとりの女』を見ました。これは私の大好きなスクリューボールコメディ。しかも男二人 が二重人格の同一人物というひねりがきいています。水嫌いのチャーリーが橋の上で足を踏み出してハンクとひとつ になって、ヒロインのアイリーン・ウォーターズと結ばれるという凝ったプロットに、1940年代スクリューボールコメディ 全盛期において、クレバーでクレイジーな発想で脚本を書いて自ら監督したプレストン・スタージェスと相通じるものを 感じました。この映画のDVDには主人公のチャーリーが子供の頃に父親から虐待を受けて水が嫌いになったとされ る未公開シーンが収録されています。幼児虐待はコメディ映画の明るい雰囲気になじまないということで、編集でカッ トされたのだと思いますが、撮影時の脚本ではどう見ても自分の子供ではない三つ子に対して優しい父親であり続 けるチャーリーと噴水に女の子を突っ込むハンクが同一人物である痛みの理由をきっちりと描いていたのです。これ にはうなりました。ああ僕らの生きてる時代にもやっと本物のコメディを作る人が現われた。そう確信しました。 ![]() 続く『愛しのローズマリー』では内面の美しさが見えるなんていくらなんでも設定に無理がありすぎると思いましたが、 それでもやけど病棟のシーンには声がつまりました。ファレリー兄弟は『メリーに首ったけ』『ふたりの男とひとりの女』 の路線、つまり下品でキュートなロードムーヴィーで何本も映画を作ることもできたはずですが、この映画では従来の やり方を踏襲せずに意図的にギャグを少なくして難しいところをあえて狙っています。そんな彼らのクリエイターとして の熱い心意気に打たれてこのウェッブサイトを作ることを思い立ちました。 プロフィールはWEB上にあった彼らのプロフィールを適当につなげて作成しています。興味深いのはデビュー前に9年 間も映画化されない脚本を書き続けたこと、兄のピーターは脚本の執筆と平行して2冊の小説を出版していること。 そして彼らの監督作6本の中でオリジナル脚本はデビュー作の『ジム・キャリーはMr.ダマー』と最新作の『ふたりにク ギづけ』の2本だけで後はすべて他人の脚本のリライトでどれも大幅な書き直しであること。そしてひさしぶりにオリジ ナル脚本の最新作『ふたりにクギづけ』は多くの有名俳優を使って、最大の製作費をかけたにもかかわらずはじめて 興行的に大失敗しているということ。 ロングインタビューはネットショッピングで購入したファレリー兄弟の特集が組まれているクリエイティブスクリーンライ ティング誌からの抜粋。現時点での二人に対する一番長いインタビュー記事だと思います。 最新作『ふたりにクギづけ』は2004年12月11日に日本公開されました。フィルモグラフィにあるインタビューはすべて 海外のWEB上にあったものです。『ジム・キャリーはMr.ダマー』『キングピン/ストライクへの道』の公開時はインター ネットが普及する前だったせいか、この頃のインタビューは残念ながら見つかりませんでした。『キングピン』と実写部 分のみ監督した『バクテリアウォーズ』に出てるビル・マーレーのインタビューなんてあったらすごく読んでみたいんで すけどね。またどこかで見つけたら追加する予定です。 ![]() 出演者のインタビューで一番面白いのは『ふたりにクギづけ』のシェール。映画でも強烈なキャラでしたが実物も強烈 ですね。大笑いしました。最多出演女優リン・シェイのインタビューもファレリー兄弟の撮影現場の雰囲気がよくわか って興味深いです。ファレリー兄弟は "僕たちはアンチ・コーエン兄弟"と言ってますが、そのコーエン兄弟はトム・ハ ンクス主演の『レディキラーズ』で『メリーに首ったけ』の子犬を感電させるシーンをリアルに再現してエールを送ってい ます。私は『ふたりの男とひとりの女』を見てプレストン・スタージェスの作品を連想しましたが、両者はよく比較されて いるらしく、ピーターがプレストン・スタージェスについてコメントしたものというかさせられているWEBも見つけました。" 