eoさんの旅ノート ワイルドフラワーの旅
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9日目 9月21日
 朝7時頃出発。快晴。今日は先ずニュー・ノーシアへ向かい、その周辺のワイルドフラワーを見て、 その後パースの近くまで進む予定。明日はパースから帰国する。帰国便の出発時間が夕刻なので、 混んでいるかも知れないパース市内を避けてパース郊外に宿をとる予定である。
 実質的には、今日がこの旅の最終日である。

風景
 モーラからGreat Northern Highwayに合流するために東へ向かう。
 道路は牧場の中を突っ切るようにして走る。

 昨夜、冷えたのだろうか。深い霧だ。広い牧場のなかに散るようにまばらに立っている木々が霧にかすみ、幻想的な光景をかもし出している。

 Great Northern Highwayに入り、霧が晴れても、
 高原のようなしっとりとした美しい風景はニュー・ノーシアまで続いた。
 ニュー・ノーシアNew Norciaに到着。
 通りに面して、山側には広い芝生の前庭を前にして大きな建物がいくつか並び、谷側には 草原が広がっている。草原には小さな花々が群れるように咲く。
 早朝に出発したのでまだ朝の8時。澄み切った空気が気持ち良い。

風景  
 大きな建物群はここの開拓時代に建てられたもので、大学や博物館などである。
 いずれも私たちがこの旅でこれまで見てきた建物類とはまるで違う種類の、壮麗な建物群。ヨーロッパのゴシック風、ビザンチン風といった古典的な建築様式が入り混じっている(とガイド本に書いてある)。
 いずれも単なる見世物ではなく、今も立派に現役で使われているものである。

 それら建物群の端に、ひときわ高いところにホテルNew Norcia Hotelが宮殿のような堂々たる姿を見せている。 "宮殿のよう"は言い過ぎかも知れないが、しかし、オーストラリア内陸部に住んでいて大都会には出たことのないといった 人々がこれを見れば"宮殿のよう"と思うに違いない。この旅で私たちがこれまで泊まった宿はHotel, Motelといった 名は付いていても、所詮"宿屋" 。だが、このNew Norcia Hotelは正真正銘の"ホテル"。しかも、小高い位置にある ので、通りを隔てて、草原が目の前に広がる。もし再び私たちがここを訪れることがあれば(あるだろうか?)、このホテルに泊まろう。

 ここに佇んでいると、何となくこれまでとは違った別世界にいるような気がしてくる。ここには人間の生活臭といったものがない。バス停兼土産物屋といった感じの小さな店が1軒だけあるほかは、全部が"古典的建物"だ。生活用品を売る店も無ければ、(一般人が利用する)食堂もない。"古典的建物"以外に住む普通の住民はどういう生活をしているのだろうか。そもそも、そんな住民がいるのだろうか。何とも不思議なところだ。

 ニュー・ノーシアからGreat Northern Highwayを20kmほど南下するとCalingiriへの分岐点がある。ここらあたりからVictoria Plainsビクトリア平原が始まるようである。この道Old Plains RoadをCalingiriまで30kmを往って戻ってくることにする。

 Calingiriへ向かう道に入るとすぐに、周りの風景がこれまでのものとは少し違うことに気付く。はるか遠くの 丘陵までつづく草原、というパターンは同じだが、これまでと違うのは色彩だ。草原一帯が色づいている。

風景 風景
 

 一ヶ所に数種の色が混じるのではなく、ある所は真っ黄色、ある所は紫、ある所はピンクといったような、単色だが、目も覚めるような鮮やかな色に一帯が染まっている。
 ほとんど途切れることなくそれが続く。実に美しい。 政府観光局のパンフレットに、
 この一帯Victoria Plains が"one of the loveliest and most picturesque rural drives in Western Austraria"と記されているのがうなずける。

花 花 花
花 路肩にも
色とりどりのワイルドフラワーが見られる。

下車して、花を一つ一つゆっくり眺める。
路肩に沿うようにまばらにある潅木のむこうの
色彩に惹かれて歩み入ってみると、
そこもまた美しいワイルドフラワーの世界だ。

花
花 花 花

 足元が人手で整備されていない自然の芝なので、奥へ歩み入るには、サンダルを履く私の足元は心もとない。 この旅で、足元の位置でワイルドフラワーを見る度に、サンダルという自分の足ごしらえに何となく不安を覚えた。 今、ここで、旅の最終日になって、サンダルという自分の足ごしらえは失敗だったとはっきり自覚した。 ワイルドフラワーを自然のなかに心置きなく見るには、しっかりした足ごしらえが必要だ。 底厚で、足元をしっかり防御した靴を履くべきだ。

