社会保険労務士田村事務所 事務所便り 『のぞみ』 平成17年4月号
平成17年4月からの年金制度
国民年金未納者数が、平成15年度末で445万人に達し、平成13年からの2年間で120万人近くの増加となったことが発表されました。
自営業者の人達が加入する国民年金は、保険料を自分で納めなければならず、給料から天引きされるサラリーマンや公務員などに比べて
未納が起こりやすい状況にあります。社会保険庁では、これまで3年ごとに未納者数を公表してきましたが、今後は毎年公表する方針を固めました。
このような未納問題および少子高齢化が急速に進行する中で、将来にわたり「維持可能」で「安心」な年金制度とするための改正が進められています。
◆国民年金保険料の引き上げ
現在の国民年金保険料1万3,300円が、毎年280円ずつ引き上げられ、平成29年度以降には月額1万6,900円で固定されることになります。
国民年金保険料は口座振替にすることができます。また、1年分を前納すると、現金払いよりも530円の割引があります。
◆第3号被保険者の救済
第2号被保険者との結婚により被扶養配偶者となった場合、第3号被保険者となります。平成15年3月までは、本人が市区町村の国民年金課で
手続きをする必要がありましたが、手続きを忘れていた場合は未納扱いとなり、遅れて手続きをした場合でも、過去2年分までしかさかのぼることが
できませんでした。
しかし、今回の改正により、住所地の社会保険事務所に届出を行えば、過去2年以前の期間についても第3号被保険者期間として取り扱うことが
できるようになりました。
◆在職老齢厚生年金の一律2割カットの廃止
今までの制度では、60歳を超えて年金を受給しながら就労している場合、60歳台前半の方は、年金額の2割が自動的にカットされていました。
高齢者の就労意欲を阻害する要因として議論されてきましたが、今回の改正により、一律2割カットが廃止され、年金額と賃金の額に応じた支給停止
のみとする仕組みに変更されることになりました。
◆納付猶予制度の新設
現行の免除制度では、低所得者の若者が所得の高い親と同居している場合等は、保険料免除の対象にはなりませんでしたが、今回の改正により、
本人および配偶者の前年の所得が一定以下であれば、申請を行うことで保険料の納付を猶予することができるようになり、10年以内であれば猶予した
保険料を追納することができるようになりました。ただし、あくまで猶予であるため、年金の受給資格期間には算入されますが、年金額の計算には反映されません。
通勤災害制度の対象を拡大
厚生労働省が労働政策審議会に諮問していた労働安全衛生法等の改正案について、おおむね妥当とする答申がなされました。厚生労働省では、この答申に
沿って改正法案を今国会に提出し、早ければ平成18年4月1日より施行されることになります。
◆現行の通勤災害の保護範囲
通勤災害の保護制度は、労働者が通勤途中に負傷した場合に、業務上災害に準じた措置を労災保険から行うことを目的としています。
通勤の定義として「労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路および方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものと
する」と定められ、具体的には、自宅などの「住居」から会社、工場などの「就業の場所」へ向かう行為、または就業の場所から住居へ帰る行為であること等が要件と
なります。
◆複数就業者の事業場間の移動
始業前や終業後に、別の会社でアルバイトなどをしている社員(いわゆる複数就業者)が、アルバイト先から会社へ直接向かう途中、あるいは終業後にアルバイト先に
直接向かう途中の災害は、現行の制度では「住居と終業の場所との間」にはならないため、通勤災害の保護の対象外とされています。
しかし、ワークシェアリングの推進や社員の副業を解禁する企業が増えてきていること等に伴い、複数の企業で就業する者が増加しつつあるという現状があり、複数
就業者の事業場間移動についても、通勤災害の保護の対象とすることが適当であるという提言がなされました。
最初の会社から次の会社への移動は、次の会社への出勤行為にあたるため、この途中で生じた災害については、次の会社の労災保険を適用するという処理になり
そうです。なお、会社が兼業を禁止しているか否かについては関係なく、通勤災害として保護されることになると考えられます。
◆単身赴任者の赴任先と帰省先の移動
単身赴任者が週末などに家族の住んでいる自宅に戻る間に災害が生じた場合、行政解釈としては、会社から直接、家族の住む自宅へ帰る場合や、その自宅から直接
会社に出勤する場合については、原則として通勤災害として認められています。
しかし、単身赴任先のアパート等から家族の住む自宅に帰る「住居間移動」については、通勤の定義にある「住居」と「就業の場所」との往復行為とは認められていません。
実態として、単身赴任者が家族の住む自宅に帰省する場合、帰省の準備のために一度、単身赴任先のアパート等に戻ってから自宅に戻ることが多いという現状があり、
単身赴任先の住居を「就業の場所」とみなして通勤災害として保護すべきという提案もあわせてなされています。
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