活動記録
プロジェクトワークとは何か どの作業を行い、作業の結果を持ち寄って一つの制作品(報告書、発表、ビデオなど)にまとめる学習活動である。 (コミュニケーション活動1 プロジェクトワーク 凡人社)から 1 どうして話せない 「学校で勉強してもうまく話せない」「教室で習う言葉と現実の日本語とが懸け離れている」といったことをしばしば耳に します。 メインテキストを用い、教室では主に正確な発音をおぼえ、文法的に正確な文をつくり出すことに教師側もエネルギー を費やします。学習者は学校で一生懸命勉強し、宿題もこなし、努力しているにもかかわらず、教室を一歩出て、何か をしようとすると学校で習う日本語と現実の会話には開きがあると感じてしまいます。 考えられる原因は教室活動の中では「言葉の形の正確さ」を求める活動が多いこととコントロールされた活動が中心に なっているからだと考えられます。 2 現実の会話 現実のコミュニケーション場面では日本語教師のように親切にていねいに分かりやすく話してくれるとは限りません。 教室で習っていない言葉もたくさん出てくることと思います。その言葉を習っていないからで済ませるわけにはいきませ ん。同じ国の人でも実際の会話の中では持っている情報量に差があり、また方言によって聞き取れなかったりというこ とが起きます。 それでも聞き返しのストラテジーなどを自然に駆使し、コミュニケーションを成り立たせようとするのが普通です。 日本語を習うコースでは「言葉の形の正確さ」を教えることはもちろん、現実の生活で必要な会話に対処する能力を 養っていくための手助けをすること必要ではないかと思います。 3 自信をつける 「形の正確さ」を教室で習い、それをもとに実際のコミュニケーションの場で「なめらかなやりとり」ができるようにし、相 手とのやり取りを成功に導き、自信をつけさせることが何よりも大切だと思います。 そのためには学習者自身が言葉の形よりも内容を優先できるようなものを準備しなくてはなりません。そのためには 学習者の生活上、必要性の高いもの、個人的な興味に結びつくような活動を考えて行かなければなりません。 4 プロジェクトを成功に導くためには プロジェクトワークは生の日本語に触れたり、自分で使ってみることによって意味のやり取りのなめらかさを養う学習 活動です。今まで学習して身に付けてきた日本語の力がどのくらい役にたつものか体験させることが大切で、新しい文 型や言語表現を覚えるさせることはしません。しかし今まで習ったことを現実の情報収集の場面で全て発揮することは 不可能です。ですから以前に学習したことを思い出させる作業が必要になってきます。忘れてしまったことを補い、新た にそのプロジェクトに必要であろうと思われる特定の語彙や表現を与えておくことが必要です。 5 フィードバックの重要性 せっかく行ったプロジェクトもやりっぱなしでは効果が薄れます。活動の中で問題になったことを取り上げ、どうしてう まくいかなかった、どうしてこのような間違いを起こしたのか、自分自身で振り返らせることが大切です。 間違いがその学習者の頭に定着してしまう前に気付かせ、修正してあげることが先々、誤用を防ぐために必要です。 また活動後にディスカッションを行い、お互いに得た知識や体験したことを話し合うことで、そのプロジェクトにおいて 改善するところも分かってきます。 まとめ まとめとしてプロジェクトワークを行うに際して忘れてはならないことを述べます。 まず活動全体を通して大切なことは「学習者主導の活動」であって、「教師は後ろから見守る」ような気持ちを忘れて はならないことです。普段のテキストの授業のように教師が学習者をコントロールしながら、進めていく活動ではないこ とを頭において、学習者が自主的に動いていくようにアドバイスを与えることがポイントです。ですから学習者にも新しい 文法項目を習うような授業とは違うことをはっきりと伝え、教師は学習者のお手伝いをするだけだと説明しておかなけ ればなりません。 そうしないと学習者がとまどったり、何をすればよいのかわからなくなってしまうような事態になってしまいます。また私 の経験からいきなり一人でやらせたり、大人数のグループで行うのではなく、2.3人の小グループでできる活動から始め た方がいいように思います。一人では全く要領が分からず、困ってしまう学習者もいるでしょうし、一緒にやってくれる人 がいると何かと心強いからです。 こういった活動を何度か経験し、慣れてくれば自分が興味のあることを積極的に一人でも活動してくれますが、まず は簡単なものから始め、学習者の意識を少しづつ積極的になるように変えていくことがどんなプロジェクトをするにも成 功へのカギになるように思います。 またプロジェクトワークは決して中、上級に入ってから行うものでもなく、むしろ初級の段階からやさしい活動を取り入 れていくべきだと思います。それが学習動機の強化にもつながり、普段のテキストの授業にも積極的に参加してくれる 姿勢を作ることにもつながっているような気がするからです。 |