連載 第 5次行財政改革実施計画(H12〜H14)を読む   (8回連載の予定)


★「市労組ニュース」で連載を始めました。内容を体系的に紹介しながら、問題点・課題について指摘することが眼目の連載です。
★「第五次行財政計画実施計画」の全容は別途提供しています。( 
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(第1回) 全52項目(継続12・新規40)を盛る 
第1表 実施計画の体系

大項目 項目数 構成項目
1.行財政運営の効率化 30 事務事業の見直し (6) 財政運営の効率化  (4)
    職員定数の適正化 (1) 民間活力の活用  (1)
    職員給与等の適正化  (3) 施設運営の適正化  (6)
    自動車運送事業の効率的運営 (4) 水道事業の効率的運営  (4)
    外郭団体の効率的運営  (1)  
2.効果的な行財政運営システムの確立 12 行政評価システムの導入  (2) 行政の協働化の推進  (5)
    行政の透明性の確保  (3) 行政プロセスの改善  (2)
3.職員の意識改革と行政体質の改善 4    
4.新たな時代への対応 6 行政の情報化  (4) 地方自治の推進  (2)

 高槻市は、『第五次行財政計画実施計画』を9月議会に公表しました。先に公表されていた『第五次行財政改革実施計画基本方針』に基づいて作成されたもので、平成12年度より平成14年度までの3年間に達成すべき行財政改革の計画が列挙されています。
 市労組はかねてより「地方行革」を重視して、その内容を監視、時には告発してきました。それが往々にして市民生活や職員に犠牲を強いる計画が多かったからです。今回の計画はどうか。以下、内容に沿って特徴を見ていきます。
 第五次計画は項目数でいうと、全52項目、そのうち前からの継続が12項目、新規が40項目となっています。その構成体系を表に示しました。
 先ず、全般的な特徴としては、「見直し・検討・適正化・委託化・統廃合・値上げ等、従来の手法を踏襲して新たな展開を行っている項目(34項目)」と、「行政の進め方について新たな課題を提起した項目(18項目)」に分かれています。前者を「新リストラ・プラン」後者を「新行政手法プラン」と命名して、以下考察していきます。



(第2回)
 
新リストラ・プランの体系   
第2表 新リストラ・プランの体系

行財政運営の効率化・職員の意識改革の行政体質の改善 (34項目) 事務事業に係るもの 12項目
職員に係るもの  6項目
施設に係るもの  7項目
市バスに係るもの  4項目
水道事業に係るもの  4項目
外郭団体に係るもの  1項目

 「新リストラ・プラン」は、表のとおりの体系となっています。市バス・水道事業・外郭団体については各々計画を立て、教育を含む市長部局は、「事務事業」「施設運営」「職員」の3つの観点から計画が立てられています。以下、各々について見ていきます。

第3表 新リストラ・プランその1 事務事業の見直し[12]

(継続) (新規)
@ 富田園芸組合の一般対策化 F 街路樹等の管理委託
A 公共工事のコスト総額の縮減 G 学校園の環境整備業務の見直し
B 学校給食のあり方見直し H 府有地占用料の徴収
C 使用料・手数料の見直し I エコオフィスプランの策定
D 経常経費の節減 J 要望等の回答合理化
E 普通財産の有効活用 K 機動的横断的組織の検討

 先ず、事務事業の見直しですが、第4次からの継続6件、新規6件です。継続は、経常経費の節減・財産の有効活用・工事コストの縮減・使用料手数料の見直しと一般に指摘される項目が列挙されています。中でも、「学校給食のあり方の見直し」で、あり方を見直す中に「委託化」が視野されているか注意が必要です。新規では、街路樹の管理委託が打ち出され、学校の環境整備業務の見直しが入っています。エコオフィスプランの策定が目新しい計画となっています。
 全体としては、上げられた概括課題の下に個別具体的にどういう内容が実施されるか、が問題です。


