ア ポ ロ 計 画



月の地平線上に昇った地球



 アポロ計画は、人類が地球以外の天体に到着して探査活動を行った史上初の、そして現在に至るまで唯一の有人探査である。このアポロ計画は、1960年代中に月に人間を送るという第35代ケネディ大統領の号令で始められ、宇宙開発競争で旧ソ連に遅れをとって低下した威信を取り戻すという、国家の名誉を賭けた熾烈な政治ゲームの側面もあった。

 アポロ計画は1号から6号までの無人飛行実験、7号と9号による指令船と着陸船による地球軌道の周回、8号と10号による月軌道周回中の宇宙船のシステムや搭載機器の様々なテストを経て、燃料タンクの爆発で地球への帰還を余儀なくされた13号を除き、1969年7月20日の11号による劇的な月面軟着陸から1972年12月11日に着陸した17号まで、18人の宇宙飛行士が宇宙船に搭乗して地球と月を往復し、その中12人の宇宙飛行士が月面活動を行った。

 12号は1969年11月9日に「嵐の海」に、14号は1971年2月5日にフラマウロ高原に、15号は1971年7月30日に「インブリウムの海」に、16号は1972年4月21日にデカルト高地に、そして最後の17号は1972年12月11日に「静かの海」にそれぞれ着陸した。この間、宇宙線、太陽風の検出、月の質量、磁場、熱流、そして月震の測定を含む月面活動と併せて月の岩石と土壌サンプルの採集も行われた。

 6機のアポロ月着陸船の月面滞在時間は、合計299時間35分、月面での船外活動は80時間8分、月面移動車(LRV)を含めた探査活動の距離は96.25km、そして386.9kgの月面の岩石や土壌のサンプルが採取された。また、膨大な数の月面の画像が撮影された。こうしたアポロ計画の総費用は、約204億43万6000ドルであった。

 アポロ宇宙船は、指令船(CM)、機械船(SM)および月着陸船(LM)で構成されている。指令船と機械船はいわば母船で、宇宙飛行士一人が搭乗して月の周回軌道にとどまり、他の二人の飛行士が上昇部と下降部からなる月着陸船で月面へ軟着陸する。月面活動が終ると、着陸船の上昇部が二人の宇宙飛行士を乗せて戻り、指令・機械船とドッキングする。



指令・機械船


 指令船は最大直径3.9m(底部)、高さ3.65mの円錐形の与圧装置である。表面は真鍮のステンレス・スチールでできたハニーコーム・パネルで、その上はフェノール・エポキシ合成樹脂製の耐熱防護カバーが覆われている。指令船の先端にはハッチがあり、その上にドッキング・トンネルが取り付けられ、ここから月着陸船に通ずる仕組みになっている。

 指令船は、3つのコンパートメントに区切られている。前部のコンパートメントには、直径25.4mのメイン・パラシュートが3つ、減速用パラシュートが2つ、地球帰還の降下機(pilot mortar chute)が収納されている。中央は3人の宇宙飛行士が入る与圧クルー・コンパートメントで、約6.33mと最大のスペースを占める。ここには指令船の制御装置、カメラ、飛行装置やクルーが必要とする機器類が搭載されており、ドッキング・トンネルに通ずるハッチが天井に取り付けられている。最下部のコンパートメントには、推進燃料タンク、反動制御エンジンの他に配線や配管類が配置されている。

 機械船は、指令船の下に取り付けられている。直径3.9m、長さ7.6mの円筒で、外側は厚さ2.5cmのアルミニウムのハニーコーム・パネルで覆われている。中は6つに区切られていて、主推進燃料タンク、極低温酸素・水素タンク、計測機器、環境制御装置などが収納されている。機械船の底部には、後部隔壁耐熱シールド、交信用のSバンド・アンテナ、機械船を推進するノズルが取り付けられている。


月着陸船

 月着陸船は、下降部と上昇部で構成されており、重量は1万5065kgである。これ等二つの構成部分は、上昇部が月面から戻って指令・機械船にドッキングするまでは一つの装置として機能する。

 下降部は、着陸船の下部を構成している直径4.2m、厚さ1.7mの8角形のプリズム(prism)である。下降部の重量は2034kgで、その中には8212kgの推進燃料が積み込まれている。下降部の側面からは、先端にパッドが付いた下降部を月面から1.5mの高さに保つ4本の支脚柱が伸びている。支脚柱の1本には、 宇宙飛行士が月面に降り立つ梯子が取り付けられている。下降部には、着陸用エンジン、エアロジン50燃料タンクが2基、窒素四酸化酸化剤タンクが2基、水、酸素およびヘリウム・タンク、月面に設置する観測ステーションと実験機器、それに15号、16号、17号の場合は月面移動車が収納されている。また、下降部は上昇部が月面から離陸する際の発射台の役目を持ち、最終的には月面に残される。11号に搭載された観測ステーションはEASEP(Early Apollo Surface Experiments Package)と呼ばれ、15〜17号の場合は、ALSEP(Apollo Lunar Surface Experiments Package)と呼ばれた。

 上昇部は高さが約2.8m、幅が4X4.3mの特殊な形状をした装置で、下降部の上に装着されている。上昇部の重量は2034kgで、2639kgの上昇燃料が積み込まれている。上昇部には、6.633mのスペースを持つ宇宙飛行士を収容する与圧コンパートメントがある。側面には宇宙飛行士が出入するハッチが、頭部には指令・機械船とのドッキング・ハッチが取り付けられている。頭部にはまた、ランデブー・パラボラ・レーダー、Sバンド・パラボラ・アンテナ、VHFアンテナが取り付けられている。三角窓は出入口のハッチの上と両側に取り付けられている。この他、姿勢制御酸化剤タンク、水タンク、姿勢制御加圧ガスタンク、上昇燃料タンク、反動制御ロケットなどが収納されている。

 
月着陸船の上昇部と下降部



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