青色申告の特別控除額について
開業届を出すメリットして、青色申告で最大65万円の特別控除を受けれることは別の記事で紹介しました。
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青色申告で確定申告すると他にもいくつかメリットがありますが、その前に青色申告でも手続きの仕方で控除額が変わるので、その説明をしておきます。
ここでは、既に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出済みであることを前提にしていますので、まだの場合は上の記事を参考にしてください。
青色申告の特別控除額について
2020年分の青色申告から特別控除額は以下の3種類になります
もちろん、特別控除額が多いほうが良いのですが、それには要件を満たす必要があります。
55万の特別控除を受けるためには
※国税庁ホームページから引用
(1) 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
(2) これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
(3) (2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。
(注)
1 現金主義によることを選択している人は、65万円の青色申告控除を受けることはできません。
2 不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額が65万円より少ない場合には、その合計額が限度になります。ただし、この合計額とは損益通算前の黒字の所得金額の合計額をいいますので、いずれかの所得に損失が生じている場合には、その損失をないものとして合計額を計算します。
3 不動産所得の金額、事業所得の金額から順次控除します。
事業所得または不動産所得を得る事業を行っていること
(1)不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
フリーランスとして生計を立てている方は、基本的には事業所得となるはずです。
事業所得とは「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」となっています。
アフィリエイトなどの売上は、雑所得と切り分けが難しいですが、事業所得のみで生計を立てており、継続して所得が発生していれば事業所得と認められやすいです。
(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
複式簿記は「借方」「貸方」という概念を使って帳簿を付けます。
上の引用で(注)にもあるように、現金主義ではなく発生主義で記載する必要があります。
単式簿記と複式簿記の違い、現金主義、発生主義の違いをそれぞれ例で記します。
例1)準委任契約で4月に行った作業の報酬が、5月の25日に振り込まれた
単式簿記 | 5月25日 収入 4月作業報酬 700,000円 | |
---|---|---|
複式簿記 | 現金主義 | 5月25日 普通預金 700,000円 / 売上 700,000円 |
発生主義 |
4月30日 売掛金 700,000円 / 売上 700,000円 |
例2)4月15日に業者からソフトウェアが納品され、5月の10日に料金を現金で渡した
単式簿記 | 5月10日 支出 ソフトウェア代 30,000円 | |
---|---|---|
複式簿記 | 現金主義 | 5月10日 消耗品 30,000円 / 現金 30,000円 |
発生主義 |
4月15日 消耗品 30,000円 / 買掛金 30,000円 |
例3)4月10日に事業用のクレジットカードを備品を購入し、5月の15日に引き落とされた
単式簿記 | 5月15日 支出 備品購入 3,000円 | |
---|---|---|
複式簿記 | 現金主義 | 5月15日 消耗品 3,000円 / 普通預金 3,000円 |
発生主義 |
4月15日 消耗品 3,000円 / 未払金 3,000円 |
・単式簿記(簡易簿記)
入金額または出金額と内訳(項目、詳細)を帳簿に付けていきます。
取引が発生するタイミングで家計簿のような形で計上します。
・複式簿記
「借方(左)」=資産/「貸方(右)」=負債、という表現で仕訳をしていきます。
取引が発生し、貸方(右)が、借方(左)に変わったという見方をすれば分かり易いです。
・(現金主義)
現金や預金の変動があった日付で、仕訳を1つ計上します。
・(発生主義)
取引が発生した日付と、現金や預金の変動があった日付で、仕訳を2つ計上します。
