アポロ11号
打ち上げ時期 1969年7月16日
軌道上の重量 28,801.01kg
15,065kg

指令・機械船(コロンビア)

月着陸船(イーグル)


サターン・ロケット
 言うまでもなく、アポロ11号は人間が月面に下り立った最初のミッションである。 サターンV SA−504型ロケットに搭載された11号は、1969年7月16日午前午後1時32分(UTC:協定世界時)、フロリダのケネディ宇宙センターから打ち上げられて地球軌道に乗った。


7月16日月、遷移軌道から見た地球
 地球を1.5周した後、ロケットのS−IVB段が再度点火して、アポロ11号は午後4時16分(UTC)、月の遷移軌道に乗り月に向かった。午後4時39分(UTC)、指令・機械船は月着陸船を収納したS−IVB段から切り離された後方向転換し、4時56分、月着陸船とドッキングした。 月へ向かう途中で、カラーテレビ映像が送られてきた。

 7月17日、アポロ11号は、主エンジンを3秒間逆噴射させて中間軌道修正を行った。19日、主エンジンを377.5秒間逆噴射させた後、同日の午後5時21分(UTC)に月の軌道に乗った。この時アポロ11号は月の裏側を飛行中であったため、地球との交信は途絶えた。NASAの管制センターにとっては緊張の一瞬であった。その後、17秒間のエンジン噴射で、アポロ11号は月の円軌道に乗った。

 7月20日、船長のニール A.アームストロングとパイロットのエドウイン E.オルドリン・ジュニアは、月着陸船イーグルに乗り移り最終点検を行った。20日午後6時11分(UTC)、月着陸船イーグルは指令・機械船コロンビアから切り離され、30秒間のエンジン噴射後午後7時8分に月面に向かって降下し午後7時8分、月面の14.5km上空に達した。イーグルは下降エンジンを756.3秒の噴射させた後、月面に向かって降下を開始した。



7月20日、月面に降下するイーグル
 7月20日、午後8時17分40秒(UTC)、米国東部夏時間の午後4時17分40秒、イーグルは静の海の北緯0度40分12秒、東経23度29分24秒の地点に軟着陸した。“Houston, Tranquility Base here the Eagle has landed.”(ヒューストン、 イーグル静かの海に着陸)が地球に届けられた。緊張が解けた。まさに歴史的瞬間であったが、残りの燃料がわずか4分という危険と背中合わせの着陸であった。

イーグルが着陸した「静かの海」

月面に写るイーグルの影

 7月21日午前2時56分15秒(UTC)、米国東部夏時間20日午後10時56分15秒、アームストロング船長が月面に歴史的な第1歩を印した。

月面に降り立つアームストロング船長

月面に印した第1歩

 “That's one small step for man, one giant leap for mankind.”(一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類のためには大きな飛躍である)が、アームストロング船長の第一声であった。19分後、オルドリンが下り立った。もう一人の宇宙飛行士のマイケル・コリンズは、周回する指令・機械船コロンビアで待機していた。

 アームストロングとオルドリンは月面に降りる梯子に貼り付けられたプラーク(銘板)の覆いを取り去った。 そこには、 "Here men from the planet Earth first set foot on the Moon on July,1969 AD. We came in peace for all mankind."(西暦1969年7月、我等2人惑星地球より来たれり。我等、全人類の平和を希求してここに来れり。)の銘文が刻まれていた。

 二人はEVA(船外活動)に移った。先ず米国の国旗を月面に立て、それから無線電話でニクソン大統領に無事着陸の報告をした。



月面に国旗を立てるアームストロングとオルドリン

 それから観測ステーション(EASEP)を設置し、写真を撮り、月面のサンプリングを行った。合計21.kgの岩石や土壌が収集された。

 観測ステーションは、2枚の太陽電池パネル(昼間のみ作動)、地球へのデータ送信と地球の指令を受信するアンテナと通信機、月震活動や月の地殻および内部の物理特性を測定する受動式月震計、塵の堆積と放射線による太陽電池の損傷度合いを測定する月塵検出器で構成されていた。

観測ステーションの設置開始

 この観測ステーションからやや離れた所に、電力を必要としない月レーザー光線反射鏡(LRRR)を設置した。

 それから月面歩行に移り、着陸船から約100mほど離れた所までを往復した。歩行距離は合計250mに達した。


 この間、月面の土壌と太陽風のサンプルを採取して、1時間41分の月面歩行を終えた。先ず、オルドリンが着陸船に戻り、12分後にアームストロング船長が戻った。(7月21日午前5時11分)この後、二人は7時間を休息と着陸船の点検に充てた。

 着陸から21時間36分後の7月21日午後5時54分(UTC)、着陸船イーグルの上昇部は月面を離れ、午後9時34分、周回する指令・機械船コロンビアにドッキングした。この上昇部は、7月22日午前零時1分(UTC)に月の軌道に投棄された。

上昇するイーグル

 7月22日午前4時54分、コロンビアは主エンジンに点火して、地球への遷移軌道に乗った。中間軌道修正を終え、7月24日午後4時13分(UTC)、機械船から分離された指令船は地球帰還の途についた。7月24日午後4時50分35秒(UTC)、米国東部夏時間の午後12時50分35秒、コロンビアは、米国海軍の回収船USSホーネットが待機するウエーク島の南南西約500kmの太平洋上に着水した。

南太平洋上に着水したコロンビア
 アポロ11号のミッションで、月面の光の反射率は平均72%、吸収率は92.8%で、吸収された光は熱に変わり、月面を暖めていることがわかった。また、月面に設置された太陽風・光分光計により、月のガスは水素分子、ヘリウム、ネオンおよびアルゴンで構成されていることも明らかになった。また、LRRRを使った観測は、地球からレーザー光線を発射させてLRRRに当て地球に戻ってくるまでの往復時間で地球と月の間の正確な距離を算出するためのものであった。この観測は1969年から1989年まで続けられた。その結果、月は毎年地球から3.8cmずつ遠ざかっていることがわかった。




アポロ計画