Carmen

Discography




Fandangos in Space(宇宙の血と砂)

  

(UK: Regal Zonophone,  US: ABC, 1974)

    1.Bulerias
       Cante (Song)
       Baile (Dance)
       Reprise
    2.Bullfight
    3.Stepping Stone
    4.Sailor Song
    5.Lonely House
    6.Por Tarantos
    7.Looking Outside (My Windows)
       Theme
       Zorongo
       Finale
    8.Tales of Spain
    9.Retirando
    10.Fandangos in Space
    11.Reprise Finale

    David Allen:vocals, 6 string electric guitar, flamenco guitar
    Roberto Amaral:vocals, vibraphone, footwork, castanets
    Angela Allen:vocals, mellotron, synthesizer, footwork
    John Glascock:vocals, bass, basspedals
    Paul Fenton:drums, percussion

    Recorded at John Kongos Studios, Air Studios and E.M.I. Studios, London
    Tony Visconti:produce
    Tony Visconti, John Kongos, Alan Harris, John Kurlander, Peter Mew:engineering
    Benno Friedman:cover photo
    Peter Howe:back cover & inside photography
    Robert L. Heimall:cover design

 何故か、スパニッシュ勢よりもフラメンコのパッションを感じることのできるCarmenの、73年に発表されたデビュー・アルバム。随所にフラメンコの原曲をモチーフにした様な部分があるものの、実際はフラメンコ・ギターを多用しているわけではなく、歌唱もロックっぽい。しかし拍子の取り方が実にフラメンコしている。これがCarmenのフラメンコ・ロックたる所以であろう。格好良いギターのフレーズ、情熱の嵐のようなコーラスワーク、複雑なリズムセクションに絡みつく手拍子(clapping)足拍子(footwork)に聴き惚れてしまう。
 A面1曲目からノリの良い強烈なフラメンコ・ロックが飛び出してくる。フラメンコ調でない他の曲の出来も素晴らしく、つい一緒に口ずさんでしまうほどである。B面の流れは圧巻で、各曲が途切れること無くメドレーのように繋がっていて、最後にはA面1曲目のフレーズが再現され、アルバム全体を通してトータル感が感じられる。表題曲(Fandango in Space)に至っては、展開がぶっ飛んでいるので訳が分からないくらいスゴイ。この曲をバックにフラメンコのステップが踏まれていると思うと、思わずゾクゾクしてしまう。
 ちなみにCarmenはアメリカのバンドであるが、渡英し1stアルバムを発表していることと、どう転んでも英国産のバンドとしか聞こえないサウンドから、個人的にはブリティッシュ・ロックという位置付けにしている。

 

 

Dancing on A Cold Wind(舞姫)

(Regal Zonophone, 1975)

    1.Viva Mie Sevilla
    2.I've been Crying
    3.Drifting Along
    4.She flew across the room
    5.Purple Flowers
    6.Rememberances (Recuerdos de Espana)
      a) Table Two for One (Sambra)
      b) She's Changed
      c) Gypsy Girl (Caravan)
      d) The City
      e) Time (She's No Lady)
      f) People Dressed in Black
      g) Dancing on A Cold Wind
        1) Instrumental
        2) vocal
      h) The Horseman
      i) Conclusion (She Changed)

      ※Cast
       Narrator - Roberto Amaral
       Gypsy Girl - Angela Allen
       Present Lover - John Glascock
       Past Lover - David Allen

    David Allen:electric and acoustic, vocals
    Roberto Amaral:footwork, vibes, castanets, percussion, vocals
    John Glascock:vocals, bass
    Angela Allen:piano, melletron, synthesizer, vocals
    Paul Fenton:drums, percussion, vocals

    David Katz:violin, orchestra contractor
    Chris Karan:percussion
    Tony Visconti:produce, woodwind, string arrangements
    Mary Visconti:background vocals
    Peter Howe:photography
    Robert L. Heimall:cover design

