Letters from Father Christmas
 
  「サンタクロースはどこにいるの?」と子供に訊ねられたことはないですか?トールキンの長男のジョンがトールキンにそう訊ねたそのクリスマスにサンタから手紙が来ました。1920年のことでした。それから毎年、それはトールキンの4人の息子たちに20年以上にもわたって続いたのです。時にはプレゼントと一緒に暖炉の上に、時には郵便屋さんが届けてくれました。

 その手紙を後に本の形にまとめて出版したのがこの本で、原題を「The Father Christmas Letters」と言います。”Father Christmas”は日本流にいえばサンタ・クロースのことなので、トールキンがサンタに成り代わって4人の子供たちに贈った「A Father Christmas Letters」でもあったのです。トールキンが送った本物の手紙は今、オックスフォード大学ボドレー図書館に保管されています。

  手紙の内容は、北極でのさまざまな出来事、わくわくする事やハラハラする事がたくさん書いてあります。それにトールキン自身が描いたすばらしい絵も一緒です。(サンタの自画像もありますし、素敵な北極の切手まで描いてあります。)最初のうちは、サンタの助手のとんまな北極熊のしでかす騒動のことが書かれていましたが、その後イルベレスというエルフを秘書に雇い入れ、サンタを手伝ってプレゼントの用意をしている話などがあります。北極熊はおちょうしもので、時にはサンタの注意も聞かず張り切ってたくさんのプレゼントを運ぼうとして階段から転げ落ちてしまったりと、いっつもこんな具合です。そして年が経つにつれ、赤い地の精(ノウム)・雪人・洞穴熊・ゴブリンと登場人物?が増えて、北極の有様がハラハラドキドキ伝わってきます。時には、北極熊やイルベレスからのメッセージもありました。

 
こんな手紙をもらったら、子供たちは毎年クリスマスの来るのが本当に楽しみだったに違いありませんよね。本の形になり世界中の人の知るところとなりましたが、トールキン自身は純粋に子供たちをわくわくさせてあげたかったのだと、私は思います。(ちょっぴり自分も楽しんでいたのでしょう。子供が喜んでいるのを見るのはいいもんですもん。)手紙の中にサンタから「たっぷり愛を送る」という言葉がありますが、トールキンの子供たちへの愛情の深さを感ぜずにはいられません。
 
 

【書籍情報】

サンタ・クロースからの手紙(The Father Christmas Letters)
評論社 J・R・R・トールキン著、瀬田貞二訳 1976年12月20日初版
ISBN 4-566-00228-4 48ページ 276×218mm

クリスマスカード付 サンタ・クロースからの手紙
(Letters from Father Christmas)
評論社 J・R・R・トールキン著、瀬田貞二・田中明子訳 1995年9月30日初版
ISBN 4-566-00458-9 48ページ 155×207mm

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