安心して暮らせる街高槻をめざして  (財政分析レポート2008.10.19)

☆このレポートは2008.10.19に開催された「第9回地方自治研究全国集会」の「講座・いまからはじめるわが町の財政分析」の中で報告したものです。

データで知る高槻市目次へ トピックスのトップへ メニューへ戻る

                                                                           
 

目次  〇はじめに  1.高槻市のあらまし  2.財政指標にみる高槻市財政の特徴  3.平成19年度決算を読む  4.平成19年度健全化比率の状況  5.高槻市の行財政運営の特徴  6.平成20年度の重点施策は?

 〇はじめに

 このレポートはこの夏、滋賀自治体問題研究所が開催した「自治体財政分析連続講座」で学習したことをもとに「わがまち」の財政を分析する『事例発表会』に報告した内容が中心になっています。講座に役立つように、分析に使用したデータの入手方法やデータ入力、グラフの書き方などについてもできるだけ記述するようにしました。今後の分析の参考になれば、と思います。

1.高槻市のあらまし(括弧内は大津市の数値)

☆面積 105.31平方q(374.06平方q)  人口 359,079人(329,67人) 世帯数 151,593(128,255)  高齢化率 19.0%(18.3%) 昼間人口比率 84.5%(93.7%) 第一次産業 1,018人(0.6%)(2,396人)(1.6%) 第二次産業 39,990人(25.5%)(37,128人)(24.6%) 第3次産業 156,852人(70.9%)(107,811人)(71.6%) 工業事業所数(H17)348 従業員数 12,432人 出荷額 3,856億円 商業事業所数(H16)2,557 従業員数 21,634人 商品販売額 6,633億円。  (決算カードと統計書より)

☆ 大阪と京都の中間に位置することから、のどかな田園都市から人口急増による過密都市へ、そして今は成熟都市へと変貌してきています。府下では唯一市バスを持っています。昼間人口が夜間人口の8割5分と居住型の都市(ベットタウン)です。工業事業所が除々に減少して工場跡地はマンション・分譲住宅に変わってきています。大阪府立の施設は、府営住宅が中層3箇所、低層3箇所がある以外は殆どない現状です。平成15年4月1日より中核市に移行(昼夜間比率100%以上という中核市要件が緩和されました)。法定2036事務、単独275事務の委譲を受けました。独自に保健所を持つのが特徴です。大津市はH21年4月1日に中核市に移行します。H15以降国からの人事配置が始まりました。行政比較指標は中核市が強調されるようになりました。
 

2.財政指標にみる高槻市財政の特徴
 

☆ 基本的には1980年〜2007年の28年間の入力を行っています。グラフはページ数が多くなるためある程度に割愛しました。そして、各ページにその項目における特徴を簡単に書き込むやり方で説明しています。非常に概括的な話になっています。

☆ データは各年度の「決算カード」を使用しています。H13〜H18の県・市町村の「決算カード」は総務省のHPにPDFファイルであります。それ以前については財政当局から入手する必要があります。

☆ EXCELにデータを入力し「グラフ化」機能を利用してグラフにするという作業で行いました。書き込みができるように折れ線グラフが多くなっています。(データ入力とグラフ化が一体にフォーマットされている入力ファイルが「滋賀自治体問題研究所」のHPにあります。ダウンロードしてご利用ください。作成者は今日の講師である初村氏です)。作成したグラフは以下のとおりです。

@ 財政規模の推移    A 歳出の伸び率    B 実質収支      C 地方債現在高の推移  D 積立金現在高の推移  E 歳入内訳金額の推移  F 地方税の推移    G 目的別歳出の推移1 H 目的別歳出の推移2  I 民生費の推移  K 土木費の推移     L 教育費の推移    M 性質別歳出の推移  N 普通建設事業の推移
(以上の15の表についてはここでは割愛しています)

