ケンダル

ケンダル KENDAL

ケンダル駅ケンダルはかなりの田舎町だ。
右の写真はケンダルの駅だが、駅舎はなく、プラットホームにこのような待合所があるだけ。 駅名表示板に、チケットは車内で車掌から買ってくれという注意書きがある。 日本でも田舎暮らしの人にはお馴染みの無人駅なのだ。
駅は街の外れにあるが、これは田舎に限らず、イギリスでは常識。 日本の街は鉄道の駅を中心に発展しているが、イギリスではそうではないらしい。

そんなケンダルの街外れの駅前にあるのがケンダル博物館。
古代の遺跡からの出土物から近代までの展示物。 これは月並みな感じだが、 地下にある世界の生き物の剥製を集めた部屋は一見の価値がある。 中でも写真のホッキョクグマは結構有名らしい。

タスマニアン・デヴィル でも、私が驚いたのは、オーストラリアのタスマニアオオカミ (信じられないけどそう書いてあった。 帰ってから、平凡社刊「動物大百科」で確認したが間違い無いようだ。)とか、 動物園では見た事も無いような、 おそらく絶滅してしまったか絶滅寸前みたいな動物がゴロゴロいることだ。
これも、大英帝国華やかなりし頃、 イギリスのお金持ちがステータスとして世界各国から集めたものなのだろう。 今や、そういう剥製を家に飾りたてるような悪趣味は流行らなくなって、 博物館に寄贈されたってところなのだろうが、 それをこんな片田舎の街でさえ、 きちんと博物館として充実させているところが文化的ともいえる。
そんな事を勝手に想像しながら暫し博物館で感慨にふけっていたが、 この剥製動物のフロアにいたのは私と掃除のおばちゃんだけだった。

ケンダルには3つのミュージアムがあって、 そのうち一つのミュ−ジアムで入場料3ポンドを払うと、 後の2つのミュージアムに1ポンドで入れる割引券をくれる。
これはお買い得。 というわけでアート・ミュージアム(美術館)と湖水地方・生活と産業博物館まで 歩いて行く事にした。
ケンダルは田舎のこじんまりとした街だから、 ツーリストインフォメーションなんかに置いてある "Today's Kendal"というパンフレットにあるみどころは、 ほとんどが歩いてまわれるところにある。 パンフレットの地図を見ながら川沿いの道を歩いていると、 川の西側に遊歩道があった。
川沿いの風景
どうやら、遊歩道沿いに目当ての2つのミュージアムがあるらしい。
イギリスでは、市街地でも田舎道でも、車の通らない抜け道が作られている。 日本とは違って歩く者の権利が守られているということらしい。 その代わり、幹線道路を走る車はけっこうなスピードで飛ばしているので、 Foot Path(日本語に訳せば歩行者用抜け道とでも言うのだろうか) を見つけられなかったりして幹線道路の路側にある歩道を歩いた時には結構恐かった。
ケンダルの川沿いの遊歩道は、日本風に言うと団地みたいなところを通っている。 本当は遊歩道というより、車両進入禁止の生活道路なのかも知れない。 道端に置かれたベンチでは猫がまどろんでいた。 猫ものんびりとしていて、近づいても逃げようとしない。 私も猫の隣に腰かけて、猫と戯れつつ休憩。

アート・ミュージアムでは常設展の他、 ジョン・ラスキン展が催されていた。 私はその名前を聞いた事はあったが、 じっくりと絵を見るのは初めてだった。 私の母の言うところの「鼠のションベン」タッチのほのぼのとした画風。 安野光雅の絵を思い出した。 安野さんも影響を受けたのだろうか。 すっかり気に入ってしまい画集を買いかけたが、 「旅行中に、こんな重い物を買ってどうするんだ。」と我に返り、 絵葉書を1枚買った。

アート・ミュージアムと同じ敷地に向かい合って、 湖水地方・生活と産業博物館がある。
受付のおばちゃんが日本語のパンフレットを探してくれた。
玄関には1856年に製造された印刷機が置かれていた。 印刷機と言われなければ、なんだかよく分からない大きな厳つい機械だ。 新聞を印刷していたそうだ。
中に入るとまず、19世紀の街頭風景が再現してある。 そして、この地方の産業に関わる古い機械や道具が展示されている。
中世、ケンダルは羊毛製品の生産の中心地で、「羊毛は我がパンなり。」 をモットーとしていた町だそうだ。 パンフレットによると ロビンフットもケンダル製の布でできた服を着ていたという事になっている。 ホンマかいな?
18世紀になると、ランカシャーで柔らかい羊毛を大量に生産するようになって、 湖水地方の羊毛は人気が落ち、19世紀になるとすっかり廃れてしまったそうだ。 その後また、手作りの良さが見直されて工場や産業学校が復活しているらしい。
二つの博物館の隣にはパリッシュ・チャーチという結構大きな教会がある。 ここでも、長身の「イギリス紳士」という感じのおじさんが日本語のパンフレットをくれた。 この町で日本人に出会う事はなかったが、 偶には日本人も来るのだろう。 パンフレットを見ても、 クリスチャンではない私には宗教的価値はよく分からなかったが、 荘厳な雰囲気の建て物だ。窓のステンドグラスも美しい。

出発まで トランスウェイトホール ウィンダミア カーライル セトル・カーライルライン

スキプトン

ロウ・スキブデン・ファームハウス

ボルトンアビー

マンチェスター科学産業博物館

おまけ