【コラム】相続登記をした後のダイレクトメールについて

相続登記をした途端、不動産業者等からダイレクトメールが届くことがあります

相続登記をすると、不動産業者等からダイレクトメールが届くことがあります。

「相続した あなたの不動産を買い取ります!」
「相続した不動産を高値で売ります!」

といった内容で、相続や遺産分割といった極めて個人的な情報がどこで漏れたのか気持ち悪いと感じる方も少なからずいるはずです。相続登記をした直後からダイレクトメールが来ることが多くなったので、相続登記を頼んだ司法書士が情報を漏らしたのか!と激高される方もいます(司法書士は法律で守秘義務を負っているので、情報を漏らすことはありませんし漏らせません)。

ダイレクトメールが届く仕組み

ここでダイレクトメールが届く仕組みをお教えします。

ただし仕組みを知る前に、まず相続登記を申請したとき登記簿に載る情報を知っておく必要があります。
登記簿には、相続した日付と、所有権名義人となった者の住所と氏名が記載されます。
これは公開情報であり、不動産の所有者が登記簿上に記載された人物であることを公示することで、その権利を第三者に対抗(主張)することができるようになります。不動産という唯一無二の財産を、自分が持っていることを主張するために住所と氏名の記載が必要になるのです。

そして、ここからが本題です。

法務局には「受付帳」という書類があります。
不動産登記規則に基づき、全ての法務局に備え付けられます。

「受付帳」には、登記申請内容の概略が記載されます。

具体的には、受付年月日、受付番号、大まかな登記の目的(所有権移転相続・法人合併、所有権移転遺贈・贈与その他無償名義、抹消登記など)、不動産の地番、家屋番号が記載されています。

この「受付帳」だけでは誰が相続したのかはわかりませんが、不動産の地番と家屋番号の情報があれば、誰でも手数料を支払うことにより、登記簿謄本(登記事項証明書)を取得することができます

すなわち「受付帳」から、相続が発生した不動産の地番と家屋番号の情報を得ることができれば、効率よく登記簿謄本を取得し、相続した人物の住所と氏名を知ることができるのです。

そして、この「受付帳」は行政文書に当たります。
行政文書は開示請求をすれば誰でも手に入れることができます。
具体的に「受付帳」の開示請求をしているのが、ダイレクトメールを作成した不動産屋さんなのか、名簿業者なのかはわかりませんが、この「受付帳」を利用して、相続が発生した不動産を第三者が把握しているのはほぼ間違いないと思われます

まとめ

そもそも不動産の所有者等の情報は、そこに記載された者が自らの権利主張をするための前提であるほか、円滑な不動産取引のため、公開されることに意味があります。そのため不動産登記は個人情報保護法の適用除外になっています。

一方で昨今の個人情報に対する人々の意識は高まっています。
徐々に登記の内容に閲覧制限を設けることや、個人情報を保護する方向で業界も進みつつありますが、「受付帳」の在り方には見直しの段階には入っていません。

2024年には相続登記が義務化され、多くの方々が登記をする機会が増えたかと思います。
見知らぬ業者からのダイレクトメールが届くことで不安になられたかもしれません。

本記事を読むことで不安を取り除くことができれば幸いです。

 

令和6(2024)年8月6日
司法書士 杉井俊哉