北イングランドへ


旅の日程
2000.9.16-22
トランスウェイトホール

ケンダル

ウィンダミア

カーライル

セトル・カーライルライン

スキプトン

ロウ・スキブデン・ファームハウス

ボルトンアビー

マンチェスター科学産業博物館

おまけ

旅のIndex






















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カーライル

セトル・カーライルライン

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ロウ・スキブデン・ファームハウス

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出発まで
ひょんなことからイギリスに行く事になった。 2年ほど前、職場の上司に「ヨーロッパ・田園と農場の旅」という本を借りて読んでから、 グリーンツーリズムというものを一度体験してみたいと思ってはいたのだが、 7月に 「モーモー母ちゃんの集い」 でお会いした「田舎のヒロイン」の山崎洋子さんが、 イギリスのファームステイを手配してくれる会社を紹介してくださるとおっしゃってくれたので 突如イギリス行きを決めてしまったのである。
残念ながら山崎さんに紹介頂いたOIEとは縁がなく、ブッキングはお願いしなかったが、 OIEの小宮さんに Stay on a Farm というイギリスの農家民宿を紹介するサイトを教えていただいた。
このサイトには1000軒ほどのB&B(Bed & Breackfast朝食付き民宿)が紹介されている。
以前、NHKBSで見た湖水地方の風景が何とも言えず牧歌的で魅力的だったので、 湖水地方のB&Bを検索していると、 「この地方で最も古いファームハウスで、乳牛と羊を飼っている」という説明と、 石造りの建て物の写真が私の目をひいた。
mail addressがあったので、英文で丁重な予約のメールを出してみたら、 "yES WE ACCOMADATE YOU FROM THE 17 SEPTEMBER WHAT KIND OF ROOM WOULD YOU LIKE. LOOK FOWARD TO HEAR FROM YOU."という返事があった。これは全くの原文どおり。 私の書き間違いではないのであしからず。でもこの文章を見て私はリラックスしてしまった。 しゃっちょこばってメールを書く必要なし。 中学生レベルの英語のお手紙で十分コミュニケーションがとれそうだ。
その時私の頭の中には、 慣れないパソコンに向って一生懸命キーボードを叩くイギリスの農家のおばちゃんの 微笑ましい姿が浮かんでいた。
これでとりあえず3日間の宿泊先が見つかった。もう1ヶ所くらい泊るところを確保しなければいけない。 でも、急に思い立ったイギリス行き。いったいどこに行けばいいのやら。
そんな時、大学の同級生C.O.からメールが届いた。彼女のオススメはヨークシャーデール。 よし、それだ!ヨークシャー地方に行こう。
さっそく、"Stay on Farm"で検索開始。 Harrogateにある牧羊犬のブリーダーとして有名だと言う農場を見つけてメールを出してみた。 でも、私のメールは24時間世界のネットをさまよい「宛所無し」というMail-Damon君からのメールが帰ってきた。 それを2回繰り返しGive Up。宿探しは一時お休みとして、足の確保に乗り出した。
確か「地球の歩き方」のジオクラブでヨーロッパのレイルパスを扱っているはずだと思い出し、 地球の歩き方ホームページにアクセスしてみた。
あるある。ブリッドレール・フレキシーパス4日間、23,900円也。鉄道料金を調べてみたら、 ロンドンと湖水地方の往復できっちり元が取れる価格だった。さっそく購入。 もちろん、ネットから申し込みできる。
ついでに Welcome to UK Railways on the net というイギリス鉄道のサイトも見つけることができた。 このホームページは実に使えるサイトで、時刻表検索ができる。 ジオクラブでレイルパスを申し込むとトーマスクックの時刻表が貰える。 それで時刻表を調べればいいのだが、イギリスの列車の時刻表は曜日によってコロコロ変わるので、 うっかりすると曜日を間違えて列車を逃すなんてことも有り得る話だ。 でも、UK Railways on the netの時刻表検索(Rail Travel Timetable)のページに、出発地、目的地、 旅行日を入力すれば 一発で最短時間の列車時刻を表示してくれる。
おまけとして、 ホテル検索のページともリンクしているからこのサイト一つあればイギリス中を旅できそうだ。
私も結局はこのサイトからヨークシャーのB&B Farm Housを手配した。

