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社会保険労務士田村事務所        事務所便り  『のぞみ』               平成17年6月号


平成17年4月からの在職老齢年金

                    

年金制度の改正のうち、平成17年4月から変更されるものの1つに“在職老齢年金の一律2割カットの廃止”があります。これにより会社勤めをしながら老齢年金を受給している方の年金額の計算式が変更されることになります。

◆在職老齢年金とは

国民年金では60歳になると被保険者の資格を失いますが、厚生年金では会社で働いている限り70歳になるまでは被保険者となります。この被保険者期間中に受ける老齢厚生年金を在職老齢年金と呼んでいます。

在職老齢年金には、60歳以上65歳未満の在職老齢年金と、65歳以上の在職老齢年金とがあり、年金額の計算式は異なっています。

◆今回の改正点

60歳以上65歳未満の在職老齢年金について、以下の2点が改正となりました。

○ 一律2割の支給停止を廃止

○ 支給停止額の計算に用いる額を、年度毎に改正

◆改正後の計算式

@ 総報酬月額相当額(1基本月額(228万円→全額支給  

(1)      その者の標準報酬月額+(前年度1年間に受けた標準賞与額の合計÷12カ月)

2)年金の年額÷12カ月

A 総報酬月額相当額+基本月額>28万円→基本月額の支給停止あり

※ 総報酬月額相当額が48万円以下の場合と、48万円を超える場合とで停止額は異なります。

◆支給停止額の計算に用いる額

上記の計算式に出てくる28万円が「支給停止調整開始額」、48万円が「支給停止調整変更額」となります。

平成17年3月まではこの額は変動することはありませんでしたが、今回の改正により、年度毎に物価や賃金の変動に応じて改定されることになりました。

65歳以上の在職老齢年金

65歳以上の在職老齢年金については、今回の改正による変更はありません。

計算式は 総報酬月額相当額+老齢厚生年金月額>48万円→支給停止あり となります。なお、国民年金から支給される老齢基礎年金は全額が支給され、厚生年金の被保険者であっても減額の対象にはなりません。

70歳以上の場合については、現在の法律では支給停止されませんが、平成19年4月からは70歳以上にも在職老齢年金制度が適用され、65歳以上の在職老齢年金と同様の仕組みが導入される予定です。なお、70歳以上の人は厚生年金保険に加入できませんので、保険料の負担はありません。

 

中小企業退職金共済制度への移行

 

平成14年4月からの確定給付企業年金法の施行に伴って、平成24年3月末をもって、適格年金が廃止されることとなり、その資産が他の企業年金制度へ移換できるものとされました。

制度の移行先の1つとして、中小企業退職金共済制度(中退共)があります。これまでは、中退共への新規加入を条件に、120月(10年)分を上限として資産を移換し、掛金納付月数に通算できるものとされていました。

◆適格年金と中退共の性質

適格年金は法人税法上に措置された企業の行う退職金制度(年金・一時金)の外部積立の仕組みであり、「退職金」としての性質をもつ企業年金です。

しかし、適格年金の移行先として用意された新たな企業年金は、その支給事由を原則的に“老齢”としています。特に日本版401kと呼ばれる確定拠出年金については、60歳以上にならない限り原則的に引き出すことができないので、「退職」とは関係しません。

これに対し、中退共はまさに「退職金」としての性質を持つものであるため、中小企業が対象だという基本的な位置づけはありますが、適格年金とは最も適合度が高い仕組みだといえます。

◆中退共とは

中小企業退職金共済法に基づく制度で、中小企業が加入することのできる社外積立型の退職金制度です。事業主が中退共本部と退職金共済契約を結び、毎月の掛け金(全額事業主負担)を金融機関に納付します。社員が退職したときは、その社員に中退共本部から退職金が直接支払われるようになっています(掛金納付月数が11カ月以下は不支給)。

また、中退共の掛け金は全額損金として算入できるなどのメリットもあります。

 

◆平成17年4月からの改正点

適格年金から中退共制度へ移行する際の問題点として、上述したように新規加入が条件であることと、資産の移換は上限が120月(10年)分とされているため、移換できない資産については本人に返還しなければならないことの2点が大きくありました。

