eoさんの旅ノート ワイルドフラワーの旅
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8日目 9月20日
 今日も快晴。6時40分にムレワを出発。今日は ニュー・ノーシア の方向に南下する。ニュー・ノーシアの"方向"というのは、恐らくニュー・ノーシア までは行けないであろうから。
 今日のルートはいわゆるWildflower Road 。この旅でとるルートのうち、ワイルドフラワーが最も期待できるルートである。ワイルドフラワーが見れる場所ではゆっくり見たい。先に進むことよりも、じっくり見よう、を優先する。
 だから、途中のどこかでいい宿があればそこに泊まる。
 予定では、Mullewa Wubin Road を南下、Wubinで Great Northern Highwayに入り更に南下してニュー・ノーシアへ。ムレワからニュー・ノーシアまでほぼ360kmの距離。ゆっくり進むとすれば、今日の宿は140kmの距離にあるPerenjoriか、または、もう少し進んで230kmの距離にあるWubinあたりか。ワイルドフラワーがどれだけ見られるか、それ次第だ。

花 花  

 今日の最初の目的地 Cannaへ向かう。
 対向車には全く会わない。
花 花  

 路肩に色とりどりの小さな花々が見られる。
 昨日Depot Hillで見たのでもう感激はしないが、やはり、さすが、と思わせる。
 何度か車から降りて、ゆっくりと眺めた。

花 花  
 まだ朝早いので花々は濡れたように瑞々しく、私たちも足を濡らしながら花の傍に近寄っていった。

 「Cannaへ」と書かれた標識に従って、車は脇道へ。
 目印のSilo(サイロ--穀類倉庫)はあったが、周りを見回しても何もない。
 戻ろうかと諦めかけた頃に「←Canna Store」と書かれた立て札を見つけた。それは私の膝ほどの高さの低い位置にあったのだ。見てもらおうという気があるのか、という気がする。とにかく、その方向に進むと、Canna Storeが確かにあった。表の道--そこも人っ子一人いない--から隠れたような場所に、その店はポツンとあった。


 入ってみると、奥に細長い土産物屋で、雑貨屋も兼ねている。
 年配の夫婦らしい人がいる。 何となく、へえ、人がいる、という思いだった。店に人がいるのは不思議ではないが、しかし、ここは、Mullewa Wubin Road --一台の車にも出合わなかった--から脇道に入って更に車で数分走り、また更に横道に入った位置にある。とにかく、ここに来るまで、人はおろか人の住む住居らしいものも目にしなかった。この夫婦が、今朝私たちがムレワを出てから初めて出会う人なのだ。

 ここは観光案内所も兼ねているようだ。プリントして用意されたこの周辺のワイルドフラワー地図を私たちに示し、 最近の見所に赤印マークなどを記して渡してくれた。

 案内台のそばに置いてある土産物の、リボンに包まれた花の香りの小さな石鹸が可愛く、2個を買う。
 入口近くにテーブル1卓と椅子2脚がおいてある。白い、レースのような透かしの造りで、場違いに乙女チック、いや、 この店全体の何となく不思議な雰囲気の中で、むしろ似合っているか。
 このテーブルを見ると温かいお茶がほしくなってきた。お茶セットも置いてある。 お茶を所望すると「自分でどうぞ」と。
 ポットのお湯でティーバックの紅茶をいれているとミルクをもってきてくれた。 早朝にムレワを出てから初めてのお茶だ。温かさが美味しい。 「フリー(無料)」と書いてあるのに気付いた。そうだったのか。
 お茶のお礼というわけでもなかったが、リボンに包まれた土産用の小さな石鹸をあと3個買った。 (帰国後、このリボンに包まれた小さな石鹸は土産として大変喜ばれた。)

 もらったワイルドフラワー地図には、この周辺にある花の名前が10ほども書いてあるが、2つだけに赤丸マークがあり、 他は斜線で消されている。斜線のものはもう枯れてしまったということだろうか。

 教えてもらった見所の一つに行ってみたが、最盛期はさぞかし、、、と思われる花の群生の、朽ちる前の残骸が広がっていた。 美しいものも少しはあったが、見ない方が良かったかなという気もした。

 赤丸マークのある2つの花はAnt Orchid と Donkey Orchid。Orchidはランの一種。どちらも教えられた通りの場所に あった。Ant Orchidは薄緑色の地味な花だが、その場所の地面いっぱいに広がっていた。Donkey Orchidが示された位置は 私たちの車も通った車道の端である。そんなものないじゃない!? とキョロキョロ見回していて、アッと気付いた。 真っ黄色の小さな美しい花がほんの数輪ある! 確かに! この1ヶ所だけに。

Donkey Orchid  "逆光"でスミマセン

 1ヶ所だけにあることに驚くというよりも、この1ヶ所だけでもしっかり調べて旅人に案内する 案内所のサービス精神の方に驚く。 それにしても、上品で非常に美しい花だ。

このワイルドフラワーの旅で私たちが目にしたDonkey Orchidは、結局ここだけだった。

 ここCannaを出てしばらくしてから、ひょっとすると、あのCanna Storeは私達が去ると同時にスーッと消えてしまったかも知れない、等と奇妙なことを考えた。それほど、あの店は神秘的な雰囲気がした。まるで、童話の中の世界のような。

 昼頃、Morawaに到着。ここの観光案内所の係の人の話では、最近の晴天続きで雨がないためにこの近辺の ワイルドフラワーは大半が枯れてしまったという。「Too late!」という悲観的な言葉。

