学思塾  ー学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆しー (「論語」為政より)

 


問題だらけの教育改革

 最近の教育改革には多くの問題点があります。塾にやってくる生徒たちをみていると、教育改革が進むほど理解力・思考力・判断力・知識量などのすべての学力が低下していて、もはや学力低下というより学力崩壊寸前という状況です。「教育改革に対応した新しい教育」などという世間の風潮に流されず、『本物の学力』を育てることが大切です。
https://www.mag2.com/p/news/334738/3
https://ameblo.jp/meishikobetsu/entry-12327614767.html



<1>ICT教育

 情報通信技術(ICT)が世界の教育で活用されつつあります。
 ICT教育には長所と短所があります。
https://chokomana.mealvillage.net/education/schoollife/1115803
 ICTはツールのひとつにすぎません。ICTを使う能力を育てる必要がありますが、その力はICT以前の基礎学力次第ではないでしょうか。
http://agora-web.jp/archives/1577316.html

 OECD(経済協力開発機構)の調査では、学校で生徒1人あたりのパソコン設置台数を増やした国ほど成績が下落傾向にあります。

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=307935
 国はGIGAスクール構想(児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する教育構想)を推進しています。この構想がすすめば、子どもたちは「文章をまともに読めない」「文字をまともに書けない」「人の話をまともに聞けない」「何を勉強しているかすらわからない」といった学力崩壊状態になると思われます。
https://www.kou1.info/blog/education/post-3679


<2>英会話重視・英文法軽視

 「日本人は中学から高校まで6年間英語を勉強しても、たいして英語が身についていない。その理由は、英文法ばかり気にしているからだ。英語を母国語として身につける子どもは、英文法など習わずに英語をできるようになるのだから、日本人も同じように学べばよいのだ。」という意見に従って、最近の学校では英文法をあまり習いません。それでいいのでしょうか。
https://ch.nicovideo.jp/videonews/blomaga/ar1674604
 英語圏に生まれた子どもは、6歳頃までに日常生活の英語なら使えるようになっているでしょう。仮にその子どもが生活の中で1日に10時間英語に触れているとすれば、6年間では計21900時間になります。日本人が1日に3時間英語に触れるとすれば、21900時間に達するのに20年かかることになります。つまり、日本人が英語圏の子どもと同じ方法で英語を学ぶわけにいかないのは当たり前のことです。それで、日本人でも英語を効率よく身につけることができるように、先人たちは日本人向けの英文法を考えだしたわけです。
 ところが、英文法を軽視する学校が増えたため、生徒たちの英語力は大きく低下しています。ほとんどの生徒が「読めない・書けない・知識が足りない」状況です。
https://ameblo.jp/akiaki-1107/entry-11497670280.html
https://eigohiroba.jp/t/193
 現在、英文中の「~の上に」という意味の「over」を正しく訳せる高校生は約10%、「引く」という意味の「pull」を正しく訳せる高校生は約30%です。どちらも10年前までは正解率が90%以上でしたが、今では年々正答率が低下していっています。また、ほとんどの中高生は時制・品詞・文型・受動態・比較・関係代名詞などの基本事項すらわかっていません。
 小学生のときから英会話を習っているのに中高生になっても英単語をまともに読むことすらできない生徒もかなりいます。「center」を「コーナー」、「same」を「サム」、「their」を「ユア」と読み、「nine」を「6」、「these」を「あれら」と訳したりするのも最近では普通になっています。



<3>学習する英単語数の増加

 2020年の学習指導要領では、小・中・高の教科書で学習する英単語数が大幅に増加します。
https://www.shane.co.jp/files/user/img/column/mext.jpg
 しかし、より多くの英単語を長期的に身につけるコツは「最初は単語数を絞って重要単語から学ぶ」ことなのです。まず「最重要単語」を覚え、その後に「重要単語」を覚え、それから「応用単語」を覚えるのが最も効率的な英単語の覚え方といえます。
 TOEICを例にとると、重要順に英単語を覚えた場合、最初の1000語での文章中の英単語カバー率が81.7%、次の1000語でカバー率が7.8%増加し、さらに次の6000語でカバー率が9.0%増加します。最初は重要単語だけに絞って学習する方が長い目では近道になるといえます。
https://english-club.jp/wp-content/uploads/2019/07/jacet8000-toeic-cover-ratio-768x455.png
 教科書に出てくる単語数が増えれば、一気に多くの単語を勉強することによって生徒たちは重要単語に十分習熟することができなくなり、結果として生徒たちの語彙力が大きく低下することが予想されます。


