PER 2
PER(その2) どの時点の数字を見るのか?
普通PERを計算する場合の純利益は、当期あるいは次期の数字を
使います。
そうすることで、銘柄間の比較をして、より数字の低い割安な銘柄を
探そうとします。これは言わば「ヨコ比較」です。
急成長会社などでは典型的ですが、会社の利益が急速に増える場合
、足許のPERは高くても数年経つとPERがぐんと低くなる、などとい
うことが起こります。
時間軸に沿って「タテ比較」すると、足許の利益ではPER割高でも、
将来の利益で計算すればPER割安、ということがあり得るのです。
例えば、次のようなふたつの会社を考えてみます。
甲社:これから3年で利益が倍になる(つまり年成長率25%)
乙社:これから3年、利益は一定
甲、乙2社とも、現時点の足許の一株当たり利益が50円だとします。
PERを20倍としますと、株価は1,000円となります。
甲、乙とも株価1,000円ならPER20倍で、割安度は「同じ」という
見方になります。
しかし、3年後を考えますと、甲社の一株当り利益は2倍の
100円になります。一方、乙社の利益は50円のままです。そうしますと、
3年後の利益で計算したPERは、甲は10倍、乙は20倍、
ということになって、甲の方がはるかに「割安」となります。
このように、「成長株のPERは成長しない株のPERより高くても割安」
ということになるのです。平均的な成長率の会社の株の妥当PERと
成長率が高い会社の株の何年か後の利益を使ったPERが
「どこで釣り合うか?」という計算は、ちょっとした頭の体操になります。
その会社の成長の時間軸に沿ったシナリオを想定し、
平均的な成長率に落ち着くまでの期間とその間の成長率、
などから計算式を出すことができます。一度やってみると面白いこ
と請け合いです。ぜひお試しを。
さて、そうした計算はともかくとして、「成長率が大きければ、
PERは大きくても割安」という観点から、PEGという投資尺度を使う
投資家も多くいます。PEG(ペグと読むことがわが国では多いようです)
は次の計算で求めます。
PEG=PER÷成長率
例えば、足許の利益で計算したPERが100倍でも、成長率
(これから5年くらいの純利益成長率の平均像を使うことが多い)
が50%なら、
PEG=100÷50=2
となります。成長率が10%の会社がPER100倍だとしますと、
PEG=100÷10=10
となります。PEGが低い方が「割安」と見ることができます。
成長株投資のファンドマネジャーなどの中には、PEGが2以下のもの
に焦点を当てて銘柄選択する、などという方針を持っている
ひともいます。
PEG2倍を基準とするということは、成長率が20%ならその株の
PERは、成長しない株のPERを20倍とすればその2倍の40倍あっても
OKという意味です。成長率が50%なら、PER100倍でも割安です。
PER1で説明しましたように、PERの第一の観点は「時価総額が
純利益の何倍か?=純利益の何年分か?」ということでした。
PERの第二の観点は、「成長株のPERは成長しない株のPERより
高くても割安」ということです(その評価のために、PEGという尺度が
使われることがあります)。
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