しかし今回の改正により、新規加入という要件は残るものの、適格年金における資産が全額移換(ただし従業員本人負担分は除く)できることとなったため、適格年金からの移行を保留にしていた企業が、中退共の活用に大きく動き始めるものと思われます。

適格年金から移行する制度としては、他に確定拠出年金(日本版401k)、確定給付企業年金、厚生年金基金がありますが、それぞれにメリットとデメリットがありますので、移行にあたっては十分に検討することが必要です。

 

未払い残業代問題の抜本的解決策  

 

厚生労働省は、ホワイトカラー社員の一部にも時間外労働などの割増賃金の支払いの除外対象を拡大する方針を固めました。週40時間制や法定休日制などの労働時間規制に関する労働基準法の見直しを進め、2007年の国会に改正案を提出する意向です。

労働基準監督署が2003年に行った未払い残業代の是正指導は約18,500件で、過去30年間で最悪でした。景気後退局面での過重労働も否めませんが、時間重視の規制と職場の実態のずれも是正指導急増の原因でしょう。

工場のライン生産などが主流だった頃の労働時間規制が、サービス業中心の多様な働き方が定着した現代に適合しなくなってきており、労働生産性を高め企業の国際競争力を維持するためにも、労働時間規制の抜本的な改正が必要です。

現行の労働時間規制が適用されないのは、工場長や部長など部下の労働条件を決める管理職だけです。また、実労働時間と関係なく一定時間働いたとみなす裁量労働制は、手続きが煩雑なため導入が進んでいません。ホワイトカラーに対する年俸制も、割増賃金に対する規制が残るため、真の年俸制にはなり得ません。

時間で成果を測りやすい工場勤務のブルーカラー職種には規制を残し、本人の裁量が大きいホワイトカラー職種では規制を緩和するという方針転換は、過重労働を警戒する労働組合からの反発も予想され、規制除外対象をどう定義付けるかという今後の課題も残しています。

この法改正が実現すれば、ホワイトカラー社員の未払い残業代問題の解決に繋がること、も考えられます。日本の労働時間を最重視した労働政策は、今大きく転換されようとします。

 

民間型ADR  

                    

昨年度の総合労働相談件数は、60万件を大きく上回りました。職場における労働トラブル解決の手段として、ADR(訴訟手続によらず民事上の紛争を解決しようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続)はすでに定着しています。

 行政型ADRについて定める個別労働関係紛争解決促進法に加え、司法型ADRである労働審判手続について定める労働審判法が平成18年4月に施行されます。さらに、民間型ADRについて定める裁判外紛争解決促進法が昨年121日に公布され、平成1961日までに施行の予定となりました。

 訴訟は厳格な手続きによって行われます。ADRは、紛争分野における専門家が、紛争の実情に即して迅速に柔軟に解決を図るとされています。このADRが普及すれば、様々な紛争解決のために、よりふさわしい解決手段を選択することができるようになるでしょう。

 平成13121日に内閣に設置された司法制度改革推進本部が、昨年116日に「今後の司法制度改革の推進について」をまとめました。

裁判外紛争解決手続の利用を促進するために、ADRにおける当事者の代理人として、司法書士・弁理士・社会保険労務士および土地家屋調査士を活用すること、また社会保険労務士に対しては、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、次に掲げる事務を業務に加えることとなり、これに併せて、開業社会保険労務士が労働争議に介入することを原則として禁止する社会保険労務士法の規定を見直します。

@ 都道府県知事の委任を受けて地方労働委員会が行う個別労働関係紛争のあっせんおよび雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保等に関する法律に基づき都道府県労働局(紛争調整委員会)が行う調停の手続について代理すること

A 個別労働関係紛争(紛争の目的となる価額が60万円を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から裁判外紛争解決手続の代理を受任しているものに限る)の裁判外紛争解決手続(厚生労働大臣が指定する団体が行うものに限る)について代理すること


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                                       所長  特定社会保険労務士 田村 幾男


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