第5幕  工事の出来は、職人次第 
   

契約書を取り交わした後は、国の補助金や電力会社の申請書に施主としての署名も必要と、言われるままに判を押す。 これらの書類は所謂、公文書であるから、高利貸しの借用書ほど用心することはないだろう。暫くして新エネルギー財団から補助金の予約受付の通知も届けばひと安心だ。 形式的な事務手続きが済めば、指定の機材の調達に掛かる。そして、施工業者も手配された。

まだこの時期、ソーラー発電の施工業者はそれほど多くはない。 我が家を担当したのは、土曜日の早朝にも拘わらず車で2時間近く掛かるところからやってきた4人組の業者。
彼らにはちゃんと手間賃が渡るのだろうか、少し無理を言い過ぎたかと申し訳ない気持ちも抱きながらも、契約は契約だ、やるべきことはやって貰うのが筋。監督と思われる人物から工事の説明を受け、パワーコンの設置場所の打ち合わせを済ませたあとは、手抜き工事が無い様しっかりと目を光らせた。

工事代の多くを占めるのが、足場代である。足場といえば、建築現場で建物を取り囲む規格品のパイプと踏み板を組み合わせたビケ足場を直ぐに思い出すが、ここでも同じ足場が用意された。
しかし、その足場は建物を囲むのかと思いきや、予想に反して櫓に組まれた。

そして櫓の頂に機材を吊上げる滑車が取り付けられると、作業員が上下に分かれ手慣れた手付きで作業を進めていく。

最初は、ソーラーパネルを載せる金属架台の設置から。台風でパネルが飛ばされたり、ずれることが無い様屋根の野地板にしっかり固定しなければいけない。
こういう目に見えないところがもっとも手抜きされやすいところだろうが、幸い担当の業者はそれなりのスキルの高さと誠実さを感じさせるメンバーが揃っていた。
当家の屋根は、耐久性を考えて、一般的なカラーベスト(スレート)瓦ではなくハウスメーカーオリジナルの分厚いセメント瓦になっていたので、瓦の加工に結構手間を掛けていたようだが、丁寧な仕事は悪くない。

架台が組上がれば、愈々、パネルの取り付けに移る。櫓の上下で1m四方ほどのモジュールを一枚ずつ丁寧に吊上げながら、屋根の上では別の作業員がパネル固定しながら配線を繋いでいく。 パネルは、容量に合わせて、数枚を単位ユニットとして回路を分けているらしい。

屋根上の工事にどれくらいの時間が掛かるのか見当はつかなかったが、手際よく作業は進み、昼を過ぎた頃にはパネルの縁を化粧枠が囲んでいた。

地上では、監督とベテラン風作業員がパワーコンの取り付け場所で幹線ケーブルの取り回しをどうするか話している。 結局、配管を露出させる部分を少なくするため床下に潜ることにしたようだ。 手間と材料代を抑えられ一石二鳥を考えたようだが、床下の仕事もそれほど楽ではない。パワーコンからは幹線ケーブルのほか、コントローラ(モニター)や非常用電源などへの配線もある。これらの電線も床下からリビングへと引き込まれていった。

コントローラはリビングの壁に取り付けることになるため、仕上がりを考えた細工が必要だ。
新築から段取りして配管でも用意していれば苦労はないが、後付けの配線はなかなか厄介である。 今回は、少々荒っぽいが長いドリルの切刃を用意して、壁のコンセントを外した穴から床下に向けて穴を開けた。通常、壁の真下の床下には根太があるから垂直に穴をあけるのは無理、旨く根太を外しながら床に疵を残さないよう高度なテクニックが必要だ。なかなか厳しい条件だったが器用な職人のお陰で難を逃れた。

一方、外では電力会社の幹線と接続するための配線を用意しているが、既存のブレーカーの収納箱にソーラー用の設置スペースがない。その日は、ブレーカーの収納箱を増設するため業者側が機材を調達することで決着し、一週間後に工事再開することとなった。

ここまで来れば、一刻も早く発電させたいと気が逸るが、事はそう簡単には進まない。

ただ、業者が用意したブレーカーの収納箱は、見事に既存の箱にそっくり。そんなところに期待はしていなかったが、プロの拘りを見た気がした。



 
        > 第6幕 遂に実現、自家発電所も前途多難  

       
 
わが家のソーラー発電・顛末記