 Great Northern Highwayへ戻り、25kmほど南下し、Brand Highwayに合流するために、西に向けて脇道に入る。
 脇道からBrand Highwayに出たところがジンジン。この旅の初日、9月13日に、雨の中を、 迷った末にさびしく通過したジンジンだ。
 今日は晴天。町の雰囲気がまるで違う。あの時とはまるで別の町のようだ。広い公園、 小ぎれいなTea Houseなど、ちょっとしたリゾート地といった感じ。 今は丁度、昼時。Tea Houseでハンバーガーをテイクアウトして、公園のベンチで昼食とする。

 ワイルドフラワー見所であるジンジン墓地。旅の初日に雨の中を探したがたどり着けず諦めたジンジン墓地は、 今日はすぐにわかった。
 ジンジン墓地、まさに墓地である。墓がずらりと並んでいる広い敷地だ。 よそ者が勝手に踏み込んでいいのかな、とチラと思うが、日本の墓地とは違う雰囲気を感じる。 ドイツでは墓地のことをフリート・ホーフ(平和の庭)と呼ぶそうだし、ヨーロッパ文化圏では、 墓地とは、畏れ多い近寄りがたい暗い場所というわけでもないようだ。
 墓地の敷地の端に、色鮮やかな花々が、多分ワイルドフラワー見物の客のために張られたロープに守られて、 咲いている。特に目立つのはレッド・アンド・グリーン・カンガルーポー。 華麗な花だが、毒々しいほど色鮮やかで、じっと見ていると気味が悪くなるようだ。
 常に吹いている風が一瞬もやむことがなく、静止画像をどうしても撮影することができなかったのが残念。

 今日の宿はパース北部の海岸にあるリゾート地にしよう。海岸に沿って、ヤンチェプYanchep、スカボロウScarboroughなど有名リゾート地が並んでいる。今は春。海の季節ではない。閑散期だ。従って、簡単に宿はとれるはずだ。私たちはそう思って向かった。できるだけパースに近づこうという気持ちから、私たちが海岸線に出たのは、 結局、パースに最も近いリゾートであるスカボロウだった。

 スカボロウ。閑散期、という私たちの予想は見事に外れた。シーズン真っ盛りのようなリゾートの賑わい。
 そして、パースに近いことを思わせる大都会だ。ロータリーになっている大きな道路を囲んで、 ビルが建ち並んでいる。そういえば、空港を出て以来、この旅で私たちが近代的なビル(ビルディング)を見るのはここが初めてだ。ジェラルトンの街中で3(4?)階建の、一見ビルかなと思える建物を見たが、まるで張りぼてのようだなと思った。あれは木造ではなかったかな。

 私たちが今しなければならないことは、今日泊まる宿をさがすことだ。
 普通、初めての町に到着して宿をさがす時は、 まず、車で徐行しながら宿屋をさがす。宿屋らしいところがあり、通常「vacancy(空きあり)」の札が出ていれば、 車をそっと停め、客室がどんな感じなのか等を外から眺める。客室の窓からどんな景色が見えそうかも大きなポイントだ。 良さそうであれば、フロントに入って、泊まれるか、泊料はいくらか等を訊くことになる。
 スカボロウの街に入った途端に、ここで宿をさがすのは無理だと思った。まず、車が徐行できない。 車の波の流れにのって他の車と同じスピードで進行方向に進むしかない。そこが宿屋だと分かっても、ビルであれば客室は見えない。ビルでなくても高い塀などで、どんな客室であるか外からは見えない。
 考えてみれば、都会とは大抵こういうものだ。旅人に、その街の生の姿を簡単には見せてくれない。

風景
 街の中心に聳え立つ巨大ホテルRendezvous Observation City Hotelランデブー・ホテル。客室数が 多い分だけ空いている可能性がある。フロントで訊ねると、Ocean Viewの部屋が空いているという。泊料$168。高いが、旅の最終の宿だ、いいでしょう。最後はデラックスでいこう。というより、私たちには、 他の宿に当たってみるだけの気力は残っていなかった。

