The Adventures of Tom Bombadil
 
 この本には長短16篇の詩が収められています。これらの詩は、ホビットが残した「指輪物語」の伝承と歴史の記録の書である『赤表紙本』(西境の赤表紙本)の中に書かれている、ということです。あるものは、その物語の本文中に出てくるものですが、多くは、綴じられていないページや欄外の空白部分に走り書きされたものを取り上げて本詩集になりました。

  これを記したホビットは、日常生活において事あるたびに詩を唱したようです。パーティーやお茶の時間、ビールを飲みながらのよもやま話の中で、気分が乗ってる楽しいとき、別れの悲しいとき、恐怖と孤独に耐えるとき、自然と詩をくちずさんでいたのです。ときにはうんざりするくらい長い詩や毎度聞かされる詩もあったことでしょう。

 この詩集の詩は、そんな中の選りすぐりの16篇といえましょう!詩の内容については私のようなものが解説できるはずもなく、読んで感じてくださいとしか言いようがありません。

  「トム・ボンバディルの冒険」ではありますが、「赤表紙本の他の詩とともに」と副題にありますように、16篇すべてがトム・ボンバディルについて書かれたものではなく、いろいろな登場人物が出てきます。  たとえば・・・

月に住む男が海に落ちて猟師の網に捕まってしまうお話。(第6番)

岩屋の巨人が食べるものがないので墓場から取った骨を、長靴のトムが返せと問答をする詩。(第7番)

・暗い沼のほとりに住み、通り過ぎる旅人を捕らえ食うミューリップ族のこと。(第9番)

・小島と間違われるほど大きな亀のファスティトカロンのお話。(第11番)

・塚の下に眠る、かつては小人や龍や騎士に守られていた秘密の財宝のお話。(第14番)

西方に旅立つ妖精たちの最後の船とこの地に残る人の子フィリエルのお話(第16番)  

っと言った具合です。このように妖精や秘密の財宝のように胸躍らせる内容のものあり、聞くも恐ろしいミューリップ族のお話ありと内容は多彩です。

 
私は残念ながら原詩を読んだことはないのですが、原詩は押韻・頭韻・語句の繰り返しがたくさんあり、唱すればまことに音が美しく響き合う、完成された詩だということです。英語の得意な方はぜひ原書で確かめて下さい。
 
 

【書籍情報】
トム・ボンバディルの冒険(赤表紙本の他の詩とともに)
(The Adventures of Tom Bombadil)
トールキン小品集に収録
評論社 J・R・R・トールキン著、早乙女忠訳 1975年3月20日初版
ISBN 4-566-02110-6 340ページ(内207〜315ページ) 188×128mm
挿絵 ポーリン・ダイアナ・ベインズ

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