そんな風にして、私のイギリス旅行は目鼻がついた。出発の1ヶ月前だった。 毎年、私の旅行計画は寸前までバタバタして、ホテルの予約も取らずに出掛ける事もある。 出発してしまってから、予約の返事のファックスが職場に入り、同僚を慌てさせたこともあった。 それから見れば、今年は実に用意周到、パーフェクトな旅行計画である。
旅行計画を立てながら「時代だなぁ。」と感じたのは、 すべてインターネットから手配することができたことだ。 便利な時代になったものである。今回は航空券こそOIEにとってもらったが、 その気になればJALインターネット国際線予約 のページから購入できるから、家から一歩も出ないで海外旅行の手配ができるってことだ。 都市で生活していれば、近くに旅行社もあるからこまめにHISとかMapなんかに通って、 手配や下調べもできるが、田舎に住んでいるとそうもいかない。 その点、ネット上で手配や下調べができるようになったことは、 田舎生活者にとって本当にあり難い事だ。 インターネット時代は都市生活者よりむしろ地方生活者に、 より大きな恩恵をもたらせてくれるものだということに私は気付いた。

さて、早々と手配を完了して、余裕を持って旅立てるはずの私だったが、やっぱり出発前はドタバタだった。
出発前日の敬老の日、仕事に出ていた私は往診を終え、 カルテの整理を済ませて他の獣医が帰っていってからも、一人居残っていた。 もし飛行機が落ちても、あの世に発つ鳥、後を濁さずということで、 その日までの全ての事務を整理して休暇届を書き終えたのが6時半。 サティーに寄って足りないものを買って帰ろーっと!と席を立ちかけたら電話が鳴った。
繁殖和牛農家の人からの相談の電話だった。 生まれつき足の弱い生後5日の子牛を昨日H先生に見てもらったが、 日にちが経てばしっかりしてくるだろうから様子に見るように言われている。 でも今日になって足が腫れているように思えてきた。放っておいてもいいものか。そんなような内容だった。
電話を掛けて来た農家さんは、 夕方になって獣医が帰りそうな時間になると牛の様子が心配になってしまう人で、 いつもそれぐらいの時間に相談の電話を掛けてくる。 大抵は軽い症状なので処置を指示したり、 生理的なことがらだったら「心配ない。」と言って安心してもらえば事は済む。 だから、その時もその程度の事だろうなと思っていた。 今晩は湿布しておいて、明日往診するという線で落ち着くだろうと。 でも、話を聞いていると、相談しているようでいて内心は往診に来て欲しいという感じだ。 私の脳裏には「骨折」という言葉が浮かんだ。足は負重していると言うが、 生まれたての和牛というのは体重が軽いせいかポッキリと骨が折れていても結構平気で歩いていたりする。 生まれつき足の弱い子牛がフラフラと乳を飲みに行って、 親が動いた拍子に転び、親に踏まれて骨折していたなんてことは偶にある。 往診してみると、子牛の足はさほど腫れてはいなかった。ん? 触診してみた。 「コキコキコキコキ。」 残念ながら私の危惧は現実であった。子牛は骨折していた。
危ない、あぶない。 もう少しのところで、 骨折している子牛をほっておいて旅行に行ってしまったロクでもない獣医になるところだった。
処置を終えた私は、さすがにカルテを書きにだけ事務所に戻る気にはなれなかった。
翌朝、関西空港の搭乗ロビーの公衆電話から診療所に電話を掛け、 「右後肢中足骨近位にて骨折。骨折整復と距離は夜間でとっておいてぇ。」 と、 知らない人が聞いたら訳の分からない事を叫んでいた私だった。
こうして今年も落ち着きなく旅は始まった。 つづく

2000年9月
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