カーライルからセトルへ

ケンダルからスキプトンまではバスで行くのが最も近道。
60qくらいの距離だから、1時間かそこらで行けるんだろう。
それを敢えてカーライル廻りで半日掛りで行ったのにはわけがある。 カーライルとセトルをつなぎ、ヨークシャーデールを縦断する列車に乗りたかったからだ。
山と言えるような山に乏しいイングランドの中で、この路線の走る途中には、 帝国書院の地図帳にも「山」と表記されているものがあるのだ。
カーライルで列車を乗り換えた。2両編成のローカル線だ。乗客の中には軽登山スタイルの人もいて、 マウンテンパーカーを着て中位の大きさのパックを背負った私の姿も違和感がない。
この列車は日本のローカルな急行列車の雰囲気に良く似ている。 車内販売のワゴンが短い車両を何度も行ったり来たりしていた。 売り子のおじさんは陽気で、乗客たちと軽口をたたいていたが、 それでいてジェントルマンなのがいかにもイギリスらしい。 乗客は対面シートで談笑しているし、昼間からビールを飲んでご機嫌だ。 ほとんどの人が観光客のようだった。
しばらくは窓の外に見慣れた光景が続いた。 なだらかな丘陵地に放たれた羊と牛。次第に風景が開けていき、 十勝地方のような光景がやや高い所を走る列車の窓から見渡せた。
私の頭の中には、同僚の十八番「高原列車はラララララ行くよー。」という歌が浮かんでいた。
どんどん高いところに登っていることは分かったが、 いつまでたっても丘また丘。どこに山があると言うんだ。
「ウェールズの山」という映画があった。 イギリスのウェールズ地方で村自慢の山(それだけイギリスには山が無いってことだが) を測量したら山として地図に載るには6メートル足りないことが分かり、 皆で丘の頂上に石を積む話だが、 もしかしてヨークシャーの山もその類のものなんだろうかと思い始めた時、 見た事も無い風景が車窓に現れた。
なんだこれは。凄い。とにかく凄い。
山?山じゃないだろ。壁だよこれは。もしかして城壁?そんなわけない。大きすぎる。
山には頂上があるものと思い込んでいた私には、それは大きな岩盤にしか見えない。 巨大な屏風岩の黒い岩肌から崩れ落ちたように裾野に堆積した土砂の斜面には幾筋もの雨の通り道が 枝分かれして溝を作っている。勾配がなだらかになったそのまた裾野にはまばらに草が生えていた。
おや?ここはカルスト地形なのか、貧弱な草むらの中にポツポツと白い塊がある。 よく見ると羊だった。
こんな下手くそな描写では、その恐ろしく雄大な地形を説明しつくせない。 早く写真を見せろよとお思いでしょうが、写真はありません。 この目で見るのに一生懸命で、写真を撮るのを忘れていたのです。
絵こんなんで勘弁してください。 下手くそな絵ですが、何度も書き直してやっとこれです。
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