石川虚舟
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 大弁若訥 
松尾芭蕉と老荘思想
 
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 不易流行 
 

 夏炉冬扇 
 

 飛花落葉 
 

 不知利害 
 

 色即是空 
 

 空即是色 
 

 阮宣杖頭 
 

石川虚舟/俳句集
 
 
 
 

石川虚舟 《時熟》 2012
コルク、凝灰岩(笠松石)、欅(213×120×94mm)
 
時折、コルク栓を抜き、ワインをほんの少し注ぐ。
時がつれ、ワインが凝灰岩に滲み渡り、そして作品はいつしか「時熟」する。  

 ⇒ ひばりより上にやすらふ峠かな
  芭蕉
 
 
 
 
『 老子 』第45章
大成若欠、其用不弊、 大盈若沖、其用不窮、
大直若屈、大巧若拙、 大弁若訥、
躁勝寒、静勝熱、 清静為天下正、
大成は欠けたるが若きも、 其の用は弊せず。
大盈(えい)は沖(むな)しきが若きも、
其の用は窮まらず。
大直は屈するが若く、 大巧は拙なるが若く、
大弁は訥(とつ)なるが若し。
躁なるは寒に勝ち、 静なるは熱に勝つ。
清静なるは天下の正と為る。
 小川環樹訳注 『老子』 中央文庫
 
すべてを表現してはならず、すべてを説明してもならぬ。ただ本質的な線のみを示し、 残余は想像力の生動的な遊びに委ねなくてはならぬ。 詩人とは沈黙を守ることを知る人であり、沈黙は雄弁以上に雄弁である。… 「大弁は訥のごとし」と老子はいう。 一言にしていえば、無限の詩は「文学」ではなくて真に「詩」でなくてはならぬ。 詩の最も本質的なこの特色の存在が、わが偉大な詩人のひとり 芭蕉(1643-94)の俳諧の基本的特質である。
 
  奈良七重七堂伽藍八重桜
  干(から)鮭も空也の痩(やせ)も寒の内
 
… 一大飛躍を行い、無底の形而上学的深淵に身を投じ、 そこで徹底的に粉砕されることが課せられているのは鑑賞者に対してである。 芸術による時間からの解脱は二度現れる。一度目は無限を創造する芸術家において、 二度目は芸術作品の観照によっていわば創造に参加する鑑賞者においてである。
 九鬼周造 「時間論」(パリ講演、坂本賢三訳)
  『 九鬼周造全集、第一巻 』 p.421     ⇒ 『時間論』 Ⅱ