<4>教科書の巨大化・カラフル化

 文部科学省は2003年度から、学習指導要領をこえる発展的な学習内容を教科書に載せてもいいという方針になりました。脱ゆとり教育の影響もあって多くの教科書はサイズが大きくなり、ページ数も増加しています。それと同時に教科書がカラフルになっています。

https://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/35934f23244a76318980a6b56d6b07d2

 しかし、昔からカラフル過ぎるノートはだめだと言われています。作業に気を取られて授業をちゃんと聞かなくなったり、色が多すぎることで頭の中の内容が整理されなくなるからです。

https://miyajuku.com/カラフルなノートはダメ/

 同じことが教科書にもいえます。カラフル過ぎる教科書・余談が多すぎる教科書では何を学んでいるのかわからなくなり、生徒の頭の中はグチャグチャになってしまうでしょう。

https://www.atemonaku.com/entry/2018/03/08/090211

 


<5>大学入試

 大学入試改革は問題だらけです。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59424
①英語民間試験
 英語民間試験が重視されるようになってきましたが、民間試験では実践的な能力が問われるため短絡的な試験対策を誘発します。すでに多くの子どもたちが英語民間試験対策のための丸暗記型の英語学習をするようになっています。英語の実力さえつければ英語民間試験でも好成績を取れるのは当たり前ですから、各家庭や学校では、英語民間試験対策をするのではなく本物の英語力を伸ばすようにするべきでしょう。
http://eigo-kochi-training.com/blog/daigakunyushi/
②高校生のための学びの基礎診断

 「高校生のための学びの基礎診断」は、基礎学力の定着度合いを測定する民間試験を文部科学省が認定する形で始まりました。日本数学検定協会「数学検定」や日本漢字能力検定協会「文章検定」やスタディサプリ「学びの活用力診断」やベネッセ「総合学力テスト」などが認定されています。
 しかし、これらの民間試験の導入は今まで以上に小手先のテスト対策を誘発するので、生徒たちの学力を低下させることが予想されます。
https://toyokeizai.net/articles/-/310461
③eポートフォリオ
 高校での学習や部活動などの記録を生徒自身が電子データにまとめる「JAPAN e-Portfolio」が始まっています。
https://resemom.jp/article/2018/04/05/43917.html
 しかし、生徒が活動を評価されるようになれば、「評価されるための活動」をするようになるでしょう。主体性を育てるはずが、逆に主体性を奪う結果になります。内申書重視によって生徒たちの学習が小手先化したように、活動記録重視によって活動自体が小手先化する可能性があります。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48031


<6>アクティブ・ラーニング


 一律の授業から子ども主体の授業(アクティブ・ラーニング)へと教育改革が行われます。時代に即した新しい学力をつけることが目的です。
 しかし実際は、学校以前の時点で既に大きな学力差があります。家に本や新聞がなく、外遊びなどの体験が少なく、スマホを長時間いじっている子どもが「自分の意見を言いましょう」「自分で課題を見つけましょう」と指導されて学びが成り立つのでしょうか。
https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/kyoiku_kakusa/2008/pdf/data_04.pdf

 一律授業は一定の学力をつける利点はありますが、落ちこぼれなどの問題もあります。しかし、子ども主体の授業では個々の環境の影響が強くなり、現状では何も学べない子がより増加します。

https://medium.com/@tomokifujii/アクティブラーニング-学校教育の理想と現実-まとめ2-e240caea9230
 最近みかけるラーニング・ピラミッドも、現実を無視した机上の空論にすぎません。
https://askoma.info/2015/04/29/1080
 学校以前の環境を考慮しない改革は失敗を繰り返してきたのです。
https://ddnavi.com/news/359707/a/


<7>確かな学力

 文部科学省は2008年頃から、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学習意欲」の学力の3要素を「確かな学力」と呼んで、それを子どもに身につけさせる方針をとっています。
 基礎的な知識をつけようと「全国学力テスト」を行い、思考力を育てようと「自ら考えさせる授業」を行い、表現力を育てようと「意見を発表させる授業」を行い、主体性を育てようと「自ら課題を設定する授業」を行い、意欲を育てようと「学力テストの点数以外に意欲自体を評価する」ようになっています。