3.平成19年度決算を読む

平成19年度決算は現在決算委員会で審議中です。以下簡単に特徴を述べます。
@ 
決算の状況‥‥歳入総額は前年度比17.29億円増の941.81億円、歳出総額は19.47億円増の931.31億円。
A 
歳入の状況‥‥個人市民税が税制改正により所得税からの転化を含め34.18億円増の214.62億円、法人市民税が同じく4.40億円増の37.83   億円となりました(合計38.58億円)。また、固定資産産税は1.37億円増の189.20億円の歳入となっています。一方、税制改正により地方譲与税が△23.82億円、地方特例交付金が△10.33億円、地方交付税が△33.72億円の減額となり、この合計△67.87億円で、差し引き△29.29億円となっています。そのため、繰入金を8.76億円から18.44億円増の27.20億円として対処しています。
B 
歳出の状況‥‥目的別で見ると民生費の割合が高く23.48億円増の348.11億円(37.4%)となっています。次に土木費114.41億円(7.81億円増 12.3%)教育費113.20億円(△0.51億円 12.2%)などとなっています。
性質別で見ると人件費が△5.78億円の246.54億円(26.5%)、扶助費が14.83億円増の188.82億円(20.3%)、物件費が5.10億円増の120.83億円(13.0%)、公債費△6.40億円の83.00億円(8.9%)などとなっています。人件費・公債費が減少し、扶助費と物件費が増加するという構図です。投資的経費は7.45億円増の78.44億円(8.4%)でした。
C
財政指標‥‥先ず、経常収支比率は前年度より3.1ポイント悪化して94.7%となりました。その原因は経常一般財源が659.04億円から628.37億円へ△30.67億円(税と交付金・交付税の差し引き分)であったこと、扶助費が5.06億円、物件費が2.89億円増加したことなどによろものです。公債費比率は9.9から8.0へ1.9ポイント改善、起債制限比率(3年平均)は7.4から7.2へ0.2ポイント改善しています。起債37.45億円に対して70.75億円の元金償還したため、市債現在高は535.27億円と昨年比△33.30億円となりました。積立金は355.85億円と昨年比△10.50億円でした。
全体としては、経常収支比率がアップしたことに示されるように、市税の増加があるものの各種交付金と交付税、譲与税が大幅に減額となって差引きマイナスとなっており、先行きに不安を残す内容です。市債関係は確実に減額に向かっています。
 
 

4.平成19年度健全化判断比率の状況

平成19年度決算に基づく「健全化比率4指標」についての数値が公表されました。別紙参照。
実質赤字比率‥‥先ず、実質赤字比率ですが、高槻市は1983年以降実質収支黒字を続けています。

2   連結実質赤字比率‥‥特別会計で赤字だったのは老人保健特別会計で△323,169千円でしたが、他の会計は黒字ですので穴を埋めて余りありとなっています。

3   実質公債費比率‥‥地方債の元利償還金、準元利償還金、特定財源、基準財政需要額算入額の4つの数値を把握すれば計算は可能です。高槻市の算定式では、「公債費充当一般財源等」という形で地方債の元利償還金から特定財源を差し引いた数値を公表しているため、非常に分かりにくくなっています。公債費は8,300,729千円、うち経常一般財源は8,212,264千円、都市計画税収入額は3,872,778千円、うち地方債償還額は?です。結果5,025,730千円となっています。
 繰出金12,429,260千円のうち、下水道事業3,615,740千円、水道事業17,319千円、自動車運送事業30,868千円の合計3,663,927千円が準元利償還金とされています。その結果9,028,238千円が地方債の正・準元利償還金となりました。そのうち基準財政需要額に算入されたのが8,691,820千円ありましたので、差し引くと336,905千円が分子となります。分母は標準財政規模64,901,820千円ですので、0.6%という計算結果になっています。

4   将来負担比率‥‥地方債現在高53,527,345千円のうち53,219,460千円を計上(理由は?)。特別会計等の地方債現在高のうち将来一般会計が負担することとなる金額の算定が問題ですが、最も多い下水道事業について現在高750億円のうちほぼ半分の3,615,740千円について一般会計が負担する分として計上しています。そのほか退職手当として39,706,250千円を計上しています。以上を合計すると117,167,204千円。一方、控除額としては、基金額37,382,451千円(決算額35,585,859千円より増えている?)、特定財源見込額43,891,987千円(都市計画税の何年分?)、基準財政需要額算入見込額85,805,460千円、合計167,079,898千円となり、現在の全ての債務は返済できてお釣が来るという計算結果になっています。

