医用電気機器の安全基準
漏れ電流の種類

漏れ電流種類 | 流れ |
接地漏れ電流 | 保護接地線(アース線)を流れる漏れ電流 @ |
接触電流 | 機器外装から大地に(操作者などを介して)流れる漏れ電流 A 機器外装→患者→大地 又は、機器外装→患者→機器外装→大地(保護接地)
|
患者接続部からの大地への電流 | 装着部(電極)から(患者を介して)大地に流れる漏れ電流 B 機器→装着部(電極)→患者→大地 |
信号入出力部(SIP/SOP)へ外部電圧を印加した場合の電流 | 信号入出力部に乗った電源電圧によって装着部から(患者を介して)流れる漏れ電流 C 他の機器→信号入・出力部→ME機器→装着部から患者→大地(保護接地) |
F形装着部の患者接続部へ外部電圧を印加した場合の電流 | (F形絶縁)装着部に(患者を介して)乗った電源電圧によって機器から大地に流れる漏れ電流 D 他の機器→患者→装着部を介してME機器→大地(保護接地) |
保護接地していない金属の接続可能部分への外部電圧を印加した場合の電流 | 保護接地していない金属の接続可能部に外部より乗った電源電圧によって機器から大地に流れる漏れ電流 E 他の機器→保護接地していない金属の接続可能部→ME機器→大地(保護接地) |
患者測定電流 ※ | 装着部の部分間に患者を介し流れる生理学的な効果を意図しない電流 F 増幅器バイアス電流やインピーダンスプレチスモグラフ(呼吸の有無のモニタ)に使用する電流など 機器→装着部→患者→装着部を介して機器→大地(保護接地) |
※ 患者測定電流とは、事故とか過ちではなく生体計測などを目的として外部から患者に流す電流のことであり、漏れ電流ではない。
漏れ電流の測定
漏れ電流形別分類
形別分類 | 患者漏れ電流(正常状態※) | 外部からの流入 | 適用範囲 |
B形 | マクロショック対策 100 μA | 保護なし | 体表のみ適用
|
BF形 | フローティング |
CF形 | ミクロショック対策 10 μA | 直接心臓に適用可 |
※ 故障時にはこの5倍まで許容されます。
≪B形、BF形装着部をもつ機器≫
B形、BF形装着部をもつ機器は、体表のみの適用される機器で記号の” B ”は、Body(身体)の頭文字をとったものです。
≪CF形装着部をもつ機器≫
CF形装着部をもつ機器は、心臓にも適用できる機器で心臓に直接接触する可能性のあるペースメーカーや心内心電図などは必ずCF形装着部をもつ機器を使用しなければなりません。
記号の” C ”は、Cardial(心臓)の頭文字をとったものです。
≪フローティング≫
BF形、CF形にある記号の” F ”は、Floating(フローティング;浮いている)の頭文字をとったものです。フローティングとは、浮いているすなわち絶縁していることを意味し、患者回路(患者に接続されている電極やリード線)と機器本体の電源部が電気的に絶縁されており、患者に流れ込む漏れ電流を低く抑えることができます。
他の機器と併用して使用する場合は、別の機器→人体→機器本体→大地という流れが形成され、人体を介して機器に流入する漏れ電流が考えられるため、他の機器を併用する場合は、外部からの漏れ電流の流入を阻止するフローティングされた機器を使用しなければなりません。
フローティングの手段としては、トランスを用いて磁気的に結合(電気→磁気→電気)させたり、光信号で結合(電気→光→電気)させることで電流が直接患者に流れないようにしています。
単一故障状態
@ | 絶縁のいずれかひとつの短絡 |
A | 沿面距離または空間距離のいずれかひとつの短絡 |
B | 絶縁、空間距離または沿面距離と並列に接続している高信頼性部品以外の部品の短絡および開路 |
C | 保護接地線の開路 |
D | 電源導線のいずれか1本の断線 |
E | 部品の意図しない移動 |
F | 危険状態に結びつく導線およびコネクタの偶然の外れによる破損 |
※ | 1999年度版では、単一故障状態とされていた「F形装着部の患者接続部へ外部電圧を印加した場合」は「特別な試験条件」となったため単一故障状態には分類されない |
※ | 1999年度版では、単一故障状態とされていた「信号入出力部(SIP/SOP)に他の電気機器からの電圧又は電流が存在する条件」は「正常状態」となった |
漏れ電流および患者測定電流の許容値
