《落ちる水 N0.2》  
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石川虚舟 《 落ちる水 No.2 》 2011
 
  水落ちて雪に融け込む石畳  虚舟
 
 
2010年12月27日、寒波の雪景色の中、アウトバーンでベルギーに入る。 リエージュに一泊し、28日の夕刻、首都ブリュッセルの中央駅近くのホテルへ。 起伏の多い地形を利用して中央駅は地下に潜り、地上は中央広場。
 
近くに風格あるパッサージュがあり、 チョコレート専門店入口にアールヌーボー様式の曲線が残る。 ベンヤミンは『パッサージュ論Ⅰ』(岩波現代文庫)の冒頭で次のように書く。 「パノラマの普及が最高潮に達した時期は、パッサージュの登場と一致している。 …。風景の中での一日の時の推移、月の出、滝の音などの模倣が試みられた。」
 
デュシャンの 《与えられたとせよ、1.落ちる水、2.照明用ガス》(遺作) では、パノラマの手法によって内丹術の「遅延」(四次元)が表象される。 パッサージュの中ほどに美術書専門店があって、 その書棚にデュシャンの『《与えられたとせよ》仕様書』(エール大学出版)。 書店横の路地に入ると、休業中の店先に歩道用の小さなピンコロ石が一個、放置されていた。 ひとつの面が靴底に擦られ、時熟している。
 
市民広場に出ると、クリスマスは過ぎているのに、 まるで祇園祭の宵山のような群集。 古風な市庁舎のファッサードにアニメーションが投影されていた。 窓枠の列に合わせた凝った作品。 ホテルへの帰路をさらに迂回し、焼きたてのワッフルを頬張りながら、 裏通りを「小便小僧」に向かう。 石畳を雪が覆うが、雪明りの街角に人だかり。