5   資金不足比率‥‥対象3会計とも黒字会計のため、資金不足は発生していないという結果でした。

☆   以上の数値を見る限りにおいては全く問題のない健全な会計運営ということができるかも知れません。特別会計に多額の公債費がある場合は実質公債費比率が、特別会計に多額の借金現在額がある場合には将来負担比率が問題になると思われますが、高槻市の場合はいずれも標準財政規模からいって小さい数値といえるようです。今回の算定では、「都市計画税」の取り扱いが焦点となっていたようで、結局、都市計画税収入のうち元利償還金に当てている分については特定収入と認めることで、その分元利償還金が小さくなっているようです。 

5.高槻市の行財政運営の特徴

☆  高槻市の財政状況だけ見ると確かに「健全運営」かも知れませんが、その背景には高槻市がこれまで重点課題として取り組んできた「行財政改革」が強く反映しています。「健全運営」であっても財政危機であっても「行財政改革」を取り組むのは各市同様です。その意味で、各市でどのような「行財政改革」が取り組まれているかその内容を吟味することて、財政数値に隠されている行政の取り組み内容を把握することが必要です。 

@ 第7次行財政改革実施計画

    第7次行財政改革大綱実施計画H20.1)策定
@
効率的運営とA外部化(指定管理者制度)、B業務精査による事務事業見直し、C組織・定数・人事の見直し D財政運営、E公営企業 F外郭団体 G市民参画 の項目について、6次からの継続課題と業務精査からの課題を掲げ、ローテーションで進行管理されています。

    第6次実施計画の成果H16〜H18)

74の項目について検討を加えています。@施設の効率的な運営3 A外部化14 B事務事業の見直し38 C組織・定数・人事の見直し6 財政運営5 D公営企業5 E外郭団体1 F市民参画の推進3 G追補3 です。

強調されているのは財政効果と職員数の削減です。当局が成果とする数値は以下のとおりです。

年度

採用

退職

職員数

各年度財政効果

累積額

H14

66

141

2,713

H15

93

147

2,686

H16

69

141

2,608

18.0億円

18.0億円

H17

84

147

2,552

27.8億円

34.8億円

H18

108

176

2,512

48.9億円

60.6億円

合計

420

752

332

 

113.4億円

4月1日現在の人数 

A    全ての事務事業の業務精査(事業廃止・見直し・アウトソーシング・負担)

    「市の関与の必要性、市が実施主体となる必要性」を評価し予算・人員査定・事務事業評価に反映する「業務精査」をH19年度より実施している。

    「平成19年度業務精査の実施について」‥‥推進本部と専門部会と作業チームを置き、政策・人事・予算が連携して作業を行い、基本台帳作成→作業チームヒアリング→専門部会検討→本部評価→行財政改革懇話会報告→議会の流れで実施。H19年度〜22年度の4年間でおよそ1000ある全ての事務事業について精査する。

    精査方針‥‥@官民の役割分担の見直し(市の関与が不要ならば事業の廃止・民営化・移管)A実施手法の見直し(アウトソーシング)(主体となることが不用ならば民間委託・指定管理者制度・PFI・市場化テスト・市民協働・地域協働)B事務事業の効率的運営(収支・財源・効率化・スリム化・削減・質の向上)C受益の見直し(負担を求める)

    平成19年度は125事業(47の課)を対象に精査を実施(相当期間経過した市の単独事業を対象にする)‥‥精査結果 廃止を含む検討20 外部化等の検討18 見直し等60 負担見直し3 成果維持24 このうち22事業については「第7次行革実施計画」に載せて進行管理を行う(図書館・環境科学センター・都市公園・厚生会館・少年少女合唱団など)

 

  ☆ 一般に「事業仕分け」と呼ばれている取り組みを高槻市では「業務精査」という方法で行っています。その特徴は、行政内部の職員による作業が基本となっていることです。企画・人事・財政が連携して事務事業を点検する方法をとっています。事前に「評価書」を作成して事業課とのヒアリングにおける議論が中心舞台となっています。事業課が各々の事務事業について市の関与の必要性・実施主体となる必要性・運営上の課題等について証明していくことになります。この「業務精査」が本格的な事務事業の総点検になると思われます。それは、このための専門スタッフ数名を部長職の再雇用者にあてていること、全事務事業を対象としていること、行革実施計画とリンクさせて進行管理していくこと、財政と人事がタイアップして次年度以降に必ず反映する体制をとっていること、などに現われています。
 