ホテルの部屋のテラスから夕暮れのScarboroughを見る

 16階の部屋のテラスからは、海がすぐ目の前にあるように見える。直線的につづく白浜。青い海。打ち寄せる波と遊ぶサーファー達。海に落ちる夕日を眺めながら、旅の最後にデラックスホテル、というのも悪くないなと思う。

 これまでずっとシャワーだけだったので、久しぶりのバスタブを期待していたのだが、ちょっと違った。これは 見たことのない人には分かりにくいかも知れないが、とりあえず説明しよう。
 バスタブそのものはある。蛇口はあるのでお湯を張ることもできる。ただし、シャワーはついて無い。 シャワーカーテンも無い。カーテンが無いので、バスジェルを使って泡ブクブクなんてことはできない(できない ことはないが、泡がフロアーにまで飛び散るに決まってる)。シャワーがついて無いので、 石鹸で身体を洗うことも難しい。(バスタブの湯を全部入れ替えるまで、身体に石鹸分を付けたまま待つ? バスタブの湯を一回入れ替えたくらいで、身体に付いた石鹸分が全部落ちる?)
 そして、バスタブに直ぐ隣接してシャワーコーナー(ブース)がある。これはちゃんとした?シャワーコーナーで、 シャワーカーテンもついている。バスタブに直ぐ隣接してシャワーコーナーがあるのであれば何の問題もない ではないか、と思われるだろうが・・・・不思議なことに、バスタブとシャワーコーナーとの間には壁がある。 それぞれは独立しており、明確に仕切られている。だから、バスタブからシャワーコーナーへ(逆も)移動するには、 一旦フロアーに出る(フロアーが濡れるので足を拭いた方が良いでしょう)ことになる。
 簡単にいえば、シャワーコーナーがあり、 その そと に蛇口だけついたバスタブの器が置いてある、といった感じだ。

 実は、私がこれを見るのは初めてではない。スコットランドに旅をした時に1度、これと同じものを見た。 スコットランドの宿ではずっとシャワーだけだったので、はじめこのバスタブを見た時は「おお、バスタブだ!  お風呂に入れる。」と喜んだ。バスタブの湯を張ってから、はじめて、シャワーカーテンが無いことに気付いた。 そして、シャワーも付いてないことに。 すぐ横にシャワーコーナーはあるけれど、折角のバスタブ、泡ブクブクでもして入りたいじゃないですか。 だがこれではダメだ。がっかりした。
 この宿の主人、大都会にはバスタブというものがあるというのを聞いて、 使い方も知らずに、格好だけバスタブを置いて、宿に高級感を出したつもりかと、私は内心馬鹿にした。
 2度目に見たのは、この旅の初日、ジェラルトンの宿で。ここランデブー・ホテルで 見るのが3度目ということになる。ランデブー・ホテル、5つ星ホテルである。欧米でのバスタブの使い方を 知らないはずは無い。きっと、これにはこれの使い方があるのだろう。この地域では、このようなバスタブを 通常に使うのかも知れない。"この地域"とは、スコットランド文化圏を意味するのだろうか。

 その後、このような風呂場に数回出くわし、少し分かった。これはスコットランド文化圏とは 特別な関係はないようである。このような風呂場は欧米圏ではそれほど珍しいものではない。
 ただし、私がこのような風呂場に出くわしたのは、殆どが高級ホテルにおいてである。欧米圏では 一般的にはシャワーのみが使われることが多い。このような風呂場では、バスタブで泡ブクブクをやったら、それを流すには、泡ブクブクが付いた身体のまま数歩歩いてシャワーまで移動するのである、、 うんぬん、、という説明も聞いた。私にはよく理解できない。文化とは、難しいものですね。 (2006年10月記)

 夕食はホテルのレストランでブッフェ。$25。安いし、そこそこ美味しかった。

最終日 9月22日
 部屋のテラスで海を眺めながらのんびりと朝食。部屋のお茶セットで熱い紅茶を。そして、これまでに泊まった宿の お茶セットについていたクッキーなど、手持ちの食料をお腹のなかに始末する。

 朝10時頃出発。モンガ湖に寄って黒鳥を見る。 

 午後2時前にパース空港に到着。いつもそうだが、ドライブを無事故に終えることができたことにホッとする。
 午後4時30分、マレーシア航空で日本へ向けて出発。

 今回も いい旅でした。

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