発生主義では取引の発生時に仕訳を計上するので、厳密に資産を管理することができます。
ただし、発生主義も2つの仕訳を合わせて見た場合、現金主義の1つの仕訳と同じ意味を示します。
よって、期中は現金主義で表現し、期末前で期を跨ぐような収支の場合は発生主義で表現するといった手法が使われます。
これは、手形を取り扱わなかったり、支払サイトが1ヶ月程度などで管理のズレが大きくならないなら許容されます。
↓↓↓仕訳の作成については、この本を参考にしています。
(3) (2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。
貸借対照表と損益計算書を作成する必要があります。
その年の確定申告期間内に確定申告する必要があります。
65万の特別控除を受けるためには
※国税庁ホームページから引用
令和2年分以後の所得税の申告について、青色申告特別控除の見直しが行われます。
(1) 不動産所得又は事業所得に係る取引を正規の簿記の原則により記帳している方が適用を受けることができる青色申告特別控除の控除額が、65万円から55万円に引き下げられます。
(2) 上記(1)にかかわらず、正規の簿記の原則により記帳している方で、次のいずれかに該当する方については65万円の青色申告特別控除額の適用を受けることができます。
① その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存(下記《参考》参照)を行っていること。
② その年分の所得税の確定申告書及び青色申告決算書(平均課税の適用を受ける場合については、「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」)の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。
《参考》
納税者の方の事務負担やコストの軽減などを図るため、各税法で保存が義務付けられている帳簿書類については、一定の要件の下で、コンピュータ作成の帳簿書類を紙に出力することなく、ハードディスクなどに記録した電子データのままで保存できる制度があります。
詳しくは、国税庁ホームページ(ホーム)>法令等>その他法令解釈に関する情報>電子帳簿保存法関係をご覧ください。
電子帳簿保存またはe-Tax申請
65万円の特別控除を受けるには、55万円の特別控除の要件を満たし、かつ電子帳簿保存するか、もしくは自宅からe-Taxで確定申告を行う必要があります。
電子帳簿保存は単に申請書類を電子データで保存すれば良いわけではありません。
まず、事前準備として電磁的記録による保存を始める3ヶ月前までに、「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を添付書類等と合わせて税務署に提出します。
また、電子帳簿保存に対応した会計ソフトを使用する必要があります。
電子帳簿保存制度の要件は複雑で、クラウド版の青色申告会計ソフトでは対応されていないものも多いので、多くの会計ソフトで対応されているe-Tax申請のほうがおすすめです。
e-Tax申請では、マイナンバーカードとカードリーダーの準備や、申請ID発行などの手続きは必要ですが、事前に申請書の提出は必要ありません。
(平成31年の1月からはID・パスワードでの申請も可)
そもそも、自宅から確定申告ができるメリットがあるので是非実施しましょう。
e-Tax申請での確定申告については、また別の記事で紹介したいと思います。
↓↓↓ e-Taxに対応したカードリーダーを検索
10万の特別控除を受けるためには
55万円の特別控除の要件を満たさない場合は、10万円の控除になります。
青色申告での申請が必要なので、以下の要件は必要となります。
・事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかの所得
・単式簿記または、複式簿記(現金主義)で帳簿を作成
・貸借対照表の記載は不要だが、損益計算書は記載必要
青色申告のメリット・デメリット
白色申告と青色申告を比較して、メリット・デメリットを紹介します。
白色申告 | 青色申告 | ||
---|---|---|---|
特別控除なし | 10万円控除 | 55万円または65万円控除 | |
所得の種類 | 規定なし | 不動産所得、事業所得、山林所得 | 不動産所得、事業所得 |
税務署への申告 | 不要 | 青色申告承認申請書の提出 | |
簿記 | 単式簿記 | 単式簿記または複式簿記 | 複式簿記(発生主義) |
確定申告書の様式 | 確定申告書B、収支内訳書 | 確定申告書B、青色申告決算書 | |
(7年保管) |
(7年保管) |
||