 しかし、本来これらの学力は「良質の教科学習」をすることによって各教科の学力と同時に身についていくものであり、それを意識的に育てようとすることなど不可能なものです。思考力・表現力・学習意欲などを即席の思い付き教育法で育てようとする安易な発想によって、現場の先生たちが子どもの様子を見ながらより良い授業を工夫してきた伝統が急速に壊されていっています。
http://oyaryoku.blog.jp/archives/34687670.html
 「全国学力テスト」では目先の点数を伸ばそうとする先生や学校が増えています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ryouchida/20180829-00094820/
 「自ら考えさせる授業」では、「教えない」ことを優先することで生徒が考える材料を習えなくなり、「でたらめな思考」をするようになっています。
http://hiro12.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-e61b.html
 「意見を発表させる授業」では、意見など持ってもいない内容について発言させられるので「その場の思いつき」を発表するだけになっていたり、先生の期待通りの内容を発言するようになっていたりします。
 「自ら課題を設定する授業」では、何を学んでおけば先の学習が上手くいくかを知らない生徒が学習内容を決めることで「先の学習でのつまずき」を増やす可能性があります。
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2181
 「意欲を評価する」ことは、「授業を真面目に受ける」「きっちり宿題をやる」などの先生の望むとおりの行為を評価することにつながり、生徒の主体性な学習行動や学習意欲を否定する結果になっています。
http://blog.livedoor.jp/yoursong2005/archives/51165851.html


<8>わかりやすい授業

 文部科学省は、授業をわかりやすくしようと「実生活と関連付けた授業内容」を推進しています。
 ところが、「授業がわかりやすい」と答える子どもが多い国ほど学力が低くなっています。
https://www.rikagasuki.com/wp-content/uploads/2015/03/わかりやすさ指数と平均点.png
 「理科が好きだ」と答える子どもが多い国ほど理科ができません。
https://www.rikagasuki.com/wp-content/uploads/2015/03/好きだ指数と平均点.png
 「数学が得意だ」と答える子どもが多い国ほど数学ができません。
https://fundo.jp/wp-content/uploads/2016/04/2_R1.jpg
 要は、実生活に役立つ程度の易しい内容を勉強する国では「授業がわかりやすい」という子どもが多く、高度な教育を行ってきた日本では「授業がわかりにくい」という子どもが多いのです。わかりやすい授業内容を目指すことは「高度な教育を捨てる」という結果につながるでしょうが、本当にそれでいいのでしょうか。


<9>到達目標の明確化

 
文部科学省は、各教科の到達目標を明確化していく方針です。 「この学年では算数で~ができるようになる」「この学年では国語で~ができるようになる」「この学年では理科で~ができるようになる」などの目標を明確化し、確実に達成していこうという考えです。
 しかし、教育において一番大切なことは、各教科の学習を通して子どもの地頭を鍛えることです。つまり、頭を良くすることです。
 かつて、行動心理学者であるスキナーが考えた教育目標を細分化・明確化するスモールステップの原理で成り立つプログラム学習は、段階を踏めば誰でも必ず目標のレベルまで達することができる方法として1960年代に脚光を浴びました。しかしこの学習法は、計算などの単純作業には大きな成果を上げましたが、高度な思考力を育てることには失敗しました。プログラム学習では目に見える目標を順に達成しようとするため、意識的思考だけを強く使ってしまいます。そのため、無意識の思考力である『地頭』が育たなくなり、頭は良くならないのです。
 多くの学習塾は昔から目標を細分化・明確化するスモールステップを使った指導をしています。しかし、年々通塾率は上がっているのに、子どもたちの頭が良くなったという話を聞きません。実際、通塾率の高い県ほど学力が低くなっています。
https://pbs.twimg.com/media/DIUeFEEUQAEfV40.jpg
http://livedoor.blogimg.jp/mineot/imgs/8/3/8320fa2c.png
 「到達目標の明確化」を推奨する文部科学省や教育学者の人達は、教育の本来の目標を見失っているのではないでしょうか。


<10>知識より思考力


 これからは知識より考える力が重視されるようになります。
 実際、先生が何も教えないで生徒が自分で考える授業が学校で行われるようになってきています。
 ところが、全国学力テストの結果では知識と応用力はまさに比例関係にあります。知識と考える力は対立するものだと思われがちですが、本当は一方だけを身につけることなどできない表裏一体の関係にあります。
http://livedoor.blogimg.jp/info_opu/imgs/7/3/737b2806.png