 75年発表の2ndアルバム。全体の構成が1stアルバムと良く似ており、前作と比較しても遜色の無い出来栄えである。しかし、こちらの方がプログレ色を若干強く感じる。ちなみに1曲目(Viva Mie Sevilla)の歌い出しは、1stアルバムの1曲目と同じスペイン語の歌詞を使っている。
 B面はメドレー形式の組曲になっていて、ロベルト・アマラルを語り手としてジプシー女のお話が進行する。登場人物として割り当てられた他のメンバーが、リード・ボーカルを交代していくところが面白い。ちなみに、John Glascockの歌声が聴ける曲(The City)というのは、このアルバムだけであろうか? 全然上手くないが、素朴な歌声だ。また前作よりもアンジェラ・アレンの妖艶なボーカルが増えており、この作品のポイントだと思う。

 

 

The Gypsies(ジプシーの涙)

(Mercury/Phonogram, 1976)

    1.Daybreak
    2.Shady Lady
    3.High Time
    4.Dedicated to Lydia
    5.Joy
    6.The Gypsies
    7.Siren of The Sea
    8.Come Back
    9.Margarita

    David Allen:electric and acoustic guitar, piano, mellotron, synthesizer, vocals
    Roberto Amaral:footwork, vibes, chimes, castanets, percussion, vocals
    John Glascock:vocals, bass, synthesizer
    Angela Allen:piano, melletron, synthesizer, vocals
    Paul Fenton:drums, percussion, vocals

    Steve Elson:produce
    David Allen, Gil Markle:assisted
    Jessie Henderson:recording engineer
    Gil Markle:mix and re-mix engineer
    Jim Schubert:art direction
    Dennis Scott:photography
    Joe Kotleba:cover design
    special thanks:Jeff Christie

 76年発表の3rdアルバム。前2作と比べてしまうとどうしても見劣りしてしまうのは、バンドの置かれた危機的状況が影響しているのだろうか。全体の感じとしてはトータルな統一感が薄く、油断すると「どの曲なのか判らなくなる」様な構成面での緻密さは無くなっている。またフラメンコを意識した曲が少ないのも、決め手に欠ける一因と思われる。しかしフラメンコ色が薄い曲でも曲自体のデキは相変わらず良く、別の見方をすれば、非常に聞き易いブリティッシュ・ロックとも言えるだろう。表題曲「The Gypsies」に限って言えば、フラメンコ拍子爆発の超絶ナンバーであり、個人的にはCarmenの中でもトップクラスの素晴らしい曲だと思う。
 尚、3枚の各アルバムの最後に収録されているアコースティックな小曲は、同じメロディの変奏バージョンである。ついつい大音量で聴いてしまうCarmenにあって、一服の清涼剤のようにホッとする穏やかな曲である。

 

 

Fandangos in Space / Dancing on A Cold Wind (Remaster 2CD)

(Angel Air Records, 2006)

    [Disc1:Fandangos in Space]
    1.Bulerias
    2.Bullfight
    3.Stepping Stone
    4.Sailor Song
    5.Lonely House
    6.Por Tarantos
    7.Looking Outside (My Windows)
    8.Tales of Spain
    9.Retirando
    10.Fandangos in Space
    11.Reprise Finale

    [Disc2:Dancing on A Cold Wind]
    1.Viva Mie Sevilla
    2.I've been Crying
    3.Drifting Along
    4.She flew across the room
    5.Purple Flowers
    6.Table Two for One (Sambra)
    7.She's Changed
    8.Gypsy Girl (Caravan)
    9.The City
    10.Time (She's No Lady)
    11.People Dressed in Black
    12.Dancing on A Cold Wind
    13.The Horseman
    14.She's Changed
    15.Quiriquitu (bonus track)
    16.Out On The Street (bonus track)