保管帳簿 |
(7年保管) |
(7年保管) |
(7年保管) |
保管書類 |
(5年保管) |
(7年保管) |
|
e-Tax | 可 | 可 |
可 |
特別控除 | 上表に示す要件を満たせば、10万円、55万円、65万円の控除を受けることができます。 |
---|---|
家事関連費の経費算入 |
自宅を仕事場とする場合に、家賃や電気、ガス、水道などの光熱費、電話、ネットなどの通信費などを、業務で必要な割合を明確にすれば、家事按分として一部を経費に計上できます。 |
少額減価償却資産の特例 |
※2020年3月31日までの制度なので注意してください
30万円未満の資産を購入した際に、一括で減価償却が可能となります。ただし、対象となるのは年間300万円までです。
※金額について、免税事業者は税込価額、課税事業者で税込経理なら税込価額、税抜経理なら税抜価額で判断してください |
青色事業専従者給与の経費算入 |
生計を同一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に給与を支払うことがあります。これらの給与は特例として必要経費として認められています。
※事業専従者または青色事業専従者になる人は控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。 |
純損失(赤字)の3年間繰越控除 |
事業所得など通算で赤字(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します。 |
青色申告承認申請書の提出 |
開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があります。 |
---|---|
複式簿記での記帳 |
青色申告で65万円の控除を受けるためには、複式簿記で記帳する必要があります。 |
会計ソフトを使う
さてここまで見て頂いた方で、65万円の特別控除は是非受けたけど、複式簿記での帳簿作成や確定申告に自身がないと思われた方もいるかもしれません。
私自身も同じでした。会計士にお願いするのが最良なのかもしれませんが、ツテもないし費用も掛かりそう。。
最初は事業の規模も大きくないので、とりあえず会計ソフトを導入してみました。
私が使ったのが、「やよいの青色申告オンライン」です。
使った結果は大変満足しています。
「やよいの青色申告」にはオンライン版とデスクトップ版がありますが、機能数的には大きな違いはないです。
オンライン版のほうが安く始められ、PCだけでなくスマホやタブレットのアプリから取引の入力もできるので、『1年間無料、次年度から年8,000円(税抜)(サポート無しプラン)』のオンライン版を選びました。
・年12,000円(税抜)で操作説明のサポートを受けられるプランがあります。
(1年目は6、000円)
・年20,000円(税抜)で操作説明+業務相談のサポートを受けられるプランがあります。
(1年目は10、000円)
※デスクトップ版は初回購入時に製品購入(オープン価格・直販なら1,2000円)が必要です。
※デスクトップ版でバージョンアップや保守サポートを受ける場合、2年目以降はオンライン版と同じサポート料金です。
※オンライン版は伝票入力ができないので、振替伝票で入力したい方はデスクトップ版を選びます。
やよいの青色申告オンラインでできること
かんたん取引入力
日付や金額を簡易簿記の感覚で入力すれば、勘定科目の知識がなくても、複式簿記の帳簿が作成できます。
もちろん、仕訳入力で詳細な入力も可能です。
弥生口座自動連携
インターネットバンキングと連携して、銀行口座の明細を自動で取り込んで、自動仕訳できます。
クレジットカードや交通系ICカードの明細から取り込むことも可能です。
口座をプライベート用と事業用に分けることができるので、事業主勘定の入力も容易です。
スキャンデータ取込
電子帳簿保存法、スキャナ保存制度にも対応しているので、届け出を提出している場合は、取り込んだレシートや領収書を破棄できます。
確定申告書類の作成
ガイダンスに従って必要事項を入力すると、確定申告に必要な書類を自動で作成します。
原価償却や、家事按分、控除額も自動で計算します。
入力した取引情報から青色申告に必要な帳簿も自動で作成されます。
スマホで取引入力
e-Tax確定申告
簡単にe-Taxによる申告ができるようになっています。
従来のe-Taxソフトの手順に比べても、少ない手順で完了します。
確定申告の作業経過については、また別の記事で紹介したいと思います。
会計ソフトで簡単に仕訳入力ができても、後々困ることが無いように、内容は把握できるようにしておきましょう。
以下のような書籍で基礎を理解できます。