eoさんの旅ノート ワイルドフラワーの旅
準備など 初日 2日目 3日目4日目 5日目6日目 7日目8日目 9日目〜最終日

7日目 9月19日
 朝食はテラスで、昨日の夕食の残り(量が多かった)を電子レンジでチンして食べる。熱い紅茶と共に、 やはり美味しい。
 8時15分に出発。始めの予定では今日の泊まりはドンガラあたりだったが、ここカルバリで3泊したために、 後の行程を考えるとドンガラよりもっと先まで進みたい。途中、ワイルドフラワーもゆっくり見たいが、ムレワ あたりまで行けるだろうか。

 カルバリから海岸線に沿って南下する。George Grey Driveは始めの部分が昨日ドライブした道である。今日も快晴。
 前方に見える低い丘陵のむこうに雲があるのに気付く。帯のように細長い雲が幾筋か。そういえば、 この数日間、雲を全く見なかった。 快晴続きだったのだ。この前に雲を見たのは、モンキー・マイアから カルバリに移動した日だった。3日間ほとんど屋外にいて、一片の雲も見なかったことになる。私の短い (^^; 人生でこんなことは初めてではないかという気がする。

 しばらく行くうちにその雲も消えてしまった。すれ違う車も殆どなく、道はPort Gregory Roadに変わる。 Northamptonから1号線に入り、ジェラルトンを通過して、昼頃ドンガラに着く。旅の初日、パース空港からジェラルトンに行く途中、ここドンガラのTea Houseでとった昼食が美味しかったので、そのTea Houseに行ってみると"本日閉店"。今日の昼食はここでと決めていたのでがっかり。
 "本日閉店"の看板を未練がましく見ていたら通りがかりの人が 「他のTea Houseがむこうにある」と教えてくれたので、教えられたところを捜したが分からず、何となく気落ちしてドンガラを去る。
 最初の予定通りにドンガラで泊まるのであればDongara Port Denisonまで行くつもりだったが、カルバリで延泊したので、先を急ぐことにする。

 1号線からMidland Road(116号線)に入り、Mingenewへ。この旅で初めて内陸部に入ったことになる。
 Mingenew。 何となく西部劇のさびれた宿場町を思わせる。汽車がいつ通ったのだろうと思わせるような ひっそりとした鉄道線路。線路に沿って1筋の道が走り、ベーカリー、小さなホテルなど数軒が並ぶ。この通りが この町の全てだろうか。通行人の姿はない。

 とにかく昼食をとりたい。ベーカリーでケーキとスコーンを食べる。他に食事らしいメニューはなかった。

 観光案内所があった。この後ワイルドフラワーを訪ねて内陸部を旅したが、人が住む町のほとんど 全てに、宿屋、スーパーマーケット、そして観光案内所があり、しかも観光案内所のどこもが単に 事務的でなく、その地域の最新の観光情報を丁寧に詳しく教えてくれた。

 次の目的地はDepot Hill
花

 観光案内所で教えられた通りに、Mingenew Mullewa Road を北上して直ぐに脇道へ入る。 こんなところに何かあるの?と言いたいような田舎道。 Depot Hillと書かれた標識を見て車を停める。駐車するスペースがあるだけ、という感じのところ。
 「とにかく Depot Hillと書いてあるんだからここに間違いないはず」と木立の中の道らしいところに踏み込んで、数歩進んで思わず立ち止まった。
 色とりどりの小さな花がびっしりと地面を埋め尽くしている。突然、夢の世界に 踏み込んだようだった。

 赤、青、黄、ピンク、紫、、、特別に自己主張する色はなくどの色も精一杯に美しく、見事なワイルドフラワーの 絨毯を織りなしている。全体がこうまで美しいと、それぞれの花の名前などどうでもいいという気がする。 一つ一つの花が小さいので、全体がパステルカラーのような色合いになり、それが、降り注ぐ陽の光を受けて輝いて見える。 まるでメルヘンの世界だ。

 そうか、これがワイルドフラワーの世界なのか、、、。いつまでも見ていたい気持ちだが、短い旅の途中だ。 先へ進もう。

 Mingenew Mullewa Road に戻って更に北上、また少し脇道に入ってMingenew Coalseam Conservation Park に着く。 Coalseam の名から分かるように石炭層の地形の保護区といったところらしいが、石炭うんぬんよりも その特異な景色に驚く。周囲が数キロあるような大きな公園だが、中心部分はまるで箱庭のように風光明媚である。 こういうのは日本やアジアでは決して特異ではないが、大自然を感じさせるオーストラリアにあって 「箱庭のように風光明媚」というのは特異だ。 ここもワイルドフラワーの見所として挙げられていたのだが、大半は枯れてしまったようで、黄色い花だけが 残って一面に咲いていた。

花 花  
 ただ、公園の出口にむかう路肩には色とりどりの花が見られて、

 ワイルドフラワーの見所というのは間違いではないようだ。


 サルヴェイション・ジェーンの大群落の、目も覚めるように鮮やかな紫色に染まった牧草地を横に見ながら、Mingenew Mullewa Road を更に北上。

花
紫色のほぼ中央にある黒い点は、鳥


 午後3時頃 ムレワMullewa 着。Mullewa Railway Motel に宿を取る。 2階の見晴らしの良さそうな部屋は全部予約済みということで、裏手の部屋に案内された。1泊$88。

 観光案内所でワイルドフラワー情報をたずねると、30分ほどのドライブの距離にある Pindar へ行ってみなさい、 という。用意されていた地図に矢印や見所などのマークを入れて渡してくれた。

