マンション管理士の何でも建築相談室

鉄筋コンクリート造のひび割れについて回答致します。
簡単な説明ですが、随時推敲してより詳しい説明にします
鉄筋コンクリート造でできた建物に
ひび割れが生じた時それには、おおむね以下に分類される。

1.構造的なひび割れ
2.上部のモルタル塗り等のひび割れ
3.内部鉄筋の錆による膨張によるひび割れ
4.乾燥収縮によるひび割れ
5.ブリージングによるひび割れ

6.コンクリートにひび割れを発見した時の基本的な対処

1.構造的なひび割れ
構造的なひび割れは、次の原因で起こります。
このひび割れは、場所によっては、その幅が狭くても(ヘアクラックでも)非常に危険です。
特に持ち出しスラブ下面の持ち出し方向とは、直角の方向のひび割れは、幅と関係なく非常に危険です。
このことについては、ここをご覧ください。
a.大きな外力のためのひび割れ
 大きな外力とは、例えば地震・過剰な荷重(オーバーロードと言います)・長期間の設計以上の荷重(短期では、ひび割れを起こさないほどの荷重でも、長期にわたるとひび割れを起こします)・繰り返し荷重(道路橋のような繰り返し荷重を受けるもの)等です。
b.設計上のあやまち
 単に設計ミスで過小設計されたものや、適切な補強筋を入れていないもの、構造計算上は、安全でも最小鉄筋比(コンクリートと鉄筋との比率)を満足しないもの、誤配筋のもの等です。
c.施工不良・過誤
 設計書と異なった配筋量不足・配筋方法の過誤・コンクリート打設後の養生の不良・型枠支保工の早期撤去または、撤去方法の過誤・施工中の過剰な荷重・使用コンクリートの強度不足・コンクリート打設時に作業性を良くするために水を混ぜる行為等「構造耐力」を低下させあるいは、過剰に荷重を載せる行為。
■発生し易い所;梁中央下部の垂直な割れ 梁端部上部のスラブ上部の割れ(梁と直行) 柱の梁取り付き部分から45°方向の割れ 柱の腰壁取り付き部分から45°方向の割れ 耐震壁のたすき状の割れ 耐震壁の開口部4隅より45°方向の割れ スラブ中央下部長辺方向の割れ スラブ上部の4隅に対角線と直交する割れ

□対処方法;もし過剰な荷重があるようでしたら直ちに止める。このわれは、深いので建物の耐久性に大きく拘わります。小さなひびで設計ミス等がなければvカットの上シーリング補修(できることならエポキシ樹脂注入) もし設計のミスあるいは、新耐震基準に合わなければ補強の上補修

2.上部のモルタル塗り等のひび割れ
コンクリート躯体(コンクリートそのもの)は、何らひび割れを起こしていないにも拘わらず上部のモルタル塗りあるいは、タイル貼り等にひび割れを生じているもの。多くは、乾燥収縮によるものです。
ここで注意しなければならないのは、反対に躯体に構造的なひび割れがあるにも拘わらず表面に何らひび割れを生じていない場合もあると言うことです。モルタル下塗りに近年軽量骨材(発泡スチロールや、ゴムの切片等)を用いモルタル接着剤を使用すると多少の躯体のひび割れが表面にでません。

■発生し易い所;開口部周り コンクリート打ち継ぎ部分 大きな壁面の4隅に対角線と直交する割れ

■対処方法;打診検査によって上部モルタル等が剥離していないか定期的に検査を要す。水がかり部分ならvカットの上シーリング補修

3.内部鉄筋の錆による膨張によるひび割れ
このひび割れは、盛り上がるようにひび割れます。よく新聞をにぎわしているコンクリート剥離がこれです。

■発生し易い所;下部に鉄筋がある部分 スラブ持ち出し部分端部 鉄筋の込んでいる所(柱梁接合部)

■われの特徴;すじ状に盛り上がる。あるいは、セパレータの場合は、点状に盛り上がる。 

■対処方法;このわれは、深刻です。もし一カ所でも見つかれば施工方法が同じであるため(施工者がいい加減な仕事をしたため)もっと多く見つかります。浮き部分は、落とし防錆の上樹脂モルタルで補修します

4.乾燥収縮によるひび割れ
乾燥収縮は、コンクリートの性質からさけられないものですが、補強筋や適切な施工方法の選択に依ってある程度軽減できるものです。

■発生し易い所;建物壁面4隅に対角線と直交する割れ

■対処方法;打診検査によって上部モルタル等が剥離していないか定期的に検査を要す。水がかり部分ならvカットの上シーリング補修

5.ブリージングによるひび割れ
コンクリート打設時に、コンクリートが沈み鉄筋の部分に亀裂を生じるものです。

■発生し易い所;スラブ上部梁柱接合部分の格子状あるいは線状のわれ

■われの特徴;割れ目部分は、ほんの少し盛り上がっている。

■対処方法;清掃の上樹脂セメントペーストで補修または防水モルタル塗り


6.コンクリートにひび割れを発見した時の基本的な対処

コンクリート構造物にひび割れを発見したときには、次のようにするのが寛容です。
a、当該ひび割れのために建物に、どのような悪い影響が、起きているか将来起きるかどうか調べる。
b、当該ひび割れがどのような原因で起きたかを調べる。
c、当該ひび割れの原因がどのような施行上・設計上の故意・過失でおきたかどうか調べる。

コンクリート躯体のひび割れは、共有部分に属しますので管理組合がその割れについて調査し、売り主に請求する理由があれば、請求しなければなりません。他の部屋も同様な割れがないかどうか管理組合の方でアンケート調査すべきでしょう。

2004年7月9日加筆
 
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