(第3回) 施設運営の委託化・見直し 
第4表 新リストラ・プランその2 施設運営の委託化・見直し[7]

@ 学校の統廃合 D 市立養護学校のあり方検討
A 余裕教室の活用 E 体力づくり教室事業の委託
B 障害者施設のあり方検討 F 葬祭センターの併設と運営形態の検討
C うの花養護幼稚園の統合  

 新リストラ・プランその2は「施設運営の委託化・見直し」です。教育・福祉・衛生分野の施設について7項目が上がっています。教育では「学校の統廃合」が大きい。この課題は別に「審議会」が設置され年度末には答申が出る予定といいます。学校が当該地域コミュニティの中心施設となっているのは確かですから、その「統廃合」が具体化されると市民の中で大きな議論を呼ぶことになるのは必死の状況です。明確な学校のあり方ビジョンと高槻の将来像が要求されるところです。余裕教室の活用の課題も審議会があり検討されています。福祉では、障害者施設の再編成が計画されているようでうの花養護幼稚園の統合や市立養護学校のあり方などがその中で課題になっていると読むことができます。それでは高槻の障害者施策は今後どうしていくのかのプランなしでは、ことの実行は不可能といえます。
 衛生では火葬施設の建替えと葬祭センター併設が上がっています。そして市営葬儀も含めその運営形態の検討を行うとあります。第三セクターへの委託などが検討されるのでしょうか。


(第4回)全職員の定数削減・給与適正化 
第5表 新リストラ・プランその3 職員の定数削減・給与等適正化[6]

@ 退職不補充、職員数の5%削減
 
C 退職手当の支給率の見直し
 
A 給料表体系の見直し
 
D 人材育成方針策定
 
B 特殊勤務手当の見直し
 
E 専門職員、技能職員の職域の拡大
 

 新リストラプランのその3は「職員」に関するものです。第4次行革は職員削減と給与見直しに重点を置き、4年間で80億円もの人件費削減が実行されました。この第五次行革においても、ひき続き人件費が標的となっています。
 具体的には、@退職不補充によって4年間で5%(145人)もの職員削減をめざす A在職者給与では給料表体系と特勤手当を見直す B退職者の退職手当を見直すといった徹底ぶりで、今後とも計画的・体系的に個々と総体の人件費の削減を行おうとしています。
 職員数は普通会計ベースで1981年度2,754名でした。それが1999年度では2,334名となっており、この間実に420名も減少しています。それを更に削減しようとするリストラ計画は「市民に役に立つ所」としての市役所の機能の根幹に関わる大問題といえます。
 また、専門職・技能職の職種変更を意味する「職域の拡大」の強調は、当該職員の仕事と人生に大変な転換を迫るものであり、職場と本人の納得が大前提であることはいうまでもありません。


(第5回)行政運営・新手法その1
第6表 行政新手法・プランの体系[18]

行政評価に関するもの 2項目 行政協働化に関するもの 5項目
行政透明性に関するもの 3項目 行政プロセスに関するもの 2項目
行政情報化に関するもの 4項目 中核市に関するもの 2項目

第7表 新行政手法・プランその1 行政の進め方[4]

@ 行政評価システムの導入 B 公共用地取得等調整委員会の設置
A 行政評価の事務事業への適用 C 公共施設建設等調整委員会の設置

 今回の行革プランには、行政の運営のしかたに転換を求める課題が数多く盛られています。その体系は第6表のとおりです。行政評価・行政協働化・行政透明性・行政プロセス・行政情報化・中核市の6課題18項目です。それを、「行政の進め方」「行政のあり方改善」「市民等との関わり方」「中核市」の4つに再編成して、以下、順に見ていきます。
 先ず、「行政評価システムの導入」です。第五次行革には、全国的に流行しているニューパブリックマネジメント(NPM)と呼ばれる行政運営理論が色濃く反映されています。行政評価システムはその一つで、当面事務事業を対象に、目的妥当性・有効性・効率性を事後評価することによって、予算要求や見直し、プラン立案に役立てるとしてます。第五次行革の中心的役割を担うことが強調されていますが、全国に種々の類型が試行されているなかで、個別高槻市に必要な行政システムとしての体系が見えてきていません。最低、実施要領等による文章化くらいは必要でしょう。