 万有引力の法則を発見したニュートンは「なぜそんな発見をできたのですか」と質問されて「巨人の肩の上に立ったからです」と答えました。先人の知識や智恵を学ばずに考えることなどできません。
https://meigennavi.net/word/00/004577.htm
 論語の言葉に『学びて思わざればすなわちくらし。思いて学ばざればすなわちあやうし。』とあります。知識と考える力は同じだけ重要であり、どちらかに偏らず「知識→思考→知識→思考」と繰り返すことが学問の本質なのです。
http://arcs-edu.com/education/4648
 アインシュタインの言葉に『学校で学んだことを一切忘れてしまった時になお残っているもの、それこそ教育だ』というのがあります。
http://optica.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/by-7cfb.html
 この言葉は学校で学んだことは意味がなかったということではありません。学校で学んだことがあって初めて考えることができるということです。考える力をつける極意を一言でいうと、『知識を学び、そして知識を捨てる』ということです。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw2953812
 多くの学習塾は「知識の使い方」まで細かく教えることで思考力をつぶしてしまっていますが、知識を教えること自体は思考を促進します。各教科の知識をしっかり教えて、その知識を使う練習を生徒自身でやるのが「思考力」を伸ばす一番の方法でしょう。


<11>実用的教育


 学習内容が直接役立たなくても、学習で頭が鍛えられたり、他分野にも学習が転移するという考えを「形式陶冶」、直接的に使える知識や技能を鍛えるという考えを「実質陶冶」といい、両者で論争(陶冶論争)が行われてきました。
http://art-education.shide-n.com/?eid=130
 明治時代に日本で学校制度ができたとき、子どもには生活や仕事に必要なことを直接教えればいいという考えの人が多く、「学校打ちこわし運動」も起こりました。その後の産業発展に伴い「形式陶冶」型の学校教育による「学習の転移」の重要性が認識され、福沢諭吉「学問のすゝめ」も300万部以上売れました。
http://www.jle-labo.com/jiten/gaku5.html
 その後の日本の学校教育では頭を鍛えるための「形式陶冶」型教育が行われてきて、日本の発展を支えてきました。

 数学で形式陶冶を考えます。多くの仕事では数学自体は使いません。では、何のために数学を勉強するのでしょうか。
 数学の問題を解く手順は、①問題文を理解する②解法の候補を考える③有効な解法を選択する④解法を実行する⑤間違いがないか確認する
 仕事でよくある手順は、①課題がみつかる②何が問題なのかを分析する③解決策の候補を考える④有効な解決策を選択する⑤解決策を実行する⑥間違いがないか確認する
 数学で習った内容は使わなくても、考える力は仕事に役立ちます。これが「形式陶冶」です。正解するかどうかより、考えてみることが大切なのです。
http://koguretaichi.com/blog/2017/08/math
 実際、数学者のG.ポリアが数学の問題の解き方について1956年に書いた「いかにして問題をとくか」は、今でも多くのビジネスマンに読まれています。
http://ikadoku.blog76.fc2.com/blog-entry-1492.html
 しかし、教育学者が数値化されたデータを重視しだした1970年代から1990年代初めには「知識には領域固有性」があり「学習は状況に埋め込まれるものだ」と、転移を批判する「状況論」が世界的に流行します。「形式陶冶」に否定的な意見が増加したのです。
http://www.nakahara-lab.net/2007/01/post_729.html
 現在の教育学者達はデータを重視するため、短絡的に結果の出る教育法を研究しています。「形式陶冶」型教育の本質は理解されなくなったのです。
 学校教育でも、「実用的英語教育」「プログラミング教育」「統計学」などの「実質陶冶」型教育の傾向が強まっていますが、それでいいのでしょうか。
https://www.benesse.jp/kyouiku/201612/20161206-1.html
http://bit-consul.com/wordpress/?p=8226
 小中高の教育は「実質陶冶」と相互作用しながらも「形式陶冶」を目指すことが第一でしょう。実用的教育を重視する人達は、長年世界で議論されてきた陶冶論争自体を知らないのかもしれません。

https://news.yahoo.co.jp/byline/terasawatakunori/20180715-00089497/



<12>学び合い

 文部科学省は「学び合い」の授業を推奨していますが、上手くいくのでしょうか。
 運動会の徒競走でみんなで手をつないでゴールすれば、一番遅い子どもの速さにあわせて全員がゴールすることになります。「学び合い」の授業で全員が学習の成果を共有すれば、当然の結果として一番できない生徒にレベルを合わすということになり、個人の自由な発想も制限されるのではないでしょうか。
http://francesco-clara.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/201225-a775.html
 「学び合い」が教育の一つの理想型であるのは確かですが、「学び合い」が上手くいくには「学校以前の環境」を整える必要があります。