 2006年、イギリスのAngel Air Recordsから再発されたリマスターCD2枚組である。私は1stはアナログ盤しか持ち合わせておらず2ndの旧盤CD(独Line盤)との比較しか出来ないが、リマスタリングで音の輪郭が若干クッキリしたのかな?という感じがする。ベースのブリブリ音は明らかに音圧が上がっており、グラスコックのベースが大好きな私には喜ばしいかぎりだ。また、1stの旧盤CD(独Line盤)では冒頭のCante部分が削られた不完全な収録であった1曲目「Bulerias」も完全収録されている。
 旧盤CDも長らく廃盤状態が続いていた為か中古やオークションでも高値になっていたので、今回の再発は待ちに待ったという人も居るのではないだろうか。オマケにリマスター&ボーナストラック付きである。
 ボーナス曲1曲目「Quiriquitu」はゆったり目の短い曲で、普通に単調な手拍子とコーラスで始まる。カルメン節とも言えるボーカルとコーラスが印象的なボーカル曲だ。2ndアルバム旧B面の組曲途中に入っていても違和感のない感じがする。ボーナス曲2曲目の「Out On The Street」もミドルテンポの曲で、奇妙なリズムの刻み方とボーカル&コーラスの構成がカルメンらしさを醸し出している。中程からギターをメインに情感豊かに盛り上がりを見せるが、曲作りが未完成なのか急にフェードアウトして終わってしまう。
 ちなみにボーナスの2曲共フラメンコ・ロック的な要素は薄く、今回のリマスター盤の中でも音質的に劣っている。そういう意味でもスタジオ・アルバム未収録となった没曲なのだなと感じさせるモノでもあるが、未発表曲が聞けるだけでも喜ばしい事だと言える。未発表曲が有ったという事自体驚くべきであり、あとはライブ音源が有れば聞きたいという欲求が増すばかりである。(ジェスロ・タルの前座を勤めたツアーの音源が有っても良さそうに思うのだが、非公式な音源の噂すら聞いたことがない。)

 

 

The Gypsies / Widescreen (Remaster 2CD)

(Angel Air Records, 2007)

    [Disc1:The Gypsies]
    1.Daybreak
    2.Shady Lady
    3.High Time
    4.Dedicated To Lydia
    5.Joy
    6.Gypsies
    7.Siren Of The Sea
    8.Come Back
    9.Margarita
    10.Flamenco Fever (bonus track)
    11.Only Talking To Myself (For John) (bonus track)

    [Disc2:Widescreen]
    1.Veracruz
    2.La Luz
    3.Tango For Pia
    4.Delta
    5.Seti
    6.Dancing On A Cold Wind
    7.Bouba
    8.Isobel
    9.Hope
    10.Margarita
    11.Carmenesque

    David Clark Allen:guitar, voice
    Steve legassick:keyboards
    Laurence Elliott-Potter:keyboards
    Julian Ferraretto:violin
    Clare Hayes:whistle flute

 昨年の1st&2ndのリマスター再発に続いて、2007年にAngel Air Recordsから発表された、3rd及びデヴィッド・アレンのソロ作がカップリングされたリマスターCD2枚組である。3rdの旧盤CD(独Line盤)との比較は先の再発盤と同様、リマスタリングで音の輪郭が若干クッキリしたのかな?という程度。音質面での向上がどうのこうのというより、今回の目玉はボーナス曲とアレンのソロ作品が聞けるということだろう。

 Disc1のボーナス曲1曲目「Flamenco Fever」は過去にシングル盤のみで発表された曲である。カルメン特有の曲調・節回し、シングル盤になるのも頷けるキャッチーなメロディー、絶妙のタイミングで繰り出されるフラメンコのステップと手拍子など、何というカッコ良さだろう。長い間聞きたい聞いたいと熱望していた曲であるが、ようやく聞くことができ、感無量である。
  ボーナス曲2曲目の「Only Talking To Myself (For John)」は副題からも想像するに、ジョン・グラスコックに捧げられたものだろう。女性ボーカルによる淡々とした歌モノで、はっきり言ってバンドとしてのカルメンの曲ではなく、デヴィッド・アレンのソロ・アルバム製作時期と前後するくらいの近年に録音されたものである。メンバーもソロ・アルバムに参加しているミュージシャンと、作詞・ボーカルにアンジェラ・アレンの名前がクレジットされている。