電撃に対する保護のために流れる電流を規定値内に制限する必要があります。それは、漏れ電流の種類と機器の生体への適用部位よって異なります。
漏れ電流の許容値は、第2種ME試験に頻出の問題ですのでよく覚えてください。
漏れ電流 | 経路 | B形装着部 | BF形装着部 | CF形装着部 |
正常状態 (NC) | 単一故障 (SFC) | 正常状態 (NC) | 単一故障 (SFC) | 正常状態 (NC) | 単一故障 (SFC) |
接地漏れ電流 | | 5000 μA | 10000 μA | 5000 μA | 10000 μA | 5000 μA | 10000 μA |
接触電流 | | 100 μA | 500 μA | 100 μA | 500 μA | 100 μA | 500 μA |
患者測定電流 | | 直流 | 10 μA | 50 μA | 10 μA | 50 μA | 10 μA | 50 μA |
交流 | 100 μA | 500 μA | 100 μA | 500 μA | 10 μA | 50 μA |
患者漏れ電流 | 患者接続部から大地への電流 又は SIP/SOPへ外部電圧を印加した場合の電流 | 直流 | 10 μA | 50 μA | 10 μA | 50 μA | 10 μA | 50 μA |
交流 | 100 μA | 500 μA | 100 μA | 500 μA | 10 μA | 50 μA |
合計患者漏れ電流※ | 一緒に接続した同一形装着部からの電流 又は SIP/SOPへ外部電圧を印加した場合の電流 | 直流 | 50 μA | 100 μA | 50 μA | 100 μA | 50 μA | 100 μA |
交流 | 500 μA | 1000 μA | 500 μA | 1000 μA | 50 μA | 100 μA |
※ 合計患者漏れ電流とは、複数の装着部を有する場合の漏れ電流の合計をいう |
漏れ電流許容値の根拠 (覚え方)
漏れ電流の測定
特別の試験条件下の患者漏れ電流の許容値
漏れ電流 | 経路※1 | B形装着部 | BF形装着部 | CF形装着部 |
患者漏れ電流 | F形装着部の患者接続部へ外部電圧が印加した場合の電流 | 非該当※3 | 5000 μA | 50 μA |
保護接地していない金属の接触可能部分へ外部電圧を印加した場合の電流 | 500 μA | 500 μA | ―※4 |
合計患者漏れ電流※2 | F形装着部の患者接続部へ外部電圧が印加した場合の電流 | 非該当※3 | 5000 μA | 100 μA |
保護接地していない金属の接触可能部分へ外部電圧を印加した場合の電流 | 1000 μA | 1000 μA | ―※4 |
※1 | 1999年度版では、”装着部に電源電圧が現れた”ことが患者漏れ電流Vの単一故障状態として扱ってきたが、この規格は特別の試験条件として別に扱っている。さらに、保護接地していない金属の接触可能部分に最高電源電圧を印加する試験も、特別試験条件である。 |
※2 | 合計患者漏れ電流は、複数の装着部をもつ機器だけ適用可能である。 |
※3 | この条件は、F形装着部に対する要求事項であるため、B形装着部に関しては対象外となる。 |
※4 | この条件は、装着部に最高電源電圧を印加する試験で扱っているので、CF形装着部では試験しない。 |
クラス別分類と保護手段
電撃に対する保護手段によって分けられた機器分類です。
クラス別 | 保護手段 | 追加保護 | 備考 |
クラスT機器 | 基礎絶縁 | 保護接地 | 保護接地設備が必要。3Pコンセント使用。 |
クラスU機器 | 補強絶縁 | 使用上の使用制限なし。 |
内部電源機器 | 内部電源 | 外部電源に接続する際クラスT又はクラスU機器として働くこと。 |
≪基礎絶縁≫
これは、医療機器に限らずすべての電気機器に施されている基本的な保護手段です。
電源からの漏れ電流を低く抑えるため、漏れ電流を生じやすい電源トランス等に絶縁物を囲むこと周囲に電流が漏れないようにする基礎的な絶縁です。
≪追加保護手段≫
医用電気機器が適用される患者は、体が弱っていたり、手術中で麻酔がかけられていたり、センサやトランスデューサ、コードが取り付けられていて患者に危険が及んでも患者自身では逃れられない状況での使用が考えられるため、万一基礎絶縁が破壊された場合に備えてもう一つの安全手段それが追加保護手段です。