<13>エビデンス・ベースト


 エビデンス(科学的根拠)に基づく教育が話題になっています。文部科学省もエビデンス重視の方針をとっています。
 しかし、エビデンスに基づいた教育を導入したイギリスやアメリカではエビデンス・ベーストに批判的な意見が増加しています。
https://askoma.info/2016/03/02/1791

 “本当の学力”は目に見えないもので、統計データで単純に判断することなどできないのです。
 多くの事柄が複雑にからみあう『教育』という分野で、「科学的」の名のもとに「データの中の数字」を重視し、「長年積み重ねられた経験則による教育」を簡単に否定する疑似科学は非常に危険です。



<14>キャリア教育


 1999年の中央教育審議会答申で「キャリア教育(職業観・勤労観・職業知識・技能の習得とともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する力を育てる教育)を小学校から発達段階に応じて実施するべき」とされました。職業について知ることは有意義なことです。
 しかし、キャリア教育の名のもとに子どもに将来つきたい職業に向かって早くから努力させようとする動きがみられます。それでいいのでしょうか。職業は3万種以上も存在します。小さい頃から一つの目標に向かって努力させることは子どもの将来を狭めてしまい、結果的に子どもを追い詰めてしまう危険性をはらんでいるのではないでしょうか。
https://madokasuzuki.com/future-dream/
 適性や興味を限定せず、逆に可能性を広げることこそがキャリア教育の本質のはずです。



<15>学校にも成果主義


 最近、学力テストの結果などで学校や教師を評価しようとする動きが広がっています。
http://www.mdsweb.jp/doc/1029/1029_08a.html
 しかし、教育に成果主義はなじみません。
https://toyokeizai.net/articles/-/237091?page=2
 実際、教育に成果主義を導入したアメリカやイギリスで教育改革が上手くいっているとはいえません。

http://mdsweb.jp/doc/991/0991_08b.html
 教育の成果は数値だけで判断するべきものではないでしょう。
http://blog.livedoor.jp/yoursong2005/archives/50586738.html


<16>理想像の押し付け

 「良い親であるべき」「良い子どもであるべき」「良い教師であるべき」という風潮が今まで以上に高まってきています。国の政策もその方向に進んでいます。
 親たちは、ちゃんとした理想の子育てをしているかどうかを他人に監視されているような状況におかれ、子育てをつらく感じる人が増加しています。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68813
 子どもたちは、「みんなと仲良くしよう」「喧嘩をしてはいけない」「嘘をついてはいけない」「危険な遊びをしてはいけない」「他人に迷惑をかけてはいけない」「テスト対策を頑張ろう」といった理想像を強制され、自分の本心を抑え込むようになり、子どもらしく自由にふるまうことが難しくなってきています。
https://president.jp/articles/-/31200
 学校の教師の仕事は、授業の準備をし、わかりやすい授業をし、宿題やテストの作成や答え合わせをし、落ちこぼれた生徒には個別に対応し、生徒一人ひとりの細かな成績評価を記録し、生徒の進路指導をし、給食や掃除の時間も生徒を見回り、放課後や休日にクラブ活動を指導し、学校行事の準備や後片付けをし、罰を与えずにクラスの規律を守り、いじめのないクラスを作り、不登校の生徒に親身に対応し、登下校・授業・クラブ活動・課外活動の中での生徒たちの安全管理をし、生徒に暴言をはかれたり暴力をふるわれても我慢し、滞納されている給食費や課外活動費を保護者から集め、保護者からの苦情や相談の電話に対応し、英語教育・プログラミング教育・アクティブラーニング・ICT教育・観点別評価などの国の新しい教育方針に対応し、会議や研修に参加し、様々な書類を作成する、など多岐にわたります。これらすべてを完璧にこなすことが無理なのは当然であるにもかかわらず、問題が起こったときに教師や学校の責任を問う風潮がますます強まっています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20191209-00154228/
 人は機械ではありません。先に「あるべき姿」を明確に準備して、全員でそれに真っすぐに向かっていくべきと考える教育はいびつです。親も子どもも教師も、誰もがもっと自然に自分らしく考え行動していいという環境こそが望まれます。


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