 Disc2は「Widescreen」というデヴィッド・アレンの初ソロ・アルバム。アレンは80年代半ばに咽喉癌の手術を受けた後、約10年ほどはミュージシャンではなくカメラマンとして活動しており、その後90年代半ばに再び音楽の道に戻った様である。それから現在に至る約10年間の創作活動をまとめたものが今回のソロ・アルバムになるのだろう。
  アルバムの内容としてはフラメンコ・ギターをメインにしたアコースティックな作品で、バイオリン・キーボード・パーカッションのゲスト数名が所々でサポートをしている。個人的にはヌーボー・フラメンコというジャンルは何かイージー・リスニングっぽくてあまり好かないのだが、このアルバムはその様なジャンルに当てはまってしまう作品でもある。実を言うとあまりにも期待し過ぎたせいか、最初に聞いた時には肩透かしを食らった印象だったが、何回か他の作業をしながらBGMとして流していたら気持ちの良い音楽に思えてきたから不思議だ。フラメンコ・ギターの爪弾きによるメロディーは活き活きとしているし、「Dancing On A Cold Wind」や「Margarita」といったカルメンの曲も収められているので、カルメン・ファンにはとっつき易い内容だという気がする。
  ところで、アルバム最後に収められている「Carmenesque」は打ち込み系のビートの効いた少々ファンキーな曲で、アルバム全体の統一感からこの曲だけ浮いている。カルメン解散後にアレンはフラメンコとファンクをミックスしたバンドを画策したようであるが、この曲がその名残だとしたら面白いなと邪推してしまう。

 

 

Single

   

Bulerias / Stepping Stone

(Regal Zonophone RZ 3090, 1973)


   

Flamenco Fever / Lonely House

(Regal Zonophone RZ 3086, 1974)

 カルメンのシングル盤については、Regal Zonophoneからの2枚が存在する。1枚目(Bulerias / Stepping Stone)のシングル盤が発売されていた事は知っていたが、更にもう1枚有ったという事実に驚かされた。(調べ物をしていた際、Regal Zonophoneレーベルのレア盤を紹介している海外サイトを見て知った)
 1枚目のAB面と2枚目のB面は1stアルバムからの曲である。「Bulerias」はカルメンを紹介するのには一番判り易い曲であるし、「Stepping Stone」「Lonely House」もシングルとして発表されるのもうなずけるキャッチーなナンバーである。しかし、2枚目A面の「Flamenco Fever」はRoberto Amaral作のアルバム未収録曲である。長らくシングル盤でしか聞くことの出来なかったナンバーであるが、「The Gypsies / Widescreen」のリマスタ再発盤にボーナス・トラックとして収録された。

 

 

David Bowie / Dallars in Drag (Boot Video)

    1.1984-do do (David Bowie)
    2.Sorrow (David Bowie)
    3.Burlerias (Carmen)
    4.Everything's Alright (David Bowie)
    5.Space Oddity (David Bowie)
    6.I Can't Explain (David Bowie)
    7.As Tears Go By (M.Faithful)
    8.Time (David Bowie)
    9.Wild Thing (Troggs)
    10.The Jeangenie (David Bowie)
    11.20th Century Boy (M.Faithful)
    12.I Got You Babe (David Bowie & M.Faithful)

    David Bowie's "Midnight Special" Television Show

 この作品はデビッド・ボウィの1973.10.18マーキークラブでのライブ映像(Boot Video)であり、1980年にアメリカのNBCテレビで「1980フロア・ショー」と題されて放送された。プロデューサーのトニー・ヴィスコンティの繋がりでカルメンがゲスト出演しており、事実上のメジャーデビュー(お披露目)的なものであったと思われる。カルメンの他にも、ゲストとしてマリアンヌ・フェイスフルとトロッグスが出演している。尚、ここには収録されていないが、このショーでは「Burlerias」の他に「Bullfight」も演奏している。