B    指定管理者制度(アウトソーシングによる経費削減) 

    H16年当時の市長公室長(自治省からの出向・現武雄市長)が率先して推進。

    H16年12月「指定管理者制度に関する基本方針」策定。指定管理者選定委員会設置。

    指定の実績‥‥ 公募・12個所、特定36箇所の合計48箇所が指定管理者制度を導入。平成18年度 公募・10箇所、特定34箇所とする。平成19年度 特定・2箇所。 平成20年度 公募2箇所。

    公募12箇所の内訳‥‥プール4 駐車場5 お風呂1 市営住宅1 老人福祉センター1(H18.4.1〜H23.3.31)

    H20.9 駐車駐輪場と老人福祉センターで公募を行っています。

    H18年度における指定管理者による公の施設の管理状況」(H19.9)公表‥‥利用状況・収支状況・事業評価を行う。

    「指定管理者制度に関する直営施設への導入方針」(H18.12)策定‥‥対象 全ての公の施設 方針 原則適用 除外は@管理主体が法律で定められている(例学校教育法) A明確な理由(平等・公平・行政) B直営でより大きな効果 C市場性がない 

    検討対象は278施設‥‥うち公園187 学童保育42 保育所13 公民館13 図書館5など。
 

 ☆ 指定管理者に対する取り組みでは「先進」を行っていると思います。それは取り組みのスタートが早かったこと、H18年度にいち早く第一次指定を行ったこと、今後全ての「公の施設」についてその「有無」を原則適用の方針のもとで検討しようとしていることにあります。
今後「保育所・公民館・図書館・学童保育」などが遡上に上って直営かアウトソーシングかが検討されることになります。また、特定として市の外郭団体が委託を受けた事業についても3年後には特定か公募かが再検討されて公募への窓口が拡大されようとしています。毎年「指定管理者による公の施設の管理状況」について事業課の自己評価と部の評価を行っていますが、市民サービスの向上の側面に対する評価は弱くやはり強調されているのは収支状況であり、委託費の削減がどれだけ実現したか、に集中しています。その委託費の削減が経営改善が即ちそこに働く職員の人件費の削減ではないかと、福祉施設などのマンパワーが中心の施設では特に危惧されます。
また、今後公募を増やしていくことで市の外郭団体のあり方が問われるところから、「外郭団体のあり方に関する基本方針」(H19.1)を定め、11の法人について、廃止を含む検討・体制強化・事業充実等の方向性を示しています。


6.平成20年度の重点施策は? 

    強調されているのは「子育て・教育・食育」で、子育て支援・学力向上・食育の推進の取り組み、「安全安心のまちづくり」では、災害に強いまちづくり(防災公園整備・消防本部建替え・公共施設耐震化など)子ども市民の安全を守る(警備員・AED・交番の新設など)、「都市機能の充実」では道路網の整備(第二名神・連絡道、交差点改良など)まちの活性化(JR高槻駅北東地区市街地整備・関西大学支援など)「高齢者・福祉・医療」「市民参加・市民協働」の5点を挙げています。

    ビッグプロジェクトとしては、JR高槻駅北東部地区再開発事業が進行しています。湯浅工場跡地約9.3haを3エリアにわけ、A・Bエリアでマンションや商業施設、Cエリアで関西大学の開校をめざしています。再開発は区画整理事業として行われます。市は道路を中心とした周辺整備を主に担当します。関西大学新キャンバス(約1.8ha)は、小学校から大学院までの一貫教育拠点で、社会安全学部を新設する予定です。13階建校舎(延べ床53,000u)とグラウンド・体育館などを建設します。市としては先ずグラウンド部分の0.9ha(緊急避難場所指定)を無償貸与します。国の補助金対象となった施設部分の建設費36億円を国・市・関大で折半、市と国は12億円を補助します。地鎮祭8月29日、22年春の開校予定(2年半の工事期間)。用地費も含めるとおよそ40億円となる「支援」をめぐって議会で議論が行われています。 
 

トップ家族新聞トピックスデータ高槻市読書映画家庭菜園ソフトボールジョギングコラム日記写真集リンク集