 Pindarは ムレワからほぼ真東に向けて走る。もらった地図でワイルドフラワー見所と記された場所に着いたので、 とりあえず降りて見てみることにした。ただし、観光案内所の人はここにはマークを付けなかった。しばらく歩いてみて、 案内所の人がここにマークを付けなかったのがよく理解できた。花の残骸がちらほらとあるだけ。荒れ果てた 地面にへばり付くようにして枯れた花の残骸は無残だ。

 案内所の人がマークをいれてくれた最新の見所はもっと先にある。しかし、私たちはここでUターンして ムレワ に 戻ることにした。そのようにした決定的な理由は、帰りは夕陽を正面に受けることになるということだ。実は、私たちはカルバリ の海岸で夕陽を見ようとドライブした時に、逆光の恐怖を味わったのだ。
 一片の雲もない晴れ渡った空に夕日がかかる。すでに光を失いつつある空の、 澄み切った空気のなかで、夕日だけが強烈な光を放つ。その夕陽を 正面に受けて走る車の中からは、前にある物体は逆光で真っ黒に見える。そこに何かがあるということは分かるが、 それが何であるのか、どんな状態にあるのかが分からない。カルバリの海岸線近くで、 私たちの車は逆光の中で真っ黒に見える物を前に、怖くて前進できなくなった。 助手席の私は車から降りて、普通であればなんでもない道を、手で車を誘導したのだった。

 ドライブを早く切り上げたい理由はもう一つあった。今日はカンガルーの死骸を何頭見たことだろうか。 すべて車道で、車との接触によると思われる死骸である。カルバリからジェラルトンまでほぼ100kmの間に3頭、 ドンガラからMingenewまで50km足らずの間に2頭、そしてムレワからPindarへの道ほぼ20kmの間で なんと7頭。7頭のうち4頭は、わずか10メートルのうちに4頭が並ぶように横たわっていた。どんな車とどんな風に接触して こんなことになったのだろう。何とも心塞ぐ光景だった。

 宿の部屋に戻ると音楽がすごいボリュームで飛び込んできた。近くの部屋に泊まっているらしい男性2人が 部屋の入口に座りこんで、ラジオでロック音楽を大音量にして聴きながら雑談?しているようだ。見た感じでは、 トラックの運転手といった感じ。駐車場にはトラックのような大きな車も停まっている。 ここムレワ を通るルートは物流の幹線なのだろう。 彼らは日本でいうところのトラック野郎といったところか。普通であれば「も少し静かにしてもらえませんか」くらい 言うところだが、何となく言えなかった。

 夕食は宿の食堂で。食堂に入ってすぐはバーになっており、バーと向き合った反対側の奥に厨房が見える。駅の 切符売場のような窓が開いていて、そこから調理場が見えるので厨房だと分かる。 バーと厨房の間のスペースにテーブルと椅子が幾セットか置いてある。 通常のレストランの座席配置のように整然と並んでいるのではなくて、座りたい人が外から椅子を思い思いに 自分で持ち込んだ、といったふうに三々五々、置いてある。真ん中あたりの大きなテーブルを囲むのは数人の "トラック野郎"。私たちもとりあえず空いている席に座った。

 "切符売場"のそばの黒板に書いてあるメニューを見て注文したい料理を決め、注文を訊きにきてくれるのを待つ。 だが、いつまで経っても注文取りは来ない。ウェイトレス(というか、バーのカウンターにいる女性--不思議に、 みんな美人)が通りかかっても私たちに眼を向けるでもない。"トラック野郎"が時々"切符売場"に行って何か言い、 ややあって料理が運ばれるのを見て、どうやら自分で"切符売場"に行って注文するらしいことに気付いた。
 気付いたけれど、そこの雰囲気が何となく面白く、そのままボーっと座っていると、"トラック野郎"の1人が 私たちのテーブルに来て"切符売場"を指差しながら何か言った。早口の英語で聴き取れないが、 「あそこで注文するんだよ」と言ってくれているのだろう。Thank You! Thank You!  やっと腰をあげ、"切符売場" で注文した。ステーキと海老料理。どちらも美味しい。サラダとパンは"切符売場"近くの台に数種類並んでおり、 バイキング。

 私たちの隣の席に中年のカップルが座った。男性がすぐに私たちに話しかけてきた。
 パースから来た夫婦で、 ワイルドフラワーを見るドライブの旅だという。私たちのことも聞かれる。私たちは単語を並べることはするが 流暢には答えられない。私たちの英語は本当のカタコトであり、意思の伝達だけなら何とか足りるが、会話を続けると なると心もとない。それが分かると、今度は、彼はゆっくりと、噛んで含めるように話し始めた。私たちが ある言葉の意味を理解できないと分かると、何とか理解させようといろいろと違う表現をしたりして話し続けた。 まるで学校の先生が出来の悪い生徒に何とか理解させようと努力しているみたいだなと私は思った。 だが彼は学校の先生ではない。身障者向けの住居のデザインをビジネスにしているという。
 私たちの英語力の貧しさを彼がちょっと馬鹿にしてるのでは、と思われるかもしれないが、その感じはない。 むしろ、私たちが幾つもの国を旅行していることを知ると(畳み掛けるように聞かれるので答えて言っただけなのだが)、 彼の私たちへの見方がなんだか尊敬の眼差しふうに変わるのが分かった。

 部屋に戻って、気持ちが少し落ち込んだ。流暢な英会話ができるようになりたい。 表現が間違っていてもいいから、単語を並べるだけでもいいから、積極的に会話に飛び込んでいく勇気をもつ べきだと思った。帰国したら英語の勉強をしよう。そして、この国の人々と話しをしてみたい。

eoさんの旅ノート ワイルドフラワーの旅 
準備など 初日 2日目 3日目4日目 5日目6日目 7日目8日目 9日目〜最終日