 とにかく昼食をとろう。雑貨屋兼Tea Houseに入る。Tea Houseとしてのテーブルは1つしかないが、 ここがこの町で昼食がとれる唯一の場所である。サンドイッチとミルクセーキを注文。 外が暑いので冷たいミルクセーキを期待したが、出てきたミルクセーキが生温い。 「冷たくないよねえ。氷を使ってない。」などと2人でブツブツ言っているのが分かったのかそうでないのか。 ミルクセーキがもう1杯出てきた。そして、その人は私たちにしきりに何か言っているが、 私たちに言葉があまり聴き取れない様子が分かると「フリー(タダ!)」と言う。

 トイレはどこ?と聞くと、ふと間をおいて、厨房の奥の方を指差す。そちらの方向に入っていくと、居間があり、 ベッドルームがあり、シャワールームがあり、一番奥にトイレがあった。つまり、 このトイレは客用でなくこの家の人用のものなのだ。用を済ますと、恐縮してあたふたと戻った。
 Tea Houseを出ると、なんと、近くに公衆トイレがある。では、 あの店の人はなぜ私たちにあれほど遠慮したのだろう? それにしても、あんな小さな店で、 そこにトイレがあることを期待しているかのような聞き方を私がしたのも無神経だった。

 Mullewa Wubin Road をひたすら走る。道路は舗装されているが、車道の両サイドに広がるのは、 遠くに見える丘陵までずっと続く土色の荒れた平原。路肩に潅木の類はあるが、蔭を作るようなものはない。 ほとんど雲のない真っ青な空。いま季節は春だが、照りつける陽の光は真夏を思わせ、 道路は乾ききって白っぽく見える。対向車も後続車もほとんどない。 私たちを乗せた車は、車体の金属板にまるで世界の熱を一身に浴びながら懸命に走っているかのようだ。 人間でなくても、車でも悲鳴をあげたい時があるんじゃないか、という気がした。
 私たちは冷房の中にいるが、車窓から外の白っぽい光を見ているだけで疲労感が噴き出してくるようだ。

 Perenjoriの観光案内所でワイルドフラワー情報を訊くと、Wreath Flowerが近くにあるという。
 Wreath Flowerは リースWreathのようなカタチに開花する花で、西オーストラリア特産。それもこの周辺でしか見られない希少種 だそうである。Mullewa Wubin Road から脇道になるCarnaman Roadを20kmほど行くと見られるという。係の人は 「20kmほど先ですよ。」を繰り返して言う。私たちが案内所を出ても、案内所のドアから身体を乗り出して 「Twenty kilo!Twenty kilo!(20キロよ!20キロ行ってね!)」と叫んだ。

花 花
 「"Wreath Flowerはここ"なんて書いた標識でもあるんだろうか」と話しながら行くと、20kmほど行ったあたりで路肩に花のリースのような綺麗なものがあるのが、走る車窓から見えた。

 車を降りてみると、そこかしこにWreath Flowerがある。

 本当にまるで花のリースである。中心が緑、周りの花の色はほとんど赤系統だがその赤も幾種類かあり、赤の部分に白や黄が混じり、とても美しい。花のリースになっている姿がまた何とも華麗だ。
 ぜひ見てほしいという案内所の人の気持ちが良く分かった。

 ここPerenjoriで宿をとるにはまだ時間が早い。Wubinへの道を進む。Morawaの案内所でワイルドフラワーを見るには too late!と言われたが、まだ残って路肩に見える花々はさすがに美しい。

 午後3時過ぎ、Wubinに到着。少し疲れているし、宿に入るには丁度良い時間だ。今日はここWubinで宿をとろうという 心積もりもあった。100年前くらいに建ったような古いスタイルのモーテルが目の前にある。
 このモーテルに風情がないわけではない。しかし、周りの風景が寂しい。花らしい色合いも全くなく、 なにか潤いがほしい今の私たちの気持ちには、ここの空気は乾き過ぎているような気がする。先に進むことにした。

 今日のルートでこの先にあるのはニュー・ノーシア。ここから130kmの距離がある。途中でルートを外れると、 ここからほぼ120kmのところに、歴史のある街だというモーラがある。私たちはモーラに向かうことにした。 理由はニュー・ノーシアよりは10km近いから。ドライバーであるツレアイの疲れきった神経に130kmと120kmの差の10kmは大きかった。

 午後5時頃、モーラMoora着。私たちには、旅の初日のジェラルトン以来の大きな街。 昔の宿場町風の建物がいくつかある小ぎれいな街だ。モーテルMoora Motelに泊まった。1泊$82。可もなく不可もなし。

 夕食は、街中のオープンテラス風の席がある食堂で。Licensed(アルコール取扱い免許)の店ではないので、 すぐ近くの居酒屋にビールを買いに出た。
 居酒屋の入口と思われるドアに入ってみると、カウンターがあり、壁にビール等のアルコール類のメニューが 貼ってあるが、雰囲気が違う。カウンターには誰もいない。
 床は椅子も何も置いてないガランとしたスペースがあるだけだが、 その床には切符の切れ端のような紙が、床面が見えないほど一面に散乱している。4、5人の人がいる。私の方を見るでもなく、自分達の世界にこもっているようだ。20歳前後か、若い人達。どうやら、ここは賭博に関係のあるスペースであるらしい。
 私に気付いたらしい店の人がカウンターの横から顔を出した。その時に気付いたが、 そちらの方に居酒屋の中らしいものが見える。どうやら、私は入口を間違えたようだった。

 夕食はシーフード・プラッター。内陸部の街で、なぜシーフード・プラッター?  モンキー・マイアのシーフード・プラッターの味が忘れられず、メニューに「シーフード・プラッター」とあったので 思わず注文したのだ。ここも、それなりに美味しかった。

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