誰も僕らの映画を分析したりしない"と言っている彼らですがロングインタービューでもわかるように結構深く分析され ています。 映画とはまったく違うシリアスなテイストのピーターの書いた2冊の小説『Outside Providence』『The Comedy Writer』もそれぞれ一部を抜粋して翻訳してみました。どちらも思春期、青年期の自分をモデルにしたいわゆる青春 小説というジャンルに分類されるかもしれません。『The Comedy Writer』に収録されている『アビゲール/幸福なクジ ラ』はルイス・キャロルばりの言葉遊びがふんだんにあって翻訳に苦労しました。小説の翻訳ははじめての経験だっ たので誤訳がたくさんありそうです。お気付きになられた方、ご指摘頂けるとありがたいです。 ![]() 『Outside Providence』の翻訳になかなかとりかかれないでいた去年の9月に、とりあえず行ってみたら雰囲気がつ かめるんじゃないかと思って、ファレリー兄弟の多くの映画のロケ地になっているロードアイランド州まで行ってきまし た。ロードアイランド州はニューヨークから車で3時間足らずで行けるアメリカで一番小さな州です。ジャズ・フェスティ バルで有名な港町ニューポートから北上して、ピーターの小説『Outside Providence』の舞台になっているポウタケッ トから、そこから更に北にあるファレリー兄弟が育ったカンバーランドまでのドライブ。海側にあるニューポートから北に 上がっていく道はずっと登り坂になってて、ポウタケットは山の中腹、カンバーランドが山の上という感じです。当然上 に上がって行くほど民家が少なくなっていって、カンバーランドは森の中にあって、信号のない山道をずっと走ってたら 隣のマサチューセッツ州まで出てしまいました。ニューポートはヨットハーバーのある美しい港町、カンバーランドは山 の中ですがブラックストーンリバーという川や水力発電所、大きな貯水池があって水が豊かにあります。自分達の映 画の中にはたくさんの水辺のシーンがあるって本人達がDVDのコメンタリーで言ってましたが、二人の育った環境を 実際に見てその理由がわかりました。 現時点(2004年12月)での最新作『ふたりにクギづけ』は今まで脇役としてしか登場しなかった身体障害者が初めて 主人公になっています。もともと『メリーに首ったけ』の次の作品としてクランクインするはずだったこの映画の製作が 遅れたのも主人公の設定にあります。この作品はデビュー作『ジム・キャリーはMr.ダマー』以来のオリジナル脚本と いうこともあり、かなりの時間と労力をかけて作られました。脚本にあった下品なギャグがどんどんなくなっていったの は演じたマット・デイモンとグレッグ・キニア−のキャラクターによるところが大きいとボビーは言っていますが、インタビ ュアーに指摘されている通り、主人公はピーターとボビーのファレリー兄弟自身の関係も大きく反映しています。照れ くさいのか出来栄えに満足していないのかわかりませんが、どういうわけかこの映画に関するピーターのインタビュー はWEB上でいくら探しても見つかりませんでした。いつもプロモーション時は彼が一番饒舌に話しているですけど ね。こんな映画にするつもりはなかったけどこうならざるをえなかった、そこがこの映画の魅力だと私は思うのです が。 ![]() もちろんこの映画が興行的に失敗したからといって、二人のコメディに対する熱い心意気に変化があるとは思えませ ん。しばらくはリスクの少ないリメイク物をせざるをえないかもしれませんが、このWEBサイトでは今後も彼らの活動を 追ってコンテンツを増やしていく予定です。彼らの新作が日本で公開される時にまたぜひ立ち寄って下さい。 最後になりますが『アビゲール/幸福なクジラ』でたくさんのイラストを書いて下さった堀岡光次さんに感謝します。素 敵なイラストを励みになんとかこのWEBサイトを作ることができました。 ![]()
|