特集:初期設定について
MIDIデータを作成する際、音源の初期設定や誤動作防止のデータを演奏データのはじめに挿入しておくのが普通だ。特にネット上で作品を公開する時のように「誰がどんな状態で再生するかわからない」ような場合は今言ったようなデータを挿入しておく事はたいへん重要だ。 そこで少しでも多くの人に、データ作成者の意図した演奏に少しでも近い状態で演奏データを再生してもらうために次の事に注意して演奏データを作成してほしい。
@ |
演奏データをGM音源用に作成する(知識の扉第5回参照)。 |
A |
音源の誤動作防止用データをはじめに入力しておく。 |
B |
各MIDIチャンネルの設定を1小節目に入力しておく(実際の演奏データは2小節目から)。 | 今回の特集ではAおよびBについて説明する。
表1を見てほしい。これは上で挙げたABのデータを実際に打ち込んだ時の例をリストにしたものだ。灰色の欄がロケーション、青色の欄がMIDIメッセージの種類、赤の欄がその値を示している(白の欄は説明する際の便宜上、それぞれの行に番号を付けたものである)。
[T] |
1:1:0 |
System Exclusive(F0) |
7E 7F 09 01 F7 |
[U] |
1:3:0 |
Reset All Controller |
0 |
[V] |
1:3:10 |
All Note Off |
0 |
[W] |
1:3:20 |
Pich Bend Change |
±0 |
[X] |
1:3:30 |
Modulation Depth |
0 |
[Y] |
1:3:40 |
Program Change |
0
| 表1:誤動作防止・初期設定の入力例 ではさっそくこの表1を使ってひとつひとつ説明していこう。
[T] GM Mode On (System
Exclusive) このメッセージはGM対応のMIDI音源(GS音源、XG音源など)をGM音源モードに切り替える役割と、以下のような内容に設定を初期化する役割をする。
ProgramChange#=0、PichBendChange=±0、ModulationDepth(CC#1)=0、Volume(CC#7)=100、Panpot(CC#10)=64、Expression(CC#11)=127、Hold1(CC#84)=0、RPN=Null、PichBendSensitivity=2、MasterFineTune=±0、MasterCoarseTune=±0 | なおこの初期化が完了するためには200msec(0.2秒)必要なのでそれ以降のデータはその分後ろにずらして挿入する事(そのために表1では[T]から[U]の間が2拍ぶんあけているのである)。またこのメッセージは、各チャンネルに対して行う設定ではないのでどれか1つのトラックに挿入してあればそれで良い。
[U] Reset All Controller (CC#121) [V] All Note Off
(CC#123) [W] Pich Bend Change [X] Modulation Depth
(CC#1) これら4つのメッセージは[T]の「GM Mode
On」が挿入されていれば基本的には必要ないメッセージなのだ。ではなぜわざわざここへ入れたのかと言うと、一部のMIDI音源では「GMモード」への切り替えが手動式の物があるためだ。つまり[T]のメッセージを受け取っても上に挙げているような「初期化」が行われない。そういう場合の措置としてこれらのメッセージを念のため挿入しておくのだ。([U][V][X]は「-
付録 - GM CC表」を、[W]は「- 連載 - 知識の扉 第1回」を参照)
[Y] Program
Change 各パート(MIDIチャンネル)の初期設定として最低限入力しておかなければならないメッセージ(「-
付録 - GM 音色表」参照)。ここではPC#0の「Acoustic Grand
Piano」を選んでいるが、もちろん好きな音色を設定すれば良い。この他にも「Volume」や「Expression」、「Master Coarse
Tune」など、必要に応じてデータを挿入しておくことをおすすめする。
さて、表1の灰色の欄をよく見て頂きたい。[U]以降はロケーションを10ずつずらしてデータが挿入されていることに気が付いただろうか。これはシーケンサーがデータを読み取る際の「読みこぼし」を防止するための措置である。
今回表1として例に挙げた「誤動作防止・初期設定」のデータをMIDIファイル(SMF1)にして添付した。下の「添付MIDIファイルのダウンロード」と書いてある所をクリックすればダウンロードできる。[T]のメッセージはチャンネル1だけに、また1〜16までの全チャンネルに[U]〜[Y]のメッセージを挿入してある(ただしリズム専用チャンネルであるチャンネル10には[U][V]しか挿入していない)。
「添付MIDIファイルのダウンロード」
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