(第6回)行政運営・新手法その2
第8表 新行政手法・プランその2 行政のあり方の改善[7] 

@ バランスシートの作成と問題点の検討 D 庁内のネットワーク化
A 事業別予算書の作成 E 地理情報システムの構築
B 審議会等の審議状況の公開 F スポーツ施設情報システムの導入
C 市のホームページの充実  

 行政のあり方の改善では、バランスシートの作成、事業別予算書の作成、地理情報システムの構築、審議会の公開、市ホームページ充実、庁内ネットワーク化、スポーツ施設情報システムの導入、の7項目が掲げられています。行政の説明責任(アカウンタビリティ)の明確化と、情報技術(IT)への対応の課題です。
 ストック情報であるバランスシートが初めて作成され、事業単位の予算説明書が作られようとしています。いずれも財政をより判り易くしようとする一歩ですが、それらの情報が具体的に何を示しているかをわかりやすく十分説明することが求められています。
 IT対応では、庁内のネットワーク化が今後の中心課題になると思われます。庁内LAN、グループウエア(電子メール、文書管理等)などによって仕事の進め方が大きく変換していくことが予想されます。そうした状況のなかで、高年齢化などによって対応が困難な職員も含めて、情報リテラシーの問題がしっかり位置付けられることが必要です。


(第7回)行政運営・新手法その3
第9表 新行政手法・プランその3 市民等との関わり方[5] 

@ 産官学連携推進協議会の設置 C 商工業振興支援システムの構築
A 環境基本計画を協働で D 実行委員会での人権平和の啓発事業
B 市民活動を進めるための懇話会の設置  

 次に、市民等との関わり方では、事業者やNPO団体、大学などとの「協働」が強調されています。そのための具体的課題として、産官学連携推進協議会の設立、協働による環境基本計画の策定・実施、NPO団体等をまちづくりのパートナーとして位置づけ活動の推進を図る、商工業振興支援などが打ち出されています。多くが平成12年度施政方針の中で触れられている課題です。
 環境政策は市長の交替でこの間大きく転換されて、施策体系化へ取り組みがなされています。NPO団体等への活動促進は時代の要請するところとなっており、計画の策定と具体化が望まれています。商工業振興支援は、各市とも緊急な課題として指摘されているところです。
 協働の強調は行政責任の明確化と表裏一体のものであり、官の肩代わりを意味するものであってはならないことを念のために指摘しておきます。


(第8回)最後に 中核市問題
第9表 新行政手法・プランその4 中核市への移行[2]
 

@ 政策形成支援制度の確立 A 中核市への移行

 最後に中核市への移行の問題です。地方自治法の改正により、高槻市が中核市の用件を満たすことになりました(現在中核市が27市、候補市が7市)。全国の都市を政令市-中核市−特例市-一般市にランク付けしようとするものです。
 中核市移行によって、保健所の設置・運営を中心にして、権限や事務の委譲が行われますが、財源の委譲がないため、市の財政には多大な影響が予想されます。従って、今、総務省が進めている市町村合併促進と同様に、中核市についても、早急な結論を出すのではなく、市民への徹底した情報公開によって、移行のメリット・デメリットなどをはっきりわかるようにした上で、市民合意を形成していくことが必要といえます。
 特に、中核市への移行を契機にして、行政を国の指導基準並みに平準化していく「国並都市」が目論まれることがないように、十分な監視が必要です。
 以上、8回にわたって、全体で52項目もある第五次行革のプランの各項目について見てきました。平成12年度から3年間の計画であり、現在進行中です。十分な監視とともに、問題が明らかになった場合は具体的な対応が求められています。

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