≪保護接地≫
クラスT機器に義務付けられている追加保護手段です。
保護接地すなわちアースを接続して使用することで万一漏れ電流が漏れても人体よりも抵抗の低いアース線に漏れ電流を逃がし人体に流れないようにする安全手段です。
電源コードに3Pプラグが付いており、3Pコンセントに接続して使用します。
≪補強絶縁≫
クラスU機器に義務付けられている追加保護手段です。基礎絶縁に補強絶縁を施したものを二重絶縁と呼びます。
基礎絶縁の上に更に2重に絶縁(補強絶縁)を施すことで漏れ電流を非常に少なくします。漏れ電流自体が少なくなるため、アースに漏れる電流も非常に少ないため、アース線は必要なく2Pコンセントに差し込んで使用しても構いません(3Pコンセント必要なし=使用上の使用制限なし。)。
≪強化絶縁と二重絶縁≫
クラスU機器の保護手段として強化絶縁も認められています。これは、二重絶縁とほぼ同じ意味だと考えてください。
基礎絶縁と補強絶縁の二重絶縁は、基礎絶縁と補強絶縁の2つに対して検査を行う必要がありますが、強化絶縁は、強化絶縁のみ検査でよいという違いです。二重絶縁も強化絶縁も使用上は同じですが、保守管理上異なるという違いです。
≪内部電源≫
内部電源機器に義務付けられている追加保護手段です。
内部電源(電池、バッテリーなど)を使用することで電源トランスなど漏れ電流を発生しやすいものを用いずに利用できるため漏れ電流の発生をおさえることができます。
しかし、外部電源(コンセント)から電源を供給する場合は、クラスT機器又はクラスU機器としてはたくこと。つまり、3Pコンセントに接続するか補強絶縁が施されてなければなりません。
≪クラス0T機器≫
クラス0T機器とは、2P機器に別途アース線を引いてくるタイプを呼びますが、これは医用電気機器としては認められおらず、クラスT機器ではありません。
≪クラスV機器≫
クラスV機器は、旧JISの記載されていたクラスですが、現行のJISには存在しません。
ME図記号
記号 | 説明 | | 記号 | 説明 | | 記号 | 説明 |
 | 電源の”入” | |  | 保護接地 (大地) | |  | 耐除細動形 B形装着部 |
 | 電源の”切” | |  | クラスUの機器 | |  | 耐除細動形 BF形装着部 |
 | 注意 | |  | B形装着部 | |  | 耐除細動形 CF形装着部 |
 | 危険電圧 | |  | BF形装着部 | |  | AP類機器 |
 | 等電位化 | |  | CF形装着部 | |  | 操作説明 に従う |
 | 緊急停止 | |  | 単回使用 | |  | 操作説明参照 |
上記の図記号は、左手が作成したもので若干JIS規格の記号と異なる点があると思います。
詳しくは” JIS T 0601-1の付属書D(規格)表示用記号 "を参照してください。
≪ON≫
” in (電源が入る) ”の頭文字の" I "を図記号として図形化しています。 別の覚え方としては、コンピューター(2進数)的な考えで数字の” 1 ”を意味していると考えてもいいかも
≪OFF≫
” out (電源が切れる) ”の頭文字の" O "を図記号として図形化しています。 別の覚え方としては、コンピューター(2進数)的な考えで数字の” 0 ”を意味していると考えてもいいかも
≪等電位≫
等電位接地(EPRシステム)の図記号として重要です。
≪装着部≫
人体を図形化して体表のみの適用、心臓をハートで図形化して心臓にも適用可能なことを示しています。
又、人体、ハートを四角で囲い隔離を図形化してフローティングを示し、除細動器のパドルを図形化して除細動の放電による影響を保護することを示しています。
≪AP類機器≫
空気や可燃性麻酔ガス内において点火源とならない(火花などを出さない)様に作られた機器やその部分に示されます。
似たものにAPG類機器というものも存在します。
機器表示光
色 | 意味 |
赤 | 危険警告、又は緊急対処の要求 |
黄 | 警告、注意 |
緑 | 操作準備の完了 |
※ ドットマトリックス及びその他の文字・数字表示は、表示光とは考えません。
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